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保険募集に関わる損害賠償責任の内容

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(1)

保険募集に関わる損害賠償責任の内容

清 水 耕 一

■アブストラクト

保険募集規律における損害賠償責任の特例について,わが国の保険法改正 法には反映されなかった。その背景には,保険法が一般私法の枠組みの中で とらえていくべきであるというものであった。本稿では,保険募集の過程で 情報提供義務に違反して締結された顧客のニーズに適合しない保険契約ある いは締結されなかった保険契約における 損害 とは何かを糸口にして,自 己責任に基づく契約理論を背景としているドイツの新保険契約法6条の助言 義務と保険募集人と保険契約者との間で取り交わされた内容による履行が保 険者によって保障されるという判例により発展した保険者の信頼利益の法理 との関係に注目した。

■キーワード

保険募集規定,損害賠償の内容,一般私法体系における保険法

1 はじめに

保険募集に係る損害賠償責任の内容について,その損害額が保険契約者が 支払った保険料相当額(原状回復的損害賠償)か,あるいは,被保険者また は保険金受取人においてニーズに適合した保険契約が履行されたならば得ら れたであろう填補されるべき損害額または保険金額(履行利益的損害賠償)

かという問題がある 。これは,保険募集の過程で広く 情報提供義務 に

/平成21年8月28日原稿受領。

1) 山下友信 保険法 188頁以下(有斐閣,2005年)

(2)

違反して締結された顧客のニーズに適合しない保険契約あるいは締結されな かった保険契約における 損害 とは何かという疑問につながる。

わが国では平成20年6月6日に保険法が公布された。商法の保険契約に関 する規定(629条〜683条)は著しい社会経済情勢の変化にもかかわらず,

100年近くにわたり実質的な改正がされていなかった。このため,古い時代 の理論に基づく硬直的な規律で現代の理論にも実務にも適合しないなどの問 題点があり,現代社会にあった適切なものとする必要があった 。主要な改 正点のひとつとして,保険契約者等の保護の強化があげられる。そして,そ の内容として,保険契約の募集・締結時の規律,すなわち保険者・保険募集 人による説明義務に関する規律,保険者・保険募集人による損害賠償の特則 に関する規律,保険者・保険募集人の被保険者に対する情報提供の規律(以 下 保険募集規律 という)が新設されるべきか法制審議会保険法部会にお いて検討された。その背景には,保険業法の募集規制が国家による保険業に 対する監督を通じて保険契約者保護を図るという観点からの規制であるため,

私法ルールとして説明義務や情報提供義務に違反した場合の民事法的効果の 付与により保険契約者保護を図るものではないということがある 。しかし 結局,保険法には規律されなかった 。このことは,保険募集規制について 従来どおり保険業法において規制され,一般私法理論とともに保険契約者の 保護を図るという方針が採用されたことを意味している 。そしてそれは,

保険法において上記 損害 とは何かについて示すことはせず,一般私法理 論における 損害 の考え方・法理に委ねることにつながる。しかし,保険

2) 萩本修編著 保険法立案関係資料 別冊商事法務321号1頁。

3) 平成19年4月18日保険法部会第8回会議議事録55頁,小林道生 保険者の情 報提供義務 落合誠一=山下典孝編 新しい保険法の理論と実務 66頁(経済 法令研究会,2008年)。

4) 告知妨害,不告知教唆の問題は契約の募集に関する問題であるが,保険者の 解除権の阻却という民事上の効果と直結することから,保険法28条,55条,84 条で規律された。

5) 参照,小林道生 前掲論文66頁。

(3)

商品は法的製造物(Rechtsprudukt)といわれるように契約法と結びつき,

①万一の場合に備えるという保険の特性から保険加入のニーズを直ちには感 じていない者に対してもニーズを喚起しようとするものであること,②目に 見えない給付の約束が約款に記載されるのみであり,支払事由が生じて実際 に保険金の請求手続きをとることにより初めてその品質・性能を知りうるも のであること,③本来的に複雑性を有しており,顧客と保険会社の間には情 報格差があること,等の特性があり,消費者はもっぱら保険会社の提供する 情報に依存しながら商品を理解しなければならないといわれる 。従って,

保険契約の募集に際して,他の一般の契約と比較してより高度の説明や助言 義務の水準が要求される可能性があり,それに伴う 損害 の考え方も一般 私法のそれとは異なる可能性が出てくるのではなかろうか 。

これに対して,1世紀ぶりの改正として2008年1月1日に施行されたドイ ツ保険契約法では保険者の助言義務(6条),保険者の情報提供・説明義務

(7条),保険仲介人の募集規制(59条から73条)という保険募集に関する規 律が整備された。これは保険会社間の機能的な競争のためには,保険契約者 がさまざまな保険商品から合理的な選択に基づいて判断することを前提とし,

そのために保険商品に関する十分な情報と助言を必要とするという理由に基 づく 。ドイツでは,情報提供・説明義務(Aufklarungspflicht)と助言義 務(Beratungspflicht)とについて,業者が顧客の投資判断にあたって必要 な情報を提供すべき義務である点は共通点しているが,後者は情報の範囲に 専門家としての評価を含み,前者は評価を含まない事実のみであるとされる 。 もっとも,このようにほぼ同時期にわが国の保険法制の母法であるドイツ法

6) 中間論点整理⎜保険商品の販売勧誘のあり方 1頁。

7) 参考,拙稿 ドイツ保険契約法における情報・助言義務に関する保険募集規 定とわが国の動向 保険学雑誌606号。

8)

Begrundung des Gesetzes zur Reform  des VVG, A.Ⅱ. 1. ; BT

‑Dr. 16/3945,

S.47.

9) 邦語文献として,堀田佳文 金融取引における 情報提供義務 の概念につい 江頭憲治郎先生還暦記念・企業法の理論下巻 550頁(商事法務,2007年)。

(4)

が助言義務と情報提供・説明義務として保険募集規制を保険契約法に取り込 んだのではあるが,損害の内容については解釈に委ねられている。

本稿では,保険法改正の議論などから保険募集規律における損害に対する 考え方の議論を整理し,次に新ドイツ保険契約法における助言義務の規律と その解釈に係る 履行利益的損害賠償 を内容とする 保険募集人の信頼的 地位の法理 との関係を整理し,それを踏まえて若干の考察を行う。

2 わが国の保険募集に関する損害賠償責任規律の状況

2.1.保険募集の説明義務・情報提供義務あるいは助言義務に関する保険法改 正の議論の状況

誤った説明により,ゆがめられた選択がされたという場合,いずれにせよ 何らかの保険には入ったのだけれども,選択が誤っていたために購入した商 品では保障が得られなかったけれども,他の商品を選んでいれば保障が得ら れたであろうという場合には,履行利益,すなわち,当初の説明で受け取れ るはずの金額と現実に受け取る金額の差額を損害とみなすような損害論の新 しい考え方が必要ではないかとの提案が保険法改正の議論の中でなされた 。

しかしながら,民法上の損害賠償の規律の特則を設けることの要否の前提 となる説明義務・情報提供義務の新設を断念した保険法部会の議論では,保 険契約における説明義務や書面の交付等については,保険業法の規制あるい は金融商品販売法等において規定されており,これらとの関係を踏まえて調 整する必要があること,私法上は信義則を根拠として説明義務が認められる こともあり,これに違反した場合には損害賠償が可能な場合もあり,保険

(契約)法で必要とされる積極的な理由が欠如していること,および,説明 義務の有無およびその内容については,保険契約者の属性や理解力,契約の 内容等に照らして個別具体的に検討されるべきであり,どのような場合にど のような説明義務があるかについて,一般的な規律として保険法で規定する ことには疑問があり,その内容を厳密に規定すると実態に即した形で対応す

10) 平成19年4月18日保険法部会第8回議事録56頁。

(5)

ることを困難にしてしまうというおそれがあるからとされた 。最終的に保 険法部会では,契約法において私法的な救済規定があるというのは体系性を 高め,美しいことではあるが,民法一般にも関わることであって,保険契約 の場合だけ説明を尽くさせるという突出した規定を設けることが立法的には 難しいとされた 。とりわけ,保険契約の場合,契約の取消や無効を主張す ると,Bというリスクを担保する契約が消滅して保険料は返還されるが,元 来望んでいた

A

というリスクをカバーする契約が得られるわけではなく,

契約法の枠内で無理やり

A

というリスクを担保する契約を成立させるとい う処理は極めて難しいとされる。

保険募集の説明義務・情報提供義務に関する保険業法等の状況では,金融 庁より平成21年4月に公表された 保険会社向けの総合的な監督指針 (以 下 監督指針 という)(Ⅱ−3−3−2⑵②,Ⅱ−3−3−6⑵②)によれば,

重要な事項を告げるにあたっては,顧客が保険商品の内容を理解するために 必要な情報(契約概要)と顧客に対して注意喚起すべき情報(注意喚起情 報)という2つの項目に分けて告げる必要があるとされている。保険業法施 行規則53条1項10号では保険募集に際して,保険募集人が保険契約者等に対 し,保険契約の内容のうち重要な事項を記載した書面の交付その他の適切な 方法により,説明を行うことを確保するための措置を講じなければならず,

また,保険業法施行規則53条の7では業務の内容および方法に応じ,顧客の 知識,経験,財産の状況および取引を行なう目的を踏まえた重要な事項の顧 客への説明その他の健全かつ適切な業務の運営を確保するための措置に関す る社内規則等を定めるとともに,社内規則等に基づいて業務が運営されるた めの十分な体制を整備しなければならない。それを受けて,監督指針(Ⅱ−

3−5−1−2 )において保険商品が顧客のニーズに合致した内容であること を顧客が確認する機会を確保し,顧客が保険商品を適切に選択・購入するこ

11) 平成19年11月14日保険法部会資料20・8〜9頁・保険法部会第19回会議議事 録46頁,保険法の見直しに関する中間試案の補足説明(平成19年8月8日)。

12) 平成19年11月14日保険法部会第19回議事録55頁。

(6)

とを可能にするため,顧客のニーズに関して情報を収集し,保険商品が顧客 のニーズに合致することを確認する書面(以下 意向確認書面 という)を 作成し,交付する保険会社の体制整備が求められる。

意向確認書面 は適合性原則に由来している。適合性原則には,広義の ものと狭義のものとがあるとされ,前者は 業者が利用者の知識・経験,財 産力,投資目的に適合した形で勧誘(あるいは販売)を行なわなければなら ないというルール であるとされ,後者は ある特定の利用者に対してはど んなに説明を尽くしても一定の商品の販売・勧誘を行ってはならないルール とされる 。そして,広義の適合性原則の下位ルールとして,商品の勧誘・

販売に際しては顧客の目的や資産状況に適合した商品を推奨しなければなら ないという 助言義務 にあたるものが位置づけられることになる 。助言 義務に違反した場合には,損害賠償の範囲は原状回復的損害賠償に止まるの ではなく,推奨どおりの商品適正を有したものであったならば顧客が得たで あろう積極的利益の賠償(履行利益の賠償)につながりうるとの考え方もあ る 。説明義務と情報提供義務とは同義語と考えられており,自己決定支援 のための義務とされる 。これに対して,パターナリズムの観点から信認関 係を基礎とした義務として助言義務といわれるものもある。助言義務は,契 約締結準備段階においても一方当事者の助言に他方当事者が高度に依存する 状況による委任類似の関係が生じていることに基づいて認められるものであ る 。なお,狭義の適合性原則に対する違反の場合,当該商品をめぐる市場 での取引耐性を欠く者を市場から排除することによって保護することを目的 とすることから,当該取引の無効ないし原状回復的損害賠償となる。もっと

13) 金融審議会第一部会 中間整理(第一次) 17頁以下。

14) 潮見佳男 契約法理の現代化 185頁(有斐閣,2004年)。

15) 参考,山下友信 前掲書192頁。

16) 参照,潮見佳男 適合性違反の投資勧誘と損害賠償 継続的契約と商事法 務 (新堂幸司=内田貴・編)168頁(商事法務,2006年)。

17) 潮見佳男 前掲書186頁。わが国の保険法改正の議論では, 説明義務 とい う語を使っているが,助言義務的なものも含んでいるようなニュアンスもある。

(7)

も,金融取引の分野において発展してきた議論が保険取引一般に対してどこ まで適用可能なのかは不明確である。

従って,改正法の議論の中では,損害賠償が認められる範囲については,

民法等の規律(民法415条,416条,709条,715条および保険業法283条)に よって決せられるので,このような民法等の既存の規律からは導かれない損 害賠償を認める旨の規律を保険契約についてだけ設けることの合理性には疑 問があるとされる 。保険者側の誤った募集行為等により契約者に損害を与 えたときは,現在の民法の仕組みでは,保険料相当額に遅延利息分の支払し か 損害 を一般的には考えられていない 。

なお,債権法改正基本方針3.1.1.10(交渉当事者の情報提供義務・説明義 務)<2>では, 情報提供義務・説明義務に違反した者は,相手方がその契 約を締結しなければ被らなかったであろう損害を賠償する責任を負う と規 定されている。しかし,具体的には,相手方がその契約を締結しなければ被 らなかったであろう損害を賠償しなければならないが,義務違反がなければ 相手方がその契約を締結したであろうと考えられた場合,その契約を締結し ていたならば得られたであろう利益(履行利益)は,賠償されるべき損害に は含まれない 。

2.2.履行利益的賠償請求をめぐる問題状況

履行利益的賠償請求が認められるためには,情報提供義務違反がなければ 保険契約者が保険給付を受けることができたであろうという関係が認められ なければならない 。

18) 平成19年11月14日保険法部会資料20・9頁・第19回議事録。

19) 平成19年4月18日保険法部会第8回議事録56頁。

20) 民法 債権法 改正検討委員会編 債権法改正の基本方針 別冊

NBL126

号96頁(2008年)。

21) 山下友信 前掲書192頁。なお,木下孝治 保険法改正・保険契約における 情報格差の是正と不正請求対策 商事法務1808号17頁(2007年)では,募集人 に対する口頭の告知の局面で保険者が募集人の過失を保険者の過失と同視する

(8)

他の保険契約を解除して契約を締結したところ,その契約の締結過程にお いて違法な行為があり,その契約が解除されたような場合,他の保険契約の 保険金額が損害額として認められることもありうるが,このことは,法制審 議会の議論では,民法の損害賠償の一般的な規定からも導かれるものであっ て,これと異なることを保険法で規定することは考えにくいといわれる 。 当該保険者は保険契約者の主張するような保険契約を販売していないが,

他の保険者はそのような保険契約を販売しており,情報が提供されていたと すれば,保険契約者は他の保険者と保険契約を締結する可能性があったと見 られる蓋然性が認められる場合,その保険契約に基づいて保険給付額を得ら れなかったことについて因果関係はある。もっとも,情報提供義務違反がな ければ保険契約者が保険給付を受けることができたであろうという関係が認 められるための因果関係の証明が必要とされるが,困難であるとされる 。 また,火災保険で地震免責の条項の説明がなかったとしても,商品内容の 変更まではできない性質のもののように,保険契約者の主張する保険契約が そもそも締結される可能性がなかった場合,履行利益的損害との間に因果関 係は存在しないとされる 。その理由として,保険契約にとって募集の局面 による障害により保険保護が適切に受けられないときの損害賠償として履行 利益的損害賠償が認められるとするならば,地震保険のような付保されない 場合にも,付保されたときと同じ状態になってしまうため,保険技術上認め られないであろうし,その内容で付保されたときには他の契約者との平等に 反するとされる。

しかし,リスクを填補する保険がないことを知っていれば当該リスクを排 除していたかもしくは抱えなかったのではなかろうか。あるいは,自家保険

判例の出現を嫌って敗訴が見込まれる事案では和解を選択してきたとの推測が なされている。その際の和解金額は保険料の返還とその利息に止まらないであ ろう。保険募集の際の不適合な商品販売の局面への類推は可能であろうか。

22) 平成19年4月18日保険法部会第8回議事録56頁。

23) 山下友信 前掲書193頁。

24) 東京高判平成元年12月21日判時1341号92頁。山下友信 前掲書192頁。

(9)

的な資金の積立や基金の創設などの対策や保険以外の(将来的な可能性かも しれないが)別の金融商品などによる対策も講じていたかもしれない。説明 義務違反はその機会を奪い,付保されるものと信じていた保険契約者の信頼 を傷つけたことになるのではなかろうか。また,賠償責任に関して保険者は 保険者自身の自己資本から行なうべきものであり,契約者群団等からの支払 は筋違いであろう。

なお,損害賠償の要件の一部について金融商品販売法で置かれたような,

法律上の推定規定,因果関係あるいは証明責任の転換の規定を設けることに ついても,保険契約者間の衡平等の観点からも合理的とはいいがたいと考え られている 。しかし,諸外国では立証の困難さを踏まえて,そもそもの原 因は,説明義務を怠った業者側にあるからこそ,その証明責任が業者に課さ れると考えられている。この点については,後述するドイツ保険契約法6条 4項で立法化されている。

3 ドイツにおける保険募集に関わる損害賠償責任の内容・範囲に関 する議論

3.1.ドイツ保険契約法6条(助言義務)の整理

ドイツ保険契約法では保険会社間の機能的な競争のためには,保険契約者 がさまざまな保険商品から合理的な選択に基づいて判断することを前提とし,

そのために保険商品に関する十分な情報と助言を必要とするという理由か ら ,保険者の助言義務(6条),保険者の情報提供義務(7条),保険仲介 人の募集規制(59条から73条)という保険募集に関する規律が整備された。

ドイツ保険契約法では,情報提供義務はより見通しをよくするために7条に 規定され,一部は拡張され,個別の損害賠償請求を補強する助言義務が6条

25) 平成19年11月14日保険法部会第19回議事録49頁。

26)

Begrundung des Gesetzes zur Reform  des VVG, A. . 1. ; BT

‑Dr. 16/3945,

S.47.

(10)

に規定された 。

本稿では保険契約法6条5項による保険者の助言義務に関する損害賠償義 務の観点から,保険募集によりニーズに適合しない商品が販売されたことに よる損害について,同法6条1項,2項あるいは4項という保険契約を通し た保険者と保険契約者との関係を考え,保険者の履行責任を課す保険代理 商・保険募集人の信頼的地位の法理との関係をどのように理解するか,すな わち,保険契約が他の一般の契約とは異なる法理・理論が適用される必要が あるのか検討していく。

まず,保険契約法6条を示す。

保険契約法6条1項;保険者は,提供される保険を判断することの難しさに 応じ,または,保険契約者の属性およびその状況に応じ,その関心(An-

lass

)のあるときは,保険契約者の要望および必要性を尋ねなければならず,

かつ助言費用と保険契約者によって支払われる保険料との相当な関係の考慮 のもとにおいても助言しなければならず,かつ保険者は,保険契約者に対し,

特定の保険のために与えられたすべての助言の根拠を告げなければならない。

保険契約者が助言を受けることを放棄するときは,その旨につき文書による 方式を要する。

同2項;保険者は保険契約者に与えた助言とその根拠を明確にかつ理解でき るように契約締結前に書面で交付しなければならない。保険契約者が望むか 保険者が遡及して填補する場合に限り,口頭で告げられてもよい。これらの

27)

Hans‑Peter Schwintowski

,

in Bruck/ Moller VVG

9

Aufl

., 6

Rn

2 (2008).

VVG

改正委員会の助言の枠内では,VAG10

a条に規定された消費者

情報が

VVG

に移されなければならないという考えは比較的早くから主張され た。それは7条に移すことで実現された。VVG改正委員会のほかの助言につ いて,新保険契約法が仲介人指令とは異なり,保険者と保険契約者との契約上 の関係をすべて,個別の保険者がその販売をいかに構築していようが関係なし に規定することを明らかにした。それゆえ,VVG改正委員会の提案は,確か に仲介人指令に方向付けられてはいるが,保険者には独自の対応した義務を課 す。これは独立した代理人と共同作業している保険者だけでなく,外務員なし にあるいは従業員からなる外務員と仕事しているすべての保険者に適用される。

(11)

場合には,契約締結後遅滞なく保険契約者に書面で告げられなければならな い,ただし,契約が成立しないか責任保険の遡及填補に関する契約は除く。

同3項;保険契約者は保険者により放棄が保険者に対する5項による損害賠 償請求を主張するときに不利な影響を及ぼす可能性があること明確に示され て,1項と2項による助言と文書を特別な書面による意思表示により放棄で きる。

同4項;保険者が保険契約者の必要性と助言の関心を知りうる限り,1項1 文による義務は契約締結後の保険期間中にも存在する。保険契約者は場合に より助言を書面による意思表示により放棄できる。

同5項;保険者が1項,2項あるいは4項による義務に違反するとき,保険 契約者にそれにより生じた損害の賠償義務を負う。ただし,保険者が義務違 反の責任を負う必要がないときは除く。

同6項;1項から5項は保険契約法導入法10条1項2文の意味での巨大危険 に関する保険契約には適用されず,さらに,保険契約者との契約が保険媒介 人により募集されるかあるいは民法典312

b条1項と2項の意味での非対面

契約であるときにも適用されない。

保険契約法6条に示された助言義務や文書義務は新しいものではなく,判 例がすでに従来の保険者と仲介人の法律状況において展開していたものであ るが,新たな強度と性質を持つかもしれないといわれている 。それゆえ,

助言の基準は従来の判例原則の背後に止まらず,むしろ,多くの今日議論と なっている問題に将来的に助言義務が受け入れられなければならないと予想 されている 。

保険契約法6条1項では,保険者の助言義務は契約締結前にも契約期間中

28)

Einiko B. Franz, Das Versicherungsvertragsrecht im  neuen Gewand‑

Die Neuregelungen und ausgewahlte Probleme, VersR

2008, 298

; Heinrich Dorner

/

Ansgar Staudinger

,

WM

2006, 1710.

29)

Franz, a

.

a

.

O., 298.

(12)

にも課され,契約者の関心(Anlass)があるとき,すなわち,保険契約を 判断することが難しいときあるいは保険契約者の属性や状況に応じた一定の 場合に発生する。助言義務はこれまで存在していなかったので,その義務の 内容,水準あるいは範囲が問題である 。保険者は 保険契約者がメリット とデメリットを考慮のうえ自己の判断で結論を導き出さなければならない 客観的な評価を加えない情報と説明を提供しなければならないだけではない。

むしろ,保険者はそれを越えてさまざまな解決可能性を指し示し,保険契約 者にとってより有利な助言を与えるよう義務付けられる。保険者は保険契約 者の決断に影響を与える。助言の必要性は,商品の困難さにより大きくなり,

助言の範囲も広がる。しかし,保険者は広範なリスク分析について義務づけ られない。助言の範囲の確定の際,助言の費用と保険契約者によって支払わ れる保険料との相当な関係を考慮しなければならない 。この制限は,その 規定後も個別に関係付けられる信義則に基づく助言義務により検査しなけれ ばならない一般に要求しうる基準が形となって現れたものである。保険料と 助言費用との関係という明確な規律は批判されるが,その意味は過大に評価 されるべきではない。この費用に応じた助言義務については多くの批判があ る。この規定については,今後の判例・学説の積み重ねが必要であるとされ る。

30)

Angela Regina Stobener

,

ZVersWiss

2007, 465, 474

f

. な お, 質 問 義務は助言義務の前にあり,助言を基礎付ける準備であり,保険契約者の主観 的な希望と客観的な入用に関わる。一般的なリスクを分析する義務は発生しな い。保険者は保険契約者の調査した希望とニーズに応じて自己の多様な商品の 中で助言し,それぞれのニーズに最も適合した保険保護を勧めなければならな い。保険者は契約の相手方として保険契約者の利益に完全に従うのではなく,

儲かる契約を締結するという保険者自身の利益を追及してよい。保険者は ベ スト・アドバイス をする義務はなく,当該保険契約が必要のないものとして あるいは非経済的であろうとも原則的にその契約を思いとどまるように諫める 必要はない。

31) 助言の関心(Anlass)の重みがあるか,あるいは,保険料と助言費用の不 釣合いの程度がひどいかを比較考量する。契約の目的を危殆化する場合,特別 な危険を引き起こす場合に保護に必要性が出てくる。

(13)

2項では,保険者は保険契約者に与えた助言とその根拠を明確に理解でき るように契約締結前に文書で伝えなければならない。この文書義務は助言の 質を高め,証明問題の解決に寄与する。文書義務の違反は,保険契約者に有 利なとなる証明の容易化を正当化する。

4項では,保険者が保険契約者の要望と助言に関心のあることを知りうる 限りにおいて,契約締結後も保険関係の継続中保険契約者への助言を義務付 けられる。

5項では,保険者が助言義務・文書義務もしくは契約期間中の助言義務に 違反するとき,保険者は保険契約者にそこで生じた損害を賠償する義務を負 う。保険者の過失は推定されており,保険者自身が過失のないことを証明し なければならない。保険者が義務違反の責任を負う必要がないときはこの限 りではない。保険者が助言義務を根拠付ける助言への関心を知っていたとき に責任を負うことになる。ドイツ民法典280条(義務違反による損害賠償)

をまねて作られた保険者の義務違反による独自の請求根拠である 。この規 範は半強行法規である。従って保険者は有責な助言義務違反から責任を逃れ ることができず,その履行補助者も同様である。義務違反は保険契約者の財 産損害につながらなければならない。保険者が誤った情報を適時に修正し,

その結果保険契約者に他の保険保護を得るための適切な時間が残されるとき には,因果関係が排除される。保険契約が義務違反にもかかわらず顧客の要 望と必要性に適うときには,財産損害が発生しない。

損害賠償請求権の範囲は,契約締結上の過失からの損害賠償請求権の範囲 に適合する。契約締結上の過失からの請求権のように,助言のないことによ り損害を被った保険契約者は,助言がなされた場合には得られたであろう保 険保護,支払われた保険料の返還あるいはほかの保険者と締結したであろう 契約の基準による 準填補 (

Quasi

Deckung)を要求できるとされる 。

32)

Schwintowski

,

a

.

a. O

., 6

Rn

41.

33)

Dorner

/

Staudinger

,

WM

2006, 1711.

(14)

3.2.保険者の信頼利益の地位の法理による履行責任の内容

保険者の履行責任の法理は,わが国ではすでに 保険代理商の信頼的地位 の法理 として紹介されている 。これは,保険代理商(本稿では, 保険 募集人 の語をあてる)が普通保険約款の内容や意味あるいはその他の契約 上の重要な事項について説明をなした場合には,申込者,保険契約者および 被保険者はそれを信頼してよく,保険契約が保険契約者にとって有利な説明 の意味に修正され,その契約内容で履行責任を負うことになるというもので ある 。すなわち,保険者の保険募集人による保険契約者(潜在的な保険契 約者も含む)への誤った助言について,保険契約者が保険募集人による契約 の本質的な説明を実態的に正しいこととして基本的に信頼してよく,保険者 は保険契約者に対して責任を負わなければならない。その際,この法理は契 約締結上の過失原則の責任を超えて,保険者の募集人に対する保険者のいわ ゆる意思表示の責任の枠内で募集人の意思表示に応じてもしくは訂正されな いままとされた保険契約者の誤ったイメージに応じて,保険契約者に履行請 求権を保証する。保険契約者が保険契約の本質的な点について誤ったイメー ジを持っていることを保険募集人が知っているとき,保険募集人はこれを正 さなければならず,かつ,それを怠るときには,保険者はそれについて責任 を負わなければならない 。従って,履行利益的損害賠償となる。ただし,

34) 小林道生 ドイツ法における保険募集と説明義務 損害保険研究62巻3号91 頁(2000年),中西正明 ドイツ法における保険代理商の対外関係⎜保険代理 商の信頼的地位⎜ 大森還暦 商法・保険法の諸問題 437頁(有斐閣,1972 年),同 ドイツ法における保険代理商の対外関係⎜再び信頼的地位の原則に ついて 大隈古稀 企業法の研究 286頁(有斐閣,1977年)。

35)

Helmut Kollhosser, in: Prolss/ M artin VVG

27

Aufl

., 43

Rn

29 (2004)

; Roland Michael Beckmann

,

in: Bruck/ Moller VVG

9

Aufl

.,

Einf

.

A  Rn

221(2008)

; Egon Lorenz, Die gewohnheitsrechtliche Er- fullungshaftung des Versicherers im  bisherigen und im  zukunftigen Ver- sicherungsvertragsrecht

,

in: FS Canaris zum

70.

Geburtstag

(2007) 757.

36)

RG

19.1.1915

RGZ

86 128, 133高潮事件といわれ暴風による高潮により 地盤が崩れ,建物が壊れたのだが,暴風によって直接壊れたわけではないとし て,支払いを拒否した事例。保険者の募集人が高潮損害も付保すると意思表示

(15)

明確に定式化された約款と代理人の発言とが明らかに反している場合のよう に保険契約者にその誤ったイメージについて 重過失 がある場合には,適 用されない。

履行責任を求める信頼利益の地位の法理は,信義則のみではなく,募集人 と会社との間の法的な関係,すなわち,会社の募集人に与えられた任務は,

会社のために保険契約者に保険約款の内容と意味およびそのほかの会社の要 請に関して必要な教示と説明をすることであり,そこから発生するとされる。

この法理について特別な保険法上の責任の構成要件の法的性質の一つとして 理解する考え方がある 。それによれば,保険契約者は信頼利益の地位の法 理の前提のもとで履行請求の範囲をもつ 法律上の 請求をする。保険者は,

保険契約が保険契約者の(誤った)イメージにより成立したかのような範囲 で責任を負う。保険募集人の行為は保険契約者にとって 信頼 の構成要件 を作りだし,保険者に通常帰責できる。カナーリスは帰責性の中に,信頼す る者の処理(代理人の誤った情報に基づいて保険契約者が必要な告知をしな かった場合,誤った申告をした場合,所有権に関するあるいは保険契約者の 人に関する不適切な報告をした場合,保険契約者が保険保護を信頼して積立 金の積み立てなかった場合,付保されないことを知っていればリスクを取除 いていたかもしくは引き受けなかったであろう場合など)と状況を取り返し のつかない方法で変更した状態という原状回復の不可能性(生命保険や疾病 保険の場合保険者は年齢や病気の発症などによってもはや保険に入ることが

し,それゆえ,保険契約を締結したのだが,当時高潮損害についての保険は,

被告保険会社においてもほかの保険会社においても提供されていなかった。;

BGH

20.6.1963

BGHZ

40 22, 24

ff

.ヨーロッパ条項事件。保険契約者はド イツで生活しているトルコ人学生であり,アンカラまで行くための自家用車に 自動車責任保険と車両保険締結した。保険募集人はそのことを知っていた。保 険契約者はアンカラ近郊で事故に遭ったが,損害がトルコのアジア地域で発生 したのであり,保険契約の欧州条項により欧州で発生した損害のみ付保される ことを理由に保険者は支払拒否した。

37)

BGH  VersR

1989, 948

; Vgl

.

Claus

Wilhelm  Canaris

,

Die Vertrauens-

haftung im  deutschen Privatrecht, 1971, 345.

(16)

できなくなる)という要素を導き出す 。これに対して,保険契約は信義則 により,保険契約者に有利な説明の意味(保険募集人によりなされるか義務 に違反してなされない契約の内容に関する保険契約者への説明)に形を変え られるという変成理論といわれる考え方がある 。これは契約内容を形成す る強行法規の効果を持ち,信頼利益の地位の法理上の履行請求は法的に形成 された 契約上 の請求であり,代理人の行為からの責任の一種であるとさ れる。

信頼利益の地位の法理の法的性質についての学説は分かれている。信義則 のみを根拠に代理人の行為からの責任を保険者に負わせるよりは,保険者の 帰責性や契約者の救済を加味した特別な保険法上の責任としてとらえるほう が,信頼関係成立の要件を多少厳しくしているといえるかもしれない。しか し,保険者にのみ特別の責任を課す要件として必ずしも説得力のあるもので もなかろう。特に原状回復の不可能性というのは,成立の要件あるいは基準 としての決め手というよりは,政策的な配慮を感じる。その上で信頼損害は 履行利益と一致しうるという 信頼利益の地位の法理による履行利益の請求 について注目するならば,保険者と保険契約者との間に 信頼 という関係が 生成されたことが,通常の自己責任に基づく契約理論とは異なる,保険法分 野に特有のなんらかの法的な関係が形成されたといえるのではなかろうか 。

もちろん,信頼利益の法理を否定する立場からは,なぜ原状回復的を原則 とする一般的な損害賠償請求を超えて,履行請求が認められなければならな いのか,あるいは,なぜ,保険契約者がほかの消費者よりも同じ状況におい てより厚い保護を損害賠償法上扱われてしまうのかという疑問が呈される。

その疑問に対しては,保険契約者がそのイメージしたものに対応する保険 契約の締結を証明することができない点で,損害賠償請求は救済には通常つ

38)

Canaris

,

a. a

.

O., 347.

39)

Vgl

.

Kollhosser

,

a

.

a

.

O.,

43

Rn

30

; Lorenz, a. a

.

O., 762.

40)

Vgl

.

Schwintowski

,

a

.

a

.

O.,

6

Rn

42.

41) 参考,潮見佳男 前掲書185頁。

(17)

ながらないからとされる。この点に対しては,証明法に基礎を持つ証明の困 難さは,必要な限り広く証明法の中でも,特別な証明規則によって解消され るべきであるとの反論がある 。これにより,保険契約者は適切な説明がな されれば保険募集人に意思表示した希望内容により付保されたであろうこと が推定され,説明義務の違反が生じた損害の原因となったと推定される。反 対側の証明は債務者(保険者)に義務付けられるという。保険法の特殊な法 理が必要とされる理由としての 証明の困難さ が,一般の契約法の理論で も解決できるのであれば,その法理の存在意義に疑問を投げかけることにな る議論である。

3.3.信頼利益の地位の法理による履行責任に対する新保険契約法との関係 保険者の信頼利益の地位の法理による履行責任により従来判断されてきた 事例である,保険募集人が契約の締結交渉中提示された保険保護の範囲に関 して保険契約者の錯誤を引き起こすかそのままにして置いた事例の判断につ いて,保険契約法6条1項が規定され,契約期間中の助言については同法6 条4項が規定される。

多くの学説では,保険者の履行責任の排除と損害賠償法の活用が新保険契 約法の流れであり,確かに一連の上級裁判所の判例により発展した原則が新 保険契約法に取り入れられたが,保険者の信頼利益の地位の法理による履行 責任は違うという 。すなわち,信頼利益の法理による履行責任と反対に,

保険契約法6条1項,2項及び4項に規定された助言義務の違反は保険契約 者のイメージにより想定された契約の履行義務を根拠づけるのではなく,保 険契約法6条5項により 損害賠償義務 を根拠づける。保険契約法6条5 項は,損害賠償義務の指示にも適合し,2文から導き出される損害賠償債務

42)

Lorenz, a. a

.

O., 764. 例として説明義務の違反による契約締結上の過失か

らの請求権の発生の際の証明責任の分配の認められた特殊性が示される。

43)

Lorenz, a. a

.

O., 772 ; Wilfried Ruffer

/

Dirk Halbach/ Peter Schimikow-

ski

,

VVG

(2009) 6

Rn

43

; Beckmann, a

.

a

.

O., Einf

.

A  Rn

221.

(18)

を負う保険者の負担での証明責任の転換にも合致する。

確かにこの証明責任の転換については特別な独自の保険法上の責任構成要 件として理解する説がある 。しかし,保険者の助言義務違反の効果は一般 的な損害賠償法により原則的に判断されるということが明確である 。証明 責任の転換は義務の具体化を保険契約法6条1項,2項および4項を指し示 すことによりあげられるので,それは,ドイツ民法典280条1項1文 に抽 象的に規定された義務の具体化を容易にする。―ドイツ民法典280条の一般 的な責任構成要件とは異なり―保険契約法6条1項,2項,4項は,保険契 約者に不利益となる取決めを禁止して保険契約者を特別に保護する保険契約 法18条(強行規定)に指定されている。免責のような保険契約者に不利益と なる保険契約法6条5項に反することはもっぱら排除される。

これに対して,シュヴィントヴスキーによれば,6条がさらに⎜募集人法

(59条から73条)との協働で⎜上級裁判所によって慣習法上発展した保険者 の履行責任を乗り越えるという目的を持っているのかは,議論されたが目下 のところ未解決の問題であるという 。6条5項の文言は,1,2,4項の 義務違反の場合に契約の履行ではなく, 発生した損害の填補 を保険者に 義務付ける。この文言から,慣習法上認められた履行責任を乗り越えたとす るのかは,明らかとはいえない。少なくとも,保険契約者が保険契約の重要 な点について誤ったイメージを持っていることを保険募集人が知るか,その 誤ったイメージを打ち消すことを怠った場合,保険者は保険募集人の履行責 任の枠内で責任を負わなければならない 。これらすべての場合に募集人に 6条5項で要求される責任を負わせるのかは,将来の事例の蓄積を待たなけ

44)

Dorner

/

Staudinger

,

WM

2006, 1711.

45)

Lorenz, a. a

.

O., 772.

46) 債務者が債務関係から生じる義務に違反するとき,債権者はそこから生じる 損害の賠償を請求できる。

47)

Schwintowski

,

a

.

a. O

., 6

Rn

5.

48) 他 の 賛 成 意 見 と し て,Martin Ebers,

in: Praxiskommentar zum  VVG

6

Rn

56 (2008).

(19)

ればならない 。新しい保険契約法の目的である保険契約者のさらなる保護,

より弱い地位におくのではなく,危険にさらすのではないというために,保 険者の慣習法上の履行責任は維持されなければならないという。

4 むすびにかえて

保険募集規律における損害賠償責任の特例について,わが国の保険法改正 法には反映されなかった。しかし,改正法の議論から改めて問い直された,

保険募集の不適合による損害とは何かという疑問から出発して,原状回復的 損害賠償と履行利益的損害賠償という考え方があることを踏まえ,ドイツの 新保険契約法の議論を見てきた。ドイツでは判例により展開された,保険募 集人と保険契約者との間で取り交わされた内容による履行が保険者によって 保障されるという保険者の信頼利益の法理およびそれと新保険契約法6条の 助言義務の新設された規定との関係の議論を整理した。学説の状況から,保 険者の信頼利益の地位の法理,すなわち履行責任が保険契約法6条5項に反 映されたのかは議論の余地が残されている。その議論を通して,保険者と保 険契約者との関係が, 信頼 というものにより,一般の契約関係とは異な り保険契約者がより厚い救済を受けられる関係に展開するのか,あるいは,

一般の契約関係とは異なる法理を保険契約に持ち込むことが認められるのか という問題を抱えることになってしまった。

わが国において保険募集規律の保険法への新設が見送られた背景にも保険 法が一般私法の中で突出すべきではない,一般私法の枠組みの中でとらえて いくべきであるという考えが示されている 。しかし,保険契約は民法一般

49)

BGH

6.4.2001

NJW

2001 2875では,適切な範囲での給付の縮減とより多 くの保険料の支払を請求する。

50) ドイツでも保険法が私法学の中で伝統的に独立した傾向にあって,こんにち の私法理解についての重要な発展を経験しなかったかもしくは遅れて経験した としたうえで,いまだに保険契約の法的性質に関する議論がなされていること に対して冷ややかに見られているようである。Astrid Wallrabenstein,

Ver- fassungsrechtliche Schutzpflichten im  Privatrecht; in VVG‑ Reform

 

(20)

の契約と同じ救済のレベルでいいのであろうか。保険という事故が起こって みないとその品質が確かめられない商品における 損害 が一般私法の損害 賠償の考え方で足りるのであろうか。保険契約で説明義務の違反における損 害とは,契約者の意図しない,契約目的を危殆化し,特別な危険を引き起こ すことこそが損害なのではないかとの疑問は解消されていない。また,ドイ ツ保険契約法6条4項の契約期間中の助言義務という規定が示しているよう に,生命保険のような長期の契約における契約者のニーズは常に変化するも のであり,それに応じた契約内容の変更が前提とされている。一般的契約法 理とは異なる法理が働いていることを示唆しているのではないか。

我が国の保険法の改正には盛り込まれなかったが,相互性から保険者の義 務をも要請する保険法の信義則(最大善意の原則)が保険法の解釈に影響を 与える可能性はある 。学説には,保険法17条において,実質的に保険の利 益を受ける者を経済的被保険者としてその者の保険事故招致も損害保険契約 における名義上の被保険者のそれと同様に保険者免責となる理論 や保険契 約者(被保険者)と一定の関係にある第三者の保険事故招致と保険者の免責 に関する問題を代表者責任理論 が提唱されているが,そのような権利を保 険者に与えるのであればそれに応じた義務を課せられるべきではなかろうか。

なぜ,保険法特有の理論を認める必要があるのか。この問が保険者と保険 契約者との関係を規律し,法律関係,救済のあり方を考える鍵となると思わ れる。

(筆者は海上保安大学校准教授)

Lebens

‑,

Kranken‑, BU‑ Versicherung Verbraucherschutz fur Senioren

,

Hrsg. J

.

Basedow

/

U. Meyer

/

D. Ruckle

/

H.‑ P. Schwintowski

,

Ver- sicherungswissenschaftliche Studien

33,

S.14.

51) 参考,梅津昭彦 保険契約の法的性質再考―保険契約の(最大)善意契約性 から導かれること 保険学雑誌605号33頁(2009年)。

52) 竹濵修 損害保険契約における経済的被保険者 企業法の課題と展望・森 本滋先生還暦記念 449頁(2009年)。

53) 坂口光男 第三者の保険事故招致と保険者の免責 法学雑誌タートンヌマン 11,69頁(2009年)。

参照

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