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著者 千葉 義信, 黒川 貞生, 森田 恭光

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(1)

タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力測定 について ―日本との比較(第2報)―

著者 千葉 義信, 黒川 貞生, 森田 恭光

雑誌名 明治学院大学教養教育センター紀要 : カルチュー

ル = The MGU journal of liberal arts studies : Karuchuru

巻 3

号 1

ページ 223‑231

発行年 2009‑03‑24

その他のタイトル The Physique and Physical Fitness Tests of Thai Students in Udon‑Thani Prefecture: The Second Report in terms of the Research in Comparison with Japanese Children

URL http://hdl.handle.net/10723/3220

(2)

体格・体力測定について

日本との比較(第

2

報)

千 葉 義 信 黒 川 貞 生 森 田 恭 光

は じ め に

諸外国の体格・体力測定に関する情報について,

先進諸国の情報は比較的容易に得ることができる が,開発途上国の情報を見出すことは大変困難で ある。特に東南アジア諸国においては,我が国の ような体格・体力についての統一資料そのものが 存在しない国も多いようである。これらの国々で は,予防医学の考え方が広まっておらず,それに 伴い体育・スポーツ活動の普及が遅れている。体 育科教育における基礎資料となる対象児童・生徒 の体格・体力測定に関する資料はおろか,測定を おこなう十分なシステムが整っていないのが実情 である。開発途上国への援助活動は,様々な国や 組織によって進められているが,「体育・スポー ツ教育」分野は援助機関等の掲げる援助対象項目・

開発重要項目になり難く他分野の援助活動より遅 れているのも実情である。

東南アジア諸国の体格・体力測定に関して,千 葉ら1),8),9)がカンボジア国での調査から,体格に 関するパーセンタイルグラフを作成したとともに,

体力測定に関する評価基準値を算出して報告した。

さらに,鍋谷ら14が日本国児童との比較をおこな

い,カンボジア国児童・生徒の体格は日本の同世 代の者と比較して「身長において,10cmから15 cm程度低く,体重において7kgから10kg以上 低い値であった」と報告した。また,桜井15がタ イ国に関しての「スポーツ青少年体力テスト(運 動適性テスト)」を紹介している。内容は立ち幅 跳び,上体起こし,腕立伏臥腕屈伸,シャトル走,

5分間走であり「その結果を全国レベルでの検討 や標準値の策定などは現在までおこなわれていな いようである」とした。本報の対象者(後に記載)

に関して,千葉3)~6は体格・体力測定の結果を世 代別,体格別等に分類し比較してきたとともに,

日常生活と体力との関係について報告してきた。

さらに,これらの情報量の豊富な我が国(日本)

との比較をおこない報告した(以下前報)2。 本報は,タイ王国での体格・体力測定の結果を日 本のそれらの値と比較して,調査校(後に記載)

での体育科教育の基礎資料充実を目的とするもの である。

方 法 1 対 象

タイ王国(1ウドーンタニー県(2(Figure1:

(3)

Udon-Thani)cw-school(3(以下,調査校)に通 学する2006年度,2007年度,2008年度の12歳 から17歳の女子,男子生徒であった。2006年度

(女子:147名,男子:184名),2007年度(女子:

115名,男子143名),2008年度(女子:139名,

男子:142名)。Table1にその身体的特徴を示 した。

2 測定項目

1) 体格測定項目

身長,体重を計測して,これらを基に体格指数 BMI(bodymassindex:kg/m2)を算出した。

2) 体力測定項目

基礎運動能力を十分に反映する種目とともに,

測定機材の不十分な調査校において測定可能と考 えられる種目として以下の6種目を選定して,日

本の文部科学省「新体力テスト」の規定12に準 じて実施した(Figure2)。

① 上体起こし:筋持久力要素測定(Sit-up)

② 長座体前屈:柔軟性要素測定 (Trunk- flexion)

規定の測定機材を段ボール,または厚紙に て作成した。

③ 反復横跳び:敏捷性要素測定(Side-step)

④ 50m走:瞬発力・走力要素測定(50me- ter-dash)

⑤ 立 ち 幅 跳 び : 瞬 発 力 要 素 測 定 (Long- jump)

⑥ 握力:筋力要素測定(Grip-strength) スメドレー式握力測定機器(竹井機器)を 日本より持参した。

3 調査期間

2006年8月7日から同年同月18日,2007年8 月10日から同年同月22日,2008年8月4日か タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力測定について

Table1 Characteristicsofthesubjects

(yearAge) Height

(cm) Weight

(kg) BMI

(kg/m2) Girls・n・401・ 14.0±1.6 155.2±6.1 47.3±8.9 19.6±3.1 Boys・n・469・ 14.0±1.7 160.7±9.1 50.9±10.3 19.6±2.9 Mean±SD,BMI:bodymassindex

Figure2 StateofSit-upmeasurement

■:Capital○:Localcity

Figure1 InvestgationareainThailand

(4)

ら同年同月15日であった。

4 測定の流れ

調査校教員の協力を得るために「新体力テスト 実施要項」12を参照して,現地公用語(タイ語)

での「体力測定実施マニュアル」7を独自に作成 し測定種目の理解を求めた。測定に際しては事前 に調査校教員と実技を交え注意事項等を確認した。

詳細な測定の流れは調査校教員より生徒へ伝えら れたとともに,測定の趣旨と内容を十分に説明し 同意を得た。

5 分析方法

調査校での体格・体力測定の結果を日本の文部 科学省「平成18年度体力・運動能力調査」13(以 下,日本)と比較・検討した。調査校の値は2006

年度,2007年度,2008年度の同年齢の者を合計 してその平均値とした。

6 統計処理

調査校と日本の値との平均値間の統計的有意差 検定には,平均値の差の検定(対応のないt-test) を用いた。なお,有意差については5%水準で判 定した。

結果および考察 1 体格測定

Figure3からFigure6に調査校の生徒と日本 の同世代の生徒の身長と体重を男女別に示した

(調査校の値をcw-school,日本の値をJapanと して示した)。

Figure3 Thegrowthtrendoftheheight:Girls Figure4 Thegrowthtrendofweight:Girls

Figure6 Thegrowthtrendofweight:Boys Figure5 Thegrowthtrendoftheheitgt:Boys

(5)

女子の身長では12歳から16歳間で調査校と日 本の値の両者間に有意差は認められず,17歳間で 日本の値が調査校の値を有意に上回った・p・.05・。 体重では,12歳から14歳間,16歳では調査校と 日本の値の両者間に有意差は認められず,15歳,

17歳で日本の値が調査校の値を有意に上回った

・p・.05・。男子の身長では12歳で調査校と日本 の値の両者間に有意差は認められず,13歳から 17歳間で日本の値が調査校の値を有意に上回っ た ・p・.05・。体重では,12歳,13歳では調査校 と日本の値の両者間に有意差は認められず,14 歳から17歳間で日本の値が調査校の値を有意に 上回った ・p・.05・。

以上の結果から体格について考察すると,女子 の身長では17歳で日本の値が調査校の値を有意 に上回り,その他の年齢でも有意差が認められな いものの日本の値が調査校の値を上回った。調査 校の生徒は日本の生徒と比較して相対的に低値で その成熟を迎える可能性が考えられる。体重では 15歳,17歳で日本の値が調査校の値を有意に上 回り,15歳以外では有意差が認められないもの の日本の値が調査校の値を上回った。15歳,17 歳と高い年齢間で有意差が認められたことから,

身長同様に調査校の生徒は日本の生徒と比較して 相対的に低値でその成熟を迎える可能性が考えら れる。すなわち,調査校の女子生徒は日本の同世 代の者と比べて,身長が低く,体重が軽くその成 熟を迎える可能性が示唆された。

男子の身長では12歳で両者に有意差が認めら れず,13歳から17歳で日本の値が調査校の値を 有意に上回った。調査校の生徒は日本の生徒と比 較して相対的に低値でその成熟を迎える可能性が 考えられる。体重では12歳,13歳で両者に有意 差が認められず,14歳から17歳で日本の値が調 査校の値を有意に上回った。身長同様に調査校の

生徒は日本の生徒と比較して相対的に低値でその 成熟を迎える可能性が考えられる。すなわち,調 査校の男子生徒は日本の同世代の者と比べて,身 長が低く,体重が軽くその成熟を迎える可能性が 示唆された。前報2で,タイ国生徒と日本の生徒 との比較からタイ国生徒は「日本の生徒に比べて 身長,体重において相対的に低い値でそれらの成 熟を迎えると考えられる」と報告し,本報と同様 の結果であった。

長育発育の代表的な指針である「身長」,量育 発育の代表的な指針である「体重」の両者におい て,調査校生徒は男女ともに日本の生徒と比べる と相対的な低値でこれらの成熟を迎える可能性が 考えられる。調査校生徒の体格指数BMI(body massindex:kg/m2)は19.6(±2.9~3.1)であ り,その充実度は決して高いとはいえない。男女 とも年次の身長増加に伴う体重増加が十分とはい えない者が多いと考えられる。

2 体力測定

測定項目は,筋持久力測定として「上体起こし」,

柔軟性測定として「長座体前屈」,敏捷性測定と して 「反復横跳び」, 瞬発力・走力測定として

「50m走」,瞬発力測定として「立ち幅跳び」,筋 力測定として 「握力」 の6種目を実施した。

Table2,Table3に調査校の生徒と日本の同世 代の生徒の測定結果を男女別に示した(調査校の 値をcw-school,日本の値をJapanとして示した)。

女子では,筋持久力要素を反映する上体起こし で12歳から17歳間の全ての年齢間で日本の値が 調査校の値を有意に上回った ・p・.05・。柔軟性 要素を反映する長座体前屈では12歳間で両者の 間に有意差が認められず,13歳から17歳間で日 本の値が調査校の値を有意に上回った ・p・.05・。 敏捷性要素を反映する反復横跳びでは12歳から タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力測定について

(6)

17歳間の全ての年齢間で日本の値が調査校の値 を有意に上回った ・p・.05・。瞬発力・走力要素 を反映する50m走では12歳,15歳から17歳間 で両者の間に有意差が認められず,13歳から14 歳間で日本の値が調査校の値を有意に上回った

・p・.05・。瞬発力要素を反映する立ち幅跳びでは 12歳から17歳間の全ての年齢間で日本の値が調 査校の値を有意に上回った ・p・.05・。筋力要素 を反映する握力では14歳,17歳で両者の間に有

意差が認められず,12歳から13歳間,15歳から 16歳間で調査校の値が日本の値を有意に上回っ た ・p・.05・。

男子では,筋持久力要素を反映する上体起こし で,12歳で両者の間に有意差が認められず,13 歳から17歳間で日本の値が調査校の値を有意に 上回った ・p・.05・。柔軟性要素を反映する長座 体前屈では12歳で両者の間に有意差が認められ ず,13歳から17歳間で日本の値が調査校の値を Table2 Resultofphysicalfitnesstests:Girls

(yearsAge) Sit-up

(times) Trunk-flexion

(cm) Side-step

(times) 50meter-dash

(sec) Long-jump

(cm) Grip-strength

(kg) cw-school 12 15.4・・・・・・・・・・

40.0 34.0・・・・・・・・・・

9.0 155.8・・・・・・・・・・

23.3・・・・・・・・・・ SD 3.9 7.7 3.3 1.1 20.6 4.2 ・

(n) 92 92 92 72 92 92

Japan 12 19.9 41.5 43.5 9.1 162.9 22.2 SD 5.2 9.1 5.5 0.7 20.6 4.4 cw-school 13 14.9・・・・・・・・・・

38.5・・・・・・・・・・

34.4・・・・・・・・・・

9.2・・・・・・・・・・

152.5・・・・・・・・・・

25.8・・・・・・・・・・ SD 3.3 6.6 3.9 1.1 19.7 4.2 ・

(n) 73 73 73 58 73 73

Japan 13 22.6 44.1 45.6 8.8 169.2 24.0 SD 5.4 9.1 5.6 0.8 21.5 4.5 cw-school 14 16.0・・・・・・・・・・

41.1・・・・・・・・・・

34.4・・・・・・・・・・

9.0・・・・・・・・・・

156.3・・・・・・・・・・

26.5 SD 3.5 7.2 4.0 0.8 19.4 4.3

(n) 92 93 92 84 85 93

Japan 14 23.2 45.9 46.0 8.7 171.7 25.7 SD 5.5 9.2 5.8 0.7 23.0 4.3 cw-school 15 17.3・・・・・・・・・・

39.1・・・・・・・・・・

37.3・・・・・・・・・・

8.8 159.1・・・・・・・・・・

28.7・・・・・・・・・・ SD 3.0 6.5 3.2 0.8 21.3 3.7 ・

(n) 54 54 54 42 54 54

Japan 15 22.1 46 45.5 9.0 168.5 25.9

SD 5.7 10 5.9 0.8 22.8 4.6

cw-school 16 18.4・・・・・・・・・・

41.4・・・・・・・・・・

35.5・・・・・・・・・・

8.8 155.2・・・・・・・・・・

29.6・・・・・・・・・・ SD 4.4 6.3 4.7 0.8 20.1 4.7 ・

(n) 40 45 40 23 45 45

Japan 16 23.3 47.6 46.3 8.9 171.0 26.9 SD 6.3 9.8 6.0 0.9 24.7 4.7 cw-school 17 18.8・・・・・・・・・・

40.0・・・・・・・・・・

36.4・・・・・・・・・・

8.8 158.5・・・・・・・・・・

28.3 SD 3.6 7.6 5.3 1.3 17.0 3.6

(n) 41 41 41 41 41 41

Japan 17 24.0 49.0 46.7 8.9 172.5 27.6 SD 6.5 10.2 6.4 0.9 22.9 4.9

:p<.05

(7)

有意に上回った ・p・.05・。敏捷性要素を反映す る反復横跳びでは12歳から17歳間の全ての年齢 間で日本の値が調査校の値を有意に上回った

・p・.05・。瞬発力・走力要素を反映する50m走 では14歳間,17歳間で両者の間に有意差が認め られず,12歳から13歳間,15歳から16歳間で 調査校の値が日本の値を有意に上回った・p・.05・。 瞬発力要素を反映する立ち幅跳びでは12歳,15 歳で両者の間に有意差が認められず,13歳から

14歳間,16歳から17歳間で日本の値が調査校の 値を有意に上回った ・p・.05・。筋力要素を反映 する握力では14歳,16歳から17歳間で両者の 間に有意差が認められず,12歳から13歳間,15 歳で調査校の値が日本の値を有意に上回った

・p・.05・。

以上の結果から体力について考察すると,上体 起こしでは,女子の全ての調査年齢,男子の13 歳から17歳にかけて,日本の値が調査校の値を タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力測定について

Table3 Resultofphysicalfitnesstests:Boys

(yearsAge) Sit-up

(times) Trunk-flexion

(cm) Side-step

(times) 50meter-dash

(sec) Long-jump

(cm) Grip-strength

(kg) cw-school 12 22.9 38.5 35.4・・・・・・・・・・

8.1・・・・・・・・・・

183.6 28.6・・・・・・・・・・ SD 4.1 7.1 4.3 0.8 22.7 6.7 ・

(n) 107 107 107 80 107 107

Japan 12 23.5 38.9 47.8 8.5 181.1 25.4 SD 5.7 9.0 6.7 0.8 23.5 6.3 cw-school 13 23.7・・・・・・・・・・

38.8・・・・・・・・・・

37.2・・・・・・・・・・

7.8・・・・・・・・・・

193.5・・・・・・・・・・

33.5・・・・・・・・・・ SD 4.1 7.2 4.7 0.8 24.1 7.4 ・

(n) 96 96 96 80 96 96

Japan 13 27.3 44.1 51.8 7.9 199.3 31.1 SD 5.7 9.4 6.5 0.7 23.7 7.3 cw-school 14 25.2・・・・・・・・・・

44.3・・・・・・・・・・

37.8・・・・・・・・・・

7.5 205.6・・・・・・・・・・

37.4 SD 5.1 7.3 5.8 0.7 21.1 6.6

(n) 108 107 107 102 102 102

Japan 14 29.6 47.8 54.0 7.6 213.2 36.4 SD 5.9 10.0 6.7 0.6 23.8 7.0 cw-school 15 26.9・・・・・・・・・・

44.8・・・・・・・・・・

40.5・・・・・・・・・・

7.1・・・・・・・・・・

213.6 43.0・・・・・・・・・・ SD 4.6 7.3 4.5 0.6 20.3 6.5 ・

(n) 46 46 46 34 46 46

Japan 15 29.4 48.3 54.7 7.5 218.7 39.8 SD 5.7 10.7 6.6 0.6 24.5 6.8 cw-school 16 25.1・・・・・・・・・・

46.0・・・・・・・・・・

37.9・・・・・・・・・・

7.1・・・・・・・・・・

213.9・・・・・・・・・・

43.2 SD 5.0 6.9 4.7 0.5 28.6 7.1

(n) 36 43 36 30 43 43

Japan 16 32.2 51.8 56.7 7.4 225.8 42.4 SD 6.1 10.6 7.2 0.6 23.9 7.0 cw-school 17 27.3・・・・・・・・・・

44.8・・・・・・・・・・

37.7・・・・・・・・・・

7.1 218.6・・・・・・・・・・

43.8 SD 5.1 7.7 5.2 0.8 22.8 6.4

(n) 59 58 58 55 55 58

Japan 17 32.6 53.4 57.7 7.2 230.5 44.0 SD 6.4 10.8 6.9 0.5 23.0 7.2

:p<.05

(8)

有意に上回り,男子の12歳においても有意差が 認められないものの日本の値が調査校の値を上回っ た。筋持久力に関しては,相対的に日本の生徒の 能力が優れていると考えられる。筋の持久力に関 しては,上体起こしでの測定部位(腹部,背部,

腰部の体幹部諸筋群およびこれらと連動する大腿 屈筋群)のみならず,身体全体の筋力・筋持久力 を高めていくことの重要性を強調し,これらを実 践する方法を提案していきたいと考えている。

長座体前屈では,女子,男子ともに13歳から 17歳にかけて,日本の値が調査校の値を有意に 上回り,12歳においても有意差が認められない ものの日本の値が調査校の値を上回った。柔軟性 に関しては,相対的に日本の生徒の能力が優れて いると考えられる。身体の柔軟性を高めていくこ との重要性を強調し,これらを実践する方法を提 案していきたいと考えている。

反復横跳びでは,女子,男子ともに全ての調査 年齢において,日本の値が調査校の値を有意に上 回った。敏捷性に関しては,相対的に日本の生徒 の能力が優れていると考えられる。しかし,これ らの測定に関しては,身体の調整力,巧緻性等が 少なからず関与すると考えられることから,今後 継続的に調査していくことが重要な調査項目であ ると考えられる。

50m走では,女子の13歳,14歳において日 本の値が調査校の値を有意に上回り,その他の年 齢では有意差が認められないものの調査校の値が 日本の値を上回った。一定の方向性を見出すこと ができず,今後継続的に調査していくことが重要 な調査項目であると考えられる。男子では,13 歳,15歳,16歳において調査校の値が日本の値 を有意に上回り,その他の年齢でも有意差が認め られないものの調査校の値が日本の値を上回った。

瞬発力・走力に関しては,相対的に調査校の生徒

の能力が優れていると考えられる。

立ち幅跳びでは,女子の全ての調査年齢,男子 の13歳,14歳,16歳,17歳において,日本の 値が調査校の値を有意に上回り,12歳では有意 差が認められないものの調査校の値が日本の値を 上回った。瞬発力に関しては,相対的に日本の生 徒の能力が優れていると考えられる。

握力では,女子の12歳,13歳,15歳,16歳 において調査校の値が日本の値を有意に上回り,

その他の年齢でも有意差が認められないものの調 査校の値が日本の値を上回った。男子では12歳,

13歳,15歳において調査校の値が日本の値を有 意に上回り,14歳,16歳では有意差が認められ ないものの調査校の値が日本の値を上回った。17 歳では有意差が認められないものの日本の値が調 査校の値を上回った。筋力に関しては,相対的に 調査校の生徒の能力が優れていると考えられる。

体格測定における体重計測では,男女とも全ての 年齢で日本の値が高かったことから,最大筋力を 決定する重要な要因である筋の断面積は調査校の 生徒の方が劣っていることが考えられる。これら を考慮するとさらに差があることが考えられる。

調査校では,これら体格・体力測定の結果を十 分な形で対象となる生徒へフィードバックさせる 体制(体育科カリキュラム等)が整っていないの が実情である。今後,体格および体力測定の重要 性を強調し,これらの活用方法を提案していくこ とが重要な課題となる。

ま と め

本報は,タイ王国ウドーンタニー県内の12歳 から17歳の生徒(女子:401名,男子:469名)

を対象に体格・体力測定を実施して,日本の同世 代の者のこれらの値と比較・検討するものである。

(9)

測定の項目は,体格測定として身長,体重の計測,

体力測定として上体起こし,長座体前屈,反復横 跳び,50m走,立ち幅跳び,握力の6種目であっ た。結果は以下であった。

1. 身長:女子では17歳,男子では13歳から 17歳にかけて日本の生徒の値が調査校の生 徒の値を有意に上回った。

2. 体重:女子では15歳,17歳,男子では14 歳から17歳にかけて日本の生徒の値が調査 校の生徒の値を有意に上回った。

3. 上体起こし:女子では12歳から17歳,男 子では13歳から17歳にかけて日本の生徒の 値が調査校の生徒の値を有意に上回った。

4. 長座体前屈:女子,男子ともに13歳から 17歳にかけて日本の生徒の値が調査校の生 徒の値を有意に上回った。

5. 反復横跳び:女子,男子ともに12歳から 17歳にかけて日本の生徒の値が調査校の生 徒の値を有意に上回った。

6. 50m走:女子では13歳,14歳において 日本の生徒の値が調査校の生徒の値を有意に 上回った。男子では12歳,13歳,15歳,16 歳において調査校の値が日本の値を有意に上 回った。

7. 立ち幅跳び:女子では,12歳から17歳,

男子では13歳,14歳,16歳,17歳におい て日本の生徒の値が調査校の生徒の値を有意 に上回った。

8. 握力:女子では12歳,13歳,15歳,16 歳,男子では12歳,13歳,15歳において調 査校の値が日本の値を有意に上回った。

謝 辞

今回の測定に協力を頂いたcw-school学校長Mr.

Decha Soontarakom,体 育 科 教 員 Mrs.Pensri Boonsong,現地での日程調整等にご尽力いただいた

Mrs. Narissaiaporn Duangkota, Mr. Suphat Thitimoolに深謝いたします。

(1) タイ王国教育システム:初等教育機関として初 等学校(小学校に相当),中等教育機関として前 期中等学校(中学校に相当)及び後期中等学校

(高等学校に相当),高等教育機関として大学等が 設置されている。修業年限は,初等学校6年間,

前期中等学校3年間,後期中等学校3年間の「6 33制」の日本と同様のシステムである11

(2) タイ王国ウドーンタニー県:タイ国の東北部に 位置しており,北部はメコン川を境にラオスと接 し,南部はカンボジアと接する地域であり,点在 するクメール遺跡の他は主な観光地,観光施設も なくタイ国民にとって「田舎」のイメージの地方 のようである。主な産業は農業であり田園風景が 続く地方である。

(3) cw-school:教員数16名, 在籍生徒数中学1 年生:女子43名,男子38名,中学2年生:女子 21名,男子27名,中学3年生:女子28名,男 子:36名,高校1年生:女子16名,男子17名,

高校2年生:女子11名,男子12名,高校3年生:

女子20名,男子13名,延べ女子158名,男子 143名,合計301名(2008年8月現在)。

文 献

1) 千葉義信「カンボジア王国における体格・体力測 定について」『日本運動・スポーツ科学学会第14回 大会大会号』,日本運動・スポーツ科学学会,2007。 2) 千葉義信「タイ王国ウドーンタニー県における体

格・体力測定について 日本との比較および日常 生活と体力との関係 」『運動とスポーツの科学』

13,日本運動スポーツ科学学会,2007。

3) 千葉義信「タイ王国ウドーンタニー県における体 格・体力測定について 2ヶ年の調査から 」,

第11回神奈川体育学会予稿集,2007。

4) 千葉義信「タイ王国ウドーンタニー県における体 格・体力測定について 中学生と高校生との比較 から 」『湘南工科大学紀要』42,湘南工科大学,

2008。

5) 千葉義信「タイ王国ウドーンタニー県における体 格・体力測定について 2ヶ年の継続調査から

」『静岡英和学院大学紀要』6,静岡英和学院大 学,2008。

6) 千葉義信「タイ王国ウドーンタニー県における体 格・体力測定について 体格と体力との関係 」 タイ王国ウドーンタニー県における体格・体力測定について

(10)

『神奈川大学経営学部国際経営論集』35,神奈川大 学,2008。

7) 千葉義信「タイ王国ウドーンタニー県における体 格・体力測定について 実施マニュアル作成につ いて(第1報) 」『神奈川大学経営学部国際経営 論集』35,神奈川大学,2008。

8) 千葉義信・奥山靖彦・鍋谷照ほか「カンボジア王 国における体格・体力測定について」『体育研究』

41,神奈川体育学会,2008。

9) 千葉義信・鍋谷照・奥山靖彦「カンボジア王国に おける体格・体力測定について 評価基準値を求 めて 」『日本運動・スポーツ科学学会第15回大 会大会号』,日本運動・スポーツ科学学会,2008。 10) 海老沢礼司・上口孝文・大森俊夫ほか「留学生に

おける体力テストと生活習慣健康関連アンケート調 査結果について」『國學院大學スポーツ・身体文化

研究室紀要』39,國學院大學,2007。

11) 外務省「海外教育諸外国の学校情報」『外務省ホー ムページ』,外務省,2008,http://www.mofa.go.

jp/mofaj/toko/world_school/01asia/infoC10300. html

12) 文部科学省『新体力テスト有意義な活用のために』

5,ぎょうせい,2005。

13) 文部科学省「平成18年度体力・運動能力調査報 告書」『文部科学省ホームページ』,文部科学省,

2008, http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/ 001/index22.htm

14) 鍋谷照・千葉義信・奥山靖彦ほか「カンボジア王 国の児童・生徒における体格測定」『日本発育発達 学会第6回大会大会号』,日本発育発達学会,2008。 15) 桜井伸二(1997)「アジアの国々の体力テスト」

『体育の科学』47,杏林書院,1997。

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参照

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