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木村一美 論文内容の要旨 主 論 文

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Academic year: 2021

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木村一美 論文内容の要旨

主 論 文

CD8+ T cells specific for a malaria cytoplasmic antigen form clusters around infected hepatocytes and are protective at the liver stage of infection

(マラリア細胞質内抗原特異的 CD8+ T 細胞は、

感染肝細胞周囲にクラスターを形成し肝細胞期で防御する)

木村一美、木村大輔、松島由典、都田真奈、本間季里、油田正夫、由井克之 Infection and Immunityに掲載予定

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 新興感染症病態制御学系専攻

(主任指導教員:由井克之教授)

緒 言

マラリア原虫は、感染ハマダラカの吸血によりスポロゾイトが体内に侵入した後、ま ず肝細胞に感染し (肝細胞期)、その後メロゾイトとなって赤血球に感染する (赤血球 期)。肝細胞期中は無症状であるが、CD8+ T 細胞による防御免疫が成立することが知 られており、ワクチン開発の主要な標的である。しかしながら、肝細胞期における CD8+ T 細胞による原虫排除機構については十分に理解されていない。私達は、モデ ルマラリア抗原として卵白アルブミン (OVA) を発現する組換えマラリア原虫を作成 し、抗原特異的 T 細胞によるマラリア原虫感染防御機構の解析を行なってきた。本 研究では、この実験モデルを肝細胞期に応用し、細胞質内に発現されたモデル抗原マ ラリア原虫特異的防御免疫応答の標的となりうるかを検討した。また、特異的CD8+ T 細胞による肝細胞期防御の蛍光生体イメージングを行なうことにより感染防御の現 場を可視化し、感染防御の新たな機序を明らかにすることを目的とした。

対象と方法

本研究では、以下の実験を行なった。

. OVA とマラリア原虫熱ショックタンパクの融合タンパクを導入した組換えマラ

リア原虫 Plasmodium berghei ANKA (PbA-hsOVA)、及び OVA と緑色蛍光タン パ ク GFP と の 融 合 タ ン パ ク を 導 入 し た Plasmodium berghei ANKA (PbA-gfpOVA) を作成した。PbA-gfpOVA をマウスに感染させた後ハマダラカに 吸血させ、唾液腺からスポロゾイト (肝細胞感染型原虫) を採取した。スポロゾイ トを培養肝細胞或いはマウスに感染させ、感染細胞内 gfp の分布を共焦点レーザ ー顕微鏡で解析した。

. OVA 特異的 T 細胞受容体トランスジェニックマウス OT-I CD8+ T 細胞を

C57BL/6 マウスに受け身移入後、組換え原虫スポロゾイトを感染させ、感染 48

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時間後の肝臓内原虫 RNA 量、また末梢血原虫血症のレベルを測定した。

. 抗原提示に重要なtransporter of antigen presentation (TAP) 分子欠損マウスを 用いて上記と同様な実験を行ない、CD8+ T 細胞の抗原認識に重要な抗原提示経路 を解析した。

. 赤色蛍光タンパク DsRed 発現 OT-I CD8+ T 細胞を C57BL/6 マウスに移

入し、 PbA-gfpOVA スポロゾイトを感染させ、多光子顕微鏡を用いて肝臓の蛍光

生体イメージング観察を行なった。

. パ ー フ ォ リ ン 或 い は IFN-γ を 欠 損 し た OT-I マ ウ ス の CD8+ T 細 胞 を

C57BL/6 マウスに移入して原虫感染を行ない、肝細胞期エフェクター機構の解析

を行なった。

. C57BL/6 マウスに OVA 特異的記憶 CD8+ T 細胞を誘導した後、PbA-hsOVA スポロゾイトの感染実験を行ない、肝細胞期感染防御に必要なポリクローナル記憶 CD8+ T 細胞のレベルを検討した。

結 果

. PbA-gfpOVA スポロゾイトや感染細胞で、gfp は原虫の細胞質内に限局していた。

. OT-I CD8+ T 細胞を移入したマウスは、PbA-hsOVA または PbA-gfpOVA ポロゾイト感染に対して、抗原特異的な完全な防御能 (sterile immunity) を示し た。

. TAP 欠損マウスでは OT-I CD8+ T 細胞を移入しても感染が防御されず、感 染肝細胞は TAP 分子を介した通常の経路で抗原提示を行なうことが示唆された。

4. 肝臓の生体イメージングの結果、感染肝細胞の周囲に特異的 CD8+ T 細胞が集積 してクラスターを形成する事が明らかになった。さらに、このクラスターの中で感 染肝細胞の原虫が排除される像を生体イメージングで捉えることに成功した。

5. エフェクター機構の解析では、パーフォリンや IFN-γ を欠損した OT-I 細胞を 用いた実験から、CD8+ T 細胞による肝細胞期マラリア原虫排除には、これらの分 子は必ずしも必要ではないことが明らかになった。

6. 肝細胞期における sterile immunity に必要な OVA 特異的記憶 CD8+ T 細胞 のレベルはかなり高く、CD8+ T 細胞の 9% に達しない場合には肝細胞期の完全 な防御が成立しないマウスが出現した。

考 察

モデル抗原 OVA を発現するマラリア原虫を用い、マウスの肝細胞期感染防御の実験 モデルを作成した。本研究により、マラリア原虫細胞質内に発現するタンパクが、肝 細胞期において抗原特異的 CD8+ T 細胞の標的となることが明らかになった。新た なワクチン候補抗原を探索する上で重要な知見である。

また感染肝細胞の蛍光生体イメージングの結果から、感染原虫の排除において、原虫 特異的 CD8+ T 細胞が数十から千個近く感染肝細胞周囲に集積してクラスターを形 成することが示された。この防御には、CD8+ T 細胞の通常の防御分子であるパーフ

ォリンや IFN-γ は必ずしも必要ではなく、肝細胞期における感染マラリア原虫排除

CD8+ T 細胞の新たな防御機構が関与することが示唆された。これらの知見は、

肝細胞期を標的としたマラリアワクチン開発研究や、CD8+ T 細胞の機能を理解する 上で重要な知見である。

参照

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