冒険教育プログラム体験における大学生の自己開示に及ぼす影響
杉浦 可奈
(生涯スポーツ学科野外スポーツコース)
指導教員 黒澤 毅 キーワード:冒険教育プログラム体験,大学生,自己開示
1.序論
近年,インターネットや
SNS(Social Networking Service)が普及し,個人の情報があらゆる場所で流れ出している.これらは不特定の他者がみるこ とができる間接的な自己開示と呼ばれている.間 接的な自己開示は対面コミュニケーションにおい
て
,集団に馴染めない傾向にある(柴田・松
本,2011)とまで言われている.自己を開示するこ とは人間関係を構築し,深める上で大変重要であ るが,現代の自己開示の方法自体には問題がある ように思う. 特に冒険教育プログラム体験は他 者と協力しなければならない課題が多々あり, それを解決するための自己開示は相互理解を 深め,円滑な課題の解決につながると考える.
このことから, 自己開示状況を明らかにすること は,冒険教育プログラムの効果とともに
,相互理解のあるコミュニケーションとしての自己開示の必 要性を示す点で大変意義あるものと考える.
そこで,本研究では,冒険教育プログラム体験が 大学生の自己開示に及ぼす影響について明らかに するとともに,体験中の自己開示状況について具 体的場面から明らかにすることを目的とする.
2.研究方法
【被験者】平成
26年
9月
13日~19 日に
B大学で 野外を専攻する大学生を対象に実施した専門実習 に参加した
3回生
30名,4 回生
2名を対象とした.
【調査方法】
①自己開示尺度:丹羽ら(2010)が作成した“自己 開示尺度”を用いた.日常の大学生の自己開示を 知るため「初対面の人」
,及び「仲は良いがこれから親しくなりたい友達」(以下:親しい友達)に対 する自己開示について,どの程度,相手に話すか, それぞれ
7件法で尋ねる形式をとった.また,冒険 教育プログラム体験前後の自己開示は,「班の人」
に対する自己開示について調査を行った.
②ふりかえりシート:冒険教育プログラム体験中 の自己開示状況を明らかにするため,筆者が野外 教育を専門とする教員と相談の上,ふりかえりシ ートとして独自に作成したものを用いた.
調査時期を表
1に示す.
表1 調査時期
3.結果と考察
日常における自己開示は,初対面の人に対する
pre1-post3間において向上した.また,冒険教育 プログラム体験における自己開示は班の人に対す る
pre2-post1間,pre3-post1間において向上した.
すなわち,初対面の人と班の人の自己開示は向上 した.これらの結果を表
2に示す.
表2 自己開示の平均と標準偏差
冒険教育プログラムは,1 人で解決できない困 難な課題であることが多く,達成した後に参加者 の自信を生み,その結果として自己概念や自己効 力感といった自己の成長を促進する効果がある
(黒澤,2014).自己が成長する過程の中では,課題を達成するために班の人とのコミュニケーション を必要とする場面があり,仲間との間で自己を開 示する.また,課題を成し遂げた結果,人とコミュ ニケーションをとるために自己開示することが必 要であると感じる.様々なプログラムの状況に応 じて,様々な深さの自己開示が行われたことが,得 点の向上に影響を与えたと考える.開示内容とし てふりかえりシートをみると, 「好きな食べ物」の 浅い内容の開示から「自分は個性が強いこと」と いう深い内容の開示がみられた.
同様に,日常における初対面の人に対する自己 開示も向上した.その理由として,冒険教育プログ ラム体験における自己開示の向上が影響したと考 える.これまで,初対面の人には,自己開示しづら かった大学生も冒険教育プログラム体験を通して 状況に応じた自己開示を経験した.その結果,初対 面の人に対してコミュニケーションをとる必要性 を感じたことが向上した要因であると考える.
4.まとめ
冒険教育プログラムは自然環境の中で体力的に も精神的にもハードな活動で構成されている.大 学生は状況に応じた自己開示をしながら互いにコ ミュニケーションをとり,課題を解決していった ため,冒険教育プログラム体験における大学生の 自己開示を向上させた.それは,日常における自己 開示にも影響し,特に初対面の人に対する自己開 示を向上させた.
引用・参考文献
黒澤毅(2014):冒険教育の理論と実践,第3章 冒険 教育の効果,野外教育入門シリーズ第5巻,pp19-27 柴田早苗・松本賢哉(2011):医療系学生の携帯電話メ ールへの依存状態と対面によるコミュニケーション 能力との関連,日本看護学教育学会誌,pp25-33 丹羽空・丸野俊一(2010):自己開示の深さを測定する 尺度の開発,パーソナリティ研究,第 18 巻,第 3 号,pp196-209
班結成前 班結成後 実習直前 実習中 実習直後 実習直後 実習1か月後
pre1 pre2 pre3 post1 post2 post3
初対面の人
親しい友達 ○ ○ ○
班の人 ○ ○ ○
○ ○
自己開示 ふりかえりシート
pre1 pre2 pre3 post1 post2 post3
初対面の人 166.44(38.91) 180.56(34.92) 188.66(41.26) 6.014 **
親しい友達 213.75(42.52) 225.59(34.96) 228.56(44.85) 1.868
班の人 196.72(46.16) 196.53(32.34) 235.69(36.13) 22.801 ***
M(SD) F値 N
自己開示
32
**p<.01,***p<.001