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学位論文題名TrichostatinAwith adenovirus−mediated p53 gene transfer synergistically induces apoptosis in breast cancer cell line R/IDA一MB−231

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 中 島 誠 一 郎

     学位論文題名

TrichostatinAwith adenovirus −mediated p53 gene     transfer synergistically induces apoptosis     in breast cancer cell line R/IDA 一MB −231

    

( ト リ コ ス タ チ ン

A

p53

遺 伝 子 導 入 の 組 み 合 わ せ は

MDA

MB

231

細胞株においてアポトーシスを相乗的に誘導する)

学位論文内容の要旨

【背景と目的】  癌 抑制遺伝子p53の変異はヒト の癌において最も一般的詮遺伝子変異で あり、癌の遺伝子治 療上重要なターゲットである。内在性p53が欠損・変異している癌細 胞株に野生型p53を再び発現させると増殖抑制や アポトーシスが誘導されることが報告さ れ、また臨床試験に おける悪性腫瘍へのp53遺伝 子導入は〜60%の患者に有効であること が明らかにされた。 しかしある種の癌腫ではp53遺伝子導入によるアポトーシス誘導が生 じないとされており 、p53遺伝子導入時のアポト ーシス誘導効率を高める有効な薬剤の発 見が望まれている。

  トリ コス タチ ンA( 以下TSA)は元 来抗 真菌 薬と して 同定 され たヒ ス トン ジア セチラ ー ゼ阻 害剤 であ る。TSAは 哺乳類細胞の細胞周期 を特異的に阻害し、白血病細胞株や幾 っ か の 大 腸 癌 細 胞 株 に ア ポ ト ー シ ス を 介 し た 細 胞 死 を 引 き 起 こ す 。   最近 いく っか のヒ スト ンジ アセチラーゼ阻害剤が、p53遺伝子導入と組み合わせると p53遺伝子導入単独と比較して、アポトーシスを さらに効率的に誘導することが報告され た 。わ れわ れはTSAがp53遺伝 子導 入と の 組み 合わ せに より 、癌 細胞 株に おい てp53遺 伝 子導入単独と比較して相乗的にアポトーシス誘 導を引き起こすかどうかを検討した。

【 材料 と方 法 】  乳癌 細胞 株MDA‑MB ‑231を用 いた 。ま た野生型p53を発現する遺伝子 組 み換 え( 非 増殖 性) アデ ノウ イル スベ クタ ーを 用い (以下Ad‑p53)、同癌細胞株に 様 カな 濃度 で 遺伝 子導 入さ せ、その 後TSAを様々な濃度で処理し 、対照群と比較した。

  まずp53の発現についてはNorthem‑ Blotting法、Western‑Blotting法、pG 13Pyーlucに pRL・CMVを 併 用し たデ ュア ルル シフ ェラ ーゼ レポ ータ ーアッセ イで各カmRNA、蛋白、

レ ポータ ー活性レベルを測定・確認した。p21、Bcl―2、PIG3の発現はNonhem−Bloning 法 によ り測 定 、ま たBaxの 発現 はNonhemーBlotflng法及びpM03を 用いたレポーターアッ セイで 確認した。

  細胞 死はMrSassayを 用い て測 定を 行っ た。 アポ トー シス はア ネキ シ ンV―PI染色 の 後FACSにて測定、およぴTUM孔染色 にて鏡検し確認した。

  ま た ミ ト コ ン ド リ ア 膜 電 位 はCMXRos染 色 に よ りFACSを 用い て、 カス パー ゼ3活 性 に つ い て は CasPACEAssaySystemKit( Promega) に よ り 測 定 し た 。

【結果】   野生型p53 のmRNA 発現はAd‑p53 投与群に認められ、TSA の有無による影

    

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(2)

響 は 認 め ら れ な か っ た が 、p21のmRNA発 現はAd‐p53単 独群 よりAd‐p53十TSA群の 方 がや や強 か った 。同 じくp53蛋白 の発 現 につ いて もTSAの 有無 による影響はなく、両群 に差 は認 め られ なか った 。ま たp53レ ポ ータ ー遺 伝子 アッ セイではAd―p53単独群より Ad‐p53十TSA群 の方 が有 意差 はな ぃが やや 高か った 。

  ア ポト ーシス誘導能・細胞死誘導能・カスパーゼ3活性能にっいてはAd―p53単独群は 0〜100MOIま で低 レベ ルで あっ たが 、Ad‐p53十TSA群はTSA単独 群、Ad一p53単 独群 よ り 相 乗 的 に 高 レ ベ ル で あ っ た こ と がAnnexinV十PI染 色 、TUM孔 染 色 、MrSassり 、 CasPACEAssりSystemIくitの 結果 より 示 され た。

  ま たカ スパーゼ阻害剤であるz―VADはAd_p53十TSA群に茄いて用量依存的にカスパー ゼ3活 性と アポ トー シス 誘導 を抑 制し た 。

  し かし な がらp53誘発 アポ トー シス に 関与 して いる と報 告されているBax遺伝子の発 現 は、mRNAレ ベル やレ ポー ター 遺伝 子ア ッセ イで もAd‐p53十TSA群 とAd―p53単独 群 で差 を認 め なか った 。

  また 他のp53依 存性 アポ トー シス 関連 遺 伝子Bcl―2、PIG3につ いて もmRNAレ ベル で は同 様に 差 を認 めな かっ た。

  ミ トコ ン ドリ ア膜 電位 の測 定で はTSAはp53遺 伝子 導入 によ る膜電位の低下を相乗的 に促 進す る だけ でな く、TSA単独 でも用量依存的に 膜電位低下を引き起こすことがわか った 。

【考 察】  ヒス トン ジア セチ ラーゼ 阻害剤のTSAはヒストンのア セチル化を進め、転写 因 子が ヌク レオ ソー ムDNAに結 合す るの を促 進す る。TSAは 、転 写因 子で あるp53が プ ロモ ータ 領 域へ の結 合を 強め ること で、p53依存性の下流遺伝子 、例えばp21やBaxの転 写活 性を 高 める と仮 定す れば 、Ad−p53単独群よりTSA+Ad‑p53群 の方がより効果的に細 胞周 期の 休 止や アボ トー シス を招 くと 考え るの は理 にか なって いる。本実験の結果、

MDA‑MDー231細 胞 に お い てTSA単独 投与 の場 合、500 nMま でア ポト ー シス 誘導 は低 レ ベ ル で あ っ た が 、p53遺 伝 子 導 入 と の 組 み 合 わ せ で 相 乗 的 に 誘 導 さ れ た 。   p53遺伝子導入がp53変異遺伝子の存在する細胞内でアポトーシ スを誘導するメカニズ ムはまだ不明確である。幾っかの 実験系においてp53転写活性 がアポトーシスに必要であ るという根拠は多くの論文で述べ られており、さらにヒストンジアセチラーゼ阻害剤の中 にはp53転写活性を高めアポトーシス 誘導を招くとの報告もある。ー方でp53転写活性と は全く関係なくアポトーシス誘導 がおこるとする報告もある。

  わ れわ れ は今 回、p21やBaxの転写 誘導がp53遺伝子導入で誘発 されることを明確に示 した が、 アポトーシス誘導能とp21とBaxの発現レベルは必ずしも 相関を示さなかった。

これ はあ る 種の 癌細 胞に とっ てBaxの蛋白発現がアポトーシス誘 導に十分ではないこと を示唆する。

  今 回の 検 討で はp53遺 伝子 発現 はTSAの併 用に よル ミト コンド リア膜電位の低下とカ ス パー ゼ3の 活性 化を もた らす こと を示 した 。こ の結 果か らTSAがp53遺伝 子導 入の 際 相乗 的に ア ポト ーシ スを 引き おこす メカニズムとしては、少なくともBaxとは関係なぃ ミトコンドリア膜電位の相乗的低 下とカスパーゼ経路の相乗的活性化が関与している可能 性が 示唆 さ れた 。TSA単 独で もp53とは 独立 して ミト コン ドリア 膜電位を低下させるの で、本検討からはTSAによる直接的な膜電位の低下に一部原因 があることがうかがえた。

さら にp53はミトコンドリアに移動し て膜電位を低下させその後カスパーゼ3を活性化さ せる とい う 報告 もあ り、 本実 験の 結果 と矛 盾し ない 。TSAとp53遺伝子導入の組み合わ せで誘発される細胞死シグナルは ミトコンドリア膜電位の低下に収束するように思われる が、TSAとp53遺 伝子 導入 が相 乗的 にア ポト ーシ スを 誘導 する仕 組みを理解するために は今後様々な癌細胞株を用いた検 討が必要である。

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(3)

【 結論 】  今回 の検 討 の結果により、低濃度のAd‑p53とTSA併用によってアポトーシス が誘導され るという結果は、Ad−p53を注入した部位から離れているためにAd―p53が低濃 度な癌組織 においてもアポトーシスを誘導できる可能性が示され、さらにp53遺伝子導入 単独ではア ポトーシス誘導に抵抗を示す癌細胞に対しても有効である可能性も示された。

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学位論文審査の要旨

     学 位論文題 名

TrichostatinAwith adenovlruS 一mediatedp53gene     tranSf ・ erSynergiStiCa11yinduCeSapoptOSiS     inbreaStCanCerCelllineMDA − MB ー 231

     ( ト リ コ ス タ チ ン A と p53 遺 伝 子 導 入 の 組 み 合わ せは MDA ー MB ー231 細胞株においてアポトーシスを相乗的に誘導する)

  癌 抑制 遺伝子p53の変異はヒトの癌において最も一般的た遺 伝子変異であり、癌の遺伝 子治 療上 重要 なタ ーゲ ット であ る。 内在 性p53が欠 損・ 変異 して いる癌細胞株に野生型 p53を再 び発 現させると増殖抑制やアポトーシスが誘導される 。しかし、ある種の癌腫で はp53遺 伝子 導入 によ るア ポ トー シス 誘導が生じないとされており、p53遺伝子導入時の アポ トー シス誘導効率を高める有 効ぬ薬剤の発見が望まれている。トリコスタチンA(以 下TSA)は 元来 抗真 菌薬 とし て同 定さ れた ヒス トン 脱ア セチ ル 化酵 素阻 害剤 であ る。 最 近い くっ かの ヒス トン 脱ア セチ ル化 酵素阻害剤が、p53遺伝子導入と組み合わせるとp53 遺伝子導入単独群と比較して、アポトーシスをさらに効率的に誘導することが報告された。

本 研 究 で はTSAがp53遺 伝 子 導 入 との 組み 合わ せに より 、癌 細胞 株に おい てp53遺伝 子 導 入 単 独 と 比 較 し て 相 乗 的 に ア ポ ト ー シ ス 誘 導 を 引 き 起 こ すか どう かを 検討 した 。   乳 癌 細 胞 株MDA‑MB‑231を 用 い 、野 生型p53を発 現す る遺 伝 子組 み換 え( 非増 殖性 ) アデ ノウ イル スベ クタ ー( 以下Ad‑p53)を細胞株に様々な濃 度で遺伝子導入させ、その 後 様 々 な 濃 度 のTSAで 処 理 し 、 対 照 群 と 比 較 し た 。p53の 発 現 に つ い て はNorthem‑

Blotting法、Westem‑Blotting法、pG 13Py‑lucにpRL‑CMVを併 用したデュアルルシフェラ ー ゼ レポ ータ ーア ッセ イで 各々mRNA、蛋 白、 ルシ フェ ラー ゼ 活性 を測 定・ 確認 した 。 p21、Bcl‑2、PIG3、p53AIP‑l、PERPの発現はNorthern‑Blotting法により測定、またBax の発 現はNorthem‑Blotting法及 びpM03を 用い たBaxレポ ータ ーア ッセイで確認した。細 胞 死 はMTS assayを 用 い て 測 定 、 ア ポ ト ー シ ス は ア ネ キ シ ンV―PI染 色後FACSにて 測 定 し た ほ か 、TUNEL染 色 に て 鏡 検し 確認 した 。ま た、 ミト コ ンド リア 膜電 位はCMXRos 染 色 に よ りFACSを 用 い て 、 カ ス パ ー ゼ3活 性 に っ い て はCasPACE AssaySystem Kit (Promega)により測定した。

  ま ず 、 野 生 型p53お よ ぴp21のmRNA発 現 、p53蛋 白 の 発 現 、p53レポ ータ ー遺 伝子 ア ッセ イに っいてはAd‑p53投与群に 認められ、TSAの有無による 影響は認められなかった。

ア ポ トー シス 誘導 能・ 細胞 死誘 導能 ・カ スパ ーゼ3活性 能に っい てはAd‑p53単 独群 はO

〜100MOIま で 低 レ ベ ル で あ っ た が 、Ad‑p53十TSA群 はTSA単 独群 、Ad‑p53単独 群よ り

‑ 402

寛 俊

雅 弘

村 田

今 秋

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

相 乗的 に高 レベ ルで あっ たこ とが 示さ れた 。ま た、 カ スパ ーゼ 阻害 剤で あるz‑VADは Ad‑p53十TSA群 に お い て カ ス パ ー ゼ3活 性 と ア ポ ト ー シ ス 誘 導 を 抑 制 し た 。   一方 、p53依 存性 アポ ト ーシ スに 関与 して いる と報 告さ れるBax遺 伝子 の発 現はAd‑

p53十TSA群 とAd‑p53単独 群で 差を 認め ず、Baxプ ロモ ータ ー活 性に おい ても 同様 で あ っ た。 他のp53依存 性ア ポ トー シス 関連 遺伝 子に つい てもmRNAレベ ルで は差 を認 め な か った 。ミ トコ ンド リア 膜電 位の 測定 ではTSAはp53遺 伝子導入による 膜電位の低下を 相 乗的 に促 進す るだ けで なく 、TSA単独でも膜電位低下を引き起こすこ とがわかった。

TSAは ヒス トン のア セチ ル 化を 進め 、転 写因 子が ヌク レオ ソームDNAに 結合するのを促 進 する ので 、Ad‑p53との 併用 でp53のプ ロモ ータ ー領 域へ の結合が強まりp53依存性の 下 流 遺 伝 子 、 例 え ばp21やBaxの 転 写 活 性 を 高 め る と 仮 定 す れ ばAd‑p53単 独 群 よ り TSA+Ad‑p53群の 方がより効果的に細胞周期の休止やアポトーシスを招く ことが予想され た 。そして本実 験の結果Ad‑p53単独投与の場合では低レベルであったア ポトーシス誘導 がTSAとの 組み 合わ せで 相 乗的 に誘導された。一方、予想に反しアポト ーシス誘導能と p21とBaxの発現 レベルは必ずしも相関を示さなかった。これはある種の 癌細胞にとって Baxの 蛋白発現がアポトーシス誘導に十分で はないことを示唆する。今回の検討でp53遺 伝 子発 現はTSAの併 用に よ ルミ トコ ンド リア 膜電 位の 低下 とカスパーゼ3の活性化をも た らす こと を示 した 。こ の結 果か らTSAがp53遺 伝子 導 入の際相乗的に アポトーシスを 引 きお こす メカ ニズ ムと して 、少なくともBaxとは関係のないミトコン ドリア膜電位の 低 下と カス パー ゼ経 路の 活性 化が関与して いる可能性が示唆された。また、TSA単独で もp53とは 独立 して ミト コ ンド リア 膜電 位を 低下 させ るの で、本検討からはTSAによる 直接的な膜電位の低下に一 部原因があることがうかがえた。さらに、p53はミトコンドリ アに移動して膜電位を低下 させ、その後カスパーゼ3を 活性化させるという報告もあり、

本 実験 の結 果と 矛盾 しな い。 しか し、TSAとp53遺伝 子 導入が相乗的に アポトーシスを 誘 導す る仕 組み を理 解す るた めに は今 後様 々な 癌細 胞 株を用いた検討 が必要である。

  口頭 発表 に続 き、 副査 秋田 弘俊 教授 よりMDA‑MD‑231細胞 株のp53遺伝 子の アレ ル 欠 損 またTSAによ るミ トコ ン ドリ ア膜電位低下の機序にっいて、副査近藤 哲教授よルミト コンドリア膜電位に着目し た経緯またその相乗効果といえる根拠について、最後に主査今 村 雅寛 教授 よりp53遺伝 子 導入 とTSAの 併用 療法 の今 後 の臨床応用の可 能性についての 質問があった。

  いずれの質問に対しても 申請者はその主旨をよく理解し,自らの研究内容と文献的考察 を混じえて適切に回答した 。

  審査員一同はこれらの成 果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る と 判 定 し た 。

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