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アメリカ合衆国における幾何と代数の強調

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(1)

静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)第33号

(2002.3)25〜

47

アメ リカ合衆国における幾何 と代数の強調

The Circumstances about Emphasizing Geometry and Algebra in the United States

国 宗

  

Susumu KuNIMUNE

(平成 13年10月 9日受理

)

1。 は じめに

本稿のね らいは、 アメ リカ合衆国における昨今の幾何 と代数の強調の背景をさぐり、実際に子供た ちがどのような内容を身につけることが期待 されているのかを明 らかに して、 日本の算数・ 数学教育 への示唆を得 ることである。

筆者 は、

2000年

春 に、 アメ リカ合衆国における連邦 レベルであ科学教育政策に関する資料収集のた め、 アメ リカを訪問す る機会を得た。その中に、連邦教育省の訪間があり、そこで、

「数学評価を調べる出発点 としての第 3回 国際数学・ 理科教育調査 :幾 何 と代数に関す る詳細な 検討」 (TIMSS as a Starting Point to Examine 1/1athemttics Assessments:An ln― Depth Look tt Geometry and Algebra)

という、

130ペ

ージ程の冊子を手に入れることができた。 これは、州、地区、そ して学校における幾 何や代数 に関す る教育内容の改善を目指 して、

1999年

6月 に連邦教育省が刊行 した啓蒙書であり、連 邦教育省が幾何 と代数・ 関数を強調することの意味が述べ られている。本稿を書 くにあたつては、 こ

の冊子 に多 くを負 っている。

衆知のように、 アメ リカ教育省 は、 アメ リカの教育向上のために「全てのアメ リカ人が平等に教育 を受 けられることを保証 し、全国的に教育的卓越を促進する」 ことを掲げ、そのための主要 目標 4つ を示 している。その 2番 目の目標 は、

「全ての子 ども達 に、確かな学習の基礎を身につける」

ことであり、 さらにその下位 目標の中には、次の記述が見 られる。

「下位 目標 2.3 8年 生 は、基礎的な代数・ 幾何を含む、学びがいのある数学を習得する。」

この下位 目標

2.3は

、数学 に関する一つの指標を示 した ものであ り、第 4学 年で国際平均値 より上 であったアメ リカの子 ども達の数学の成績が、第 8学 年では下 になり、第

12学

年では最下位に近か っ たとい う、 TIMSSの 結果が反映 していると見 ることがで きる。 そこではまた、 アメ リカの数学 カ リ キュラムは、他の先進国に比べて広 くはあるが浅い内容であったということも明 らかになっている。

これ ら問題点の打開のために、教育省 は

1999年

に、

Ame五

ca Countsと いう数学教育改革を打ち出 した。その 6つ の方略的目標 は次の通 りである。

1)質

の高い教員養成プログラムや現職教員教育を通 して、学びがいのある数学を教えることがで

きる教師にする。

(2)

  

2)個

別学習や家庭教師、学校外で学習する機会を提供する。

3)優

れた数学の教授や学習に関する質の高い研究を支援する。

4)今

日の子 ども達 にとって数学がいかに重要であるか、社会の理解を得 る。

5)厳

密な学問的水準を基 に作 られた学 びがいのあるカ リキュラムを、すべての子 ども達に奨励す る。

6)連

邦、州、地域の持つ情報を共有 し効率的に有効利用す ることを支援する。

これ らは、教育省による数学教育改革の中心になっていると考え られる。本稿で取 り上げる冊子の 刊行 もまた、 この改革の一部分を占めている。

2.幾

何 と代数・ 関数の強調の背景

ここでは、現在のアメ リカ合衆国の学校教育において、特に幾何 と代数 0関数に関する学習指導が 強調 されている背景 について、 「 はじめに」で述べた冊子 にで きるだけ忠実に述べることにする。

(1)冊

子刊行のねらい

ここで取 り上げている冊子の「序」では、冊子刊行のね らいが述べ られている。それは、

全米教育進歩評価 (NAEP;National Assessment of Educational Progress),

第 3回 国際数学・ 理科教育調査 (TIMSS;the Third lnternational Mathematics and Science Study)

によって示 された、第 8学 年の数学評価 に関す る情報を提示す ることである。つまり、 アメ リカの国 内調査である NAEPと 国際調査である

TIMSSと

の両者に基づいて、検討を加えていこうというもの である。

なお、冊子 は 3章 か らな り、第 1章 では、 NAEPと

TIMSSの

数学評価の枠組み、及 び内容領域 に ついて、調査問題の配置に関 して幾何 と代数に焦点を当てて比較 している。第 2章 、第 3章 では、そ れぞれ幾何 と代数 について、 NAEPと

TIMSSの

調査問題を使 って、評価の詳細 と、実際の評価結果 を示 している。

(a 

アメ リカにおいて重要事項である数学の成績

アメ リカにおいて、現在、数学の成績に対する関心が極めて高 くなっている。その背景について、

以下、冊子か ら引用する。

「 TIMSSは 、数学・ 理科の成績が教育の重要事項であると叫ばれている時に現れた。我々の 8つ の国家教育 目標の 1つ は、

2000年

までに、 アメ リカは数学・ 理科の成績において世界で第 1位 にな るであろう "で ある。加えて、数学・ 理科の専門家は、数学 。理科の教科指導の改善を声高に主張 し ている。例えば、全米算数・ 数学教師協議会

(NCTM)は

、次の書物を刊行 している。

Curriculum and Evaluation Standards for SchOol Mathematics, 1989 ProfessiOnd Standards for Teaching Mathematics, 1991

相当なエネルギーが、多 くの州、地区、学校や教室における数学教育の改善にささげられている。

また、

1996年

NAEP数

学評価によれば、国家 レベルのデータは、生徒の成績が

1990年

より向上 して いることを示 している。

(中

略 )

TIMSSで の数学の成績 は、 4年 生では諸外国に比較 してまずまずであるが、 8年 生では国際平均

値 より低 くなっている。両学年の調査に参加 している

25カ

国の中で、 4年 生 は国際平均値以上である

(3)

アメ リカ合衆国における幾何 と代数の強調

が、 8年 生では平均値以下であるのは、 アメ リカ合衆国ただ 1つ だけであり、 また、

12年

生で も国際 平均値以下であった。

NAEPの 結果 によれば数学の成績 はよ くなっているが、 TIMSSの 結果を併せてみると、 アメ リカ 合衆国が高い数学の成績の目標 に到達するのは、遠い先のことである。 」

このように、 アメ リカの数学の成績を改善する必要があることを述べている。 そ して、「 アメ リカ 教育省 は、未来 におけるアメ リカの生徒の数学の成績を継続的に評価 し続 けるためにい くつかの主導 権を持 って」 いるとし

(こ

の 1つ にTIMSS― Rが あげ られている )、 さらに、「州や学校区のかな り多 くが、数学評価を行 っていたり、近い未来 に数学評価を実施す ることを計画 している。例えば、

46の

州では数学の基準が設 けられていて、

23の

州では、州の数学評価 は最近完成 された基準 に基づいてい

ると、専門家が報告 している。残 る

23の

州 は、新 たな評価 に向けて進行中あるいは計画中である。」

とし、改善 に向けた努力が着実に進展 していると述べている。

)原

冊子における数学評価基準の目的

ここで取 り上 げている冊子 における数学評価基準が 目指 していることは、次の通 りである。

1)NAEPとTIMSSの

数学評価の枠組みの概観を与えること。

2)8年

生 の幾何 と代数の領域 において、 NAEPと TIMSS両 者の枠組みをいかに比較す るかを示す こと。

その意図す るところは、数学の枠組みにおいて各領域がどのように内容の範囲を含んでいるかを 明 らかにす ることであ り、 NAEPと TIMSSの 評価 における内容 について徹底 した情報を与えるこ

とである。

3)NAEPとTIMSSの

調査問題が、評価の枠組みに述べ られている多 くの数学の内容領域

(例

えば、

数感覚、操作、代数、幾何 )に 、 いかに配置 されているかを述べ ること。

4)NAEPと

TIMSSに 含 まれてい る幾何 と代数 の調査問題 の例 を示す ことによ って、 NAEPと

TIMSSの

評価の枠組みにおいて、多 くの内容領域がいかに取 り扱われているかを説明すること。

5)州

、地区、学校や学級 において数学評価を試みるために、 これ らの評価に基づ く教材をいかに利 用するかを述べること。

この基準 は、評価 と実践 との隔たりの橋渡 しをす るに違いない。

)評

価基準 において幾何 と代数が強調される理由

この冊子 は、副題が示 しているように、幾何 と代数 に焦点が当て られていて、それに関 して詳細な 評価の枠組みや内容、調査問題例などが述べ られている。その意味す るところは、次の点 にあるとい

う。

TIMSSの

結果 は、 8年 生のカ リキュラムにおいて、 より高度な数学の内容 に一層注意を払 うこと の必要性を一貫 して示 しているので、 この基準 は、幾何 と代数に焦点化 している。本冊子での基準に 示 され るよ うに、幾何 と代数 の領域 は、

1996年

NAEPで

の数学 の評価問題 のおよそ半分、 また

TIMSSで の問題の

1/3を

占めている。

TIMSSの

国際的なカ リキュラムの分析 の結果 によれば、高い達成度の国々のカ リキュラムは幾何 と代数に集中 している傾向があり、一方、 アメ リカの第 8学 年の数学カ リキュラムは、進んだ内容 がほとんどな く算数が優勢である。

TIMSSの

第 8学 年の数学教室の ビテオによる調査では、 アメ リカにおける第 8学 年の数学授業の

(4)

28    

40%が

、整数、分数、小数のような算数の内容を含んでいた。一方、 これ らの内容 は、 ドイツや日 本ではほとんど一般的ではない。 ドイツと日本の第 8学 年の数学授業 は、代数や幾何を十分に含ん でいる。 日本の学校 は、すべての生徒 に対 して第 9学 年の終わ りまで、単一のカ リキュラムを提示 する。数学では、すべての 8年 生 は代数や幾何 にかなり集中 したカ リキュラムを学習する。

・ 数学の内容領域の分析、それは、第 7学 年 と第 8学 年の間の成績 において大 きく伸びることを示 し ているが、高い成績を修めている国々のい くつかは、 これ ら2つ の領域において最大の伸びを示 し ていることが明 らかになった。

O中 等学校の最終学年における

TIMSSの

評価では、進んだ数学を学んでいるアメ リカの生徒の達成 が最 も悪いのは、幾何 においてであった。全米科学財団の長であるNeal Laneは 、次のように注 目

している。

これは、第 4学 年、第 8学 年での実際の結果 に一致 している。 しか し、 これ ら進んだ生徒が、

形式的な幾何 コースのすべての学習を行 っているということは期待できない。 この結果 は、幾何 と代数の両者 は、カ リキュラム全体を通 して鍵 となる科 日として必要である、 ということを示 し ている。 "」

)関

係者への呼びかけ

続いて、 まず読者への呼びかけの形で、州や地区におけるカ リキュラムと評価を振 り返 るのに重要 なこととして、次の 4点 を図でまとめている。

・ アメ リカの生徒にいろいろな数学のコースが用意 されているかどうかを考えること。あなたの州や 学校では、 8年 生の何 %が 幾何や代数を学習 していますか ?

0あ なたの生徒の幾何 コースや代数 コースの内容 は、 NAEPや

TIMSSの

枠組みによって描かれ るの と同程度 に厳格ですか ?

。あなたの州や学校区の 8年 生 は、教室での指導 として、 NAEPや

TIMSSに

含 まれているような幾 何や代数の問題を解決する機会を与え られていますか ?

。州や地区の第 8学 年の数学評価 は、 NAEPや

TIMSSに

あるような幾何や代数の評価問題のタイプ を含んでいますか ?

そ してさらに、読者である教師に向けて、「 あなたの数学評価を調べるための過程」 として、次の ように問いかけている。

「 この出版の目的の一つは、教育者が、彼 ら自身の評価を国家や国際的な評価の内容・ 行動的期待 に関連づけて、調べることを助けることである。以下 は、あなたの数学評価の枠組みを分析する過程 を通 じて、あなたを導 く重要な問いである。」

以下、その小見出 しのみを列挙 してお く。

1。 あなたの数学の枠組みでは、 どんな内容領域や行動能力を扱 っていますか ? 理解することは、単 に知 ること以上の ものです。

2。 内容領域や実行能力のそれぞれについて、何を強調 していますか ?

3。

(乗

法 と電卓の使用のように、問題の形式を混ぜ ることのような )あ なたの評価の他の側面を、

NAEPや

TIMSSと

どのように比較 していますか ?

4。 あなたの枠組みでは、幾何 と代数の内容領域には何が含 まれていますか ?

5。 あなたの評価は、幅広い問題や挑戦的な調査問題を含んでいますか ?

以上みてきたように、現在のアメ リカ合衆国における幾何 と代数・ 関数の強調 は、好 ま しいとはい

(5)

アメ リカ合衆国 にお ける幾何 と代数 の強調

えなか った TIMSSの 結果 とその分析か ら引 き起 こされた。幾何や代数・ 関数を強調 した指導が行わ れるためには、州、地区、学校や学級において実際の数学指導 に関わる人々に対 して、その意義を説 明 し、理解 して もらい、学習指導が変わることが重要である。本稿で取 り上げている冊子の刊行 は、

そのための 1つ の方策なのである。

3.NAEPと

T:MSSの 数学評価の枠組みについての比較

ここでは、 NAEPと

TIMSSの

数学評価の枠組みについて述べ る。 なお、 アメ リカ独 自の国内調査 である NAEPに つ いて は、 日本 において TIMSSほ どには知 られていないので原文 に忠実 に述べ、

TIMSSに

ついては、既 に国立教育研究所か らの報告書 (1996,1997,1998)が 出版 されているので簡 単 に述べ ることにする。本項

(2X(3)、

及び 4の

(1)〜(3k5の(1)〜 (3)は

[筆

者注 ]と して示 した部分 を除いて、原冊子の全訳である。

(1)NAEPの 評価の枠組みの目的

NAEPの 評価の枠組みは、国家評価運営会議 (NAGB;National Assessment Governing Board) に任 され、その もとで発展 している。 NAEPに 関す る方策形成のために

1988年

に国会によって作 られ た

NAGBは

、特 に評価の枠組み と調査の詳細を、国家的に共通理解が得 られ る仕方で発展 させ るこ と、それぞれの年齢や学年 に対する明確な成績の到達点を確定すること、そ して、他の NAEPの 方策 の信頼度を もた らす ことを託 されている。

NAEPの

1996年

の数学評価のための枠組みは、広範囲な関心が取 り込まれ、 また、数学の教育や評 価 についての最近の国家的な改善の努力、過去の NAEPの 枠組みや評価の見 きわめ、 また、数学教育 や評価分野か らの勧告を通 じて、大学会議 (College BOard)に よって開発 された。協議 し振 り返 る という徹底的な過程 は、結果的に得 られた枠組みが数学教育における主な主張に対 して信頼がおける ことを確かなものに し、 また、生徒のこの分野における成績を改善す るためになすべ き課題を可能な か ぎり提出す る。College Boardは また、問題の形式の混在 に特 に注意を払 った調査問題の詳細、

数学 についての内容領域にわたる問題の分布、そ して、例えば操作の使用、電卓の使用、問題を完了 す る時間 というような、生徒 に提示 され る問題の条件 について も開発 した。

NAEPの 数学の枠組みはまた、国家の評価の関連を示す、 NAEPの 自発的な州 レベルの評価 に対す る基本 にもなっている。数学 における州 レベルの評価 は、第 8学 年が

1990、 1992、 1996年

に示 されて いる。同 じように第 4学 年 は

1992、 1996年

に示 されている。参加者 は広範囲にわたっていて、

40あ

る いはそれ以上の州が、それぞれの評価に参加 している。

[筆

者注

:こ

の後

TIMSSの

評価の説明が続 くが省略す る。詳細 は国内報告書 (1996)参 照。 ]

(a NAEPの 数学の枠組みの概観

1996年

NAEP数

学評価の枠組みは、 5つ の広 い領域か らなる数学の内容を構成要素 として、 カ リキ ュ ラムを考 えて いる

(図

1参 照 )。 これ らの内容 の構成要素 は、

NCTMの

Curriculum and Evaluttion Standards for School Mathematicsの 内容基準を反映 している。内容の構成要素 は、

数学をば らば らな要素 に分離す ることを意図 しているのではな く、む しろ、数学の内容の十分な範囲 を描 く、役 に立つ分類の枠組みを提供す ることを意図 している。

内容の表現それだけでは、

NCTMの

Standardsに 述べ られていたり効果的な数学教育の研究によっ

て示 されている数学的思考 について、十分 には表現す ることはできない。現実の生活において、数学

(6)

30

l NAEPの

数学の枠組み

的状況が、 1つ , 2つ の内容の構成要素 に明確に帰着 されたり、ただ 1つ の数学的思考の様相を自然 に反映するということはほとんどない。広い視野で調査を構成するには、問題は内容の問題 として分 類 されるだけでな く、数学的能力の広い範囲を把握す る方法 として も分類 されなければならない。問 題の分類についてのこの論点を説明す るのに、 NAEPの 枠組みは、基本的には数学の内容の構成要素 に焦点を当てているが、「数学的な力」 (mathemttical power)と 言われる評価次元に関連する詳細 にも焦点を当てている

(図

1参 照 )。

数学的な力 は、広い推論の文脈、および数学的内容や思考の広い視野に関連する、数学的能力

(概

念的理解、手続 き的知識、問題解決 )か らなると考え られる。 コ ミュニケーションは、生徒が課題に 対 して意味ある反応を用意するための、統合する糸であり方法であるとみ られる。 NAEPの 数学評価 においては、推論、つなが り、 コミュニケーションとしての「数学的な力」の概念は、生徒の成績を 測定す る際に重要な役割を演 じる。答えだけでな く考え方 も求める問題を用いることを通 して、考え を伝え問題解決のために推論を行い、そ して数学的内容の構成要素や他の分野にわたる学習を関連づ けることが、生徒に要求 される。

0)T:MSSの

数学の枠組みの概観

TIMSSの 目的のために、 カ リキュラムは、学校 の数学 と理科 についての教科の内容、知的過程

(行

動的期待 )、 情緒の結果

(将

来への展望 )か らなっている。それ らは、生徒の学校での経験の間に、

意図され実施 され達成 されたカ リキュラムである。カ リキュラムの要素はどれ も、内容、行動的期待、

将来への展望 あ るいは文脈 とい う 3つ の要素 の用語で特徴づ け られ る。 これ らの 3つ の要素 は、

TIMSSの

枠組みの面あるいは次元を構成す る

(図

2参 照 )。 枠組みの各面 は、区分あるいは下位区分 の階層か らなっている。

数学 において、 「 内容」 の枠組みは、 8つ の主区分 に分かれていて、それぞれは 2か ら

28の

下位区 分か らなっている。内容の区分および下位区分 は、世界中か らの数学教育者、カ リキュラムの専門家、

教師による徹底的な協議を経て、 それに従 って同意 された。 この

TIMSSの

内容の枠組みは、

NAEP

の内容区分に対応 している。

CONttENTSmDS

∽ ● 0

﹁ 0 ﹄ 鮎 O づ d

﹃ 0 0

﹄ 0 餞

.0 の 目

∽ 0

﹄ 0 0 日 づ Z

● 0 口 ︼ 0 ︼ 口 田 0 ︼ 2 0 ∽ 口 0 ∽ ﹁ 鮎 ∽ づ d d 卜 ● 0 日 o o ︹ ﹀ む ︼﹁ コ o o ﹄ づ 日 ■ 8 つ の﹁ S ∽

. 綱 ∩ ﹁ く S 嘔 d 緻

口 ∽ 0

﹁ o 口

﹄ づ 口 d

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(7)

アメ リカ合衆国 にお ける幾何 と代数 の強調

内容

数 /測 定

/幾

何 /比 例 /関 数・ 関係 。方程式 /資 料の表現 0確率・ 統計 /初 等解析 /確

証 と構造 行動的期待

知 ること /決 まり切 った手順を使 うこと /探 究することと問題解決 /数 学的推論

/コ

ミュ ニケーションをすること

将来への展望

態度 /仕 事 /参 加

/興

味を増す こと /心 的習慣

!MSSの 数学の枠組み

TIMSSの

「行動的期待」 の面の枠組みは、数学的文脈 にかかわ っている際に期待 される生徒の行 動について述べている。 5つ の主区分 は、 「知 ること」、 「決 まり切 った手順を使 うこと」、 「探究するこ

とと問題解決」、「数学的推論」、「 コ ミュニケー ションをす ること」 である。行動的期待の面 は、

NAEPの 数学的能力 と数学的な力の概念 に極めて近 く、 また、

NCTM Standardsに

先例がある。内 容の面 と同様、行動的期待の面 は、特別な要素を特徴づける際に詳細を提供す るのに使われる、区分 や下位区分の階層的な系統を持 っている。

「将来への展望」 の枠組みは、数学や理科の指導 における生徒の態度、関心や動機づけの発達 に焦 点を当てたカ リキュラムの日標を描 くことを意図 している。 この面 は、生徒が数学や理科や工学 につ いての経歴を考えることを促進する、 という目標 と同様 に、学習の成果や、好 ま しい態度 に高めるこ とをね らったカ リキュラムの内容を描 くことを可能にす る。

[筆

者注 :本 稿では、

TIMSSに

関わる基本的な用語の訳 は、国内報告書 (1996)で の表現に合わせ てある。原冊子ではこの後、 NAEPと

TIMSSの

枠組みを比較 した小項 目があるが省略する。 ]

4。 幾何に関する枠組み

(1)NAEPと TIMSSの 第 8学 年における幾何 と空間感覚

(認

識 )

ここでは、 NAEPと

TIMSSの

数学 の枠組みにおける、幾何 の内容領域を考察す る。各内容領域で は、 NAEPと

TIMSSの

枠組みは、評価 される内容や下位内容についての詳細を含んでいる。

図 3に 示 したように、 NAEPの 幾何の枠組みは大変詳 しく、第 8学 年の 8つ の主内容領域 と、導入 段階で評価できる 9番 目の領域 とを含んでいる。内容領域の多 くは下位内容を含んでいる。 NAEPの

内容 と下位内容 は、過程の次元を含んでいる。すなわち、生徒 は、幾何図形について、位置や関係や 性質を含む知識や理解 について記述 し、描 き、適用す ることが要求 される。

図 4に 示 したように、

TIMSSの

枠組み もまた、幾何 に含 まれるべ き内容 についての詳細を含んで いる。 しか しなが ら、

TIMSSの

枠組みは、行動的期待

(つ

まり、決 まり切 った手順を使 うこと、探 究することと問題解決、数学的推論 )が すべての具体的にあげられた内容 に当てはまるとしているの で、その一覧表 は、内容 にだけ焦点を当てている。 TIMSSは 、 2つ の重要な内容領域を持 っている。

第 1の 内容領域 は、 2次 元や 3次 元の幾何 における、位置、視覚化、そ して形に関するものである。

第 2の 領域 は、対称、合同、そ して相似 に関するものである。

NAEPと

TIMSSの

幾何の枠組みは、幾何の内容 における本質的な重なりを示 している。以下 は、

31

(8)

 

両者の枠組みに含まれている 6つ の重要な内容領域である。

領域

1

領域

2

領域

3

領域

4

領域

5

領域

6

幾何図形を記述 し、視覚化 し、描 き、作図する。

幾何図形を組み合わせ、分割 し、変形す る。

図形の間の関係を、対称、運動 と変換、合同 と相似 という言葉で確認する。

問題解決 において幾何学的性質や関係を適用する。

座標や直線の性質を使 って、幾何図形や性質を代数的に表現する。

幾何学的モデルを使 って現実世界の問題を解決 し、 また、幾何学的概念に関する 関係を説明する。

(a NAEPに おける幾何 と空間感覚

NAEPの 第 4学 年 と第 8学 年の幾何の内容領域 は、幾何的な形の低水準な確認を十分 に越えて広範 囲にわたっている。

NCTMの

Stttdardsは 、空間感覚 は幾何の研究や評価の統合的な成分でなければ な らないことを強調 している。そ して、 NAEPの 評価 は、 この見方 に一致 している。形 と変換 との結 合 についての数学的推論 と同様に、描 くことと作図に焦点が当て られている。幾何学的な文脈におけ る比例の考えを使 うことは重要であ り、 また、幾何学 と代数学 との初期の連携を図ることも同様に重 要である。

先に述べたように

(図

1参 照 )、 数学的能力

(概

念的理解、手続 き的理解、問題解決 )、 数学的内容 の関係、そ してコミュニケーション技能は、 NAEPの すべての内容領域を統合する筋 と見 られている。

幾何の内容領域 においては、内容や下位内容 は、 NAEPの

1996年

の数学の枠組みか ら引用 されてい て、図 3に 示 されている。内容の一覧表 は、全てを含むというよりはむ しろ、実例であることを意図 されていたも しか しなが ら、実例をあげるい くつかの水準は、問題の書 き手にとって必要であった し、

また、評価 される内容領域や能力をち ょうど含む ことを確実 にする。 さらに、内容や下位内容にわた る知識を統合することを必要 とする調査問題 は、望 ま しいものと考え られた。人 は毎 日の生活におい て、 1つ の特別な数学の内容よりもむ しろ自らかかわる問題を解決す ることを期待 されている。

なお、図 3に おいて、第

4、

8、

12学

年のそれぞれに対 して、以下の記号 は、 NAEPの 枠組み において使われている。つまり、次のことを示 している。

●は、下位内容がその学年 において評価 されること

◎ は、下位内容が操作や絵画的モデルを使 うような簡単な水準で紹介 されて もよいこと

○ は、下位内容がその学年では評価 されるべ きではないこと

4年 8年  12年

幾何図形を記述 し、視覚化 し、描 き、作図する。

a.言

語表現で与え られた図形を、描 きスケ ッチする。

b.図

形が与え られ、その幾何的性質の言語表現を書 く。

2。 形を組み合わせ、分割 し、変形 した結果を観察 し予想す る。

(す

なわち、紙を折 ること、切 り取 ること、 タイル張 り、立体片の並び 替え )

(9)

アメ リカ合衆国における幾何 と代数の強調

3 NAEP 1996 

数学の枠組み :幾 何 0空 間感覚

6)T!MSSに

おける幾何

TIMSSの

詳細な数学の枠組みに関す る幾何の内容の部分は、図 4に 作 ってある。

TIMSSの

数学の枠組みにおける 3つ の面

(内

容、行動的期待、将来への展望 )の うち、 「 内容」の 面 は、主題をさまざまな特性の水準 に分析す ることか らなっている。

TIMSSの

枠組みにおいて注意 したように、区分や下位区分の適切な数 を決定す ることは、挑戦的な仕事であった。

TIMSSの

枠組 みで使われている区分 は、多 くの国際的な状況の もとで熱心 に議論 され、使われている枠組みは意図 した目的のために適切であるという一致があった。枠組みを発展 させ る際に、 テス トの開発者のため に必要な詳細を用意することと、詳細な表現においては細か くなるので内容領域の主要な主題が失わ れるということとの間の緊張がいつ もあった。

TIMSSの

枠組みの「行動的期待」 の面 は、知 ること、決 まり切 った手順を使 うこと、探究す るこ とと問題解決、数学的推論、 コ ミュニケーションす ることを含む内容 にかかわる際に、生徒が示す こ とを期待 される行動の種類を記述す る。

33

3.変

換による図形 とその像 との関係

(合

同、相似 )を 確認する。

a.運

動の幾何

(形

式的でない :線 対称、裏返 し、回転、ず らす こと ) を使 う。

b.変

(平

行移動、回転移動、鏡映、拡大、対称 )を 使 う。

i.総

合的な 五

.代

数的な

2つ 以上の幾何図形の交わ りを記述する。

2次 元

立体の平面による切断

4。

・ b

5.合

同や相似 によって図形を分類 し、それ らの関係を、適切なところで

比例的推論を使 って、形式的でな く適用する。 〇

  

  

6.問

題解決において幾何学的性質や関係を適用す る。

a.間

の、中に、上 に、外 にという概念を使 う。

b.問

題を解決するためにピタゴラスの関係を使 う。

c。 相似の観点で比や比例の性質を適用する。

d.直

角三角形の三角比の適用に関する問題を解決する。

幾何学的概念についての関係を確立 し説明する。

推測する。

結論や一般化を確証 し正当化す る。

形式的でない帰納や演繹を使 う。

a   b

C.

8。 幾何学的モデルに関する問題状況を表現 し、意味ある文脈で数学的あ るいは現実世界の問題を解決す るために図形の性質を応用する。

9.幾

何図形や性質を座標やベク トルを使て代数的に表現す る。

a。 図形を代数的に記述す るために、直線の性質

(距

離、中点、傾 き、

平行、垂直を含む )を 使 う。

b.円

錐曲線やその性質を代数的に記述す る。

c。 問題状況

(和

、差、スカラー倍、内積 )に おいてベク トルを使 う。

(10)

34 国 宗  

1。 幾何 :位 置、視覚化、形

a.2次

元の幾何

座標幾何

(直

線 と座標でのグラフ、平面上での直線の方程式、円錐曲線 とそれ らの方程式 )

基本

(点

、直線、線分、半直線、角 ;平 行 と垂直 )

多角形 と円

(三

角形 ;四 角形

:そ

れ らの分類 と性質 ;ピ タゴラスの定理 と応用 ;他 の多角 形、円、それ らの性質 )

b.3次

元の幾何

(3次

元の形 と面 とそれ らの性質 ;空 間における平面 と直線 ;空 間的知覚 と視覚化 ;3次 元 における座標系 ;空 間における直線や平面や曲面の方程式 )

c.ベ

ク トル

2.幾

:

a.変

(模

様、敷 き詰め、帯状模様、型紙など ;対称

[線

対称 と回転対称、 3次 元での対 称、代数 における対称や数の規則性 ];変 換 :対 称 と合同、拡大

[縮

小 ]、 幾何的変換の組 み合わせ、変換の群構造、変換の行列表現 )

b.合

同 と相似

(合

[合

同な三角形 とそれ らの性質 ;3辺 、 2辺 とその間の角 ]、 合同な四 角形 と多角形 とそれ らの性質、相似

[相

似な三角形 とそれ らの性質

])

c.定

規 とコンパスを使 った作図

丁 !MSSの 詳細な数学的枠組み :幾 何

5。 代数・ 関数に関する枠組み

(1)NAEPと 丁 !MSSの 第 8学 年における代数・ 関数

代数 についての NAEPと

TIMSSの

枠組みは、幾何 についての枠組みと同様、かなり重なっている。

NAEPの 代数 についての枠組みは、図 5に 示 してある。それは、 7つ の中心的な領域 と、導入段階で 評価で きる 7つ の領域 とを含んでいる。 TIMSSの 代数 についての枠組みは、 図 6に 示 してある。

TIMSSの

枠組みは、関数、関係、 そ して方程式 に焦点化 されているが、 それはある観点か ら

NAEP

の枠組みを他の形に作 り上げたものである。

NAEPと

TIMSSの

8学 年 における代数・ 関数 に含 まれている重要 な領域を比較 してみると、次 の 5つ の主要な領域がある。

領域

1

領域

2

領域

3

領域

4

領域

5

規則性や関係を認識 し広げる。

状況を代数的に表現するために、記号を使 う。

(指

数や平方根を含む

)代

数式において式の値を求め、操作を実行する。

1次 方程式や不等式を解 く

(方

程式のグラフ表示を含んで )。

代数的モデルを使 って現実世界の問題を解決 し、 また、代数的な概念 に関する関

係を説明する。

(11)

アメ リカ合衆国における幾何 と代数の強調

(a NAEPに おける代数・ 関数

NAEPの 数学の枠組みでは、代数・ 関数の内容領域 は、第 4学 年での簡単な規則性に関するものか ら、第

12学

年での微積分の前段階や離散数学か らの話題 に関す る高度な解析 にまで広が っている。代 数 は、規則性や関数や関係の研究、言語 と表現 との相互関連、一般的な計算 に基づ く構造を作 り上げ ること、そ して、状況のモデ リングというように、 いろいろに考え られている。代数・ 関数の内容領 域 においては、内容や下位内容 は、 NAEPの

1996年

の数学の枠組みか ら引用 されていて、図 5に 示 さ れている。学年 にわたる範囲を示すために、図 5に は代数・ 関数の内容の全てが示 されている。 しか し、内容の 8か ら

14は

、元来、高等学校生徒のための ものである

(図

5で 使われている●、◎、○の 記号 は、図 3で の使 い方 と同様である )。

第 8学 年のこの内容領域 には、変数の概念 と記号の意味の発展 とが含まれている。評価問題 には、

変数の意味や問題解決の文脈 における記号表現の理解が含まれている。生徒 は、規則性を表現するの に変数を使 うことを問われ、また、同値な代数的表現についての流暢さを示すことが期待 されている。

生徒 は、 1次 方程式や不等式を解 く方法の多様性を利用することがで き、モデ リングの道具 としての 1次 関数、 1次 方程式や他の表現に関す る基礎的な理解をもつようになるべ きである。そ してまた、

生徒 は、問題を解決 しその結論を正当化す るために、代数的思考や記号を活用す ることができるよう になるべ きである。彼 らには、問題状況の表現を数値的に

(つ

まり表を使 うこと )、 代数的に

(つ

ま り方程式や関数を使 うこと )、 幾何的に

(つ

まリグラフを使 うこと

)関

係づけることが期待 されてい る。

4年

 8年

 12年

1。 規則性や関数関係の広範な多様性を、表現 し広げ補い変換 し創造する。

a.規

則性や数列を認める。

b.規

則性や関数的な関係を広 げる。

c。 与え られた言語表現 について、規則性を広 げ補 う

(欠

けている項を 完成する )。

d.規

則性を、 1つ の文脈か ら他の文脈へ変換する。

e.規

則性や関数的な関係の例を創造する。

f.変

数の概念を理解 し活用す る。

2.図

表やモデルや記号表現の間の変換を行 うために、状況 に対する多様 な表現を使 う。

3.数

直線や直角座標系を表現の道具 として使 う。

a.直

線、数直線や直角座標系に点集合を認めたりとった りする。

b.極

座標系に点集合を認めたりとったりす る。

c.座

標を使 って活用す る。

d.関

数のグラフをか く。

4。 数学的あるいは現実世界の問題を解決す るために、 1次 方程式や 1次 不等式の解を表現 し特徴を述べる。

a.自 然数の解集合

b.実

数の解集合

(12)

5。 数学的あるいは現実世界の問題を解決するために、文脈 としての状況 を解釈 し、実数や代数式について代数的操作を実行する。

a.適

切な道具を使 って、意味のある文脈 における実数 について、基本 的な操作を実行する

(仲

間分 けや基本操作、指数、平方根 に関する幾 つかの操作を含む )。

b.式

や公式における置 き換えに関す る問題を解決す る。

c.1変

数の公式に関す る意味ある問題を解決する。

d.問

題を解決するために同値な形式を使 う。

適切 な方法 を使 って方程式や不等式 を解決す る。

方程式や不等式をグラフ的に解決する。

方程式や不等式を代数的に解決す る。

方程式や不等式をマ トリックスを使 って解決する。

a b

C.

数学的推論を使 う。

a.推

測す る。

b。 結論や一般化を確証 し正当化する。

c.形

式的でない帰納や演繹を使 う。

8.離

散構造を もつ問題状況を表現す る。

a.有

限のグラフやマ トリックスを使 う。

b.数

列や級数を使 う。

c.循

環す る関係を使 う

(数

やグラフの反復、有限の差を含む )。

9.代

数的あるいはグラフ的方法の多様性を使 って、 また、適切な道具を 使 って、実数や複素数の解をもつ高次方程式を解 く。

10。 方程式の解を近似する

(等

分、符号の変化、連続近似 )。

11.関 数やその性質を説明す るために、適切な記号や専門用語を使 う

(領

域、範囲、関数の合成 と逆、を含む )。

12.種 々の関数や関数族に関 して、一般の媒介変数や曲線での効果を調べ て、数の、記号の、そ してグラフの性質を比較 し適用する。

  

  

13.現

実世界の状況をモデル化 し扱 うために、関数概念を適用する。 ○

  

  

14。 三角法を使 う。

a.問

題状況をモデル化す るために三角比を使 う。

b.現

実世界の状況をモデル化す るため三角関数や円関数を使 う。

c.現

実世界の問題を解決するために三角法の概念を適用す る。

5 NAEP 1996 数学の枠組 み

:代

数・ 関数

36

 

:MSSに おける代数・ 関数

TIMSSの

詳細な数学の枠組みに関す る代数 0幾 何の内容の部分 は、図 6に 作 ってある。

NAEPが

(概

念的理解、手続 き的知識、問題解決 という )内 容領域全般 にかかわる認知能力に力点を置 き、推 論 コ ミニュケーション、関係づ けを強調す ることと同様 に、 TIMSSは 、知 ること、決 まり切 った過 程を使 うこと、調査、問題解決、推論、 コ ミニュケーションすることに関す る内容領域全般 にかかわ

る行動的期待を用いている。

TIMSSの

内容 は、 NAEPの 内容 とは幾分異な ったかたちでまとめ られていて、 そのい くつかの内

容 は、図 6に 示 されている。第 1は 、関数、関係、方程式の領域である。 また、 TIMSSで は、 「他の

(13)

アメ リカ合衆国における幾何 と代数の強調

数、及 び数概念」 として示 されている区分の もとで、数の領域の中にある指数、平方根、累乗根や、

比例性の下での線型の補間法や補外法 に及んでいる。

1.

2。

3.

関数、関係、方程式

  a.規

則性、関係、関数

b.方

程式、公式 数概念

  a.指

数、平方根、累乗根 比

 

  a.線

型の補間法、補外法

図 6 T!MSSの 詳細な数学的枠組み代数・ 関数

6。 調査問題例

上記 3〜 5。 での評価の枠組みについての検討を踏 まえて、原冊子では、「次のような問題を、あ なたの学級や地区、州では学習 していますか」 という投 げかけで、幾何については

33題

の、代数・ 関 数 については

24題

の調査問題例 とその解説がある。そのうちの問題例 は、本稿末に資料 としてすべて を列挙 してある。幾何、代数・ 関数それぞれの評価の枠組みの もと、連邦 レベルで、実際にどのよう な問題ができるようになることが期待 されているのかを知 る上で、大変興味深い問題群である。

なお、幾何 と代数 0関数 に関する問題例の出典別、領域別の問題数 は、それぞれ表

1、

表 2の 通 り である。幾何 については領域

1、

2が 初等的な内容であることを考慮すると、第 8学 年 に関係する幾 何 について も代数・ 関数 について も、

TIMSSの

調査問題例が多 くの部分を占めていることが読み取 れる。

幾何の問題例の分布 表

代数・ 関数の問題例の分布

7.日 本の算数 0数 学教育に対する示唆

以上の内容 に基づいて、 ここでは、 日本の算数・ 数学教育 に対す る示唆をまとめてお く。

 

幾何 と代数・ 関数に関する学習指導の見直 し

2。 で述べたように、現在 アメ リカでは、特に第 8学 年 において幾何 と代数・ 関数の指導が強調 さ れている。それは、

TIMSSの

結果が好 ま しいものではなか ったことか ら引き起 こされた ものであり、

いつまで も算数 にとどまっているべ きではない、 という提言で もある。

アメ リカのこの問題点 は、 日本 においてはそ う問題点 とはなりえないであろう。なぜな らば、中学 校第 2学 年

(ア

メ リカの第 8学 年に相当する )に おいて、全国一律に図形の論証の初期指導が行われ、

連立 2元 1次 方程式や 1次 関数が扱われているか らである。 アメ リカ式にいえば、 日本では既に幾何

領域\

NAEP

TIA/1SS 新 作

1   2   3   4   5   6

4   6   1   3   1   1

2   6   1   3   3

1 1

4 8 7 5 5 4

領域\

NAEP

TIIИ

SS

新 作

1

2 3 4 5

1 1 1 1

4   3   3   4   1

4   1

4   4   4   9   3

4 24

(14)

38

 

と代数・ 関数 は強調 され続 けている。では、 日本でのそれに関する学習指導 はうま くいっているので あろうか。

アメ リカでの幾何 と代数 0関数の強調を踏 まえて、 さらに一歩進んで、 日本での幾何や代数・ 関数 に関する学習指導の実際はどうなのか、子 ども達 は理解 しているのか、 じっくり考える学習が行われ ているのか等々、実情を的確 にとらえて学習指導の改善を図 りたい。

 

現実世界 とのかかわ りの重視

特 に幾何に関する評価問題例をみると、 アメ リカではいかに現実世界 とのかかわ りを重視 している かが うかがえる。 このことは、幾何の問題例

30や

31〜33の

ように、 「幾何学的モデルを使 って現実 世界の問題を解決 し、幾何学的概念に関す る関係を説明する」 という領域 6に かかわるものや、代数 の問題例

24の

ように、「代数的モデルを使 って現実世界の問題を解決 し、代数的な概念に関する関係 を説明す る」 という領域 5に かかわるものは勿論のこと、例えば、幾何の例

24や

25に

み られるよう な現実世界 と結び付 けた問題例か らも明 らかである。

翻 って 日本における学習指導を考えてみると、場面設定が極めて数学的であることに気づ く。例え ば、上 にあげた幾何の問題例

24は

、 日本では「右の直角三角形で、 xの 値を求めなさい」 という、 ピ タゴラスの定理の単なる演習問題 として課せ られるであろう。筆者 は例

24程

度 は日本流にさっば りと 扱 う方がよいと考えているが、無理を しない程度に、現実場面 と結 び付 けて学習指導を進めてい くこ との意義を改めて考える必要がある。そうすることによって、数学 と社会 との関係 に目を向けるよう になり、生徒の数学観、数学学習観をよりよい方向へ と導いてい くことにつなが ってい くであろう。

 

すべての子 ども達が学習 しているという現実の再確認

幾何の問題例

23も

単なるピタゴラスの定理の適用問題であるが、 アメ リカの第

12年

生の正答率 は

8

%で ある。 この正答率の低 さは、 アメ リカの多 くの子 ども達が ピタゴラスの定理を学習 していないこ との結果であろう。 アメ リカでは、学年が上が ってい くにつれて、数学を学習 し続 けてい く生徒の数 が急激 に減少す るという

(Schoenfeld,1992)。

原冊子で も、 「多 くのアメ リカの学生 は、数学 に しっ か りと取 り組む ことな しに高等学校 に入 りそ して去 って行 って しまう。大変早い時期に、より高度な 教育への扉を閉ざして しまう。」 と述べ られている。

日本の子 ども達は、中学校第 3学 年で ピタゴラスの定理を学習する。 この定理の数学上の重要性、

有用性 は勿論のこと、多 くの実践研究が示 しているように、その授業 は生徒達の興味・ 関心を喚起す るに十分である。 ピタゴラスの定理を十分に活用できる者か ら単 に定理を知 っているという者 まで、

生徒の理解度 は様々であろうが、すべての子 ども達が ピタゴラスの定理を学んでいるという現実の も つ重みを じっくりと味わってみたい。 日本の中学校での数学学習において、 ピタゴラスの定理は、幾 何 と代数が上手 に結びつ く典型にもなっている。

 

数学学習の評価の枠組みの再検討

NAEPで の数学評価の枠組みは、 「数学の内容」 「数学的能力」 「数学的な力」か らなっている。 「数 学的能力」 には、 「概念的理解、手続 き的知識、問題解決」があげ られていて、 さらに「広い推論の 文脈、および数学的内容や思考の広 い視野に関連する数学的能力か らなる」 ものとして「数学的な力」

があげられている (3●

)参

照 )。 また、 TIMSSで の数学評価の枠組みは、「 内容」「行動的期待」「将 来への展望」か らなるとしている (30)参 照 )。

日本において、評価の枠組みは、数学の内容次元を中心 に語 られることが多いであろう。内容 とは

別の視点がないわけではないが

(長

崎栄三他、

1997)、

「数学的能力」や「数学的な力」 という点か ら

の分析を一層重視する必要がある。

(15)

アメ リカ合衆国における幾何 と代数の強調

近年 いろいろと議論 になっている観点別学習状況の評価や絶対評価 について も、上記の枠組みが参 考 になるであろう。 これ らに関 しては、基本的な考え方をどうとらえるか、運用 に耐え うる資料収集

はどうするか、等々、実践的な研究が望 まれる。

 

いろいろな評価問題の開発

例えば、幾何の問題例

2、

例 5や 、例

6、

31〜33の

ように、図をかいた り操作を想起 させて答え させたり、実際に切 ったり作 ったりして答えさせたりす るものがかなり目につ く。ペーパーテス トで 評価するに して も、実際に物を用意 して作製 させて評価するに して も、大いに学びたい問題例である。

8。   おわ りに

本稿 は、清水静海

(筑

波大学 )、 高平小百合

(玉

川学園女子短期大学 )、 筆者の 3名 によるアメ リカ 訪問時に得た資料に基づいて、アメ リカにおける幾何 と代数に関する数学評価の改善についてまとめ、

日本の算数 0数学教育への示唆を得 ようとしたものである。

その際の訪問先、および情報提供を していただいた方々は、次の①〜⑦の通 りである。 これ らは、

南イ リノイ大学 J.Becker教授 によって周到 に計画 された ものであ り、連邦 レベルでの教育改革や科 学教育政策を把握するのに十分なものであった。

 

連邦数学・ 理科教育研究 セ ンター、 ウィスコンシン大学内 ;National Center for Research in Mathematics and Science Education, Wisconsin University

ToRomberg所 長、T.P.Carpenter博 士

 

アイゼ ンハ ワー連邦情報 セ ンター、オハイオ州立大学内 ;Eisenhower National

Clearinghouse,(Э hio State University

L.Simutis所長、 G.Gordon副 所長、数学教育担当及び科学教育担当スタッフ

 

連邦教育省 ;Department of Education

L.P.Rosen(America Counts´ 事務局長 )、 及びスタッフ 2名

 

全米算数・ 数学教師協議会本部 ;Nttional Council of Teachers of Mathematics

.A.Thorpe、

及び多数のスタッフ

 

全米科学財団 ;National Science Foundttion

DoM.Spresser博 士

(数

学教育担当 )、 JoEvans博 士

(科

学教育担当 )、 及びスタッフ 2名

 

全米理科教師会 ;National Science Teachers Association G.F.Wheeler事 務局長

 

世界中の学校 ;Schools Around the World

C.FoStoel課

長、 M.Baker博 士、

C.」

。 Marshall氏

この場をか りて、お世話 になった多 くの方々に謝意を表 したい。

最後 に、 この資料収集期間中、特 に印象的であった点 について簡潔に述べてお く。

私がその折 りに痛感 したことは、次の 3点 であった。

・ 教育への莫大な資金投入

・ 利用者の立場に立 った情報化対応

・ 教員確保 と教員の質の向上

前 2者 は、 アメ リカの教育行政の システムに羨 ま しさを感ず るに十分であったが、第 3点 日は、 日 本にも間 もな く押 し寄せて こようとしているものであろう。

アメ リカにおいて、教員の不足 は大 きな問題である。 アメ リカ全土 における幼稚園か ら高校 2年 生

39

(16)

40 国 宗  

までの在学生徒数 は、

1995〜 1996年

540万

人であったものが

2005年

度 には

20%増

640万

人になると 予想 されている。 これにともなって、

2005年

までに相当数の教員の補充が必要 になる。 この教員不足 を補 うために、正規の教員養成プログラムを受 けていない者 に対 して も緊急の免許状を与えて急場を

しのいでいて、特に理数系教員の不足 は深刻であるという。

教員採用率が芳 しくない日本の現実 と比べてみると、卒業生を送 りだす側か らは羨ま しい状況であ る。だが、質の点か らすると、アメ リカが抱える事情 は深刻である。

今回のアメ リカ訪問先

3カ

所で、 日本での採用率の悪 さとともに、

2000年

4月 か らの教育職員免許 法改正が話題 になった。例えば中学校教諭 1種 免許状取得のために、教科に関する科 目が従来の

40単

位か ら今回

20単

位でよいことになったことを知 った彼 らは、異 口同音に、教員になりたい者がた くさ んいるのになぜ基準を緩 くするのか と問い返 してきた。教科専門が苦手ではいい授業ができないのは 当然であって、予想 される反応であった。

日本の教育の質 は、教師の質の高 さと教育に対する社会か らの期待が支えていたと私 は考えている が、 このことはいつまで持続するのであろうか。

なお、本研究 は、長崎栄三国立教育政策研究所総合研究官を研究代表 とする「高等学校の科学教育 改革 に関する総合的研究」

(平

11年

度科学教育研究費補助金基盤研究 (A))の 一環 として行われた。

また、本稿 は、その研究報告書第 5集 「 アメ リカの科学教育の現状 と課題」 に掲載 された筆者による 報告に大幅に加筆 してまとめたものである。

引用 0参考文献

UoS.Depart]ment of Education C)ffice of Educational lResearch and lmprove]ment ; TIMSS as

a Starting Point to Exanline Mathe】

matics Assessments:An ln‑lDepth Look at Geometry

and Algebra.」 une 1999.

国立教育研究所。小・ 中学生の算数・ 数学、理科の成績―第 3回 国際数学・ 理科教育調査国内報告書一。

1996。

東洋館出版社 .

国立教育研究所。中学校の数学教育・ 理科教育の国際比較 ―第 3回 国際数学・ 理科教育調査報告書 ―

.

1997。

東洋館出版社

.

国立教育研究所。小学校の算数教育・ 理科教育の国際比較 ―第 3回 国際数学 0理科教育調査最終報告

書 ―。

1998。

東洋館出版社

.

清水静海.ア メ リカ合衆国における教育改革の動向一連邦 レベルの教育改革プランを中心 として― . 桑原 隆研 究代表 ;全 米教 育 ス タ ンダー ド改革運動 と 日本 の教 育 改革 との比較研 究 .2000,

pp.81‑93.

Schoenfeld,A.  Learning to Think Mathematically : PrOblem Solving, Metacognition, and Sense Making in MatheIIlatics. 1992.NCTM.

長崎栄三研究代表 .算 数・ 数学科 カ リキュラムの改善 に関する研究。1997.国 立教育研究所 .

長崎栄三研究代表.ア メ リカの科学教育の現状 と課題 .高 等学校の科学教育改革に関する総合的研究・

研究報告書第 5集

.2001.

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