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巻 頭 言
雲をつかむようなバーチャルなはなし
総合情報処理センター長 今 野 和 彦
バーチャルリアリティー(VR)をはじめとして本来現実にはないものが現実のように感じられる ものがいつの間にか身の回りにあることに気がつきます。たとえば映像や音響の分野では3D 映 像や画像また、5.1cH の音響サラウンドシステムやこれらを合わせた種々のゲームやシミュレータ などが挙げられます。これらは娯楽の分野だけでなく工学をはじめとして医学や心理学など広い分 野で活用されており、画像や音声の処理が高速で演算が可能になったおかげといえます。私の研究 分野である音響や超音波分野においてもコンピュータを用いたシミュレーションを多く見かけます が、これは実験では実現できないような条件でバーチャルな“実験”しているようなものと考える ことができます。理論的にあるいは実験的に正しいとされている、たとえば波動方程式などを使っ て波動の伝搬を個々の条件の下で計算するというような解析はつい最近まで当たり前だったのです が、シミュレーションソフトが普及し、難しい理論など理解しなくともそれなりの計算ができます。
しかし、反面において物理現象を理解していないあるいはイメージできないためこれらを幻想とい う意味のバーチャルな自分の実力と勘違いするという悲劇が起こりかねません。サイエンスを志す 者としては霞ならぬ雲を食って生きるような事態になりかねません。
さて、本学では教育・研究系をはじめとして情報基盤セキュリティー系、法人支援系と独自のサー バーを運用していますが、世の中の動きとして仮想化は当たり前で、クラウド化(これもバーチャ ルな概念ですが...)がすでに現実のものになっています。ある国立大学の例では、クラウド化によっ てパソコン、サーバー及びディスプレイ等の IT 関連の消費電力が 1/10、サーバー及びそのソフト ウエア等及び保守関連の調達が仮想化、クラウド化によって 1 本化されることによって 1/50 にな り、しかも稼働率は災害等があっても 100%を達成しているという実例もあります1)。稼働率とは BCP(ビジネス計画継続)と同義語と考えてもよいもので、様々な形態がありますが、その中でク ラウド化が最も有力な手段と考えられます。これらは企業のみならず大学においても事業継続とい う点で重大な問題であり単にバックアップを取るという冗長化とは全く異なる次元の課題でもあり ます。現時点でベストと思われる学内 IT 関連システムは、学内にある全てのサーバー類を仮想化 により1本化し、同時にクラウド化(この二つは同じことかもしれません)するというものであり、
異論があることも承知の上で霧想、いや夢想しております。ただそのためには、解決すべき問題が 4つほど考えられます。
Akita University
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1) 学内 IT 関連資産の厳密な調査、2)それらのパフォーマンス解析と組織の合意形成、3)
情報推進基盤組織の改編、そして4)クラウド化に向けてのインフラ整備。
上記はかなり大がかりな改革になりますが、このようなときに科学に携わっている人間、少なく とも私は、帰納的あるいは演繹的かのいずれの方法をとるかを真っ先に考えます。組織にあっては それぞれ、ボトムアップとトップダウンに相当するでしょうか。通常はある程度帰納的な仕事をし ながらこれらをまとめて演繹的に実現するという手法がとられます。個々のシステムについては担 当者が熟知しておられることを考えると上記の1)と2)は個々の具体的な作業のためそれほど難 しくはないと思われますが、3)、4)については組織の問題のため大学の方針次第ということで ある時期にトップダウン的の決断が必要になるものと考えます。いずれにしても本学に存在する各 システムが相互に協調できるように有機的に結合したネットワーク化およびクラウド化が雲をつか むような話で終わらないようにするためにも今後も地道にボトムアップしていく必要があると考え ております。
文献
1) 井上,長谷川他,進歩するクラウド情報基盤,静岡学術出版,2011.