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メダカ卵表面に形成される細菌叢の動態と多様性の解析

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会, 20192 8

メダカ卵表面に形成される細菌叢の動態と多様性の解析

応用生物科学専攻 生命分子化学講座 基礎環境微生物学 佐野 友紀

1. はじめに

水生動物の体表面は、水中に棲息する細菌の定着場所であると同時に、病原菌による攻 撃の場ともなりうる。通常、それら水生動物はその体表面に抗菌物質を分泌し、これによ って病原菌の感染リスクを低減させていると考えられてきた。しかし近年、カエルやヒド ラなどの水生動物の体表面には、病原菌に拮抗作用をもつ特異的な細菌が生息しているこ とが明らかとなってきた。水中に産下される水生動物の卵の表面も、体表面と同様に細菌 の定着および病原菌による攻撃の場となりうると考えられるが、現在のところ水生動物の 卵表面の細菌叢の動態や多様性に関する知見はほとんどない。そこで本研究では、モデル 魚類のメダカの卵表面細菌叢に着目し、細菌叢の獲得経路や胚発生期における動態、さら にはどんな環境下でも共通して検出されるコア細菌群を明らかにすることを目的とした。

2. 方法

電子顕微鏡観察および細菌の 16S rRNA 遺伝子を対象とした蛍光 in situ ハイブリダイ ゼーション法(FISH 法)により、卵表面細菌の局在を確認した。次に卵巣内から摘出した卵 と産卵後の卵について細菌の培養試験を行い、宿主体内または体外のどちらで細菌を獲得 するのか調べた。また、卵、産卵個体の糞、飼育水の細菌叢を比較解析し、卵表面細菌が どこから獲得されるのか調べた。さらに、受精直後から孵化直前まで経時的に卵を回収し てその細菌叢を解析し、胚発生期における卵表面細菌叢の動態を調べた。そして、様々な 地域の土壌をそれぞれ添加した飼育槽を用いて卵を飼育し、細菌叢を比較解析することに より、メダカ卵表面細菌叢のコア細菌群を調べた。

3. 結果と考察

電子顕微鏡観察により卵表面に形状の異なる複数の細菌が定着していること、またFISH 法により、卵表面の付着糸にも細菌が定着していることがわかった。卵巣内の卵からは細 菌が全く検出されず、卵表面細菌叢の群集構造は産卵した親個体の糞や飼育水のそれと大 きく異なっていたことから、卵表面細菌は産卵後に外環境から選択的に獲得されると考え られた。また胚発生に伴い、卵表面細菌叢の群集構造が変動することが明らかとなった。

さらに、微生物源として様々な土壌を添加した飼育槽においた卵表面細菌叢を比較解析し たところ、どの環境においてもPseudomonas属細菌が共通して高頻度に検出された。興味深 いことに、両生類やヒドラから単離されたPseudomonas属細菌の中には、宿主動物の病原菌 に対して拮抗作用を示すものが知られている。また自身の卒業研究においても、メダカの 卵から単離培養したPseudomonas属細菌がカビの増殖を抑制する活性を示した。病原菌の感 染リスクが高い体外環境においても安全に胚発生を進めるために、水生動物の卵は環境中 の細菌を選択的に取り入れて利用している可能性が考えられた。魚卵の病気は養殖現場で 頻発する重大な産業問題である。これまではUV 殺菌や殺菌剤添加といった物理的・化学的 な対策手段しかなかったが、例えばPseudomonas属細菌のような抗病原性細菌をあらかじめ 卵表面に定着させておくことも、魚卵の病気発症リスクを下げる一助となるかもしれない。

参照

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