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平成 30 年度伊藤光昌氏記念学術助成金(研究助成)成果報告書

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Academic year: 2021

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Transactions of The Research Institute of 77

Oceanochemistry Vol. 32 No. 1, Apr., 2019

平成 30 年度伊藤光昌氏記念学術助成金(研究助成)成果報告書

研究課題番号 H30-R1

研究課題名 有明海におけるビタミン B

12

の季節変化とそのバクテリアによる生産

研究代表者 近藤 能子

(または学年) 所属・職 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科  准教授

1.研究目的

海洋では窒素など主要栄養塩や鉄など微量金属 元素に加え,補酵素であるビタミン B

12

の挙動が 植物プランクトン種組成に影響を与えている可能 性が考えられるが,海洋におけるビタミン B

12

の 挙動と生物群集の関係は明らかでない.本研究は,

ビタミン B

12

の海洋動態について明らかにするこ とを目的とし,生物多様性に富む有明海をフィー ルドとしてビタミン B

12

の分布の季節変化と水温,

塩分,クロロフィル ,栄養塩,バクテリア細胞 数などの海洋環境パラメーターと併せて調べると 共に,海水中のビタミン B

12

の主要生産者として 知られるバクテリアを対象にした船上培養実験を 行い,ビタミン B

12

の生産速度とバクテリア細胞 数および組成の関係を定量的に解明することを目 指している.

2.方法

長崎大学付属練習船鶴洋丸航海(2017 年度,

2018 年度)にて有明海の奥部から天草灘にかけ て計 10 測点で表層バケツ採水(2017 年度)およ び CTD による 5 m 層の採水(2018 年度)を行っ た.海水試料は酸洗浄した遮光容器に採水後,船 上で孔径 0.2 µm のヌクレポアフィルターを使用 し 0.2 気圧以下で濾過後,‑20℃で凍結保存し研 究室へ持ち帰った.試料は解凍後,実験室内でカ ラ ム に よ る 濃 縮 を 行 い,Quattro micro API  LCMS シ ス テ ム(Waters) を 用 い た LC-MS 法

(Sañudo-Wilhelmy et al., 2012)により分析した.

また,航海中,採取した天然海水試料を用いて孔

径 0.2 µm ならびに 2 µm のフィルターを用いた サイズ分画培養を行い,天然バクテリア群集によ るビタミン B

12

生産速度を見積もる実験を行った.

3.研究成果

有明海表層には湾奥部に筑後川などから河川水 が流れ込み,奥部では塩分が低くなる傾向を示し た.いずれの観測時も,リン酸塩や溶存ケイ酸濃 度と塩分との間には有意な相関関係が見られ,栄 養塩が河川水によって供給されていることが示唆 された.クロロフィル 濃度は湾奥部測点の南部 の点で高濃度を示す傾向を示し,2017 年の夏季 には 2 測点(St. 2, 3)で 30 µg/L 以上の高い値 も観測された.これまで得られている有明海およ び天草灘表層におけるビタミン B

12

の濃度範囲は

<0.1〜31 pM であり,過去にアメリカ西部沿岸域 などで報告された海洋表層水中の濃度レベル

(0.18〜30 pM, Sañudo-Wilhelmy et al. (2012))と 類似した.一方,2017 年春季と夏季のビタミン B

12

濃度を比較したところ,大部分の測点で夏季 よりも春季の方が高い値を示した.2017 年度に 採取した試料の分析結果は日本海洋学会 2018 年 度秋季大会にてポスター発表を行った(高橋ら,

2018).2018 年度の観測では,有明海内のバクテ リア細胞数は春季より夏季の方が多くなる傾向が みられている.2018 年度に採取した試料のビタ ミン B

12

濃度は培養実験で得た試料を含めて現在 解析中である.

学術助成報告

(2)

78 海洋化学研究 第 32 巻第 1 号 平成 31 年 4 月

4.今後の課題

本研究は 1 年の研究期間において,まず使用分 析機器の分析条件調整に取り組み,昨年度採取し た試料の分析を行い,その結果を日本海洋学会に て発表することができた.現在,今年度の観測か ら得られたビタミン B

12

試料の分析を行なってお り,先に分析を行った栄養塩やクロロフィル , バクテリア細胞数などの解析結果を用いた考察を 速やかに行う必要がある.今後は現在実施中のビ タミン B

12

の分析結果と現場の海洋環境パラメー ターとの関わりについてより詳細に解析を進め,

国内外の学会・シンポジウムならびに投稿論文作 成を目指す.

謝辞

本助成研究を遂行するにあたり,長崎大学練習 船鶴洋丸船長ならびに船員の皆様には観測全般に てご協力いただきました.また,本研究でビタミ ン B

12

について再分析を行なった海水試料の採取 ならびにクロロフィル ,栄養塩の分析には武田 重信博士(長崎大学)のご協力をいただきました.

高谷智裕博士(長崎大学)には LC-MS によるビ タミン B

12

分析,和田実博士(長崎大学)にはバ クテリア細胞数・種組成解析指導においてご指導

賜りました.皆様のご協力に感謝いたします.

参考文献

Sañudo-Wilhelmy et al. (2012) Multiple B-vitamin  depletion in large areas of the coastal ocean. 

PNAS, 109 (35), 14041-14045.

高橋成美,近藤能子,武田重信(2018)有明海・

天草灘表層のビタミン B

12

の分布.日本海洋 学会 2018 年度秋季大会,東京海洋大学,東 京,2018 年 9 月.

図.本研究で実施した海水試料のサンプリング測点 .

参照

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