長崎大学教養部紀要(自然科学篇)第20巻第1号15‑26 (1979年9月)
平尾台石灰岩上の蘚苔類群落および 土壌カルシウム量との関係
中西こずえ
(昭和54年7月25日受理)
Bryophyte communities on limestones in Hiraodai
Kozue NAKANISHI
Abstract
The investigation of bryophyte vegetation on limestones in Hiraodai, northern Kyushu, Japan has resulted in the recognition of thirteen communities. They were (A) Grimmia pilifera comm., (B) Dumortiera hirsuta comm., (C) Thuidium bipinnatulum comm., (D) Conocephalum conicum comm., (E) Myuroclada maximoviczii comm., (F) Hypopterygium japonicum comm., (G) Neckeropsis nitidula comm., (H) Homalothecium laevisetum comm., (I) Thamnobryum sandei comm., (J) Cratoneuron filicinum comm., (K) Taxiphyllum cuspidifolium comm., (L) Claopodium nervosum comm. and (M) Molendoa
sendtneriana comm.The chemical analysis of soils showed that the total calcium content differed with the bryophyte communities studied (Table 2, Fig. 2). Community (A), (B), (C) and (G) were confined to soils of low calcium content below 5.1% and Community
(L) and (M) were found on soils of high content over 23.1%
まえがき
石灰岩上には特有な醇苔類が生育する.わが国でも高木(1953, 1977) ,服部(1955) ,斉藤 (1956) ,永野・野口(1960) ,永野(1962, 1964) ,梅津(1973a, 1973b)によって主要 石灰岩地域の醇苔類の研究が行われ,そのフロラ上の特徴が明らかにされてきた.しかし,い っぽうにおいて,その群落学的研究は少く,平尾台石灰岩上の蘇苔類群落に関する梅津(1973 b)の研究は数少ないもののひとつである.また以前より,好石灰岩蘇苔類の存在が知られ, その原因の一つが石灰岩の化学成分によるであろうと考えられている(服部1955).しかし, その化学成分と植物との関係は明らかにされていない.このように,石灰岩上の帝苔類につい ては,その群落や環境条件に関して未知のところが多く残されている.これらの空自をいくら かでもうめる目的で,筆者は平尾台地域における石灰岩を基物とする蘇苔類群落について,罪 一にその種組成を明らかにして群落分類を行ない,第二にそれらの蘇苔類群落の土壌中のカル
*日本植物学会第42回大会(昭和52年,九州大学)で講演,その後追加・修正したO
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中西こずえシウム含有量を測定して,群落と土壌の化学的条件との関係を研究した.その結果,いくつか の新知見を得たのでここに報告する.
研究に際して指導と校閲賜った,長崎大学伊藤秀三教授,採集品の一部を同定下さった,国 立極地研究所神田啓史博士に深く感謝する.また,長崎大学平岡教子氏にカルシウム定量分析 の技術的指導をいただき,本稿の関連部分に目を通していただいた.感謝の意を表する.
調査地および調査方法
平尾台は北九州市小倉区の南部に位置しており,南北IKn,東西2Knの長方形の高原面であ る. (Fig. 1).台面は4段の階段地に分かれるが,全体としてSEに傾斜している.北衷部 が貫山塊に通っているほか周辺部は400前後の急斜面に囲まれた孤立カルスト高原をなしてい る.標高は平尾集落一帯が最も低くて360mであり,南北両端は600mを越えている.台地は平 尾台石灰岩と呼ばれる結晶質石灰岩より構成されており,そこには大小166個のドリーネが存 在する(浜田1952).
今回調査した地点は, 11か所である(Fig. 1の1‑11の地点).現地調査は1974年と1975年に 行った.群落調査には15cmX15ォの方形区を用いたが,群落の広がりに応じて2QcmX20ォhに拡 大した.資料数は合計124であった.現地で同定し得る種または属の優占度と群皮をBraun
‑Blanquet (1964)に従って記録し,同時に土壌を採集した.現地ですべての種を同定する ことは困難なので,方形区内の植物をすべてはぎとり持ち帰って,顕微鏡下で確認を行った.
Fig. 1. Outline map of Hiraodai, northern Kyushu, Japan, showing study sites, 1 to ll.
1. Oana, 2. Hirotani, 3. Nakatoge, 4. Yogunbaru, 5. Mejirodo, 6. Fukiagetoge,
7. Ninjinkubo, 8. Kagaribibonchi, 9. Hiraosh己raku, 10. Ojikado, ll. Obanabatake.
Table 1. Synthesis table for bryophyte communities on limestones in Hiraodai
A. Grimmia pilifera community. B. Dumortiera hirsuta community. C. Thuidium bipinnatulum community.
D. Conocephalum conicum community. E. Myuroclada maximoviczii community. F. Hypopterygium japonicum community. G. Neckeropsis nitidula community. H. Homalothecium laevisetum community. I. Thamnobryum sandei community. J. Cratoneuron fincinum community, K. Taxiphyllum cuspidifolium community. L.
Claopodium nervosum community. M. Molendoa sendtneriana community.
Communi ty
Number of Quadrats
Average number of component species
Differential species Grimrma pi nfera Dumortnera hirsuta
Thuidium bipinnatulum Conocephalum comcum Myuroclada maximoviczii Hypopterygium japomcum Heteroscyphus bescherel lei Neckeropsis mtidula Bryhma sp.
Homalothecium laevisetum Porella densifolia var. fallax Bryum capillare
Eurohypnum leptothallum Thamnobryum sandei
Palamocladium macrostegium
Plagiochila acanthophylla subsp. japonica Cratoneuron fi ncinum
Taxiphyllurn cuspidifolium Claopochum nervosum Molendoa sendtneriana
Companions
Eurhynchium polysticturn Taxiphyllurn taxirameum Fissidens cristatus Thindiurn kanedae Anomodon viticulosus Anomodon giraldii Neckera pusilla
PIagiomnium trichomanes Fissidens adelphinus 弓ryum argenteum Herpetineuron toccoae Brachythecium plumosum Plagiochila ovanfolia
Entodon sulnvantii war. versicolor Rhynchostegium pal ndifoilurn Brachythecium populeum
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Other companions. In A: Dozya japonica, I; in C: Duthiella flaccida, I; in D: Plagiomnium vesicatum, II, Plagiochila sermdecurrens, I, Plagiomnium maximoviczii, I, Heteroscyphus planus, I, Philonotis sp., I; in F: Claopodium aciculum, I, Radula kojana, I, Metzgeria conjugata subsp. japonica, I; in G: Campylium chrysophyllum, I; in H: Barbula unguiculata, r.
Frullania muscicola, I, Okamuraea brachydictyon, I, Hypnum calcicolum, I, Hyophila propagulifera, I, Haplohymenium pseudo‑
triste, r, Ceratodon purpureus, r, Hypnum oldhamii, r; in L: Lejeunea japonica, I, Tortella japonica, I; in M: Thamnobryum
plicatulum,I.
平尾台石灰岩上の蘇苔類群落および土壌カルシウム量との関係
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この同定結果によって,優占度,群皮に修正したものもある.群落抽出のための組成表の操作 はEllenberg (1956)に従った.学割ま岩月・水谷(1972)によった.土壌の分析方法につ いては後述する.
群落の種類と生態
本研究では下記の13群落を確認した(A‑Mは, Table lのA〜Mに対応する).
A. Gnmmia ♪ihfera群落 B. Dumorhera hirsuta群落 C. Thuidium bipinnatulum群落 D. Conocephalum conicum群落 E. Myuroclada maximoviczii群落 F. Hypopterygium japonicum群落 G. Neckeropsis nitidula群落 H. Homalothecium laevisetum群落
I. Thamnobryum sandei群落 J. Cratoneuron fillcinum群落 K. Taxip毎,Hum cuspidifolium群落 L. Claopodium nervosum群落 M. Molendoa sendtnenana群落
これらの群落の種組成,群落の形成,分布,立地等は下記の通りである. (地名のあとの数 字はFig. 1の地名番号である)
A. Gnmmia pihfera群落
Grimmiapiliferaを区分種とする群落である.群落の高さは1cm程度であり,クッション状 になるBryum argenteum, Brachythecium plumosumを伴うこともあるが,平均出現種数1・4 で多くの場合G. ♪iliferaのみからなる純群落である.調査地域内では,かがり火盆地(Fig. 1 の番号8)のドリーネ入口,半群原(同4)の岩上に出現していた.この群落は酸性岩上にほ とんど土壌を伴なわない状態で出現する群落であり(中西・鈴木1977),石灰岩地城からは今 回はじめて見出された.平尾台においては石灰岩土ではあるが,ほとんど石灰岩の砂粒・細れ きを含まない腐植土上に発達していた.腐植土の堆積が石灰岩の影響をやわらげたものと考え
られる.
B. Dumortiera hirsuta群落
Dumortiera hirsutaを区分種とする群落である.幅1‑1.5c;仇の葉状体のD. hirsutaが Heteroscyphus bescherelleiあるいはTaxiphyllum taxirameumを伴って出現する.平均出現 種数は2.調査地域内では,大穴ドリーネ(Fig. 1の1)内のNW方向の岩壁の下部にのみ みられた.そこは上空がヤブニッケイに被われており,すぐ下を水が流れている事もあって陰 湿な立地であった.興味あることに,基岩は石灰岩壁に混った砂岩であった*.大穴ドリーネ
の底の直下には,田川変成層(古生層)があり,大穴ドリーネ下部は,砂岩の湿りあった石灰 岩壁となっている.そのために石灰岩地には少ないDumortiera hirsuta群落の生育が可能と
なったと考えられる.
*松本徳夫教授(山口大学)の同定による。
20
中西こずえC. Thuidium bipinnatulum群落
Thuidium bipinnatulumを区分種とする群落である.細糸状の蘇類であるT. bipinnatulum がFissidens cristatus, Eurhynchium polyshctum, Duthiella flaccida, Plagiochila ovalifolia を伴って厚さ0.5‑lewのマットを形成している.平均出現種数は3. NまたはNW方向の岩 上で傾斜600から垂直な面まで出現している.人じんくぼ(Fig. 1の7),牡鹿洞(同10),辛 尾集落(同9)で認められた.牡鹿洞の出現地点はドリーネ底から6m下ったところで陰湿な 立地であった.本来T. bipinnatulumは石灰岩地域に少ない.この群落の出現地点はすべて, 平尾台では特異な八女粘土層がおおっている地域である(溝塩・畑中1973).基岩は石灰岩で あるが,岩上に粘土層由来の土壌が堆積すれば(わずかながら石灰岩の細れきを含んではいる が)異なった立地となる.
D. Conocephalum comcum群落
Conocephalum comcumを区分種とする群落である.葉状苔類であるC. conicumがつねに 被皮70%以上で出現する.わずかな被皮でHeteroscyphus ♪lanus, Plagiomnium vesicatum, Plagiomnium maximovicziiを伴う.平均出現種数は3.大穴(Fig. 1の1),牡鹿洞(同10)
そばのドリーネ内のいずれも岩壁上で見出された.岩壁はNWまたはW方向であり,傾斜は 600程度であったC. comcumは人家付近から亜高山帯まで普通にみられ,岩上にかぎらず土 上にも生育する.この群落は広島市内の花南岩の石垣からすでに報告されている(中西・鈴木 1977).服部(1955)によると北海道アポイ山西北側のメナシエサマンベツの石灰岩上にも也 現する.大穴の群落は,土壌に石灰岩の砂粒をあまり含まないが,牡鹿洞のドリーネ岩壁では, 石灰岩の砂粒・細れきを多く含んでいた.これらの事から,この群落は基岩に対する適応範囲 がひろく,湿潤な立地であれば,基岩に関係なく生育可能な群落であると言える.
E. Myuroclada maximoviczn群落
Myuroclada maximovicziiを区分種とする群落.この種は長さ2 ‑4 cmの枝を出し,黄緑色 でやや光沢のあるマット状群落を形成するFlssidens cristatus, Anomodon viticulosus, Taxiphyllum taxirameumをわずかながら伴うが,平均出現種数1.8と純群落に近い.目白洞 (Fig. 1の5) ,大穴(同1)のW方向の岩壁上に見出されたGrimmiapilifera群落と同 じくかなりの腐植土を含んでおり,直接石灰岩上には生育しない.しかし, Grimmia ♪ilifera 群落よりも日陰を好む傾向がある.
F. Hypopterygium japonicum群落
Hypopterygium japonicum, Heteroscyphus bescherelleiを区分種とする群落である. H.
japomcumが高さ1 ‑1.5cmで樹状をなし,その下部にうろこ状のH. bescherelleiが生育して いる.平均種数4.8で上記2種のほかにFissidens adelphinus, Eurhynchium ♪olystictum, Claopodium aciculumを伴う.人じんくぼ(Fig. 1の7),広谷岩壁(同2),平尾集落(同9) 内のNWまたはNの方向の岩上,岩壁上で生育する.永野(1962)によるとH. japonicum は石灰岩を好む傾向があり,秩父山地の石灰岩壁では,腐植土を伴って出現している.平尾台 の場合は,人じんくぼでは石灰岩上に直接生育しているが,平尾集落内では厚い堆積土があり, 土壌環境に対する適応簿囲は広い.広谷ドリーネ内岩壁は後者に近い立地であった.
G. Neckeropsis nitidula群落
Neckeropsls nitidulaとBryhnia sp.を区分種とする群落である.つねにN. nitidulaの被
度が高いので,群落全体が淡黄色で光沢があるAnomodon giraldii, Fissidens cristatus,
平尾台石灰岩上の蘇苔類群落および土壌カルシウム量との関係
21
Thuidium kanedae, Taxiphyllum taxirameumを伴う.平均出現種数は4.5である.目白洞 (Fig. 1の5)での1か所および大穴(同1)のNおよびNW方向の岩壁上で認られた.
Grimmia ♪ilifera群落Myuroclada maximoviczii群落と同じく腐植土の多い立地であるが, これら2群落よりも空中湿度が高く,雨天の際には地表に流水もあるような立地に限られる.
H. Homalothecium laevisetum群落
Homalotkecium laevisetum, Porella densifolia var. fallax, Bryum capillare, Eurohypnum leptothallumを区分種とする群落である.平尾台ではもっとも普通にみられる群落である.厚 さ1‑2cmの密なマット状になっている.ほかにはAnomodon giraldii, Herpetineuro〝 toccoae, Thuidium kanedaeの出現頻度が高い.平均出現種数は3.8.かがり火盆地(Fig. 1の8) , 人じんくぼ(同7),広谷(同2),牡鹿洞(同10),平尾集落(同9)に出現している.岩 石の傾斜方向はS, SW, NNWで,水平から垂直まで出現可能である.陽当たりが良く,や や乾燥した環境で,多少土壌を含んだ立地に発達する.
I. Thamnobryum sandei群落
Thamnobryam sandei, Palamocladium macrostegium, Plagiochila acanthophylla subsp.
japonicaを区分種とする群落である. Homalothecium laevisetum群落と同じく,平尾台にお いては普通にみられる群落である.区分種のほかにFissidens cristatus, Thuidium kanedae, Neckera pusillaが出現する.平均出現種数は3. NあるいはNW方向の岩上に出現しており, Homalothecium laevisetum群落よりも日陰を好む群落である.かがり火盆地(Fig. 1の8) , 人じんくぼ(同7),広谷(同2),中峠(同3),目白洞(同10),平尾集落(同9),吹 上げ峠(同6) ,尾花畑(同11)で見られた.
J. Cratoneuron filicinum群落
Cratoneuronfilicmumを区分種とする群落である.この種の茎は立ちあがり5‑7cmの 高さになる.平均出現種数は3.3である. Eurhynchium polystictum, Thuidium kanedae, Neckera pusillaが同時に出現する.平尾台における分布は限られており,牡鹿洞(Fig. 1の 10)の直下2m, 6mの地点でのみみられた.神田(1975)によれば,この種は湿潤な環境で あれば,岩上・土上・市街地のコンクリ‑ト壁にも出現する.牡鹿洞の2mの深さのところで は,腐植土がたまり石灰岩の影響は少ないが, 6〝iの深さの地点では腐植土は少く,石灰岩の 影響を受けやすい立地であった.
K. Taxiphyllum cuspidifolium群落
Taxi♪hyllum cuspidifoliumを区分種とする群落である.この種は光沢のある密なマット状 に生育する.そのほか, Anomodon giraldii, Thuidium kanedaeが出現している.大穴(Fig.
1の1) ,平尾集落(同9)で認られた.平均出現種数は2.8である. T. cuspidifoliumは石 灰岩地域に多い種であり,その土壌にかなりの石灰岩の砂粒・細れきを含んでいる.
L. Claopodium nervosum群落
Claopodium nervosumを区分種とする群落である.繊細な糸状をなすC. nervosumが薄い
マット状の群落を形成する.平均出現種数は2.4である. Taxi♪hyllum taxirameum, Anomodon
giraldiiを伴う.目白洞(Fig. 1の5) ,大穴(同1) ,牡鹿洞(同10) ,平尾集落(同9)
に分布する. WまたはN方向の岩壁であり, 70c以上の傾斜があるC. nervosumについては,
永野(1962) ,梅津(1973b)の石灰岩地域からの報告があり,好石灰岩性群落である.
22
中西こずえM. Molendoa sendtneriana群落
Molendoa sendtnerianaを区分種とする高さ数nmから1.5 cmの群落である. M. sendtneriana の被度が高いことによって,群落全体が灰緑色から青味がかって見える.平均出現種数2.3で, Eurhynchium polystictum, Taxilhyllum taxirameumを伴い,限られた面積ではあるが,広谷
(Fig. 1の2) ,大穴(同1),目白洞(同5)の陰湿な環境に見られた.この群落の特徴は, 土壌全体が白色になるほど石灰岩の砂粒が混っている立地に生育していることである.
以上に記載した諸群落を梅津(1973b)と比較すると,同一と見なしうる群落(Homalothecium laevisetum群落Molendoa sendtnenana群落) ,本調査では認めえなかった群落(Rhyncho‑
stegium ♪allidifohum植物社会, Seligeria pusilla植物社会Fissidens grandifrons var.
planicaulis植物社会)などがあるGrimmia pihfera群落Dumortiera hirsuta群落, Thuidium bipinnatulum群落Myuroclada maximoviczh群落, Cratoneuron filicinum群落は 新しくつけ加えた群落である.また本調査から梅津(1973 b)のNeckeropsis nitidula植物 社会は, Neckeropsis nitidula群落およびClaopodium nervosum群落に, Thamnobryum sandei‑Bryhnia sp.植物社会はThamnobryum sandei群落とConocephalum conicum群落と Hy♪opterygium japonicum群落に細分すべきものだと考える.
カルシウム定量分析 A.方法
石灰岩上帝苔類群落の組成は,その土壌の含む石灰岩の細粒,腐植土の堆積などに影響をう ける.基岩が石灰岩であっても,腐植土が厚く堆積した場合はその影響がうすれ,石灰岩を好 まない蘇苔類の侵入も可能となる.そのうえ平尾台のように,火山灰由来の八女粘土層が石灰 岩をおおい,花園岩層・古生層が石灰岩と共存しているような地域では,石灰岩性群落は把握 しがたい.そこで筆者は,石灰岩の主成分であり,また蘇苔類の生育と直接関係する土壌中の カルシウム量を定量した.含有カルシウム量を定量する方法は,現在三通りが考えられる.堊 量法(シュウ酸塩法) ,容量法(EDTA法) ,原子吸光法である.それぞれについて検討し た結果,方法が簡便で少量の土壌でも正確な値が得られる容量法で定量することにした.定量 分析には日本化学会(1976)の手引書を参考にした.定量操作の手順は下記の通りである.
群落調査のときに持ち帰った土壌をよく風乾する.その中の植物遺体の細片を顕微鏡下でで きる限り取り除く.さらに径2mが以上の細れきを取り除く.乳鉢でさらに細くすりつぶして均 一化し,その50^を試料とする.一つの調査地点(同一乳鉢内)から3試料を作る.滴定平均 値をその地点の値とした.まずこの試料に蒸留水を加え全体を50m/にする.予備実験でEDT A標準溶液の当量点までのおよその量を求めておき,当量直前まで0.01M EDTA槙準液を 加える.次に8M KOH溶液をiml, 5^KCN溶液2mi,固形アスコルビン酸を少量加え,
さらにトリエタノ‑ルアミン溶液(1+4) 5耽Eを加えて放置し, Mgを沈殿させる.次にN N指示薬(Naclで100倍に希釈したもの)をミクロスパーテル一杯加え,ひき続き0.01M EDTA標準液で滴定する. ‑群落につき最高9地点の土壌,全体で64地点の土壌を分析し た.
B.結果
実験結果はTable 2, Fig. 2に示す.土壌中のカルシウム含有量と群落とを比較すると, いくつかの特徴が明らかになった. Grimmia ♪ilifera群落(土壌中の総カルシウム含有量1.2
‑1. '以下同様に示す), Dumortiera hirsuta群落(1 ‑5‑2.ァ96), Thuidium bipinnat〝lum
Table 2. Found and weight percentage of total calcium content in soils (50 mg)
C。mmunity呂gTd冒霊ght centage
Gnmmia pilifera comm,
Dumortiera hirsuta comm.
Thindiurn bipinnatulum comm.
Neckeropsis nitidula comm.
Myuroclada maximoviczii comm
Thamnobryum sandei comm.
Homalothecium laevisetum comm.
Hypopterygium japomcum comm.
Cratoneuron filicinum comrn.
Taxiphyllurn cuspidifolium comm,
Conocephalum corncum comm.
Claopodium nervosum comm.
Molendoa sendtnenana comm.
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平尾台石灰岩上の蘇苔類群落および土壌カルシウム量との関係
Comtiun i ty Molendoa sendotneriana Coitm.
Claopodium nervosum Comm.
Conocephaium conicum Comm.
Taxiphyllurn cuspidifolium Comm.
Cratoneuron filicinum Comni.
Hypopterygium japonicum Comm.
Homalothecium Taevisetum Cortm.
Thamnobryum sandei Comtn.
Myuroclada maximoviczii Comm.
Neckeropsis nitiduia Comm.
Thuidium bipinnatulum Comm.
Dumortiera hirsuta Connn.
Grimmia pilifera Comm.
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20 Total calcium content
Fig. 2. Range of total calcium content in soils of bryophyte communities in Hiraodai.
群落(2.8‑3.3^) , Neckeropsis nitidula群落(4.1‑5.1#)の4群落は,土壌中のカルシ ウム量が他の群落と比べて低く,嫌石灰岩性群落(あるいは非耐石灰岩性群落)と考えられる.
それらに対してMolendoa sendtneriana群落(27.2‑%¥‑¥%) , Claopodium nervosum群落 (23.1‑31.330は好石灰岩性群落(あるいは耐石灰岩性群落)であろう.土壌中のカルシウ ム量の比較から, Thamnobryum sandei群落(2.0‑15‑5^) , Homalothecium laevisetum群落
(2.4‑¥Z‑296 ̄) , Myuroclada maximoviczn群落(7.7‑10.8#)は前者の傾向をもち, Taxiphyllum cuspidifolium群落(9.6‑21.630はやや好石灰岩性の傾向がある.いっほう Conoce♪halum comcum群落(14.1‑36‑7^) , Cratoneuron filicinum群落(4‑1‑31.4&), Hypo♪terygium japomcum群落(0.6‑31.0#)の各群落は土壌カルシウム含有量の低い土壌 から高い土壌まで幅広く生育している.服部(1955)も指摘しているように,石灰岩地域で優 勢な辞書類には,好石灰岩性と耐石灰岩性の2通りがある.群落についても同様であろう.倭 勢な群落がそのどちらであるか,またカルシウム含有量の少い土壌に生育する群落が嫌石灰岩 性群落なのか,非耐性群落であるかは,こんど群落構成種の体内カルシウム量の測定や,特定 培地での栽培等で解明してゆきたい.
摘要
1.北九州市小倉区の南部に位置する平尾台の石灰岩上に生育する蘇苔類群落を調査した結 果, 13群落を認めた.各群落の種組成,形状,分布および立地について述べた.
2.各群落土壌中のカルシウム量を容量法(EDTA法)を用いて定量分析した. Grimmia pilifera群落Dumortiera hirsuta群落, Thuidium bipmnatulum群落, Neckeropsis nitidula 群落の4群落はいずれもカルシウム含有量が少く,嫌石灰性群落と考えられる. Thamnobryum sandei群落Homalothecium laevisetum群落Myuroclada maximoviczii群落にもその傾向が ある.それに対して, Molendoa sendtneriana群落Claopodium nervosum群落は好石灰岩性 であり, Taxiphyllum cuspidifolium群落もやや好石灰岩性であるConoce♪halum conicum 群落, Hypopterygium japonicum群落Cratoneuron filicinum群落はカルシウム含有量に幅 があり,石灰岩に対する適応範囲が広い.
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中西こずえ文献
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