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論文審査の結果の要旨 氏名:長谷川 一弘

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:長谷川 一弘

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:Comparative histomorphometric study of intraepithelial papillary capillaries on lichen planus, leukoplakia and squamous cell carcinoma of the oral mucosa (口腔における扁平苔癬、白板症および扁平上皮癌の上皮乳頭内ループ状毛細血管の

組織形態計測学的比較研究)

審査委員: (主 査) 教授 近 藤 壽 郎

(副 査) 教授 岡 田 裕 之 教授 久 山 佳 代

口腔の前がん病変と前がん状態は、2017 年に改定された WHO 頭頸部腫瘍分類で、oral potentially

malignant disorders(口腔潜在的悪性疾患、以下 OPMDs) というひとつの疾患概念でまとめられた。こ

れは oral squamous cell carcinoma(口腔扁平上皮癌、以下 OSCC)に進展する可能性を有する臨床病態と 定義されている。口腔粘膜には臨床的に過角化症を呈する病態が多く、 OPMDs に含まれる oral lichen planus(口腔扁平苔癬、以下 OLP)や上皮性異形成を伴う oral leukoplakia (口腔白板症、以下 OL)、あ るいは OSCC を病理組織診断に先立って臨床的に予測するのは難しい。

OLP は原因不明の慢性炎症であり、臨床病態と病理組織学的所見を考え併せて確定診断が施される。そ の診断基準は標準化されているが、病態の多彩性、病期による組織所見の変化や類縁疾患の存在などによ り、臨床病態と病理組織学的所見の不一致に対する報告が認められる。一方、 OL は、他のいかなる疾患に も分類されない白斑に対して用いられる臨床診断名であり、病理組織学的には上皮過形成、上皮性異形成 あるいは OSCC を含む過角化症と定義されている。 OL における上皮性異形成の程度や OSCC の有無を生 検前に推察することは困難であり、しかも生検結果には診断者間誤差が生じると報告されている。

生検に代わる補助診断としての intraepithelial papillary capillary loop (上皮乳頭内ループ状毛細血管、

以下 IPCL)の上皮性異形成や癌の進展に伴う形態観察は、食道領域で臨床応用されており、口腔領域でも

検討されている。しかし角化傾向を有する OMPDs や OSCC での補助的診断法としての有用性について議 論されているが、 IPCL の病理組織学的形態変化に関する報告は稀少であるために基礎的裏付けが不十分で ある。本研究の目的は、OLP、OL および OSCC の IPCL に対する病理形態学的比較研究を施し、その形 態変化の病理組織診断基準としての可能性について検討することである。研究結果を以下に示す。

1. 研究1(OLP の IPCL に対する病理形態学的比較研究)

(1) 臨床病理学的に、OLP の主たる部位別発生頻度(全 73 部位)は頬粘膜 95.9 %、口唇 2.7 %、

舌 1.4 %であった。

(2) 血管走行角度は、健常粘膜 26.6 ± 19.3°, 病変隣接粘膜 84.5 ± 17.8°、病変部位 30.2 ± 22.4°、び らん性病変部位 34.4 ± 19.3°であった。健常粘膜および病変部位と病変隣接粘膜間には有意差 が認められ(p<0.001)、病変隣接粘膜はびらん性病変部位よりも大きい傾向がみられた。

(3) 病理形態学的にIPCL の平均面積は、 健常粘膜978.0 ± 523.7 µm

2

、 病変隣接粘膜1537.1 ± 1061.4 µm

2

, 病変部位 689.0 ± 351.9 µm

2

、びらん性病変部位 1092.1 ± 153.3 µm

2

であった。病変部 位と病変隣接粘膜間には有意差が認められ(p<0.001)、病変隣接粘膜は健常粘膜よりも大きい傾 向がみられた。

2. 研究 2 (OL および OSCC の IPCL に対する病理形態学的比較研究)

(1) 病理形態学的に平均血管最短径は、健常粘膜 8.79 ± 0.84、上皮過形成 9.29 ± 1.06、軽度上皮性

異形成 21.15 ± 1.31 、 高度上皮性異形成 23.98 ± 2.11 、 OSCC 25.97 ± 2.13µm であり、 5 群間

に有意差が認められた(p<0.01)。高度上皮性異形成と OSCC は、健常粘膜と上皮過形成と比較

(2)

2 して有意な血管の拡張がみられた(p<0.01)。

(2) IPCL の面積は、健常粘膜 41.19 ± 1.90、上皮過形成 52.75 ± 3.64、軽度上皮性異形成 540.93 ± 189.92、高度上皮性異形成 639.37 ± 173.53、OSCC 848.33 ± 135.71µm

2

であり、5 群間に有意 差が認められた(p<0.01)。 血管面積の増大は、高度上皮性異形成と OSCC は健常粘膜より、

OSCC は上皮過形成と比較して有意であった(p<0.01)。さらに軽度上皮性異形成は、健常粘膜よ りも有意であった(p<0.05)。

(3) 基底膜血管間距離は、健常粘膜 19.78 ± 1.53 、上皮過形成 16.36 ± 1.22 、軽度上皮性異形成 14.51

± 1.08、 高度上皮性異形成 12.03 ± 2.01、OSCC 8.65 ± 2.00µm であり、5 群間に有意差が認め られた(p<0.01)。 IPCL は基底膜側への伸展については、OSCC は健常粘膜や上皮過形成と比較 して、高度上皮性異形成は健常粘膜と比較して有意に生じていた(p<0.01)。

(4) 円形度は健常粘膜 0.82 ± 0.04、上皮過形成 0.79 ± 0.03、軽度上皮性異形成 0.62 ± 0,07、高度上 皮性異形成 0.54 ± 0.05、OSCC 0.43 ± 0.07 であり、5 群間に有意差が認められた(p<0.01)。円 形度は、高度上皮性異形成と OSCC では健常粘膜や上皮過形成と比較して有意に減少していた (p<0.05)。

OL と OLP はいずれも OMPDs に含まれる口腔粘膜疾患であり、生検の段階での精度の高い病理組織診 断が必要である。本研究では、OLP ではその臨床病態に関わらず病変隣接粘膜下 IPCL には、特徴的な形 態変化が観察された。さらに OL の上皮性異形成程度の増大に伴う IPCL の病理組織学的形態変化が認め られた。IPCL の形態変化は、これら病変の病理組織学的診断基準の一項目としての可能性が示唆された。

よって本論文は、博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

平 成31年1月24日

参照

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