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「リメディアル教育」の概念とその可能性

著者 齊藤 伸

雑誌名 聖学院大学総合研究所Newsletter

巻 Vol.29

号 No.2

ページ 25‑26

発行年 2019‑10‑31

URL http://doi.org/10.15052/00003755

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はじめに

 本研究ノートの目的は、日本リメディアル教育 学会(以下、JADEと略記する)第15回全国大会 の総会(2019年 8 月27日)において、広く一般に 知られ、用いられている「リメディアル教育」の 概念が正式に定義されたことを受けて、その意義 と可能性を改めて考察することである。今回の定 義づけの発端は、JADEの現会長である谷川裕稔 によると、2018年12月に『カレッジマネジメント』

誌の編集部から問い合わせがあり、以下の 3 つの 質問に回答することからであった。すなわち、① 高等教育機関でのリメディアル教育を実施してい る背景・経緯・目的、②リメディアル教育実施の 現状、③リメディアル教育の現状の課題・方向性1 )、 である。これらは総じてわが国における「リメディ アル教育」の現状をめぐる質問であり、それらに 誤解なく回答するためには、そもそも「リメディ アル教育」とは何かに関して、質問者と回答者が 相互に共通した理解を有することが前提される。

ところが、この概念はそれを用いるものによって、

意味する内実に大きな隔たりがあり、著者はすで に「学士課程における英語教育と<リメディアル 教育>」と題してその考察を行ったことがある2 )。 たとえば2008年に中教審の答申に組み込まれた「リ メディアル教育」は「補習教育」の言い換えとし て用いられているが、そうした「リメディアル的な」

教育内容のすべては本当に正課授業の外で行われ なければならないのか。そうした点について上述 の拙稿では学士課程における英語教育を例に挙げ て考察した。そこで述べたように、これまで「リ メディアル教育」の概念はいくつかの異なる意味 合いで用いられてきたが、この度のJADEによる 定義づけによってそれが明確な指針を得たことの 意義と可能性を考えてみたい。

「リメディアル教育」の定義

 JADEの2019年総会において、「リメディアル教 育」は次の 2 点を意味すると定義された。

  1 . 「リメディアル教育」は「学習・学修支援」

を意味する。

  2 . 大学院生を含む高等教育機関に学ぶ全ての 学生と入学を予定している高校生や学習者 に対して、必要に応じてカレッジワークに 係る支援を高等教育機関側が組織的・個別 に提供する営み、またその科目・プログラ ム・サービスの総称3 )

 第一に、「リメディアル教育」は「学習・学修支 援」と同義であり、主に正課授業の外で行われる 教育を指す。これまで文科省は中等教育レベルを 下回る内容は、この第一の意味でのリメディアル 教育、すなわち学習・学修支援として行われるべ きであると指摘してきた。

 それに対して第二の定義においては、それが対 象とするのはいわゆる「習熟度」の低い学生だけ に留まらないことが特徴的である。それは、「必要 に応じた」学習・学修の支援の提供であるため、

必ずしも「補習的な」内容に限定されず、むしろ「<

単位非認定>の支援・科目はもちろんのこと、<

単位認定>のそれらにも関わる営み」4 )が含まれ る。また、ここでのそれは入学前の高校生から、

大学院生にまでその対象が拡大され、高等教育の 入口から出口まですべてのフェーズで学習者を支 える基礎教育とされる。

リメディアル教育の可能性

 リメディアル教育は、当然のことながら単位取 得を目指す学生、「学びなおし」を意図する学生に 向けた「学習・学修支援」において最大の役割を

[研究ノート]

「リメディアル教育」の概念とその可能性

齊藤  伸

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聖学院大学総合研究所 NEWSLETTER vol.29, No.2, 2019

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果たすことが期待される。しかしながらそうした

「支援」は、いつしかその学生にとって不要となる ような「支援」でなければならい。それゆえ「リ メディアル教育」はつねに第二の定義を見据え、「必 要に応じて」自ら学び、自ら学び続けることがで きる「自律的な学修者」の育成がその目的に含まれ ねばならない。このような意味で、「リメディアル 教育」は「すべての学生の必要、目的、能力に適っ た教育機会を促進する」5 )という、かつてアメリカ のNADE(National Association for Developmental Education)が設定した第一の目的に沿って、その 時々に多彩で多用な背景をもつ学生の必要に応じ た「科目・プログラム・サービス」の提供が求め られる。

おわりに

 これまでさまざまな意味で用いられていた「リ メディアル教育」の概念が、かなり「広義」にで はあるが明確な文言でその内容が規定されたこと には大きな意義があろう。それは中等教育レベル の内容に限定され、そこに留まる必要はないし、

反対に単位認定のプロセスがつねにそれと距離を 置いたところで展開される必要もないことが言明

されたからである。大学での学びを教育者・教育 内容の観点から線引きするのではなく、むしろ一 人一人の学生が入学から卒業まで、それぞれの時 宜にかなった学びを実現するための「支援」が「リ メディアル教育」のあるべき姿となろう。そうし た意味においては、JADEによるこの度の定義づ けの承認はリメディアル教育の実践、研究に携わ るものにとって、それを後押しする大きな原動力 となるに相違ない。

1 )谷川裕稔「JADE会員が共有できる<リメディアル教 育>の定義の構築に向けて( 2 )」『リメディアル教育研究』

第13巻、2019年、 1 – 3 頁参照。

2 )齊藤伸「学士課程教育における英語教育と<リメディ アル教育>」『聖学院大学総合研究所Newsletter』 vol. 25、

No. 2 、2015年、 8 –10頁。

3 )「日本リメディアル教育学会」:http://www.jade-web.

org/guidance/definition.html(2020/02/07/最終アクセス)

4 )同HP参照 5 )前掲拙稿参照

(さいとう・しん 聖学院大学基礎総合部特任助手)

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参照

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