〈論 説 〉
法 の 哲 学
一 関 係 性 ・権 力 ・法 一
塩 津 徹
目 次 は じめ に
(一)人 間存 在 と関係 性 (二)関 係 性 と権 力 (三)法 と国 家
(四)方 法 と して の個 人 主 義 総 括
は じめ に
本 稿 で 「法 の哲 学 」 とは 、 法 哲 学 の歴 史 や 特 定 の 著 名 な法 哲 学 者 の理 論 を語 る こ とで は な い。 憲 法 学 に お け る個 々 の 問 題 の解 釈 の 前 提 と して 根 本 的 に人 聞 存 在 に と って 法 と は何 か を 哲 学 的 に考 え る こ とで あ る。 そ の た め に は 人 間 存 在 に お け る関 係 性 、 権 力 、 法 とは何 か を 改 め て 問 い 直 そ う とす る もの で あ る。 こ の こ とにつ い て は これ ま で も部 分 的 にで は あ るが 「憲 法 に お け る人 間 像 」 の 問
い
題 と して 検 討 した こ とが あ る。
問 題 解 決 の た め に は 個 々 の 法 規 を解 釈 す る こ とで 事 足 りる の で あ っ て 、 あ え て一 定 の 人 間 像 を前 提 と して 考 慮 す る必 要 もな い との 立論 も あ り うる。 しか し、
逆 に そ の よ う な立 論 で は個 々 の 問 題 に の み 適 用 され 一 貫 性 の な い 論 理 構 成 に陥 りが ち で あ る。 そ こで 、 個 別 で は カバ ー で き な い全 体 像 の 解 明 が 必 要 と され る が 、 この 点 に関 して は人 権 の基 盤 と して 「人 格 的 自律 論 」 を据 え る佐 藤 幸 治 教
ラ
授 の一 連 の 業 績 が あ げ られ る。
この よ う な領 域 の 研 究 は従 来 、 法 哲 学 に属 す る とされ て きた 。 しか し、 ロ ナ ル ド ・ドゥオ ー キ ンが 強 調 す る よ うに 法 律 家 は 常 に哲 学 者 で あ り、 特 に憲 法 は
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す べ て の 法 の 基 礎 で あ って 憲 法 理 論 に お い て も哲学 と深 く関 わ りあ って い る。
本 稿 で は個 人 の 尊 重 を 基 盤 と して 関 係 性 、 権 力 、 法 を検 討 す る とい う一 見 す る と抽 象 的 な議 論 が な さ れ るが 、 実 は憲 法 学 の 個 々 の 具 体 的 問題 を射 程 に 入 れ た
「関 係 主 義 」 を軸 とす る法 の 哲 学 的 考 察 で あ る
。
(一)人 間 存 在 と 関 係 性
① 人 間存在 と関係 性
哲学 の世界 では人間存在 は それ 自体独 立 して存在 して い る実体 的存 在で はな
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く関 係 性 の 中 で 存 在 す る とい う 「関 係 主 義 」 的 な考 え方 が あ る。 人 間 は 社 会 的 存 在 で あ り、 他 の人 間 との 関係 性 の 中 で 生 きて い る。 ゲ オ ル ク ・ジ ンメ ル は、
社 会 とは確 固 た る実 体 で は な くた えず 形 成 され る プ ロセ ス で あ って 個 人 の 存 在 も社 会 的 な 糸 が 互 い に 結 び あ う場所 に す ぎ ず 、 相 互 行 為 とい う糸 が 交 差 す る と
5)
こ ろに で き る 「結 び 目 」 で あ る と して い る。
この よ うな 「関 係 主 義 」 の 視 点 か ら は い くつ か の 帰 結 が も た ら され る。 一 つ に は 「分 節 化 」 の 道 筋 で あ り、 人 間 存 在 を抽 象 的 、 包 括 的 に見 るの で は な く具 体 的 、 個 別 的 関 係 に還 元 す る こ とで あ る。 一 人 の 人 間 を見 れ ば親 子 とい う関 係 が あ り、 労 働 者 とい う存 在 で あ り、 特 定 の 団 体 に 所 属 す る市 民 で もあ る。 人 間 存 在 を個 々 に 「分 節 化 」 す る こ とに よっ て 関 係 性 の 中で い か に して規 定 さ れ た 存 在 で あ るの か を知 り、 具 体 的 形 象 と して 理 解 で き るの で あ る。
二 っ に は 「分 節 化 」 に よ っ て もた らさ れ る一 人 の 人 間 存 在 の 関 係 の 多 様 性 の 帰 結 で あ る。 こ の点 に 関 して 多様 な関 係 性 を単 純 化 し、 生 産 関 係 だ け に 限 定 す るマ ル ク ス 主 義 の思 想 は 人 間 存 在 の 本 質 を誤 解 して い る。 マ ル クス の初 期 の 文
の
献 で は 「人 間 の 本 質 は現 実 的 に は社 会 的 諸 関 係 の総 和 で あ る」 と述 べ 、 「社 会 的 諸 関 係 」 とい う多 様 な 関 係 が 考 慮 され て い るが 、 後 に は 労 働 者 と資 本 家 と い う 生 産 関 係 に 限定 され る こ とが 問 題 な の で あ る。
三 っ に は社 会 的 な関 係 は 人 為 的 に構 成 さ れ た も の で あ る とい う帰 結 で あ る。
こ の こ とは特 に 法 の 世 界 で は よ り明確 に い え る こ とで あ っ て 、 た と え ば、 嫡 出 子 ・非 嫡 出 子 とい う存 在 は 自然 的 な存 在 と して あ り うる もの で は な く法 的 に構 成 され た 関 係 の概 念 で あ る。 また 、 尊 属 、 卑 属 と い う関係 も一 見 す る と家 族 と
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い う 自然 的 存 在 の 問 題 に も見 え るが 、 封 建 的 な 倫 理 観 に 裏 打 ち され た 人 為 的 に 構 成 さ れ た 関 係 性 で あ り、 法 的概 念 で あ る。
四 つ に は 関 係 の 限定 性 とい う帰 結 で あ る。 人 間 は 関 係 性 な く して 生 き て は い け な い し、 時 に は 団体 へ の所 属 とい う関 係 に入 る。 しか し、 人 間 は団 体 とい う 関 係 性 を 自 ら の意 思 に よ っ て選 択 した に もか か わ らず 関 係 性 、 団 体 に よ って 不 当 に拘 束 され る こ とが あ る。 それ は選 択 の 自 由(団 体 か らの 脱 退 を含 め て)が 無 視 され 、 あ るい は部 分 的 な 関 係 性 を選 択 した に も関 わ らず 団 体 に よ る本 来 の
目 的 を 超 え て の 包 括 的 な支 配 関 係 が及 ぶ か らで あ る。
この 限 定 性 に 関 して 更 に 言 え ば 、 関 係 性 に お い て は任 意 に 選 択 し う る関 係 も あ れ ば 、 そ の選 択 に任 意 性 が 弱 く 自然 的 な要 素 が 強 い関 係 も あ る。 後 者 で は親 子 、 兄 弟 の 関 係 が あ り、 国 家 と個 人 、 国 籍 の 問 題 も あ る。 しか し、 これ ら とて 究 極 的 に は絶 対 的 に選 択 しえ な い もの で は な く関 係 か らの 離 脱 も可 能 で あ る。
要 す る に 「関 係 主 義 」 の 視 点 で は 個 人 の存 在 を絶 対 的 に 包 括 し う る関 係 、 包 括 的 支 配 は あ りえず 限定 的 な も の と され る。
た とえ ば 、 憲 法28条 に 労 働 基 本 権 が規 定 され 、 経 済 的 弱者 で あ る労 働 者 の た め に労 働 組 合 の 結 成 を 保 障 し、 労 働 組 合 の 組 合 員 に 対 す る一 定 の 統 制 権 を 認 め るな ど労 働 基 本 権 に集 団 的性 格 を与 え て い る。 しか し、 労 働 組 合 が 経 済 的 地 位 向 上 とい う 目 的 を超 え て個 々 の 組 合 員 の政 治 的 自由(立 候 補 の 自 由)ま で も制
おラ
約 で き るか に つ い て は最 高 裁 の 判 決 は 否 定 的 で あ る。 労 働 組 合 とい う関 係 性 だ けで は個 人 の 政 治 的 自 由 を制 約 で き な い の で あ る。
② 関 係 性 の 可 変性
我 々 は と もす る と関 係 性 、 法 的 概 念 を実 体 と して 捉 え が ち で あ る。 しか し、
法 的概 念 と して構 成 さ れ た 関 係 性 は 人 為 的 な もの で あ っ て 永 久 不 変 で は な く、
ま して や 「真 理 」 で もな い 。 確 か に 非 嫡 出子 と い う関 係 は 法 的 な根 拠(た とえ ば 、 民 法900条4号 に お け る法 定 相 続 分 の問 題)は あ る が 、 憲 法14条 の 法 の 下 の平 等 に反 す る と して 裁 判 所 が も し違 憲 の判 断 をす れ ば 民 法 の この 条 項 の有 す
る法 的 関 係 性 は存 在 しえ な くな る はず で あ る。
この 視 点 を 関 係 性 の 可 変 性 とす れ ば い くつ か の 帰 結 が 導 き 出 され る。 一 つ に は 「立 場 の互 換 性Jで あ る。 雇 用 関 係 を例 に とれ ば 労 働 者 の意 思 に よ っ て 時 に
は雇 用 側 に よ っ て 関 係 は 終 わ る。 しか し、 雇 用 関 係 を不 変 な もの と捉 え れ ば 雇 用 者 と被 雇 用 者 と い う立 場 の 差 異 を 絶 対 化 す る こ とに な り、 相 手 に 対 す る共 感 性 は薄 れ る。 そ れ ゆ え に雇 用 関 係 の 持 つ 権 力 性 を明 確 に し、 不 必 要 な対 立 を回 避 す るた め に も 自己 を相 手 の 立 場 に 置 き換 え る 「立 場 の互 換 性 」 の 視 点 が 必 要 で あ る。
二 つ に は 呵 能 性 の 留 保 」 で あ る。 人 間 は様 々 な変 化 の 可 能 性 を秘 め て お り、
それ は 人 間 が 本 来 、 内 在 す る発 展 可 能 性 で も あ る。 それ を他 人 が 現 状 に よ っ て 判 断 す る こ とは本 人 の 自 己実 現 の 可 能 性 を 閉 じ る こ とに な る。 た とえ ば 、 教 育 当 局 が 、 障 害 児 の意 思 に反 し普 通 教 育 の 道 を閉 ざ す よ うな 問題 で あ る。 か つ て 筆 者 は 「可 能 性 の 留保 」 とい う言 葉 で人 権 の 理 解 に お い て も この 内在 す る可 能
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性 の 発 展 に 配 慮 す べ きで あ る と述 べ た こ とが あ る。
ジ ョン ・ロ ー ル ズ は 人 間 の 生 を動 機 づ け て い るの は 、 自 己実 現 の原 理 で あ り、
自尊 心 の原 理 で あ っ て 、 各 人 は 可 能 なか ぎ り自 己 の 自由 を拡 げ 、 生 の 可 能 性 を
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追 求 す る もの で あ る、 とす る。 他 者 で あ れ 、 国 家 で あ っ て も現 状 の 関 係 性 を固 定 化 す る こ と は人 間 に 内 在 す る 自己 実 現 の 可 能 性 を 閉 じ る こ とに な る。 関 係 性 の可 変 性 に も とつ く 「可 能 性 の 留 保 」 は様 々 な関 係 性 に お い て 自 己 だ け で な く、
他 者 に 対 して も持 つ べ き不 可 欠 な 「眼 差 し」 で あ る。
三 っ に は 関 係 性 の 可 変性 を可 能 とす る 「内 的 多 様 性 」 で あ る。 多 様 性 とは 個 人 と個 人 との関 係 とい う外 部 的 関 係性 だ け で な く、 個 人 の 内部 的 関 係 性 に関 わ っ て く る。 自 己 の 「内的 多様 性 」 を認 め る こ とは 対 他 関係 にお い て も 自 己 とは 異 な る存 在 、 多様 性 を受 容 す る こ とを 可 能 に し、 寛 容 に な る こ とが で き る か らで
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あ る。 また 、 自己 の 内 部 に 多 様 性 が あ れ ば現 状 は そ の一 面 に す ぎ ず 、 多 様 性 の 中 に将 来 の 変 化 の 可 能 性 を 見 出 す こ とが で き るの で あ る。
自 己 の 内 部 に お け る多 様 性 と他 との 関 係 に お け る多 様 性 の 問題 はヘ ル ベ ル ト・
iz)
マ ル クー ゼ が 指 摘 す る 『一 次 元 的 人 間 』 の 問 題 と も関 わ る。 この 著 作 は人 々 が 現 代 の 管 理 社 会 に あ っ て批 判 的 思 考 を失 い、 物 事 を一 面 的 、 一 次 元 的 に しか考 え な くな って しま っ た こ とを 指 摘 した もの で あ る。 個 人 の 自律 、 自立 とは 自 己 の 内部 の 多 様 性 の維 持 ・展 開 で あ り、 そ れ は ま た 社 会 とい う外 部 関係 の 多 様 性 に も深 く関 わ り合 っ て い る の で あ る。
そ もそ も 「人 権 とい う文 化 は 、 論 理 上 、 自 己 自身 を批 判 す る文 化 、 その 内部
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に 論 敵 の存 在 を承 認 す る文 化 」 で あ る。 現 代 社 会 に お いて 日常 的 に人 権 擁 護 の 発 言 を しな が ら、 実 際 に は 自 らへ の 批 判 を許 さ な い こ とは よ く見 られ る風 景 で あ る。 そ の よ うな言 行 不 一 致 が 生 ず る の は 自 己 の 内部 に他 者 や 「異 物 」 を 許 容 す る よ うな 「内 的 多様 性 」 が 欠 けて お り、 人 権 の 言 葉 が 外 部 との 関 係 に お いて 単 な る 「道 具 」 に な って い るか らで あ る。
(二)関 係 性 と権 力
① 関 係 性 と権 力
人 間 の関 係 性 に お い て 個 々 の 関 係 は必 ず しも対 等 な 立 場 だ け が 存 在 す るの で は な い。 多 くの 関 係 に お い て 力 は 不 均 衡 で あ り、 そ れ が 自然 な 状 態 で あ る とも い え る。 この 不 均 衡 な 関 係 に お い て は一 方 が 他 方 に影 響 力 を及 ぼ す 。 この 影 響 力 は 直 接 的 な 他 者 に よ る支 配 、 強 制 力 とな っ て 表 れ る場 合 が あ り、 こ れ を 権 力 と呼 ぶ こ とが で き る 。 も っ と も権 力 の 行 使 は 自 由 の制 限 だ け で は な い。 た とえ ば 、 子 ど も手 当 の よ うな 給 付 も公 的 資 金 で あ る税 金 の権 力 行 使 に よ る配 分 で あ る とい え る か らで あ る。 人 間 の 関 係 性 に お い て 権 力 の 存 在 を無 視 で き な い の で あ っ て 、 そ れ を た え ず捌 挟 して い く必 要 が あ る。
この よ うに権 力 とは あ る関 係 性 に お い て一 方 が 他 方 に 強 制 力 を 持 つ とい う こ とで あ り、 両 者 め 力 関係 の 強 弱 、 非 対 称 性 を 表 す もの で あ る。 しか し、 権 力 は 単 に 一 方 の む き出 しの 力 に よ っ て の み 構 成 され る もの で は な く、権 力 を行 使 さ
w)
れ る側 が そ の権 力 を正 当 な も の と して 服 従 す る こ と もあ る こ とに も注 意 を要 す る。 た だ 、 この 場 合 、 権 力 の 支 配 を 受 け る人 々 に お い て権 力 の存 在 を正 当化 す る意 識 は決 して 単 純 な もの で は な い 。
た と え ば 、権 力 が 合 法 的 な手 続 き を経 た もの で あ っ て合 理 的 な 支 配 で あ る と い う意 識 も あ るか も しれ な い。 しか し、 権 力 の 存 在 が 不 法 な もの で あ り非 合 理 的 で あ った と して も権 力 に 連 な り、権 力 と同一 化 す る こ と に よ っ て 日常 生 活 に お け る不 満 と不 安 を心 理 的 に解 消 し、 安 心 感 を得 る場 合 も あ り う るの で あ る。
ナ チ ス の 時 代 に お け る ヒ トラ ー に 対 す る人 々 の 熱 狂 的 賛 嘆 は こ の こ と を表 して い る とい え な くは な い。
と こ ろで 、 人 間 存 在 に とっ て そ の 関 係 性 が 多 様 で あれ ば 多 様 な権 力 の 存 在 が
考 え られ る の で あ る。 親 子 関 係 に お い て もあ る種 の権 力 関 係 が 存 在 す る し、 学 校 に お い て は 学 校(校 長 等)と 生 徒 ・学 生 との 関 係 が あ る が 、 最 高 裁 に よれ ば
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前 者 に は後 者 に 対 す る 「包 括 的権 能 」 が あ る とさ れ て い る。 企 業 に お い て も経 営者 と労 働 者 との 関 係 は 事 実 上 、 対 等 で は な い し、 経 営 者 に は 一 定 の権 力 が あ る。
多 様 な権 力 の 存 在 とい う考 え 方 は、 マ ル クス 主 義 の よ うな資 本 家 の支 配 とい う単 純 な 関 係 論 、 権 力 論 を排 す るだ け で は な い。 我 々 の 日常 の 社 会 的 な 関 係 の 中 に 潜 む様 々 な 権 力 関 係 を挟 り出 す 必 要 性 が あ り、 そ れ ゆ え に 日常 生 活 に お け る関 係 性 が 有 す る持 つ権 力 へ の 批 判 の 眼 が 必 要 で あ る。 そ して 、 権 力 をあ る特 定 の 集 団 の 陰 謀 とみ な す の で は な く、 権 力 の 行 使 者 が 同時 に権 力 を行 使 され る
ic)
こ とも あ りう る とい う複 眼 的視 点 も不 可 欠 で あ る。
こ の こ と は人 が 様 々 な 関 係 を任 意 に 結 ん だ と して も関 係 が 持 っ 権 力 性 を た え ず 見 極 め て い く こ との 必 要 性 を示 して い る。 あ る関 係 に お い て 自 己 の どの よ う な利 益 、 権 利 を特 定 の 権 力 に 委 ね て い るの か 、 も し くは侵 害 され て い るの か を 個 々 に検 証 して い くべ き な の で あ る。 関 係 性 に お いて 個 々 に必 要 や む 得 ざ る場 合 を 除 い て 権 力 を 有 す る者 の 無 制 限 の 「包 括 的支 配 」、 「人 の 支 配 」 を 許 容 して は な らな い の で あ る。
そ して 、権 力 の 問 題 を考 え る上 で 重 要 な の は 「等 身 大 の 人 間 」 の 視 点 で あ る。
こ の世 に 「偉 い 人 」 だ け が 存 在 す るの で あれ ば権 力 を 抑 制 す るた め の ル ー ル や 法 は必 要 な い。 一 人 の人 間 が 良 い こ とも す れ ぼ 悪 い こ と も す るか ら こ そ悪 い こ とを した 時 には 制 裁 され 、 また 、 それ を予 防 す るの が ル ー ル で あ り、 法 で あ る。
「等 身 大 の 人 間 」 の視 点 と は 「偉 い人 」 や そ の 権 力 に依 存 す る こ とな く良 い こ と もす るが 悪 い こ と もす る法 的 人 間 像 で あ る。
② 「虚 偽 意 識 」
しば しば 「人 間 主 義 」 とい う言 葉 が 使 わ れ る こ とが あ る。 この 場 合 の 「人 間 主 義 」 に は 人 間 を大 事 す る とい う漠 然 た る ヒ ュ ー マ ニ ズ ム の 意 味 が 込 め られ て い る。 しか し、 人 間 を大 事 に す る とい う こ とは具 体 的 に どの よ うな行 為 、 関 係 性 を指 す の か は明 らか で は な い 。 あ る関 係 性 を具 体 的 に 問題 にで きな いの は 自 己 や 自 己 の 集 団 が どの よ うな 関 係 の 中 に 置 か れ て い る の か を 自覚 で きず 権 力 関
係 を意 識 化 しえ な いか らで あ る。
結 局 、 そ の よ う な 自 己 の 権 力 を 自覚 化 しえ な い ま ま単 に 「人 間 主 義 」 を主 張 した と こ ろで権 力 の 存 在 を隠 蔽 す るイ デ オ ロ ギー 、 「虚 偽 意 識 」 とな らざ るを え な い。 人 間存 在 を漠 然 た る集 合 と し、個 別 具 体 的 な関 係 性 に 「分 節化 」 で きず 、 そ して 、 関 係 性 に 潜 む権 力 性 を見 な い で 利 益 を得 るの は現 に 権 力 を 有 す る人 間 で あ る。 こ の よ う な権 力 の 存 在 を 隠 蔽 す る 「虚 偽 意 識 」 は 「地 位 の 僑称 」 に典 型 的 に 見 られ る。
「地 位 のt称 」 とは、独 裁 国 家 にお いて 政 治 指 導 者 と国家 を等 置 す る主 張 で あ る。 独 裁 者 個 人 が 国 家 の地 位 を悟 称 し、 独 裁 者 の 意 思 が 国 家 の 意 恐 で あ る と さ れ て 国 民 の 中 に あ る多 様 な 意 思 、 関係 は無 視 さ れ る。 そ して 、 独 裁 者 に対 す る 批 判 は 国 家 へ の 反 逆 とさ れ 、 国 家 内部 の 利 益 の 対 立 、 権 力 関 係 が 完 金 に隠 蔽 さ れ る。 こ の 「地 位 の 轡 称 」 も ま た現 に 存 在 す る支 配 一被 支 配 の 権 力 関 係 を概 い 隠 す 「虚 偽 意 識 」 の 一 つ の 具 体 例 に他 な らな い 。
権 力 の 存 在 は確 か に現 実 の 実 力 、 強 制 力 に よ って 裏 打 ち され て い るか も しれ な い が 同 時 に他 方 で は 「虚 偽 意 識 」 に も とつ く幻 想 に よ っ て も支持 され て い る。
ア ン デ ル セ ンの 童 話 「裸 の 王 様 」 を例 に とっ て み る。 蛍 話 で は王 様 は権 力 欲 、 虚 栄 心 の あ ま り、 詐 欺 師 た ち に だ ま され 「目 に見 え な い服 」 を 着 て 、 す な わ ち、
裸 で 町 に 出 る。 人 々 は そ れ を見 て裸 で あ る と気 づ くも権 力 を恐 れ て 真 実 を語 る こ とが で き な い 。
あ るい は 自分 た ち の精 神 性 の 貧 し さか ら本 当 は 存 在 す るは ず の豪 華 な 衣 服 が 見 え な い と思 い 込 む よ うな 権 力 に屈 す る精 神 的縛 りが あ っ た か も しれ な い。 し か し、権 力 の 幻 想 、 「虚 偽 意 識 」 に囚 わ れ な い素 直 な こ ど も は 「裸 の 王 様 」 で あ る こ と を 口 に す る。 この場 合 の こ ど も は精 神 的縛 りが な い ゆ え に この よ うな幻 想 に拘 束 され る こ とな く権 力 の 存 在 と そ こ か ら発 す る異 常 な 行 為 を 指摘 す る こ
とが で き た の で あ る。
この童 話 か らの 別 の 教 訓 と して は 、 王様 自身 が 何 を も可 能 に す る無 限 の 権 力 、 そ して 、 批 判 を 退 け る強 大 な 権 力 に 溺 れ る こ とを 戒 め る べ きだ っ た か も しれ な い。 この 点 に 関 して イ マ ヌエ ル ・カ ン トの 「全 世 界 を 自 らの う ち に 包 み もっ て い る もの と して 自 ら を み な した り振 舞 った りす るの で は な く、 自 らを 一 人 の た
n)
ん な る世 界 市 民 とみ な し、 また 振 舞 う」 よ うな権 力 に対 す る 自 己謙 抑 が 政 治 指
導 者 に求 め られ る の で あ る。
③ 権 力 と言 語
言 語 は人 々 の 意 思 疎 通 の 手 段 で あ り、 誰 に とっ て も共 通 な 意 味 が な けれ ば意 思 疎 通 は で き な い。 言 語 は人 間 の 関 係 性 を 表 現 す る もの で あ るが 、 言 語 は人 間 の 関 係 性 に よ っ て一 方 的 に規 定 され る もの で は な い 。 時 に は言 語 が 人 間 関 係 を 規 定 し、 権 力 を形 成 し なが ら世 界 を創 り出 す こ と もあ る。 た と え ば、 あ る種 の ス ロー ガ ン と い う言 語 表 現 に よ って 団結 とい う関 係 性 が 創 られ 、 推 進 力 とも な
り、 人 々 を 鼓 舞 し、 よ り良 き現 実 世 界 を もた ら す こ とも あ る。
しか し、 逆 に差 別 的 言 語 が現 実 に差 別 的 関 係 を もた ら す こ とも あ る。 更 に は 憎 悪 が 込 め られ た言 語 が 実 際 に 憎 悪 の 関 係 を創 り出 し、 増 幅 させ る こ と も否 定 で き な い 。 た とえ ば 、 集 団 間 に お い て利 害 対 立 関 係 が あ り、 一 方 の集 団 が 敵 ・ 味 方 関 係 と い う形 で こ の利 害 対 立 を憎 悪 関 係 へ と増 幅 させ る こ とを意 図 す る場 合 に特 定 の 言 語 が 使 用 され る。 太 平 洋戦 争 中 に政 府 に よ っ て 宣 伝 さ れ た 「鬼 畜 米 英 」 な どの 言 葉 が 一 つ の例 で あ る。
もち ろん 、 言 語 も権 力 関 係 に よ っ て影 響 を受 け ざ る を え な い。 人 間 関 係 に お い て特 定 の 権 力 が 強 力 な場 合 、 言 語 の 意 味 は特 定 化 され る こ とに な るか らで あ る。 こ こで は言 語 は意 思 疎 通 の 手 段 だ けで は な く、 支 配 、被 支 配 の権 力 関 係 の
IS)
中 で思 考 操 作 の 手 段 に もな りう るの で あ る。 た とえ ば 、 ナ チ ス政 権 下 でFuhrer の言 葉 は本 来 、 一 般 的 に は 指 導 者 の 意 味 で あ るが 当 時 に お い て は ヒ トラ ー 総 統 そ の もの の 存 在 を 示 す こ と に な っ た 。
また 、Volkは 一 般 的 に は 民族 を 表 す 言 葉 で あ るが ナ チ ス 政 権 下 で は ドイ ッ民 族 、 ゲ ル マ ン 民 族 の 優 位 性 を示 す こ とが 多 か っ た の で あ る。 この よ うに独 裁 国 家 の よ うな 権 力 関 係 に お い て は 言 語 の 意 味 が 一 元 化 、 単純 化 され る こ とが あ る。
そ して 、 権 力者 に とっ て 、 ま た 、権 力 的 支 配 を 受 け る者 に とっ て も特 定 の 言 語
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は 意 識 的 、無 意 識 的 に権 力 関 係 を 当 然 の ご と く前 提 と した もの に な っ て い る。
そ して 、 独 裁 国 家 に お い て意 味 が 単 純 化 され た言 語 は 次 第 に 単 な る 音 声 、 記 号 とな る。 記 号 と しての 言 葉 を発 す る こ とに よ って権 力者 側 に とっ て は メ ッセ ー ジ を伝 え る こ とが で き、 記 号 化 され た言 語 は伝 達 内 容 よ り も音 声 だ け が 必 要 と な る。 独 裁 国 家 で しば しば見 られ る政 府 の メ ッセ ー ジ は大 音 量 で 単 調 、 声 高 で
あ る場 合 が 多 い が 、 そ れ は 一 方 的 な権 力 関 係 を反 映 して お り、 相 互 の 意 思 疎 通 な どは 考 え られ て い な い か らで あ る。
ま た 、 この よ う な一 方 的 な 権 力 関係 にお い て は それ を揺 るが す よ うな 言 語 表 現 は許 され な い 。 権 力 に 対 す る公 然 の 批 判 は もち ろ ん、 私 的 な 冗 談 や軽 口 さ え も許 容 され な い の で あ る。 権 力 的 支 配 下 に お け る言 語 表 現 は 常 に 「真 蟄 」 な も の で あ るべ き と され るが 、 それ は権 力 支 配 に対 して 「真i堕」 な服 従 を求 め る も の で あ る か らで あ る。 冗 談 や 軽 口 は この 服 従 的 関 係 を 冷 や や か に見 る も の で あ
るか ら権 力 者 は嫌 うの で あ る。
この こ とは 決 して独 裁 国 家 の 例 だ けで は な い。 わ が 国 の 現行 刑 法175条 は狸 襲 物 頒 布 罪 を規 定 して い るが 、 この 法 益 は一 体 何 で あ ろ うか 。 極 端 な 例 に な るが
「チ ャ タ レ!,}件 」.c判 決 で 裁 判 所 は、狼褻 な表 現が流布すれ ば人類 の滅亡の
m,
危 険 性 が あ る と ま で 断 言 した 。 これ は 笑 い話 の 領 域 で あ るが 、 裁 判 官 とい う権 力者 に とっ て 「真i摯」 で は な い狸 褻 物 の存 在 は 既 存 の権 力 関 係 、秩 序 を破 壊 し か ね な い と受 け止 め た か も しれ な い。
ナ チ ス政 権 下 で は強 制 的 同 質 化(Gleichschaltung)が 行 わ れ た が 、 強 制 的 同 質 化 とは価 値 の 多様 性 を否 定 し、 ナ チ ス 、 ヒ トラー の 価 値 観 に 一 元 化 す る こ とで あ る。 こ こで は権 力 分 立 は実 質 的 に廃 止 され 、 多 党 制 が 否 定 され た だ けで な く思 想 、表 現 の 自 由 が 制 約 され て 価 値 が 一 元 化 、 同 質 化 され た が 、 そ れ は 言 語 の 意 味 内容 の単 純 化 で もあ った 。 そ して、 ヒ トラー の言 葉 が 法 で あ る とされ 、
en
ヒ トラ ー が 究 極 の裁 判 官 とさ れ た の で あ る。
本 来 は 意 思 疎 通 の 手 段 で あ り、 よ り良 き関 係 性 を もた ら す は ず の 言 語 が独 裁 的権 力 支 配 の 社 会 の 中 で は思 考 操 作 の 手 段 に 陥 っ て し ま う。 言 語 本 来 の 意 味 を 取 り戻 す た め に は 単純 化 され た 言 語 使 用 法 、 敵 ・味 方 関 係 を作 り出 す よ うな 言 語 表 現 を否 定 し、 言 語 が 持 つ 関 係 性 と権 力 の あ り様(た とえ ば、 具 体 的 法 制 度) を洗 い直 す こ とが 必 要 で あ る。 そ して 、 対 立 で は な くsiftL3遍性 を 有 した言 語 表 現 に よ って よ り良 き関係 性 、 現 実 世 界 を構 築 して い くこ とが 求 め られ る の で あ る。
(三)法 と 国 家
① 権 力 と法
権 力 は力 で あ り、 関係 性 を規 定 す るが 事 実 と して の 力 で あ るか ぎ り不 安 定 な もの で あ る。 また 、 権 力 を有 す る者 に とっ て む き 出 しの 力 に依 存 す る よ りは出 来 る限 り摩 擦 や 抵 抗 を 少 な く し よ う とす る。 その た め に は権 力 の 存 在 を正 当 化 しよ う と し、 人 々 に承 認 して も ら う装 置 、制 度 が必 要 で あ る。 タ ル コ ッ ト ・パ ー ソ ンズ は 「自己 と他 者 の 間 で 価 値 基 準 が 共 有 化 され 、 そ れ に基 づ い て 期 待 が な
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さ れ る こ とを制 度 化 」 で あ る とす るが 、 この 正 当 化 の装 置 、 制 度 が 近 代 立 憲 主 義 に お いて は 国 民 主 権 で あ り、 議 会 で あ っ て 法 で あ る。
近 代 立 憲 主 義 の 下 、 権 力 を め ぐ る戦 い は 「友 」 と 「敵 」 との 関 係 で あ るが 、 そ れ は 「政 治 」 の 場 で あ るの に対 して 「法 」 の場 に お い て は 「友 」 と 「敵 」 と
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の 関係 は事 実 と して 存 在 す るが 建 前 の 上 で は捨 象 され る。 な ぜ な ら 「法 」 は 議 会 に お いて 成 立 し、 そ の 名 宛 人 は 「す べ て の 人 々 」 で あ って 、 そ こ に は一 定 の 公 共 性 が あ る と され 、 特 定 の 集 団 に よ る権 力 的 支 配 そ の もの で は な い か らで あ
る。 この 意 味 で は権 力 と法 の 間 に は 距 離 が あ る。
と こ ろで 、 近 代 国 家 以 前 に も権 力 の 正 当化 の 装 置 と して の 神 話 や 伝 統 に も と つ く法 の 支 配 が あ っ た。 ユ ル ゲ ン ・ハ ー バ ー マ ス が 指 摘 す る よ うに 人 間 は 言 語
を使 用 す る社 会 的 動 物 で あ り、 言 語 に よ っ て 自 ら の行 為 を正 当化 しよ う とす る
l4)
相 互 行 為 の 中 で 規 範 性 、 広 い意 味 で の 法 が 確 立 され て くるの で あ る。 た だ 、 言 語 と して 表 現 され る神 話 や 伝 統 は社 会 の 変 動 が な い時 代 に は有 効 で あ る が 近 代 社 会 に お い て は 権 力 の安 定 した装 置 が 必 要 とされ 、 そ れ が近 代 立 憲 主 義 で あ る。
近 代 立 憲 主 義 にお い て は 国 民 主 権 の 下 、 国 民 の 代 表 機 関 で あ る議 会 の制 定 し た法 に よ る支 配 が 正 当化 され る。 マ ッ ク ス ・ウ ェ ーバ ー の い う合 法 的 支 配 で あ る。 神 話 に よ る支 配 、 伝 統 的 支 配 で は正 当化 の 手 段 は 言 語 と して 語 られ る広 い 意 味 で の 法 で あ り、 多 くは慣 習法 と され る。 た だ し、 慣 習 法 は 不 文 の 法 で あ り、
権 力者 の た め の権 力 正 当 化 の 手 段 で あ る以 上 、 多 くの 国 民 は知 る必 要 もな い こ とか ら少 数 の人 々(国 王 や 聖 職 者 な ど)の 手 に 法 解 釈 権 が 留 保 さ れ る。
しか し、 近 代 立 憲 主 義 の 下 で は 国 民 は主 権 者 と して 法 の 内 容 を 知 る必 要 が あ り、 言 語 と して の 法 は成 文 化 され る こ とに な る。 議 会 は 主 権 者 で あ る国 民 が そ
の 意 思 を行 使 す る場 で あ り、 フ ラ ン ス憲 法 の 歴 史 で は 法 律 は 国 民 の 一 般 意 恩 と され 、 日本 国 憲 法 で も国 会 は 「国 権 の最 高機 関 」 で あ る とさ れ て い る(実 際 に は違 憲 審 査 制 は 存在 す るが)。 法 律 は国 民 一 般 の 生 活 を規 制 す る もの で あ り、 そ れ に基 づ い て 権 力 が 行 使 さ れ る。
もっ とも、 国 民 主 権 の 下 で 正 当性 が認 め られ た権 力 は議 会 で あれ 、 内 閣 で あ っ て も決 して 永 久 不 変 の地 位 に あ る の で は な い。 民 主 制 と独 裁 制 の 相 違 は権 力 の 有 無 で は な く、 あ り方 に あ る。 そ の あ り方 とは 民 主 制 で は 人 権 保 障 と権 力 分 立 に よっ て 権 力 の 抑 制 が 図 られ るが 独 裁 制 で は そ うで は な い 。 それ と と もに 民主 制 の権 力 は 「期 限 付 き の 権 力 」 で あ り、 独 裁 制 と異 な っ て 任 期 が あ り、 権 力 交 代 の 可 能 性 が あ るか らで あ る。
と こ ろで 、特 定 の権 力 者 、 グ ル ー プの 意 思 だ けが 法 とな る の で は な い。 確 か に権 力 を有 す る者 が 法 律 制 定 に影 響 力 を有 して い る こ と は否 定 で き な い が 国 民 主 権 の 下 、 議 会 とい う公 開 の場 で む き 出 しの 利 害 関係 を 押 し出 す こ とは現 実 に は 不 可 能 で あ り、 公 共 性 も し くは 一 般 性 とい う意 味 の 正 当 性 を 示 して 国 民 の 理 解 、 コ ンセ ンサ ス を 得 な け れ ば 法 律 は制 定 しえ な い 。 法 律 の 内 容 、 文 言 も その た めの 工 夫 が な さ れ る こ とに よ って 法 律 が権 力 を規 制 す る こ と に もな る。
コ ン セ ンサ ス を得 る こ と 自体 、 権 力 は 一 元 的 な もの で は な い こ とを 示 して い る。 結 局 、 よ り良 き立 法 とは 「社 会 秩 序 の 崩 壊 を 回 避 」 や 「社 会 的 恩 恵 の 公 平
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な分 配 を確 保 」 を 目的 とす る もの で あ り、 市 民 の価 値 観 に適 合 し、 選 挙 、 法 律 制 定 の 手 続 に お い て も暇 疵 が な い こ と も要 請 さ れ る。 た だ 、 この 市 民 の コ ン セ ンサ ス を 議 会 の 多 数 決 に置 き換 え る の は 妥 当 で は な く、 裁 判 所 が 正 義 の 視 点 か
ら法 律 を 違 憲 判 断 す る こ と もあ り う る。
法 は 市 民 の価 値 観 、 規 範 性 に支 え られ て い る。 この 場 合 の 価 値 観 と は実 体 と して客 観 的 に存 在 して い る とい う よ りは 個 々 人 相 互 の 間 で 間 主 観 的 に 構 成 さ れ た もの で あ る。 確 か に世 論 か ら乖 離 した 法 が 存 在 す る こ とは 否 定 で き な い が そ の よ うな 法 は安 定 性 を 欠 くもの で あ る。 法 が 規 範 と して の 力 を持 つ た め に は 、 社 会 的 事 実 と して の 経 済 、 社 会 的基 盤 が 必 要 で あ るが 同 時 に 法 を 支 え る人 々 の 価 値 観 に よ る正 当 化 が 不 可 欠 な の で あ る。
法 制 度 は市 民 の 価 値 観 に 支 え られ て い るが 、 その 価 値 観 もfl寺代 と とも に 変化 す る。 それ ゆ え に 既 存 の 法 制 度 を 当 然 の 存 在 と して 解 釈 す る こ とで は不 十 分 で
あ り、 議 会 が 定 め た 既 存 の 法 制 度 を 前 提 とす る 「制 度 内 的 思 考 」 と同時 に 市 民 の 規 範 的 正 義 観 か ら既 存 の 法 制 度 自体 を検 証 す る 「制 度 批 判 的 思 考 」 も必 要 で あ る。 と もす る と前 者 の 議 論 だ けが 「法 的 思 考 」 と呼 ば れ が ち で あ るが 、 そ れ は あ ま り に も狭 い 法 的 視 野 で あ る とい わ ざ る を え な い 。
② 公 とopen
権 力 は様 々 な人 間 関 係 の 中 に 存 在 す る。 た だ 、 家 庭 内 で 父 親 が 権 力 を 有 した 関係 で あ る と して もそ の 権 力 を 法 に よ っ て 規 制 す べ きか ど うか は別 な 問 題 で あ る。 法 が 規 制 す べ き権 力 は原 則 と して 「公 」 に関 わ る領 域 で あ り、 そ れ 以 外 の
「私 」 的 な領 域 に 関 して は不 干 渉 で あ る。 と ころ で 、 「公 」、 「私 」 とは英 語 で は それ ぞ れpublic、privateと 表 現 さ れ る。privateと は 関係 性 に お いてcloseを
も意 味 し本 人 の承 諾 な し に他 者 の 立 ち 入 りが 認 め られ な い こ とを い う。
そ れ ゆ え にprivateはprivacyの 保 障 に関 わ り、 「私 事 を み だ りに公 開 され な い こ と」 とな る。 他 方 、publicと い え ば、 公 的施 設 、 公 的地 位 と して理 解 され が ち で あ る。 しか し、 本 来 的 意 味 か らす れ ば 「公 」 で あ れ ば こ そ誰 に対 して も openで な けれ ば な らな い し、openで あ れ ば こ そ批 判 や 規 制 を 受 け る こ とに な る点 に も注 意 を要 す る。 この 「公 」 と 「私 」 の 関係 、 特 にpublicの 意 味 に 関 し て 表 現 の 自由 を め ぐ る二 つ の 最 高 裁 の判 例 を取 りあ げ る。
一 っ に は、 表 現 の 自 由 と名 誉 殿 損 に関 わ る 問題 で あ る。 刑 法230条 の2で は公 共 の 利 害 、公 益 目 的 、 真 実 の 要 件 が あ れ ば 、 名 誉 殿 損 罪 は成 立 しな い こ とが 規 定 され て い る。 この条 項 は 日本 国 憲 法 制 定 後 に表 現 の 自 由 の 保 障 の 拡 大 の た め に 追 加 さ れ た もの で あ っ て具 体 的 事 例 と して は最 高 裁 の代 表 的 判 例 が い くつ か あ る。 こ こで は 「公 共 ノ利 害 二 関 ス ル事 実 」 に 関 して 下 さ れ た あ る最 高 裁 の判
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決 の 「公 」 の概 念 の解 釈 例 を見 て み る こ と にす る。
同 判 決 で は 「私 人 の 私 生 活 上 の 行 状 で あ って も、 その た ず さわ る社 会 的 活 動 の 性 質 及 び これ を通 じて 社 会 に 及 ぼ す 影 響 力 の 程 度 な どの い か ん に よっ て 」 は
「公 共 ノ利 害 二 関 ス ル 事 実 」 に あ た る場 合 が あ る と して い るが、 そ れ は ア メ リカ 連 邦 最 高 裁 の 「公 的 人物 」(publicfigure)の 理 論 と共 通 す る もの が あ る。 もっ と も、 同 判 決 の 論 理 に は 私 生 活 に 対 す る不 当 な 干 渉 を 招 き、 個 人 の 名 誉 を殿 摘 す る面 もあ るが こ こで は個 別 事 件 の評 価 で は な く一 般 的 な 意 味 で のpublicの 解
釈 の 意 義 に つ いて 考 え て み る。
「私 人 」 の 行 為 は、本来、私 的領域 の問題 で あ り、原則 として他人 が関与で き な い 。 しか し、 「公 的 人 物 」 の 理 論 で は、publicを 公 的 地 位 だ けで な く、 た とえ 私 人 で あ っ て も社 会 的影 響 力 が あ れ ば、 「公 的人 物 」、 「公 」 で あ る と して 理 解 し、
公 共 の 関 心t、 他 者 に よ る表 現 活 動 に さ らさ れ う る(す な わ ち 、openで あ るべ きで あ る)と す るの で あ る。 それ は 「社 会 的 地 位 と ひ き か え に 公 的 な監 視 を受
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け、 名1=1損 的 な 言 説 に さ ら され る 『危 険 』 を甘 受 す る」 こ とで あ る。
二 つ に は表 現 の 自由 と 「場 」 の 問 題 で あ る。 具 体 的 衷 例 と して 私 鉄 駅 構 内 で
の ビ ラ配 布 を め ぐ る問 題 の 最 高 裁 判 決 にお け る伊 藤 正 己裁 判 官 の 補 足 意 見 が 注 目 さ れ る。 同裁 判 官 は道 路 の よ うな公 共 用 物 だ け で な く、 私 鉄 駅 構 内 の よ うな
「私 的 な所 有 権 、管理権 に服 す る」場 であって も、 「パ ブ リック ・フ ォー ラムた る性 質 を帯 有 す る とき に は 、 表 現 の 自由 の 保 障 を無 視 す る こ とが で きな い」 と して い るか らで あ る。
この伊 藤 補 足 意 見 の パ ブ リッ ク ・フ ォー ラム(publicforum)の 理 論 もア メ リカ連 邦 最 高 裁 の 判 例 理 論 を踏 ま え た もの と され て い る。 ア メ リカ に お け る こ の理 論 は政 府 所 有 の財 産 で あ る公 園 、 道 路 等 に お け る市 民 の 表 現 活 動 を認 め る もの で あ る。publicで あ れ ば こ そ市 民 の表 現 活 動 に対 して 開 か れ て い る と され るの で あ る。 もち ろん 、政 府 所 有 の 財産 とい え ど も公 園 と図磐 館 で はopenの 租 度 は 異 な る と され て い る。
た だ 、 伊 藤 補 足 意 見 の パ ブ リ ッ ク ・フ ォ ー ラ ム論 で は 政 府 所 有 の 財 産 で は な く私 鉄 駅 構 内 とい う民 間 の 財 産 が 問 題 とされ 、 「私 的 な所 有権 、 符 理権 に服 す る」
場 で あ っ て もパ ブ リ ッ ク ・フ ォー ラ ム で あ り、 市 民 の 表 現 活 動 に 開 か れ る可 能 性 が 指 摘 され た こ とに 特 徴 が あ る。 私 的財 産 で あ っ て も私 鉄 の駅 構 内 は 多 くの 市 民 が 行 き交 う場 で あ り、 そ れ ゆ え に場 の 持 つ 公 共 性 、 社 会 的 影 響 力 を考 慮 し てpublicと さ れ 、openで あ るべ き との 解 釈 が な され た の で あ る。
③ 国 家 と法
国 家 の 基 本 法 は 憲 法 で あ る 。 こ の 場 合 の 憲 法 と は ドイ ッ 語 で い え ば Staatsrechtで あ り、 国 法 、 国 憲 の 意 味 で あ る。 憲 法 は国 家 機 関 を拘 束 す るだ け で な く、 国 民 の生 活 を も規 定 す る国 家 の基 本 法 で あ る。 国 家 と憲 法 との 関 係 は 、
憲 法 は 「国 の か た ち 」 を形 成 す る もの で あ る。 国 家 と して は領 土 、 国 民 は 不 変 で あ っ て も抽 象 的 存 在 で あ る国 家 に対 して 憲 法 は 具 体 的 に 「国 の か た ち」 を創
り、 変 え るの で あ る。
笹 倉 教 授 に よれ ば 国 家 につ いて 様 々 な見 解 が あ るが 、 「国家 を個 人 の 単 な る総 和 とは別 の 、 そ れ 自体 の 価 値 を も っ た共 同 体 だ とす る見 方 」 と 「国家 を人 間 の
生 活 上 の便 宜 の た め の 道 具 だ とす る見 方 」 が あ る と され て い る。 まず 、 第 一 の 共 同 体 と して の 国家 観 に関 して は国 家 の 存 在 を民 族 に置 き換 え る こ とが 考 え ら れ る。 しか し、 一 つ の 国 家 の 中 に複 数 の 民 族 が 存 在 す る場 合 に は国 家 を 民 族 に 代 置 で き な い の で あ る。
その 場 合 で も多 数 派 の 民 族 に 他 の 少 数 派 の 民 族 の 「同 化 」 を 求 め る こ とに な るか も しれ な いが 民族 とい う 自然 的 存 在 を 多 数 派 に 「同 化 」 させ る こ とは 望 ま しい こ とで は な い。 と は い え、 民 族 の存 在 を 否 定 す るの で は な く国 家 イ コ ー ル 民族 とす る こ とに否 定 的 で あ るの で あ る。 更 に国 家 の 存 在 を否 定 は しな い が 必 要 以 上 に 国 家 や 民 族 の 共 同 性 を 強 調 す る の で は な く 「国 の か た ち 」 を定 め る憲
法 の 有 り様 を具 体 的 に 論 じ る こ との 方 が 意 義 あ る の で あ る。
また 、 国 家 目 的、 公 共 の 利 益 を擁 護 す る 中 で共 同性 を 重 視 す る もの が あ るが 、 個 々 の 関 係 性 、 権 力 の 存 在 の具 体 的 検 討 な し に共 同性 を 提 起 した と して も没 個 人 主 義 に陥 るだ けで あ り、 日本 国 憲 法13条 に 個 人 の 尊 重 を規 定 した意 味 が 失 わ れ る。 か つ て、 ナ チ ス ・ドイ ツ で は帝 国(Reich)の 思 想 が 過 度 に強 調 され 、 民 族 を 基 盤 と した 没 個 人 主 義 的 な共 同 性 が 強 調 され た こ とが あ る。 しか し、 戦 後 ドイ ッで は抽 象 的 な 国 家 目的 で は な く憲 法1条 の 人 間 の 尊 厳 に依 拠 す る政 治 、 社 会 が 主 張 され 、 「憲 法 愛 国主 義 」 と呼 ば れ た こ と を想 起 す る必 要 が あ る。
次 に 、 第 二 の 道 具 と して の 国 家 観 で あ る。 近 代 立 憲 主 義 の 思 想 、 社 会 契 約 論 で は市 民 の 合 意 に よ っ て人 為 的 な 目的 団 体 と して政 府 が構 成 され る と して い る。
そ こで は個 人 と して の 市 民 が 、 政 府 、 国 家 を構 成 し、 市 民 が 任 意 に国 家 との 関 係 を選 択 す る と い う 「道 具 主 義 」 的 な考 え方 が あ る。 この 見 解 で は個 々 の 市 民 の生 活 の た め に 構 成 さ れ る関 係 性 、 具 体 的共 同 性 は あ りえて も、 それ を超 えて の抽 象 的 な 国家 の 共 同性 に は危 惧 が 持 た れ て い る。
この 点 に つ いて 、 か つ て 明 治憲 法 で は国 籍 離 脱 の 自 由 を 認 め て い なか っ た が 、 日本 国 憲 法 で は22条 に よ って それ を許 容 して い る こ とに意 味が あ る。 もち ろ ん 、
無 国 籍 の 存 在 を認 め て い な い の で あ っ て その 意 味 で は国 家 の 存 在 自体 は 否 定 さ れ て い な い 。 た だ 、 国 籍 離脱 の 自 由 の保 障 は 国家 と市 民 との 関 係 に お い て 、 そ の関 係 を任 意 に選 択 す る こ と を可 能 に した も の で あ っ て明 治 憲 法 下 の 国 民 が 国 家 に従 属 す る 関 係(臣 民)を 否 定 した と い え よ う。
この 国 家 観 に 関 して重 要 な の は 「国 」 民 の 理 解 の 仕 方 で あ る。 この 「国 」 民 の理 解 につ い て樋 口陽 一 教 授 は 「デモ ス」(demos)と 「エ トノ ス」(ethnos)
を 区 別 して きた 。 国 民 を 民 族 の よ うな 自然 の所 与 「エ トノス 」 と して 理 解 す る か 、 そ れ と も共 同 性 形 成 の た め の 人 為 的 所 産 「デ モ ス」 して 捉 え るか で あ る。
近 代 立 憲 主 義 の 原 点 に立 つ な らば 、 後 者 の理 解 に 依 っ て社 会 契 約 論 的 に人 為 的 所 産 と して の 国 家 、 国 民 と して考 え るべ き で あ る。
笹 倉 教 授 は、 国家 に つ い て 個 人 を超 えた 価 値 あ る共 同体 とす る見 方 を克 服 し、
国 家 は個 人 の 幸 福 追 求 の た め の道 具 で あ る とす る見 方 を 採 り、 国 家 それ 自体 を
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自己 目的 化 しな い態 度 を貫 くべ きで あ る とす る。 結 局 、 不 必 要 か つ 受 動 的 な 態 度 で 国 家 や 民 族 に共 同 幻 想 を持 つ こ とをや め 人 間 の尊 厳 を実 現 す るた め に個 人 の 生 き方 を 尊 重 し、 憲 法 を基 盤 に して 能 動 的 に共 同性 と して の 関 係 性 を構 築 し て い く こ とが 要 請 さ れ る の で あ る。
④ 国 家 の敵 視 で は な く統 制
従 来 、憲 法 学 だ け で な く法 学 一 般 に お い て も個 人 の 自 由 の保 障 を至 高 の 目的 と して きた 。 そ れ は 国 家 の権 威 、 権 力 を 強 調 し、 天 皇 主 権 の下 、 上 か らの 共 同 性 形 成 を 重 視 して きた 明 治憲 法 の 国 家 体 制 とそれ を 支 えた 法 恩 想 を否 定 す る も の で あ っ た 。 た とえ ば、 憲 法 学 の 代 表 的学 説 も憲 法 の 特 質 を 自由 の 基 礎 法 で あ
az)
り、 制 限規 範 で あ る とす る。 この 場 合 の制 限 規 範 とは 国 家 権 力 の 抑 制 を 目指 す もの で あ る。
個 人 の 自 由 の保 障 を 目 的 と した 法 思 想 は 明 治 憲 法 の 法 制 度 、 法 思 想 を 克 服 す る点 で は 歴 史 的意 味 が あ っ た 。 しか し、 今 日 に お い て 国 家 権 力 の 抑 制 だ けで 事 足 りる の で あ ろ うか 。 現 実 に は 福 祉 国家 、 社 会 国 家 の 下 で 国 家 に よ る給 付 が 増 大 し、 行 政 法 に お い て も従 来 の 侵 害 行 政 に 加 え て給 付 行 政 が確 立 して い る。 そ して、 給 付 行 政 に 関 連 して人 権 保 障 に お い て も自 由権 に加 え て 社 会 権 が 日本 国 憲 法 に規 定 され 、 国 家 の 関与 が 不 可 欠 に な っ て い る。
更 に 国 家 の 関 与 の 必 要 性 は社 会 権 に関 わ る給 付 行 政 だ け に 限 定 さ れ な い 。 む しろ 、 自 由や 安 全 を維 持 す る た め に も国 家 の 関 与 が 要 請 され る こ と もあ る。 た とえ ば 、 公 害 を発 生 し続 け る工 場 に 対 して 住 民 は 行 政 の 規 制 権 限 の 行 使 を 求 め
3;f)
る こ とが で き る。 これ は近 年 、 改 正 され た 行 政 事 件 訴 訟 法3条6項 の 義 務 付 け 訴 訟 の 問 題 で もあ る。 この こ とに 「自 由」 の保 障 の た め 国 家 の 関与 が 要 請 され
て い る こ とを見 る こ とが で き る。
に もか か わ らず 、 憲 法 学 に お い て は 個 人 の 自由 の 保 障 を 目的 と した 国 家 権 力 の抑 制 が 憲 法 の特 質 とさ れ て い る。 そ して 、 行 政 法 学 に お い て さ え も給 付 行 政 論 の確 立 に もか か わ らず 国 家 か らの 自由 を重 視 した 「権 力説 」 が 有 力 で あ る。
ただ 、 そ れ で も 「権 力 説 」 に 対 抗 す る形 で 国 家 権 力 の 抑 制 だ けで な く国 家 に よ る給 付 、 国 家 の 関 与 も射 程 に 入 れ て そ れ を統 制 し よ う とす る 「主 体 説 」 も提 起
され て い る こ とが 注 目 され るの で あ る。
行 政 法 学 の 「権 力 説 」 に よれ ば 国家 権 力 の行 使 を出 来 るだ け極 小 化 す る こ と を 目指 す の で あ るが 、 「主 体 説 」 は 国 家 権 力 の 行 使 の極 小 化 で は な く、 国 家 権 力 の 行 使 の 適 正 化 、 す なわ ち 、 統 制 を試 み る も の で あ る。 憲 法 学 に お い て は現 在 の と ころ 下 位 法 の 行 政 法 に お いて の給 付 行 政 論 を認 め つ つ も最 高 規 範 の 感 法 で は国 家 権 力 の 抑 制 、 自 由 の保 障 に傾 斜 して い る の で あ るが 、 そ れ で は 人 権 と し て の 社 会 権 を適 切 に 位 置 づ け られ る と思 え な い。
先 の憲 法 学 の代 表 的 学 説 に お い て も表 現 の 自 由 を 軸 とす る精 神 的 自由 に関 し て は詳 細 な 議 論 を展 開 す る一 方 、 他 方 で は 社 会 的 弱 者 で あ る労 働 者 の 労 働 権 の 保 障(憲 法27条)に っ い て は ほ ん の わ ず か の説 明 しか な い 。 もち ろん 、 生 存 権 、 労 働 基 本 権 の 議 論 の 説 明 が あ り、 この二 つ の 権 利 に つ い て は 重 要 な判 例 の 説 明 が あ るか ら それ で 事 足 り る と され て い るか も しれ な い が 、 そ れ に して も 自 由 に 比 較 して 生 存 へ の 配 慮 が 不 十 分 で あ る。
国 家 か らの 自 由 、 国 家 権 力 の 抑 制 を憲 法 の 特 質 とす れ ば 、 国 家 に よ る給 付 を 前 提 とす る社 会 権 は 法 理 論 的 に正 当 な位 置 を与 え られ な い。 そ れ で も代 表 的 学 説 は社 会 権 、 と りわ け生 存 権 の保 障 に つ い て の 司 法 審 査 基 準 と して 厳 格 な合 理 性 の 基 準 を持 ち 出 す こ とに よ って 実 際 的 な解 決 を は か ろ う と して い る。 しか し、
憲 法 の特 質 に お け る 自由 、 国 家権 力 の抑 制 と個 別 の 生 存 権 の保 障 と して の 司 法 審 査 基 準 との 関 連 性 は 弱 い。
君 主 主 権 の 明 治 憲 法 下 に お い て 立憲 主 義 擁 護 の 憲 法 学 が 人 権 を擁 護 し、 極 力 、 国家 権 力 を抑 制 す る こ とを 志 向 した と して も無 理 は な い。 しか し、 国 民 主 権 の 日本 国憲 法 の 下 で 国 民 が 主 人 公 で あ り、主 人 公 で あ る国 民 に よっ て 国 家 が 管 理 ・ 運 営 され る とす るな らば 、 国 家 権 力 の 行 使 か ら国 民 の 自由 を絶 え ず 守 られ な け
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れ ば な ら な い と い うの は 不 自然 な もの が あ る とい わ ざ るを え な い。
自由 の 侵 害 の 抑 制 だ け で な く国 家 に よ る給 付 を 含 め て 国 家 権 力 の 行 使 を ど う 統 制 して い くか が 憲 法 学 の 主 要 な 課題 で あ るべ きで あ る。 国 家 の敵 視 で は な く 統 制 の 思 想 こ そが 今 日の 立 憲 主 義 に ふ さ わ しい の で あ る。 そ こ で は 抽 象 的 、漠 然 た る共 同性 で は な く権 威 的 な上 か ら共 同性 で も な く、個 人 の 尊 厳 を基 盤 と し て 下 か ら市 民 の 相 互 連 帯 性 か ら共 同 性 の 観 念 、 生 存 へ の 配 慮 、 社 会 権 の 理 念 が 構 築 され な けれ ば な らな いの で あ る。 そ の た め に は法 を 統 治 の道 具 と して で は な く国 民 の た め の権 力統 制 の 手段 と して 観 念 す る こ とが 重 要 で あ る。
(四)方 法 と して の 個 人 主 義
① 規 範 主 義
人 間 存 在 は多 様 な 関 係 に よ っ て 成 立 し、 そ こ に は権 力 関 係 が と も な っ て い る が 、 人 と人 との 権 力 関 係 に は 強 弱 が あ る。 しか し、 法 は こ れ ら 自然 的 な存 在 、 権 力 関 係 の 単 な る反 映 で は な い 。 か つ て の 教 条 的 マ ル ク ス主 義 で は上 部 構 造 で あ る法 は 下 部 構 造 で あ る経 済 に よ っ て規 定 され る とす るが 、 そ の よ うな 単 純 な 下 部 構 造 決 定 論 は今 日で は受 け 入 れ られ な い し、 上 部 構 造 で あ る法 は 人 間 の 文 化 、 価 値 観 に よ っ て も規 定 され る。
下 部 構 造 決 定 論 で は資 本 家 の 権 力 ・意 思 が 法 と して 具 体 化 され る とす るが 、 法 は経 済 関 係 ・権 力 に よ っ て の み 決 定 され る わ け で は な く、 人 間 関 係 の 多 様 性 を考 え れ ば そ こに は 多 様 な社 会 的 権 力 が 存 在 し、 特 定 の社 会 的 権 力 に よ って の み 規 定 され る わ け で も な い。 特 に国 民主 権 の 時 代 で は国 民 の価 値 観 、 コ ンセ ン サ スが 不 可 欠 で あ り、 この 場 合 の価 値 観 とは 法 に関 して い え ば規 範 意 識 で あ る。
社 会 的 事 実 、 権 力 だ け が そ の ま ま 法 と して 具 現 化 す る の で は な く、 法 は人 々 の 価 値 観 、 規 範 意 識 の反 映 で もあ る。 法 、 権 利 を表 現 す る言 葉 は英 語 で はRight で あ り、 ドイ ツ語 で はRechtで あ る。 これ らの 言 葉 は 法 、 権 利 を意 味 す る と同
時 に 「正 し い」 とい う意 味 が あ る。 この こ とは 法 、 権 利 は 事 実 「で あ る」 こ と を その ま ま受 け入 れ る とい う よ りは人 々 の 規 範 的 意 識 「で あ る べ き」 こ とを 意 味 して い るの で あ る。
そ も そ も人 権 を保 障 す る こ と 自体 が 「この 世 界 に無 用 な人 間 は い な い 」 とい
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う、 い わ ば 「常 識 」 に反 す る論 理 に基 づ い て い る。 社 会 的 事 実 と は一 応 、 区別 され た 「で あ るべ き」 こ とは 人 々 の 価 値 観 に 根 拠 が あ り、 そ こか ら法 的 な 規 範 性 が 形 成 さ れ て く る。 佐 藤 幸 治教 授 の人 格 的 自律 論 も法 は単 な る社 会 的 事 実 を 反 映 で は な く個 人 の尊 璽 、 人 格 の 自律 性 とい う法 哲 学 的 観 念 を 憲 法 お よび 人 権 論 に 取 り入 れ た 規 範 主 義 の 表 れ で あ る。
要 す る に規 範 主 義 とは 「で あ るべ き」 こ と を言 語 と して 表 現 し、 そ の 言 語 を 更 に 法 と して 確 認 して い くこ とで あ る。 この よ う に法 と して具 体 化 さ れ た 言 語 は人 々 の 規 範 意 識 に適 合 して い れ ば 法 と して の 基 盤 を確 立 して い くこ とに な る。
そ れ だ け で な く法 と して 具 体 化 され た 言 語 は 人 々 の 中 に 新 た な規 範 意 識 を形 成 し、 現 実 世 界 を 変 え る こ とも あ る。 この こ とは 人 権 とい う言 語 表 現 が 社 会 に働 きか けて い く啓 蒙 的 役 割 を見 れ ば よ くわか る。
と こ ろ で 、 この 場 合 の 「あ るべ き」 様 相 を価 値 観 の 問題 と して考 え て み る。
前 項 で も述 べ た よ うに憲 法 学 の主 流 は国 家 権 力 の 抑 制 、 自 由の 保 障 を 目 的 とす る考 え方 で あ り、 国 家 か らの 自 由 とい う価 値 観 が 前 提 とな って い る。 しか し、
今 日で は個 人 の 自 由 の保 障 と と もに 生 存 の 保 障 とい う こ と も 「で あ るべ き 」 価 値 観 と して認 め るべ きで あ る。 なぜ な ら真 に精 神 性 が 自律 、 自立 す る た め に は 経 済 的 安 定 性 が 必 要 不 可 欠 で あ るか らで あ る。
これ まで の個 人 の 自 由 、精 神 的 自由 の 優 越 性 の 理 論 は生 存 の 保 障 とい う 「具 体 的 身体 性 」 の視 点 に よ っ て 再 検 討 され るべ きで あ る。 そ して 、個 人 の 自 由 と 生 存 の保 障 とい う両 面 性 を統 括 す る人 間 の 尊 厳 を 憲 法 に お け る基 本 的 価 値 と し て構 成 して い くこ とが 求 め られ る。 人 間 存 在 に お いて 個 人 の 自 由 の 重 視 、 と り わ け 二 重 の 基 準論 に見 られ る よ うに精 神 的 自 由 を 「優 越 的 地 位 」 に お く理 論 に は生 存 の 保 障 とい う視 点 が不 十 分 で あ る。
人 格 的 自律 論 に お いて も精 神 的 自律 を主 と して 経 済 的 自律 を そ の 補 助 と して 捉 え る面 も な くは な いの で検 討 の 余 地 が あ る。 と にか く憲 法 の 特 質 は 纂 本 的価 値 の保 障 で あ り、基 本 的 価 値 とは憲 法 制 定 に際 して 約 束 され た もの で あ っ て 国