実験レポート
静電界中に置かれた誘電体の回転
西 山 宗 弘 清 水 広 行
ま え が き
電界中における誘電体の回転現象は,電界のもつエネル ギーが電磁界のそれと比べてはるかに少なく,エネルギー 利用の観点では,自ずと限界がある。しかし,この回転現 象は,電圧に対する応答性がよいという利点をもってお
り,電圧判別や微少トルクのサーボモ一円タとしての応用面 が考えられ,また構造上簡単な装置で回転が得られる利点
もある。
筆者らは,静電界におけるこの現象について資料を得る ための実験と検討を行なってきたが,そのあらましをここ に述べる。
実 験
電極間に円筒形回転子をおき直流電圧を印加する。電極 と回転子との間隙および回転子の誘電率をε1,ε2導電率 をσ1,σ2とすると,回転子表面には
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に従って,正,零,負の蓄積電荷を生じ,この電荷と電界 との間に反棲力,中立,吸引力が作用し,回転子に機械的 または電気的アンバランスがあると回転子は自動的に回転 する。
σ/εは印加電圧,温度などの関数であるので,それを変 化させてトルクの大きさと方向を変えることができる。
回転子が回転中に電極闇を流れる電流1は静止の時に流 れる電流loより大きく,したがってAI=1−10,印加電 圧をVとするとPo=Vdlは,近似的に回転によって放出 されるエネルギーを表わす。Pi=Vlは装置の入力を意 味するからP・/Pi嵩ηを考えればこれは回転エネルギー に変換される入力の割合を示すことになる。
筆者らは,ηの大きさを求めるため,媒質の種類,電極 構成,回転子の種類など変化し第1図の装置で実験した。
直流電源はケノトロンとコンデンサとで得た。なおこの装 置では自起動しないので,回転子を動かして起動した。電 極間隔はいずれも12mmである。
回転子の周囲の媒質は適度な導電率をもつ液体または気 体でよいが,入手し易く,扱い易いので主としてキシレン またはベンゼンにエチルアルコールを混入して使用した。
実験結果の概要を次に示す。
1,媒質としてキシレンあるいはベンゼン(いずれもエチ ルアルコールを混入し,導電性を持たせたもの)を使用 するとよく回転し,酪酸や,液状パルミチン酸でも回転 数は少なくなるが安定な回転が得られた。使い古した絶 縁脳中でもゆっくりと回転が持続した。
2.回転子を変化した場合の特性を第2図に示す。媒質は アルコール混入キシレン電極は平板対平板(24.5mmx 160mm×1mm)を使用した。回転子を第1表,特性の 実測値を第2表に示す。
中空ガラス棒に導体を入れた場合,回転は広い電圧範 囲で安定し,回転数,η共に他の回転子の場合より大で 印加電圧の上昇に対して直線的に増加する。これに対し てガラスのみの回転子では,回転数,η共に直線からず れ,飽和のきざしを見せてくる。
電極に面した回転子の表面に電荷が蓄積され,180。回 即してその電荷を放出するが,この蓄積および放出に要 する時間が電極前面通過時間に比べて短い閲は回転数が 増加し,等しいところでほぼ最:大になるものと思われ る。
3,電極構成による特性を第3図に示す。媒質はアルコー ル混入キシレン,回転子は安定な回転が得られるアルミ 箔を内張りした中空ガラス棒である。
棒4極については回転子の周囲を4等分した位置に配 辞し,対角線上の二つの電極を同電位とした。
第3図では,棒よりも平板の方が回転数は大きい傾向 にあるが,ηには一定の傾向が見られない。そこで電気 力線が回転子に有効に作用するように電極の幅を10mm にして測定すると,回転数,ηとも大きな値が得られ た。それを第3図に鎖線で示し,実測値を第2表※印で 示した。回転数は増し,ηは40〜50%を得たが,このη の値は電極の形状や配置を考慮すればさらに大になり得 ると思う。
4.回転は媒質の導電率が大き過ぎても小さ過ぎても起こ らないのでその特性を求めるため,第3図に示す装置を つくり測定した。この装置では軸受けの部分に計器の指 針の軸受け(ピボットなど)を使用して,回転部の摩擦を 少なくした結果,自起動したが,その方向は一一定しない。
電流Ioと回転数nを電圧をパラメータにしてプロッ トしたのが第5図である。電流はキシレンに混入する 一235一
津山高専紀要(第2巻 第2号)
エチルアルコールの量を変えることで変化させたが,明 らかに回転数は極大値を有し,その立ち上り部分ではn は大きく変化することがわかる。
本実験を行なうに当って,卒業研究として実験に当られ た本校学生下西二郎君(現東芝勤務)に感謝します。
あ と が き
静電界中のこれらの回転の機構は文献(2)(5)にも明らかで あるが,その特性についての文献は比較的少ない。前述し たように電界のもつエネルギーは電磁界のもつエネルギー に比べてはるかに少ないが筆者らの実験中にも電圧に対し て回転数が直線的に変化したり,また高速回転中に急に逆 転する場合や,起軌停止を急激に行なう場合も確認でき た。高電圧を必要とするのが難点の一つであるが,装置や 条件を整えて諸特性を明らかにすることは興味深く思われ
る。
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参 考 文 止
別元・・応物25,170(1956)
安宅,野村:電学誌79,277(昭34)
野村,本田:電学誌82,802(昭37)
加藤:計測と制御3,409(昭39)
岡野:強物37,661(1968)
高分子学会:静電気ハンドブック,地人書館
(昭和44年10月13日受理)
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第1図
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第2図電圧対回転数およびη特性
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第3図電圧対回転数およびη特性
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第1表 使用した回転子の種類
回 転 子 質量〔gJ 長さ圖陣径匝
中 空 ガ ラ ス 棒
? ガラス棒にアルミ箔内張
? ガラス棒に希硫酸封入
¥ 実 ガ ラ ス 棒
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第4図
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西山宗弘・清水広行 静電界中に置かれた誘電体の回転
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第5図 電流対回転数特性 第2表 回転子を変えた場合の実測値
電極:平板対平板(幅24.5mm) 媒質:キシレン+エチルアルコール
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