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目 次 要約 1 Summary of the Project 2 1. 事業の目標 3 2. 実施状況 事業の全体的な体制 共同研究の体制 セミナーの実施状況 研究者交流など その他の交流の状況 事業に対する相手国拠点大学 対

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(1)

日本学術振興会

拠点大学交流事業

「中国内陸部の砂漠化防止及び開発利用に関する研究」

中間評価報告書

審査希望領域:農 学

審査希望分野:農学、農芸化学、境界農学

日本側 : 鳥取大学

中国側 : 中国科学院水土保持研究所

2005 年 11 月

JSPS Core University Program

Combating Desertification and Enhancing Rural Development in Inland of China

Tottori University (JAPAN)

Institute of Soil and Water Conservation, CAS (CHINA)

November 2005

(2)

目 次

・ 要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1

・ Summary of the Project

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2

1. 事業の目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3

2. 実施状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5

2-1.事業の全体的な体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5

2-2.共同研究の体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6

2-3.セミナーの実施状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

9

2-4.研究者交流など、その他の交流の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11

2-5.事業に対する相手国拠点大学、対応機関との協力の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11

3. これまでの交流を通じての成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

13

3-1.交流による学術的な影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

13

3-2.共同研究を通じて発表された研究業績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

14

3-3.セミナーの成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

51

3-4.若手研究者の交流に関する成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

53

3-5.交流を通じての相手国からの貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

55

3-6.交流を通じての相手国への貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

55

3-7.成果の社会への還元・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

56

3-8.予期しえなかった成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

58

3-9.課題・反省点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

59

4. 今後の計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

60

4-1.事業の組織・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

60

4-2.事業の枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

60

4-3.共同研究・セミナー・研究者交流の計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

61

5. 今後の交流で見込まれる成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

64

6. 参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

66

(3)

要 約

本事業の目標

砂漠化とは、世界の陸地の約半分を占める乾燥地における気候変動や人間活動に起因

する土地の劣化を意味する。中国の砂漠化は特に深刻で(毎年、四国以上の面積の緑地

が消失)アジア全体の環境変動にも影響が大きく、わが国も中国内陸部から飛来する黄砂

の影響(粉塵被害、日照不足等)を受けている。本研究は、中国と共同して中国内陸部の

乾燥地帯のベンチマークにおいて砂漠化防止の実践的研究を行い、世界に応用できる砂

漠化防止と開発利用の総合的対策モデルを構築することを目標としている。

実施の体制

日本側拠点:鳥取大学、中国側拠点:中国科学院水土保持研究所

以下の 5 課題で構成:①砂漠化の過程と影響の解明、②砂漠化防止計画の作成、③適

正技術と代替システムの開発、④住民参加と環境教育に関する計画作成、⑤緑化と環境保

全のあり方に関する総合的研究

交流の成果

日本と中国で開催地を交互にして、毎年度セミナーを実施した。これまでに日本側から

は 242 名、中国側からは 133 名の参加者があった。また若手研究者の国際交流にも力を注

いだ。日本人の大学院生やポスドクは現地に長期滞在し、調査・観測を行い、中国側の若

手研究者は本事業を通じて日本に招聘され、観測や解析手法を取得した。この結果、日中

研究者による共著論文が数多く生産され、すでに日本での学位取得者が出るなどの交流

の成果があがった。

研究活動の成果

以下のような研究活動を通して、これまで査読付き論文は 277 編(うち SCI 誌は 138 編)、

その他 61 編の研究業績が生産された。①水食を引き起こす降水量の分布を気象衛星から

高い精度で推定できる手法の開発、風食の程度を決定する大きな要因である土壌水分量

を推定する土壌3層モデルの開発などの成果が得られた。②乾燥地域における伝統的な

技術(たとえば魚鱗坑による水収穫)と先端的な技術(耐乾性品種の作出)との適切な組み

合わせからなる砂漠化防止技術パッケージを提示するとともに、その核となる要素技術につ

いての開発・改良をすすめた。③中国黄土高原延安地区の原植生(リョウトウナラ林)と人工

林(ニセアカシア林)を対象に、両者の生理生態特性や森林構造、生物多様性を比較する

ことによって、延安地域における持続的な緑化や生態系の回復の方法が明らかになった。

社会への還元

研究の成果は、中国の砂漠化防止当局にも提供され、砂漠化防止の基礎的な知見として

活用されるなど、すでに砂漠化防止の実用面においても成果があらわれてきている。またす

でに研究成果は多くの論文として発表されているが、日中研究者の共著による書籍の出版

も予定しており、一般の方々へも成果を十分に伝えていきたいと考えている。

(4)

Summary of the Project

Research Objective

About 1/4 of the world’s land surface and 1/6 of the world’s population are influenced by

desertification. The desertification in China is especially serious, an area larger than

Shikoku district disappears every year, and it greatly influences the environment of all Asia,

including Japan. This program seeks to construct a model for combating desertification and

enhancing rural development, which will be useful all over the world.

Organization

The core university in Japan is Tottori University, and the core university in China is the

Institute of Soil and Water Conservation, the Chinese Academy of Sciences.

Activities of this project fall into five subjects areas.

1. Analyzing the Process and Influence of Desertification

2. Studying Planning to Combat Desertification

3. Developing Technologies for Combating Desertification

4. Planning Local Residents’ Participation and Environmental Education

5. Conducting Comprehensive Research on Forestation Planning and Conservation of the

Environment.

Exchange Results to Present

To promote international exchanges, we hold the Japan-China Joint Open Seminar every

year, alternating locations between Japan and China. So far, 242 Japanese and 133 Chinese

have participated in the seminars. As a result of such international exchanges, this program

has achieved benefits such as producing co-authored articles by Chinese and Japanese

researchers and Chinese students obtaining PhD degrees in Japan.

Research Results to Present

Research activities produced,

277 inspected theses (including 138 SCI theses) and 61 other theses.

1. Our achievements also included developing methodology to estimate precipitation

distribution using meteorological satellite datasets and developing a three-layered soil model

to predict soil moisture, which influences the degree of wind erosion.

2. We improved the traditional agrotechnology (such as Yulinkeng) and introduced modern

agrotechnology (creating drought-tolerant breeds) in dry land so that a biologically

sustainable production system can be established. We produced a technology package of

desertification prevention measures that appropriately combines traditional knowledge and

advanced technologies.

3. We set up long-term monitoring sites in both natural vegetation (Quercus forest) and

planted vegetation (Robinia forest), and compared the structure and function (vegetation

structure, biodiversity, water and nutrient cycling, and eco-physiological characteristics of

plants).

Returns to Society

The results of this program are provided to Chinese authorities responsible for

desertification prevention, and the research achievements are practically applied.

We are also trying to convey the results to the public by publishing a book of general

interest and by other means.

(5)

1.事業の目標

砂漠化とは、世界の陸地の約半分を占める乾燥地における気候変動や人間活動に起因

する土地の劣化を意味する。陸地の約 4 分の 1、人口の約 6 分の 1 が砂漠化の影響を受け

ており、深刻な地球環境問題の一つとなっている。

中国の砂漠化は特に深刻で(毎年、四国以上の面積の緑地が消失)アジア全体の環境変

動にも影響が大きく、わが国も中国内陸部から飛来する黄砂の影響(粉塵被害、日照不足

等)を受けている。

砂漠化防止は村、地方、国、地域(大陸)

といった様々なレベルで取り組まれる必要が

あるとともに、自然科学的アプローチだけで

なく、社会科学的アプローチも必要とされ

る。

砂漠化に対する個別対策はあるが、総合

的な対策はまだ確立されていない。わが国

は 1998 年、砂漠化対処条約を批准し、砂漠

化に対する科学技術的支援を行う義務を有

している。

本事業は、中国科学院水土保持研究所と

共同して「中国内陸部の砂漠化防止及び開

発利用に関する研究」を行うものである。研究は中国内陸部の乾燥地域に位置する黄土高

原を対象として行われている。黄土高原は、本来、緑に覆われていたが、永い人類の歴史

の中で植生が破壊され、砂漠化が進んできた地域である。現在は侵食による砂漠化がより

深刻な問題となっており、砂漠化対処の研究や施策が急がれているところである。そこで黄

土高原の中でも、森林成立の限界ラインである年降水量 500mm を境として、それよりも降水

量の少ない神木地区と、より降水量が多い延安地区を主要砂漠化ベンチマーク地域とし、

砂漠化防止の実践的研究を行い、世界に応用できる砂漠化防止と開発利用の総合的対

策モデルを構築することが本事業の目標である。

黄土高原と砂漠化ベンチマークの位置 左図の神木と延安が主な研究対象地 侵食の広がりつつある延安周辺の山々

(6)

研究の目的を前半5 年間と後半 5 年間に分け、 前半(第1フェーズ)では、 総合的砂漠化防止対策に基づく中国黄土高原の持続的発展方法の提示 後半(第2フェーズ)では、 世界に応用できる砂漠化防止と開発利用の総合的対策モデルの構築 を掲げ、本事業を開始した。

(7)

2.事業の実施状況

2-1. 事業の全体的な体制

本拠点大学交流の日本側実施組織としては、拠点大学である鳥取大学の学長を代表者

として、その下に、コーディネーター、各課題代表者を配して、拠点大学参加研究者及び協

力大学の協力を得て本事業を実施している。中国側も同様な実施組織で事業に取り組ん

でいる。

本事業の全体計画、実施状況、課題等に関して、運営委員会での議論やアドバイザリー

ボードの意見を基に、日中双方のコーディネーターが打合せ、確認を行なっている。

日本側実施組織

拠点大学

鳥取大学

実施組織代表者

学長・道上正規(13~16 年度)

学長・能勢隆之(17 年度)

コーディネーター

乾燥地研究センター・教授・稲永 忍(13~16 年度)

乾燥地研究センター・教授・恒川篤史(17 年度)

協力大学

東京大学、九州大学、京都大学、千葉大学、山口大学、東京成

徳大学、総合地球環境学研究所、国立環境研究所

事務組織

事務局 研究・国際協力部-国際交流課-国際交流係

乾燥地研究センター事務室

運営委員会

恒川篤史(委員長)、山中典和(副委員長)外 10 名

アドバイザリーボード

4 名

中国側実施組織

拠点大学

中国科学院水土保持研究所

実施組織代表者

所長・李 鋭(Rui LI)

コーディネーター

中国科学院水土保持研究所・教授・田 均良(Junliang TIAN)

(8)

協力大学

西北農林科学技術大学、北京師範大学、中国農業大学

西安理工大学、新疆農業大学、陝西省砂漠治理研究所

陝西省延河流域世界銀行プロジェクトオフィス技術課、陝西省

水利庁、中国科学院石家荘農業現代化研究所(現中国科学院

遺伝与発育生物学研究所農業資源研究センター)

2-2. 共同研究の体制

本事業の目標を達成するため、平成13年度~平成17年度までは、以下の5つの研究課

題を設けて事業を実施した。

第1課題:砂漠化の過程と影響の解明

第2課題:砂漠化防止計画の作成

第3課題:適正技術と代替システムの開発

第4課題:住民参加と環境教育に関する計画作成

第5課題:緑化と環境保全のあり方に関する総合的研究

なお、第2フェーズ(平成18年度~平成22年度)では、①これまで研究内容と研究対象地

がセットになっていたのを改め、主たる対象地である神木(草地を主体とする半乾燥地域)

及び延安(森林を主体とする乾性半湿潤地域)の両者において比較研究が行えるような

仕組みを整えること、②新たな研究課題に対応し、より総合的な研究体制を構築すること、

③課題間の連携を深め、本事業全体としての統合性を高めるため、研究課題を3課題(第1

課題:砂漠化のプロセスと影響に関する解析(基礎的プロセス研究)、第2課題:適正技術と

代替システムの開発(砂漠化対策技術の開発)、第3課題:砂漠化防止に対する総合的アプ

ローチ(3課題の総括))にすることについて、日中間で合意された。詳細については、「4.

今後の計画」の項で述べる。

各課題の研究目的

第1課題:砂漠化の過程と影響の解明

砂漠化の過程と地域・社会への影響を明らかにすることを目的とする。そのため、黄土

高原の中でも特に侵食が激しい陝西省神木県六道溝流域を砂漠化ベンチマーク地域と

し、砂漠化のモニタリングを行う。モニタリングは衛星画像を用いたリモートセンシング、数

値解析モデル及び直接観測による地上モニタリングを組み合わせて行う。また、モニタリ

ングにあたっては、自然科学的アプローチだけではなく、社会科学的アプローチも行う。

モニタリングによって得られたデータベースを基本にして、GIS 等の技術を駆使して、砂漠

化の過程と影響の相互作用を解明することを目指す。以上により、「リモートセンシングに

よる砂漠化地域における植物・水資源などの動態予測」と「土地利用分類及び評価法」が

確立される。さらに、砂漠化データベースが構築され、かつ砂漠化の過程と影響の相互

(9)

関係を自然科学的側面と社会科学的側面の両面から定量的に評価できる砂漠化モデル

が構築される。これらは、砂漠化の事前予測や砂漠化防止対策を検討するうえで役立つ

ことが期待される。

第2課題:砂漠化防止計画の作成

砂漠化防止計画の作成を目的とする。そこで、他の課題との連携を図りながら、砂漠化

防止計画の骨格を作成するとともに、その肉付け作業を行い、最終的に総合的砂漠化防

止対策を構築する。また、塩類集積及びその前兆と考えられているウォーターロギングを、

本課題において対象とする主な砂漠化現象として取り扱い、そのメカニズムの解明と、防

止対策の確立を行う。そのベンチマーク地域を陝西省の洛恵渠灌区(52,000ha)とし、当

該地域における灌漑農地の塩類化の現状と灌漑管理が地下水挙動・塩類集積に及ぼす

影響等を明らかにした上で、適切な灌漑管理法を提案する。また、空間的・時間的に不

均一である土壌の塩類集積状態と塩類集積要因との関係を広域的かつ長期にわたって

調査・解析し、土壌塩類化機構を明らかにするとともに、塩類化の防止・修復のための対

策を提言する。さらに、塩類集積やウォーターロギング等の環境劣化を生起させない栽培

システムや、耐塩性植物を利用した塩類除去技術についても提言する。

第3課題:適正技術と代替システムの開発

持続的農業の確立に欠かせない適正技術と代替システムの開発を目的とする。ここで

は、砂漠化ベンチマーク地域の陝西省延安地区を対象に、現地に伝わる伝統的な農業

技術と近代的農業技術から、それぞれの有利な点を融合・改良することによって、農業生

産性の向上と生態環境の保全、農村経済の発展が図れる持続的な農業技術システムの

確立を図る。そのため、傾斜地におけるテラス工の効果、冬季ビニルハウス栽培における

キュウリの連作障害の原因究明と対策、などについて研究を進める。

第4課題:住民参加と環境教育に関する計画作成

砂漠化対処に不可欠な住民参加システムと環境教育のあり方について提言することを

目的とする。そのため、中国側が基礎データを有する砂漠化地域の中から、ベンチマー

ク地域を複数(黄土高原延安地区、河北省北部、新疆ウイグル自治区ウルムチ地域など)

選定し、そこにおける自然、砂漠化指標植物、土地利用、経済、産業、社会組織、女性の

役割、伝統的知識、家庭・学校・社会における環境教育などについて、系統的に聞取り

調査を行い、問題点を抽出する。他地域における砂漠化対処の先進的事例についても、

聞取り調査や文献調査を行い、ベンチマーク地域と比較する。

第5課題:緑化と環境保全のあり方に関する総合的研究

土壌の劣化が進み、その対策として緑化が進められている黄土高原において、今後の

半乾燥地緑化と環境保全の方向性を検討することを目的とする。そのため、砂漠化ベン

チマーク地域の黄土高原延安地区を対象に、その自然環境に適した持続的な緑化法の

検討に必要な、畑地跡に植栽された外来樹種と郷土樹種の生理生態的特性、森林の回

(10)

復に伴う森林構造や生物多様性及び環境の回復過程、及び外来樹種からなる人工林と

自然林の比較による持続的な生態系機能について解明する。

(11)

2-3. セミナーの実施状況

本事業開始の平成 13 年度から毎年実施している日中合同セミナーは、研究成果の発表

と日中双方の研究者による課題別討議と全体討議を行い、日中双方の研究者の理解を深

め、課題間の連携強化と本事業の目指すべき目標と研究計画をより明確化することを目的

としている。なお、平成 16 年度の日中合同セミナーでは、参加していただいたアドバイザリ

ーボードから、研究発表の内容、拠点大学交流事業が今後目指すべき方向等について意

見や助言をいただいた。

また、平成 16 年度から、日本側においては公開勉強会・セミナーを随時開催し、参加メン

バーが基礎的知識を共有するとともに、今後の研究の方向性を既存の課題の壁を越えて

議論し、課題間の連携を深めている。

日中合同セミナー

タイトル:中国内陸部の砂漠化防止及び開発利用に関する日中合同セミナー

第1回

開催期日:平成 13 年 11 月 14、15 日

開 催 地:鳥取大学乾燥地研究センター

参 加 者:日本側 81 名、中国側 16 名、計 97 名

第2回

開催期日:平成 14 年 11 月 15、16 日

開 催 地:中国科学院水土保持研究所

参 加 者:日本側 17 名、中国側 25 名、計 42 名

第3回

開催期日:平成 15 年 11 月 14、15 日

開 催 地:中国科学院水土保持研究所

参 加 者:日本側 21 名、中国側 25 名、計 46 名

第4回

開催期日:平成 16 年 11 月 4、5 日

開 催 地:鳥取大学乾燥地研究センター

参 加 者:日本側 90 名、中国側 18 名、計 108 名

第5回

開催期日:平成 17 年 9 月 3、4 日

開 催 地:中国科学院水土保持研究所

参 加 者:日本側 33 名、中国側 38 名、計 71 名

(12)

公開勉強会・セミナー

平成 16 年度:5 回開催

開催年月日

タ イ ト ル

平成 16 年 9 月 21 日

黄土高原における熱収支・水収支

平成 16 年 9 月 28 日

黄土高原の植生

平成 16 年 10 月 12 日

黄土高原の降水特性

平成 16 年 12 月 15 日

黄土高原の農業

平成 17 年 1月 25 日

私の中国理解

平成 17 年度:5 回開催(11 月現在)

開催年月日

タ イ ト ル

平成 17 年 7 月 7 日

乾燥地保健医学の構築

平成 17 年 7 月 28 日

黄土高原六道溝流域の自然環境

乾燥地に関連する適正技術

平成 17 年 9 月 29 日

中国の砂漠化対処について

平成 17 年 10 月 21 日

黄土高原の植生と緑化、黄土高原の地形的特徴と

土地被覆

平成 17 年 11 月 17 日

土壌に関する適正技術

平成 16 年度日中合同セミナー 日本、中国等から 100 名以上の研 究者が参加した。 (鳥取大学乾燥地研究センター)

(13)

2-4. 研究者交流など、その他の交流状況

両国のコーディネーター等が本事業の進捗状況・問題点・事業計画等について討議・確

認を、面談やメール等によって行っている。初年度(平成 13 年度)は、本事業の基本的な進

め方、砂漠化ベンチマーク地域の選定について議論した。翌年度以降については、当該

年度の成果及び課題について確認するとともに、次年度の研究計画の詳細ならびに日中

合同セミナーの実施時期、内容・方法等について議論を行っている。平成 15 年度には、重

症急性呼吸器症候群(SARS)発生に伴う研究計画の見直し、日本側観測器材の中国持

込みに関する通関の問題点について協議を行った。

なお、中国側拠点大学、協力大学との本事業以外の研究交流も、研究者レベル、研究グ

ループレベルで活発に行なわれており、それらの交流は本事業と相互補強的に作用して、

情報の集積や研究者同士の理解が深まるなど日中双方に良い結果をもたらしている。

また、本事業では、若手研究者の育成にも力を注いでおり、本事業内の経費のみならず、

他の経費(委任経理金等)も投入して、大学院生やポスドクを現地調査に帯同、あるいは単

独滞在型研究も実施している。また、平成 17 年度の日中合同セミナーでは、日中双方の若

手研究者によるワークショップを実施し、次世代を担う日中双方の若手研究者の交流を深

めた。

2-5. 事業に対する相手国拠点大学、対応機関との協力の状況

ベンチマークでの観測に必要な日本側器材の中国への持ち込みに関して、平成 14 年度

は、中国側拠点大学である中国科学院水土保持研究所の懸命の努力と、対応機関である

中国科学院本部の協力を得て無税通関とすることができたが、平成 15 年度は、中国税関

規則の改正による観測器材の通関の遅れや、持込時保証金といった問題が生じた。これら

の問題についても中国側の懸命な努力により解決することができた。

また、本事業開始の前年(平成 12 年度)には、本事業の重要性から、中国側拠点大学の

中国科学院水土保持研究所、協力大学の中国科学院石家荘農業現代化研究所(現中国

科学院遺伝与発育生物学研究所農業資源研究センター)との学術交流協定を締結し、交

流の強化を図ってきた。事業が始まった後も、平成 15 年度には中国農業大学、平成 17 年

度には新疆農業大学、北京師範大学と、本事業を通じて交流が深まり学術交流協定を締

結した。新疆農業大学においては、「日中乾燥地研究共同実験室」を設置するなど、本事

業実施に積極的に協力してくれている。

なお、今年度 8 月には、中国科学院水土保持研究所との学術交流協定の更新を行い、さ

らに 5 年間協定が延長されることとなった。

このように、相手国拠点大学等との協力状況は、極めて緊密で良好なものとなっており、

本事業は円滑に進んでいる。

(14)

学術交流協定の締結(本事業の交流による)

締結相手機関 締結年月 備考 1 中国・北京師範大学 平成17年 7月 2 中国・新疆農業大学 平成17年 2月 3 中国・中国農業大学 平成15年 6月 4 中国・中国科学院 水土保持研究所 平成12年10月 平成17年10月に更新 5 中国・中国科学院石家荘農 業現代化研究所 平成12年11月 (現中国科学院遺伝与発育 生物学研究所農業資源研究セ ンター) 6 中国・西安理工大学 平成12年2月 平成17年2月に更新 *平成17年11 月現在

(15)

3.これまでの交流を通じての成果

3-1.交流による学術的な影響

交流による学術的な影響の概要は以下の通りである。

(1)日本側では本事業に関連して以下のような研究プロジェクトが立ち上げられた。

① 21世紀COEプログラム『乾燥地科学プログラム』

平成

14~18 年度、文部科学省

② 科学研究費補助金・基盤研究(B)(海外学術調査)

『中国黄土高原下流域における物質循環を利用した塩害対策と農地の保全』

平成

16~18 年度、日本学術振興会

③ 戦略的国際科学技術協力推進事業『砂漠化を抑制する乾燥耐性植物の開発(黄土

高原緑化を目指して)』

平成

16~19 年度、独立行政法人科学技術振興機構

(2)本事業の学術的成果をもとに以下のような学術イベントが実施・計画された。

日中国際研究シンポジウムの開催(平成 17 年 5 月 20 日、鳥取市)

8th International Conference on Dry Lands Development

(平成

18 年 2 月 25 日~28 日、中国・北京)

(3)本事業に関連し、日本側では以下のような学術的な称号を受けた。

① 本交流に対する功績から、稲永は平成 15 年に中国科学院黄土高原土壌侵食・乾燥

地農業国家重点実験室学術委員会委員の任命、中国農業大学客座教授、北京師範

大学客座教授、平成 16 年に新彊農業大学名誉教授の称号を授与された。

(4)中国側では、本事業に関連して、複数の大型研究プロジェクトが立ち上げられた。

① プロジェクト名「黄土高原における土壌保全と生態建設に関する研究と実証」、期間:

2000~2004 年、研究資金:1000 万元(1億 4000 万円)。研究資金提供機関:中国科学

院 CAS(No. KZCX1-06 )。

② プロジェクト名「黄土高原中部における生態農業のモデルと技術に関する研究」、期

間:2001~2005 年、研究資金:130 万元(1800 万円)。研究資金提供機関:中国科学

技術省(MOST)。

③ プロジェクト名「黄土高原における生態回復の環境影響評価」、期間:2006~2009 年,

④ 研究資金:150 万元(2100 万円)。研究資金提供機関:NSFC(No. 90502007)。

⑤ プロジェクト名「土壌・水の保全・生態建設と持続可能な開発に関する研究と実証」、

期間:2005~2010 年、究資金:1000 万元(1億 4000 万円)。研究資金提供機関:

CAS。

⑤ プロジェクト名「黄土高原における生態復元-中核的国際共同プロジェクト」、期間:

2005~2007 年、究資金:15 万元(210 万円)。研究資金提供機関:CAS。

(5)本事業に関連し、中国側では以下のような学術的な賞を受けた。

① 延安における中規模生態建設に関する研究に対して、第2級科学技術進歩賞を、陝

西省政府から授与された。

(16)

3-2. 共同研究を通じて発表された研究業績

(第1課題)

「砂漠化の過程と影響の解明」

第1課題では、砂漠化の過程と影響の解明を大きな柱として、マクロ的に砂漠化(中国黄

土高原)を診断する方法、及び流域レベル(陝西省六道溝流域)で砂漠化を診断そして対

処する方法を開発することを目的として研究を行った。具体的には、土壌、植生、気象、水

資源を含んだ生態学的診断・治療方法の開発であり、次のように要約できる。

診断方法の開発

(1)土壌・・・水分・熱動態モニタリング手法の開発

(2)水資源・・・水文量のモニタリング手法の開発、流域水循環モデルの開発

(3)植生・気象・・・バイオマスや土壌水分、リモートセンシングの手法を用いた砂漠化モニタリ

ング

対処方法の開発

現状の流域水収支を評価したうえで、適切な土地利用シナリオを水量、水利用効率とい

う観点から提示すること

以下に、それぞれの研究結果を要約する。

(1) 土地被覆と大気の間でやりとりされる熱エネルギーの定量的解明を目的に土壌 3 層モ

デルを開発し、現地と鳥取砂丘の観測データを用いて検証した。その結果、土壌温度、

土壌水分量及び熱収支の計算値は観測値をほぼ再現できた。また、5 種類の土壌に

ついて、土壌水分特性曲線、アルベド、水蒸気の拡散距離を土壌水分量の関数として

表現し、検証した結果、各土壌のモデル計算の結果が観測値と一致した。

(2) 地下水位や河川流量、蒸発散量の連続観測を行った結果、地層は大まかに 3 層構造

で、降雨時と無降雨時で流出特性が著しく異なること、河道内には灌漑用のダム建設

が行われているが、土壌流出によるダム堆砂のため 10 年程度で畑として利用されてい

ること、河道のダムや畑の状況で流出特性が変化しており、ダムや畑の評価が重要で

あること等が分かった。また、流域に優先する自然草地の蒸発散量は植生期間では裸

地面の 1.5 倍、年間では 1.2 倍であること、草地の蒸発散量を支配する要因は主に土壌

水分量であることが分かった。

(3)

(1)で開発された 3 層モデル及び黄土高原に存在する 43 の気象ステーションのデータ

を用い、黄土高原の熱収支・水収支及び土壌水分の空間分布を算出し、その物理的

特徴について考察した。さらに、土壌水分量の季節変化から高原全域の乾燥度合いを

示し、その分布と現存の植生分布(リモートセンシングによる)を重ね合わせることで、植

物分布力の潜在性を求めた。これにより、過去の研究には見られない乾燥度の概観を

示すことができ、砂漠化の進行度合いをより的確に示すことが可能になった。

降水量分布を気象衛星(GMS-5)の IR データから推定する方法を提案した。IR のデ

ジタルカウント値と降水量の間に良好な相関が認められたことや精度の向上には可視

(17)

域のデータも必要であること

などが分かった。また、降水

量を統計的に分析するととも

に、総観場的解析や地形因

子 解 析 を 用 い た 月 降 水 量

1km メッシュ分布推定モデル

を作成した。本研究により、黄

土高原の砂漠化に支配的な

降雨量を細かなメッシュで再

現することが可能になった。

葉面積指数(LAI)と植物活性

(クロロフィル)の変化を分離

するため、群落の分光反射特性を用いた指標を提示した。さらに、植物活性と蒸散量の

関係が直線的であることを利用し、指標を用いた蒸発散量推定方法を提示した。

(4) (2)における流域の水収支をモニタリングする手法の開発に加え、流域における各土地

被覆からの蒸発散量を推定するためのアルゴリズム(数値計算モデルとリモートセンシ

ングの手法を併用したもの)を開発し、流出量の観測値と併用することで、流域の土地

利用を評価した。本研究では、「消費された水分量に対する土壌侵食からの保護力」を

水利用効率と定義し、自然草地の水利用効率が他の土地利用と比較して優れているこ

とを示した。すなわち、自然草地は消費する水分量が少なく、土壌に保持する水分量も

比較的大きいことに加え、土壌侵食に対する効果も大きいことが分かった。また、現地

におけるインタビューや土壌pH、窒素含量、土壌固結度などの観測からも自然草地の

有用性が認められた。しかしながら、流域に暮らす人々にとって土地利用をすべて自然

草地に変えることは得策ではなく、畑地、牧草地等をも考慮に入れた土地利用を考え

ていく必要がある。適切な土地利用を提示することがこれからの課題である。

(第2課題)

「砂漠化防止計画の作成」

第2課題は、砂漠化防止計画の作成を研究目標としており、他の課題と連携を取りながら、

研究を進め、最終的に総合的砂漠化防止対策を構築する。また、他の課題で扱われてい

ないウォーターロギング、塩類集積の問題を、本課題において対象とする主な砂漠化現象

として取り扱い、そのメカニズムの解明と、防止対策の構築を行うことを目的としている。本課

題の共同研究を通じて発表された成果の主なものは以下のとおりである。

砂漠化とその防止対策に関する研究

1. 中国における砂漠化防止に向けた取り組み

中国は 1997 年に国連砂漠化対処条約を批准し、中国砂漠化対処条約実施委員会

(CCICCD)という国内機関を設けて、複数の省庁にまたがる砂漠化防止の行政を横断的

102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 35 36 37 38 39 40 0.4 0.4 0.6 0.6 0.8 0.8 1 1 1 1 0.8 1

Longitude (deg)

L

atitu

de

(

de

g)

Forest Shrub Typical grass Short grass Others 黄土高原における潜在的な植物分布

(18)

に統括している。これまでに実施された国レベルの計画、各地の砂漠化防止モデルプロ

ジェクトの成功例、失敗例、退耕還林等の砂漠化防止対策について、調査・分析を行っ

た。

2.アジアの砂漠化とその防止対策

アジア地域 10 カ国(中国、モンゴル、インド、パキスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、

トルクメニスタン、シリア、レバノン、イエメン)を対象に各国の砂漠化とその防止対策の現

状について、調査し、考察した。

3.サブサハラ・アフリカ地域における砂漠化問題

サブサハラ・アフリカ地域の砂漠化の現状、とりわけ食料と農村地域の水問題にスポッ

トをあて、これらの問題を分析し、解決するための方策について検討し、提案した。

農地の塩類化の防止に関する研究

1. ベンチマーク地域の洛東区に散在する約 80 の観測井を選定し、各井の地理情報、地

下水位、水質(電気伝導度(EC)、各イオン濃度、ナトリウム吸着比(SAR))及び周辺の土壌

間隙水の ECp、ECe、各イオン濃度、SAR について、継続的に観測・分析を行った。その

結果、地下水の EC 値、SAR、各イオン濃度は、地下水の深さ、下層土の土性、塩類分

布等と密接な関係があることが明らかとなった。また、このような地域における異常降雨

に伴う湛水は、地区内の地下水水質(EC、SAR)を大きく変化させることが明らかになっ

た。特に、SAR は大降雨後継続的に上昇傾向を示した。これは下層土の Na が Ca や Mg

に比して多く地下水中に溶出したためと考えられる。SAR は上昇の一途をたどっており、

今後の動静に注意する必要がある。

一連の調査と分析結果から、本地域における塩類集積プロセスを類型化(付記(1)参

照)し、さらにそのプロセスを引き起こす要因(付記(2)参照)を明らかにした。そして、これ

らのプロセスを阻止・回避し、その誘因を除去する対策(付記(3)参照)について提案を行

った。

付記

(1)塩類集積プロセスの類型化:

本地域の灌漑農地における塩類集積プロセスは、次の4タイプに類型化できることを明ら

かにした。

①地下水の毛管上昇による塩類集積

②高塩類濃度地下水の継続的灌漑利用による塩類集積

③井戸の掘削残土(高塩類濃度)を圃場面に締固め盛土したことによる塩類集積

④地区内の地形特性及び排水特性に起因して起こる排水不良部の塩類集積

(2)上記プロセスをおこす要因:

上記の塩類集積プロセスを助長する要因は以下のとおりである。

①地下水位が高いこと(特に、地下水深が3m以内の場合は大きな要因となる) (北部及

(19)

び中央部)

②地下水の塩類濃度が高いこと(北部及び中央部)

③下層土に可溶性塩類が集積していること

④下層に難透水性の土壌が存在していること(特に、上位段丘面)

⑤水路の搬送損失が大きく(特に未舗装、舗装部欠損水路)、圃場内浸透損失が大きい

(長い畦長のもとでの畦間・ボーダー灌漑)こと

⑥排水路管理と地下水管理が不十分なこと(特に地下排水は殆ど機能していない)

⑦排水システムに管理上の問題があること(灌漑システムと排水システムの管理者が異な

る)

(3)灌漑農地における二次的塩類集積の防止対策:

本地区における二次的塩類集積を防止するための広域水管理のあり方として、次の点を

提案することができる。

①排水システムの効率を高め、地下水位が適正な高さになるように管理する。そのために

は、地表排水だけでなく、地下排水も考慮に入れた検討が必要となる。

②塩類濃度の高い地下水については、利用を制限する。塩類濃度に応じた使用基準を

設ける。

③井戸の掘削にあたり、塩類濃度の高い掘削土については影響の及ばないところへ搬

出する。

④地表排水を阻害するような行為を禁止するとともに、排水が阻害される危険性のある箇

所の修復・整備を推進する(住民に対する啓蒙活動も重要)。

⑤黄土高原よりの流出土砂を活用した流水客土を積極的に導入し、普及する。

⑥ウォーターロギング(過湿状態)を防止するために水路沿い、あるいは圃場周辺部への

植林を奨励する(バイオ排水を積極的に導入する)。

⑦灌漑効率の改善を推進する(搬送損失、圃場水適用損失の削減を徹底する)。そのた

めには、

a)水路舗装を推進し、欠損部の補修を徹底させ、舗装の高度施工に注意を払う。

b)圃場の畦長(長辺方向長さ)を極力短くし、水足を速めるために圃場均平作業の精度

を上げる。

⑧現在灌区が管理している灌漑システムと大茘県人民政府が管理している排水システム

について、これら両システムの一元管理化を図り、管理体制を整備する。

2.ベンチマーク地域の土壌塩類集積状況を、ジオスタティスティクスによって面的に調査・

解析し、塩集積の実態、要因を明らかにした。灌漑区内における表層土の塩類の集積量

及び組成は面的に多様な分布状況を示し、それらは地形、土壌の物理的性質(土性、排

水性)の分布とよく対応していた。本地域は3つの段丘で形成されているが、最も年代の

古い高位段丘面は下層に粘質な層が存在して排水性が悪く、塩類集積の危険性が非常

に高いと判定され、大量の塩類集積箇所が局所的に点在していた。一方、低位段丘面は、

(20)

シルト、細砂に富んで透水性にすぐれ、塩類の集積量は少なかった。しかし、ナトリウム割

合の高い塩類組成で、8~8.5 の高い土壌 pH を示し、アルカリ化の進行が認められた。リ

ンゴ、ナツメ等の落葉果樹の大半にはアルカリ化に伴う障害が発生していた。これらの結

果から、地域内における灌漑・土壌管理は、決して画一的に行うのではなく、地形、土性

に適応させて行う必要のあることを明らかにした。

3.植物体中の塩と耐塩植物の利用については、一連の実験結果から次のことが明らかとな

った。(1)乾燥地研究センターに自生する植物の葉の灰分は 2~6%程度であったのに比

較して、ベンチマーク地域の植物の葉の灰分は 4~20%程度であり、塩害危険地の植物

は乾燥地研究センターに自生する植物に比べてほぼ2~3倍の灰分を含んでいた。 (2)

洛恵渠灌漑区で採集した雑草の中には塩生植物として知られる植物が含まれていた。(3)

植物体中の灰分含量とそれが生育する土壌の電気伝導度との間には明瞭な相関を認め

ることができなかった。まれに負の相関が見られた。この理由として3つのことが推測され

た。①1時期における土壌電気伝導度は必ずしも全生育期間を通じた土壌電気伝導度を

表していないかもしれない、②植物の側にある範囲の土壌塩類に対して一定量の塩だけ

を吸収するように調節する能力があるのではないか、③イオンの間に競合があるのではな

いかということである。③についてはその可能性が低いものと推測されたが、更に灰分の

内容として Na、K、Ca、Mg の4元素の他の元素、陰イオン種についても分析する必要が

ある。(4)根や茎下部の灰分より茎上部、葉、実の灰分の方が多い傾向にある。(5) ヨモギ

3種に比べて塩蓬、ホウキグサ、猪毛菜は根に灰分が多く、茎下部に少ない傾向があっ

た。

(第3課題)

「適正技術と代替システムの開発」

第3課題では、長年その風土に密着した伝統的な農業技術を尊重し、さらに持続的な農

業を行うために、近代農業技術の導入を図る。農業生産性の向上と生態環境保全、農村経

済の向上のために、より適切な農業技術を確立することを目的としている。

研究面での成果

研究プロジェクト開始初年度の平成 13 年度は現地を見て資料を集め、研究協力者と交

流を深め、5 カ年間の基本的な研究の骨格を決めた。水土保持研究所の研究者とベンチマ

ークを調査した結果、(1)延安市南東部の傾斜地におけるテラス工の効果、(2)延安市北部

の冬季ビニルハウス内のキューリ栽培における連作障害の原因究明と対策、(3)中国の楊凌

市にある水土保持研究所内の実験圃場での耐乾性作物の作出と遺伝子レベルの研究、の

3 つの研究テーマを柱とした。しかし、(1)のテーマは中国側の研究プロジェクトの継続がなく、

その後は、(2)、(3)の研究テーマが中心となった。基本的に拠点交流の共同研究は、海外

(21)

研究プロジェクトであり、現地実験を主体とする研究であるから相手国の協力が必須条件と

なり、現地での継続実験が必要となる。

(1)傾斜地テラスの試験

研究対象地域の陝西省延安市南部では降雨依存型農業が多くを占め、最近の降水量

の減少は直接的に生産量の減少を引き起こしている。この地方では、黄土高原の土壌侵

食の防止とともに、集水技術が重要で、小規模な灌漑事業が必要である。年降水量が

300-700mm の傾斜地テラスのトウモロコシ、ポテト、大豆などの栽培試験と流域の水収支、

養分調査などが研究テーマとなる。平成 13-14 年度に、黄土高原の土壌侵食の防止に

有効なテラス試験区を設けて、斜面区と比較試験を行った。実験では、低施肥区、高施

肥区、マルチ区、保水剤添加区などの試験区を設けて、ジャガイモの栽培試験を行った。

テラス試験区と斜面区との生育収量に有意な差異がなかったが、土壌水分に関して、低

施肥区の根群域の土壌水分が高施肥区よりも土壌断面の水分量が多い傾向があった。

これは、高施肥区の生育が良好で、根の吸水による土壌水分の減少が反映されたと推察

された。

(2)中国式無加温ハウス栽培の連作障害

従来は斜面で作物を栽培していたが、「退耕還林」の政策の下で、高い収益が期待で

きる換金作物を主体とした施設農業が盛んになった。しかし、高収益を得るために過剰施

肥、過剰灌漑による土壌の過湿と病害虫の発生、その対策としての薬剤散布と食の安全

が問題となってきた。平成 14 年度に、耕作履歴が8、4、1年と初めて耕作するキュウリの

栽培試験区を設定し、実験を開始した。その後、毎年継続して実験を行った。その結果、

最初に2年間は収量が増加したが、その後、耕作履歴が増すに従って、生産量が減少し、

キュウリの病気が増加する傾向が認められた。

(3)中国式無加温ハウス栽培の土壌水分・微気象環境

この理由を解明するための基礎的実験を行った。平成 15 年度から、栽培期間中の水

管理、肥培管理を追跡するためにプロファイル水分計を持ち込み、土壌水分の経時変化

を測定した。また、ハウス栽培の微気象観測では、日射量、気温、湿度、地温、壁面温度

などの多くの気象要素を測定した。その結果、現地の農家の灌漑では土壌水分貯留量

の増加傾向が認められ、灌漑水量が多いことを指摘した。また、中国式無加温ハウスの

外部気温が氷点下であっても、ハウス内は 10℃前後の温度を確保できること、ならびに、

相対湿度が夜間はほぼ 100%、日中でも 90%程度で推移し、高湿度条件で栽培している

こと、湿度の高いことがキュウリの病気増加傾向と関連があること、などが認められた。また、

対策として、中国式無加温ハウスの天井部を開放し、日中の換気を行うことによって、ハウ

ス内気温の上昇緩和に効果があることが確認できた.しかし、微風速計で計測できるほど

の温室内風速は発生しておらず、換気効率は低い。さらに、水収支モデルを用いた灌漑

(22)

シミュレーションを行い、適切な灌水量と間断日数を選択することで、土壌水分を一定の

水準に保ち、かつ、灌漑水量を最少化する灌漑スケジューリングが存在しうることを明らか

にした。

土壌、植物の無機成分及び土壌微生物、作物の収量、病気の発生について調査した。

前者の土壌環境調査に関しては日本側が、後者の植物状態調査に関しては中国側が担

当した。中国式無加温ビニルハウスの気象データを用いて多変量回帰分析を行い、温室

内の温湿度環境に対する影響因子の同定の結果、日中の温度に対しては日射の影響が

支配的であり、夜間では壁温の影響が大きいことが明らかとなった。湿度に対しては、壁

温と土壌水分の影響が大きいことが示された。また、遺伝アルゴリズムを応用した水収支

モデルによる解析から本圃場では 40cm 以深への浸透水損失はほとんど発生しておらず、

蒸発散量は 1.5 mm/d 程度であることが明らかとなった。

さらに、土壌サンプルを日本に持ち帰らない方法として、内部排水法、定水位浸潤法

の原位置試験法を確立し、これらの実験を中国の現地圃場で行い、数値モデルによる逆

解析などを用いて、土壌水分特性曲線、現場飽和透水係数、不飽和透水係数を推定し

た。

(4)ハウス内栽培におけるキュウリ果実収量・品質・成長に及ぼす灌漑水量の影響

一方、比較研究のために、鳥取大学農学部敷地内ビニルハウスにおいて、キュウリ果

実収量・品質・成長に及ぼす灌漑水量の影響調査を行い、土壌水分状態が一定範囲内

(土壌水分張力:10-35、 45-65、 80-125cmH

2

O)では、果実の収量、品質、成長は影響

を受けないが、果実カルシウム含有率を低下させる土壌水分状態の域値を提案できた。

ビニルハウスにおけるキュウリの節水栽培法の確立のために、鳥取大学農学部ビニルハ

ウス内で灌漑水量を変化(乾燥区;85-120cmH

2

O・2.04m

3

、標準区;45-65cmH

2

O・4.16m

3

湿潤区;10-35cmH

2

O・23.03m

3

〔それぞれ土壌水分張力・総灌漑水量〕)させてキュウリを

栽培し、成長量(全乾物重、果実収量)及び果実品質(総ビタミン C、カルシウム、カリウム、

硝酸態窒素)を調査した。その結果、標準灌漑水量を半減させても成長量は影響を受け

ず果実品質も大きな影響を受けないことが明らかとなった。また、延安地域のビニルハウ

スで栽培されたキュウリの生育状態を数種の酵素のアイソザイムの変動から評価できる可

能性があることを確認した。

(5)耐乾性作物の作出と遺伝子レベルの研究

平成 15 年度から、水土保持研究所実験圃場における研究課題「小麦品種の乾燥耐性

機構解明」について、実現可能な実験計画を中国側担当者と打ち合わせ、具体的な実

験計画の作成作業に取り掛かった。比較研究として、鳥取大学農学部附属農場におい

て、耐乾性コムギ品種の選抜のために強耐乾性が期待される品種の成長・無機元素吸

収特性を調査した結果、一般的に栽培される品種とは異なる無機元素吸収特性を示すこ

とが明らかになった。耐乾性の異なるコムギ 6 品種(Wild Einkorn,Cultivated Einkorn,

(23)

Wild Emmer,Cultivated Emmer,Common Wheat,Xiaoyan No.6)を鳥取大学農学部附属

農場に標準栽培し、収穫期に吸収無機元素を調査した。その結果、乾燥ストレスで毒性

を示す活性酸素を消去する酵素の一つであるグルタチオン還元酵素の発現量が大きい

Common Wheat 及び Xiaoyan No.6 では、他の品種と比較してカリウム及びリン含有率が

著しく高くナトリウム含有率が低いことを明らかにした。耐塩性の高い小麦において活性

酸素消去系酵素のグルタチオン還元酵素活性が増加し、スーパーオキシドジスムターゼ

の特殊なアイソザイムが増加することも確認された。

(第4課題)

「住民参加と環境教育に関する計画作成」

第4課題は、砂漠化対処に不可欠な住民参加システムと環境教育のあり方について提言

することを最終目的としている。この目的を達成するため、中国側が基礎データを有する砂

漠化地域の中からベンチマーク地域を選定し、そこにおける自然、土地利用、経済、産業、

社会組織、女性の役割、伝統的知識、家庭・学校・社会における環境教育などについて系

統的に調査・分析し、問題点を抽出する。これと並行して、他地域における砂漠化対処の先

進的事例についても文献・聞き取り調査を行う。調査結果の比較検討を通じて最終目標で

ある提言を作成する。

以上の目的を達成するため、以下複数のベンチマーク地域を選定した。

地区

問題

調査対象

黄土高原地区

水食害・過度開墾

延安市、安塞県(黄土地帯)

河北省北部

風食害・過度開墾・過放牧 豊寧県、涸源県(砂地地帯)

新疆ウィグル自治区 風食害・過度開墾・過放牧 ウルムチ市、自治区南部地域

内モンゴル自治区

風食害・過放牧

アラゼン蒙

研究結果

1.住民参加

①砂漠化対処事業が活発な延安市燕溝流域全体と砂漠化対処モデル地区の呉棗元村

の調査結果から、以下のことが明らかになった。

農民は砂漠化対処の必要性を認識しているものの、実際の参加は「退耕還林」をスロ

ーガンとする、補助金を中心とした行政の誘導によるものである。参加の拡大を促すには、

平地での高収入の農業システムの構築などの対策が不可欠である。

②河北省北部豊寧県の砂漠化対処区域での調査結果によって、以下のことが明らかに

(24)

なった。

中国の砂漠化主導官庁が林業部であるため、植林が優先され、農地が減少し、収入が

減少した農民から不満が続出している。多面的経済価値のある樹種(葉、果実などからも

収益が得られる樹種)が選定されていない。県の林業局局長と郷長(県の下に位置する

牛姓組織の長)が同格であるため、郷の希望や計画が県の施策に取り入れられにくい。

③新疆ウィグル自治区での調査結果から、以下のことが明らかになった。

砂漠化対処が進まない原因は、土地の国有と、植林により減少する農地で収益を上げ

ようとする農民に対する悪徳商法(粗悪種子の販売、詐欺を目的とした契約栽培など)の

横行にある。砂漠化防止に関する政府部門と研究者への調査では、背策と技術を住民

に教えることだけを重視し、住民の環境意識を高めることが重視されていない。新疆ウィグ

ル自治区南部地域では、住民の環境意識は他地域よりも高いが、資金不足によって砂漠

化対処の進展が遅い。

生物生産モデルと農家経済モデルを用いて環境に影響を及ぼす要素の抽出を行った

結果、政府の政策が住民の生活形態と大きく関わり、環境に対してもっとも大きな影響を

及ぼすことを明らかにした。

2.環境教育

複数のベンチマーク地域の調査結果により、中国では近年環境教育が大変重要視さ

れている。しかし、いずれの環境教育も市民を対象としたもので、農民を対象とした環境

教育がほとんどないことは大きな問題である。その上、農民たちは比較的閉鎖的な生活を

しているため、社会で行われている環境教育活動は農民たちにあまり影響を及ぼしてい

ないのが現状である。

農民に対する環境教育は、国の環境回復に関する政策の実行がそれにあたるとされて

いるが、実際に政策を実行するときに環境回復だけを強調し、農民の利益を無視する場

合もある。農民の利益を重視しない環境教育に問題があることが明らかである。

教育を担当する人材不足と経費不足のため、小規模な範囲で環境教育を行うことが成

功のカギである。成功した例をモデルとして社会に宣伝し、あらゆる活動の中で環境教育

を浸透させ、最小のコストで環境教育を行うことも重要である。農民自身の分析により、農

民の基礎学力が低いことが環境教育の内容理解の支障となっていることが分った。そこで、

環境教育をより効果的に行うためには、まず農民たちの基礎教育・義務教育を強化しな

ければならない。また、資源を共有している農民たちにほぼ同レベルの環境意識を持た

せる必要があることがこれまでの研究で示された。さらに、責任と利益を明白にすることは、

農民たちに環境を破壊する行為を放棄させることに有利に働くことが分った。

適切な環境教育教材がないことも教育が遅れている原因の一つである。わずかにある

農民向けの出版物でも、農民の理解力を考えず難しく論述したものが目立つ。農民たち

の現実を考慮に入れ、分かりやすく、面白く、そして受け入れやすい教材の開発をしなけ

ればならない。調査により、テレビは環境情報を獲得するための最も重要な情報源である

とが明らかになったので、ビデオ番組の開発は効果的であると考えられる。また対話形式

(25)

で直接行われる教育が農民に対して最も有効であるので、今後はそのような形の教育を

強化すべきであると考えられる。また、女性の環境意識は男性より低い傾向があるので、

教育を行う際に、特に女性たちに対して力を入れるべきである。

(第5課題)

「緑化と環境保全のあり方に関する総合的研究」

第5課題は緑化と環境保全に関する総合的研究を行った。

中国の半乾燥地域に位置する黄土高原では森林の伐採、過放牧、過開墾等によりもた

らされる侵食が深刻な環境問題となっている。土壌の侵食を防止し、持続可能な生態環境

を作り上げるため中国政府は 1999 年より「退耕還林」政策を推し進めてきた。この政策によ

り大面積の緑化が行われ、少しずつ環境の回復が図られつつあるが、一方で「土壌中の乾

燥層の拡大」や「生物多様性の消失」という問題も生じつつある。これらの問題の解決と現

地の環境条件に適した植林システムの開発や生態系管理を目的として以下の3つの研究

を行った。研究拠点となった場所は黄土高原の中心都市である延安市南部に位置する公

路山周辺である。

研究1: 外来樹種と郷土樹種の生理生態特性の解明

研究 2: 森林の回復と生物多様性に関する生態学的研究

研究 3: ニセアカシア人工林とリョウトウナラ天然林における生態系機能の比較研究

以下にそれぞれの研究についての主要な結果を要約する。

(研究1): 延安市周辺に生育する樹木種について乾燥耐性の種間差が明らかにされた。

特に北アメリカ原産の外来樹種であるニセアカシアの耐乾性は調査樹種の中で最も低いこ

とが明らかとなった。主要郷土樹種であるリョウトウナラの耐乾性はニセアカシアとほぼ同等

であったが、その他の郷土樹種である

Pyrus betulaefolia Rosa, hugonis, Syringa oblata,

Caragana microphylla , Armeniaca sibirica

等は強い耐乾性を示した。また外来樹種のニセ

アカシアとリョウトウナラの間で水利用の特性が異なることも明らかとなった。ニセアカシアの

光合成や蒸散速度はリョウトウナラよりも大きく、外来樹種であるニセアカシアは水を多く消

費しつつ速く成長することが明らかとなった。乾燥地においては水利用の観点から、植林に

は郷土樹種使用が望ましいと考えられた。

(研究2):外来樹種であるニセアカシア人工林とリョウトウナラ天然林では森林の構造や生

物多様性に差が見られることが明らかになった。特に下層植生の種構成において大きな違

いが認められた。ニセアカシア人工林ではニセアカシアの稚樹がほとんどなく、イネ科や広

葉草本が多く生育していた。これに対しリョウトウナラ天然林では多くのリョウトウナラ稚樹が

生育しており、その他の低木も多く生育していた。出現植物の種数はリョウトウナラ林で多く、

豊かな生物多様性が認められた。

また黄土高原にわずかに残存するリョウトウナラ天然林の林分構造や成長過程も明らかと

なった。調査が行われたすべてのリョウトウナラ林は 30-50 年生の個体からなる二次林であ

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