住民の意識に着目した都市河川の価値評価多様性の
評価
著者名(日)
大塚 佳臣
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
33
ページ
57-63
発行年
2011
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002086/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja大塚 佳臣* 1.はじめに 都市中小河川の多くは,用水路や排水路として整備さ れてきており,“水を流す”機能が重視された結果,そ の多くが三面張形状に整備された.一方で,これらの水 路は,都市において貴重なオープンスペース,環境空間 を提供している.治水事業の伸展よる洪水の頻度低下に 伴い,都市中小河川は,身近なアメニティ空間として重 要になってきている.住民は,川に対して,治水機能の みならず親水機能も重視するようになり,都市河川に対 する要求機能は多様化している.都市河川のこれからの あり方を考える上では,住民の都市河川に対する多様な 価値評価を考慮する必要がある.特に,整備によって都 市中小河川の機能を改善するにあたっては,機能別の金 銭価値を把握した上で,評価の多様性を生じさせている 要因を明らかにする必要がある. 自然環境の金銭的価値を評価する手法は,大きくは顕 示選好法と表明選好法の2種類に分けられる.顕示選好 法は人々の経済活動から間接的に環境価値を評価する方 法である.表明選好法は人々に環境価値を直接尋ねるこ とで,環境価値を評価する.顕示選好法の代表的なもの には,トラベルコスト法,ヘドニック法が挙げられ,表 明選好法として代表的なものは仮想評価法(Contingent Valuation Method:CW)とコンジョイント分析があ る.コンジョイント分析は,属性毎の価値の計測が可能 な手法であり,都市水辺環境を対象にした研究事例も増 えてきている.1) ’5} 川の機能別の価値評価の多様性については,満足度や 好感度を評価指標とした場合,川の物理属性(水質,水 量,護岸の形状等,植生の状態,生き物有無)の違いが 要因となっていることが示されている9’ ’11一方で,心理 的要素(自然や川に対する関心,洪水不安,過去の川の 印象など)の影響を受けることが指摘されている10) ・12’ ’13〕. これらの知見を基に,大塚ら14}は,都市中小河川を対象 とし,川の物理的属性および川に対する意識の違いが満 足度に与える影響の違いを評価するために,居住地域の 川の物理的属性および川に対する意識に基づき住民を類 型化し,カイ自乗検定によって相関分析を行った.その 結果,満足度指標とした場合,川に対する価値評価は, 川の物理属性の違いより,川への意識の違いの影響が支 配的であることを明らかにした. 本Ell究では,金銭価値を指標として,都市中小河川の 機能別の価値を評価した上で,価値評価に大きな影響を 与えていると考えられる川への意識の違いに着目し,川 の機能別の価値評価に差を与えている要因を明らかにす ることを目的とした. 2.研究の対象および手法 2.1 モデル地域 モデル河川は,千葉県北西部の大堀川,大津川,坂川 (坂川放水路,新坂川,六間川,横六間川,富士川,上 富士川を含む),真間川(大柏川,国分川,春木川を含 む)とした.これら流域の概要を図1に示した.いずれ も市街地を流れる中小河川で,規模もほぼ同等である. 千葉県北西部は,江戸時代から水害が頻発しており, 治水工事が進められてきた.1990年以降,大規模な浸 水の被害は発生していないものの,依然として小規模な 浸水被害に見舞われている.これらの河川は,雨水排除 を目的として整備された典型的な都市中小河川であり, 洪水被害に関する記憶が多くの住民にある一方で,アメ ニティ空間としての利用も進んでいる.このことから, 都市河川の持つ多様な機能に対する住民の価値評価を解 析するのに適した地域といえる. 図1 モデル河川の概要 大堀川 大津川 坂川 真間川 流域面積(km2) 31 35.9
延長(㎞) 6.9 7.9
流域人口(千人) 165 162 市街化率(%) 75 58 水質(BoD;mg/L) 3.7∼11 3.6∼11 51.4 24.2 172 70 65.6 19.9 435 67 1.8∼3.6 4.7∼12 2.2 評価手法について15) 本研究の目的は,都市中河川が有する機能毎の金銭的 価値について,価値評価の差を与えている要因を明らか にすることにある.そこで,コンジョイント分析のモデ ルの一つである条件付きロジットモデルに,評価の多様 性の原因を説明する変数(メンバシップ変数)を組み込 んだ潜在セグメントロジットモデルを用いることとし た.潜在セグメントロジットモデルでは,川の効用を説 *総合情報学部 総合情報学科住民の意識に着目した都市河川の価値評価多様性の評価 明する変数のパラメータだけでなく,メンバシップ変数 のパラメータを同時推定することで,評価の多様性の要 因を説明することが可能になる. ある対象に対する選択行動がランダム効用モデルに準 ずると仮定する.ある個人nが,選好が同質であるセグ メントsに所属し,選択肢iを選択した場合の効用(Vnils) は以下のように示される.
馴)ヨ{Σ艦㍍)}{Σill蒜㍑忘)}(・)
このとき対数尤度関数は次式の通りとなる. lnL(β,γ1S)ニΣΣδ hlnPn(i) ”=1 iEC (6) Vnils=β’Xni+εnils (1) ただし,xは観察された変数ベクトル,βは推定され るパラメータ,εは効用の内,観察不能な部分を示す. 個人nが選択肢セットCから選択肢iを選択する時,セ グメントsにおける条件付きロジットモデルの確率確率 はPnils(のは以下のようになる. P・・1・(i)一ォ㌶)
(2) ただし,βs及びμsは,セグメントsに固有の効用パラメ ータ及びスケールパラメータである. 次に,個人nがセグメントsに属するときの潜在的な メンバシップ関数Mとして,次式を考える. M.=γs’2n+ζ. (3) ただしzはメンバシップ変数ベクトル,γsは推定される パラメータ,ζ.は誤差項である.ここで,誤差項ζ.が 独立かつ同一な第一種極値分布に従うと仮定する.この とき,個人nがセグメントsに分類される確ys P.は次式 の通りとなる.P..e警P(λ・s’Zn) (4)
Σexp(λγgt2n) 9=1 ただしλはスケールパラメータである.この選択確率は, 説明変数がメンバシップ変数のみからなる多項ロジット モデル(multinominal logit model)となっていること から,推定上はある1つのセグメントに対するパラメー タをゼロとし,正規化を行う必要がある.ここでは,セ グメント1(s=1)についてγ1=Oとして基準化する. 次に,個人nがセグメントsに属し,かつ選択肢iを選 択する場合の結合確率Pnils(i)を考える.この確率は Pns(i)=Pns・Pnils(i)と表すことができる.このとき, 個人nが選択肢iを選ぶときの選択確率Pn(のは以下の ようになる. ただしδhは個人nが選択肢iを選択したときに1,そう でないときは0となるダミー変数である.セグメント数 を外生的に与えれば,パラメータβ,γの最尤推定量を同 時に推定することが可能である.このモデルには2つの スケールパラメータ(λ,μ)が含まれているが,これら を同時に推定することができないことから,通常,これ らは1と仮定しβ,γを推定する. ここで効用関数について,以下のような属性変数の線 形変数(主効果モデル)を想定する. V(x,P)=Σβk, tk+fipP (7)k
ただしκkは選択肢の属性変数ベクトル,pは金額,βは 推定されるパラメータである.この式を全微分すると以 下のようになる.ζ蒜・芸dρ一dの8)
ここで,効用水準を初期水準(dV=0)に固定し,あ る選択肢属性Xl以外の属性も初期水準(duh=0,ゐ≠1) に固定する.すると,選択肢属性x1が1単位増加した時の限界支払意思額(MWTP:Marginal Willingness
To Pay)は,次式によって得られる. MVVTPx・一_一冤/芸一急
(9) 2.3 評価属性とその水準 本研究では,河川の金銭価値評価から得られた情報を, 整備による河川機能改善施策立案に活用することを想定 している.そのため,評価属性は,改善によって価値の 変化が大きいものを取り上けることとした.評価属性の 抽出にあたり,当モデル地域で事前に行ったアンケート 調査16〕(実施時期:2008年7月4日∼9日,対象者:モ デル河川から1km以内に在住している男女150人の計 300人)における,住民が普段利用/目にしている近所 の川(以下,近隣河川と呼ぶ)に対する不満・改善要望点に関する質問(複数回答可)に注目し,評価属性を抽 出した.その回答結果を表2に示す.利用者,非利用者 ともに不満・改善要望点は,「水質」,「ごみ」,「護岸形 状」が上位にあり,これらの整備によって価値の向上が 見込まれると予想されることから,これらを評価属性と した.また,親水機能と治水機能のトレードオフを評価 するために,「洪水への対応」を評価属性に加えた.ま た,河川機能改善費用の財源としては,税金を設定した. ここでは,河川機能改善のための新税を設定するのでな く,現在の税金での内数で行うシナリオとした.コンジョ イント分析に用いる評価属性とその水準を表3に示した. 表2 近隣河川に対する不満・改善要望点(複数回答) 利用者が不満に思う項目 回答率(%) 水がきたない ごみが多い 雑草が多い 護岸が人工的 水の量が少ない 50.3 25.4 16.1 13.5 13.0 利用者が改善を求める項目 回答率(%) 水質の改善 河川清掃(ごみの撤去)を増やす 水辺に近づけるような護岸への改修 水際や河川敷に植物が生える護岸への改修 休息所・ベンチを作る 58.7 19.6 15.2 15.2 15.2 表3 コンジョイント分析の評価属性 属 性 水 準 治水 洪水確率年 1/20, 1/50, 1/100 水質(BOD:mg/L) ごみを目にする頻度(回/訪問回) 親水一一一一・……一一一一・一…一一・・一………一…・・一 護岸形状 5∼10, 2∼3, 1∼2 8/10,5/10,2/10,1/10 ← 一 一 一 一 一 ・ . 十 コ ー 一 , 一 一 . 一 一 ■ ≡ 一 . 一 . 一 一 一 一 一 . A ’ ・ 一 ・ 一 一 コ ー コンクリ三面張, 多自然型,階段型 0千円,1千円,3千円, 費用 税金投入額(一人年間) 5千円,1万円,2万円 3.調査 3.1 調査方法及び調査対象者 本研究では,オンラインアンケート法により調査を行っ た.オンラインアンケート法は,インターネット調査会社 (以下調査会社と記す)に登録しているモニターに対して 回答を依頼し,回答データを得るシステムである.オンラ インアンケート法は,(i)実際の人口構成にあわせてサン プルが得られること,(ii)無効回答をゼロに出来ること, (iii)質問シーケンス(分岐質問等)のコントロールができる, といったメリットをもつ.しかし,モニターはパソコン・ インターネット利用に習熟している集団であるという特異 性があり,母集団(日本人全体)を反映しているかどうか 検証できていないという指摘もあるが17),本研究では上 記の長所を重視し,オンラインアンケート法を採用した. 調査対象者は,対象河川が含まれる柏市,松戸市,市 川市全域の住民とした.有効回答数は1200以上とし, 回答者の人口構成は,実際の性別・年齢(10歳単位)構 成にそろえるものとした. 3.2 調査内容 調査票は,大きくは説明部,質問部から構成される. 説明部では,まず,各評価属性の定義と,水準が変化 した場合に生じる変化について説明した. 「水質」は水準ごとに,BOD(生物化学的酸素要求量) 値と,生き物の数と種類の変化,水遊びの可否を示した. 「ごみの状態」はごみを見かける頻度を指標として用い, 8/10(回/訪問回)を「みかけることが多い」,5/10(回/訪 問回)を「見かけたり見かけなかったりする」,2/10(回/ 訪問回)を「見かけないことの方が多い」,1/10(回/訪問回) を「ほとんど見かけない」と定義した.「護岸の形状」は 「コンクリート張り護岸」「自然型護岸」「階段型護岸」の3種 類を取り上げ,形状ごとに写真を示し,植物の量,近づき やすさ,生き物の多さについて説明を加えた.「洪水への対 応」は,洪水に遭う頻度(確率年)を指標とし,対応雨量お よび50年に1度の大雨が降ったときの被害予想図(ハザー ドマップ)を提示した.「税金追加投資額」は,水辺整備の 新税をもうけるのではなく,現税金の範囲内で,他のサー ビスから水辺整備に税金を振り分ける想定であることを説 明した.参考データとして,モデル地域における税金の主 な用途(民生,衛生,土木,教育)と金額のリストを示した. 質問部では,コンジョイント分析用質問(1人6問), 水辺全般・近隣河川への意識・利用に関する質問,個人 属性に関する質問を行った.コンジョイント分析用質問 の例を図1に示した. ●・下・川のt・・が・化した・・の・合・・獣砒・・・…し・も・・1…e・だ… ‘ 水寅 宕れい ややぎたない ややきたない ごみの状態 見かけないζとが多い 見かけないことが多い 見かけることが多い 霞岸の伏態 コンクリート忍り 自然型 コンクリート恨り 洪水への対応 50年に一度 50年に一度 10年に一度 二万円 千円 なし 一 内窃奄ホく法B㊨h¶次へ】ボタン竈押しτください. 俵嫡こ⊂薦6江起鯵で章騨麟 図1 コンジョイント分析用質問の例
住民の意識に着目した都市河川の価値評価多様性の評価
4.結果と考察
4.1 調査概要 調査は,㈱マクロミルのモニターに対し,2008年11 月21日∼25日に実施した.サンプルの回収数を表4に 示す.有効回答数は1238であった.男女年齢構成別で みると,60歳以上が実際の構成より有意に少なかった. これは60歳以上のモニターが要求数より少なかったこ とによる. 表4 回収サンプル表 回収数 人) 実際の人口構成 %)20∼39歳 258 287 22.5 20.6
40∼59歳 215 255 18.4 17.8
60歳以上 151 72 9.6 11.1 一否誉F’’’’’”る餌’一”冨f4−’一一56y鵡’“’括’万3’一一’一’ 4.2 満足度と近隣河川への意識の関連 満足度と近隣河川への意識の関連を評価するにあた り,住民の都市河川の選好は多様であることから,個別 に評価することは困難である.そこで,近隣河川へ選好 が似ている者同士に住民を類型化し,グループ別に評価 を行うことでその多様性の評価を行う,マーケットセグメ ンテーションと呼ばれる手法を用いることとした.類型 化の手法としては,潜在クラス分析が広く用いられる18). ここでは,近隣河川への意識に関する質問(7段階評価, 表5)の回答結果を基に,潜在クラス分析によって住民 の類型化を行った.潜在クラス分析においては,グループ数を変化させて,BIC(Bayesian Information
Criterion)が最小となるものが最も適合度が高いとされ る.グループ数を2から6まで変化させて分析を行った 結果,BICが最小となったグループ数は5であったこと から,5つの近隣河川への意識に関するグループ(以下, 意識グループと呼ぶ)を抽出した.この7段階の回答を +3∼−3(強くそう思う=+3∼どちらでもない=0∼全く そう思わない=−3)に得点化し,各質問に関する得点を グループごとに求めた結果を図2に示す.この結果をも とに得られた各グループの特徴を以下に示す. ●G1(快適型;29%):近隣河川への意識に関する質問 の得点では,「(2)楽しむ場所」,「(3)快適生活空間」 の点数が高く,川のもたらす快適性を重視していた. 「(5)邪魔な存在」∼「(8)ないほうがいい」といっ た否定的な意識の点数は,全体とほぼ同様で平均的で あった. ●G2(平均型;17%):近隣河川への意識に関する質問 の得点は全体とほぼ同様で平均的であり,特徴はみら れなかった. ●G3(肯定型;28%):近隣i河川への意識に関する質問 の得点では,「(1)守るべき自然」∼「(3)快適生活 空間」といった肯定的な意識の得点が高く,「(5)邪 魔な存在」∼「(8)ないほうがいい」といった否定的 な意識の点数が低かった. ●G4(否定型;11%):近隣河川への意識に関する質問 の得点では,「(1)守るべき自然」∼「(3)快適生活 空間」といった肯定的な意識の得点が低く,「(5)邪 魔な存在」∼「(8)ないほうがいい」といった否定的 な意識の点数が高かった. ●G5(低意識型;15%):各質問に対する回答結果にお いて,「どちらでもない」が回答の72%を占めており, 近隣河川に対する意識が低いことがうかがわれた. 次に,意識グループ別の満足度評価結果を図3に示す. 意識グループと満足度の相関について,カイ自乗検定で 評価した結果,p=.000となり,有意な差が認められた. 満足度評価は,川への意識の影響を強く受けていること がうかがわれた.G3(肯定型)は「満足」と回答した 人が最も多く満足度が最も高かった.一方で,G4(否 定型)は「不満」回答した人が最も多く満足度が最も低 かった.G5(低意識型)では「どちらでもない」を選 択した人が最も多く,近隣河川への関心が低い様子が認 められた. 表5 近隣河川への意識に関する質問 ■近隣河川に対する意識について,あてはまるものを選ん でください.(7段階評価) (とてもそう思う一そう思う・ややそう思う一どちらでもない・あま りそう思わない・そう思わない・全くそう思わない) (1)守るべき身近な自然環境としての存在である (2)楽しんだりくつろいだりする場所である (3)快適な生活空間を作る存在である (4)洪水対策の水路である (5)交通・往来の妨げとなる邪魔な存在である (6)きたないドブ川である σ)危険な場所である (8)なくしたほうがいい/みえなくしたほうがいい (9)関心がない引62G3α65
‡三
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… 声︸コロ㌔Q富 ︵oo︶’ラ∼⇔■邑コ縛 S経艇 §三朽勾 ︵⑩︸田爵 §櫛寝祷蓑 ︵°o︶星側璽 ︵N︸握騨O⊃嶽 (P j条皿葡ピゆ● 3 210 ー
コ Φ﹂◎0♂23
点 得 ヨ 問 質 の 識 意 の へ 川 河 隣 近 ﹁ 別 プ 一 ル グ 識 意 2 図1234GGGG
(快適型) (平均型) (肯定型) (否定型) G5(低意識型) ■ 満足 」 どちらでもない 圏 やや満足 A やや不満 囲 不満 O O.2 0.4 0.6 0.8 1 割合 図3 意識グループ別の満足度評価結果 イント分析によって,近隣河川への意識が価値評価に与 える影響を川の属性別に解析することとした. まず,コンジョイント分析に用いる効用関数の変数ベ クトルとして,VV(?L:河川水質(BOD;mg/L), LIT:ごみを目にする頻度(回/訪問回数), FLI):洪水 に遭う頻度(確率年),s丘WV,銘B胤∼V:それぞれ階段型 護岸,多自然護岸へ改修した場合は1,しない場合は0 となるダミー変数,TAX:河川環境改善に係る税金投入 額(円/年・人)とした.ランダム効用関数の観察可能な 部分(のには,以下のような主効果モデルを仮定した. v= fi weL VVQL+β〃.LIT+βFL.FLI)+ βnBANnBAハ1+β,BANsBA∼V+βTAx Tンぱ (10) コンジョイント分析においては,変数間に相関があると モデル推定が不安定となる.メンバシップ変数として, 近隣河川への意識に関する質問の回答結果を用いるにあ たり,メンバシップ変数間の相関を避けるために,回答 結果に対して主成分分析(バリマックス回転)を適用し 表6 近隣河川への意識の回答に関する主成分分析結果 ノLME NOC ,POL 、FLI) 4.3 近隣河川への意識が金銭価値評価に与える影響 満足度を指標とした近隣河川の価値評価においては, 近隣河川への意識が大きな影響を与えていることが前節 で示された.ここでは,金銭を価値指標とした場合,近 隣河川への意識が近隣河川の価値評価に対して,どのよ うな影響を与えているかを解析する.価値評価にあたっ ては,潜在セグメントロジットモデルを用いたコンジョ 表7 (2)楽しむ場所 (3)快適生活空間 (1)守るべき自然環境 (8)なくしたほうがいい (5)邪魔な存在 (9)関心がない (6)きたないドブ川 (7)危険な場所 (4)洪水対策の水路 0.92 −O.16 −0.15 0.07 0.89 −0.12 −0.12 0.22 0.66 −0.42 −0.05 0.17 −O.25 0.80 0.17 −0.01 0.10 ①.79 0.19 0.11 −0.20 ①.78 0.Ol −0.25 −0.14 0.07 0.94 −0.04 0.Ol O.40 0.67 0.08 0.27 −0.05 0.03 0.94 ※カッコ付数字は表5に示した質問の選択肢の番号に対応している。 潜在セグメントロジットモデルによるパラメータ推定結果 推定値 Sm 1 値MWTP
推定値 Sm 2 値MWTP
推定値 Sm 3値 MWTP
<効用関数>WQL
UT
FLD
㎜
nBAIVsBAN
一2.293 −11.466 0.532 ・0.731 叉).260 0.705 .000 .013 .015 .OOO .837 .580 3,135 1,568 −728 −36 96 O.358 −1.419 −0.345 −O.147 2.671 2.168 .038 .000 .000 .015 .005 .006 2,427 962 2,339 18,170 14748 一〇.007 K).048 −0.023 D.260 0.316 0.209 .837 .880 .463 .000 .078 .458 27 P8 W9j81
﹀醐
…
藩竃
成 組 一〇.051 −O.09 0.032 0.215 0.235 .286 .072 .470 .000 .034 34.5% O.354 0.282 0.023 −0.143 0.714 42.9% ㎜㎜鰯脳㎜ %5
2 2 観測数 対数尤度 AIC 5694 −5239.5 10534.9住民の意識に着目した都市河川の価値評価多様性の評価 た.その結果を表6に示す.主成分は4つ抽出され,各 変数の主成分得点から,メンバシップ変数として,アメ ニティ意識(AME),無用無関心(1VOC),汚濁危険意 識(POL),洪水対策意識(FLI))を定義した.これら の変数をもちいて,メンバシップ関数を以下のように決 定した. 」M=γA〃」シ4.ME+γNocNO C−← γporf)0.L+γFLcFL(}卜ζ (11) ここで,γは係数,ζは誤差項を示す.潜在セグメント ロジットモデルでは,セグメント数を外生的に与える必 要があり,BICが最小となるモデルがもっとも適合度が よいとされる.セグメント数を2∼5まで変化させた結 果,BIC(Bayesian information criterion)が最小とな るのはセグメント数が3の時であった.セグメント数が 3のときの各パラメータ推定結果を表7に示す.なお, メンバシップ変数のパラメータは,セグメント1(Sm1) のパラメータを0に基準化して求めている. まず,メンバシップ関数に着目すると,セグメント2 (Sm2)ではFLCが有意に正であるので,近隣河川を洪 水対策の水路と考えている人が多いことがわかる.セグ メント3(Sm3)では, AME, FLCが有意に負であり, 」VOCが有意に正であることから,近隣河川の機能に興 味がない人が多いことがわかる.近隣河川がきたない (POL)と考えている人の割合はセグメント間で差がな い.以上のことから,Sm 1はアメニティ機能を重視する グループ,Sm2は,洪水対策を重視するグループ, Sm3 は川の機能に無関心なグループであることわかる. 次に効用関数と支払意思額(MWTP)について考察す る.Sm1では,研OL,」LITのパラメータは有意に正であ るが,LITは有意に負である. Sm 1に属する回答者は, 水質,ごみの改善に価値を感じているが,洪水対策は必 要がないと考えていることがわかる.またnBAN, sBA V のパラメータは有意ではなく,護岸の改修については関 心が低いことがわかる.これらのことから,Sm1は, 「きれいさ」を改善する施策に金銭価値を見いだしている ことがわかる.Sm2では,すべてのパラメータが有意に 正であり,近隣河川の機能全般に改善に価値を感じてい る.特に,洪水対策,護岸の改修のMWTPが相対的に 高い.洪水対策が重要であると考える一方で,洪水対策 のために三面張となっている護岸形状に不満があり,こ れを改善することを望んでいることが推察される.Sm3 では,TAXを除くすべてのパラメータが有意でない.近 隣河川に関心がない回答者が多いことから,近隣河川の 環境改善に関して価値を感じていないことが推察された. 4.4 人の特徴と評価構造の関連 各支払意識セグメントに所属する人の特徴を明らかに するために,水辺全般の経験・意識,近隣河川の経験, 個人属性をダミー変数(Dルのとして,潜在セグメント ロジットモデルのメンバシップ関数にひとつずつ導入 し,パラメータを評価した. MニγAME・4ME−+γNoc/VOC+ γpoz」DOL+γFLC・FL(}卜γDM1)ノレf+ζ (12) パラメータを推定した結果,5%水準以下で有意となった 項目を表8に示す. 表8潜在セグメントロジットモデルにおいて 有意なパラメータが得られた項目
Sml Sm2 Sm3
水辺全般の経験 小さい頃水辺に親しんだ ++ 水辺の近くに住んだことがある 一一 洪水被害に遭ったことがある + 近隣河川の経験 昔はきたなかったと感じた 個人属性 男性20歳代
60歳以上 居住年数30年以上 世帯年収700万円以上 十十 十 十 十十 一 一 十十 一 , 十 , 1%水準で有意に正,負 5%水準で有意に正,負 Sm2はこの地域に長く住んでいる住民およびシニア層 が多く,洪水被害体験を含めた水辺経験が豊富である. Sm2が全ての機能に金銭価値を見いだしている理由として, ●過去に洪水被害を経験している住民が多いことから, 治水機能に金銭価値を見いだしている ●小さい頃から水辺に親しみ,水辺の持つよさを実感し ていることから,アメニティ機能に金銭価値を見いだ している ●昔から近隣河川を知っており,近隣河川の持つ機能に 対して理解が進んでいることから,機能全般に金銭価 値を見いだしている ことなどが考えられた. Sm2では20歳代が多く,水辺の近くでの居住経験が ない人が多い.Sm3があらゆる機能に金銭価値を見いだ していない理由として●水辺を身近に感じた経験がないことから,近隣河川の 持つ機能を認識できない ことが考えられた.特に20歳代は,幼少時から身近な 水辺のない環境で育った人が多いと考えられ,水辺の経 験の乏しさが機能に対する無関心を生じさせているもの と推察された. 5.むすび 本研究では,千葉県北西部をモデルに,都市中小河川 に関する住民アンケートを行い,潜在セグメントロジッ トモデルを適用したコンジョイント分析によって,川に 対する意識が,川の機能に対する金銭価値評価へ与える 影響を解析した.普段利用している/目にしている川 (近隣河川)の機能に関する金銭価値評価は,近隣河川 への意識に応じて優先する機能に差があることを明らか にした.また,その評価の違いは近隣河川だけでなく水 辺全般の経験の影響が大きいことが推察された.本研究 で示した結果および住民の対象河川への意識をもとに, 優先機能の多様性を把握する解析手法は,これからの都 市河川のありかたをデザインする上で整備の優先順位や 予算配分を効率的に立案する上で有用なアプローチであ ると考えられる.また,河川以外の環境保全に関する価 値評価の解析においても,本手法は適用が可能であるこ とから,今後,多様な環境の価値の解析への活用が期待 できる. 参考文献 1)那須守,横田樹広:ビオトープの環境経済評価に関する 研究(その1) コンジョイント分析による限界支払意思 額の算定,日本建築学会 2004年度大会学術梗概集D−1 分冊,p.893(2004). 2)横田樹広,那須守:ビオトープの環境経済評価に関する研 究(その2) ビオトープ整備事業の社会的便益の試算, 日本建築学会 2004年度大会学術梗概集D−1分冊,p.895 (2004). 3)山縣弘樹,山中大輔,荒谷裕介,南山瑞彦:コンジョイント 分析を用いた下水処理水によるせせらぎ水路の多面的な便 益の評価,環境システム研究論文集,Vol.35, pp.287−294 (2007). 4)Jun Nakatani, Toshiya Aramaki, and Keisuke Hanaki: Applying choice experiments to valuing the different types of environmental issues in Japan, Journal of Environmental Management, VoL84, No.3, pp.362−376 (2007). 5)大塚佳臣,栗栖(長谷川)聖,花木啓祐:手賀沼集水域 をモデルとした都市河川の水辺価値選好評価,水環境学 会誌,VoL31. No.8,471−480(2008). 6)栗山浩一:環境評価ワークショップ,第2章 環境評価の 現状と課題,築地書館,東京(1999). 7)国土技術政策総合研究所:外部経済評価の解説(案)(2004). 8)Mitchell C. R, and Carson T. R.:Using Surveys to Value Public Goods−The Contingent Valuation Method−, Resources for the Future(1990). 9)村川三郎,西名大作,中野恵美,大地啓子:河川環境に 対する整備前後の住民評価の比較分析,日本建築学会計 画系論文集,VoL533, pp.37−44(2000). 10)山下三平,前原暢仁:河川環境に関する住民意識の構造 変化について:1988年,1995年および2002年の比較, 環境システム研究論文集,VoL31, pp.189−194(2003). 11)和田安彦,道奥康治,和田有朗:住民の暮らしからみた 水辺環境の評価.土木学会論文集No.776, pp.83−95 (2004). 12)村川三郎,西名大作,上村嘉孝河川環境の現況整備と修 景整備案に対する住民の評価構造の分析,日本建築学会 計画系論文集No.513, pp.53−60(1998). 13)皆川朋子,島谷幸宏:住民による自然環境評価と情報の 影響:多摩川永田地区における河原の復元に向けて,土 木学会論文集No.713, pp.115−129(2002). 14)大塚佳臣,栗栖(長谷川)聖,中谷隼,花木啓祐:河川 の物理属性及び住民の認知に基づく類型化による都市河 川の価値評価構造解析 Vol.37. pp.271−282 (2009) ,環境システム研究論文集, ・ 15)栗山浩一,庄子康:環境と観光の経済評価,第4章離散 選択モデルによる推定手法の新たな展開,効草書房,東 元其 (2005). 16)大塚佳臣,栗栖(長谷川)聖,中谷隼,花木啓祐:コン ジョイント分析による都市河川に対する住民の金銭価値 及び支払手段の評価,環境工学研究論文集,VoL46. pp.581−592 (2009). 17)大隅昇:インターネット調査の適用可能性と限界 データ 科学の視点からの考察一,行動計量学,VoL29, No.1, pp.20−44 (2002). 18)岡太彬訓,守ll剛,木島正明:マーケティングの数理モ デル,第3章 因果関係と構造を把握するための統計手法 一潜在クラス分析法,朝倉書店,東京(2001).