中国国有企業 の経営請 負い制 の動 向
川 井 伸 一
目 次
は じめ に一 経 営 請 負 い制 とは何 か
1経 営 請 負 い制(第 一 期)の 実施 状 況一 形態 的 側面 II請 負 い制 下 の経 営 機能
111第2回 請 負 い契 約 の 内容 と特徴
は じめ に一 一経 営 請 負 い 制 と は何 か
1978年 に は じ ま る中 国 の 改 革 に お い て,国 有 企 業 の 改 革 は2つ の段 階 を 経 過 し た と され る。 第 一 段 階 は78年 か ら86ま で の 「放 権譲 利 」 の 改 革, す な わ ち,従 来 政 府 が 集 権 的 に 掌 握 して いた 企 業 管 理 権 限 を企 業 に 移 管 し, 企 業 に一 定 の 経 済 利 益 を譲 渡 す る こ とを ね ら い と した 改 革 が 実 施 され た。
そ れ は,企 業 側 か らい え ば,経 営 自 主 権 を 獲 得 し利 潤 留 保 を 拡 大 す る こ と で あ り,経 済 的 イ ソ セ ソテ ィブ を通 して 企 業 の活 性 化 を め ざす もの で あ っ た 。第 二 段 階 は1987年 か ら本 格 的 に 開 始 さ れ,現 在 まで 続 い て い る経 営 請 負 責 任 制 の 改 革 で あ る。 経 営 請 負 い制 は 「放 権 譲 利 」 の 成 果 を 踏 ま え,所 有 権(国 家)と 経 営 権(企 業)の 分 離 を 図 り,長 期 的 な観 点 か ら企 業 が 自 立 的 な 経 営 メカ ニズ ムを 発 揮 し,活 力 あ る 自立 し た 経 営 体 に な る こ とを 最 終 的 な 目標 と して い る。 自立 的 な経 営 メ カ ニ ズ ム とは,市 場 経 済 を 踏 ま え た 企 業 の 「自主 経 営,損 益 自己 負担,自 己 発 展,自 己 制 約 」 の メ カ ニ ズ ム
で あ る とされ る が,そ の メ カ ニ ズ ム の 構 築 を め ざ す 点 が 第 二 段 階 の特 徴 で あ る。
さて,企 業 の 経 営 請 負 い制 の 内 容 とは 何 か 。 ま ず そ の 内 容 を 整 理 して お こ う。
経 営 請 負 い 制 の 基 本 的 な原 則 は 「包 死 基 数,確 保 上 交,超 収 多 留,欠 収 自補 」,す なわ ち,企 業 は,① 一 定 額 の 利 潤 を 基 数 と して 政 府 へ の 利 潤 上 納 を請 負 う,② 基 数 を 超 過 した 利 潤 部 分 は 企 業 と政 府 の あ い だ で 分 け る が, 企 業 に多 くの こす,③ 基 数 に 満 た な い 場 合 は そ の 差 額 を 企 業 の 責 任 で 負 担
して 上 納 す る,と い う原 則 で あ る。 この 原 則 に基 づ い て 企 業 が 政 府 と請 負 い契 約 を結 び,国 家 に 対 して 利 潤 基 数 の 上 納 を請 負 うこ とが経 営 請 負 い制 の 基 本 内 容 で あ る。 つ ま り,利 潤 分 配 面 で い え ば,ま ず 政 府 へ の 一 定 数 の 利 潤 上 納 を 保 障 し,企 業 も よ り多 くの 利 潤 を 留 保 で き る こ とを ね らっ た の で あ る。
「全 人 民 所 有 制 工 業 企 業 経 営 請 負 い制 暫 行 条 例 」(1988年3月1日 施 行) の 規 定 に よれ ば,国 有 企 業 の経 営 請 負 い 制 度 の 基 本 的構 成 は 以 下 の とお り で あ る。
(1)契 約 当 事 者 の 地 位 と関 係:請 負 い 発 注 者(政 府 関 係 部 門)と 請 負 い者 (企 業)は 平 等 ・自願 ・協 商 の 原 則 に立 って 契 約 し,そ れ ぞ れ 権 利 と義 務 を 負 う。
② 経 営 者 の 選 択 方 法 と待 遇:請 負 い企 業 は 一 般 に は公 開競 争 入 札 そ の 他 の 方 法 で 企 業 経 営 者 を 選 定 す る。 経 営 者 の 年 収 は 職 員 労 働 者 の 平 均 年 収 の1〜3倍 以 上 と す る。 請 負 い 契 約 を達 成 で き な い時 は経 営 者 の収 入 を 適 当 に減 らす な ど の 処 罰 を 行 う。
(3)利 潤 上 納 請 負 い の形 式:① 上 納 利 潤 の逓 増 を 請 負 う,② 上 納 利 潤 の 基 数 を 請 負 い,基 数 を超 過 した 部 分 は 比 例 分配,③ 利 潤 の 薄 い 企 業 は定 額 利潤 の上 納 を 請 負 う,④ 欠 損 企 業 は 欠 損 減 少(ま た は補 助)を 請 負 う,
⑤ そ の他 の 形 式 。
(4)請 負 い利 潤 の 基 数:契 約 の 前 年 の 利 潤 上 納 額 また は 前 二 三 年 の 平 均 利
中 国 国有 企 業 の 経 営 請 負 い制 の 動 向
潤 上 納 額 。
(5)請 負 い 指 標:利 潤 上 納(欠 損 の減 少),技 術 改 造,指 令 性 生 産 計 画 ・供 給 計 画,製 品 の 品 質,国 家 資 産 の維 持 ・増 加,留 保 利 潤 の 使 用 法,借 款 の 返 済 な ど,こ の な か で利 潤 上 納(欠 損 の減 少)と 技 術 改 造 が 主 な もの 。 (6)請 負 い期 間:一 般 に3年 以 上 。
(7)経 済 効 果 利 益 と賃 金 総 額 との リソ ク:そ の 形 式 は実 際 状 況 に応 じ て確 定 す る。
(8)資 金 分 帳 制 の試 行:企 業 の 資 金(固 定 資 産 と流 動 資金,減 価 償 却 基 金) を 国家 資 金 と企 業 資 金(自 己 資 金)に 分 け,別 個 に分 帳 す る。
(9)リ ス ク基 金:請 負 い 企 業 の 欠 損 を担 保 す る基 金 で企 業 資 金 を あ て る。
(1① 請 負 い 実 施 以 後 の 借 金:原 則 的 に企 業 資 金 か ら償 還 す る。
(11)留 保 利 潤 の 分 配:企 業 が 生 産 発 展 基 金,福 利 基 金,ボ ー ナ ス基 金 の 分 配 比 率 を 合 理 的 に 査 定 し,請 負 い後 に 増 えた 留 保 利 潤 は 主 に 生 産 発 展 基 金 と して 使 う。
(12)企 業 内 の指 導 制 度:経 営 請 負 い企 業 は 工 場 長(経 理)責 任 制 を実 施 す る。
上 述 の 請 負 い 規 定 は 工 業 企 業 以 外 の 交 通,建 築,農 林,物 資,商 業,貿 易 の 国 有 企 業 が 請 負 い制 を実 施 す る場 合 に 準 用 し て も よい と され た 。
上 述 の経 営 請 負 い 制 の 規 定 が 企 業 経 営 に お い て 実 際 どの よ うに 実 施 され た の か,ど の よ うな問 題 に直 面 した の か,を 検 討 す るの が 本稿 の 課 題 で あ る1)。
1経 営 請 負 い 制(第 一 期)の 実 施 状 況 一 形 態 的 側 面 一
1987年 か ら本 格 的 に実 施 され た 経 営 請 負 い制 は1988年 に は 大 中 型 国 有 工 業 企 業(12195)の90%以 上 に,更 に1990年 に は95%以 上(11621企 業) に ま で拡 大 した2》。また1990年 まで に 全 国 独 立 採 算工 業 企業 の80%以 上, 予 算 内 国有 工 業 企 業(3万7千 余)の90%以 上 が 請 負 い 制 を 実 施 した とい
う3)。以 下,1987〜90年 の 第 一 回 経 営 請 負 い 契 約 の も と に お け る 請 負 い 制 の 実 施 形 態 を み て み た い 。
(1)請 負 い 主 体 と政 府 と の 関 係
暫 行 条例 で は 請 負 い 主 体 は 企 業 と され た が,請 負 い主 体 の 具 体 例 を 見 る と,工 場 長 個 人 や 工 場 指 導 グル ー プが 多 く,従 業 員 全 体 が 請 負 う形 は か な り少 な い。 例 えば1990年 の359企 業 の 事 例 で は,工 場 指 導 グ ル ー プが185 企 業(全 体 の51.5%),工 場 長 個 人 が132企 業(36.9%),企 業 従 業 員 全 員 が33企 業(9.3%),そ の 他(工 場 管 理 委 員 会,職 員 代 表 大 会 な ど)で あ っ た4)。他 に あ る企 業 法 人 が 別 の 企 業 の 経 営 を請 負 う とい う形 式 も実 施 され て い る。
他 方,政 府 側 の 請 負 い発 注 主 体 は 複 雑 で あ る。 請 負 い発 注 主 体 と して は 請 負 い 企業 の 主 管 部 門 が最 も一 般 的 だ が,そ の他 に 財 政 当 局,税 務 当局, 銀 行,労 働 当 局,経 済 体 制 改 革 委,経 済 委 員 会,国 有 資 産 管 理 部 門 な どが 関 与 す る場 合 が 多 い 。 ま た上 記 の 関 連 機 関 が連 合 して 請 負 い 主 体 に な る場 合 もあ る。 この 構 成 の 多 様 性 の た め に 請 負 い発 注主 体 の責 任 が あ い ま い に な りや す い5》。 しか も そ れ ぞ れ の 政 府 当 局 が 多 少 と も異 な る 利 益 関 心 を も つ た め に,請 負 い 企 業 に対 して 異 な る要 求 を もつ。 例 え ば,よ り多 くの財 政 収 入 を確 保 す るた め に企 業 の 請 負 い 基 数 を で き るか ぎ り高 く設 定 し よ う
とす る財 政 当 局 に 対 して は,企 業 の 主 管 部 門 は請 負 い 基 数 を超 過 達 成 した 部 分 を 多 くす るた め 企 業 の請 負 い基 数 を で きる だ け低 くす る 姿勢 を 示 す と い う6)。た だ し,そ の 企 業 の 主 管 部 門 も企 業 との交 渉 に 際 して は 請 負 い 基 数 を で き るだ け 高 くし よ う と努 力 す る。
政 府 機 関 と企 業 との あ い だ の 請 負 い 契 約 関 係 は 「平 等 ・自願 ・協 商 」 の 原 則 を前 提 に そ れ ぞ れ 権 利 ・義 務 を 負 う双 務 的 な関 係 で あ る と規 定 され た が,実 際 に は そ うし た 関 係 は形 成 され て い な い よ うで あ る。 実 際 の 問 題 点 と して は 第 一 に,請 負 い関 係 に お い て 政 府 側 と企 業 側 の 権 利 と義 務 が 「非
中 国 国 有企 業 の 経 営 請 負 い制 の 動 向
対 称 」 「不 平 等 」で あ り,多 くの 請 負 い 契 約 で は企 業 側 の 責 任 と義 務 を 規 定 す るだ け で 企 業 に 欠 損 が で れ ば 請 負 い 企 業 側 だ け の 責 任 と さ れ る の に 対 し,政 府 側 の 責 任 と義 務 は 明 確 に して い な い こ とで あ る7)。また 第 二 に,請 負 い 契 約 が依 然 と して 基 本 的 に 行 政 管 理 系 統 の 枠 内 に あ る こ とで あ る。 例 えぽ,あ る論 者 は 「現 在 の 請 負 い契 約 は 商 品 交 換 の 性 質 を もつ 契 約 で は な く,経 済 管 理 の 性 質 を もつ契 約 で あ る。 そ れ は 実 質 上,国 家 に と って は委 託 状 で あ り,企 業 に と って は責 任 引 受 け 状 で あ る 」と述 べ て い る8)。第 三 に, 請 負 い契 約 の 締 結 が 客 観 的統 一 的 な 法 的 基 準 に よ るの で は な くて 行 政 発 注 側 と企 業 請 負 い 側 の1対1の 個 別 的 交 渉 と駆 引 の 結 果 で あ る とい う点 で あ る。 この 請 負 い 制 の もつ個 別 性,非 規 範 性 は制 度 の 早 急 な規 範 化,統 一 化 を求 め る改 革 積 極 論 者 か ら強 く批 判 され て い る点 で あ る。 請 負 い制 推 進 論 者 は これ に 対 して,企 業 を め ぐる 市 場 ・価 格 条 件 が 地 域,部 門,企 業 に よ
り さ ま ざ まで 統 一 化 され て い な い 現 状 の も とで は 請 負 い基 準 も無 理 に統 一 化 す る こ とは で きず,個 々の 企 業 実 績 に応 じて 基 準 を設 定 す る請 負 い制 の や り方 が 現 実 的 で あ る と反 論 して い る9)。
(2)請 負 い経 営 者 の 選 出
条 例 が 規 定 して い る公 開 競 争 入 札 に よ る請 負 い 経 営 者 の選 出 の 場 合,候 補 者 が そ れ ぞ れ 請 負 い 期 間 に お け る 自 らの経 営 目標 と経 営 方 針 を ま とめ た
レポ ー トを提 出 し,そ れ を基 に選 考 委 員 会 が 審 査,決 定 す る。 選 考 委 員 会 は 企 業 従 業 員 代 表,専 門 家,企 業 主 管 部 門 代 表 な どか ら構 成 さ れ る。 この 選 考 委 員 会 の 構 成 は 企 業 代 表 よ りは 企 業 主 管 部 門 代 表 の方 が 優 勢 を 占 め て お り1°),従って,主 管 部 門 の 意 思 が よ り強 く反 映 さ れ る よ うに な っ て い る。
1989年4月 時 点 で 公 開 競 争 入 札 を実 施 して い る 企 業 は 請 負 い 企 業 全 体 の 34%で あ り11),ま だ この 方 法 は 少 な い。
経 営 者 選 出 は 多 くの 場 合,企 業 主 管 部 門 の 決 定 に よ るの が 現 状 で あ る。
現 行 の 請 負 い企 業 の 経 営 者 の三 分 の 二 は競 争 メ カ ニ ズ ム を通 して で は な く
て 行 政 が 指 定 した も の とい う12)。あ る い は 「実 際 大 多 数 の 請 負 い 企 業 で は 行 政 命 令 の 手 段 を と っ て い る。 企 業 は[行 政 の]命 令 を 奉 じて 請 負 うか 協 議 に よ って 請 負 って い る」13)状況 で あ る とい う。た だ,行 政 側 の 指 定 ・命 令 と い って も,た だ 一 方 的 な命 令 とい う よ りは 形 式 上,企 業 との 協 議 の 形 態 を と って い るの が 普 通 で あ る。 「現 行 体 制 の 下 で は80%以 上 の 請 負 い企 業 が 行 政 との 『協 議 方 式 』 で 請 負 人 を 確 定 して い る」14)とい う。
行 政 側 の 指 定 で あ れ,行 政 と企 業 側 との 協 議 で あ れ,請 負 い経 営 者 の選 出 に は 依 然 と して 主 管 行 政 機 関 の 意 思 が 大 き く介 入 して い る。 しか も競 争 メ カ ニズ ムが 欠 け る 状 況 で あ れ ば,経 営 能 力 の あ る 積 極 的 な経 営 者 を 選 出 す る の は 必 ず し も容 易 で は な く,経 営 者 も現 状 に満 足 す る傾 向 とか,自 己 の 利 益 だ け を 指 向 す る傾 向 な どの 弊 害 を 生 ん で い る とい う15)。
(3)請 負 い の 形 式
経 営 請 負 い制 の 形 式 につ い て は,い くつ か の 実 態 調 査 が あ る。 まず1990 年 に お け る,請 負 い 制 実 施 中 の 国 有(大 中型)企 業9024に 対 す る調 査 に よ れ ば,下 表1の とお り。 「両 保 一 掛 」とは,上 納 利 潤 と技 術 改 造 任 務 の 二 つ の 請 負 い 項 目を 保 障 し,企 業 の 経 済 効 果 と賃 金 総 額 との リン クを 実 施 す る
表1国 有 大中型 企業9024社 の請 負 い形式
形 式 企 業数 比 率%
① 上納利 潤逓 増請 負 い 超過部 分全額 留 保
② 上納利 潤基 数請 負 い 超 過部 分比例 分 配
③ 「両保 一掛」
④ 欠損請 負 い ・欠損 減少 請 負 い
⑤ その他 の請負 い
211223.4
2804 1310 710 1....
31.0 14.5 7.8 23.1 (出 所:サ 文 書 『承 包制 与 企業 機制 転 換』331頁 よ り作 成)
中 国 国有 企 業 の経 営 請 負 い制 の動 向
こ とで あ る。 そ の他 の 形 式 の な か に は,上 納 利 潤 の 定 額 請 負 い が 含 ま れ て い る が,そ の 数 は 不 明 で あ る。
ま た,1990年 末 に 行 な わ れ た1246企 業 に対 す る 調 査 に よれ ぽ,そ の うち 359企 業 の 第 一 期(87〜90年)請 負 い 制 の形 式 は,① 上 納 利 潤 逓 増 請 負 い, 24.6%,② 「両 保 一 掛 」,24.0%,③ 上 納 利 潤 基 数 請 負 い ・超過 部 分 比 例 分 配,22.8%で あ った と い う16》。
上 述 の各 種 の 請 負 い形 式 の選 択 は,直 接 的 に は 政 府 当 局 と個 別 企 業 との 交 渉 に よ る が,主 と して企 業 の 経 営 ・収 益 状 況 と政 府 当局 側 の 財 政 事 情 に よ って 規 定 され る。 一 般 的 に 言 え ぽ,上 納 利 潤 逓 増 請 負 い は企 業 の 収 益 状 況 が 比 較 的 よ く,将 来 増 大 が 見 込 め る場 合 で,政 府 当 局 の 財 政 要 求 を 比 較 的 強 く反 映 した 政 府 側 に 相 対 的 に有 利 な形 式 で あ る。 他 方,上 納 利 潤 定 額 請 負 い は 企 業 経 営 が不 安 定,利 潤 の極 め て薄 い場 合 で,従 って 政 府 当 局 の 財 政 要 求 も比 較 的 弱 く,企 業 に と っ て 相 対 的 に有 利 な 形 式 で あ る。「両 保 一 掛 」は 企 業 の技 術 改 造 に よ る発 展 が 強 く期 待 され,同 時 に賃 金 イ ソセ ン テ ィ
ブ を与 え る も の で,企 業 に と っ て は 有 利 な形 式 で あ る といわ れ る 。 ま た 上 納 利 潤 基 数 請 負 い ・超過 部 分 比 例 分 配 の方 式 は 要 す る に定 率 逓 増 請 負 い と 定 額 請 負 い との一 種 の 折 衷 形 式 で,政 府 当局 側 と 企 業 側 の相 対 立 す る要 求
の妥 協 の 産 物 で あ る1η。
(4)請 負 い 期 間
請 負 い 期 間 は 「一 般 に3年 以 上 」 と規 定 さ れ て い る が,実 状 は 必 ず し も こ れ に 従 っ て い な い 。 請 負 い 期 間 の 現 状 は 一 般 に は1〜3年 で3年 が 主 で あ る と い う18)。359工 業 企 業 の 調 査(1990年)で は 第 一 期 の 請 負 い 期 間 が1
〜3年 で あ っ た の が167企 業(46 .6%),4年 以 上 が192企 業(53.4%)で あ っ た19》。ま た ハ ル ビ ン市 で は 国 営 企 業 は 一 般 に は3年 で あ る が,集 団 所 有 制 企 業 の 場 合 は60%の 企 業 が1年 で あ っ た と い う2°》。 請 負 い 期 間 が1〜3 年 以 内 で は,ま ず 長 期 的 な 観 点 か ら 経 営 を 行 な う こ と は 不 可 能 で あ り,経
営 の 「短 期 行 為 」 化 の 要 因 とな る。
この弊 害 を克 服 す るた め に,請 負 い 期 間 の 長 期 化 が 提 起 され て い る。 例 え ぽ,請 負 い期 間 を 企 業 の技 術 改 造 の 周 期 に相 応 させ る こ と,ま た 国 家 の 五 か年 計 画 と リン ク させ る こ と,経 営 請 負 い制 の模 範 例 で あ る首 都 鋼 鉄 公 司 の事 例 を参 考 に10年 以 上 とす る こ と,な ど さ ま ざ まな 提 案 が 出 され て い
る21》。
(5)利 潤 請 負 い 基 数
現 行 の請 負 い制 の 最 も基 本 的 な手 続 きは 「包 死 」 す な わ ち,上 納 請 負 い 利 潤 の 「基 数 」を 固 定 す る こ とで あ る。 「基 数 」の 水 準 に よ って,超 過 利 潤 の 場 合 の留 保 額 や,不 足 した場 合 の 自己 負 担 額 が 直 接 影 響 を うけ る。 従 っ て,請 負 い利 潤 の 「基 数 」 を確 定 す る こ とは 企 業 の請 負 い 経 営 に極 め て 重 要 な意 味 を もつ。
こ の基 数 の確 定 に は 主 に二 つ の 問 題 が 指 摘 され て い る。 一 つ は,基 数 を 固 定 す る こ と と経 済 環 境 の変 動 と の ギ ャ ップの 問 題 で あ る。 例 え ぽ,請 負 い 契 約 の前 年 度(1986年)に お け る企 業 の利 潤 上 納 実 績(所 得 税 プ ラ ス調 節 税)を 基 数 とす る 時,86年 度 の 経 営 が 比 較 的 良 好 で利 潤 が 大 きい場 合 は
「基 数 」 が相 対 的 に 高 い水 準 に 設 定 され るが,次 年 度 か ら 「基 数 」 を 超 過 達 成 す る の は相 対 的 に 難 し くな る。他 方,86年 度 の 経 営 が比 較 的 不 良 で 利 潤 が 少 な い場 合 「基 数 」 は相 対 的 に低 水 準 に 設 定 され る が,以 後 「基 数 」 を 超 過 達 成 す る の は 容 易 に な るで あ ろ う。 つ ま り,一 定 期 間 に わ た り 「基 数 」 が 固定 され る 場 合,当 初 に お い て 成績 が よい 企 業 ほ ど相 対 的 に苦 し く な る(「 鞭 打 快 牛 」)の に 対 して,当 初 成績 の 悪 い 企 業 ほ ど相 対 的 に楽 に な る(「保 護 落 后 」)と い う問 題 で あ る22)。特 に 「基 数 」を固 定 した あ と経 済 環 境 が 大 き く変 化 す る よ うな場 合,企 業 の 「苦 楽 不 均 」 の問 題 は よ り深 刻 に な る だ ろ う。 例 え ぽ,急 速 な イ ン フ レに よ る コ ス ト上 昇 を製 品 価 格 に 容 易 に 転 嫁 で き,か つ 販 売 市 場 が好 調 で あ る よ うな 企 業 は,超 過 利 潤 を 容 易 に
中 国 国 有企 業 の 経営 請 負 い制 の 動 向
達 成 で き る。 しか し,コ ス トが 上 昇 しつ つ も製 品 価 格 が 固定 さ れ て い る企 業(例 えぽ 指 令 計 画 の比 重 の 高 い企 業)に と って 市 場 が売 行 き不 振 の 場 合 に は,請 負 い 「基 数 」の 達 成 ど ころ か,赤 字 経 営 に転 落 して し ま う。 実 際, 前 者 の 事 例 は1987〜88年 の イ ン フ レ時 に み られ た し,後 者 は89〜90年 の 経 済 引 締 め 下 の 不 況 時 に み られ た。 ち なみ に 国 有 工 業 企 業 の な か で の 赤 字 企 業 の比 率 は 第 一 期 請 負 い 契 約 の 基 準 と され た86年 に は13.0%(大 型 企 業 は9.2%)で,高 イ ン フ レの88年 は11%(同8.8%)に 減 った が,請 負 い契 約 の 切 れ る90年 は27.5%(同23.6%)に 急 増 した23}。こ うして87年 に 固 定 化 され た 請 負 い 「基 数」 と変 動 す る経 済 環 境 との ギ ャ ップ は一 層増 大 した の で あ る。 こ の ギ ャ ップの 増 大 は(予 算 内)国 有 工 業 企 業 の請 負 い 契 約(上 納 利 潤 指 標)の 達 成 を よ り困難 な もの に した 。 請 負 い任 務 を 達 成
した 企 業 が 請 負 い 企 業 に 占め る比 率 は87年90%,88年91%,89年82%,
そ し て90年 は70%に 減 少 して い る24)。ま た1246の 予 算 内工 業 企 業 の 統 計 で も,任 務 達 成 企 業 の 比 率 は87年94%,88年91%,89年79%,90年60%
と減 少 して い る25》。
第 二 に,「 基 数 」の 確 定 方 法 が科 学 的 な規 範 性 に 欠 け て い る とい う問 題 で あ る。 具 体 的 に は,① 個 別 企 業 の タテ の 時 系 列 比 較 だ け で 決 め,同 業 種 企 業 との ヨ コの比 較(例 え ば平 均 資 金 利 潤 率)を 参 照 して い な い こ と,② 変 動 す る市 場 価 格 動 向 に応 じて弾 力 的 に 上 納 利 潤 の 指 標 や 「基 数 」 を 調 整 で き な い こ と,③ 企 業 と行 政 当局 との1対1の 交 渉 ・駆 引 で 決 ま る と ころ が あ る こ と(「人 情 基 数 」とい わ れ る)26)。③ の 場 合,企 業 は 「基 数 」を で き る か ぎ り低 く設 定 し よ う とす る で あ ろ う。 こ うし た 点 は 確 か に,経 済 合 理 性 か らみ て 問 題 で は あ る。 た だ し,請 負 い制 の 「基 数 」 の 確 定 が 個 別 的 で 規 範 性 に欠 け るの は,価 格 体 系 の 「二 重 制 」,競 争 条 件 の 相 違,マ ク ロ調 節 の 機 能 不 全 な ど市 場 シ ス テ ム 自体 に 統 一 性,規 範 性 が 欠 如 し て い る た め で あ って,従 って こ う した 現 状 の 市 場 シ ス テ ム に お い て 無 理 や り請 負 い 基 数 の統 一 化 ・規 範 化 を追 求 す るの も問 題 で あ ろ う27)。
⑥ 請 負 い指 標
請 負 い指 標 に つ い て一 般 に,上 納 利 潤,技 術 改 造,生 産 額,販 売 額,品 質,賃 金 総 額 国有 資 産 の維 持 増 加,留 保 利 潤 の 使 用 法(生 産 発 展 基 金,福 利 基 金,奨 励 基 金 へ の 分 配),借 款 の 返 済 な どが 請 負 い契 約 に 規 定 され た 。 現 状 の 問 題 点 と し て は以 下 の点 が 指 摘 され て い る。 第 一 に,指 標 の な か で 請 負 い上 納 利 潤 指 標 だ け が 重 視 され(「硬 指 標 」),そ れ 以 外 の指 標 は 軽 視 さ れ る傾 向 に あ る(「 軟 指 標 」)こ とで あ る。 そ の結 果,利 潤 指 標 以 外 の請 負 い 指 標 は 実 際 に は あ ま り拘 束 力 が な か った とい わ れ る28}。第 二 に そ れ ぞ れ の 請 負 い 指 標 に対 す る政 府 所 管 部 門 が 別 々 で あ り,そ の結 果,請 負 い指 標 の 監 督 を 通 して,さ ま ざ ま な行 政 機 関 が 一 つ の企 業 に 干 渉 す る状 況 を 招 い て い る こ とで,こ れ が 指 標 達 成 を よ り困 難 に して い る。
II請 負 い 制 下 の 経 営 機 能
前 節 で は 第 一 期 の 経 営 請 負 い制 の 実 状 を そ の形 態 面 か らみ た が,こ こ で は そ の 経 営 機 能 の 面 か ら検 討 して み た い 。 検 討 の対 象 は(1)企業 と国 家 との 利 潤 分 配 動 向,② 企 業 内 の 分 配 一 消 費 と蓄 積,(3)損 益 自 己 負 担,で あ る。
(1)企 業 と 国 家 と の 利 潤 分 配
まず,経 営 請 負 い 制 の 主 要 なね らい の 一 つ は 国家 財 政 へ の 上 納 利 潤 の 請 負 い で あ るが,国 家 と国 有 工 業 企 業 の あ い だ の 利 潤 分 配 の 動 向 につ い て み て み よ う。
中 国 国有 企 業 の経 営 請 負 い制 の動 向
表1‑1国 有工 業企 業(独 立採 算制)の 利潤 分 配 (単 位:億 元 ・%) a利 潤総額 国 家上納 額b企 業 留保利 潤 銀 行返 済c実 際 留保額
b/ac/a
1986681.91484.6571.00228.333.4%129.575.711.1%
1987786.96477.9560.7265.3333.7173.1135.917.2 1988891.85418.5046.7323.5536.2227.4245.927.5 1989743.01368.7949.6308.8841.5165.6208.628.1
1990388.11345.7289.0224.1657.7‑一 一
利 潤 総 額,国 家 上 納 額(利 潤 ・税 金 ・費 用),留 保 利 潤 は 『中 国 工 業 経 済 統 計 年 鑑1991」
124,133頁 。
銀 行 返 済 額 は 『財 政 』1989年11期,11頁 と 『経 済 研 究 』1992年3期,33,34頁 よ り算 出 。 実 際 留 保 利 潤 は 利 潤 総 額 一 国 家 上 納 額 一 銀 行 返 済 額 よ り 算 出
表1‑2予 算 内国有 工業 企業 の実 際留 保 利潤 と比 率 (単 位:億 元 ・%) 実現 利潤 実 際留 保利潤 額 留保比 率
...
1989 1990
777.7 658.6 246.0
285.8 237.4 117.6
36.7 36.0 47.8 (『中 国 企 業 管 理 年 鑑1991」,295頁)
表1‑1に よれ ぽ,利 潤 額 は1986年 に 比 べ87年,88年 と毎年 か な りの伸 び(対 前 年 比 伸 び 率 は87年 で15.4%,88年 で13.3%)を 示 した が,88年 が ピ ー ク で89年,90年 と大 幅 に減 少 して い る(対 前 年 比 で89年16.6%減, 90年47.7%減)。 表1‑2も 同様 な 動 きを 示 して い る。 表1‑1の 国家 上 納 額
とは 国 家 に 納 入 した 利 潤 ・税 金(所 得 税 ・調 節 税 そ の 他,た だ し販 売 税 は 含 まず)・ 費 用 の総 額 で あ る。従 っ て,厳 密 に は請 負 い 制 企 業 の請 負 い 上 納 利 潤 額[そ の 中 に は ふ つ う所 得 税 ・調 節 税 も含 ま れ て 計 算 され て い る]以 外 の 税 ・費 用 項 目 も含 まれ て い る。 国 家 上 納 額 は1986年 以降 毎 年 減 少 して お り,利 潤 総 額 に 占め る比 率 で も88年 まで 減 少,89,90年 は逆 に 増 大 した。
と くに90年 の 伸 び率 は顕 著 で あ る。つ ま り,利 潤 総 額 の9割 近 くに 相 当 す る額 が 国 家 に配 分 され た こ とに な る。 次 に,企 業 の 留 保 利 潤 額 も上 記 の 動
向 とほ ぼ 同 じ動 き を 示 し,87,88年 は増 加,89,90年 は減 少 して90年 の 利 潤 留 保額 は86年 の 水 準 を や や 下 回 った 。他 方,各 年 度 の利 潤 総 額 に 占め る留保 利潤 比 率 は ほ ぼ 一 貫 して 増 大 して い る。90年 は 経 営 不 況 に もか か わ らず 留 保 利潤 比 率 が 前 年 よ り16ポ イ ソ トも上 昇 して い るが,そ れ は90年 の利 潤 総 額 の 減 少 が 留 保 利 潤 の 減 少 に比 べ か な り大 きか っ た か ら で あ る。
しか し,注 意 し な け れ ば な ら な い の は,表1‑1の 留 保 利 潤 額 は名 目の 額 で あ って,そ の 中 に は まだ 国 家 に上 納 す る一 部 の税 金(資 源 税 ・奨 金 税)
と費 用(エ ネ ル ギ ー 交 通 建 設 基 金 ・国 家 予 算 調 節 基 金 ・国 債 購 入 な ど)が 含 ま れ て い る。 こ の税 金 ・費 用 を 控 除 した 実 際 の留 保 利 潤 額 は こ れ よ り小
さい は ず で あ る。 実 際 の 留 保 利 潤 額 は利 潤 総 額 か ら銀 行 ロー ソ返 済 額[固 定 資 産 投 資 用 の 専 項 ロ ー ソ の返 済 で,税 引 き前 の利 潤 か ら返 済 す る こ とが 認 め られ て い る]と 国 家 上 納 額 を 差 引 い て 得 られ る額 に ほ ぼ該 当 す る とみ て よい29)。これ に 基 づ い て推 算 し た実 際 留 保 利 潤 額 の 利 潤 総 額 に 占 め る比 率 を み る と1986年 の11.1%か ら89年 の28.1%ま で 毎 年 上 昇 して い る。こ の 実 際 留 保 利 潤 比 率 の 増 大 は表1‑2か ら も確 認 で き る。
以上 か ら,請 負 い制 の 第 一 回 契 約 期 間(87〜90年)に お け る企 業 利 潤 の 分 配動 向 は 次 の よ うに ま とめ られ る。 す な わ ち,① 利潤 総 額 の 大 部 分(ほ ぼ半 分 以上)は 国 家 に 分配 さ れ,企 業 に実 際 留 保 され る の は 小 部 分(3‑4割 以 下)で あ った こ と,し か し,② 利 潤 総 額 の うち で 国 家 上 納 分 の 比 率 は低 下 傾 向 に あ り,実 際 留 保 部 分 の 比 重 は逆 に 増 加 傾 向 に あ っ た こ とで あ る3°)。
上 記 の表 で は い ず れ も,請 負 い契 約 で 規 定 され た と こ ろの 上 納 利 潤 額 自 体 の動 向 を 明 示 して い な い。 表1‑3は 請 負 い 企 業 の利 潤 額 が 上 納 利 潤,銀 行 返 済,留 保 利 潤(名 目)の 三 者 に配 分 され る比 率 を示 した もの で あ る。
中国 国 有企 業 の経 営 請 負 い制 の動 向
表1‑3請 負 い 企 業 の 利 潤 の 配 分 比 率 (利 潤 額 全 体=100) 上納 利潤:銀 行返 済:留 保 利潤 198645
198738 198827 198932.2
19 22 25.5 22.3
36 40 47.5 45.5
*86〜88年 の 分 配 比 は 『財 政 』1989年11期, 11頁,89年 の 分 配 比 は 『経 済 研 究 』1992 年 第3期,33,34頁 よ り算 出
この 表 に よ れ ば,利 潤 総 額 に 占 め る上 納 利 潤 の 比 率 は1987〜88年 に減 少 し88年 で 底 を つ き,89年 は逆 に増 大 して い る。こ の 動 きは表1‑1の 国家 上 納 額 と 同様 な増 減 パ ター ソを 示 し て い る。 他 方,企 業 の 留保 利 潤(名 目)
の 比 率 は上 納 利 潤 比 率 とは 逆 の 動 きを 示 して い る 。 要 す るに 請 負 制 企 業 の 上 納 利 潤 の 比 率 は89年 を除 い て 請 負 い 企 業 に よ り有 利 な 方 向 に動 い た と
い え る。
以 上,請 負 い制 下 の企 業 利 潤 の 国 家 と企 業 へ の 分 配 関 係 は1986〜88年 に は 総 じて 企 業 に よ り有 利 な方 向 に 傾 斜 しつ つ あ った 。 しか し,89年 の 経 済 不 況 の な か で そ の傾 向 は逆 転 した とい え よ う。
(2)企 業 内 の 分 配 消費 と蓄積一
次 に,請 負 い制 企 業 の 内 部 分 配 の動 向 を二 つ の 側 面 か らみ て み た い。 す な わ ち,賃 金 動 向 と留 保 利 潤 の 分 配 動 向 で あ る。
① 賃 金 総 額 と経 済 効果 との リソ ク
経 営 請 負 い 制 の ね らい の 一 つ は,職 員 労 働 者 の 賃 金 を 企 業 経 営 効 果 と リ ン ク させ,企 業 の 経 営 効 果 の 増 減 が 賃 金 の増 減 に 直 接 反 映 され る よ うに す る こ とで あ る(「 効 益 賃 金 制 」)。
賃 金 総 額 と企 業 の 経 営 効 果 との リン クを 実 施 して い る 企 業 は 請 負 い 制 実 施 企 業 の 大 部 分 を 占 め るが,そ の リン クの 形 式 は 主 に 四種 類 あ る。 す なわ ち,① 賃 金 総 額 と実 現 利 潤 との リン ク,② 賃 金 総 額 と実 現 した 利 潤 ・税 金 (=販 売税)と の リン ク,③ 賃 金 総 額 と上 納 し た利 潤 ・税 金(=販 売 税) との リン ク,④ 賃 金 総 額 と製 品 販 売 量 との リ ン ク,で あ る。1988年 の重 慶 市222企 業 の 調 査 に よれ ぽ,リ ン ク形 式 は,上 納 利 潤 ・税 金 との リ ン ク121 企 業(54.5%),実 現 利 潤 ・税 金 と の リン クが84企 業(37.8%),製 品販 売 量 との リソ クが17企 業(7.7%)で あ った31)。ま た 四 川 省 の大 中型 国 有 企 業 (10企 業)で は そ の 多 くが賃 金 総 額 と実 現 利 潤 と の リ ン ク で あ っ た とい う32)。この よ うに形 式 は 企 業 の状 況 に応 じて さ ま ざ まで あ る が,一 般 に は実 現 利 潤 ・税 金 また は 上 納 利 潤 ・税 金 との リソ クが 多 い よ うで あ る。
政 府 が 規 定 した リ ソ ク比 率 は企 業 の経 済 効 果 が1%上 昇 す る こ とに 賃 金 総 額 を0.3〜0.7%増 や す とい うも の で,こ れ に よ り賃 金 総 額 を 経 済 効 果 に 応 じて 変 動 させ る と と もに,賃 金 総 額 の増 加 を 企 業 の経 済 効 果 の上 昇 率 の 一 定 範 囲 内 に 抑 制 す る こ とを ね ら った。
さて,表2‑1は 国 有 工 業 企 業 に お け る各 年 の 利 税 総 額 と賃 金 総 額 の比 率, 上 納 利税 額 と賃 金 総 額 との 比 率 を 示 した もの で あ る。 利 税 総 額 とは 利 潤 総 額 と政 府 に納 め た 税 金[販 売 税 と資 源 税]の 合 計 で,そ れ は 企 業 の 販 売 収 入 か ら物 的 人 的 コ ス トを 差 引 い た 残 りに相 当 し,企 業 の純 収 入 に あ た る。
表2‑1国 有 工 業 企 業 の 経 営 効 果 と賃 金 総 額 の 関 係(単 位:億 元 ・%) a利 税総 額b上 納利 税額c賃 金 総額c/a(%)c/b(%)
19861341.4 19871514.2 19881774.8 19891773.1 19901503.1
1136.0 1205.0 1301.5 1398.9 1460.7
557.0 636.1 792.3 914.7 1031.2
41.5 42.0 44.6 51.5 68.6
49.0 52.7 .1 65.3 70.s (周 富 祥 論 文 「中 国 工 業 経 済 研 究 」1992‑1,25頁,『 中 国 工 業 経 済 統 計 年 鑑1991』
124,133頁 よ り作 成)
表2‑1か ら明 ら か な よ うに,賃 金/利 税 比 率,お よ び賃 金/上 納 利 税 比 率
中国 国 有企 業 の 経 営 請 負 い制 の 動 向
は どち ら も一 貫 して 上 昇 して い る。 つ ま り,賃 金 総 額 は利 税 総 額 や 上 納 利 税 額 の 伸 び を上 回 っ て伸 び て い る の で あ る。特 に 注 目され るの は,1990年 の利 税 総 額 は前 年 よ り減 少 した の に もか かわ らず,賃 金 総 額 は依 然 と して 増 大 して い る点 で あ る。 この 点 は 賃 金 は 企 業 の 経 済 効 果 が減 少 して も,そ れ に 応 じて 下 が ら な い こ と(賃 金 総 額 の下 方 硬 直 性)を よ く示 して い る。 そ れ は 従 業 員 側 の 根 強 い 賃 金 増 大 要 求 と企 業 経 営 側 が そ れ に妥 協 せ ざ る を え な か っ た こ と を示 唆 して い る。
国 有 工 業 企 業 に お け る賃 金 総 額 と企 業 の 経 済 効 果 との リン ク比 率 の 実 際 動 向 は 政 府 の規 定 した 比 率(1対0.3〜0.7)を か な り突 破 して い る こ とが 明 らか に さ れ て い る。 す なわ ち,企 業 の 経 済 効 果 の 増 加1.0に 対 す る賃 金 総 額 の 増 加 指 数 は,1986年 が1.02,87年1.12,88年1.04,89年1.8,90
年3.4で あ った33)。
以 上 か ら,企 業 の経 済 効 果 と賃 金 総 額 との比 例 リン クは そ の 本 来 の ね ら い と は異 な り,有 効 に機 能 せ ず,む しろ 経 済 効 果 と賃 金 総 額 の乖 離 は 次 第 に 拡 大 し,賃 金 総 額 の過 大 な 増 加 を抑 制 す る こ とが で き な か った とい え よ
う34}。
② 留 保 利 潤 の 消 費 ・蓄 積 配 分
企 業 の 留 保 利 潤 は 生 産 性 基 金 と消 費 性 基 金 に分 け られ る。 前 者 は① 生 産 発 展 基 金,② 新 製 品 開 発 基 金,③ 予 備 基 金 で あ り,将 来 の生 産 拡 大 の た め の蓄 積 で もあ る(以 上 の三 つ を 三 項 基 金 とい う)。後 者 は④ 従 業 員 福 利 基 金,
⑤ 従 業 員 奨 励 基 金 で あ る。 政 府 の 政 策 規 定 で は 留 保 利 潤 か ら生 産 性 基 金 60%,福 利 基金20%,奨 励 基 金20%に 分 配 す るの が モ デ ル とさ れ た 。さて, 表2‑2は1988年 の ハ ル ピ ソ市 の 国 営 工 業 企 業149企 業 の 留 保 利 潤 の 配 分 状 況 を 示 した もの で あ る。
表2‑2ハ ル ビ ン市149国 営 工 業 企 業 の 留 保 利 潤 配 分(1988年) 額(万 元)留 保 利潤(実 質)の 配 分比 率(%)
全体 平均 大 型企 業 中 型 小 型 生 産 発 展*5605.6
奨 励 基 金1058.1 福 利 基 金9811.2
34.0 6.5 59.5
34.537.6 9.61.2 55.961.2
25.0 6.2
..
*三 項 基 金 を指 す (劉 仁 秀,郷 拍 林 論 文 『経 済 管 理 』1990‑3,26頁)
これ に よれ ば,全 体 平 均 で 留 保 利 潤 の66%が 奨 励 基 金 と福 利 基 金 に 使 わ れ,生 産 性 基金 の 比 重 は合 計 で34%に す ぎ な い 。企 業 規 模 別 の 消 費 性 基 金 へ の 分 配 比 率 は 大 型65.5%,中 型62.4%,小 型75.0%で あ る。また 吉 林 省 の 予 算 内工 業 企 業 の 留 保 利 潤 に 占め る 福 利 基 金 ・奨 励 基 金 の比 重 は一 般 に 50〜60%で あ り,ご く一一部 で は70%を 越 え る 状 況 に あ った と い う35)。また 一 部 で はそ の比 重 が80%前 後 を 占 め た と こ ろ もあ った36)。全 国 的 な統 計 は 不 明 だ が,財 政 部 の 人 員 に よれ ば,福 利 基 金 ・奨 励 基 金 は 留 保 利 潤 の大 部 分 を 占め て お り,そ の 比 重 は ます ます 大 き くな り,逆 に 生 産 性 基 金 の部 分 は ます ます 小 さ くな って い る とい う37)。湖 北 省 の50国 営 大 中 型 企 業 の 事 例 は これ を 示 して い る。す な わ ち,1986年 〜1989年 の 実 質 留 保 利 潤 に 占 め る 奨 励 基 金 ・福 利 基 金 の 比 重 は37%か ら62%へ,生 産 発 展 基 金(三 項 基 金) の 比 重 は63%か ら38%に 減 少 した38)。以 上 の よ うに経 営 請 負 い 制 の も と で,企 業 の 留 保 利 潤 は 生 産 発 展 よ りも職 員 労 働 者 の 消 費 性 基 金 に 多 く使 わ れ,し か もそ の 傾 向 が 次 第 に強 ま って い る状 況 が あ る。
(3)損 益 自 己 責 任 メ カ ニ ズ ム
旧 来 の 経 済 シ ス テ ムの も と に お け る国 有 企 業 の 「予 算 制 約 」 が 極 め て ソ フ トで,赤 字 経 営 で も国 家 財 政 の補 填 に依 存 す る こ とが で きた(「企 業 が 国 家 の 大 鍋 の 飯 を 食 べ る 」とい う)。 請 負 い制 の も とで は 損 益 自己 責 任 を 明 確 に 規 定 し,旧 来 の 国 家 財 政 依 存 を 打 破 しよ う と して い る。 こ こで は,経 営
中 国 国有 企 業 の 経営 請 負 い制 の 動 向
請 負 い制 の も とで の 「損 益 自己 責 任 」 の 現 状 を, 銀 行 融 資 の 返 済 の 二 つ の 面 か らみ て み た い。
① 欠 損 に対 す る対 処,②
① 「リス ク基 金 」 の 現 状 成 果 と限 界
請 負 い条 例 に よ れ ば,請 負 い企 業 は上 納 利 潤 請 負 い額 を達 成 で きず,損 失 を 出 した場 合 に は そ の 損 失 分 を 必 ず 自己 負 担 し な け れ ば な らな い 。 そ の 損 失 負 担 用 に 設 定 され た の が 「リス ク抵 当 基 金 」(「風 険 抵 押 」)で あ る。 リ ス ク抵 当基 金 の源 泉 は,① 「企 業 基 金 」,② 請 負 い 経 営 者 が 負担 す る リス ク 抵 当 金,② 従 業 員 が 共 同 で 負 担 す る リス ク抵 当金,で あ る。 「企 業 基 金 」と は 請 負 い 期 間 に取 得 した 企 業 留 保 利 潤 お よ びそ れ を 投 入 して 形 成 さ れ た 固 定 資 産 と補 充 さ れ た 流 動 資 金 の こ とで あ る。
リス ク抵 当基 金 制 度 の具 体 的 形 態 は 不 明 の部 分 が 多 い が,「 企 業 基 金 」か らの支 出 す る場 合 の 具 体 例 と して は,「 欠 損 準 備 基 金 」を 設 立 した 事 例 が 紹 介 され て い る。 これ は,毎 年 税 引 き後 の 留 保 利 潤 の な か か ら一 定 率(例 え ば10%)の 欠 損 準 備 基 金 を 出 し て銀 行 の 専 用 口座 に 預 金 して お く もの で あ
る39》。
第 一 期 請 負 い 期 間 に お い て,リ ス ク抵 当基 金 制 を 実 施 して い る企 業 は ま だ極 め て 限定 され て お り,請 負 い企 業 の19.5%に す ぎ な い。請 負 い 大 型 企 業 で12.4%,中 型 企 業 で18.7%,小 型 企 業 で30.5%が そ れ ぞ れ実 施 して い る4°》。施 図 聞 に よれ ば,「 現 在 実 行 して い る リス ク 抵 当請 負 い は大 半 が まだ 象 徴 的 な もの で 抵 当金 は 少 な い。一 般 に 普 通 の職 員 労 働 者 で100元 あ ま り, 請 負 い経 営 者 で 千 元 以 上 で あ り」 「これ で は リス ク 意 識 は 形 成 で きな い 」と い う41》。この よ うな 一 般 的 状 況 の も とに あ る とは い え,リ ス ク抵 当 を 実 施 す る か し な い か は 利 潤 請 負 い 実 績 に あ る 程 度 関 係 し て い る こ と も事 実 で あ る。1246企 業 の 調 査 に よれ ぽ,第 一 回 請 負 い期 間 に お いて リス ク抵 当(財 産 抵 当)を 実 施 した 企 業 とそ れ を 実 施 して い な い 企 業 とで は 請 負 い 利 潤 指 標 の 達 成 度 が異 な り,前 者 の ほ うが 後 者 よ りも よ い 実 績 を 示 し て い る(表 3‑1を 参 照)。
表3‑1請 負 い利 潤 を達 成 した 企 業 の 比 率 動 向 (単 位:%) 1987888990年
リス ク 抵 当 を 実 施 し た 企 業92.594.685.263.5 実 施 し な い 企 業94.890.276.359.9
(愈 全 林 論 文 『改 革 』1991‑6,143頁)
ま た リス ク抵 当 の 負 担 程 度 と利 潤 請 負 い結 果 とは か な り関 係 して い る。
す な わ ち,1246の サ ン プ ル 企 業 に お い て,第 一 回 請 負 い期 間 の あ る 年 度 の 請 負 い利 潤 指 標 を 達 成 で きな か っ た た め に請 負 い 経 営 者 が うけた 圧 力(処 罰)の 度 合 に お う じ て,1990年 の 請 負 い 利 潤 指 標 の 達 成 度 が 異 な っ た と い
う。 表3‑2は そ の 具 体 的 状 況 を 示 した もの で あ る。
表3‑2経 営者 へ の圧 力 と利 潤指 標 の達 成度 との関連 経 営者 の処罰 の度 合 い 90年 請 負い利 潤 の達成 度
(企業 比率) 個 人 財 産 に よ る 補 償[サ ソ プ ル 数 の5%]
ボ ー ナ ス取 消 し 、 賃 金 カ ッ ト[同53%]
相 応 の 処 分 な し 、 企 業 に 対 し ツ ケの 記 帳 を 要 求[同42%]
何 の 処 分 もな し
64.5%
54.3 21.3 16.4
(表3‑1と同 じ) これ に よれ ぽ,経 営 者 ・企 業 に対 す る リス ク負担(処 罰)を よ り厳 し く した ほ ど,当 該 企 業 の請 負 い 利 潤 の達 成 実 績 が よ くな っ て い る。
以 上 の 事 例 は,経 営 者 や 企 業 に対 す る経 営 リス ク負 担 を 相 応 に 厳 し く課 す こ とは,確 か に 企 業 の経 営 請 負 い 目標 の 達 成 に促 進 的 作 用 を は た して い
る こ とを 示 して い る。
た だ,一 般 的 に 国 有 企 業 の 留 保 利 潤 が 少 な く,リ ス ク抵 当 基 金 の額 もか な り限 られ て い る 状 況 か らみ て,請 負 い利 潤 の 欠 損 をす べ て 自己 補 償 す る こ とは 極 め て 困 難 だ とみ て よ い だ ろ う。1988年 に34604の 請 負 い 企 業 の な か で 請 負 い 契 約 を 達 成 で き な か っ た 企 業 は2451企 業(全 体 の7.1%)で
中 国国 有 企 業 の経 営 請 負 い制 の 動 向
あ った が,そ の うち で規 定 に 基 づ い て 企 業 や 経 営 者 の 自己 資 金 か ら欠 損 を 補 充 で きた の は わ ず か29.1%に す ぎず,の こ りの70%の 企 業 は結 局,欠 損 を補 充 し え な か った とい う42)。
ま た 全 国32400余 の請 負 い 実 施 企 業 の調 査 に よ れ ぽ,1989年 の 請 負 い契 約 を 達 成 で きな か っ た企 業 は18.9%で,そ の うち 約 三 分 の二 の企 業 は 自己 資 金,留 保 利 潤,リ ス ク抵 当 基 金 か ら補 償 す る こ とが で き な か った 。結 局, そ れ らの 企 業 は 補 償 額 の 返 済 を 将 来 に延 期 す る こ とで 処 理 した の で あ る が,こ うした 処 理 を した 企 業 は1990年 に 更 に 増 加 した43)。ま た あ る論 文 は 請 負 い 契 約 を 達 成 で きな か っ た 企 業 の 実 に80%以 上 は 乏 しい 自 己 資 金 で は そ の 欠 損 を 補 充 で き な い状 況 に あ る と も い う44)。企 業 は請 負 い 契 約 違 反 を 犯 して い るわ け だ が,政 府 側 は結 局 そ の 結 果 を 認 め ざ るを えず,欠 損 の 補 償 を 免 除 す る しか な い とい う45)。請 負 い企 業 に 対 す る政 府 の温 情 主 義 が 依 然 と し て続 い て い る の で あ る。 この よ うに 請 負 い 制 の 抱 えて い る大 きな 問題 の 一 つ は 企 業 が 欠 損 に 対 して 自 ら責 任 を 負 え ない 状 況(「負 盈 不 負 薦 」) が ご く一・部 を 除 い て ま だ 「普 遍 的 」 に あ る こ とで あ り,こ の面 で の リス ク 負 担 メ カ ニズ ム は ま だ 基 本 的 に形 成 され て い な い とい って よ い。
② 「税 前 還 貸 」
政 府 の 規 定 で は 企 業 の基 本 建 設 お よび 技 術 改 造 の専 用項 目へ の 銀 行 融 資 (国 家 機 関 の貸 付 も含 む)の 返 済 に つ い て は,所 得 税 ・調 節税(上 納 請 負 い 利 潤 額 に含 まれ る)を 納 入 す る前 の 利 潤 の な か か らま ず返 済 す る こ とを 認 め て い る。 こ の制 度 は 本 来,企 業 の 基 本 建 設 投 資 と技 術 改 造 投 資 を促 進 す るた め に で きた もの だ が,企 業 側 に実 質 的 な 所 得 税 減 免 効 果 が あ る こ と
も あ って 広 く利 用 され る よ うに な った 。 そ の 貸 付 残 高 の 規 模 は予 算 内 国有 工 業 企 業 で1981年 の約100億 か ら88年 の1699億 元 に拡 大 した(年 平 均 50%増)。 また 予 算 内 国 有 工 業 企 業 の 年 返 済 額 も81年20.2億 か ら88年
192.9億 元 に増 加 して い る(年 平 均38%増)46)。 こ の間 の実 現 利 潤 の年 平 均 増 加 率 は4.3%で あ った47》か ら,固 定 資 産 投 資 用 の銀 行 貸 付 が い か に 急 速
に 伸 び た か が 分 か る 。 これ が 企 業 の投 資 膨 脹 の ひ とつ の 要 因 とな った こ と は 言 うまで も ない 。
税 引 き前 利 潤 か ら の ロー ン返 済(「 税 前 還 貸 」)の 特 徴 と して は,第 一 に 企 業 は 実 現 利 潤 か ら先 ず 元 本 利 子 を返 済 す る こ とが で き,返 済 額 は 課 税 対 象 とは な ら な い こ とで あ る。 これ は実 質 的 に は税 金 の一 部 を 銀 行 返 済 分 に 転 嫁 す る効 果 を もつ 。 言 い か えれ ぽ,企 業 の ロ ー ソ返 済 は 部 分 的 に 国 家 財 政 が肩 代 わ りして い る こ とに な る。 従 って,こ の 下 で は 企 業 に返 済 圧 力 が あ ま りか か らず,こ れ が 企 業 の 投 資 行 動 を 刺 激 す る こ とに な る。 第 二 に, 銀 行 融 資 の さい に 担 保 を と る こ と が な い,ま た は経 済 実 体 に よ る担 保 提 供 が 実 質 的 に ない こ とで あ る。 こ う して,企 業 に対 す る銀 行 の 固 定 資 産 投 資 向 け 融 資 は,実 際 に は 「銀 行 が 金 を貸 付 け,企 業 が 金 を 使 い,国 家 財 政 が 返 済 す る」 また は 「多 くの 家庭[企 業]が 金 を使 い,一 つ の 家 庭[財 政 当 局]が 金 を 返 す 」と い うシ ス テ ムに な って い る48〕。 財 政 か らの 返 済 負担 状 況 に つ い て,財 政 部 当 局 者 は企 業 返 済 額 の70%前 後 は 実 際 に は 国 家 財 政 か ら の 負 担 で あ る と述 べ て い る49)。
要 す る に,銀 行 の 企 業 貸 付 制 約 は依 然 と して極 め て ソ フ トで あ り,企 業 側 も銀 行 負 債 に対 して 自 ら責 任 を 負担 す る シ ス テ ムが あ ま り形 成 され て い
な い,と い え よ う。
m第2回 請負 い契約の内容 と特徴
1987年 に第 一 回 の 請 負 い契 約 を した 国 有 企 業 の ほ と ん どは1990年 まで に 契 約 期 限 を む か え た 。 そ して90年 末 ま で に は 予 算 内 国 有 工 業 企 業 の 80%が 第2回 目の請 負 い契 約 を 結 び,91年3月 末 ま で に は 同企 業 の90%が 契 約 を 更 新 した5°)。全 業 種 の 国 有 企 業 で は そ の95%以 上 が91年3月 末 ま で に 契 約 を更 新 した51》。こ う して91年6月 ま で に 第2回 目の 請 負 い契 約 工 作 は 基 本 的 に終 了 し た とい わ れ る。
新 た な請 負 い契 約 の 基 本 方 針 は 「三 つ の安 定 」 と 「大 きな 安 定 ・小 さ な
中 国 国 有 企業 の経 営 請 負 い制 の 動 向
調 整 」 と規 定 され た 。 三 つ の安 定 とは,経 営 請 負 い制 政 策 の安 定,経 営 者 の 安 定,請 負 い 基 数 の 安 定 を 指 す 。 この 安 定 を 基 本 と し て部 分 的 に 調 整 を 進 め て い く とい う もの で あ る。1989年 か ら90年 に か け て の 経 済 不 況 と企 業 経 営 の悪 化,そ の も とで 請 負 い経 営 者 の あ い だ に動 揺 と不 安 が広 が り, 次 期 の請 負 い 契 約 に 対 し て も消 極 的 に な る経 営 者 が増 え て い た 。1989年 に 行 なわ れ た 請 負 い制 実 施 中 の 国 有 工 業 企 業1256社 に対 す る調 査 に よ る と, 企 業 経 営 者 の 三 分 の 一 は 請 負 い 契 約 の 継 続 ・更 新 を 望 ん で い な い 状 況 で あ った52)。こ う した 事 情 の た め に政 府 は従 来 の 政 策 を大 き く変 え ず に,従 来 の政 策 の 枠 の な か で 「小 さ な調 整 」 を行 な う安 定 化 政 策 を採 用 した の で あ ろ う。
さて,以 下 で は お もに 愈 全 林 論 文53}の 統 計 デ ー タを 紹 介 しつ つ 第2回 目 の 請 負 い契 約 の 内 容 とそ の 特 徴 を 概 略 み て み た い 。
(1)請 負 い 主 体 と発 注 主 体
請 負 い契 約 を 更 新 した359企 業 の調 査(1990年 末 実 施)に よれ ぽ,企 業 側 の経 営 請 負 主 体 と政 府 の発 注 主 体 の状 況 は表4‑1,表4‑2の とお りで あ る。
請 負 い 主 体 につ い て は,① 工 場 指 導 グル ー プ が 前 回 よ り増 え,全 体 の約 3/4を 占 め て い る,② 工 場 長 個 人 は前 回 よ り大 幅 に減 った(前 回 の1/3),
表4‑1359企 業 の 請 負 い 主 体 の 変 化(単 位:%) 第 一回 請負 い 第2回 請 負 い 指導 グ ルー プ
工場 長個人 従業 員全 員 工場 管理委 員会
(職員代表 大会 を含 む) そ の他
51.5 36.9 9.3
73.5 12.7 12.2 1.2
o.s (愈 全 林 論 文 「改 革 』1991‑6,144頁)
表4‑2第2回 請 負 い の 発 注 主 体(単 位:%) 主管 工業 部 門
政府 関係 部 門の連 合機 構 財政 部 門
国有 資産 部 門
51.7
39.4(前 回 は36.0) 7.2
1.7
(同上)
③ 従 業 員 全 員 は 前 回 よ り増 え た,④ 工 場 管 理 委 員 会(職 工 代表 大 会)は 極 め て 少 な い。 大 きな 変 化 と して は 工 場 長 個 人 か ら工 場 指 導 グ ル ー プへ の 変 化 で あ る。この 指 導 グル ー プの 構 成 は 基 本 的 に 前 回 の構 成 を 継 承 して お り, そ の ケ ー ス は 全体 の80%前 後 を 占め る と い う54)。工 場 指 導 グ ル ー プ の請 負 い が 増 加 し,工 場 長 個 人 請 負 い が 減 少 した こ とは,別 の 調 査 か ら も確 認 で き る 。請 負 い企 業 の 工 場 長 計2000人 に 対 す る ア ソ ケ ー ト調 査 で は,グ ル ー プ請 負 い が 全 体 の85%以 上 を 占 め,工 場 長 個 人 請 負 い は13%に 止 ま った
(第 一 回請 負 い で は39.5%)と い う55)。
この よ うに 今 回 の 請 負 い契 約 で 請 負 い 主 体 が工 場 長 個 人 か ら指 導 部 集 団 へ と変 化 した 理 由 と して は,旧 来 の 工 場 長 個 人 請 負 い が 抱 え た 問 題 状 況 か ら説 明 さ れ て い る56}。す なわ ち,① 請 負 い 経 営 者 で あ る工 場 長 と一 般 の 職 員 ・労 働 者 との 賃 金 収 入 格 差 が 大 幅 に広 が り,こ の 内 部 分 配 の不 公 平 に 対 して 職 員 ・労 働 者 側 の 不 満 が強 くな っ た こ と,② 請 負 い制 の も とで 工 場 長 の 権 限 が強 化 され,労 働 者 は企 業 の 主 体 で は な く工 場 長 に雇 わ れ て い る存 在 に す ぎ な い との 意 識(「 雇 用 思 想 」)が 労 働 者 の あ い だ に広 が り,工 場 長 と労 働 者 との 関 係 が 疎 遠 に な った こ と,③ 工 場 長 が 請 負 い契 約(と くに 請 負 い 利 潤)の 達 成 を 最 優 先 させ 短 期 的 な 利 益 最 大 化 に 関 心 を集 中 し,そ れ 以 外 の 企 業 管理 を お ろそ か に す る傾 向 が 生 れ た こ と(「以 包 代 管 」現 象)な
ど で あ る。
次 に 発 注 主体 に つ い て は,表4‑2に よれ ば,① 依 然 と して 企 業 の 主 管 工 業 部 門 が 多 く,約 半 分 余 りを 占 め て い る こ と,② 政 府 関 連 部 門 の 連 合 機 構 は 前 回 よ り増 え,40%弱 に達 して い る こ と,③ 国有 資 産 管 理 部 門 は ま だ極