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巻 頭 言

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Academic year: 2021

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国際経営研究所所長  石積  勝

─ 令和時代の展望 ─

 今号の共通テーマは「令和時代の展望」ということである。21 世紀の 幕開けとともにスタートした 30 年間の平成の時代が終り、令和という新 時代に入ったわけだが、日本社会にとってはやはり大きな区切りの年であ る。そこで一歩立ち止まって、これまで 30 年間の日本社会、国際社会が いかなるものであったのか、私達は今どのような地点に立っているのか、

もう一度大きく振り返りたい。1989 年、つまり平成元年から 30 年間でな にがあったのか、主に世界の、そしていくつかの日本の政治・経済の出来 事を思いつくままに列記しよう。

89年─ベルリンの壁崩壊、天安門事件 90年─ドイツ統一

91年─ソ連消滅、湾岸戦争 92年─バブル崩壊

95年─阪神大震災、地下鉄サリン事件 97年─香港返還

01年─米同時多発テロ、小泉政権誕生、アフガン戦争 02年─日朝首脳会談

03年─イラク戦争 05年─郵政民営化

08年─金融危機世界に波及 11年─東日本大震災

15年─各地でイスラム過激派テロ、中東難民

巻 頭 言

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国際経営フォーラム No.30

16年─トランプ政権誕生、英国EU離脱決定 17年─衆院選で自民圧勝、民進分裂、森加計問題 18年─米朝首脳会談、米中貿易摩擦

 以上、思いつくままに、また現在の内外の問題と深く関連していそうな ものを中心に列記したが、いずれにしても平成時代はベルリンの壁崩壊、

ドイツ統一、ソ連崩壊という世界の大政治変動で幕をあけた。つまり冷戦 の終焉であり、ソ連型社会主義の自滅である。経済面ではやはりバブルの 崩壊と世界金融危機が大きい。それは特にその後に続く日本の経済低迷と 直接関係する。また2001年の9・11(ワールド・トレード・センターへの テロ)と2011年の3・11(東北大震災と福島原発)も当然ながら近代社会 の脆弱性を象徴しながら依然として深い大きな影を落としている。令和の 時代はこうした平成の時代の困難をそのまま引き継ぐ形で始まった。

 それにしても日本に目を向ければ、この平成の時代は日本の退潮が進ん だ時代である。長いデフレから日本は脱却できず、日本国の国際競争力は 経済、技術においても、さらには日本の得意分野であった教育でも国際的 評価が低迷していると様々なデータが示している。政治、外交は以前から 三流といわれていたが、この面の低迷も続く。このままでは日本は下流先 進国に転落するのではないかという声も、かなりのリアリティーをもって 聞こえるありさまである。こうした厳しい状況の中での令和元年の開始で ある。われわれ研究者としては、この状況を打破するヒントを求めて研究 を進めたいものだ。一方で広く教育界に身を置く者としてはやはりこの面、

つまり教育の面についても思いを馳せざるを得ないだろう。

 30 年前、筆者は故森嶋道夫(元ロンドン大学経済学教授)の『なぜ日 本は「成功」したか』(1984 年)という著書を引用して、特に外国人学生 に日本経済、日本企業の強さの理由を説明していたが、その同じ森嶋は 1994 年には今度は『なぜ日本は没落するか』という本を出版している。

さらに2004年には『なぜ日本は行き詰まったか』という著作も出している。

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令和時代の展望 特に前二冊で彼が問題としているのは日本社会のエトスのことであり、教 育のことである。つまり戦後の日本経済の成功は、戦前、儒教教育を受け た指導層が引っ張る形で成し遂げられたが、その儒教的ノブレス・オブ リージュ意識が世代交代とともに風化し、その後に登場した戦後の似非西 洋式教育を受けた世代が、ついにその似非性を克服できず、結局、戦前教 育と戦後教育とのはざまに生まれた、日本社会におけるエトスの空白が、

その後も克服されずに残り、それが日本の必然的没落の根本原因ではない かという考察である。

 筆者はこの森嶋説に賛同するが、では令和の今、何が問題となるのだろ う。時代の空気は似非西洋式教育に対する懐疑とともに、戦前エトスへの 回帰現象さえ見える。筆者にはこれからの、つまり令和時代の解はそこ(戦 前エトスへの回帰)にあるとはとても思えない。やるべきことは西洋式教 育の中の普遍的核心部分の再構築であり、同時にその先への構想力を発揮 することではないだろうか。

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