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経済の変動と会社法改正

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経済の変動と会社法改正

島 宏 幸

     は じ め に

 経済の変動と会社法改正というテーマで︑大きく四項目にわたって︑8会社法改正問題とその背景−戦後の連続的

商法改正︑口会社法の全面改正の問題︑日緊急改正項目1とくに社債の発行限度枠の緩和の問題︑四まとめ1経済の       ︵1︶変動とのかかわりで︑会社法改正が今後どのように進展してゆくか︑今後の状況とその方向性などの側面で述べたい

と思う︒註︵1︶このような問題的関心から︑それまでの論文をまとめたところの池島宏幸・商法学の現代的課題︵一九七三年刊︶︑同﹁経済

   の変動と商法改正﹂早稲田社会科学研究一四号︵一九七五年︶︑同・増補商法学の現代的課題︵一九七六年刊︶︑同﹁商法改

   正の動向と論理﹂法律時報一九七六年一〇月号など一連の論文︑著書を公表しているが︑本稿もこれらの延長線上にあるも

   のの一つである︒

     一 会社法改正問題とその背景

      27 戦後から数次にわたる連続的な商法改正が︑一つには日本の自由化という経済の変動に対応して︑いろいろな馬歯 2

(2)

請を反映する意見によって︑その方向が規定されてきた︒ある意見の一定のものが︑具体的な国家の政策として展開

されてきたが︑その政策をプッシュするいろいろな意見としては︑︼方には︑自由化推進論とこれに対しては国内産

業保護論という対立を生み︑それぞれを調整するような形で︑自由化政策が押進められてきた訳であった︒例えば︑

自由化推進論としては︑国際市場再分割競争への復帰とそのための外資︵とくにアメリカ資本︶とその技術の導入の

要請というような形で展開し︑国内産業保護論は︑通産省が中心となって︑進出してくる外資に対して競争力を強化

する︑産業再編成を企業の集中・合併によって促進して︑不適当な外資の流入を極力おさえるという具体的要請とし

て︑政策化されてきた︒このような二つの基本的な要請を前提として︑さまざまな経済の変動が︑波を打って押かけ

てきた︒それに対して︑他方には︑企業の一般的基本的な規定の総体を取り扱っている商法が︑この波に合わせ︑あ      ︵1︶るいは合わされて︑連続的に改正されてきたという背景がある訳である︒このような経済的北島尽とともに︑商法ほ企

業法の隣接領域である独禁法や商取法それに税法などの改正が︑それぞれに影響を受けながら︑相前後して︑どちら

かが前になるか︑後になるかということはあっても︑改正されてきたという一連の過程がある︒

 とくに最近の状況としては︑新しい開放経済体制︑本格的な企業競争︑多国籍企業も含めて﹁自由競争﹂の時代に

入って行くという段階での︑会社法の全面的改正あるいは根本的改正問題が︑具体的なプログラムとして︑登揚とな

っている︒

 これは︑見方によっては︑ある特定の有力な個人がライフワークとして会社法の全面改正を指導する︑とくにひら

がな口語体の会社法を創るということで︑それが非常にクローズ・アップされているので︑経済的な背景から切離さ

れて︑議論されている傾向が強いようである︒

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(3)

 法改正は︑単に立法者個人の意思だけによって進展されるのではなく︑

立法に関する個人をはじめ諸々の動きが︑具体的に実現されるのである︒

の改正を対応させて考察する必要があろう︒

註︵1︶ 池島・前掲動向と論理八八頁以下︒ 客観的な経済的な背景があってはじめて︑このような意味でも︑経済の変動と会社法

二 会社法の全面改正の問題

経済の変動と会社法改正

H 法務省の﹁意見照会﹂と各界の回答

 法務省は︑一九七五年中昭五〇︶六月一二日付で︑民事局参事官室による文書での﹁会社法改正に関する意見照会﹂

︵いわゆる﹁意見照会﹂︶をし︑これに対して︑翌七六年︵昭五 ︶春には各界から回答が六〇ぐらい寄せられていると聞

く︒それらをまとめあげて︑全面改正の具体的な案が︑法務省法制審議会−商法部会−小委員会−準野卑などで︑ねら       ︵1︶れている︒この間の事情とその作業の進展具合については︑別に述べてあるので︑ここでは︑この程度にとどめる︒

口目本私法学会シンポジウム﹁会社法の根本改正﹂       一九七六年一〇月=日月︑日本私法学会商法部会シンポジウムが開かれ︑テーマは会社法の根本改正で︑内容的       ︵       ︵2︶には︑つぎの三つがとりあげられた︒

ω総論 東大名誉教授鈴木竹雄氏が︑法制審商法部会長として︑またこの七月二〇日に法務省特別顧問に就任された

こともあって︑会社法改正に責務を感じていると︑意欲をもやして︑おおむねつぎのように︑総論を報告された︒

﹁①いわゆる一九七三年︑七四年の衆・参両院附帯決議を受けて︑会社法全面改正へ︑ひらがな口語体の形式をめざ

229

(4)

す︒七四年秋に作業スタート︑七五年六月一二日付﹁意見照会﹂は︑照会先をしぼったこと︒なお︑新聞報道が十分

でなかった点︒回答は六〇個あり︑商事法務七二八号︑ジュリスト六=七号に公表されている︒準備会u商法改正研

究会が中心であるなど︒②当日のシンポジウムの主項目を︑最低資本金制および大小会社の区分︵東大教授竹内昭夫

氏報告︶と株式制度︵とくに具体的検討中のもの︑学習院大教授前田庸氏報告︶の二つのテーマにしぼったこと︒こ

のようなシンポジウムをここ当分学会で行なう︒当面五年間の全面改正作業を進める︒③したがって︑緊急改正は︑

やらない予定であったが︑取組まざるをえない⁝⁝一般会社の社債発行限度枠の拡大は︑その技術性とともに︑でき

るだけ早くやりたい︒④多くの意見を集約するため︑妥協の産物となりやすく︑これは︑立法の宿命である︒回答の

﹁数﹂によって決めることはせず︑合理的な﹁質﹂の問題としてやる︒﹂など︒

②最低資本金制度および大小会社の区分 この基本的な内容は︑つぎの偶と同様に︑商事法務七四七号一三頁以下と

同様のレジメにより︑報告された︒

 問題点としては︑最低資本金制を採用して︑株式会社を一千万円〜五千万円滑で切ってしまう︒それ以下の資本金

の株式会社は︑違う形で規制しようとする︒小さな株式会社とするか︑有限会社に組織を改めさせるかという問題

で︑結局この問題は︑大小会社の区分に関連する︒大会社︑小会社の区分が導入されると︑中小企業は小会社と呼ば

れることとなり︑小会社社長であるとか︑また有限会社についても︑その呼称は歓迎されておらず︑有限すなわち会

社の命の限りのある会社の社長となることをきらい︑小なりとも株式会社社長として︑﹁我が社は︑いずれ第二のソ

ニー︑第三のソニーをめざして︑発展途上会社である︒小なりとも中堅企業を目ざして発展してゆく︒﹂などの風聞

を耳にする︒このような状況下で︑本制度が採り入れられるかどうか︒しかも︑日本の大部分の企業は︑資本金百万

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経済の変動と会社法改正

円とか︑せいぜい五百万円程度で︑大体入○パーセントの企業は︑そのような小さな資本金しかもっていない︒例え

ば︑少し下げて五百万円で切っても︑相当な数が株式会社でなくなってしまう︒まして︑一千万︑五千万円となる

と︑ほとんどの会社が株式会社でなくなってしまう︒最後に残った大会社は︑千五百社位になって︑その頂点に百社

の巨大会社が位するというピラミッド型の構造が経済的な実態として存在する︒これらは極めて深刻な問題で︑どう

処理されるかは︑重大問題といえよう︒

㈹株式制度 取引単位千株を目標に①額面金額を引き上げ︑五万円以上とする︒②もしくは︑額面株式の額面金額の

合計が五万円に相当する株式を一単位とし︑これに満たない株式についての権利行使を制限する制度一単位株の採用

による改正の方向がある︒額面株式の券面額は︑五百円を下ることを得ず︵商法二〇二条二項︶とされておりながら︑

実際には︑五〇円額面が圧倒的多数であること︒五〇円は︑貨幣価値が︑極端に低いから︑五万円に引き上げては︑

など︒額面五〇円株式の取引単位千株は︑機械的には五万円のものが︑実際には︵もっとも公開されている株式につ

いてであるが︶︑時価が一〇万円とか︑二〇万円しているから︑という理由ないし論理が︑改正試案の前提となって

いるようで臥寵︒さらに︑株主一人あたりの費用が年間二千円前後という︑いわゆるコスト論の論拠も︑ディスクロ

ージャー制度の徹底化の要請の前には︑影が薄いようである︒③自己株式取得・質受禁止の緩和については︑商法二

一〇条の規定は︑ヨ〜ロッパにおける株式会社法の歴史五百年の経験から︑自己株式を取得させることは︑投資では

なく投機をあおり︑しいては詐欺を奨励することになるという教訓の結実・発現によるものである︒例えば︑A会社

が自己の資金でA株式を買い込むと︑買いが出たとなると株価が急騰する︒するとこれは上るかもしれないと皆がつ

られて買う︒株価が上るので︑機をみて会社が売り払う︒売りが出ると株価は下がり大衆は損害を受ける︒このよう

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な売ったり︑買ったりして投機による﹁あおり﹂は︑内容的には︑インサイダー・トレーディング︵内部者取引︶の 32       9帽問題として︑古くて新しい現代的な問題とも結びついてくる︒もし自己株の組織的な取得が行なわれれば︑一国の経

済構造までも︑その影響を受けることとなるのであり︑そのような配慮から︑これが原則禁止とされるのである︒も

っともアメリカでは︑トレジアリー・ストック︵貯金株︑金庫株︶といわれて︑ある程度認められてはいるが⁝⁝︒

日本の財界においても︑企業の乗取りなどに対抗するために︑自己株をある程度︑取得しておいて︑乗取りが起きて

も︑十分に対応しうることとしたいとの︑経団連など緩和要求が強く︑なんとかその方向で議論が進められている︒

もっとも企業グループでは︑株式の相互保有によって︑実質的な自己株式取得の効果を十分果させているようである

>       O・刀....﹃.

註︵−︶ ︵2︶

 ︵3︶ 池島・前掲書二五四頁以下および池島・前掲動向と論理九〇頁以下︒詳しい内容は︑商事法務七四七号︑私法三九号︒前掲文献以外に︑ジュリスト六〇三号一七六頁など︒

     三 緊急改一正項目

 全面改正以上に︑緊急改正項目として︑経済界から強い要請が出ているものは︑日不況下における社債の発行限度

枠の緩和︑口優先株による資金調達の多様化などが︑当面取り上げられている︒これらは︑いずれも﹁意見照会﹂に

は︑現われていなかった項目であることに注意しなければならない︒このような現象に対して︑私は︑つぎのように

述べておいた︒

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経済の変動と会社法改正

﹁﹁方では全面改正というアドバルーンをあげておきながら︑皆がそちらを見ているうちに︑⁝⁝他方で緊急性の項       ︵1︶目であるからという理由で︑早急に成立︑公布︑施行という問題性が指摘されている︒﹂と︒

日電気・ガス事業会社の社債発行限度の拡大の特例法

ωいわゆる社債の発行限度に関して︑商法二九七条は︑社債は①﹁資本および準備金の総額﹂を超えてこれを募集す

ることをえず︑または︑②﹁最終の貸借対照表により会社に現存する純資産額﹂が資本および準備金の総額に満たな

いときは︑社債は︑その資産額を超えて︑これを募集することができないと規定している︵ただし︑社債の借換の場

合につき特長あり︶︒この規定は︑社債の発行限度として二重の制限を設けているが︑右の二つの制限のうち︑いず

れか少ない方の額が︑社債の発行限度となる︒このような定めは︑会社債権者とくに既発行の社債券の所持入の利益

保護のため︑会社の現有する資力以上に巨額の固定債務の負担を抑制する必要からである︒

 もっとも︑特殊の目的をもつ株式会社については︑特別法の制定によって︑その限度を拡大している︒事業債に関

して︵金融債の場合は別︶︑特殊事業法上の株式会社および特殊会社は︑それぞれ特別法によって︑電力会社︵電気事

業法︶︑目航︵日本航空株式会社法︶は︑二倍︑国際電電︵国際電信電話株式会社法︶は︑三倍︑電源開発︵電源開

発促進法︶︑航空機工業︵航空機工業振興法︶は︑一〇倍と︑商法二九七条の発行限度枠を拡大︑緩和している︵東      ︵2︶北開発−東北開発株式会社法だけは︑資本と準備金の五倍︶︒

 したがって︑一般事業会社は︑いかに不況とはいえ︑商法同条に違反する社債発行はできない︒そこで︑この制限

を緩和しようとすることが︑ ︼つのねらいであった︒

ωそこでまず︑﹁一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債発行限度に関する特例法︵昭五一法律五九︶﹂が︑七

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       ︵3︶六︵昭五一︶年五月二︼日に成立︑六月四日公布・施行されている︒同法によって︑プッシュされようとしていること

を要約すれば︑両事業については︑﹁基準社債発行限度額﹂を︑電気会社四倍︑ガス会社二倍と拡大して︑①電気事

業では︑発電所建設︑公害防止投資︑送電線の地中化など設備資金の急増により︑今後一〇年間に四八兆円を必要と

する︒②ガス事業では︑液化天然ガス︵LNG︶の導入の導管網など︑装置産業としての設備資金に︑今後一〇年間

で四兆七千億円を必要とする︒いずれも︑五一年中には社債発行限度一杯となるためとしている︒電力.ガスは︑あ

らゆる産業の元である︒③現在の電力会社は︑東京電力︵株︶などの九電力と沖縄電力︵株︶の合計一〇社であるが︑そ

の要求に答えてゆく︒ガス会社は︑現在一八○社あって︑そのうちで︑社債発行実績のある会社は︑東京瓦斯︵株︶

など七二である︒なお︑九電力会社の社債発行頻度では︑昭和四九年度︑結社平均で入︑四回︑一番多い会社は︑一

二回というのが勤・・のように社債の発行は︑企業の存続について︑大きな命綱であるという・とから︑同特例法

が国会を通過してきた訳である︒④そして︑同特例法は︑一〇年後の一九入六年︵昭六一︶三月三一日限りで失効す

る︒いわゆる時限立法ないし限時法となっている点を注目しなければならない︒

㈹では︑同特例法が成立したことによって︑どのような情況が発生したであろうか︒同特例法成立によって︑新たに

三兆三千五百億円という巨大な発行余力が生まれて︑電力九社は︑当初計画通りの五一年度約一兆円の社債発行が可

能となったこととともに︑さらに︑中長期的計画でも︑昭和五一〜六〇年度の約一〇年間で約四八兆円という巨額の       ︵5︶設備投資の推進計画の制約要因の一つが大きく緩和されたその意義は大きいといわれている︒

 不況下におけるこのような資金調達の推進には︑経済の事情があったのであるが︑今後起債市場の量的な拡大を結

果してゆくこととなろう︒

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経済の変動と会社法改正

ロ一般事業会社の社債発行限度枠の拡大

 このような電力・ガスについで︑造船︑鉄鋼︑電器︑機械︑自動車の各業界も︑同様なワクの拡大を要求してい

る︒ このため︑政府は一般事業会社についても早急に発行ワクを広げる必要ありとして︑商法改正となるのを避けて︑

やはり特例法による方針といわれる︒大蔵︑通産︑法務の三省によって︑﹁現行限度ワクを二倍に広げる﹂という三

省間の合意ができたため︑法制審商法部会は︑七六年一〇月二七目︑一般事業会社の社債発行の限度ワクを現行の二

倍に拡大︑拡大部分は︑担保付社債とする﹁社債発行に関する商法の特例法案﹂の要綱を決めた︒法務省は︑直ちに       ︵6︶法案作成作業に入り︑七七年︵昭五二︶二月中に︑国会提出︑成立の方針である︒この拡大部分については︑外債と

転換社債を除き︑すべて有担保とすることにした︒

 起債企業の倒産などによる買手の立場保護のため︑さらにディスクロージャー︵企業情報の公開︶の義務づけを︑

証券行政の一環として実施する方向を︑大蔵省が検討中といわれる︒

 こういう方向としては︑日本私法学会の商法部会の前述のシンポジウムでも︑大会社と小会社という形態をみと

め︑大会社に対しては一・五〜二倍体の社債発行の限度ワクの拡大をするが︑小会社については社債発行を禁止する

という提案がなされている︒一方では緩和し︑他方では禁止するのであるが︑大企業に対しては特例を与えながら︑

小会社にはこれを規制していくというアンバランスに対しては︑鈴木竹雄名誉教授はこれを︑小会社に対しては借入

金の措置をとっておくといわれる︒この両者のバランスは︑ある意味では不況下における資金調達の側面ではそのよ

うな解決が行われざるをえないとは思うけれども︑両手をあげ歓迎する状況ではないといえるかも知れない︒

235

(10)

日優先株と資金調達の多様化       36       9一 この問題については︑日立造船という巨大会社が︑日経新聞七月三〇日の記事では︑大量に優先株を発行すると︑

さかんにPRし︑いろいろな新聞雑誌でとりあげられたが︑それをどうやって規制してゆくかということで︑東京証

券取引所では実務の先行の傾向を心配して︑ブレーキをかけ︑﹁優先株の上場および売買取引等に関する上場審査基

   ︵7︶準の要綱﹂を七月一六日に公表して︑日立造船の優先株の発行にそなえた︒

 優先株は︑優先的に配当が約束されている株式で︑それは議決権とのひきかえにおいて︑こういう株式が発行さ

れ︑議決権のない代りに配当を優先的に保証されている株式が優先株で︑そういう意味では総会に出席を求めたり︑

総会に関する資料を送付したりする会社側の手数のわづらわしい連絡を全部省略できる︒にもかかわらず︑多量の資

金を調達できる︒という意味で資金調達の多様化の要請にも合致する非常に現代的合理的な株式の形態で︑これを社

債と同じようにっかってゆこうという方向がみられる︒これが﹁つの﹁現代化﹂の方向でもある︒

註︵1︶ 池島・前掲動向と論理九こ頁︒

 ︵2︶ 鴻常夫﹁社債の発行限度に関する商法の規定について﹂商事法務七二四号三頁︒

 ︵3︶ 一九七四年=︸月︑電気事業審議会は︑資金問題懇談会を設置しその検討を経て︑七五年一〇月︑通産大臣に対し﹁電気

   事業の資金問題に関する意見﹂を提出し︑また総合エネルギー調査会都市熱エネルギー部会も︑同年一二月に﹁一般ガス事

   業の資金問題に関する中間報告﹂を行ったが︑いずれも限度枠の拡大の法的措置を提言していた︒長尾梅太郎﹁電気・ガス

   事業会社の社債発行限度に関する特例法の解説﹂商事法務七四四号二頁︒

 ︵4︶長尾・前掲四頁︒

 ︵5︶ 三井銀行調査月報四九四号︵七六・九︶五一頁︒

 ︵6︶毎日新聞昭五一・七・二五︑日経新聞昭五一・九・五︑朝日新聞昭五一二〇・一七︑日経新聞昭五一・一〇・二八など︒

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︵7︶ 商事法務七四二号︒

四 今後の状況と方向tむすびにかえて

経済の変動と会社法改正

 そのような状況を前提として︑いろいろな新たな経済の要求が出てくると思われるが︑そういう問題をどのように

考えて行ったらよいだろうか︒

6今後の状況と方向性の問題をしぼってみると︑一国の経済政策というものとの関連が︑会社法の改正においても︑

大変大きいのではないか︒例えば︑緊急改正項目として出て来た社債の発行限度に関する特例法とか︑あるいはそれ

に関する商法改正の問題などは︑日本国家そのものが︑赤字にあえいでいる現状に対処するために増税という問題が

あるが︑それは香しくない︒そこで次善の策と称して赤字国債を発行しているが︑国家そのものが国債を発行し︑こ

れを分担するのは︑大きな企業であり︑また小さな企業も含め一般の国民でもあるが︑どおも︑国も国債を出すか

ら︑企業も社債をという赤字国債の転嫁のコースではないか︒というのが考え方の一つである︒

国そういう会社法改正という問題は︑立法論と関係するが︑立法論と会社法の具体的な問題としては︑七三年オイル

ショックの国会で企業の社会的責任が問われ︑これを何とか立法化して条文化する方向で検討されてきたが︑条文と

は︑大体抽象的かつ︼般的規定が多いが︑これは︑論理学の内包と外延との関係であって︑より統一的な基準の設定

によって︑具体的かつ個別的な例をあげて︑規定するところの例示規定の方法によって︑改正を進展させてゆくとい

う提案も考えられるけれども︑これは非常に困難であろう︒       37 本来︑企業の責任という問題は︑会社の経営に関する責任の問題を︑法的なレベルとして︑どの程度まで具体的に 2

(12)

規定できるかという問題でもある︒実際には︑その時代時代の企業経営のモラルによるのであって︑これを反映し

て︑どの程度の幅で︑具体的な規定を置けるかの問題になってゆく︒そこで大体に︸般的抽象的規定を置くことにな

る︒そのような例として︑ドイツのナチ時代の株式法があるが︑これが一般的抽象的規定であったため︑ほとんど機

能しなかった︒むしろ逆にブランケット・ゲゼッツとして︑いろいろな形で悪い効果がでたともいわれている︒日本       ︵1︶は︑この前例を参照しないとする方向が︑大体の一般的見解に落着いているようである︒

 ここで述べておきたい点は︑立法論の問題が︑実は個々の企業の経営モラルの問題であると同時に時々の国家のあ

るいは国家による経済政策︑財政政策に多く規定されるのではなかろうか︒﹁衣食足りて︑礼節を知る﹂といわれる

が︑一定の資金調達が潤沢に行えるような時代になると︑それなりに経営モラルは上昇する傾向がなくはないと思わ

れる︒そのような意味で︑企業の社会的責任とは︑実は取締役個人の問題として︑商法が規制しようとする方向と︑

同時に︑例えば手形の不渡り︑連鎖倒産の問題では︑取締役の責任がとにかく追及されるはずであるが︑そのような

問題は︑実は︑国の経済政策とのかかわりをもっことを否定しえない︒経営者個人の予測・予想をはるかに超えるこ

とも多いと思われる︒とぐに中小零細企業の経営者にとっては︑予測・予想はほとんどありえず︑きわめてきびしい

情況であろう︒

 したがって︑そのような経済的社会的なレベルでの紛争の問題を︑商法︑会社法という法的なレベルで解決しなけ

ればならない点において︑立法論には︑むずかしい基本的な問題を含んでいるのではないだろうか︒この辺にも伝統

的な抽象的一般的な立法論の考え方の限界がひそんでいるのではないかP

 筆者は︑かつて︑現行商法典の今日的状況を︑つぎのように述べた︒

238

(13)

経済の変動と会社法改正

 ﹁商法典の歴史をふりかえると︑ 一入九九年前明三二︶︑ つまり前世紀最後の年の前の年に︑来るべき二〇世紀をめ       マ   へざして︑新調された三つ組の洋服であった明治新商法︑すなわち現行商法典は︑半世紀余にわたる経済の変動いな激      あ  ヘ  へ動による相次ぐ改正というパッチにより︑つぎはぎだらけとなっている⁝⁝二〇世紀後半型の新調スーツ︵中小企業

用スペア・ズボン付きり・︶である全面改正法は︑経済の現実とその裁寸︑仮縫い︑新調と︑何時どのような形でその      ︵2︶全容を現わすであろうかP国民は無関心でいてはならない﹂︒

 このような例え話としては︑さらに︑﹁現行会社法は︑中小企業にはダボダボの洋服を着ているということになり︑      ︵3︶背たけや胴廻りを合わせるための改正を行う⁝⁝﹂︑さらに﹁大企業にとってはツンツルテンの状態といえる⁝⁝﹂

との見方もでてきている︒しかし︑経済の実態と法規制とを合致させることは︑この様な簡単な認識では説得力は弱

いと思われ6︒一定の法規定が現実の具体的な企業にどのような規制を加え︑かつ経済の実態にどのよう渠波及的効

果を及ぼすかを科学的に整密にメジャーすることこそ至上問題と思われる︒       ヘ  へ 立法による経済的な諸々の波及効果を計量し︑メジャーしえたものの法的制御効果を検討して︑立法を進める必要

があろう︒

日最後に︑立法という問題が︑法技術という点で︑ミクロの問題であると同時にマクロの問題をも含んでいる︒とい

うのは︑具体的な会社法改正において︑︐法務省が中心で法技術的な問題を処理すると同時に︑法務省が扇の要の如く

なって︑関連の経済官庁︑大蔵︑通産などの各省との関連部局との接渉を行なっている︒例えば︑前述一般会社の社

債発行限度ワク拡大の特例法にみられたように⁝⁝︒かかる意味で︑今日の立法政策が︑経済政策にまで波及し︑あ

る﹂いは経済政策の影響を無視しては︑立法政策が展開しえないのである︒今日の会社法の改正は︑そう簡単にはゆか

239

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ないどもいえよう︒少くとも︑一部の意見だけでは︑改正は進展できず︑その作業には︑国民的レベルのコンセンサ 40       2スがぜひ得られなければならない︒法務省の﹁意見照会﹂の回答でも︑多くの積極的意見に対して︑少数とはいえ消

   ︵4︶極的意見も存在している︒﹁量ではなくて質による合理的な判断﹂によって︑これらの消極的意見を十分くみとるこ

とによって︑立法作業が進行されなければならないであろう︒

註︵1︶ 日経新聞昭五〇・=丁二六経団連−明文化に反対︑﹁一株運動﹂も封じ込めへ︒商事法務所掲の松田二郎論文︵同誌七一

    三号︶と竹内昭夫論文︵同誌七ニ亭号︶との論争で一応のメドがついているように思われる︒

 ︵2︶ 池島・増補前掲書二五〇頁︒

 .︵3︶ 日本私法学会商法部会︵一九七六・一〇・﹁﹃︶での竹内昭夫教授の発言︒

 ︵4︶ ﹁商法改正関係資料﹂法律時報一九七六年一〇月号一四四頁以下︒

      ラ 本稿は︑一九七六年︵昭五一︶一〇月一六日土第八回早稲田大学社会科学研究所公開講座1の現代国家における経済と法の諸問      く題グループの中で﹁経済の変動と会社法改正﹂のテ⁝マで公表したものを中心としてまとめたものである︒

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