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服部遺跡からの出土木炭の樹種の同定

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

服部遺跡からの出土木炭の樹種の同定

著者 平田 善文

雑誌名 古文化財教育研究報告

巻 3

ページ 17‑22

発行年 1974‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/364

(2)

服部遺跡からの出土木炭の樹種の同定  

平   田   善   文  

(奈良教育大学林字研究室)  

緒   ロ  

この報告は、昭和47年、鳥取県倉吉市教育委員会によって発掘調査された、同市服部遺跡の   住居地の埋土中から出土した木炭について樹種の同定を行った結果に関するものである。   

この調査研究の幾会をあたえていたゞいた天理大学付属参考館学芸員、筐田雅昭氏、奈良教育   大学古文化財教育研究室長 市川米太博士に対し深甚の謝意を表する次第である。   

文武料を供与いたゞき、且調査の便宜を賜った倉吉市教育委員会の関係者の方々にも厚くお礼   を申し上げるものである。   

服部遺跡の概況  

服部遺跡は、鳥取県倉吉市服部部落の北方に位置し、弥生時代後期から古墳時代の全般および   奈良時代に至ると云われる住居址群ならびに古墳群である。これ等の住居址群ならびに古墳群の  

うち、6基の古墳と11の住居址について発掘調査が行われた。そのうち、2号住居地、4号住   居址および7号住居址の3つの住居祉の埋土中から木炭が出土した。  

この度の木炭の樹種の同定は、各住居址からの出土木炭の全部について行ったものである。同    定に供した試料に幽しては、表1に示す通りである。  

表l    住居址別試料表  

住居地番号    供試点数    供試量グ    2号住居址    2 3    8 6 6   

4号住居地   

2   

2 2 0   

7号住居址   

3   

1,5 2 0   

計    2 8    2,6 0 6   

註:。供読点数は、住居址の埋土中からの出土場所数を示す。  

0供試量は、恵贈された試料の気乾重量を示す。  

−17−   

(3)

方   法  

現在、木炭の樹種の同定に関する組織構造上の諦別拠点による報告は殆んどない。   

主として、木炭の外部形態の状況、炭質評価のための硬度尊から推定しているのが現状である。  

筆者は先に平城宮址からの出土木炭の樹種同定に捺し、主として黒炭の場合、その横断面(木口   面,Crossection)における管孔(Pore,導管,Vessel)および従断面(径断面,  

VerticalSection)上の髄線(Ray)が、炭化后も時々完全な状態で保たれていること   を認めた。この度もその方法を用いた。即ち、普通木材の樹種の同定に用いられる識別拠点とし    ての管孔の横断面上における配列形態、従断面における管孔の形態および、管孔の大きさ(直径)  

を木炭に応用する方法である。たゞ従断面における管孔の形態、特に細胞膜の状態については、  

炭化の過程で肥厚状態等の点については不明確になっている。髄線については略々明瞭に観察出   来る。尚観察は管孔の大きいものは、肉眼でも認めることが出来るが、この度は凡ての試料を実   体顕微鏡(×20)で検鏡した。この様に検鏡した結果を、現存木材のそれと比較検討して樹種   の同定を行った。   

結果と考察  

以上の方法で、出土木炭の全試料について調べた結果、服部遺跡の住居地の埋土中から出土し   た木炭の樹種は、表Ⅱに示す如く、全試料が広葉樹で管孔を有しており、4科、5属、7種を確  

認することが出来た。   

叉管孔の大きさを測定した結果については、表Ⅲに示す如くである。  

表Ⅱ  出土木炭の樹種同定蓑  

科   名    属   名    種   名   

い  ば  ら  科  さ  く  ら  属  サクラ Prunus Maximowiczii  Rosaceae  Prunu   

()    (s)   

ぶ   な  

(Fagaceae)    科  こ  な  ら  属  コナラ Quercus serrata    uercus  

(Q)  

クヌギ Quercus acutissima   シラカシQuercus myrsinaefolia  

しいの き属 (Castanopsis)  シ イ Castanopsis Caspidata   

か ば の き 科  く ま し で 属  イヌシデCarpinus Tschonoskii  (Betulaceae)  (Carpinus)   

か  え  で  科  か  え  で  属  カエデ Acer Palmatum  Aceraceac  Acer   

()   

()   

4    5    7   

(4)

表Ⅲ  出土木炭の管孔の大きさ(直径〟)  

管 孔 の 大 き さ 〝  

樹   種  

出 土 木 炭    木 材 標 本   

ク   ヌ  

ギ    25 0′}280    36 5′・一8 80   

コ   ナ   ラ    17 0′−ノ2 0 0    2 5 0′一−2 9 0   

イ    15 0′、ノ16 0    17 0′〉19 5   

シ   ラ   カ   シ    8 5′}10 0    140′・}170   

イ  ヌ  シ  デ    7 0′、ノ 9 0    9 0′、ノ120   

ヤ  マ ザ ク  ラ    5 5′−ノ 7 0    80′〜100   

カ  

ェ   デ    50′} 6 0    70′〜 9 0  

尚研究室に保存する木材標本の管孔の大きさを併記した。これによると出土木炭の管孔の大きさ   は、木材のそれと比較して凡そ809ら程度小さい偵を示す。これは木材が炭化されるとその収縮が   認められ、横断面において最も大きい収縮を示すことが知られている。   

以上ワッの樹種の同定にあたって、それぞれの樹種について管孔、髄線、年輪等の識別拠点を概   説すれば次の通りである。  

1.クヌギ(Quercus actisima CARR)   

生材の場合もそうであるが、木炭の場合も年輪は非常に明際で肉眼でも認められる。横断面に   おける管孔の配列の型は、環孔性晦射型で、春材部の管孔が非常に大きく250〜280〟で、  

年輪に沿ってほぼ一列の状態で環状に配列し、秋材部の管孔は、髄線に沿って1〜2列で放射状  

に配列し、その大きさは中心から外側に向って次第に小さくなる。   

髄線は極めて広く、径断面では充分肉眼でも認めることが出来る。   

コナラ(Quercus serrata TflUNB)   

年輪は明瞭、肉眼でもほぼ認められる。横断面における管孔の配列の型は、クヌギと同じく環   孔性軸射塾であるが、年輪に沿って環状に沿って配列する春材部の管孔は2〜3列でその大きさ   はクヌギに比して小さい。秋材部の管孔は、断面の中心からほぼ2列の状態で放射状に配列し、  

管孔の大きさも小さくなる。髄線は広いがクヌギに比してせまい。肉眼では綿々認めがたい。  

−19−   

(5)

シ イ (Castanopsis Caspidata SCHOT)   

年輪の識別は、肉眼では不明である。横断面上の管孔の配列型は、断面の中心から放射状に   配列する栢射孔型で、管孔の大きさは、150〜16G〃と小さい。春材部と秋材部の管孔の   大きさには余り差がない。髄線も極めて細緻である。この樹毯の木炭は非常に軽くやわらかい。   

シラカシ(Quercus myrsinaefolia BLUM)   

年輪の識別は、掛こ秋材部の組織の密な部分が金属的な光沢に富み肉眼でも認められる。   

横断面における管孔の配列型は、断面の中心から放射状に一列で配列する幅射孔型である。  

管孔の大きさは、クヌギ、コナラに比して非常に小さく80〜100甘程度で、春材部と秋材   部との管孔の大きさには余り差がない。従断面上の髄線は細微で肉眼では認めがたい。   

イヌシデ(Carpinus TschonoskiiMAX)   

年輪の識別不明瞭である。横断面上における管孔の配列の型は、シラカシと同じ幅射孔型で   あるが、3〜5列状で配列している。管孔の大きさは小さく、70〜85〟程度で肉眼ではみ   とめがたい。髄線は細く肉眼では認めがたい。   

ヤマザクラ (Purnus MaximowicziiRUPR)   

肉眼による年輪の識別は不明瞭である。横断面における管孔の配列は、敵孔型で、1年輪中   の春材部、秋材部ともに平等に分布しており、その大きさは小さく56〜70〆程度で肉眼で   は認めがたい。春材部、秋材部による管孔の大きさの差は認められない。径断面における髄線   は極めて細く、肉眼では認めることが出来ない程度である。   

カェデ(Acer formosum CARR)   

年輪は殆んど肉眼で諦別しがたい。横断面における管孔の配列の型は、サクラと同じく春材   部、秋材部に平等に分布する散孔型である。管孔の大きさは極めて細微で肉眼では殆んど認め   られない。春材部、秋材部による管孔の大きさに差は認められない。髄線も又極めて細微であ  

る。  

摘  要  

鳥取県倉吉市服部遺跡の住居祉の埋土中から出土した木炭について樹種の同定を行った。  

−20一   

(6)

1.同定の方法として、黒炭の場合であれば、横断面および従断面における管孔、髄線の配列状    態、大きさ等について、肉眼又は実態顕微鏡によって観察可能であることが認められた。この    方法によって、服部遺跡の出土木炭の樹種の同定を行った結果をまとめると次の通りである。  

2.服部遺跡住居地からの出土木炭の樹種は、クヌギ、コナラ、シラカシ、ヤマザタラ、シイ、   

イヌシデ、カエデの7種であった。   

植物分煩からは、4科5属7種であった。  

a.これ等の樹種は、シイを除いて何れも現在、木炭用原木として価値の高いものである。  

4.炭質に関して硬度の測定を行ったが、4.0〜6.5と比較的高い数値を示し、而も均一性の高    い点からも、かなり製炭技術が進んでいたものと推測出来る。(住居祉別、樹種別の出土状況    と共に后日報告する予定)   

文   献   

1.金平亮三、日本産重要木材の解剖的識別、1926    2.芝本武夫、木材炭化、1952   

3.関谷文彦、木材の解剖的性質、1947   4.三浦伊八郎、林産製造字、1946   5.矢頭献一、樹木学一落葉広葉樹編、1965   

6.矢頚献一、岩田利治、樹木学一常緑広葉樹編、1966  

7.Teffrey,E・C・,Anatomy of woody plants.1922  

−21一   

(7)

出土木炭の管孔配列型の図(横断面)  

−一−i l  

JuⅥり+﹂u−.   

ト鱒f諺型    ヤマザクラ  

皿≡環孔痛射型   コ ナ ラ  

■Ⅲ:環函稿射型    ク ヌ ギ  

Ⅳ:散「孔 型   カ ニ デ  

Ⅴ:稿射孔型(単列)シラカ シ  

Ⅵ:稿射孔型(複列)イヌシデ  

Ⅶ:稿射孔型  

シ    イ  

−22−  

参照

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