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鉛‑銀合金アノード表面の 二酸化鉛の量に関する考察
野坂 肇
AConsiderationabouttheAmountofPbO2 ontheSurfaceofPb‑AgAlloyAnode
HajimeNozAKA
(昭和58年10月31日受理)
WehavemeasuredanamountofPbO2onPbandPb‑Agalloyanodebefore.Thenwehave experiencedthatthedetahavehadaconsiderableuncertainty.Sowerepeatedtheexperiment manytimesinordertominimizeanerror,butcouldnotreducetheuncertainty.
We,however,representedthedetathat y=cI+&":timey:amoutofPbO2
usingthemethodeofleastsquares,andcomparedsomesamplesaboutq,8andstandarderror;
S.Thentherewascleardifferenceon(IIbetweenPb‑Agalloycooledrapidlyandonecooled slowly(25。C/hr)
1 . 緒 言 て各試料の特徴を比較できることが明らかとなった
ので報告する。
非鉄金属を硫酸酸性水溶液から電解採取する場合 アノードとしては一般に鉛‑銀合金が用いられてい る。鉛あるいは鉛合金アノードについては古くから 研究が行なわれており,数多くの報告がなされてい る。 しかしアノード表面に生成する二酸化鉛の量を 測定した報告')は少なく,アノードの改質を考える 場合, これを明らかにしておくことは大切であると 思われる。
著者らは以前に鉛‑銀合金アノード表面の二酸化 鉛の量を測定し,銀含有量の増加とともに生成速度 が減少することを報告した2)。その際測定値にばら つきが多く,生成速度を求めるためには図上で直線 部分の傾きを取らざるを得ないことを経験した。
ところで著者らは,銀含有量の等しい鉛‑銀合金で も,凝固時の冷却速度が異なると合金の組織もア ノード電位も異なることを見い出した3)。そこで凝 固時の冷却速度が従来のものより小さい合金につい ても二酸化鉛の生成速度の測定を試みたところ,や はりばらつきが多かった。
そこで測定値がばらつく原因を明らかにし,再現 性の良いデータを得るために実験を繰り返し行なっ た。その結果,ばらつきを少なくさせることはでき なかったものの,測定値を直線回帰することによっ
2. 実験方法
この実験の再現性が悪かった原因として,実験方 法の面では次のような点が考えられる。
i)長時間の通電あるいは電極の繰り返し使用に よって,電極の側面に電解液が侵入してしまうこ とを経験したが, この時反応に関与する電極面積 が増大し電流密度が変化した。
ii)電極表面を研磨しただけで実験に供したが,研磨 した際の表面加工層の影響が出た。
そこでこの2点を考慮し, これまでの実験方法を 以下のように変更した。
a)鉛および鉛合金を最初から1cm×1cmの大きさ に整形するのではなく,やや大きめのものを合成 樹脂に埋め込み,表面を研磨した後1cm×1cm の広さを残して合成樹脂でシールする。
b)実験に供する前に表面をエッチング,超音波洗浄 することによって表面加工層を取り除く。
電解方法,電流密度,装置および二酸化鉛の定量 方法は前報4)と同様であるが,電解液は1509/1の硫 酸水溶液,温度は40。Cとした。またエッチング液に は氷酢酸3:30%過酸化水素水1の混合液を用い 昭和59年2月
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野坂 肇
というような定性的な判断にとどめるのが妥当であ ると思われる。
しかし結果を正確に表わすことはできないが,最 小二乗法によって直線回帰し,傾き,y切片というよ
うな数値で表わしておくのが各試料を比較する上で 便利と思われる。そこで回帰直線を
y=q+&x:時間y:二酸化鉛の量 と表わし,係数α,βそれに標準誤差Sを各試料につ いて示したのが表3である。また表3には参考のた め測定回数〃も付け加えておく。
表3で最も注目すべき点は, αが急冷凝固試料で は正の値を取り,徐冷凝固試料では純鉛以外は負の 値を取るということである。ここで1.0‑C, 0.6‑SC, 0.8‑SC,1.0‑SCについては実験誤差としてOと見な すこともできる力嘗, その他の試料では明らかにOで はない。要するにαは,銀含有量の増加とともに,
急冷凝固試料の場合正の値からOに近づいて行き,
徐冷凝固試料の場合負の値から0に近づくというこ とになる。
また回帰係数βは銀含有量の増加とともに小さ くなるはずであるが,逆転している場合もある。
そしてSは一般に銀有量の多い試料ほど小さい 値となっている。
回帰係数βは本来二酸化鉛の生成速度を表わす ものであるが, 0.8‑Cの方が1.0‑Cよりも小さいの はαの値の差によるものと考えられ,単純な比較は できない。ただαがOに近い4つの試料については βが生成速度を表わし, これらの間では直接比較す
表2二酸化鉛の定量法の比較 て,エッチング時間も30秒一定とした。
また従来の鉛‑銀合金は金型に鋳造したもの(急冷 凝固試料,C)であり,それに対して今回新たに実験 に用いた合金は,電気炉中で凝固時の冷却速度を 25。C/hrに制御したもの(徐冷凝固試料, SC)であ る。これら実験に用いた合金の銀含有量の分析結果 を表1に示す。また銀含有量は仕込みの値で表示す ることにする.
表1 試料合金の銀含有量
3. 結果および考察
実験方法をa)のように変更することによって電 極側面に電解液が侵入することはなくなり,電極の 見かけの表面積を一定に保つことができるように なった。またb)のように処理した後表面を顕微鏡で 観察したところ,各試料の組織が明瞭に現われてお り,表面加工層は完全に除去されたことがわかった。
本実験のように測定値にばらつきが予想される場 合,通電時間を細かく区切って測定することは得策 ではないと考え, 1日と2日に限って実験を行なっ た。その結果を図1に示す。
電極表面を常に一定の方法で処理しているにもか かわらず,測定値にばらつきが多い。この原因とし て二酸化鉛の定量法が不適当であるということも考 えられるが,試薬の二酸化鉛を用いた試験ではJIS に準ずる方法よりも合理的な値を示した。(試薬純度 は95%以上)その結果を表2に示す。
以上のようなことから,測定値のばらつきの原因 は不明というのが現状である。そしてこのことがこ れまで二酸化鉛の量に関する報告が少なかった理由 の1つと思われる。
図1については
i )銀含有量の増加とともに二酸化鉛の生成速度が
小さくなっていく。
ii)二酸化鉛の生成速度は徐冷凝固試料の方が急冷 凝固試料よりもやや小さくなる傾向を示してい
る。
秋田高専研究紀要第19号
仕込みの値閉 分析値協
0. 1 0.的4
0.2 0. 183
0.6 も 0.512
0.8 0.774
1.0 0.966
PbO2(Wt%) PbO2(Wt%) byChelateTit.
ILQ‑KMnO4 (本法)
94.3 Av.
98.6 95.8 94.4
97.8 Av.
98.6 98.5 99.0
KI‑Na2aO3 87.4 85.9 89.0 87.3
95.6 98.2 97.4 98.5
Na2S203‑12 (JIS)
99.3 98.9 99.3 99.3 99.7 腿 96.8 1
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鉛‑銀合金アノード表面の二酸化鉛の量に関する考察
○○
15
Pb 0. 1%Aに
●
&
●●■
10
●
︵巳●︑ ●○○○
号
︵宮黄目︒と異︶咽e窃等趨川e腫悩エー︑卜
5
&
0
●●Qろ︵巳
0.8%Ag
0.6%Ag 1.0%Ag
● ○●■門日 ○○●■巳
00
§
5 8828
OOO●●●●● ○ ●●●●●一●
8 ○●●●●●
OQ︺●●■ろ 8
i
0
1 2 0 1 2
通電時間(日)
0 1 2
○急冷凝固試料 ●徐冷凝固試料
図1 二酸化鉛の定量結果
昭和59年2月
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野坂 肇
表3 回帰直線の係数および標準誤差
佐々木金一助教授に深く感謝し, また実験を行なう に当り終始御指導頂いた東北大学戸沢一光教授,梅 津良昭助教授に謝意を表します。
ることができる。
y切片αおよび標準誤差sが合金の性質とどの ように結び付くのか今のところ明らかではない。 し かしPbよりはl.0‑Cが, 1.0‑Cよりは1.0‑SCがア ノードとして良い性質を持っていることが明らかと なっており2)3), そのことと関連させると, αはOに 近く,βはなるべく小さく,そしてsも小さい合金 がアノードとして優れていると思われる。
ここで得られた結果は直接各試料の特性を表わす ものではないが,現在著者らが研究を進めている他 の鉛合金を鉛‑銀合金と比較する上で役に立つもの
と思われる。
参考文献
1) D.Pavlov,C.N.Poulieff,E.Klaja,andN.
Iordanov, J. Electrochem. Soc., 116, 316 (1969).
2) 戸沢,梅津,野坂,
日本鉱業会昭和57年度春季大会講演要旨集,p.
273.
3) 野坂,梅津,戸沢
同上昭和58年度春季大会講演要旨集,p.
173.
4) 野坂,梅津,秋田高専研究紀要, 16, 58(1981).
4. 謝 辞
鉛‑銀合金の銀含有量を分析して頂いた秋田大学
秋田高専研究紀要第19号
a (×10‑6) β(×10‑6) S(×10‑6) 、
Pb‑C 2.23 4.02 2.84 13
0. 1‑C 1.84 5.29 1.55 13
0.2−C 2.56 3.62 3.01 13
0.6‑C 2.23 2.30 1.09 . 17
0.8−C 2.01 1. 16 0.69 14
1.0‑C 0.46 2. 11 0.51 12
Pb‑SC 1.80 4.28 1.67 16
0. 1‑SC −1.72 6.53 2.43 17
0.2‑SC ‑1.99 5.40 1.89 20
0.6−部 −0.70 2.63 1.67 19
0.8‑SC ‑0.01 1.54 1.01 18
1.0−部 −0.03 1.48 0.83 24