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九州大学学術情報リポジトリ

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

LI_2型規則合金の相転移過程における逆位相境界の 挙動に関する研究

松本, 明善

九州大学総合理工学研究科材料開発工学専攻

https://doi.org/10.11501/3123076

出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第5章 L1 2-S→(L1 2-S

+

A1)相転移過程

前章で、はL12-S相→L12相の相転移過程を調べ、周期的APBの消滅過程がヘアピン 状APBの消滅 ・移動により進行することを示した。この章で はL12-sf目→(A 1 +

L12-S)への相転移過程について研究した。規則相と不規則相の2相共存状態の温度 域ではAPBで不規則化("wetting"現象)が進行し、その不規則領域は温度に依存し て増大する傾向を2章で 示した。この"wetting"現象が相転移過程にどのような影響 を及ぼすのかに注目した。図5-1にCu3Pt合金近傍の状態図 を示す。(A1+L12-s)の 2相共存領域は約820Kから約900Kの問に存在する。2相共存領域でのAPBの挙動 を観察するために25.1at%Pt組成を持ったCu3Pt合金のその場TEM観察を行った。

5-1 TEM観察結果

温度を上げながら焼鈍を行ったL12-s→(A1 +L 12-s)相転移過程のその場観察の結 果を図5-2に示す。初期状態( a)のL12-S相は約100nmのバリアントサイズを持って いる。中央部分の白い領域は電子線の入射方向に対して周期的に配列したAPBを持 つZバリアントのL12-S相で、ある。(b)から(d)には各温度で平均1時間程度保持した 後の暗視野像を示す。図中(a)から(d)の熱的なAPBとバリアント境界にそれぞれ矢印 lと2を付した。温度を上げて脳校行うと熱的なAPBやバリアント境界に幅を持っ た黒い領域が形成される(b)。この黒い領域は不規則相であり、"wetting"現象カ泡こっ ていることを示している。これに対してバリアント内部の周期的APBの幅にはほと んど変化が見られず、 周期的APBとバリアント境界等の熱的なAPBが不規則化過程 で異なる挙動を示すことがわかる。さらに温度を上げると"wetting"の幅は広くなり (図5 - 2(c))、 最終的には不規則相とL12-S相の2相共存状態へ達する。このとき、

バリアント境界は不規則領域となるが、 周期的APBは残存してL 12一

-6 4-

(3)

1000

主ζ

L

_____

A1

ぷ900

4cLコ-u -d ω

9-

800

ε

ω L 12

700 20 25 30

Composition (at%Pt)

図5

-

1

Cu -

25.1at%Pt組成近傍の平衡状態、図

-65一

(4)

図5 -2 L lt一日相から(A1 + L 1 tーメ)共存相への相転移過程のその場TEM観察。

(a)803Kで、3.6ks、(b)841Kで、3.6ks、(c)846Kで、3.6ks、(d)857Kで、2.4ksの焼鈍を行っ た試料の110 暗視野像。 熱的なAPB (矢印1)やバリアント境界( 矢印2)か

ら不規則化("wetting"現象)が起こり、 その領域が拡大し、 2相共存状態へ到達 する。

-66-

(5)

を保持する。ただし、L12-S相中にも斑 点状の不規則相が形成される(d)。このこと は試料の中央部分のZバリアント部分で明らかである。以上の APBの挙動から熱的 なAPBやバリアント境界は不規則化の起点となり得ることを示唆している。

上述した組織変化は温度を連続的 に上げながら観察 した結果である。 次に

(Al + L12-s)共存領域内の温度で等温焼鈍を行った。図5-3に823Kの結果を示す。

823Kは状態図からもわかるよう に(A1 + L12-s)の2相共存領域とL12-S相の相境界よ りわずかに高い温度であり、2相共存領域の低温 域に属する。この焼鈍を以後「低

温焼鈍」と呼ぶ。この焼鈍過程は図5-2の徐々に温度を上げた場合の変態過程と同 様の過程を辿る。すなわち、初期状態中に 存在する熱的なAPBやバリアント境界か ら不規則化が起こり、2相共存状態へ到達する。これに対して図5-4に 示す859K で焼鈍を行った場合には異なる過程が見られた。 859Kは2相共存領域内において

高温域であるので、この温度での焼鈍を「高温焼鈍」と呼ぶ。859Kで焼鈍を行う と試料は急速に不規則化し、(b)で観察 できるように試料のほぼ全域にわたって不規 則化が進行する。しかし、試料全体は完全に不規則化しておらず、若干の規則相が 残存している。 また、その周辺部分で、は直径約lnm以下の白い斑点模様が観察でき、

この領域はマイクロドメインによる短範囲規則(SR 0)状態であると考えられる。

SRO状態は従来から、高温で存在している状態である のか、高温からの焼き入れ 時に形成される一種の規則相の核であるかが議論されている。この観察結果は高温 においてSRO状態が存在することを明示した結果である。SRO状態については 今後、更なる研究が必要であろう。さらに焼鈍を続けると、残存した規則相(矢印) を核として規則化が進行する 。最終的には、不規則 マトリックス中に規則相の島が 浮かんだような状態の2相共 存状態へ到達する。この相転移過程は電子回折図形か らも明らかである。( a)の電子回折図形で、は長周期相の存在を示すサテライト反射を 含んだ規則格子反射をはっきり見ることができる。しかし、(b)ではその強度は極め

-67-

(6)

辺5-3 Llz-s相から(Al+ Llz-s)共存相への相転移過程のその場TEM観察。(a)初 期状態および823Kで、(b)1.8ks、(c)3.6ks、(d)7.2ksの等温焼鈍を行った試料の

1 1 0 暗視野像。 バリアント境界や熱的なAPB (矢印)から"wetting"現象が起こ り、 時間経過と共に不規則化した領域が拡大し、 2相共存状態へ到達する。

-68-

(7)

図5-4 L] 2-St目から(Al + L12-s)共存相への相転移過程のそ の場TEM観察。(a)初 期状態および859Kで、(b)3.6ks、(c)5.4ks、(d) 12.6 ksの等温焼鈍を行った試料の

1 1 0 暗視野像。 試料は一旦不規則化し(b)、 その後、 残存した島状のL12日規則相 (矢印)が成長していく(c),(d)。

-69一

(8)

て弱くなり、試料の全域がほとんど不規則化したことを示している。 さらに焼鈍を 続けると、(c)、(d)の規則格子反射は再び強度を増し、規則相が成長 していることを 示している。

以上のように、低温域と高温域の等温焼鈍では全く異なるプロセスで相転移が起 こることが明らかとなった。

5-2 シミュレーション結果

L12-st目から(A1+ L1 2-s)共存状態への相転移過程のシミュレーションを行うに当 たり注意しなければならないことは、シミュレーションで想定した状態図と実際の Cu3Pt合金の状態図の違いである。図2-1 に示したようにシミュレーションに用い た状態図で、はL12相(ordered phase)、A1相(disordered phase)、および、(Al + L12)が存在する。こ れに対して、Cu3Pt合金の状態図中にはL12-s相が安定な領域が

ある。Ginzburg-Landau型の自由エネルギーモデルではL12-S相が安定相として存 在することは考えていない己しかし、L12-S相を初期状態とし、(A1+L12)の温度領 域で計算を行うことによって、長周期相の不規則化の結果をある程度示すことが で きるものと思われる。L12-S相の 初期状態には4章で用いた周期M=5の系を用いた。

各エネルギーパラメータは以下に示すとおりで、4-2節におい てL12-s相→L12相 への相転移過程に用いたパラメータと全く同様で、ある。

自由エネルギーパラメータ: (.ð r, t, K, L) = ( 1. 0, 1. 0, 0.1, 0.000 1 ) 界面エネルギーパラメータ: (G, H)=(0.1, 0.1)

熱揺動パラメータ: (Kグ, Kx)=(0.05, 1.0)

図5- 5、5-6にT=790KおよびT=800Kでの結果を示す。 T=790Kは2相共存 相(A1+ L 12)と規則相L12との相境界よりわずかに温度が高く、2相共存 領域では低 温域にあた る。図5-5の1000ステップではAPBが約2セル程度にわたり不規則化

-70-

(9)

図5-5 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果 (Mニ5、 T=790K)

-71-

(10)

図5-6 TDGLモデルによる計算機シミュレーション 結果(M= 5、 T=800K)

-7 2-

(11)

図5-7 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果 (M= 5'、 T=805K)

-7 3-

(12)

している。 これ らのAPBは波打ち 、 揺らいでいる。 2000ステップでは系 の至る所

で隣接するAPBが接触して広 い不規則領域を形成する。 この組織変化は周期的APB の消滅過程に見られる変化と類似している。 3000ステップでは APBの切断に より 形成されるヘアピン状APBの数は少なく、 むしろ細長い不規則領域を形成する。 そ の後、 不規則領 域は さらに 長くなり、 次第に細くなって切断 される。 5000ステッ プ以降では、 界面エネルギーを下げるために徐々に APBは減少し、 さらに APBの周 期性も完全に崩壊し、 APBは早く消滅 していく。 10000ステップでは規則マトリッ クス中に約3セルか4セルの不規則領域を持ったAPBが帯状に存在した状態になる。

T=800Kは転移温度(Tc=812.468K)と相境界温度(T=785K)との中間の温度 域である。 1000ステップで、 APBには2から3セルの幅を持 った不規則領域が形成 され、 系の至る所で隣接するAPBが接触 している。 2000ステップでは接触した APBの部分で弓現則領域が広がり、 1つの規則ドメインが不規則化 するようになる。

その後、 規則ドメインの多くは消滅して不規則相となる(3000--4000ステッ プ)0 5000ステップ以降では、 不規則化過程で残存し た規則ドメインが成長 し始 める。 すなわち、 T=800Kでは系が一旦不規則化し、 その後、 残存した規則相が成 長する過程を辿り、 2相共存状態へ到達する。 T=805Kではさらに この過程が顕著 となる(図5-7)。

4章において周期MとAPB界面の幅rの関係について議論を行った。 このとき周 期Mが、 界面fに比べて大きい場合、 周期的APBの消滅が起こ らず、 周期的APBが 準安定に存在することを示した。 2相共存領域においても周期的APBの挙動に違い が見られるは ずで ある。 そこで、 M=6の周期を持つ系を用いて、 T=800、 T=

810Kでの結果を図5-8、 5-9に 示 す。 T=800Kでは周期的APBは不規則化 し 、 APBで、の"wetting"現象が起こる。 2000ステップから4000ステップにかけて隣接す るAPBが接触し、 細長い不規則領域を形成する。 しかし、 系内に ヘアピン状APBは

-74-

(13)

存在しない。 それ 以降では、 隣接したAPBが接触した領域では不規則領域が増加し、

APBの領域での不規則相と不 規則化せずに残存し た規則相で2相共存領域が形成さ れる。 一方、 T==810Kでは、 試料は一旦不規則化するO この不規則化は10000ステッ プでも続き、 小さい規則ドメインは消滅していく。 これ に対して、 右下の領域では 4000ステップ以降 から規則相が球状に成長している。 これ は 規則ドメインの成長 がオストワルド成長であ ることを示している。 以上のように、 周期が変わっても相 転移プロセスに大きな変化は ないが、 相転移プロセスが起こる温度は異なる。 すな わち、 APBの"wetting"現象によって2相共存 状態に到達する相転移プロセスが見ら れる温度はM==5ではT==790Kであるのに対して、 M==6ではT==800Kである。 一方、

系が一旦不規則化し、 その後残存した規則相が成長して 2相共存状態へ到達する温 度はM==5ではT=800K以上であり、 M==6では T二810K以上である。

図5-1のTEM観察によって熱的なAPBから不規則化が起こ ることを 示した。 そ こで、 4章で行っ たのと同様に、 異 なるタイプ のAPBが混在する場合の相転移過程 について次に示す。 初期状態は図4-6の系とし、 T ==800KとT==810Kでの結果を 図5-10、 5-11に示す。 T==800K (図5-10)では周期的APBに比べてより早く ノてリアント境界のAPBが不規則化する。 2000ステップ以降では、 このバリアント 境界が不規則化していると同時に規則相内でも隣接するAPBが接 触し、 切断され て、

より大きな規則ドメイ ンを形成していく。 このとき図の左右両面でAPBの周期性は 完全に崩壊する。 しかし、 左 右で異なる様相を呈してい る。 図の左の部分では規則 相中にAPBが存在し、 不規則 領域はAPBの部分に若干存 在するだけになっている 。

これに対して、 図の右の部分 では不規則相中 に規則ドメインの島が浮かんでいるよ うな組織形態を持つ。 また、 T==810K (図5-11)ではバリアント境界の不規則化 はT==800Kに比べてさ らに急速に進行する。

-75-

(14)

図5-8 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果 (M= 6、 T=800K)

-76-

(15)

図5-9 TDGLモデルによる計算機シミュレーション結果 (M= 6、 Tニ810K)

-77-

(16)

図5-10 図4-5の初期状態を用いて計算を行った計算機シミュ レーション結果(M= 5、 T=800K、 G1二0.1、 G2=0.15)

-7 8-

(17)

図5-11 図4-5の初期状態を用いて計算を行った計算機シミュ レーション結果(M= 5、 T=810K、 G1 =0.1、 G2=0.15)

-7 9-

(18)

5-3

考察

L12-S相から(A1+ L12-S)への相転移過程においてその場TEM観察およびシミュレー ションを行った結果、 大きく分けて次の2つの経路が存在することが明らかとなっ た。 これらの経路は(1)低温焼鈍および(2)高温焼鈍に見られる。 この 焼鈍プロセス を自由エネルギー曲線を用いて考察する(92 -93)。

一般に、 自由エネルギーは様々な秩序パラメータの関数として記述される。 、ーー 、- ではシミュレー ションに用いたGinzburg- La ndau型の自由エネルギーを考え、 組成 と規則度の2つの秩序パラメータのみで考察する。 r低温焼鈍」と「高温焼鈍Jを 行った場合の自由エネルギー曲線をそれぞれ図5 -12、 5-13に示す。 両図 の左の

部分に平均組成x。における自由エネルギ一一組成曲線を示し、 右の部分に平衡規則 度を持つ規則相(凡)と不規則相(凡)のエネルギ一一組成曲線を示す。 一般に組 成変動に対して規則度変動は早く起こるため、 規則度が変化するときには組成はほ とんど変化しないと仮定する。

823Kは(A1+ L1z-s)とL1z-sf目の 相境界のわずかに高い温度であるから、 自由エ ネルギー曲線は図5 -12のようになる。 この温度はTo< T< Tcの温度域で、あること がわかる 。 T。は規 則化 に関して 不規 則相 が不 安定 にな る温 度(instability temperature)である。 この温度域では図 に示すように、 不規則相(5=0)と規則 相(5ニミ)にエネルギー の極小値が存在する。 エネルギーが最小となる規則相は この温度で安定相として存在し、 不規則相は準安定相となる。 図の右側のエネルギー 曲線において、 Foが規則相のエネルギー曲線を示し、 凡が不規則相のエネルギー曲 線を示す。 x。は実験を行った試料の組成を示し、 Xoc、 XdC,まそれぞれ規則相と不規則 相の平衡組成である。 エネルギー状態の位置を示すP、 Qは左右の 図で対応して い る。 r低温焼鈍Jを行った試料の初期状態はL1z-s相で、ある。 そのときの規則度が l.0に近い値であると仮定すると、 初期状態のエネルギー状態はPの位置になる。

-80-

(19)

T=823 K

(同)凡 (同)凡

P

Q

xo X

図5-12 823Kにおける組成と自由エネルギーの模式図

Xoe、 xde、んrdeρ もisorderはそれぞれ規則相と不規則相の平衡組成及び 自由エネルギー、 x。は初期状態、の組成を表す。 エネルギー状態はP→

Q→Rの経路で減少する。

-81一

(20)

T=859 K

(同)凡 (同)凡

Q'

Se

S 1.0

χ。 x

図5-13 859Kにおける組成と自由エネルギーの模式図 エネルギー状態はP→Q→Q' →Rの経路で減少する。

-82-

(21)

規則度はすぐに平衡規則度Seまで減少し、 エネルギー状態もPからQの位置へ減少 する。 さらに規則相と不規則相の相分離により、 エネルギーはQからRへと減少す る。 この相分離は通常、 核生成 ・ 成長機構により進行するが、 APBがこの核生成の 発生場所となれば、 新たな核生成のための局所的なエネルギー上昇の必要はなくな る。 そのために一種のスピノーダル分解に似た過程をとるものと考えられる。

一方、 「高温焼鈍Jを行った温度はT>Tcの温度域で、あると考えられるo 859Kで の自由エネルギー曲線を図5 -13に示す。 T>Tcで、は不規則状態がエネルギーの最 小値になり、 規則相は準安定相として存在するであろう。 初期状態は「低温焼鈍」

の場合と同じで、L12-S相で、あるのでエネルギー状態はPの位置にある。 r高温焼鈍」

においても規則度の低下によってPからQヘエネルギーが減少する。 しかし、 規則 度ーエネルギー曲線からも明らかなように、 Qの状態は規則相が準安定な状態であ る。 このため、 容易に不規則化し、 エネルギーはQ' の位置まで下がる。 その後、

相分離が起こるが、 「低温焼鈍」とは異なり、 系はこの 状態でほとんど不規則化し ている。 このため、 相分離過程では準安定相として残存している規則相の成長が起 こる。

以上のように2つの相転移の経路を自由エネルギー曲線から考察することがで

きた。 また、 これらの自由エ ネルギー曲線からわかるように、 低温焼鈍は規則不規 則相転移温度Tc以下の温度で起こり、 「高温焼鈍」はTc以上で、起こる。 実験的には この考察は妥当であると考えられる。 TDGLモデルでも周期が変化した場合や初期 組織が変化した場合において シミュレーションを行い、 2相への相転移過程に異な る2つの経路が存在することを確認した。 この様な「低温焼鈍」と「高温焼鈍」は L1,構造を規則相として有するCuPt合金においても観察された(�2)。

2相共存領域への相転移過程には2つのプロセスが存在することがわかった。 上 述したようなプロセスが起こるとき、 規則 度は図5-14に示したように変化する。

-83-

(22)

一一一一一ー

T

=

770

一一一ー

T

=

790

一一 ー

T

=

800

- - - - -

T

=

805

ハU 噌EEA

0.8

ーーーー'目

、--ー ーーーー-

0.6 ---

、 … \ 『 、 ; \ 心 、 「

\

、、 \、

z.‘

、AY 、

ノ戸

0.4 じっ

0.2

ハU ハU ハUハU ハunu ''i

8000 6000 4000 2000

Ns(time step)

M=5の系での各温度における規則度の経時変化 図5-14

、 \ 一

2.52 2.50 2.48 2.46 2.44 2.42 2.40

(-05\ヨ)k

2.38

0 6000 8000 10000

Ns(time step)

4000 2000

M=5の系での各温度における全自由エネルギーの経時変化

-84- 図5-15

(23)

比較のためにT=770Kの結果も同時に示す。 ともに初期状態は完全規則状態の値で ある1.0を持つとした。 各温度での平衡規則度を以下に示す。

ミ=0.84 7( T= 770K) ミ=0.836( T= 790K) ミ=0.831(T=800K)

規則度の時間変化は2つの段階に分類することができる。 第lの段階ではいずれの 温度においても数ステップで規則度が急激に減少し、 最小値に到達する。 この規則 度の急激な変化は規則ドメイン中の規則度が各温度の平衡規則度まで減少すること による。 しかし、 系全体での平均規則度は平衡規則度よりかなり低い値になる。 こ れは系内に多量に存在するAPBが不規則化し、 系内の平均値を下げていることが原 因である。 この段階で、APBへの"wetting"も起こる。 第2の段階は平均規則度が緩や かに増加し、 平衡値に向かうプロセスである。 この規則度が緩やかに増加する過程 では各温度で異なる組織変化が見られる。 r低温焼鈍」では不規則相の核がAPBか ら発生し、 2相共存状態へと 変態する。 r高温焼鈍Jでは系が一旦不規則化し、 残 存した規則相が成長する。 このように異なる組織変化を 示す相転移過程でも規則度 は同じような変化を示す。 このときの系内の全自由エネルギ一変化を図5-15に示 す。 自由エネルギーの絶対値は温度に依存する。 全ての温度で自由エネルギーは 1000ステッフから2000ステップまで急激に下がった後、 緩やかに減少する。 規則 度変化と比べることによって初期段階の急激な規則度減少、 その後の規則度の増加 もまた、 一連の自由エネルギーを減少させる過程であることを確認できる。

系全体の変化で考えれば、 2つの 経路(低温焼鈍、 高温焼鈍)は共にエネルギー を減少させる最短の経路であることがわかる。次に、 局所的な組織変化、 すなわち、

APBの挙動に注目してこの低温焼鈍と高温焼鈍を 考察する。 2章では無限に広がっ た規則相中にあるAPBの挙動についての考察を行った。 Cu3Pt合金には規則化過程

-85-

(24)

で形成された熱的 なAPBのほかにL12-S相の周期的APBが存在する 。 4章において この周期的APBの消滅過程についての考察を行った。 このときAPBでの規則度が正 位相から逆位相へ連続的に変化する界面形状を仮定した。 しかし、 "wetting"現象が 起こる2相共存領域では図5-16に示すようにAPBにおいて規則度はSr=Oで一旦留 まる傾向を示す。 ここで、 2枚のAPBを挿入した系(100X 5、 M=50)を用意し、

T=790KとT=800KでのAPBの幅fを図5-16の幾何学条件から導くと、

t = 1.427 (T= 790K) t = 3.67 5 (T=800K)

となる。 T=790Kでは4章の結果と比較しでも大きな差はない。 このような温度で は"wetting"現象が起こり、 相転移過程としてはAPBからの不均一核生成が起こる。

これに対してT==800KではT==790Kの場合と比べてfの幅が約2倍以上になり、

その領域は不規則化しているo Mを規則領域、 fを不規則領域とするとt 1Mは(不 規則 領域)I (規則領域)を表し、 不規則化の度合いを知ることができる。 T=

800KにおいてM=5の規則ドメインを持つ系では上記の計算から 規則ドメイン の 約70%が不規則化してしまうことがわかる。 実際は熱揺らぎによってさらに不規則 領域は増加する。 T=800K以上の温度では系は一気に不規則化してしまう。 このと きAPBはもはや存在できず、 不規則領域と規則領域に相分離してじまう。 この場合 は核生成プロセスを経由しないので、 一種のスピノーダル分解がAPBで起こってい ると考えることもできる。松村ら(9t1)は組成と規則度を秩序変数とした2次相転移 を示すGinzburg一Landauの自由エネルギ一式を解析的に解くことによってAPBに過 剰な溶質原子が偏析することを示した。 溶質原子の偏析によってAPBの不規則化が 生じ、 APB上での不規則相の形成は原子の拡散以外に熱活性化過程を必要としない スビノーダル分解の一種であると結論づけている。 本研究から、 l次相転移を示す 合金のAPBでの不規則化もこのスピノーダル分解 の一種であると考えられる。 温度

-86-

(25)

一 B -' D且 曹V i 一 / 一 / / A 一ノ

+クe

ゲ=0

む芯gg祭凶』ω言。

可ぶ 引一

ーグe

r, distance

2相共存領域内でのAPB近傍での規則度の変化

図5-16

-87一

(26)

に依存した2相共存領域への相転移プロセスをAPBの ような局所構造の変化として みると、 全く異なる過程を示すことがわかる。 すなわち、 低温焼鈍はAPBでの不均 一核生成過程であり、 高温焼鈍はAPBでのスピノーダル分解である。 ただし、 これ らの APBで の挙動とL12-sf目からの相転移 が完全 に一致する ことはない。 それ は TDGLモデルの中にL12-S相の周期構造が安定になる効果が含まれていないためであ る。 このため、 最終的に形成された2相共存状態は実験で は(A1 +L12-s)で、あり、

シミュレーションでは(A1 + L12)で、あった。 しかしながら、 APBの挙動から2つの 異なる相転移プロセスを示すことができたのは非常に意義深い。

5-4 小括

本章ではCu3Pt合金のL12-S相から(Al + L1 2-s)への相転移過程をその場TEM観察 および計算機シミュレーションを用いて調べた。 その結果、 以下のことが明らかと なった。

(1) L12-s相から(Al + L12-s)への相転移過程には大きく分けて2つの経路がある。

これらは低温焼鈍と高温焼鈍に区別でき る。

(2)低温焼鈍では、 熱的なAPBやバリアント境界から不規則化が起こり、 2相共 存状態へ到達する。

(3)高温焼鈍では合金は一旦不規則化 し、 その後、 残存した規則相が成長し、 2 相共存状態へ到達する。

(4)低温焼鈍と高温焼鈍について自由エネルギー曲線を用いて考察した結果、 低 温焼鈍は規則不規則相転移温度(Tc)以下での経路、 高温焼鈍は転移点(九)以上での経 路であることがわかった。

(5)シミュレーションにおいても相転移過程に2つの経路 があることを示すこと ができた。 ただし、 本シミュレーションのモデルは長周期が安定になる効果を含ん

-88-

(27)

でないため詳細な組織形態を再現することはできなかった。 しかしながら、 基本的 なプロセスでTEM観察結果と一致した。

(6) APBでの相転移過程を考えると、 低温焼鈍で、はAPBからの不均一核生成によっ て2相共存状態へ到達する。 一方、 高温焼鈍で、はAPBで、の一種のスピノーダル分解 によって相分離が進行する。

-89-

(28)

第6章 Ll 2→(Al+Ll Z-S)相転移過程

この章ではL12相からの(A1+ L12-S)への相転移過程のその場TENI観察を行った結 果を示す。また、 シミュレーションを行うためのモデルを提案し、 その結果を示す。

この過程で注目すべきことには、 L12相からどのように長周期規則相L12-Sが形成さ れるのか。また、 5章で示したL12-S相から(A1+ L12-S)への相転移過程において観 察された"wetting"現象はこのL12規則相中に含まれる熱的なAPBからも起こるのか。

さらに、 L12-S相形成と熱的なAPBの"wetting"現象はど のように競合する か。など の問題点が挙げられる。

6-1

TEM観察結果

L 12相から(A1 +L12-s)への相転移過程におけるその場TEM観察の結果を図6-1に 示す。( a)の初期状態の試料には100nm程度の大き さを持ったL12規則ドメイン が存 在する。また、 湾曲し たAPBが見られる。この湾曲したAPBに注目して観察を行 っ た。試料温度は2相共存領域の低温域から徐々に上げていった。(b)では湾曲した先 端部で微小な揺らぎが発生している。 さらに温度を上げて焼鈍を続けると、 この揺 らぎは次第に大きくなり、 ヘア ピン状APBを形成しようとする。(d)ではヘアピン状 APBが形成し、[0101方向に成長している。この形成過程を簡単に模式図に示すと図 6-2のようになる。図の左の部分の湾曲したAPBは連続する限りその変位ベクトル は保存される。そのため図に示したようにAPBが湾曲していると、 変位ベクトルと APBの相対的な方位関係が異なってくる。1-1で述べたようにAPBには第l種と第 2種のタイプがある。L12-S構造における周期的APBは第l種のAPBであるため、 図 の変位ベクトルと平行の方向に成長する。このとき、 APBの先端部は図の右部分に みられるようなヘアビン形状をとりながら成長する。すなわち、 周期的APBは既存

-90-

(29)

図6-1 L12相から(A1+ L12-s)共存相への相転移過程のその場TEM観察. (a)初期 状態、(b)833K、(c)853K、(d)863Kで焼鈍を行った試料の110暗視野像. 湾曲した APBから周期的APBが形成される.

-9 1 -

(30)

thermal APB

-__J...

・・p v

conservati ve APB

non-conservative APB

図6-2 熱的なAPBから周期的APBが形成される過程の模式図 APB上の矢印は変位ベクトルを表す。

-92一

periodic APB

(31)

の第2種のAPBから発生 ・成長することがわかった。

L12-st目からの相転移過程で、は(A1 + L 12-s)領域の低温部においてもAPBの不規則 化、すなわち"wetting"現象が観察できた。しかし、 今回のL12相からの相転移過程 では最終 的には863Kという高温で焼鈍を行ったに もかかわらず、不規則化 が起こ る様子を観察することはできなかった。そこでさらに温度を上げてその場TEM観察 を行った。その 結果を図6-3に示す。初期状態、の規則ドメインのサイズは20 -...

30nm程度の大きさを持っている。これは先ほどの試料(図6-1(a))に比べても非 常に小さ いサイズである。こ の試料 を焼鈍 する と先ほどの最終焼鈍温 度である 863Kまでは周期的 APBの形成が進行する。この過程は図6-1のその場TEM観察の 結果と同様である。さらに温度を上げると、試料は(d)の状態に相変態した。形成さ れた周期的APBを含んだ領域は不規則化している。対照的に周期的APBが形成され ず、にL12規則ドメインとして残存していた領域はそのまま保持されている。L12相か ら(A1+L12_S)への相転移過程は、L12相からL12-s相への周期的APBの形成過程、

L12-S相からAl相への不規則化過程の2段階に分けることができる。L12相からの

不規則化はほとんど進行していない。このことから、L12-s相からA1への不規則化 過程はL12相のAPBの多いところから不規則相になったとも考えられ る。(d)のよう な(A1 + L 12)共存状態はL12相からL12-s相への相転移が起こらないうちにAPBから Al相への不規則化が 進行したために 形成された状態である。この観察結果から、

L12相から(Al + L12-s)への相転移過程は2つの素過程: (1)L12→L12-S、(2)L12-S→

Alが存在し、これらの過程は競合しながら進行することがわかった。

6-2

シミュレーション結果

これまでに示したシミュレーションのモデルには長周期相が安定になる効果は考 慮に入れていなかった。それは初期状態を長周期相として、その後は長周期相を消

-93-

(32)

図6-3 L12相から(A1+L12-s)共存相への相転移過程のその場TEM観察. (a)初期 状態、(b)843K、(c)863K、(d)883Kで焼鈍を行った試料の110暗視野像. (a)""'(c)

で周期的APBが形成される. その後、 周期的A PBの領域は不規則化するが、 L12 規則相の領域はそのまま保持される.

-9 4 -

(33)

滅させる過程と考えたので、 この効果は相転移過程を調べる上であまり重要でない ためである。 一方、 L1:z相から(A1 + L12-s)への相転移過程ではL1z相からL12 -sf目を 形成する必要があることは観察結果から明らかである。 このため、 2章の速度方程 式に周期性 の効果を加えたTDGLモデルをまず構築する必要がある。

規則度変調によるエネルギーの利得(95-96)による効果はその変調の周期性に由来 するので、 逆空間で考えた方が便利である。

叫=(れ=f(守l叩

(6-1) ηkは規則度波ηlのフーリエ成分である。 エネルギーの利得Epはフーリエ成分の2乗 に比例すると仮定すると、

Ep

= f YkT]/

でで、与えられる。

ここで、 kはL12構造を想定しているので、 0豆k豆1/2の範囲とする。 /kはhkl=

(l,l-k,O)における逆空間ポテンシャルで、 変調による利得のみを取り出すために (6-2)

hkl=110 での値を基準に取る。 すなわち、 /k=O = 0とする。 ηkは一般に複素数な ので、ηk-ηk-r+iTl14・!とおいて

与= f Yk(ηkμT]k/)dk

ηk'r、 ηk ' jの時間変化は、 Lpをηk ' r、 ηk' jの速度定数として

(6-3)

n­ γd p' rL 今ノ- 一一 \tili--ノ R4一九 /Ill1111\ p' L 一一 P \11111ノ

/til--\ 九一d

(6-4)

-

9 5

-

(34)

門川,

p' γd

FL】巧/臼 一一

\l11111ノ P一 -1 d で 「d E一 川 /Ili--I\

一一 rむ p p'

\Illi--/

/till-\ 九一d

(6-5) とおくことができる。 これをフーリエ 逆変換すれば(dηl/dt)lpが得られる。 /kは変調 方向に関するl次元ポテンシャルのフーリエ成分で置き換えられる。 フラストレイ トするようなポテンシャルを仮定すれば、0<k<1/2の範囲で最小値をもつような 規則度変調9kが得られる。

周期性の効果(6-1)式を(2-45)式に代入してシミュレーションを行う。 ここで逆 空間ポテンシャルは簡単のために変調によって現れるサテライト反射の位置に強度 を与えるように設定する。 このようなモデルを用いて計算を行った結果を図6-4に 示す。 系は60X60の系とした。 ここで初期状態はTEM観察結果と比較するために、

phase 1のマトリックス中に円形のphase2の規則相を配列させた系とした。 1000ス テップでは球状のAPBが[011方向に延びた長方形の形状に変化し、[011方向に波打っ た揺らぎが発生している。 2000ステップではその揺らぎが顕著になり、周期的 APBが形成されようとしている。 また、全体的にコントラストの暗い部分と明るい 部分が周期的に配列しているように見える。 3000ステップではヘアピン状APBが 形成し、それが延びて周期的APBを形成しようとしている。 4000ステップでは中 央部分で周期的APBが形成される。 また、その周辺においては暗い領域と明るい領 域が周期的に形成している。 5000ステップでは全体に周期的APBが形成され 、 L1z_s相へ相転移している。 これは一見L1z相からL1z-st目への相転移をうまく再現 できているかのように見えるが、規則ドメイン中からも周期的APBが発生しており 観察結果とは異なる。 したがって、(6- 4)、(6- 5)式は幾分修正する必要がある。

これについては次章に示す。

-96-

(35)

図6-4 TDGLモデルに(6-4)、(6- 5)式で与えた周期性の効果を加えて計算 を行ったシミュレーション結果。 パラメータは図4-3と同様であるが、 周期 性のエネルギーパラメータはLp=O.OOOlとした。

-97-

(36)

6-4 小括

この章ではL12相から(A1 + L12-s)への相転移過程をその場TEM観察、 さらにシミュ レーションを用いて解明 する ことを試みた。 シミュレーションではこれ までのモデ ルに周期性の効果を考慮に入れて行った。 その結果、 以下の ことが明らかとなった。

(1) L12相から(A 1+L12_S)へ の相転移過程において、 周期的APBの形成過程が解 明できた 。 周期的APBは第2種のAPBから周期的揺らぎが発生し 、 ヘアピン状APB

を形成した後、 それらのヘアピン状APBが成長して周期的APBを形成する。

(2) L12相から(A1+ L12-s)が安定な温度で焼鈍を行った結果、 L12相からの相転移 過程に以下の2つの素過程が存在するすることが明らかとなった。

(a) L12→L12-S

(b) L12-s→Al (あるいはAPBの多い領域での不規則化)

この2つの素過程は互いに競合して相転移が進行 する。 L 12 相からの相転移が完全 に終了しない場合に 温度を上昇させると、 L12相は不規則化するこ となく試料中に 残存してしまう。

(3)シミュレーションにお いて、 熱的なAPBから周期的APBの発生 を部分的に再 現することができた。 さらに周期的APBの形成過程を正確に再現するにはモデル に 対して若干の修正が必要である。

-98-

(37)

第7章 TDGLモデルについて

この章で、はCu3P t合金についてのTDGLモデルの変遷を見て、 その問題点を示し、

さらには新たなモデルへの提案を行う。

7-1 これまでのTDGLモデル

TDGLモデルは、 Ginzburg- Landau型の自由エネルギーを基にして速度方程式を

求めるものである。 このとき 、 自由エネルギーを記述するた めに様々な秩序変数を 用いる。 本研究で、はCu3Pt合金の相転移過程にTDGLモデルを適用するために規則度、

組成を用いた。 まず、規則度のみで計算を行った場合の相転移過程を図7-1に示す。

このときの自由エネルギー曲線はCu3Pt合金の平衡状態図および実験データより決

定した。 図7-1は1-1節で示した(1-3)式に基づいて速度方程式をたててシミュレー ションを行った結果である。 上に 示した温度はシミュレーションを行った温度であ り、 全て規則不規則相転移温度(Tc=788.851K)より低い。 初期状態は120X120の 系に周期M=5となるように周期的APBを配列させた。 このとき位相は2章で示 し た規則度の(1 )の取り扱いを用 いて、 正位相5>0に対して逆位相を5<0とした。

表示方法はこれまでのシミュレーション結果と同様に規則領域を明るく、 不規則領 域を暗くするように設定した。 これらの結果から温度によって周期的APBが異なる 様相を呈するのがわかる。 T=740Kでは周期的APBは消滅せ ず、 L12-st目が準安定 状態として残存している。 7モ=770Kではヘアビン機構により周期的APBが消滅する。

さらに温度を上げた転移温度よりわずかに低いT=788KではAPBから不規則化が進 行し、 系は全て不規則化する。 このように、 一旦不規則化すると規則相が析出する ことはない。 以上のように各温度域において周期的APBの挙動を再現できている。

これは周期的APBの消滅過程は組成変動を必要としないことを示唆している。

-99-

(38)

T 740K T 770K T 788K

図7-1 (1-3)の自由エネルギ一式に基づいたTDGL速度方程式を用いて各温度 (上に表示)でシミュレーションを行った結果。表示方法は図4-3に同じ。

-100-

(39)

T 770K T 795K T 810K

図7-2 2つの位相を用いた各温度におけるTDGLモデルの計算機シミュ レーション結果

ハU

(40)

図7-1では規則度のみでTDGLモデルをたててシミュレーションを行った結果を 示した。 2相共存状態を含んだ相転移過程を調べるためには組成変動を考慮に入れ たTDGLモデルが必要である。 そこで、 規則度と組成の2つの秩序パラメータを用 いたTDGLモデルを構築した。 このモデルは第2章に示した。 組成変動を考慮 に入 れた自由エネルギーを用いると状態図を決定することができる(図2-1)。 このよ うにして得られた状態図には 規則相と不規則相の2相共存領域が明確に存在する。

このモデルを用いてシミュレーションを行った結果を図7-2に示す。 規則単相領域 のT=770Kで計算 を行うと図7-1に見られたように周期的APBの消滅が起 こり、

L12-S相からL12相への相転移が進行している。 次に、 2相共存領域内のT=795Kで 計算を行うとAPBが不規則化し、 "wetting"現象が起こる。 最終的にはAPBに不規則 領域が残存し、 2相共存状態となる。 さらに温度を上げたT==810Kでは、 系は一旦 不規則化し、 その後、 残存した規則ドメインが成長する過程を辿り、 2相共存状態 へ到達するO 組成変動を考慮することにより2相共存状態を再現することができた。

また、 APBの"wetting"現象において、 APBにPt原子が集まり、 不規則領域を形成す ることがわかった。 以上のよ うに規則度に組成変動を加えることで相転移過程を幅 広く理解することができた。

ここで問題になってくるの が、 2章 においても示したようにL12構造が持つ位相 である。 これまでにも示してきたようにL12構造は4つ の位相を 持つ。 これに対し て上記の2つのTDGLモデルは2つの位相のみでシミュレーションを行ってきた。

2つの位相を用いる方法を用いてもCu3Pt合金の周期的APBを 含む相転移過程を再 現することができることを示した。 これらのモデルでは1つの方向に成長した長周 期相を取り扱ってきたので、 2つの位相で近似することに問題はなかった。 しかし、

バリアント境界と周期的APBの違いなどのより詳細なAPBの挙動を知るためには4 つの位相を考慮する必要がある。 このためには本研究で用いたPottsモデルを導入し

つムハU

(41)

たモデルが有用である。 この モデルについては2章で示し、このモデルを用V�たシ ミュレーション結果は4章から5章まで、のCu:!Pl合金の各相転移過程で、示した。

以上のようにCU:3Pt合金の相転移過程はほぼ記述することができ、APBの取り扱 いも詳細にできるようになった。 しかし、このモデルでは長周期相が安定となる効 果が含ま れていない。 このため 、L12-S相から2相への相転移過程においては長周 期相が消滅して しまい、(Al+ L 12-s)共存で、はなく(A1 + L12)共存状態となった。 ま た、このモデルでは長周期相を生成することはできない。 そ こで、このモデルに長 周期相が安定となる効果をTDGLモデルに加えた。 この効果は 6章で示した。 周期 性の効果を用いて計算を行 った結果 、熱的な APBから周期的APBが形成される様子 を再現することができた。 ただし、この効果には問題点 も多く存在する。 その1つ に6章でも示した様に規則相中からの周期的APBの発生がある。 TEM観察では熱的 なAPBからの発生は観察されるが、規則相中から周期的APBが発生することはなかっ

た。 このような問題点は今後改善していかなくてはならない。 その改善策のlつを 次節で紹介する。

7-2

今後の展望

これまで、Cu3Pt合金にTDGLモデルを適用させるために様々な改良を行ってきた。

2相共存相を含んだ相転移過程を考慮に入れるために規則度と組成を考慮に 入れた TDGLモデルを構築した。 また、L12構造の持つ4つの位相を記述するためにPotts モデルを組み込んだ新たなTDGLモデルを構築した。 さらに、長周期相が安定にな る効果を記述するために周期性を記述するエネルギー項を速度方程式に加えた。 以

上のようにTDGLモデルは非常に柔軟性に富んで、いると言える。

ここでは前節で問題となった周期性の効果に改良を加える方法を提案する。 その 問題点としては規則相中からの周期的APBの発生があった。 これは周 期性を入れ続

qtu nU

(42)

けることによって規則中にお いても規則度に揺らぎが生じてしまうためである。 ま た、 2相共存状態において規則ドメインは完全に規則化してしまう。 実空間で考え ると周期性の効果を上げることは規則ドメイン中の規則度を上げ、ることになる。 規 則度は非保存型の秩序パラメータであるため、 このような規則度を上げる効果が働 くと規則度は際限なく上昇してしまう。 発散してしまう規則度の挙動を止めるには 周期ポテンシャルが規則度に影響を与えても全体の規則度は保存されるとして取り 扱った方がよい。 そこで、 周期ポテンシャルが働く場合のTDGLモデルを構築する。

周期性によるエネルギ一利得は6 -4節で

Ep = J yバdk

(7-1)

で与えた。 このとき、 規則度の時間変化はポテンシャルが働く場合の拡散方程式と して、

3=KpV付V時

(7-2)

とする。 得られた値をフーリエ逆変換することによって新たな周期性の効果として (dηi/dt)!》が得られるものと期待される。

6-4節では周期性の効果を 逆空間ポテンシャル/kで、与えた。 このポテンシャル /kは逆空間で規則格子反射の衛星反射を示す位置 で最小値を取るようにS関数的 に与えた。 Cederら(95)によって議論された逆空間ポテンシヤルのエネルギー最小 値の位置と変調構造によるエネルギー低下によるエネルギ一位置は必ずしも同位置

でなかった。 このことは6-4節で与えたポテンシャルでは不十分で、 l次元的、 さ らには2次元的な平面でのエネルギ一利得として考えなければならないことを示唆 している。

A斗ハU

(43)

7-3 小括

この章ではTDGLモデルの変遷を示し、 その特徴と問題点を提示してきた。 また、

今後の展望についても提案を行った。 それらを以下にまとめる。

(1)規則度のみを変数に用いたTDGLモデルにおいて周期的APBの消滅過程を再現 することができた。

(2)秩序変数に規則度と組成を用いたTDGLモデルでは2相共存状態への相転移過 程を記述する ことができた。

(3) L12相の持つ4つの位相を記述するためのモデルとしてPotts理論を導入し、

その記述に成功した。

(4) L12-s相が安定となる効果をTDGLモデルに導入したが、 規則度が発散すると

いう問題が生じた。 周期性の効果をより効果的に導入するモデルとして逆空間での 非保存型秩序パラメータを保存量として取り扱う拡散方程式を提案した。

-105-

(44)

第8章 結論

本研究ではCu3Pt合金の長周期相を含む相転移過程に注目し、 TEM観察及び時間 依存型ギンツブルグ ・ ランダウモデルによるコンピュータシミュレーションを用い てその相転移過程を明らかにすることを目的とした。 まず、 L 12構造を記述するこ とができる、 組成と規則度を秩序変数として持つGinzburg- Landau型の自由エネル ギーモデルを提案した。 さらにTEMによってCU:IPt合金の各相転移過程の観察を行っ た。 特に、 観察にはTEM内で直接試料を加熱することによって焼鈍過程を観察でき る「その場TEM観察J法を用いた。 これらのTEM観察とコンピュータシミュレー ションの結果を比較することによってCu3Pt合金の長周期相を含む相転移過程にお

けるAPBの挙動とその役割について詳細な議論を行った。

本研究で得られた結果・結論は以下のように要約することができる。

1. Cu3Pt合金の相転移過程を記述 すること のできるTDGLモデルを構築すること ができた。 Cu3Pt合金はL12構造を規則相に持つため、 L12構造の4つの位相を記述 することができるモデルが必要である。 まず、 近似として2つの位相を記述するこ とができるモデルで計算を行った。 次に、 TDGLモデルにPotts理論を組み込むこと によって4つの位相を記述するモデルを構築した。 これらのモデルを用いてAPB近 傍の各秩序パラメータの変化を計算した。 その結果、 APBで不規則化が起こる

"wetting"現象を示すことができた。 この"wetting"の幅は温度に依存することを明ら かにした。 これらの結果は他の研究結果とも一致 し、 CVMによる計算結果ともよく 一致することがわかり、 このモデルの妥当性を示した。

ハbハU

(45)

2. L12一日→L12f自転移過程

L 12-sf目からL12相への相転移過程はL12 -sf目中に含まれる周期的APBの消滅過程 である。 この消滅過程は隣接するAPBがヘアピン状APBを形成し、 その後、 この ヘ アピン状APBが移動することによって進行する。 また、 L12-s�;目からL12相への相転 移過程はL12相の初期状態に強く依存する。 初期状態中に多くの欠陥やバリアント 境界が存在するとL12相への相転移過程は容易に進行する。 一方、 これらの欠陥が 少ないと初期相であるL1 2-S 相が準安定化して、 L1 2相が安定 な温度においても L12-S相の まま残存する。 以上の 結果は実験結果とコンピュータシミュレーション 結果の双方から導き出される。

3. L12-s→(A 1 + L1 2-s)相転移過程

L12-S相から(A1+ L12-s) への相転移過程のその場TEM観察を行った結果、 温度に 依存して異なる経路を辿ることを明らかにした。 そのlつは「低温焼鈍」で、 初期 状態中に存在する熱的 なAPBやバリアント境界から不規則化が起こり、 2相共存状 態に到達する。 この とき、 周期的APBは不規則化せず、 熱的なAPBとは 異なる挙動 を示す。 他の 経路は「高温焼鈍」で、 転移温度より高温に上げると、 試料は一旦不 規則l化し、 その後残存した規則相が成長することによって2相共存状態に到達する。

以上の経路は自由エネルギー論から考察することができた。 APBに注目すると、 こ の2つの相転移の経路は低温焼鈍ではAPBでの不規則相の不均一核生成過程であり、

高温焼鈍では一種のスビノーダル分解過程であることを明らかにした。

4. L12→(A1 + L12-s)相転移過程

L12相から(Al + L12-s)への相転移過程のその場TEM観察を行っ た結果、 初期 状態 中の湾曲したAPBから周期的APBが形成される様子が観察できた。 また、 これら の

ウtハU

(46)

方位関係から周期的APBは第2種のAPBから発生することを明らかにした。(A1 +

L12-S)への相転移過程はL12→L 12-sとL12-S→A1の素過程に分解することができ、

これらの過程は互いに競合しながら進行する 。このため、 L12→L12-Sへの相変態と 同時にL12-sの不規則化が進行し、 最終状態の(A 1 +L 12)となったと考えられる。 以 上のように、 熱処理を制御す ることにより平衡状態図からは予測できない非平衡な 組織が得られる可能性を示した。 コンビュータシミュレーションにおいては新たに 周期性を導入して計算を行った。その結果、 初期状態中のAPBから周期的APBが形 成される様子を再現できた。

以上のことから周期 的APBと熱的なAPBは各相転移過程 で異なる挙動を示し、 相 転移過程で重要な役割を果たすことを明らかにした。 熱的なAPBは相転移過程にお

いて常にその起点とし て働くことを示すことができた。一方、 周期的APBは周期性 による構造安定性を考慮に入 れて相転移過程を考えるべきである。このように熱的 なAPBと周期的APBは同じ欠陥ではあるが、 Cu3Pt合金におい て異なる役割を果た す。材料組織制御を行う上でもこれらのAPBの性質を見極めてから行うことが必要 である。

-108-

(47)

謝 辞

本論文は著者が九州大学工学部、 総合理工学研究科在学中に沖憲典教授のご指導 のもとに行っ た研究をまとめたものであ る 。 沖憲典教授には終始変わらぬご指導と ご鞭捷を賜り、 心から感謝の意を表します。

また、 本論文の査読を行っていただき、 貴重なご助言をいただきました太田道雄 教授、 杉山奇昌和教授に深く感謝し、たします。

研究を遂行するに当たって、 また本論文をまとめるに当たって、 桑野範之助教授 には熱心なご指導ならびに適切なご助言をいただき、 心より感謝します。 さらに本 研究を進めるに当たって、 多大な るご援助ならびに貴重な意見をいただいた板倉賢 助手、 波多聴助手に対して深く感謝します。 また、 材料工学科石丸学助手には研究 に関する貴重なご意見、 ご助言を頂き、 深く感謝します。

電子顕微鏡利用の際には田中英二技官、 真鍋武志技官の両氏を始め、 電子顕微鏡 室の関係諸氏には大変お世話になり、 深く感謝します。

コンビュータシミュレーションを行うに当たっては、 大型計算機センターの諸氏 には数々の助言を頂き深くお礼申し上げます。

共同研究者であった梶原賢治(現キャノン)、 松野光一(現東芝)の諸氏には数々 の協力をしていただくと共に、 その結果の一部を本論文で使用させていただいた。

また、 千綿伸彦氏、 酒井透氏には本論文作製に当たり多大な協力いただき感謝を 申し上げたい。 最後に、 沖研究室を卒業していかれた諸氏および沖研究室の方々に は研究および日常生活において数々の協力をしていただき、 深く感謝し、たします。

-1 0 9-

(48)

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参照

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