修士論文
保型関数論とその応用
三重大学大学院 教育学研究科
教育科学専攻 理数・生活系教育領域
213M030西田有里
2015年2月9日
目 次
1 1次分数変換 3
2 保型形式 3
3 Γ関数とζ関数 3
4 アイゼンシュタイン級数 4
5 θ関数 4
6 θ2(z)の計算とアイゼンシュタイン級数の計算 5
7 θ(2z)θ(4z)の計算とアイゼンシュタイン級数の計算 19
1
1次分数変換
次の変換を1次分数変換という.Hを上半平面とし,z∈Hとする.すなわちH={z| ℑz >0} とする.ここでℑzはzの虚部を表す.
z7−→ az+b
cz+d , ad−bc̸= 0 ここでI=
( 1 0 0 1 )
,SL(2,Z) = {(
a b c d
)
|a, b, c, d∈Z, ad−bc= 1 }
とし,次のような1次分 数変換を考える.
{
z7−→ az+b cz+d|
( a b c d
)
∈SL(2,Z)/{±I} }
q∈Nとする.
Γq = {(
a b c d
)
∈SL(2,Z)|a≡d≡1, b≡c≡0 (mod q) }
を,レベルqの主合同部分群という.あるΓqを含むSL(2,Z)の部分群を合同部分群という.
2
保型形式
Γを合同部分群とし,k∈Nとする.Γに対する重さkの保型形式とは, f
(az+b cz+d
)
= (cz+d)kf(z) ( (a b
c d )
∈Γ) を満たし,上半平面H で正則で,カスプでも正則な関数である.
3 Γ
関数と
ζ関数
Γ関数とは,階乗の概念を一般化した関数であり,実部が正となる複素数zについて,次の積分 で定義される関数である.
Γ(z) =
∫ ∞
0
tz−1e−tdt.
次のような基本的性質をもつ.
Γ(n+ 1) =n!.
Γ(z) = (z−1)Γ(z−1).
Γ(1 2) =√
π.
Γ(z)Γ(1−z) =−zΓ(z)Γ(−z) = π sinπz.
Γ関数はアイゼンシュタイン級数のカスプでの値を出すために使用した.
ζ関数とは,ζ(s) =∑∞
n=1 1
ns で表される関数のことである.ただし,ζ(0) =−12である.
0< a≤1において,次のような性質をもつ.
ζ(s, a) =−i(2π)s−1Γ(1−s)[e12sπiζa(1−s)−e−12sπiζ−a(1−s)], ζa(1−s) =
∑∞ n=1
e2nπia n1−s .
ζ関数はアイゼンシュタイン級数の値を出すために使用した.
4
アイゼンシュタイン級数
δ(aN1) =
1 (a1≡0 (modN)) 0 (a1̸≡0 (modN))
,k∈Nとする.kが奇数のときはN ≥3とする.ΓN に対 して,重さkのアイゼンシュタイン級数は次の級数である.
Ek(z;a1, a2, N) =δ(a1
N)( ∑
λ≡a1 (N) µ≡a2 (N)
(λz+µ)−k|λz+µ|−2s)
s=0.
ℜ(k+ 2s)>2のとき,上半平面H のコンパクト部分集合において,一様絶対収束する.ℜは
実部を意味する記号である.アイゼンシュタイン級数は,ΓN に対して保型形式である.ただし,
k= 2のときは正則ではないため,正則保型形式ではない.
5 θ
関数
TanneryとMolkの記号を用いると,θ関数は次の4通りに書くことができる.q=eπizとおく.
θ1(v|z) =−i
∑∞ n=−∞
(−1)nq(n+1/2)2e(2n+1)πiv,
θ2(v|z) =
∑∞ n=−∞
q(n+1/2)2e(2n+1)πiv,
θ3(v|z) =
∑∞ n=−∞
qn2e2πinv,
θ4(v|z) =
∑∞ n=−∞
(−1)nqn2e2πinv. (
a b c d
)
∈SL(2,Z),c >0に対して,θ1, θ2, θ3, θ4の変換は,次の式で表すことができる.
θ1 ( v
cz+d| az+b cz+d
)
=ε1
√cz+d
i eπicv2/(cz+d)θ1(v|z), θ2
( v
cz+d| az+b cz+d
)
=i3−de(πi/4)dc)ε2
√cz+d
i eπicv2/(cz+d)θ1−c,1−d(v|z),
θ3 ( v
cz+d| az+b cz+d
)
=i3−b−de(−πi/4)dc)e(πi/4)(c+a)(d+b)ε2
√cz+d
i eπicv2/(cz+d)θ1−a−c,1−b−d(v|z), θ4
( v
cz+d| az+b cz+d
)
=i2−beπiab/4ε2
√cz+d
i eπicv2/(cz+d)θ1−a,1−b(v|z).
ここで,ε1,ε2は次の式で表される.
ε1=−iε(a, b, c, d)3
=
(dc)i(c−3)/2e(π/4)c(a+d) (c odd), (cd)eπi/4i(1−d)/2e(π/4)d(b−c) (d odd), ε2=ε2(a, b, c, d)
=
(ac)i(c+1)/2e(π/4)c(a+d) (c odd), (ac)e(−πi/4)i−(a+1)/2e(π/4)a(b−c) (a odd).
ここで,θµ,ν(z|v)は,
θµ,ν(v|z) =
∑∞ n=−∞
(−1)νne(n+µ/2)2πize2πi(n+µ/2)v
で定義される.θ関数はzの関数とみたとき,保型形式に関係する.以下θ(z) =θ3(0|z)とする.
6 θ2(z)
の計算とアイゼンシュタイン級数の計算
Γ4に対するリーマン面の種数は0であるから,リーマンロッホの定理より,重さ2のカスプ形 式の次元は0である.ゆえに,θ2(z)はアイゼンシュタイン級数だけで書くことができる.今から,
θ2(z)の値をΓ4のアイゼンシュタイン級数の1次結合で書くために,θ2(z)のカスプでの値とΓ4 のアイゼンシュタイン級数のカスプでの値をすべて計算する.
θ3 ( v
cz+d | az+b cz+d
)
=i3−b−de(−πi/4)e(πi/4)(c+a)(d+b)ε2
√cz+d
i eπicv2/(cz+d)θ1−a−c,1−b−d(v|z) から
θ2
(az+b cz+d
)
= (−1)3−b−d(−i)i(c+a)(d+b)ε22i−1(cz+d)
× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
.
ゆえに,
(cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
= (−1)3−b−d(−i)i(c+a)(d+b)ε22i−1
× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
.
ε2についてcが奇数の場合とaが奇数の場合があるので,それぞれについて場合分けして考える.
・c:奇数のとき (cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
= (−1)3−b−d(−i)i(c+a)(d+b)(a
c)2ic+1e(πi/2)c(a+d)1 i
× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)4−b−dii(c+a)(d+b)ic+1ic(a+d)i−1× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)−b−di1+(c+a)(d+b)+(c+1)+c(a+d)−1× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)−b−d(−1)ad+cdiab+c+ac× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)−b−d+ad+cdiab+c+ac× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
.
・a:奇数のとき (cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
= (−1)3−b−d(−i)i(c+a)(d+b)(c
a)2e(−πi/2)i−(a+1)e(πi/2)a(b−c)1 i
× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a2−c)2πiz }2
= (−1)4−b−dii(c+a)(d+b)(−i)i−a−1ia(b−c)i−1× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)5−b−di1+(c+a)(d+b)+1−a−1+a(b−c)+1× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)1−b−d(−1)a(b+d)icd−a−ac−1× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
= (−1)1−b−d+a(b+d)icd−a−ac−1× { ∞
∑
n=−∞
(−1)(1−b−d)ne(n+1−a−c2 )2πiz }2
.
( )a, c:奇数のとき
lim
z→i∞(cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
= 0.
( )a:偶数,b, c:奇数のとき lim
z→i∞(cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
= (−1)−b−d+ad+cdiab+ac+c
= (−1)−b+d(c−1)+ad(−1)12a(b+c)ic
= (−1)−bic
=−ic. ( )a, d:奇数,c:偶数のとき
lim
z→i∞(cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
= (−1)1−b−d+a(b+d)icd−a−ac−1
= (−1)d(a−1)+b(a−1)+1icd−a−ac−1
= (−1)1(−1)12(cd−a−ac−1)
= (−1)12(cd−a−ac+1).
ad−bc= 1, mod 4におけるカスプの値は,0,1/4,1,2,3,2/3であるから,このそれぞれの値 について,limz→i∞(cz+d)−1θ2
(az+b cz+d
)
を計算する.
( )カスプ0のとき
lim
z→i∞(z+ 0)−1θ2 (z−1
z+ 0 )
=−i.
( )カスプ 1
4のとき
z→limi∞(0z+ 1)−1θ2
(1z+ 0 0z+ 1
)
= (−1)12(0−1−0+1)= (−1)0= 1.
( )カスプ1のとき
zlim→i∞(z+ 2)−1θ2 (z+ 1
z+ 2 )
= 0.
( )カスプ2のとき
z→limi∞(z+ 2)−1θ2
(2z+ 3 z+ 2
)
=−i.
( )カスプ3のとき
lim
z→i∞(z+ 1)−1θ2
(3z+ 2 z+ 1
)
= 0.
( )カスプ2
3 のとき
zlim→i∞(3z+ 2)−1θ2
(2z+ 1 3z+ 2
)
=−i3=i.
ここで,
Jk(s;z, w) =
∫ ∞
−∞
e2πiwvdv (z+v)k|z+v|2s, δ(a1
N) =
1 (a1≡0 (modN)) 0 (a1̸≡0 (modN)) とするとEk(z;a1, a2, N)は
Ek(z;a1, a2, N) = ∑
λ≡a1(N) µ≡a2(N)
(λz+µ)−k
=δ(a1
N) ∑
µ≡a2(N)
sgnµk
|µ|k+2s |s=0 +Jk(s;z,0) yk+2s−1
∑′ λ≡a1(N)
sgnλk
|λ|k+2s−1 |s=0
+ (−2πi)k Nk(k−1)!
∑∞ n=1
( ∑
ν|n ν>0
n ν≡a1(N)
e2πiνaN2νk−1+ (−1)k ∑
ν|n ν>0
n
ν≡−a1(N)
e−2πiνaN2νk−1)e2πinzN
と表せる.この式のそれぞれの項について計算する.
δ(aN1)∑
µ≡a2(N) sgnµk
|µ|k+2s |s=0について,k= 1,s= 0とすると,
δ(a1
N) ∑
µ≡a2(N)
sgnµk
|µ|k+2s |s=0=δ(a1
N) ∑
µ≡a2(N)
1 µ
=δ(a1
N)
∑∞ m=−∞
1 mN+a2
=δ(a1
N)1 N
∑∞ m=−∞
1
a2 N +m
=δ(a1
N)1
Nπcota2
Nπ.
次に,Jk(s;z,0)
yk+2s−1
∑′
λ≡a1(N)
sgnλk
|λ|k+2s−1 |s=0について計算する.最初に,Jk(s;z,0)
yk+2s−1 について計算する.
Jk(s;z,0) =−i2−k22−k−2ssin(πs)Γ(k−1 + 2s)Γ(1−s) Γ(k+s) . k= 1のとき,
J1(s;z,0) =−i21−2ssin(πs)Γ(2s)Γ(1−s) Γ(1 +s) Γ(s)Γ(1−s) = π
sin(πs)から
=−i21−2s π
Γ(s)× Γ(2s) Γ(1 +s)
=−i21−2sπΓ(2s)
Γ(s) × 1 Γ(1 +s) Γ(s)Γ(s+1
2) = (2π)12212−2sΓ(2s)から
=−i21−2sπ2−12π−122−12+2sΓ(s+12) Γ(1 +s)
=−i√
πΓ(s+12) Γ(1 +s). s= 0のとき,
J1(0;z,0) =−i√ πΓ(12)
Γ(1)
−i=1 i,Γ(1
2) =√
π,Γ(1) = 1から
=−i√ π√
π
= π i.
ゆえに,k= 1,s= 0のとき,
Jk(s;z,0)
yk+2s−1 = J1(0;z,0) y1+0−1
=J1(0;z,0)
= π i. 次に, ∑′
λ≡a1(N)
sgnλk
|λ|k+2s−1 |s=0についてk= 1の場合を考える.
・a1= 0のとき
∑′ λ≡a1(N)
sgnλk
|λ|k+2s−1 |s=0= ∑′ λ≡a1(N)
sgnλ
|λ|1+2s−1 |s=0
= ∑′ λ≡a1(N)
sgnλ
|λ|2s |s=0
= ∑′
λ≡a1(N)
1
|λ|2s |s=0
=
∑∞′ m=−∞
1
|mN|2s |s=0
= 2
∑∞ n=1
1 n2s |s=0
= 2ζ(0) =−1
・a1̸= 0のとき
フルビッツゼータ関数ζ(k,Na) =∑∞
n=0(Na +n)−kを用いて式変形を行う.
∑′ λ≡a1(N)
sgnλk
|λ|k+2s−1 |s=0= ∑
λ≡a1(N)
sgnλ
|λ|1+2s−1 |s=0
= ∑
λ≡a1(N)
sgnλ
|λ|2s |s=0
= ∑
λ≡a1(N)
1
|λ|2s |s=0
=
∑∞ m=−∞
1
|mN+a1|2s |s=0
= 1 N
∑∞ m=−∞
1
|aN1 +m|2s |s=0
= 1 N(
∑∞ m=0
1 (aN1 +m)2s +
∑−∞
m=−1
1
(aN1 +m)2s)|s=0
= 1 N(
∑∞ m=0
1 (aN1 +m)2s −
∑−∞
m=−1
1
(−aN1 −m)2s)|s=0
= 1 N(
∑∞ m=0
1
(aN1 +m)2s −∑∞
m=1
1
{(1−aN1) +m}2s)|s=0