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〈論 説 〉
EU拡 大 圏 と汎 ヨ ー ロ ッパ の 未 来
石 井 伸 一
目 次
は じめ に 一 深 化 と拡 大
110ヵ 国 のEU加 盟 と そ の 課 題
IIコ ペ ンハ ー ゲ ンの 加 盟 正 式 承 認 と迎 え 入 れ るEUの 課 題 IH加 盟 を 目指 す 中 ・東 欧 諸 国 の 政 治,経 済 状 況
IVEUの 東 方 拡 大 と統 合 の 未 来 Vク ォ ー ヴ ァ デ ィス?ヨ ー ロ ッパ お わ りに
は じめ に一 深化 と拡大
EU(欧 州連 合)は,2002年12月,コ ペ ンハ ー ゲ ン の 首 脳 会 議 で,中 ・東 欧 ・バ ル ト諸 国 ,キ プ ロ ス,マ ル タ の10ヵ 国 を2004年5月 に 一 括 し て 加 盟 す る こ と を 承 認 し,こ れ に よ り加 盟 国 25ヵ 国,人 口4億5300万 人 の 広 大 な 拡 大 統 合 圏 が 誕 生 す る 見 通 し と な っ た 。
ドイ ツ,フ ラ ンス 国 境 の ル ー ル,ザ ー ル 地 方 の 石 炭 と鉄 鋼 を ヨー ロ ッパ の 共 同 管 理 下 に 置 き , 不 戦 の 地 域 を創 ろ う とい う,フ ラ ン ス の ロ ベ ー ル ・シ ュ ー マ ン外 相 の 呼 び か け に,独,仏 両 国 の ほ か,イ タ リ ア,ベ ネ ル ッ ク ス3ヵ 国 が 呼 応 し,1951年4月 に 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体(ECSC)条 約 に調 印 し,欧 州 統 合 の 礎 が 築 か れ た 。 ジ ャ ン ・モ ネ が 起 草 し,シ ュ ー マ ン外 相 が 提 唱 して 結 実
し た こ の 条 約 は,1952年7月23日 に 発 効 して か ら半 世 紀 を 経 た2002年 に 使 命 を終 え た が,欧 州 統 合 の 輪 は,激 動 の 時 代 の 波 に洗 わ れ,曲 折 を経 な が ら深 化 と拡 大 の 路 線 に基 づ い て 脈 々 と広 が っ て き た 。
ECSC後,1957年3月,欧 州 経 済 共 同 体(EEC)と 欧 州 原 子 力 共 同 体(ユ ー ラ トム)を 設 立 す る ロ ー マ 条 約 の 調 印,1967年7月,3つ の 共 同 体 執 行 機 関 を 統 合 し た 欧 州 共 同 体(EC)の 発 足,1992年2月,EU設 立 の マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 の 調 印 と 統 合 は 進 展 し て き た 。 欧 州 統 合 は,1950年 代 に,安 全 保 障,防 衛 を め ぐっ て 欧 州 防 衛 共 同 体 の 構 想 が 浮 上 し た が,当 時,西 ド イ ツの 再 軍 備 に 対 す る警 戒 感 が 根 強 か っ た た め 挫 折 し,経 済 統 合 が 重 点 に 発 展 し た 。EC発 足 の 翌1968年7月,関 税 同盟,共 通 農 業 政 策 が 完 成 し,深 化 が 具 体 化 し た 。
特 に 共 通 農 業 政 策 は,当 時 は統 合 の 象 徴 と い え る 重 要 な 政 策 で,シ ュ ー マ ン や ジ ャ ン ・モ ネ が 理 想 に描 い た 超 国 家 的 な 連 邦 主 義 が 特 徴 と な っ て い る 。 共 通 農 業 政 策(CAP)は 域 内 農 業 を 保 護
2商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6)
し,農 産 物 価 格 を 統 一 し,資 金 は す べ てECの 財 政 が 負 担 し,欧 州 農 業 指 導 保 証 基 金(EAGGF‑‑
Europeanagriculturalguidanceandguaranteefund)が 予 算 化 さ れ た 。 当 時 の 深 化 の 特 徴 で あ るCAPが ど の よ う に 変 革 し た か を 術 鰍 す る と,農 産 物 の 在 庫 の 過 剰,EC財 政 の 逼 迫,農 業 構 造 改 革 の 遅 れ,ガ ッ ト(現 在 はWTO)の ウ ル グ ア イ ラ ウ ン ド交 渉 で,CAPは 閉 鎖 的 で,自 由 貿 易 体 制 に 反 す る と い う 批 判 が 出 る な ど 様 々 な 問 題 を 内 包 し て い る こ と も 露 呈 さ れ た 。
こ う し た 情 勢 を 踏 ま え,ECは 価 格 支 持 政 策 か ら 農 家 へ の 直 接 支 払 い と い う 補 償 政 策 に 切 り 替 え る 改 革 を1992年 か ら 実 施 に 移 し て い る 。 そ し て い ま,中 ・東 欧 諸 国 と い う 農 業 分 野 で の 就 労 が 比 較 的 多 い 旧 共 産 圏 諸 国 の 加 盟 を 控 え てTEUのCAPは 農 業 財 政 支 出 を 含 め て 改 革 の 新 ら た な 岐 路 に さ し か か っ て い る 。
統 合 の 深 化 に つ い て は,市 場 統 合,通 貨 統 合 な ど 経 済 分 野 で の 統 合 の 輪 が 更 に 膨 ん だ 。1971 年 の ド ル 危 機(ニ ク ソ ン ・シ ョ ッ ク),1973年,1979年 の 二 次 に わ た る 石 油 危 機 で ヨ ー ロ ッ パ 経 済 は 沈 滞 期 に 入 っ た が,そ の 中 か ら 経 済 を 活 性 化 さ せ 再 生 を め ざ す 域 内 市 場 の 統 合 プ ラ ン が 編 み 出
さ れ,人,物,資 本,サ ー ビ ス の 自 由 な 移 動 を 保 証 し た 単 一 市 場 が1993年 か ら 稼 働 し た 。 こ れ と 並 行 し て,ド ル 危 機 に 端 を 発 す る 国 際 通 貨 危 機 に さ ら さ れ た 中 か ら 共 通 の 通 貨 を 創 ろ う と い う 声 が 高 ま り,1989年4月,通 貨 統 合 を め ざ す ド ロ ー ル 報 告(ECの 経 済 通 貨 同 盟 に 関 す る報 告 書)が 単 一 通 貨 立 ち 上 げ の 道 筋 を つ け た 。 幾 多 の 曲 折 と苦 難 の 道 を 辿 り な が ら も,1999年1月 か ら 単 一一通 貨 「ユ ー ロ 」 を 導 入 し,2002年1月 か ら,流 通 を 開 始 し た 。 こ の ユ ー ロ は,市 場 統 合 を 通 貨 の 面 で 支 え る 重 要 な 要 素 で も あ る 。
一・方 で
,欧 州 の 統 合 は,必 然 的 に 広 域 圏 を 往 来 し,居 住 す る 人 の 権 利 に 波 及 し,ヨ ー ロ ッ パ 市 民 権 が 設 定 さ れ た 。 マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 で 規 定 さ れ るEU市 民 権 は,居 住 先 で の 地 方 選 挙,欧 州 議 会 の 選 挙,被 選 挙 権 を 持 ち,ま た 社 会 労 働 分 野 で,例 え ば,「 社 会 保 障 と 労 働 者 の 社 会 的 保 護 」 が 社 会 政 策 協 定 に 盛 り込 ま れ た 。 更 に マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 を 一 部 改 正 し た ア ム ス テ ル ダ ム 条 約 で,「EUは 加 盟 国 共 通 の 原 則 で あ る 自 由,民 主 主 義,人 権 の 尊 重,基 本 的 自 由 の 原 則 に 基 づ い て 設 立 さ れ た 」 と … 歩 進 め て い る 。 国 家 主 権 の 象 徴 で あ る 自 国 通 貨 を 消 滅 さ せ て 立 ち 上 げ た ユ ー ロ を 初 め と す る 経 済 統 合 と 合 わ せ て,欧 州 統 合 は,自 由 市 場 経 済 に 基 づ く ア メ リ カ 型 グ ロ ー
バ ル 資 本 主 義 に 対 し て,地 域 統 合 型 の 経 済 ・社 会 の ヨ ー ロ ッ パ 型 モ デ ル を 提 示 し て い る 。
… 方,統 合 の 拡 大 に つ い て,1973年 に イ ギ リ ス,デ ン マ ー ク,ア イ ル ラ ン ド,1981年 に ギ リ シ ャ,1986年 に ス ペ イ ン,ポ ル ト ガ ル が 加 盟 しECは12ヵ 国 と な っ た 。 次 い で,1995年 に オ ー ス ト リ ア,フ ィ ン ラ ン ド,ス ウ ェ ー デ ン が 加 盟 しEUは15ヵ 国 に 拡 大 し た 。 そ し て 今,10ヵ 国 (ポ ー ラ ン ド,チ ェ コ,ハ ン ガ リー,ス ロバ キ ア,ス ロベ ニ ア,エ ス トニ ア,ラ ト ビ ア,リ トア ニ ア,キ プ ロ ス,マ ル タ)が2004年5月1日 に 一 括 加 盟 す る 見 通 し と な っ た(EUは 正 式 に加 盟 を 承 認 し た が,加 盟 交 渉 国 の 中 に は 国 民 投 票 で批 准 を 承 認 す る 国 もあ る)。
今 回 のEUの 東 方 へ の 拡 大 は,こ れ ま で の 西 ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 の 加 盟 と は 異 な り,(i)10ヵ 国 と い う 多 数 国 の 一一括 加 盟,(ii)大 半 が 冷 戦 終 結 ま で 旧 東 欧 で 呼 ば れ た 旧 共 産 圏 諸 国,(iii)EU
EU拡 大 圏 と汎 ヨーロ ッパ の未来3 の 境 界 線 が 東 で ロ シ ア と接 し,南 で 地 中 海 の キ プ ロ ス,マ ル タ に達 す る こ とか ら,古 代 ロ ー マ 帝 国 の 版 図 に ま た が る一 大 拡 大 圏 を 特 徴 と し て い る 。 人 口 で4億5300万 人,国 内 総 生 産 で 世 界 の 29.5%(現 加 盟15ヵ 国で28.2%で,9兆2310億 ユ ー ロ,10ヵ 国で1.3%増 一2001年 現 在(1))。国 と広 域 圏 の 比 較 に な る が,人 口 で は ア メ リ カ の2億7800万 人 を上 回 り,経 済 規 模 で は ア メ リ カ の10兆 7000億 ユ ー ロ に 迫 っ て い る 。
欧 州 委 員 会 は2002年10月9日,加 盟 予 定 の10ヵ 国 に つ い て,機 能 す る 市 場 経 済,民 主 主 義,法 の 支 配 な どEU加 盟 の 条 件 を取 り決 め た1993年 の コ ペ ンハ ー ゲ ンの 政 治 ・経 済 基 準 を 満 た しつ つ あ る と し て2004年 の 加 盟 を勧 告 し た 。 こ の 勧 告 を 受 け て,EU首 脳 は10月24,25日 の ブ リ ュ ッセ ル の 首 脳 会 議 で 承 認 次 い で12月12,13日 の コペ ンハ ー ゲ ンの 首 脳 会 議 で 正 式 に 承 認 した 。 こ の勧 告 に は 政 治 ・経 済 基 準 以 外 に,自 由 な 人 の 移 動,農 業,共 通 外 交,安 全 保 障 政 策 な ど31項 目に わ た る 行 政,法 体 制 の 整 備 が 交 渉 の 対 象 に な っ て きた が,2002年 内 に 全 体 を ク リ ア す る 見 通 しが つ い た こ と を 前 提 と して い る 。
し か し,同 時 に,EUは 過 渡 的 措 置 も含 め て 体 制 の 整 備 を 迫 ら れ,(i)市 場 統 合 で 保 証 さ れ て い る労 働 力 の 自 由 な 移 動 に つ い て,最 高7年 間 の 過 渡 的 な移 行 期 間 を 設 け る,(ii)農 家 に 対 す る 直 接 支 払 の 補 助 金 は 所 得 格 差 を 考 慮 し て,段 階 的 な ア プ ロ ー チ を取 る,(iii)拡 大 圏 を 前 提 に 特 定 多 数 決 制 の 政 策 領 域 を 拡 大 す る な どの 機 構 改 革 を 行 っ た 。(iii)の 機 構 改 革 の ニ ー ス 条 約 に つ い て は,ア イ ル ラ ン ドが 国民 投 票 で 批 准 を否 決 す る 一 幕 もあ っ た 。(iv)中 ・東 欧,バ ル ト 諸 国 の 一・部 の 国 で は,国 民 投 票 に よ る 批 准 の 結 果 待 ち と な っ て お り,加 盟 に至 る ハ ー ドル が 無 い 訳 で は な い 。
こ の う ち,10ヵ 国 を 迎 え 入 れ る た め の 機 構 改 革 はEUの 拡 大 に 不 可 欠 な 要 素 と して 特 筆 し た い 。2000年12月,ニ ー ス の 首 脳 会 議 で 決 っ た ニ ー ス 条 約 は ,2001年6月 の ア イ ル ラ ン ドの 国 民 投 票 で 否 決 さ れ た こ とか ら,条 約 成 立 に 赤 信 号 が 灯 る とい う シ ョ ッ クが 統 治 機 関 に 広 が っ た 。 通 貨 統 合,共 通 外 交 安 全 保 障 政 策 を柱 とす る 共 通 政 策 を 取 り決 め た マ ー ス トリ ヒ ト条 約 の 際 に も, デ ンマ ー ク が 国 民 投 票 で 批 准 を 否 決 した と い う前 例 が あ る 。 こ れ に 直 面 し て,EU首 脳 は 市 民 参 加 の 重 要 性 を明 確 に 認 識 し,2001年12月 の ベ ル ギ ー の ラ ー ケ ン宮 で の 首 脳 会 議 で,ユ ー ロ 官 僚
に依 存 しす ぎ た 点 を 反 省 し,市 民 に 開 か れ た ヨー ロ ッパ 統 合 の構 築 を 前 面 に打 ち 出 した 。 同 時 に,EU加 盟 国 が 現 在 の15ヵ 国 か ら一 挙 に25ヵ 国 加 盟 と い う こ と に な る と,EUと 加 盟 国 の権 限 の 配 分(subsidiarity)を 大 胆 か つ ダ イ ナ ミ ッ ク に 再 検 討 し,新 し いEUの 体 制 造 りが 焦 眉 の 急 と な り,ラ ー ケ ン の 首 脳 会 議 で,「 ヨー ロ ッパ の 将 来 に 関す る 協 議 会(convention)」 を 設 け, 汎 ヨー ロ ッパ の 未 来 に 向 け て の 総 討 議 を 開 始 した 。 オ ー ス ト リ ア の 哲 学 者,ク ー デ ン ホ ー フ ・カ
レ ル ギ ー 伯 が 「パ ン ・ヨー ロ ッパ 」 を提 唱 した1923年 か ら数 え て80年,欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 の 構 想 を ジ ャ ン ・モ ネ が 描 き,そ れ に基 づ い て シ ュ ー マ ン外 相 が 提 唱 した1950年 か ら凡 そ 半 世 紀 が 経 って い る 。
4商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6)
110ヵ 国 のEU加 盟 と その 課 題
1‑1中 ・東 欧 か らの 加 盟 希 求 の 動 き
第 二 次 大 戦 後,東 西 両 陣 営 が 北 大 西 洋 条 約 機 構1(NATO)と ワ ル シ ャ ワ 条 約 機 構 を 軸 に 対 決 が 続 い て い る 最 中,民 族 主 義 傾 向 の 強 い 東 欧 諸 国 で は 自由 化 を希 求 す る 動 き が 顕 在 化 し始 め て い た 。1953年 の ハ ン ガ リ ー の 反 ス タ ー リ ン暴 動,1956年 の ポ ー ラ ン ドの ボ ズ ナ ン の 民 主 化 要 求 の 暴 動,1968年 の チ ェ コ ス ロバ キ ア の 民 主 化 運 動 「プ ラ ハ の 春 」 な どが 例 に 挙 げ られ よ う。 い ず れ も ソ連 軍 の 戦 車 で 封 じ られ た が,1970年 代 か ら1980年 代 に か け て,ポ ー ラ ン ドで グ ダ ンス ク の 造 船 所 の 自主 管 理 労 働 組 合 「連 帯 」 が 職 場 の 待 遇 改 善 の 要 求 か ら次 第 に ス ト権,言 論 ・出 版 の
自由 な ど 自 由 化 を 希 求 す る とい う政 治 運 動 に 発 展 して い っ た 。
東 欧(旧 東欧)の 改 革 の 一 つ の モ デ ル と して の ハ ン ガ リー で は,1960年 代 中 期 か ら後 期 に か け て,内 政 と計 画 経 済 政 策 に変 革 が 起 き,計 画 指 導 体 制 が,間 接 管 理 型 の 統 制 シ ス テ ム に 取 っ て 代 わ られ た 。 社 会,政 治 の 目は 以 前 に は 生 産 そ の もの に 集 中 した が,社 会 的 政 治 的 な 改 革 が 描 く新 ら し い イ メー ジ は,経 済 成 長 に 重 点 を 置 き,従 っ て 消 費 と生 活 水 準 の 向 上 が 価 値 感 とな っ た(2)。
転 換 の 路 線 は,生 産 と 地 域 経 済(か つ て地域発 展 の中心 的要素 だ った)か らゆ る や か に,管 理,イ ン フ ラ の 整 備,生 活 条 件 の 改 善 へ と転 換 して い っ た 。 こ れ は,ハ ン ガ リ ー 型 モ デ ル と呼 ば れ る(3)。
こ の 時 期 の 経 済 構 造 は,重 工 業 化 さ れ,過 度 に 開 発 さ れ た都 市 部 と,工 業 化 を 基 軸 と しな が ら も 開 発 が 遅 れ た 農 村 地 帯 か ら成 っ て い た が,大 規 模 集 団 農 場 で の 生 産 の 多 様 化 と こ れ に 関 連 した 産 業 の 発 展 に よ っ て1970年 代 に 農 耕 地 域 の 拡 大 が 促 さ れ た 。
1970年 代 の ハ ン ガ リー は 地 方 都 市,特 に県 庁 所 在 地 の ダ イ ナ ミ ッ ク な 発 展 の10年 間 で,特 に 住 宅 建 設 とそ れ に 関 連 した イ ン フ ラ 整 備 が 特 徴 で,首 都 ブ タペ ス トに こ れ まで で 最 大 の 住 宅 団 地 が 建 設 され た の は こ の 時 期 で あ る。1980年 代 の 初 期 ま で に,政 府 は 経 済 成 長 を 持 続 す る に は 急 進 的 な 改 革 を 断 行 す る必 要 が あ る こ と を認 識 し た 。 国 際 貿 易 取 引 に 関 わ る 天 然 資 源 の ほ とん ど無 い ハ ン ガ リ ー は,中 小 企 業 に民 問 の 資 金 を投 入 して 育 成 す る 方 策 に 解 決 策 を見 い 出 し,1982年1 月 に小 規 模 の 企 業 に 個 人 の 参 入 を 認 め る 法 令 を施 行 し,民 営 化 を奨 励 し た 。 ハ ン ガ リー 政 府 は 繊 維 産 業 か ら食 料 雑 貨 店 に い た る まで,小 規 模 経 営 を 望 む 起 業 家 を支 援 し た(4)。一 方 で ハ ン ガ リ ー は,1987年4月 に,ECと 貿 易 ・経 済 協 力 協 定 に 向 け た 協 議iを開始 した 。
ECは1974年 に コ メ コ ン(東 欧の経 済相 互援助 会議i)諸 国 に 対 して,貿 易 協 定 の 締 結 を 呼 び か け て い くが,東 西 間 の 関 係 改 善 は1985年 に ソ 連 の 共 産 党 書 記 長 に ミハ イ ル ・ゴ ル バ チ ョ フ が 就 任 し て か ら大 き く動 き 出 す 。 ゴ ルバ チ ョフ 書 記 長 は,社 会 主 義 国 家 間 の 関 係 を取 り仕 切 る 原 則 で あ る 「ブ レ ジ ネ フ ・ ドク ト リ ン(主 権制 限論)」 を 放 棄 し,「 ヨ ー ロ ッパ 共 通 の 家 」 の 新 思 考 外 交 を 進 め た 。 こ の 新 思 考 外 交 で 東 西 間 の 和 解,東 欧 の 改 革 を 進 め,1988年6月 にECと コ メ コ ンの 問 に 相 互 承 認 を う た っ た 共 同 宣 言 が 発 表 さ れ た 。
そ の 結 果,東 欧(1989年 の 冷戦終 焉後 は中 ・東欧 と 自 ら名乗 り出す)諸 国 で 自 由 化 が 加 速 し,1989
EU拡 大 圏 と汎 ヨー ロ ッパ の 未 来5 年6月 に ポ ー ラ ン ドの 自 由 選 挙 で 「連 帯 」 が 大 勝 し,非 社 会 主 義 内 閣 が 誕 生 し た 。10月 に ハ ン ガ リ ー で 社 会 主 義 を 放 棄 す る 新 憲 法 が 採 択 さ れ,11月 の ベ ル リ ン の 壁 の 崩 壊 と 続 い た 。1990年 3月 に は,今 回EU加 盟 が 認 め ら れ た バ ル ト3国 の エ ス トニ ア,ラ ト ビ ア,リ ト ア ニ ア が 独 立 し た 。
一 方,西 側 で は,1989年7月 の パ リ の ア ル シ ュ 主 要 国 会 議 を 契 機 に,ポ ー ラ ン ド ・ハ ン ガ リ ー 経 済 再 建 支 援 計 画(PHARE‑PologneetHongrie:Acti。nsp・urlaReconversionEconomique),市 場 経 済 へ の 移 行 を 支 援 す る 欧 州 復 興 開 発 銀 行(EBRD)の 設 立 と 資 金 援 助,政 治 分 野 を 含 め た 包 括 的 支 援 の 欧 州 協 定(EuropeAgreement)を 通 じ て,中 ・東 欧 諸 国 の 自 由 化 支 援 を 行 っ て き て い る 。 公 的 支 援 を 含 め て,企 業 の 民 営 化,価 格 の 自 由 化,貿 易 ・外 国 為 替 制 度 の 改 革 な ど 一 連 の 市 場 経 済 へ の 移 行 に 伴 い,自 由 貿 易,直 接 投 資 が 活 発 と な り,中 ・東 欧 諸 国 の 経 済 の 活 発 化 に 大 き く貢 献 し て い る 。
1‑2直 接 投 資,民 営 化,加 盟 申 請
海 外 直 接 投 資 は 単 にEC,EUに 関 わ る だ け で な く,グ ロ ー バ ル 化,非 ロ ー カ ル化 の 世 界 規 模 の 経 済 活 動 に 大 き な イ ンパ ク トを与 え て きた 。 こ の 中 で 特 に 旧 東 欧 の 中 ・東 欧 諸 国 は,潜 在 的 な消 費 の 一 大 マ ー ケ ッ トで,ま た技 能 水 準 の 高 い 熟 練 労 働 力 が 存 在 し,更 に,比 較 的 低 い 労 働 コ ス ト で 雇 用 で き る こ とか らEC,EUの 企 業 に と っ て も魅 力 の あ る 市 場 とい え る 。 海 外 直 接 投 資 と は, 経 済 的,政 治 的 体 制 転 換 の 活 発 な プ ロ セ ス を 安 定 化 させ る 主 要 な マ ク ロ 経 済 の メ カ ニ ズ ム の 一 つ で あ り,ま た,東 西 間 の交 流 の 主 要 な 形 態 の 一 つ と見 な さ れ る(5)。
冷 戦 が 終 焉 し た1989年 以 降,中 ・東 欧 諸 国 は,経 済 の 発 展 と世 界 経 済 へ の 統 合,特 に 技 術, 貿 易,経 営 の ノ ウ ハ ウ に 関 して,直 接 投 資 が 果 す 役 割 を 認 識 し,積 極 的 に外 国 か ら の投 資 を 受 け 入 れ る 政 策 を 進 め て き た 。 欧 州 協 定 が 初 め て 結 ば れ た1991年 以 降,中 ・東 欧 諸 国 に 向 け たEC 企 業 か ら の 直 接 投 資 が 活 発 と な り,特 に1994年 に は,こ れ ら 中 ・東 欧 諸 国 は,EU加 盟 を 目指
し て 民 営 化 政 策 を 進 め た 結 果,合 併 ・買 収(M&A)を 中 心 と す る 直 接 投 資 が 急 増 し た 。1993年 に は,チ ェ コ,ポ ー ラ ン ド,ハ ン ガ リ ー の3力 国 だ け で,中 ・東 欧 諸 国(バ ル ト3国 も含 む)向 け の 海 外 直 接 投 資 額 は 全 体 の4分 の3以 上 で,1990年 代 の 前 半 の 段 階 で は,海 外 の 投 資 家 は ハ ン ガ リー を最 も有 望 な 投 資 先 き と考 え て い た(6)とい う見 方 も あ る。
一 方 で
,EC(EU設 立条 約 は1993年11月 に発 効,ECか らEUと な る)は1991年12月,ポ ー ラ ン ド,ハ ン ガ リー,チ ェ コ ス ロ バ キ ア(z)と欧 州 協 定 を結 ん だ 結 果,鉄 鋼,繊 維 製 品 とい っ た 一 部 の セ ンシ テ ィ ブ な 部 門 を 除 い て 工 業 製 品 に対 す る 関 税 が 撤 廃 され た 。 こ れ に よ り漸 次,貿 易 の 数 量 制 限 が 取 り払 わ れ て い き,EUと 中 ・東 欧 諸 国 の 貿 易 が 拡 大 し た。 た だ,不 況 を 理 由 に セ ン シ テ ィ ブ 部 門 の 製 品 の 数 量 制 限 と,自 由 化 か ら除 外 さ れ た 農 産 物 に 関 して,EU側 が 輸 入 規 制 を 強 化 す る 挙 に 出 た た め,EUと 中 ・東 欧 諸 国 の 間 で 貿 易 摩 擦 が 深 刻 化 し た 。 こ の た め,EUは1993 年6月 の コペ ンハ ー ゲ ンの 首 脳 会 議 で,セ ン シ テ ィ ブ 品 目 に 対 す る 関 税 撤 廃 の2年 間 の 前 倒 し実
6商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6)
施 と 農 産 物 の 輸 入 関 税 の 引 き 下 げ の 加 速 化 を 決 め た(8)。
こ う し た 中 で,中 ・東 欧 諸 国 は,ハ ン ガ リ ー の1994年3月31日 の 加 盟 申 請 が 発 端 と な り,堰 を 切 っ た よ う に 加 盟 を 申 請 し た 。1996年6月10日 付 の ス ロ ベ ニ ア に 至 る ま で,ポ ー ラ ン ド, ル ー マ ニ ア,ス ロ バ キ ア,ラ ト ビ ア,エ ス ト ニ ア,リ トア ニ ア,ブ ル ガ リ ア,チ ェ コ の10ヵ 国 がEU加 盟 を 申 請 し た 。 こ の 他 に,ト ル コ が1987年4月14日,キ プ ロ ス,マ ル タ が1990年7 月 に 申 請 し て い る 。EUは1997年12月 の ル ク セ ン ブ ル ク の 首 脳 会 議 で,EU拡 大 の 進 め 方 に つ い て 基 本 的 な 合 意 に 達 し,1998年3月31日 か ら,ハ ン ガ リ ー,チ ェ コ,ポ ー ラ ン ド,ス ロ ベ ニ ァ,エ ス ト ニ ア,キ プ ロ ス の6ヵ 国 と 加 盟 交 渉 を 開 始 し た 。 ま た,EUは2000年2月15日 か
図1‑2ECgEUの 歩 み とEU拡 大 圏(2003年3月30日 現 在)
麟嚢 蒲襯
5畠ぎ醐嬢態③
趨軸遡難
灘 繕 灘 鷺 騰 態
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灘 顯
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︑欝 鱗 灘 醐
鷺讐塗膣駅・震'ウr{'葺
曲哲扉ザ葺爵q鐸呪鼻
麟
鼻唖ξ馨穐葦孝宛p蕪 熱,
鍵
EU拡 大 の 歩 み
1958年EC原 加 盟6力 国
① ベ ル ギ ー
② フ ラ ン ス
③(西)ド イ ツ
④ イ タ リ ア
⑤ ル ク セ ン ブ ル ク
⑥ オ ラ ン ダ
1973年EC9ヵ 国
⑦ デ ン マ ー ク
⑧ ア イ ル ラ ン ド
⑨ 英 国
1981年 匠C10力 国
⑩ ギ リ シ ャ
1986年EC12ヵ 国
⑪ ポ ル トガ ル
⑫ ス ペ イ ン
1995年EU15ヵ 国
⑬ オ ー ス ト リ ア
⑭ ブ イ ン ラ ン ド
⑮ ス ウ ェ ー デ ン
加 盟 予 定 国
⑯ ブ ル ガ リ ア
⑰ キ プ ロ ス
⑱ チ ェ コ 共 和 国
⑲ ハ ン ガ リ ー
⑳ マ ル タ
⑳ ポ ー ラ ン ド
㊧ ル ー マ ニ ア
㊧ ス ロ バ キ ア
⑳ ス ロ ベ ニ ア
㊧ エ ス ト ニ ア
⑳ ラ ト ビ ア
⑳ リ ト ア ニ ア
(ブルガ リア,ル ー マニ ア以外 は 2004年 加 盟の見込み)
加 盟 候 補 国
⑳ トル コ
EU拡 大 圏 と汎 ヨー ロ ッパ の 未 来7 ら,ブ ル ガ リ ア,ル ー マ ニ ア,ス ロ バ キ ア,ラ ト ビ ア,リ ト ア ニ ア,マ ル タ の6ヵ 国 と 交 渉 を 開 始 し(図1‑2),ま たEUは1999年 の ヘ ル シ ン キ の 首 脳 会 議 で,ト ル コ を 正 式 に 加 盟 候 補 国 と 決 め た 。 加 盟 の 条 件 は,民 主 主 義,法 の 支 配 と い っ た 政 治 基 準,機 能 す る 市 場 経 済 と い っ た 経 済 基 準 な ど を 取 り決 め た コ ペ ン ハ ー ゲ ン 基 準(Copenhagencriteria)を 満 た さ ね ば な ら な い(9)。 こ の 中 に はS将 来 ユ ー ロ に 参 加 す る 場 合 に 必 要 な 加 盟 国 と し て の 義 務 を 果 す 能 力,ま た,政 治,経 済 基 準 に 関 わ る 行 政,司 法 制 度 の 整 備 も 含 ま れ る 。 行 政,法 体 制 の 整 備 と し て は,人 の 自 由 な 移 動, 共 通 外 交 安 全 保 障 政 策,農 業 な ど31項 目 に わ た っ て 審 査,交 渉 が 行 な わ れ て き た(lo)。
五 コペ ンハ ーゲ ンの加盟 正式承認 と迎 え入 れるEUの 課題
皿一1市 場 経 済 へ 着 実 に 進 展 一 欧 州 委 員 会 が 加 盟 承 認 を勧 告
旧 ソ 連 ・東 欧 諸 国 の 市 場 経 済 へ の 移 行 を 支 援 して い る 欧 州 復 興 開 発 銀 行(EBRD‑EuropeanBank forReconstructionandDevelopment)は,2000年 版 の 年 次 報 告 書 で,中 ・東 欧,バ ル ト諸 国(11)の中 の 数 ヵ国 で は,市 場 経 済 に 向 け て,と りわ け民 営 化 と 自 由 化 の 分 野 で 著 し い 進 展 が み られ,特 に 小 規 模 企 業 の 民 営 化 で 先 進 工 業 国 水 準 の4プ ラス が 多 くみ られ た と して コペ ンハ ー ゲ ンの 経 済 基 準 を 達 成 しつ つ あ る こ と を伺 わ せ て い る 俵II‑1‑aを 参照)。
ま たEBRDの2002年 版 の 年 次 報 告 書 で は,EU加 盟 交 渉 国 で 市 場 経 済 移 行 へ の 支 援 体 制 が 着 実 に 業 績 を達 成 しつ つ あ り,ま た 特 に 財 政 金 融 の 分 野 で市 場 経 済 へ の 移 行 が 着 実 に 進 展 し た と し て い る 。 同 時 に対 外 直 接 投 資 が 経 済 成 長 の 下 支 え と し て 大 き く貢 献 し,中 ・東 欧,バ ル ト諸 国 (ブルガ リア,ル ーマニ アを除 く)で は2002年 に は 過 去 最 高 の310億 ドル の 対 外 直 接 投 資 が 見 込 まれ て い る 。
こ れ ら地 域 へ の 国 際 資 本 の 流 入 は,国 内 の 財 政 制 度 が 投 資 家 を支 援 で き る力 が つ い て い な い と こ ろ か ら,市 場 経 済 化 に と っ て 重 要 で,潜 在 的 な 成 長 の 実 現 に 大 き く貢 献 で き る 。 近 年 で は, 中 ・東 欧 諸 国 向 け の ヨー ロ ッパ 企 業 の 直 接 投 資 が 拡 大 して い る が,日 本 の 自 動 車 関 連 メ ー カ ー
も,チ ェ コ,ハ ン ガ リ ー,ポ ー ラ ン ドへ の 進 出 が 相 次 い で い る と伝 え られ る。 中 ・東 欧 へ の投 資 は,自 動 車 を始 め とす る 製 造 業 が 中心 で,ト ヨ タ 自動 車 とフ ラ ン ス の プ ジ ョー ・シ トロ ー エ ン グ ル ー プ は2001年 末,チ ェ コ に合 併 の 小 型 工 場 を 新 設 す る方 針 を 決 め た(12)。ま た,ド イ ッ の ア ウ デ ィ は ハ ン ガ リ ー 工 場 に 凡 そ1億6000万 ドル を 追 加 投 資,ス ズ キ の ハ ン ガ リ ー 現 地 法 人,マ
ジ ャー ル ・ス ズ キ も追 加 投 資 を 決 め た 。 そ れ に よ る と,チ ェ コ,ポ ー ラ ン ド,ハ ン ガ リ ー な ど 中 ・東 欧8ヵ 国 のEU加 盟 後 は,経 済 制 度 がEU基 準 に 統 一 さ れ る う え,向 う10年 程 度 は 賃 金 水 準 が 現 在 のEU圏 を下 回 る 見 通 しで,外 国 企 業 が 相 次 い で 拠 点 を 設 け て い る と伝 え られ た 。
こ う し て 中 ・東 欧,バ ル ト諸 国 がEU加 盟 に 向 け て 鋭 意 基 準 達 成 の 努 力 を重 ね る 中 で,欧 州 委 員 会 は2002年10月9日,加 盟 交 渉10ヵ 国 は加 盟 の 条 件 で あ る コ ペ ンハ ー ゲ ンの 政 治 基 準 を 達 成 し,ま た 経 済 基 準 と法,行 政 の 整 備 を 年 内 に達 成 で き る見 通 しで あ る と して,2004年 初 め に 加 盟 を 認 め る よ う に 勧 告 した(13)。欧 州 委 員 会 の 勧 告 は ま た,(i)キ プ ロ ス は,包 括 的 解 決 を 基
8 商 経 論 叢 第39巻 第!号(2003.6)
表II‑1‑a中 ・東 欧 ・バ ル ト諸 国 の 市 場 経 済 進 捗 状 況 (各項 目の上 記,中 記,下 記 部 分 は2002,2001,2000年 の順)
i
入ロ GDPに 占 企業 の民営化 統 治,企 価格 貿 易 ・外 競 争 銀 行改革証 券市場, イ ン!
2001年中期 める民問部 業 の リス の 自 国為替制 と金 利 の ノ ンバ ン ク フ ラ(100万) 門の害拾 大規模 小 企業 ト ラ 由化 度 政 策 自由化 金融機関 整備
70 ξ 一 4一 2+ 3 4+ 2+ 3+ L+ 3一
ブ ル ガ リア 8.1 7Q 4一 4 2+ 3 4+ 2+ 3 2
70 4一 4一 )+ 3 4+ 2+ 3 2
$0 4 4+ 3+ 3 4+ 3 4一 3 3
チ ェ コ 10.3 80 4 4+ 3+ 3 4+ 3 4一 3
so 4 4+ 3+ 3 4+ 3 3+ 3
80 4 4+ 3+ 3 4+ 3一 4一 3+ 3+
エ ス トニ ア 1.4 75 4 4+ 3+ 3 4+ 3 4一 3
i 75 4 4+ 3 3 4+ 3一 4一 3
so 4 4+ 3幸 3+ 4+ 3 4 4 4
ハ ン ガ リ ー 10.0 80 4 4+ 3+ 3+ 4+ 3 4 4一
L
8Q 4 4+ 3+ 3+ 4+ 3 4 41 I
l 70 3+ 4+ 3一 3 4+ 2+ 4 3 3
iラ ト ビ ア 2.4 b5 3 4+ 3一 3 4+ 2+ 3+ 2+
:
65 3 4+ .一 3 4+ 2+ 3 2+75 4一 4+ 3 3 4+ 3 3 3 3一
リ トア ニ ア 3.7 70 3← 4+ 3一 3 4+ 3 3 3
70 3 4+ 3一 3 4 3一 3 3
75 3+ 4+ 3+ 3+ 4+ 3 3+i4一 4一
iポ ー ラ ン ド 38.7 75 3+ 4+ 3+ 3+ 4+ 3 3+ 4
ー
1 70 3+ 4+ 3 3+ 4+ 3 3+ 4一
一
li
65 3+ 4一 2 3+ 4 2+ 3 2 3レレー マ ニ ア 22.3 65 3+ 4一 2 3+ 4 2+ 1 3 2
ー
ー「
60 3 4 2 3 4 2+ 3 2
1 80 4 4+ 3 3 4+ 3 3+ 2+ Z+
ス ロ バ キ ア 5.4 80 4 4+ 3 3 4+ 3 3+2+1
7J 4 4+ 3 3 4+ 3 3 2+
65 3 4+ 3 3+ 4+ 3 3+ 3 3+
ス ロ ベ ニ ア1 Z.0 65 3 4+ 3一 3+ 4+ 3一 3+ 3
【
ー 55 3 4+ 3一 3+ 4+ 3 3+ 1
i..1 ↓ i
出 所:EB㎜(EuropeanBankfarReconstructionandDevelopment)TransitionReport2002,2001,2000年 版 か ら作 成 (注)4+が 何 れ も 最 高 で,先 進 工 業 国,又 は 国 際 的 水 準,例 え ば,民 営 化,リ ス ト ラ の 場 合:
大 娩 模 民 営 化2一 包 括 的 民 営 化 実 施 の 準 備 整 う3‑25%tt..11.の 民 営 化4‑50%以 上 の 民 営 化4+‑75%以 上 の 民 営 化,先 進 工 業 国 の 水 準
小 規 模 民 営 化3一 包 括 的 民 営 化 の 実 施4一 民 営 化 完 了,所 有 権 移 転 が 自 由4+一 先 進 工 業 国 の 水 準,小 企 業 の 国 有 な し
輔 ・蝶 のリストラ2一 適 度 の 緊 縮 金 融 ・補 助 金 の 政 策,し か し 破 産 制 度 化 の 進 展 進 ま ず3一 予 算 を 引 き 締 め,効 果 的 な 企 業 統 治 の 措 置 が と ら れ る4一 企 業 統 治 の 改 善4+一 企 業 統 治 が 先 進 工 業 国 の 水 準
EU拡 大 圏 と汎 ヨー ロ ッパ の未来9 礎 に 再 統 一 さ れ た キ プ ロ ス と して 加 盟 す る こ と を 希 望 す る,(ii)ブ ル ガ リ ア と ル ー マ ニ ア は 2007年 に 加 盟 で き る よ う支 援二す る,(iii)支 …援 は,司 法,行 政 改 革 を 中 心 に 進 め る,(iv)ト ル コ は 戦 時 以 外 の 死 刑 を 廃 止,ま た,ト ル コ語 以 外 の 言 語 に よ る 放 送,教 育 を 認 め る な ど コペ ン ハ ー ゲ ンの 政 治 基 準 に 向 け て 重 要 な進 展 が み られ る が 未 だ 基 準 を 満 た し て い な い 点 に も言 及 し
た 。 トル コ につ い て は加 盟 交 渉 開 始 の 時 期 な ど に は触 れ な か っ た 。
欧 州 委 員 会 の 勧 告 は,民 主 主 義,法 の 支 配,人 権,少 数 民 族 の 尊 重 と保 護 の う ち,人 権 に 関 わ る 項 目で,性 の 平 等 を 保 証 す る行 政 の枠 組 み が 強 化 され,ま た 少 数 民 族 の 保 護 に つ い て,ロ マ 人 樋 称 ジ プ シー)コ ミ ュ ニ テ ィ に 向 け て 改 善 の 行 動 計 画 が 実 施 に移 さ れ て い る こ と に 着 目 し て い る 。 ロ マ 人 は貧 富 の 格 差 の 象 徴 と も い え る ほ ど貧 困 化 が 顕 著 で,ま た 失 業 率 も高 く,社 会 へ の 統 合 が 課 題 と な っ て い る 。
経 済 基 準 に つ い て,欧 州 委 員 会 の勧 告 は,1997年 一2001年 の5年 間 に,殆 ん どの 加 盟 交 渉 国 で イ ン フ レが 下 降 し,経 済 成 長 率 は 平 均 し て 現 加 盟 国 平 均 の2.6%を 上 回 り,1人 当 り のGDP が 購 買 力 基 準 で2000年 にEU平 均 の38.5%だ っ た の が2001年 に は39.3%へ 上 昇 した 点 に 言 及
して い る 。 一 方 で,全 加 盟 交 渉 国 の 政 府 の 財 政 赤 字 は,景 気 の 低 迷 の た め 平 均 し て3.2%か ら 3.8%へ 上 昇 した こ と,貿 易 と経 常 収 支 の 赤 字 は,多 くの 国 で 高 止 ま りの 状 態 に あ る が,や り く
表 皿一1‑b中 ・東 欧 ・バ ル ト諸 国 の 経 済 指 標 主要指数
国名
2001年 の 実 質GDP経 済 復 興 度 (1989=100)
実質GDPの 成長率の見通 し (%)
イ ン フ レ率 (%) 01/02
対GDPの 経 常 収 支 の 比 率(%) (2002年予測)
対 内 直 接 投 資 (単位100万 ドル)
政 府 収 入
(対GDP%)
(2001年 推定) (2002年 予測) 2001年 推 定 2002年 予 測
チ ェ コ 106
(95) 3.3 2.5 4.7/2.3 一3 .6 4,820 111 4a.3
エ ス トニ ァ 90 5.0 4.0 5.8/3.8 一6 .7 343 sao 38.2
ハ ン ガ リ ー 112
(99) 3.8 4.0 9.2/4.9 一2 .4 2,103 2,559 ・ ・
ラ ト ビ ア 75 7.7 4.0 2.5/2.5 一8 .5 170 250 35.7
リ ト ア ニ ア 72 5.9 5.2 1.3/0.9 一5 .8 435 395 ・ ・
ポ ー ラ ン ド 129
(122) 1.0 1.0 5.5/2.1 一3 .8 6,502 5,000 39.2 ス ロバ キ ア 110
(loo) 3.3 3.5 7.3/3.1 一9 .1 1,460 4,000 43.5
ス ロ ベ ニ ァ 121
(109) 3.0 2.7 8.4/7.4 1.2 338 553 43.1
中 ・東 欧 ・
バ ル ト諸 国 113 2.5 2.3 5.5/2.3・X1
5.5/3.2・X2
一4 .7 17,500 22,027 38.9
ブ ル ガ リア 80
(67} 4.0 4.0 7.4/6.1 一5 .9 641 800 36.6
ル ー マ ニ ア 84
(76) 5.3 3.5 34.5/22.7 一5 .0 1,154 1,200 31.2
出 所:EBRD(EuropeanBankforReconstructionandDevelopment)TransitionReport2002
注:経 済 復 興 度 の()は1999年 の 統 計 。 イ ン フ レ 率 の ※1は 中 央 値,※2は 相 加 平 均 値 。
10商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6)
り 可 能 な 範 囲 内 に あ る と し て 全 体 と し て 機 能 す る 市 場 経 済 に 向 け て 進 展 し て い る と の 認 識 を 示 し た(表II‐1bを 参 照)
∬210ヵ 国 を 迎 え るEUの 課 題
EU加 盟 国 首 脳 は2002年10月24‑25日 の ブ リ ュ ッ セ ル の 会 議 で,欧 州 委 員 会 の 加 盟 勧 告 を 承 認 し,12月 の コ ペ ン ハ ー ゲ ンの 首 脳 会 議 で 正 式 に 決 定 す る こ と を 決 め た 。 コ ペ ンハ0ゲ ン の 首 脳 会 議 まで 正 式 な 決 定 を 先 き送 り した の は,キ プ ロ ス 問 題 の 包 括 的 解 決 を 見 守 る こ と と,共 通 農 業 政 策 に 基 づ く新 規 加 盟 国 向 け の 補 助 金 問 題 でEUの 共 通 の 立 場 を 固 め る の が 主 な狙 い とみ ら れ る。
こ の 項 で は 主 と して 迎 え入 れ 側 のEUの 論 点 に触 れ る。
(1)キ プ ロ ス 紛 争 と トル コ
キ プ ロ ス は ギ リ シ ャ系 住 民 の キ プ ロ ス 共 和 国 と トル コ だ け が 承 認 し て い る,ト ル コ系 住 民 の 北 キ プ ロ ス 共 和 国 に2分 さ れ て い る 。EUは キ プ ロ ス の 加 盟 を認 め る に あ た り,ギ リ シ ャ系,ト ル コ系 住 民 の 双 方 の 代 表 に 対 し て,加 盟 交 渉 が2002年 の 年 内 に完 成 す る 前 に 和 解 に 達 す る よ う に 求 め た 。EUは,国 連 安 全 保 障 理 事 会 の 決 議 に 沿 っ て 事 務 総 長 に よ る 解 決 の 努 力 を 支 持 して い る 。 和 解 に達 し な い場 合 は,解 決 を 加 盟 の 条 件 に し な い こ と を 決 め た1999年 の ヘ ル シ ン キ の 首 脳 会 議 の 決 定 に 基 づ く こ と に して い る 。
と こ ろ で,ト ル コで は2002年11月 の 総 選 挙 で,野 党 の 親 イ ス ラ ム 政 党,公 正 発 展 党(Justice andDevelopmentParty)が 第1党 とな り,初 め て 親 イ ス ラ ム 政 党 に よ る単 独 政 権 が 発 足 し た。 トル コ はEUの 新 規 加 盟 申 請 国 の 中 で は 一 番 早 い1987年4月14日 に加 盟 申請 し,そ の 後 も加 盟 の 方 針 に 変 更 な く推 移 して き て い る 。1999年 の ヘ ル シ ン キ で の 首 脳 会 議 で 正 式 にEUの 加 盟 候 補 国 に 認 め られ て お り,路 線 に 変 更 は な い と み られ る 。 む し ろ,9・11の 米 同 時 テ ロ 以 降 の 世 界 情 勢 か ら して トル コ のEU加 盟 を 望 む 声 が 高 ま る とみ ら れ た。
紛 争 の 包 括 的 な 合 意 に は 時 間 が か か る 見 通 しで,国 連 の 特 別 交 渉 担 当 官 は,少 な く と も解 決 の 枠 組 み 協 定 に だ け で も合 意 に 達 す る よ う2003年2月28日 を 次 ぎ の 最 終 期 限 に 設 定 し た(14)。
2003年1月 か らEU議 長 国 と な っ た ギ リ シ ャの 全 ギ リ シ ャ社 会 主 義 運 動(PASOK)の シ ミテ ィ ス 首 相 は,ト ル コ に 対 す る 警 戒 感 を 解 き,2004年5月 ア テ ネ の ア ク ロ ポ リ ス で 行 な わ れ る 予 定 の 加 盟 条 約 調 印 式 で は キ プ ロ ス は統 一 キ プ ロ ス と な る よ う 鋭 意 努 力 中 と伝 え ら れ る(15)(そ の後,3 月11日,国 連 の アナ ン事務総 長が示 した和 平案 は実 らず南北 キ プロスの統合交渉 は決裂 と伝 え られ た)。
(2)貿 易 の 課 題
欧 州 委 員 会 の 勧 告 で は,EU側 が 必 要 に応 じ て 一 定 の 経 済 の 保 護 措 置 が とれ る こ と に な っ て い る。 貿 易 の 自 由 化 に つ い て,EUは グ ロ ー バ ル化 が 貿 易 の 自 由 化 を も た ら し,ガ ッ トがWTOへ 発 展 しEUに 対 す る 一 層 の 貿 易 の 自 由 化 を求 め る 風 当 りが 強 ま る 中,EUは 全 体 と し て 自 由 化 の 流 れ の 中 に あ る。 と は い え,EUは1990年 代 の 初 め に,現 加 盟 交 渉 国 と工 業 製 品 に 関 す る 自 由
EU拡 大圏 と汎 ヨー ロ ッパの未来11 貿 易 地 域 の 創 出 を め ざ した 欧 州 協 定 を 結 ん だ 際 に は,石 炭,鉄 鋼 とい っ た セ ン シ テ ィ ブ な 品 目 と
農 産 物 に つ い て は 例 外 と して 輸 入 制 限 措 置 を と っ た 経 緯 が あ る(16)。中 ・東 欧,バ ル ト諸 国 の 農 業 就 労 者 や 低 所 得 者 層 がEU加 盟 に よ っ て 得 る 利 益 は 極 め て 低 く,EU加 盟 の 支 持 率 は 比 較 的 低 い(17)とい う面 もあ る 。
と は い え,貿 易 はEU加 盟 国,中 ・東 欧 諸 国 の 双 方 に と っ て 利 益 で,欧 州 委 員 会 統 計 に よ る と,EU加 盟 予 定 の 中 ・東 欧,バ ル トな ど9ヵ 国(ブ ル ガ リァの デー ターな し)の1997年 のEU向 け 輸 出 は 平 均 で54.1%,EUか ら の 輸 入 は,55.4%,EU向 け 輸 出 で は ハ ン ガ リ ー が71.2%, ポ ー ラ ン ドが64.2%,ス ロベ ニ ア が63.6%と 中 ・東 欧 の 貿 易 はEU依 存 度 が 高 い 。
2004年 に加 盟 が 見 込 まれ る10ヵ 国 は,一 定 期 間,セ ー フ ガ ー ドの 対 象 に な る とみ ら れ る が, 同 時 に 今 後 はEUの 貿 易 政 策 に 則 っ た 対 応 を 迫 ら れ る こ と に な ろ う 。EUの 貿 易 政 策 は 開 放 と保 護 の 混 合 で,バ ナ ナ戦 争 の 例 に み られ る ア メ リ カ との 貿 易 摩 擦 も含 め て 新 規 加 盟 国 と し て グ ロ ー バ ル 政 策 へ の 参 加 を 求 め られ る こ と に な ろ う。EUは バ ナ ナ の 輸 入 に つ い て は,複 雑 な 割 り当 て,関 税 を課 し,ま た 許 可 制 と した こ とか ら,中 南 米 原 産 の バ ナ ナ の 流 通 業 者 の 多 い ア メ リ カ が WTOに 提 訴 し,1998年,WTOはEUの 取 り決 め は 違 法 と裁 定 した ケ ー ス が あ る(18)。鉄 鋼 品 目 の 問 題 で も,ア メ リ カ との 間 に 対 立 点 が あ る 。
(3)労 働 力 の 移 動 に 移 行 期 間
10ヵ 国 の 一 括 加 盟 に よ る 経 済 的 イ ンパ ク トを 緩 和 し,順 調 な ス タ ー トを 切 りた いEUは,加 盟 国 との 合 意 の 基 に,移 行 の た め の 暫 定 的 な 措 置 を取 り決 め た 。1つ は 労 働 力 の 自 由 な 移 動 に 移 行 期 間 が 設 け られ た 。 東 西 両 ヨー ロ ッパ 間 の 賃 金 格 差 に よ っ て,西 側 の 労 働 市 場 は 中 ・東 欧 諸 国 の 労 働 者 に と っ て 大 きな 魅 力 で あ る 。
ドイ ツSオ ー ス トリア に は,中 ・東 欧7ヵ 国,バ ル ト3国 か ら西 ヨー ロ ッパ に 移 動 す る 人 々 の 80%が 流 入 して い る(19)とこ ろ か ら,両 国 は,自 由 な 移 動 に よ る 労 働 市 場 が 撹 乱 さ れ る の で は な い か と い う懸 念 が 強 い 。 調 査 に よ る と,中 ・東 欧,バ ル ト10ヵ 国 か らEUに 流 入 し居 住 す る 移 民 の 数 は,1998年 の85万 人 か ら増 え 続 け,労 働 力 移 動 が 自 由 化 さ れ た 後 の30年 後 に ピ ー ク に 達 し,390万 人 に な る と予 測 さ れ て い る(20)。
労 働 力 移 動 の 問 題 に つ い て は,ド イ ツ 財 務 省 の 中 ・東 欧 加 盟 問 題 担 当 官 は,ド イ ツ 人 が 失 業 す る な ど ドイ ツ の 労 働 市 場 に 悪 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る と し て 懸 念 を 表 明 し た(21)。(i)建 設 業,農 業 分 野 で 働 く 中 ・東 欧 出 身 の 非 熟 練 労 働 者,(ii)ポ ー ラ ン ド,チ ェ コ な ど 国 境 周 辺 か ら 通 勤 し て くる 出稼 ぎ労 働 者 が 急 増 し,加 盟 実 現 か ら向 う20年 間 に,200‑400万 人 の 労 働 者 が ド イ ツ に流 入 す る もの と予 測 さ れ る と した 。 この た め,加 盟7年 間 は 労 働 力 の 流 入 を制 限 す る 取 り 決 め を 結 ぶ 方 針 を 明 ら か に した 。 体 制 転 換 し た 旧 共 産 圏 諸 国 のEU加 盟 は 初 め て と な る 訳 で, 中 ・東 欧 と隣 接 す る ドイ ツ,オ ー ス トリ ア で は 受 け 入 れ 側 の 大 き な課 題 に 浮 上 し て い る 。
2000年 末 ドイ ツ の シ ュ レ ー ダ ー 首 相 が 労 働 力 移 動 の 自 由 化 ま で に7年 間 の 移 行 期 間 を 設 け る よ う 提 案 し,こ れ が 導 火 線 と な っ てEU内 部 で 白 熱 し た 論 議 が 交 わ さ れ た 。 欧 州 委 員 会
12商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6)
は,2001年3月,人 の 移 動,居 住 と人 の 労 働 市 場 へ の 参 入 の 自 由 と は 区 別 す べ き で あ る と い う 見 解 を示 し た が 受 け 入 れ ら れ ず,EU議 長 国 の ス ウ ェ ー デ ン は,5月10日,暫 定 期 間 を2年,3 年 間 延 伸 を 可 能 と し,更 に2年 間 の 延 伸 を 可 能 に す る と い う 妥 協 案 を提 示 し た(22)。こ の 提 案
は,5月14日 の 一 般 理 事 会 で 否 決 され た が,7年 間 を 超 え な い 暫 定 の 移 行 期 間 を 設 け,EUと 加 盟 交 渉 国 の 間 で,2国 間 協 定 を結 ぶ 道 を 開 い た 。 オ ラ ン ダ,ス ペ イ ン は 労 働 力 の 自 由 な移 動 に 賛 成 の 立 場 に 立 っ た 。 労 働 移 動 の 暫 定 期 間 の 問 題 を 相 互 に 異 な る 交 渉 の 対 象(チ ャプ ター)の 問 に 関 連 づ け る と,ア キ ・コ ミュ ノ テ ー ル に基 づ く交 渉 の 微 妙 な バ ラ ンス を 崩 す の で は な い か と懸 念 す る 向 き も あ っ た 。 ま た,ポ ー ラ ン ド,チ ェ コ か ら こ の 件 で 二 流 国 扱 い で 差 別 待 遇 との 声 が 上 が っ た 。
と は い え,筆 者 が2002年3月,ブ タペ ス トで ハ ン ガ リ ー の 加 盟 交 渉 の 責 任 者 と 会 い,こ の 問 題 を質 した と こ ろ,当 初 は3年 間 の 自粛 期 間 を 設 け,2年 間 延 伸 で き,更 に 情 勢 次 第 で は,2年 追 加 延 伸 が 可 能 と い う最 高7年 間 の 移 行 期 間 を設 け た2国 間 協 定 を ドイ ツ,オ0ス トリ ア と結 ん だ こ と を 明 らか に し た 。
∬‑3共 通 農 業 政 策 と新 規 加 盟
2007年 に 加 盟 が 見 込 ま れ る ブ ル ガ リ ア,ル ー マ ニ ア を含 め,中 ・東 欧 ・バ ル トの 加 盟 交 渉 国 で あ る ハ ン ガ リー,チ ェ コ,ポ ー ラ ン ド,ス ロベ ニ ア,ス ロ バ キ ア,エ ス トニ ア,ラ ト ビ ア,リ
トア ニ ア の10ヵ 国 で は 農 業 は 主 要 産 業 の1つ で,国 内 総 生 産 で は7%弱(EUで は1.6%)を 占 め,農 業 部 門 の 就 労 人 口 は21.5%,EUは5%で あ る(表II‑一一3‑一一aを参照)
体 制 転 換 の 当 初 は,農 業 部 門 で の 実 績 は 低 く,1990年 以 前 の 中 央 計 画 経 済 に よ っ て 課 さ れ た 歪 み が 重 くの しか か り,こ う し た 歪 み を 取 り除 く政 策 が 実 施 に 移 さ れ て は 来 た も の の,既 得 権 益,失 業 の 恐 れ,補 助 金 の 関 係 で 改 革 は 緩 慢 で あ っ た 。
しか し,民 営 化,自 由 化 を 支 持 す る 政 策 は 全 体 と し て は 農 業 部 門 に プ ラ ス に 作 用 し,土 地 改 革,特 に 集 団 的 所 有 だ っ た 土 地 を 旧 地 主 へ 返 還 し,十 地 の 私 有 化 を 進 め る改 革 と 農 産 物 価 格 の 自 由 化 は プ ラ ス の 効 果 を も た ら した(23)。 しか し,同 時 に,こ う し た 政 策 は,関 連 価 格 の 変 動,貿 易 条 件 の 変 動 に よ っ て 一 時 的 に 逆 効 果 を 農 業 に も た らす こ と も 有 り得 る の で あ る 。 体 制 転 換 時
に,生 産 が 激 減 し た の は こ れ で 説 明 で き る と さ れ る。
長 期 的 に み た 場 合,土 地 の 個 入 所 有 の 度 合 が 高 け れ ば 高 い ほ ど,生 産 高 は 増 え,生 産 性 も 向 上 す る 。 農 産 物 の 貿 易 を み る と,OECD(経 済 協力 開発 機構)諸 国 か らの 輸 入 が,OECD向 け の 輸 出 よ り大 巾 に 上 回 り,貿 易 赤 字 が 増 え て い る。 こ れ はOECD側 の 輸 入 抑 制 措 置 に も よ る が,そ れ は ほ ん の1つ の 要 因 に過 ぎ な い 。 体 制 転 換 した 中 ・東 欧 諸 国 の 何 ヵ国 で は,農 家 に 対 す る支 援 策 はEUレ ベ ル か そ れ を上 回 っ て い る が この 問 題 の 本 質 は,改 革 が 充 分 で な い た め,農 業 の 生 産 性 が 低 く,こ れ が 肚界 の 他 の 国 との 貿 易 の 統 合 を 阻 害 し て い る 大 き な 要 因 で あ る('L4?。(表II‑3b 参照)。
EU拡 大 圏 と汎 ヨ ー ロ ッパ の 未 来13 表 五一3‑a中 ・東 欧 ・バ ル ト諸 国 の 農 業 の特 徴 とEUと の 比 較
国 名 国内総生産 に 占め る農業の割 合 雇用全体 に占める農業就労率 総面積 に 占め る農耕面積
ポ ー ラ ン ド 3.8{%) 1.8.1(%) 58.3(%)
ハ ン ガ リ ー 5.5 7.1 66.5
チ ェ コ 3.7 5.2 54.3
ル ー マ ニ ア 15.5 41.7 62.0
ブ ル ガ リ ア 17.3 26.6 51.3
・中 東 欧 ・バ ル ト10 G.8 21.5 55.9
・EU‑15 1.s 5.0 41.8
出所:欧 州 委 員 会,1999年 デ ー タ,・1998年
表II‑3‑b農 産 物 の 貿 易
2000年 時の実質貿易値 EUと の 農 産 物 貿 易 貿易 に 占め る農 産物 GDPに 占 め る 貿 易 の
(100万USド ル) (100万USド ル) 貿易 の割合(%) 割 合(%)
(1993) (20ao)
ブ ル ガ リ ア +139.0 一14 .3 +18.0 7.8 6.7
チ ェ コ 676.0 一113 .3 一621
.5 4.9 5.9
エ ス トニ ア 一199 .0 一31
.8 一184
.3 11.1 16.3
ハ ン ガ リ ー +1153.0 +621.5 +530.4 6.0 6.9
ラ ト ビ ア 一297 .0 一7
.9 一163
.4 9.9 7.2
リ ト ア ニ ァ 一106 。0 一3
.300 一124
.0 10.9 8.9
ポ ー ラ ン ド 一533 .0 一254
.6 一324
.8 8.4 3.7
ル ー マ ニ ア 一593 .0 一332
.9 一135
.5 5.7 3.5
ス ロ バ キ ア 一382 .0 一77
.5 一192
.9 5.0 6.4
ス ロ ベ ニ ア 一361 .0 ・1 一237
.1 6.5 6.7
出 所:EBRDTransitionrcport2002か ら 作 成(OECD,Eurostat,EBRD,◎1994年 の デ ー タ,・1999年 の デ ー タ) 注:+は 輸 出 額,一 は 輸 入 額
共 通 農 業 政 策 は1962年 か ら1963年 に か け て 成 立 した,欧 州 統 合 の象 徴 と も い え る 。 当 時 は 最 重 要 な共 通 政 策 で あ っ た 。 一 定 の 時 期,価 格 支 持 政 策 を取 り,財 政 措 置 は 欧 州 農 業 指 導 保 証 基 金 のEUの 財 政 予 算 で 賄 わ れ,農 業 保 護 の 面 で は 有 効 に 機 能 した が,ウ ル グ ア イ ・ラ ウ ン ドで 自 由 貿 易 体 制 の 精 神 に 反 す る とい う批 判 や,農 業 の 近 代 化 とい っ た 構 造 改 革 の 遅 れ,更 に,農 業 関 係 でEU予 算 の50%近 く を 占 め る こ と に よ るEU財 政 の 逼 迫 な ど の 問 題 に 発 展 し,改 革 の 声 は 高
ま っ て い る 。
1980年 代 の ア メ リ カ と の 貿 易 摩 擦 な どか ら1992年 に 改 善 の 政 策 に 踏 み 切 っ て き た が,中 ・東 欧,バ ル ト,キ プ ロ ス,マ ル タの10ヵ 国 の 加 盟 と い う事 態 に 至 っ て,新 規 加 盟 国 に 対 す る 補 助 金 儂 家へ の直接 支払 い)の 扱 い が 浮 上 し た 。2002年10月 の ブ リ ュ ッ セ ル の 首 脳 会 議 は,新 規 加 盟 国 に対 して,所 得 水 準 の 格 差 か ら,直 接 支 払 い(directpayment一 補助金)に 移 行 期 間 を 設 け,初 年 度 の2004年 に は現 加 盟 国 に対 す る 支 払 額 の25%,2005年 は30%,2006年 は35%,2007年 は 40%と す る とい う漸 進 的 な ア プ ロ ー チ で 合 意 した 。 そ し て2013年 か ら現 加 盟 国 並 み の 水 準 と な る 。 ま た,財 政 的 な安 定 を 求 め る声 を 背 景 に,首 脳 会 議 は,農 家 へ の 直 接 支 払 い や 市 場 関 連 支 出 の 総 額 は,次 ぎ の 予 算(期 間 は2007年 一13年)は,年 率1%以 下 の 伸 び に 抑 え る こ とで 合 意 し て
14商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6>
い る 。
皿一4共 通 農 業 政 策 改 革 の 問 題 点
共 通 農 業 政 策 の 農 業 予 算 は,(i)最 大 の 拠 出 国 ドイ ツ,そ れ に 次 ぐ イ ギ リ ス な どか ら政 策 の 改 革 を 求 め る 声 が 強 ま っ て い る,(ii)こ れ に 対 し,農 業 予 算 最 大 の 受 益 国 フ ラ ンス は 現 行 予 算 が 終 了 す る2006年 以 降 に改 革 を論 議 す る 立 場 に立 っ て い る。 地 域 振 興(農 村 開発)基 金 の 受 益 国 の ス ペ イ ン,ポ ル トガ ル な ど が 警 戒 感 を 示 し て い る,(iii)と は い え,EU財 政 負 担 の50%近 く
を 占 め る 共 通 農 業 政 策 に つ い て は 欧 州 委 員 会 か ら中 ・東 欧,バ ル ト諸 国 の 加 盟 を契 機 に 見 直 す 必 要 を 求 め る 声 が 高 ま っ て い る 。
欧 州 委 員 会 は,(i)直 接 支 払 を 急 激 に 現 行 の ま ま新 規 加 盟 国 に 適 用 す る こ と,農 業 の 構 造 改 革 が 立 ち 遅 れ る か,停 止 す る恐 れ が あ る,(ii)高 水 準 の 直 接 支 払 で,生 産 性 を 高 め る イ ンセ ン テ ィ ブ が 失 わ れ,高 い 失 業 率,低 い 生 活 水 準 が そ の ま ま推 移 し て い く,(iii)直 接 支 払 は,地 域 振 興 儂 村 開発)に 対 す る 支 援 強 化 と相 侯 っ て 実 施 す る の が 望 ま しい と い う線 に 落 ち 着 き,「 拡 大
と農 業 一 新 規 加 盟 国 の 共 通 農 業 政 策 へ の 成 功 裡 の 統 合 」 とい う文 書 を 公 表 した(25)。
欧 州 委 員 会 の 拡 大 と農 業 の 報 告 書 は,農 村 開 発 の 分 野 で,加 盟 前 の 支 援 計 画 で あ るSAPARD (SpecialAccessionProgrammeforAgricultureandRuralDevelapment加 盟のた めの農業,農 村 開発特 別計 画)に よ る 農 村 開 発 に触 れ,加 盟 国 が 適 用 を 選 ん だSAPARD計 画 に つ い て は,農 耕 地,農 産 物 加 工,流 通 分 野 へ の 投 資 が 優 先 事 項 で 農 村 の イ ン フ ラ整 備 が こ れ に 続 い て い る 。EUは 東 方 へ の 拡 大 を 前 に,農 業 構 造 改 革,農 業 環 境 保 全,条 件 不 利 地 域 振 興 な ど の 政 策 を,「 農 村 開 発(rural development)政 策 」 と して 農 村 開 発 を 共 通 農 業 政 策 の 第 二 の柱 に 据 え て い る 。
ま た,報 告 書 は,新 規 加 盟 国(2004年 に予 定)の 大 半 が,地 域 格 差 を 解 消 す る た め 経 済 的,社 会 的 結 束 を強 化 す る 目的 で 設 け られ た構 造 基 金 の 対 象 の う ち 最 優 先 目標 に 設 定 さ れ た オ ブ ジ ェ ク テ ィ ブ ・ワ ン に統 合 さ れ る こ と を 考 慮 す る と して い る(26)。
EUはBSE(bovinespongiformencephal・pathy,狂 牛病)発 生 の 危 機 で 農 場 か ら食 卓 ま で 農 産 物, 食 品 の 安 全 性 対 策 を 強 化 し,欧 州 食 品 庁 の 創 設 な どに 取 り組 ん で い る 。 狂 牛 病 と 口 蹄 疫 の 危 機 に よ り共 通 農 業 政 策 の 中 で,食 品 安 全 の 強 化 が 求 め られ,財 政 措 置 に も取 り組 む必 要 が あ る 。 財 政 措 置 に つ い て は,フ ラ ンス 政 府 が 狂 牛 病 に 関 わ っ た 農 家 に 対 して 支 援 金 を拠 出 す る の を 欧 州 委 員 会 が 認 可 し た こ と か ら,共 通 農 業 政 策 の 中 で の 加 盟 国 の 独 自 の 対 応 策,再 国 家 化(renationalisa‑
tion)の 側 面 と み る 見 解 も あ る。 こ れ は 食 品 の 安 全 強 化 に つ い て は 共 通 政 策 だ け で な く,加 盟 国 の 独 自性,EUと 加 盟 国 の 権 限 の 配 分 に 基 づ く対 応 が 必 要 な こ と を 意 味 して お り,財 政 予 算 に対 す る 一 考 察 が 必 要 と受 け 止 め ら れ る 。 今 後10ヵ 国 の 多 数 国 の 加 盟 に よ り,食 品 の 安 全 政 策 は 一 層 重 要 に な っ て こ よ う。
と こ ろ で,EC,EUの 共 通 農 業 政 策 につ い て は,1991‑‑92年 に ア イ ル ラ ン ド出 身 の 農 業 担 当 委 員 だ っ た マ ッ ク ・シ ャ ー リー(MacSharry)の 名 に 因 ん だ マ ッ ク ・シ ャ ー リ ー 改 革 で,価 格 支 持
C
EU拡 大 圏 と汎 ヨーロ ッパ の未 来15 政 策 を転 換 し,大 幅 な価 格 引 下 げ に 対 す る 見 返 りに 農 家 に 対 す る補 償 を支 給 す る とい っ た 以 外, 大 き な 改 革 は み られ な い 。 実 施10年 後 の 今 日は 補 償 支 払(compensationpayment)の 性 格 は な く な
り,直 接 支 払(directincomepayment)に 変 わ っ て い る 。 共 通 農 業 政 策 の 改 革 は,現EU加 盟 国 の 農 産 物 生 産 の21.7%を 占 め る 最 大 の 農 業 国 の フ ラ ンス とEU予 算 の 最 大 の 財 政 拠 出 国 の ドイ ツ の 意 向 に大 き く左 右 され る もの とみ られ る(27)。シ ラ ク大 統 領 は2001年2月,現 行 の 予 算 措 置 の 期 限 が 切 れ る2006年 ま で 改 革 は待 つ べ きだ との 意 向 を表 明 し て い る 。
一 方 で
,欧 州 委 員 会 の 中 で は,2004年 の 新 規 加 盟 を前 に,共 通 農 業 政 策 の 第 二 の 柱 で あ る 農 村 開発(地 域 振興)と 環 境 保 全,EU予 算 の 在 り方 を め ぐ り検 討 が 進 ん で い る 。 欧 州 委 員 会 筋 に よ る と,フ ラ ン ッ ・フ ィ ッ シ ュ ラ ー 農業 担 当 委 員 は 以 下 を 提 案 し た と さ れ る 。(i)EU加 盟 国 が 共 同 財 政 措 置(予 算)の 一 部 を加 盟 国 予 算 で 手 当 て す る 案 で,1999年3月 の ベ ル リ ン首 脳 会 議 の 際,ド イ ッ は こ れ を支 持 した と さ れ る。(ii)個 々 の 農 家 に対 す る 直 接 支 払 額 に 上 限 を設 け る 。 (iii)直 接 支 払 と い う 多 額 の 補 助 金 の 一 部 をEU予 算 の 農 村 開 発 や 環 境 保 全 措 置 に振 り向 け る と い う も の で,EUの 東 方 へ の 拡 大,WTOの 新 ラ ウ ン ド交 渉 を 前 に し て の 重 要 な 改 革 と い え る と い う見 方 が あ る(28)。
皿一5ニ ー ス機 構 改 革 と暫 定 措 置
今 回 の12ヵ 国 の 加 盟 交 渉 で 全 加 盟 国 が 加 盟 す る 場 合 を想 定 す る と,全 会 一 致 の 意 思 決 定 は 一 層 困 難 視 され る た め,特 定 多 数 決 で 決 定 す る 政 策 領 域 を 拡 大 す る な ど,EU拡 大 圏 に 見 合 っ た 体 制 造 りが 必 要 と な る 。 こ の た め,EUは2000年12月 の ニ ー ス の 首 脳 会 議 で,ブ ル ガ リ ア,ル ー マ ニ ア(そ の後 の交 渉で この2ヵ 国 は2007年 に加 盟 の見 通 しとなった)を 含 め た27力 国 の 加 盟 を 前 提 に し た機 構 改 革 を討 議 し,ニ ー ス 条 約 に 合 意 し た 。 この 結 果,(i)27ヵ 国 の 加 盟 を前 提 に,閣 僚 理 事 会 の 特 定 多 数 決 の 際 の 持 ち 票 を 見 直 し た 。 結 果 的 に,持 ち 票 の 配 分 が 大 国 に 傾 き,ド イ
ツ,フ ラ ン ス,イ ギ リ ス,イ タ リ ア が こ れ 迄 の10票 が29票 に,ス ペ イ ン が27票,中 ・東 欧 諸 国 へ の 配 分 で は 人 口 が3870万 人 と加 盟 交 渉 国 中 最 大 の ポ ー ラ ン ドが27票 とな り,小 国 に軽 い 配 分 と な っ た 。
(ii)特 定 多 数 決 制 の 適 用 範 囲 に35分 野 を追 加 し た 。 ア メ リ カ の イ ラ ク攻 撃 の 動 きが 強 ま っ て い る が(2003年2月9日 現 在),EUの 共 通 外 交 安 全 保 障 政 策 は 重 要 な 要 素 で,マ ー ス トリ ヒ ト条 約 で は 首 脳 会 議 が 外 交 政 策 ・安 全 保 障 政 策 の 一 般 的 指 針 を全 会 一 致 で 策 定 し,統 一 行 動 の 対 象 事 項 に つ い て は 閣僚 理 事 会 が,特 定 多 数 決 で 決 定 で き る こ とに な っ て い る。 こ の 共 通 政 策 に つ い て 首 脳 会 議 と閣 僚 理 事 会 の 役 割 分 担 を 明 確 に し た 。 ニ ー ス の 交 渉 で 焦 点 と な っ た 政 策 の 領 域 は,(1)税 制,(2)社 会 保 障,(3)移 民,難 民 政 策,(4)通 商 政 策,(5)地 域 振 興 策 で,こ の う ち 税 制 と社 会 保 障 は
イ ギ リ ス の 強 い 反 対 で 不 成 立 とな っ た 。 通 商 政 策 の サ ー ビ ス,投 資,知 的 所 有 権iにつ い て は フ ラ ン ス が 除 外 を 求 め た ビ デ オ,映 画 の購 入 以 外 特 定 多 数 決 制 が 承 認 さ れ た 。(5)につ い て は 適 用 年 度 を先 送 り して 合 意 し た。
16商 経 論 叢 第39巻 第1号(2003.6)
(iii)欧 州 委 員 会 の 構 成 を 大 国2名,他1名 の 現 行 体 制 か ら27名 を 上 限 に 各 国1名 と す る 。 (iv)現 在 加 盟 国 の 過 半 数 以 上 の 加 盟 国 の 参 加 で 先 行 統 合 す る 方 式 を8ヵ 国 以 上 で 実 施 で き る こ と な ど を 決 め た 。 「先 行 統 合 」 に 道 を 開 く 「緊 密 化 協 力(enhancedcoopera廿on)」 に つ い て は,2000年6月 の ポ ル ト ガ ル の サ ン タ ・マ リ ア ・ダ ・フ ェ イ ラ の 首 脳 会 議 で ,加 盟 国 の 状 況 に 応 じ て 異 な る 度 合 い の 統 合 の 進 展 を 認 め る 「よ り 緊 密 な 協 力=先 行 統 合 」 を 更 に 広 範 な 分 野 に 適 用 し て い く こ と で 合 意 し て い る 。
2002年10月 の ブ リ ュ ッ セ ル の 首 脳 会 議 で,ブ ル ガ リ ア,ル ー マ ニ ア を 除 く10ヵ 国 の 加 盟 が
表 皿一5‑a閣 僚 理 事 会 で の 持 ち 票 の 配 分
加 盟国 04年5月1日 一12月31日 2005年1月1日
ドイ ツ 10 29
イ ギ リ ス 10 29
フ ラ ン ス 10 29
イ タ リ ア 10 29
ス ペ イ ン S 27
ポ ー ラ ン ド S 27
オ ラ ン ダ 5 13
ギ リ シ ャ 5 12
チ ェ コ 5 12
ベ ル ギ ー 5 12
ハ ン ガ リ ー 5 12
ポ ル トガ ル 5 12
ス ウ ェ ー デ ン 4 10
オ ー ス ト リ ア 4 10
ス ロ バ キ ア 3 7
デ ン マ ー ク 3 7
ブ イ ン ラ ン ド 3 7
ア イ ル ラ ン ド 3 7
リ ト ア ニ ア 3 7
ラ ト ビ ァ 3 4
ス ロ ベ ニ ア 3 4
エ ス ト ニ ア 3 4
キ プ ロ ス 2 4
ル ク セ ン ブ ル ク 2 4
マ ル タ 2 3
25ヵ 国 計 124 321
EU拡 大 圏 と汎 ヨ ー ロ ッパ の 未 来 17 表II‑5‑b 現EU15ヵ 国 の 持 ち票,議 員数 とニ ー ス条 約 に基 づ く決 定
(中 ・東欧,バ ル ト三 国の12力 国の加盟 を前提)
現閣僚理事会での持 ち票 欧州議会 議員数 ニ ー ス 条 約 ・持 ち 票 ニ ー ス 条 約 ・議 員 数
ドイ ツ 10 99 29 99
イ ギ リス 10 87 29 72
フ ラ ン ス 10 87 29 72
イ タ リ ア 10 87 29 72
ス ペ イ ン 8 64 27 50
オ ラ ン ダ 5 31 13 25
ギ リ シ ャ 5 25 12 22
ベ ル ギ ー 5 25 12 22
ポ ル トガ ル 5 25 12 22
ス ウ ェ ー デ ン 4 22 10 18
オ ー ス ト リ ア 4 21 10 17
デ ン マ ー ク 3 16 7 13
ブ イ ン ラ ン ド 3 16 7 13
ア イ ル ラ ン ド 3 15 7 12
ル ク セ ンブ ル ク 2 6 4 s
2001年 現 在 87 626
ポ ー ラ ン ド 27 50
ル ー マ ニ ア 14 33
チ ェ コ 12 20
ハ ン ガ リ ー 12 20
ブ ル ガ リア 10 17
ス ロバ キ ア 7 13
リ トア ニ ア 7 12
ラ ト ビ ア 4 8
ス ロ ベ ニ ア 4 7
エ ス トニ ア 4 6
キ プ ロ ス 4 6
マ ル タ 3 5
総 計 345 732
(注)(1)欧 州 議 会 の 議 員 定 数 の 変 更 は,2004年1月1日 か ら の 予 定 。
(2)欧 州 委 員 会 の 委 員 制 度 は,2005年1月1日 か ら1国 に1人 が 配 分 さ れ,EU加 盟 国 が27ヵ 国 と な っ た 場 合,委 員 総 数 は27以 下 と な り,輪 番 制 と な る 。
(3)閣 僚 理 事 会 の 新 し い 持 ち 票 の 配 分(thenewvoteweightings)は2005年1月1日 か ら発 効 の 予 定 。
(4)上 記 の(1),(2),(3)は ニ ー ス 条 約 のprovisionaltextに 記 載 さ れ た が,そ の 後 正 規 の 条 約 で は 削 除 さ れ て い る 。