「看護師の調整尺度―病院看護師用―」の開発
要約
研究目的
本研究は、病院看護師が行う調整の実践度を測定する《看護師の調整尺度-病院看護師 用-(Nursing Coordination Scale for Hospital Nurse,以下NCS-HN-)》を開発し、その 信頼性及び妥当性を検証することを目的とした。
研究方法
「看護師の調整」の概念分析、病院看護師への面接調査、多職種への面接調査を基に、
《NCS-HN-》の基盤となる構成概念を検討し、内容的妥当性の検討を経て《NCS-HN-》の 原案を作成した。関東圏の病院を対象に予備調査を行った後、全国の病院で行った本調査 を基に《NCS-HN-》を開発し、その信頼性及び妥当性を検討した。更に、本尺度を用いて、
病院看護師の調整と基本属性及び専門職連携教育(IPE)の関連性を明らかにした。
研究結果
『患者・家族の思いの代弁』、『専門職の専門性を活かす情報共有』、『看護チーム方針の 形成』、『専門職チーム方針の形成』、『アプローチ方針の選定』、『患者中心のつながりの形 成』、『専門職のエンパワーメント』の7つの構成概念を基に《NCS-HN-》48項目版を作成 した。予備調査では、518名に質問紙を配布して219名から回収し(回収率42.3%)、206 名を分析対象とした(有効回答率94.1%)。探索的因子分析の結果、尺度構造は5因子構造 と予測され、その結果を基に項目を洗練した。本調査では、一般の質問紙を1172名、再テ スト法用の質問紙を 800 名の看護師に配布し、一般の質問紙を配布した 450 名(回収率 38.4%)、再テスト用の質問紙を配布した237名(回収率29.6%)から回収した。そのうち、
一般の質問紙の393名(有効回答率86.5%)、再テスト用質問紙の216名(有効回答率91.8%)、 計609名を分析対象とした(有効回答率88.0%)。探索的因子分析の結果、尺度構造は4因 子構造が妥当と考えられ、〈合意形成〉、〈患者・家族の権利擁護〉、〈チームのエンパ ワーメント〉、〈チーム方針の統合〉の4つの下位尺度から成る《NCS-HN-》26項目版が 完成した。項目分析、Cronbach’s α 係数、再テスト法の結果から信頼性が確認され、項目 の妥当性、構造的妥当性、基準関連妥当性の各検討から妥当性が示された。また、病院看 護師の調整の定義、「患者及び家族の権利擁護を基盤として、患者及び家族の意思と各専 門職の方針を統合して合意形成を促し、チームのエンパワーメントを導くこと」が示され た。
更に、病院看護師の調整と基本属性及びIPEとの関連性を検証した結果、《NCS-HN-》
の合計得点と関連がみられたのは「看護基礎教育の環境」、「職位」、「日勤看護補助者 数」、「IPE」であった。カテゴリカル回帰分析では、「看護基礎教育の環境」、「職位」、
「日勤看護補助者数」、「IPE」と関連が見られ、全体の12.0%が説明された。これより、
《NCS-HN-》は病院看護師の属性や環境特性を問わずに使用可能であり、IPEが病院看護 師の調整の実践度を高める有効な教育方法であることが示唆された。
考察
一連の研究結果より、《NCS-HN-》の開発過程について一定の妥当性が示された。そして、
本尺度は、病院看護師の調整の体系的な可視化、より具体的な定義の提示、定量化を実現 し、実践及び卒後教育、基礎教育、研究、看護学の各立場における有用性及び活用可能性 を十分に持つ尺度であると考えられた。