高強度パルスイオンビームによるパルスイオ ン注入技術の開発
研究代表者 工 学部 升 方 勝 己
(1)プ ロジエク トの背景 ・目的
本研 究では、パル スイオ ン注入 と名づ けた新 しいイオ ン注入技術 を実現す るためのパル ス イオ ンビーム発生装置の開発 を行い、パル スイオ ン注入 による半導体素子生成 の実証 を 目指 す。パル スイオ ン注入法の有用性 については当研究 グループをは じめ幾つかの研究 グループ でその可能性 が指摘 されてきたが、これ を実現す るビー ム発生技術 が実現 されていなかった。
当研 究 グループでは昨年、新 しいパル スイオ ンビー ム発生技術 に よ り、パル スイオ ン注入 に 必要 な ビーム発生技術 を開発 した。そ こで、本研 究では、 この発生技術 の改善 によ り、 ビー ム発生の再現性 、 ビームの均一性 、イオ ン純度 を向上 し、パル スイオ ン注入実験が可能 な装 置 を開発す る。また、発生 され るパル スイオ ンビー ムを半導体材料 に照射 し、イオ ンの導入、
導入 したイオ ンの活性化 、イオ ン注入層 の導電率、結晶のアニール効果 を検証す ることに よ り、パルスイオ ン注入 の実証、実用化 を 目指す。
(2)研究成果
本年度 の研 究では、パル スイオ ン注入技術 に要求 され る ビーム発生技術 の開発 を行 うと共 に、パル スイオ ンビームの各種 ターゲ ッ トヘの照射効果 の評価 を行 つた。 いかに、その研 究 成果 を項 目に分 けて報告す る。
パル スイオ ン ビー ム発 生技術 の開発
パル スイオ ンダイオー ドの発生イオ ン電流密度 は、従来のダイオー ドでは 17A/cm2でぁ り、
パル スイオ ン注入 に要求 され る 5 0 A / c m 2 を達成 できていなかった。そ こで、ダイオー ドの陽 極及び陰極 を球面状 に加 工
したダイオー ドを開発 した。
その結果 、イオ ン電流密度 は 28A/cm2に 向上 した。 し か し、 この改造 によ り十分 なイオ ン電流密度が得 られ なかつた ことか ら加速器 電 源 として、出力定格 が,開 放端電圧 :240kV,合 成容 量 :8.33 nF,蓄積エネル ギ ー :240」の同軸マル クス発
+Vm
生器 の開発 を行 った。 図 1 V m
十Vh
叫 To Load
C=100/3 nF R〓 20kΩ
R H
Capacitor
36
図 1 同 軸マル クス発生器 の断面構造 と等価回路
の 円筒 タンク中に設 置
され てい る。マル クス 図 2
\ざ
「
1丸
嚇ゝ 〆 率
0 100 200 300 400
time ttS)
0 100 200 300 400
time←)
1 5
10菫
5 0
6 0 鸞 4 0
鉾 鱒 1 0 0
︵聴撃じギ メ脅ぶ 2 0 0
劇 1 0 0
5 0 0
スイ ッチ として 2 個 の 電解 歪型放電 スイ ッチ
ダイオー ド電圧 (為)、ダイオー ド電流 働 )、 イ オ ン電流密度 (4)の 典型的波形
が使用 され,こ れ らを トリガーす ることによ り負荷 にパル スを供給す る。
図 2は 同軸マル クスを収東型イオ ンダイオー ドに接続 した場合 の動作特性 を示す。 ダイオ ー ドはダイオー ド電圧 (乃)190 kV、ダイオー ド電流 鮨 )15 kA、ちのパルス幅80 nsで動作 し、
従来電源 に比較 して、ち はほぼ同値 となってい るが、らは約7倍 となった。この結果、イオ ン 電流密度 (勇)は 57A/cm2が 得 られ、窒素イオ ンについてパル スイオ ン注入 に要求 され るイ オ ン電流密度 を達成 した。
一方、我々はガスパフプラズマガンをイオン源 として用いてきたが、この場合発生イオン 種 は常温で気体 の元素 に限 られ る。 アル ミ等の金属イオ ンは半導体 の ドーパ ン トとして有効
に働 くことが分 かつてお り、金属イオ ン源 の開発 が重要 となる。 そ こで、金属等常温で固体 の元素 をイオ ン源 として用い るため、真空アー クイオ ン源お よび細線放電イオ ン源 の開発 を 行 った。 これ らのイオ ン源 では、金属 な ど導電性 の元素 をイオ ン源 として用い ることが可能 で、アル ミニ ウム、炭素な どのイオ ン種 の発生が可能 とな る。真空アー クイオ ン源 では要求 を満 たすイオ ン電流密度 は得 られ た ものの、イオ ン電流密度 の安定度 が低 く、イオ ン源 とし ての適用が難 しい ことが分かった。一方、細線放電イオ ン源 については十分 なイオ ン電流密 度 と安定性 が得 られ ることが分 かった。
2. ビ ーム照射効果の評価
高密度 Zピ ンチ放電 の一種 であるプ ラズマ フォーカス装置 を用いたターゲ ッ トヘのパル ス イオ ンビーム照射実験 を行 つた。 プ ラズマ フォーカス装置 は、均一な ビーム強度 を得 られ る 領域 は狭い ものの、lkA/cm2ィ ォ ンの電流密度が容易 に得 られ ること、イオ ンエネル ギーの 平均値 が 100 keV程度であることか ら、パル スイオ ンビームの照射効果 を評価す ることが可 能 である。使用 したイオ ン種 は水素及び窒素である。照射実験 には、ターゲ ッ トとして単結 晶シ リコン、アモル ファスシ リコン、ステ ン レス、銅 、軟鉄 を用いた。一方、パル スイオ ン ビー ム発生装置で十分なイオ ン電流密度 が達成 された ことか ら、 これ を用いた銅 ターゲ ッ ト ヘの照射実験 を行 つた。
図 3は 、ステ ン レスターゲ ッ トの ビーム照射前後のターゲ ッ ト表面の SEM像 を示す。照射 前 には明確 な圧延痕 が見 られ るのにたい し、照射後 は圧延痕 が完全 に消 え、表面が滑 らかに なってい ることが分か る。 これ は、 ビーム照射 によ リステ ン レス表面が一旦溶融 し、その後
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再凝 固 したため と考 え られ る。
図 3 は 上記 ターゲ ッ トの照射前後 のX線 回 折パ ター ンを示す。照 射前 に見 られた F e の
ピー クが照射後 には全 く見 られ な くなつてお り、CrFeNiの 200面 が 顕著 となってい る。こ れ は、ビーム照射 によ つて表面が溶融 ・再凝 固 した、或いは表面の 一 部 が ア ブ レー シ ョ ン に よ り除 去 され た ため、表面の結晶性 が 大 き く変 化 した こ と を示 してい る。
表 I は 、ステ ン レス ター ゲ ッ トヘ の 照 射 実験 の結果 を示す。表 よ り、何れ の照射条件 につ い て も照 射 前 に 比 べ て硬 度 が低 下 し てい る こ とが分 か る。
図.3ス テ ンレスターゲ ッ トの ビーム照射前後の SEM像
硬 度 の低 下 は ビー ム強度 の高 い r=o mmの 条 件 で著 しく、 また 、 ビー ム種 で は N2の 場合 に 大 きな低 下 が見 られ る。 また、N2に つ い て、
シ ョッ ト数 に対す る依存性 を評価 した結果 、シ ョッ ト数 の増加 で硬 度 が低 下す る こ とが分 か る。
次 に、単結 晶 シ リコンに対 して 同様 の照射 実 験 を行 つた。 使 用 した ター ゲ ッ トは結 晶 面 が (100)のシ リコン ウエハー で、表 面 は鏡 面研 磨
され てい る。これ を z = 3 0 0 m m , ′= O m m の 位置 に設置 した。照射実験後のターゲ ッ トを電子 顕微鏡 で観察 した ところ、照射 s h o t 数が増加す るにつれて表面のラフになることが分かった。
また、X R D の 観測 の結果、シ ョッ ト数 が増加す るにつれて 1 0 0 面の ピー ク強度 が低下す るこ とが分かった。また、1 0 s h o t 照射 した ターゲ ッ トについては、シ リコンの 1 1 1 面及び 2 2 0 面 の ピー ク、銅 お よび鉄 の ピー クが観測 された。 1 0 0 面 の ピー ク強度 の低 下は、 ビーム照射 に よ り溶融 したシ リコン表面層 が再凝 固過程 でアモル ファス化或いは他結晶化 した ことに因 る
1.Ok
0.5k
∽ 飩
° 1 . 2 k
0。6k
after C r F e N i : ( 2 0 0 )
C r F e M ( 1 1 1 ) 1
C r F e N i ( 2 2 0 ) : :
│ : ‐
10.00 20.00 40.00 60,00 80.00
2′ (deg)
図. 4 ステ ンレスターゲ ッ トの ビーム照射前後 の X 線 回折パ ター ン
表 I ス テ ン レス ター ゲ ッ トの ビー ム照射 後 の ビ ッカー ス硬 度
照射位 置 z:300 ffiffi, r : 0 m m
z:300 ffiffi,
r : 4 0 m m
照射 前 400 Hv
H2 I shot 358 Hv 373]Hv
N21 ShOt 334 Hv 346 Hv N25 shot 249 Hv 304 Hv
before Fe(110)
Cr Fe Ni(220)
G R M H り
1 0 . M 知 り … 小 1 平 ‐ 0
1 則t Z U U ′F e ( 2 0 0 ) : : ,
と考 え られ る。また、Hl面 、220面 が観測 さ れ た こ とは、表面でのシ リコンの多結晶化 を 示す もの と考 え られ る。 なお、銅及 び鉄 の ピ ー クについては、プ ラズマフォーカスに使用
され た電極 か ら放 出 され た ものが付着 した こ
表 Ⅱ 銅 及び軟鉄 の ビーム照射後の ビッカー ス硬度
資 料 金同 軟 鉄
照射 前 38]Hv 157 Hv H21 ShOt 728 Hv 151 Hv とによる と考 え られ る。
表 Ⅱは、銅及 び軟鉄 ターゲ ッ トの照射前後 の ビッカース硬度 を示す。軟鉄 についてはほ と ん ど硬度 の変化 は見 られ ないのに対 して、銅 は大幅 に硬度が向上 した。XRDに よるターゲ ッ トの評価 を行 つた結果、銅 については 220面 、200面 、111面 について 2…2.5倍の ピー ク強度 の向上が観測 された。また、軟鉄 については照射後 110面の ピー ク強度の 1.5倍程度 の向上が 観測 された。
以上、本年度 の研究結果 の要点 を記述 した。 ビーム発生技術 に関 してはパル スイオ ンビー ム発生装置の改良の結果、パルスイオ ン注入 に必要な ビーム条件 を実現す ることが出来た。
一方、 ビーム照射実験の結果か ら、各種材料の表面状態 を変化 させ ることが出来 ることを示 す ことが出来た。今後 は、半導体全 のイオ ン注入効果 の評価 を 目指 した研究 を行 つていきた い。
(4)プロジェク ト成果 の応用 ・効果 0構想
本研究の 目的である半導体へ のパル スイオ ン注入 に加 えて、金属等各種の材料 の表面改質 への応用の可能性 が示 された。この結果 に基づ き、機械 工具等への本技術の応用 に向けた研 究 を平行 して推進 したい。
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