分科会概要 昨年末刊行された「日本十進分類法(NDC) 新訂 10 版」をテーマとします。 図書館の蔵書へのアクセスのための “ 三大ツール ” の 一つと言われる NDC が,1995 年に刊行された新訂 9 版 以来,ほぼ 20 年ぶりに改訂されました。その間,図書 館も図書館をめぐる情報環境も大きく変化しました。目 録は完全に OPAC になり,インターネットはなくては ならないものになっています。1929 年に誕生した伝統 ある NDC は,これまでも改訂によってリフレッシュし てきましたが,10 版も今の時代に対応した “ 使える ” ツー ルになり得るのでしょうか。 この分科会では,基本となる次のような観点から NDC10 版の姿をとらえ,理解を深め,いっそうの議論 への契機とします。 ① 10 版の改訂はいかに行われ,そのポイントはどこに あるのか? ② 10 版の適用はどうなるのか? ③ ウェブ時代の NDC の可能性は? そのために 5 本の報告を予定しています。 まず中井万知子(日本図書館協会分類委員会委員長) が,NDC10 版の改訂の経緯とポイントについて基調報 告を行います。次いで適用の観点から,国立国会図書館 (NDL)収集書誌部の髙橋良平氏,図書館流通センター (TRC)データ部の松木暢子氏が,NDL および TRC に おける 10 版の検討状況を報告し,都立中央図書館資料 管理部の和田孝子氏が都立中央図書館の現状報告を行い ます。さらに NDL 電子情報部の福山樹里氏が,新しい 動向として NDC の Linked Data 化共同研究の概要につ いて報告します。 また,報告に対する質疑応答および意見交換を行い, 午後の第 17 分科会につなげる予定です。 (中井万知子:立正大学文学部)
第 16 分科会 分類法と図書館1
NDC10 版から拡がる①:
改訂ポイントと展望
基調報告 日本十進分類法(NDC)新訂 10 版の刊行
中井万知子(立正大学,日本図書館協会分類委員会委員長)
報 告 国立国会図書館における NDC10 版適用について
髙橋良平(国立国会図書館)
報 告 「日本十進分類法」新訂 10 版への TRC MARC の対応について
松木暢子(株式会社図書館流通センター)
報 告 NDC10 版移行に向けた現状報告
和田孝子(東京都立中央図書館)
報 告 NDC-LD 共同研究の概要
福山樹里(国立国会図書館)
基調報告要旨
日本十進分類法(NDC)新訂 10 版の
刊行
中井万知子 (立正大学,日本図書館協会分類委員会委員長) 「日本十進分類法」が改訂され,2014 年 12 月に新訂 10 版が刊行された。10 版の改訂方針は,従来の継続性 を重視しつつ新主題を取り込み,必要な修正・追加を行 うものであり,実際の 10 版も方針に沿ったものである。 改訂内容として全体構成の整備,補助表の組み換え等が あり,本表では情報関連分野の扱いの整理,各類の分類 項目の新設,用語や表記法の修正,注記の整備,別法の 追加等を行った。分類委員会では,2015 年度において は 10 版の維持管理と定着への活動,マニュアルの作成, NDC の Linked Data 化の共同研究等を行っており,今 後は MRDF を含む NDC の提供および活用に関する検 討,次の改訂に向けての論点整理等を進めて行きたい。 報告要旨国立国会図書館における NDC10 版
適用について
髙橋良平(国立国会図書館) 国立国会図書館では,和図書資料に NDC を付与し全 国書誌として国内外に提供するとともに,分類基準を作 成・公開して館内外の参考に供してきた。現在適用を検 討中の NDC 10 版については,可能な範囲で本則に従い, NDC の書架分類,書誌分類双方の利用に適った書誌デー タを提供することを目指している。本発表では,NDC 適用の歴史と意義を概観し,10 版適用に向けた検討状 況(平成 27 年 10 月時点)を報告する。 報告要旨「日本十進分類法」新訂 10 版への
TRC MARC の対応について
松木暢子(株式会社図書館流通センター) 「日本十進分類法(NDC)」新訂 10 版の刊行に伴い,(株) 図書館流通センター(TRC)では 2017 年春には NDC10 版が提供できるよう,現在準備作業を進めています。 NDC10 版採用の一事例として,また「提供開始までに 2 年もかかるのはなぜ?」という疑問にお答えする意味 でも,NDC10 版提供にあたっての課題,どのような準 備作業を行っているのかについてお話しさせていただき ます。 報告要旨NDC10 版移行に向けた現状報告
和田孝子(東京都立中央図書館) 2000 年の METLICS Ⅱ(都立図書館情報システム) 稼働時に,NDC9 版分類を採用した。書誌分類について は 6A 版と 9 版,8 版と 9 版の対照表を作成してデータ を移行し,OPAC での分類検索の検索対象値は 9 版の みとした。 請求記号は旧システムの形で移行させ,原則分類訂正 は行わず,代本版や見出し等による書架掲示により,変 更をお知らせした。10 版への移行作業は,前回の 6A 版から 9 版への移行と基本的には同じ作業を行う。具体 的には MARC の動向に合わせ,①図書館情報システム の更新,② 9 版→ 10 版対照表作成,③ OPAC 更新,④ 書架配置への対応等を検討している。 報告要旨NDC-LD 共同研究の概要
福山樹里(国立国会図書館) 国立国会図書館と日本図書館協会(分類委員会)は, 日本十進分類法(NDC)を Linked Data 形式化するため, 共同研究を行っている。日本図書館協会から研究対象と して提供される NDC のデジタルデータ(MRDF)を基 に,Linked Data 形式化に係る諸課題に関する調査研究 を協力して行い,NDC の Linked Data 形式のデジタル データを作成する。当日は,その概要を紹介する。基調報告
日本十進分類法(NDC)新訂 10 版の
刊行
中井万知子(立正大学,日本図書館協会分類委員会委員長)はじめに
2014 年 12 月末に「日本十進分類法 新訂 10 版」(以下, 10 版)が刊行された。刊行を記念し,この機会にいろ いろな角度から NDC を眺めてみようというのが本分科 会の意図である。奇しくも,NDC の改訂にも力があっ た私立大学図書館協会分類研究分科会も 60 周年を迎え, 本第 16 分科会に合わせ午後の第 17 分科会を共催するこ とになった。これから午前・午後と,NDC,そして NDC から拡がる分類の世界,図書館の情報の世界を論 じることにしたい。1.分類法の改訂とは
図書館の分類法は,次々に新しい体系が構築されると いった性格のものではない。ある程度認められた分類法 が,時々の人々の手によって維持され,改変を加えられ ながら時代のニーズを取り込んでいく。NDC は,言わ ば成長の機会を与えられた幸運な分類法である。 NDC 第 1 版は,1929 年にもりきよし氏の著作として 刊行された。その後訂正増補が小刻みに加えられた時期 もあったが,1950 年に刊行された新訂 6 版以降は,版 ごとに刊行までの期間が長くなり,10 版は 9 版から 19 年ぶりの改訂ということになる。 時代の加速度的な変化に反比例して改訂への期間が長 くなってしまう理由には,新主題や主題の細分化による 分類体系の詳細化,主題自体の複雑化,変化を見極める 難しさなどが挙げられよう。 加えて,改訂の考え方をどこに置くかの調整的要因も ある。拠り所となる改訂の方針を明らかにすることは前 提だが,“ 継続性 ” か,“ 変革 ” か?,あるいは “ 理論 ” か, “ 実用 ” か?といった議論は,改訂作業のあらゆる段階 に起こり得る。そして,適用する図書館への影響や体系 的な整合性を考えつつ,均衡と妥協の中で改訂が進めら れるのである。2.9 版から 10 版への改訂方針と経緯
10 版の改訂方針は,2004 年に示された 4 点である(10 版序説 3.1 参照。以下は一部要約。) ・ 9 版の改訂方針を引き継ぐ(NDC の根幹に関わる体 系の変更はしないが,情報科学(007)と情報工学(548) の統合の可能性を検討する。書誌分類をめざす。) ・ 新主題の追加を行う。 ・ 全般にわたって必要な修正・追加などを行う(論理的 不整合はできるだけ修正。件名標目の用語等の取り込 み。分類作業が行いやすく,利用者にもわかりやすい 分類表をめざす等。) ・ 機械可読ファイル(MRDF)の分類典拠ファイル化(本 表と相関索引データの統合。) これに見るように,10 版の改訂方針は,従来の版か らの継続性を重視しつつ新しい主題を取り込み,可能な 範囲の手直しを意図するものであった。また,書架分類 から「詳細に分類する方針」(9 版解説 2.9.1)への転換 を引き継ぎ,「書誌分類をめざす」ことを打ち出したこと, さらに分類表としての使いやすさやわかりやすさを重視 したことに特徴がある。 分類委員会では,2002 年から改訂準備に着手し,委 員が各類を分担して順次検討を行い,2008 年から類ご との試案を「図書館雑誌」に掲載した。また,2009 年 11 月 に は 0,2,3 お よ び 7 類 に 関 す る 試 案 説 明 会, 2013 年 11 月には他の類並びに情報学および関連領域に 関する試案説明会,そして 2014 年 3 月には関西説明会 を開催,委員会外の意見を聴取した。その後,残課題の 整理,入稿用ファイルの作成,相関索引の更新作業等を 集中的に行い,年末ぎりぎりの 2014 年 12 月 25 日に 10 版を刊行するに至った。3.10 版改訂のポイント
3.1 全体構成 まず外形的な構成の変更点を挙げておこう。 概説的な部分として,従来冒頭にあった「解説」を「序 説」と「使用法」に切り分け,分類規程等,分類作業上 の指針に特化した「使用法」を第 2 分冊に収録した。同 時に「用語解説」および「事項索引」を新設し,同じく 第 2 分冊に収録した。また,補助表を第 1 分冊に収録す ることにより,分類表自体である「本表・補助表編」と, 補助的な「相関索引・使用法編」の 2 冊に分冊を再構成 した。 補助表については,従来本表の該当箇所にのみ掲載さ れていた固有補助表を一般補助表とともに独立した形で も収録した。なお,「言語共通区分」および「文学共通 区分」は,一般補助表から固有補助表に扱いを変更し,一般補助表を 3 種 4 区分,固有補助表を 10 種とした。 概説的な内容としては,9 版が MARC による集中目 録作業の進展を改訂の背景として挙げたことに対し,「序 説」では,国際図書館連盟による一連の書誌情報の「概 念モデル」の策定を動向として取り入れ(1.1),主題情 報としての分類(1.2.2)を重視している。また,「使用法」 では,主題検索を意図した複数の分類記号付与(分類重 出)を推奨したこと(1.1),主題の構造として「ファセッ ト」と「フォーカス」の考え方を取り入れたこと(1.2.3.1), 等がある。「序説」の次に位置する「各類概説」につい ても充実をはかった。 もっとも,一番目立つ変化は従来の A5 判から B5 判 への判型の変更であろう。これによって実際よりも大部 な分類法になったとの印象を強めている面もあろう。 3.2 本表の改訂内容 細目表上の分類項目の新設は 288 件,二者択一項目の 新設は 52 件,削除項目は 55 件である。 3.2.1 情報関連分野の扱い 情報関連分野については,パソコンや携帯端末,イン ターネットの普及等,この間の進展が著しく,007(情 報学.情報科学),547(通信工学.電気通信)および 548(情報工学)の関係整理が懸案となっていた。改訂 方針ではその統合を検討課題としたが,最終的には, 694(電気通信事業)との関係も含めて次のような扱い にした。 ・ 情報処理のハードウェアや工学的な取扱いは 547 およ び 548 の下位に置く。 ・ 情報学・情報科学一般,ソフトウェアは 007 の下位に 置き,ソフトウェアの種類等によって記号を細分する。 情報通信産業も 007 の下位に置く。また,観点が明確 でない場合は 007 を優先する。 ・ その上で,007 の下位に工学系の主題も位置づけられ るような二者択一項目を設ける。同様に 548 の下位に も情報学・情報科学一般,ソフトウェアを位置づけら れる二者択一項目を設ける。これにより,適用する図 書館が,二者択一項目を「別法」として選択すること で,007 か 548 のどちらか一方に主題を集中すること を可能にする。また,情報通信産業を 694 の下位に位 置づける「別法」も設けている。 上記は,従来の分類実績を踏襲しつつ,分野横断的な 主題や複数の区分特性が存在する主題については,切り 分けの観点を注記等で補い,また「別法」を設けて選択 の幅を拡げる今回の改訂の特徴を表す事例とも言える。 3.2.2 各類の改訂ポイント 0 類では,007 の細分(3.2.1 参照)のほか,図書館の 015.9(利用対象別サービス)を新設して展開し,018.09 (文書館.史料館)の細分も行っている。 1 類では,心理学の 145(異常心理学)および 146.8(カ ウンセリング.精神療法)に新設項目を設けた。 2 類では,日本の各地方の市町村名を更新,各地方に 適用できる時代区分の固有補助表を新設し,沖縄県には 独自の時代区分を設けた。世界各地の国名等についても 更新を行い,221(朝鮮),222(中国)には,歴史補助学, 考古学を新設した。 3 類では,317(行政)に新省庁の記号を新設,法律 では,325.2(会社法)の法改正を反映した。教育では, 375.89(外国語教育)の英語を学校の種別により細分, 376.15 の幼児教育の教育課程を再編成し,376.8 の入学 試験についても学校の種別により細分している。 4 類では,医学の病名等を新しい名辞に変更(例: 493.758(認知症)),492.9(看護学)の 492.926(成人看護) を各疾患の看護により区分する注記を加え,497(歯科学) では,497.1(歯の解剖・生理・病理)を細分した。 5 類では,546(電気鉄道)全体を削除項目とし,516(鉄 道工学)および 536(運輸工学.車両.運搬機械)に統 合する大きな改訂を行った。これは 547(通信工学.電 気通信)および 548(情報工学)に隣接する記号を空番 にし,将来の改訂に備える意図による。 6 類では,畜産業において,ペット一般については 645.9(愛玩動物)に収めることとし,9 版で 646.9 の二 者択一項目であった [647](みつばち.昆虫)を削除項 目とした。 7 類では,美術品目録(703.8),美術図集(708.7)に 美術館・展覧会の目録・図録を [706.99] に収める別法を 追加,780.9(スポーツ産業)を新設し 760.9 を音楽産業 に変更。798(その他の室内娯楽)には 798.3(パズル. クイズ)等を新設している。 8 類では,従来 3 類の 378(障害児教育)のもとに置 かれていた点字および手話について,それぞれ 801.91 および 801.92 を新設し,378.18 および 378.28 を別法に した。820(中国語)および 829.1(朝鮮語)の言語共通 区分も細分している。 9 類では,日本の近代小説(913.6)を文学史と同様の 時代区分で細分できるようにした。 その他新しい用語の追加,古い用語から新しい用語へ の置き換え等を全類にわたって行い,表記についても一 般的な形に改めた(例:車輛→車両,エレベータ→エレ ベーター)。また,注記の追加,修正等により主題の扱
いを明確化したり,変更したりした箇所も多い。 相関索引についても本表の語彙や「基本件名標目表 (BSH)」からの取り込みを行い,9 版から約 4 千件増の 33,387 件を収録している。
4.刊行以降の動き
4.1 委員会の活動 刊行後,分類委員会では 10 版の維持・管理と普及に あたっている。特に 10 版の広報については,外部主催 の研修,研究集会等における報告や原稿執筆の依頼に積 極的に対応し,各委員が図書館関係誌等に執筆した改訂 に関する記事は,今年 9 月までで 10 本近くにのぼる。 また,2 刷増刷に合わせて第 1 刷の正誤表を「図書館雑誌」 および JLA ホームページに掲載し,なおも修正箇所の 洗い出しと課題管理を継続している。 10 版適用については,本分科会でも報告があるよう に MARC 作成機関による検討も本格化しており,すで に国立国会図書館(NDL)および図書館流通センター (TRC)から委員会に対して多くの質問が寄せられてい る。その回答をとりまとめるとともに,現在委員会で準 備中の「NDC10 版の手引き」(仮称)にもその内容を取 り込みたいと考えている。この手引きは日常的な分類付 与におけるマニュアルを意図し,2015 年度中の刊行を 目指す。 4.2 データとしての NDC NDC の機械可読ファイル(MRDF)は,1989 年に 8 版(MRDF8),1996 年に 9 版(MRDF9)が刊行されて いる。情報システムで NDC を活用するためにはデータ ファイルの提供が不可欠であり,10 版についても 2016 年度の刊行を想定している。 一方で,ウェブ上でデータを共有し,多様なサービス で活用するために,図書館関係のデータを汎用的な形式 である Linked Data として公開する新しい動きも広まっ ている。本分科会でも報告があるように,「国立国会図 書 館 典 拠 デ ー タ 検 索・ 提 供 サ ー ビ ス(Web NDL Authorities)」の開発と提供で先駆的な実績を持つ NDL から,NDC の Linked Data 化(NDC-LD を略称とする) に関する共同研究に対する呼びかけがあり,2015 年 3 月に JLA と NDL が覚書を交わし,4 月から 1 年度の予 定でまずは NDC8 版および 9 版について共同研究を実 施している。すでにデータモデルの開発や仮データの検 証が進行しているが,その位置づけや提供方法等,今後 調整を要することが多い。 共同研究は MRDF10 の検討に役立てる意味ももつが, 分類作業,目録検索システム,ウェブ上のサービスといっ た 各 種 の 用 途 か ら,NDC の 冊 子 体,MRDF お よ び NDC-LD といった提供形態の位置づけを整理していく 必要があろう。NDC の利用可能性を拡げる方向へと進 めていきたい。おわりに 次の改訂へ向けて
NDC10 版の刊行は一区切りではあるが,次の改訂へ の第一歩でもある。分類委員会では,2014 年中の刊行 を必至として作業を行ってきたが,積み残された課題の 多さを認識しており,10 版の定着を進める一方で,な るべく短いスパンで次の版を準備したいとの意識も強 い。今後は細部の検討の中で後回しになりがちだった体 系全体にわたる各種原則の見直しが必要であり,主題 データとしての分類の要件についてももっと議論すべき であると思われる。その上で,早期に次の改訂へのビジョ ンを形成すべきであろう。分類に関心のある方々のご助 言およびご協力を期待する。 報 告国立国会図書館における
NDC10 版適用について
髙橋良平(国立国会図書館)はじめに
国立国会図書館(NDL)では,約 20 年ぶりの改訂と なる日本十進分類法(NDC)新訂 10 版(以下,新訂を 省略。他版も同様)の刊行直後から,適用に向けた検討 を開始した。本稿ではまず,NDL による NDC 適用の 歴史を概観したのち,NDC 適用の意義と 10 版の適用に 向けた取り組みについて報告する。なお,本稿は平成 27 年 8 月末現在の検討内容を報告するものであり,今 後の状況に応じて内容に変更が生じる可能性があること をあらかじめお断りしておく。1. NDC 適用の歴史
注 1) NDL による NDC 付与は,昭和 23 年の NDL 設立時 まで遡る。昭和 25 年に日本図書館協会(JLA)分類委 員会によって 6 版が刊行されると,いち早く和漢書への適用を決定し,以後今日に至るまで和図書資料に NDC を付与してきた(一部を除く)。昭和 44 年に国立国会図 書館分類表(NDLC)を適用してからは,書誌分類とし て NDC を付与している。現在では,NDL による NDC 適用は,NDC が標準分類法としての地位を確立する要 因のひとつとなったと評価されている 注 2)。 NDC の適用にあたっては,一貫した分類作業のため に,分類表の運用上の取り決めである分類基準が必要と なる。NDL では NDC 各版の適用ごとに分類基準を作 成し,公開してきた(表を参照)。現在は「日本十進分 類法(NDC)新訂 9 版分類基準」(2010 年版)が最新版 であり,ホームページで公開している 注 3)。 NDC 年 出来事 5 版 1948 NDC5 版を採用 6 版 1950 NDC6 版の刊行 NDC6 版の適用開始 1958「国立国会図書館和漢書分類コード」の刊 行 1967「国立国会図書館和漢書分類コード増補」 の刊行 1971, 1972 「国立国会図書館和漢書分類コード」を「印 刷カード通信」に掲載 8 版 1978 NDC8 版の刊行 1980 NDC8 版の適用開始 1980, 1984 「国立国会図書館和漢書分類コード」を「印 刷カード通信」に掲載 1993「国立国会図書館 NDC 分類コード」を「全 国書誌通信」に掲載 9 版 1995 NDC9 版の刊行 1997 NDC9 版の適用開始 「国立国会図書館 NDC 新訂 9 版暫定コー ド」を「全国書誌通信」に掲載 2000「国立国会図書館『日本十進分類法新訂 9 版』分類基準」を「全国書誌通信」に掲 載 2003「国立国会図書館『日本十進分類法新訂 9 版』分類基準」追補を「全国書誌通信」 に掲載 2010「日本十進分類法(NDC)新訂 9 版分類 基準」(2010 年版)をホームページで公 開 10 版 2014 NDC10 版の刊行 2015 NDC10 版の適用検討開始 表:NDC の刊行状況と NDL の対応
2. NDC 適用の意義
NDL は,「全国書誌」を作成して,日本の出版物の標 準的な書誌情報を国内外に提供する役割を担っている。 その「全国書誌」に NDC を付与する意義は,主に①書 誌データ利用機関の資料配架(書架分類)の参考として NDC を提供することにあると考えられるが,② NDC を使った主題検索(書誌分類)に資することもまた重要 であり,また,やや副次的ながら③ NDL における分類 実績が NDC 改訂の文献的根拠として果たす役割もある であろう。 その NDC は,9 版で従来の「書架分類表」から「書 誌分類表」を目指す方針が打ち出された。10 版でも 9 版と同様,「書誌分類表を目指す」ことを方針に掲げて 改訂作業が行われており,固有補助表の拡充等,主題情 報の表現力の向上が図られた 注 4)。10 版の方針に NDL としてどのように対応していくかが,今回の適用で問わ れていると認識している。3. 10 版の適用
(1)適用時期 10 版の適用は,平成 29 年早期を目途として検討を進 める。9 版の継続付与は行わない。分類基準の公開は適 用と同時期に行い,公開にあたっては 9 版との対照表を 併せて公開する。 (2)適用に向けた考え方 10 版の本則に従った運用を行い,主題情報を最も的 確に示す NDC を付与することで,NDC の書架分類, 書誌分類双方の利用に適った書誌データを提供すること を目指す。主な検討事項は以下の通りである。 ①新設項目 NDL 独自の分類項目新設は,極力避けることとする。 9 版で独自に新設した分類項目については,所管資料の 独自性等を見極めたうえ,一部を除き削除する方向で見 直しを行う。 ②不使用項目 不使用項目の設定は原則として行わず,主題概念に対 して複数の分類が候補となる場合には,観点の違いを明 確にすることで対応する。 ③番号構築(ナンバービルディング) 分類表の構造を精査した上で,一般補助表(3 種 4 区 分),固有補助表(10 種類)は全て適用する方向で検討 する。4 桁以上の分類記号への付加についても検討対象 とする。 ④分類重出 引き続き実行可能性を検討する。 なお,現在分類委員会が検討を進めている NDC 公式マニュアル「NDC10 版の手引き」(仮称)が出版された 暁には,マニュアルに掲載された分類基準の採用方法を 併せて検討する予定である。 (3)件名典拠 NDL では,Web NDL Authorities(国立国会図書館 典拠データ検索・提供サービス) 注 5)で公開している国 立国会図書館件名標目表(NDLSH)の典拠データに代 表分類として NDC と NDLC を付与し,分類記号で検索 できるようにしている。これらのうち,普通件名典拠に 付与されている NDC については,9 版から 10 版への更 新方法も含めて今後検討を行う予定である。
おわりに
NDL では以上の考え方に基づいて,適用に向けた具 体的な検討作業を,今年の 4 月から本格的に開始した。 8 月末現在では,「日本十進分類法(NDC)新訂 9 版分 類基準」の見直しと新規分類基準の策定に向けた問題点 の洗い出しを進めているところである。 本報告はあくまで検討途中のものであり,最終的には 実行可能性を精査した上で分類基準を策定することにな るが,全国書誌の利活用促進に向けて,10 版適用を機に, さらに良い書誌データの作成・提供を目指していきたい と考えている。各方面の御意見,御協力をお願いしたい。 注 1)NDC を含めた NDL の適用規則の変遷は,過去の規則 も含めて NDL のホームページで公開している。 http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/history. html 2)NDC 新訂 10 版 . 本表・補助表編 . 日本図書館協会 , 2014, p.15. 3)http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/ classification_subject/ndc9_regulations.html#zan9_5 4) 前掲 2). p.26-30. 5) http://id.ndl.go.jp/auth/ndla 報 告「日本十進分類法」新訂 10 版への
TRC MARC の対応について
松木暢子(株式会社 図書館流通センター)はじめに
「日本十進分類法(NDC)」新訂 10 版の刊行に伴い,(株) 図書館流通センター(TRC)では 2017 年春には NDC 10 版を提供できるよう準備を進めています。基本的に は,NDC 9 版(1995 年刊)に対応した際と同じ手順を 踏むことになりますが,20 年たっていることもあり, その課題及び準備作業についてお話しさせていただきま す。1.NDC10 版を提供するにあたっての課題
NDC10 版を提供するにあたっては,2 つの課題があ ります。 1 つ目の課題は,NDC10 版を付与する範囲の問題です。 図書館ですと所蔵分全てを対象とするのか,開架分だけ なのか,あるいはある分野のみなのかという判断をされ ることと思いますが,書誌データには,開架・閉架とい う区別はありませんので,選択肢はある時点以降にのみ 付与するのか,累積 MARC 全件に対して付与するのか のどちらかになります。弊社の場合は,後者の累積 MARC 全件に対して付与します。 これは,ある時点以降の MARC にのみ NDC10 版を 付与した場合,図書館の書架で同じ場所に異なる主題の 図書が配架されることになりますので,それは利用者の 利便性を損なうという理由によります。 したがって,累積 MARC 全件(約 360 万件)に対し て可能な限り NDC10 版を付与した上で,NDC10 版の 提供を開始することになります。その付与作業に 2 年と いう期間をいただいているというわけです。 もう 1 つの課題ですが,弊社では現在 NDC9 版と NDC8 版をそれぞれ提供しています。NDC10 版の提供 を開始すると NDC が,NDC10 版・9 版・8 版と 3 つに なりますので,NDC8 版の提供を中止するかどうかとい う点です。 NDC9 版が刊行された時は,NDC8 版と NDC7 版を 提供しており,NDC9 版の提供にあわせて NDC7 版の 提供を中止し,NDC9 版と NDC8 版の提供に変更させ ていただきました。(当時,NDC7 版を採用されている図書館が 30 館弱ということもあり,個々の図書館と相 談させていただいて,NDC7 版の提供中止をご了承いた だきました。) 今回も同様の対応でよいのかの検討を行いましたが, 現在 NDC8 版を採用されている図書館は数百館ありま す。この数百館が 2 年間で次の版に移行するのは困難だ と思われますので,NDC10 版・9 版・8 版の 3 つの版を 提供することといたします。ただ,一方で NDC8 版は 1978 年刊で約 40 年前の版であることから,NDC9 版は タイミングがあわず移行しなかったが,NDC10 版の刊 行を待って移行しようと考えている図書館もあると伺っ ております。したがって,現在 NDC8 版の図書館も順 次 NDC10 版へ移行されていくものと推測していますの で,図書館の移行方針を確認させていただきながら,数 年後には NDC8 版の提供を中止したいと考えておりま す。
2.NDC10 版 -NDC9 版,NDC10 版
-NDC8 版の対照表
さて,NDC10 版の提供を開始する準備として最初に 行ったのは,NDC10 版でどこが変更になったのかを精 査することでした。 NDC10 版では NDC9 版からの新設項目が 288 件・削 除項目が 55 件です。NDC8 版から NDC9 版の新設項目 1096 件・削除項目 133 件と比較すると,おおよそ 1/4 ですので,NDC9 版と大きくは変わらないように見えま すが,実際には項目名・関連項目名・注記の変更なども なされています。それらを洗い出して TRC の NDC9 版 の適用細則と比較し,TRC MARC における NDC10 版 -NDC9 版対照表,NDC10 版 -NDC8 版の対照表を作成 して,9 月中旬に『TRC MARC ニュース 第 30 号』 を刊行しました。これは,図書館で NDC10 版の採用を 検討するに当たって,現在使っている版とどの程度異な るのか,そのおおよその目安をつける際の参考資料とし て使っていただくためのものです。 なお,この対照表作成過程ででた NDC10 版の適用に ついての疑問点を 8 月末に分類委員会に提出しておりま す。また,図書館のご意見を伺いたい懸案事項もありま した。 委員会からの回答とあわせて,来年にはあらためて 『TRC MARC ニュース』の刊行と上記の懸案事項に対 する図書館のご意見を伺うアンケートを取らせていただ く予定です。3. 累積 MARC への NDC10 版付与の手順
累積 MARC への NDC10 版付与は,次の手順で行い ます。 ① NDC9 版と NDC10 版が同一の場合,NDC10 版に NDC9 版を機械的にセット 例:一般分類表 NDC9 版・NDC10 版:014.45 ② NDC9 版 と NDC10 版 が 1:1 の 対 応 の 場 合, NDC10 版を機械的にセット 例:複写サービス NDC9 版:015.29 NDC10 版:015.12 ③ NDC9 版と件名標目の組合せで,10 版が 1 つの分 類しかありえない場合に,NDC10 版を機械的にセッ ト 例:プレゼンテーションソフト NDC9 版:007.63 NDC10 版:007.6383 件名標目:プレゼンテーションソフト ④ 複数の分類があり得る場合は,1 件ずつ内容(タイ トル・分類・件名・内容紹介・目次など)を確認し ながら NDC10 版を付与。ただし,書誌データのみ では,付与できないものについてはいったん NDC9 版を NDC10 版にセットし,現物確認ができた段階 で NDC10 版を付与。 例:日本各地の時代区分 NDC9 版:時代区分なし NDC10 版:時代区分4.NDC10 版のテーブル提供
2017 年春には,上記の累積 MARC への NDC10 版の 付与作業が完了しますので,この段階で,以下のテーブ ルを提供いたします。 ① TRC MARC No.-NDC10 版(全件) ② TRC MARC No.-NDC10 版 -NDC9 版 ③ TRC MARC No.-NDC10 版 -NDC8 版 * ②と③については,異なるもののみの提供 一番正確に図書館の請求記号とのチェックを行えるの は,①のテーブルです。このテーブルを使って,図書館 の請求記号仕様に従った差分を作成することで,自館の 請求記号で修正すべき件数が何件あるかが把握でき,そ の後の作業手順を考える一助となるとともに,実際の請 求記号付与にも参照テーブルとして使用していただけれ ば,と考えております。 このテーブルを使った作業は,実際には各システム メーカーでの対応となります。各システムメーカーでは,NDC9 版への移行の際に経験済みのことでもあり,手順 なども構築されているそうですので,各システムメー カーにご相談ください。 なお,このテーブルを提供すると同時に,新規作成 MARC にも NDC10 版を付与して提供を開始いたしま す。
最後に
図書館で NDC10 版を採用するに当たっては,それま での請求記号の仕様の見直しに始まり,背ラベルの修正 をどこまで行うかの検討,実際の貼り替え作業等,様々 な業務が発生するかと思います。NDC9 版への移行の際 のノウハウ等,弊社にお手伝いできることもあろうかと 存じますのでお申し付けください。微力ながら,お手伝 いできれば幸いです。 報 告NDC10 版移行に向けた現状報告
和田孝子(東京都立中央図書館)都立図書館の分類変遷
2000 年の METLICS Ⅱ(都立図書館情報システム) 稼働時に,NDC9 版分類を採用した。都立中央図書館と 都立日比谷図書館は 6A 版から 9 版に,都立多摩図書館 は 8 版から 9 版に書誌分類を置換した値でのデータを移 行し,書誌分類を持たないデータは 9 版分類を付与した。6A 版から 9 版へのデータ移行作業
書誌分類については 6A 版と 9 版,8 版と 9 版の対照 表を作成してデータを移行し,OPAC での分類検索の 検索対象値は 9 版のみとした。 請求記号は旧システムの形で移行させ,原則分類訂正 は行わず,「2000 年以降に出版された資料は,分類が○ ○に変更になりました」等の代本版や見出し等による書 架掲示により,変更をお知らせした。 開架スペースの有効活用のため,開架資料については 刊行年の古いものから順に書庫入れを行っている。2000 年当時は,どの棚板にも代本版があったが,2015 年現 在では,6A 版で分類した資料の多くは書庫に移ったた め,代本版も見かけなくなった。2014 年度の準備作業
2015 年春の 10 版刊行予定を受け,2014 年 11 月に整 理係内では「日本十進分類法新訂 10 版の検討試案」(日 本図書館協会にあり)と「日本十進分類法新訂 10 試案 説明会にあたって」を基に 9 版→ 10 版の変更部分を比 較した。この時点では,007 と 547 の関係, 210.0254 に 分類していた発掘調査報告は地域に分けるか? 670 の流 通産業に 673.7(小売業)と 685(宅配便)が集まるか? 673.75 のインターネットオークションに 670.0(商業) から移ってくるか? 546 の各項目が 516 と 536 に統合さ れ 546 は削除項目となる点等が議論になった。 なお 685.78 の道路地図は別法の 29 を採用することと した。 また,書架配置への影響を計るため,開架資料を計測 した。今後の移行準備作業
移行作業は,前回の 6A 版から 9 版への移行と基本的 には同じ作業を行う。具体的には MARC の動向に合せ, ①図書館情報システムの更新② 9 版→ 10 版対照表作成 ③ OPAC 更新④書架配置への対応等を検討している。 参考文献 『都立中央図書館三十年史』 『ひびや』都立図書館報 150 号 2001 年 3 月 「日本十進分類法新訂 10 版の検討試案」「日本十進分類 法新訂 10 試案説明会にあたって」 報 告NDC-LD 共同研究の概要
福山樹里(国立国会図書館) 日本十進分類法(NDC)の今後の活用方法を検討す るため,国立国会図書館(NDL)と日本図書館協会(JLA) は,2015 年 4 月から共同で NDC の Linked Data 化の共 同研究を開始した。今回の共同研究は,2015 年 2 月 19 日に,NDL と JLA の間で取り交わした「日本十進分類 法の Linked Data 形式化に係る共同研究に関する協力の 覚書」に基づいて行っている。 共同研究では,NDC 新訂 8 版及び新訂 9 版機械可読 ファイル(MRDF)のデータを JLA が研究対象としてNDL に提供している。研究対象データをもとに,NDL 及び JLA 分類委員会は Linked Data 形式化に関する研 究 を 協 力 し て 行 い,NDC 新 訂 8 版 及 び 新 訂 9 版 の Linked Data 形式のデータを作成する。この研究成果は, JLA に帰属する。 研究成果のオープン化については未定だが,共同研究 の中でその方法等について調査を行う。共同研究の期間 は,2016 年 3 月末までである。 なお,Linked Data とは,ウェブ上におけるデータの 提供及び共有に適した形式のデータである。図書館関係 のデータを Linked Data 化し,オープンデータとして公 開する様々な取り組みが行われている1)。 注 1) 例として,以下を参照のこと。
“ 使う・つなげる:国立国会図書館の Linked Open Data (LOD)とは ”. 国立国会図書館 . http://www.ndl.go.jp/
jp/aboutus/standards/lod.html, ( 参照 2015-08-14).
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