• 検索結果がありません。

情報圧縮過程と意味素の基本的構造

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "情報圧縮過程と意味素の基本的構造"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

情報圧縮過程と意味素の基本的構造

その他のタイトル A theory of information condence processes

著者 藤沢 等

雑誌名 関西大学社会学部紀要

16

2

ページ 101‑115

発行年 1985‑03‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00022740

(2)

情報圧縮過程と意味素の基本的構造

<J' 

theory of information condence processes  Hitoshi Fujisawa 

Abstract 

This brief  article  represented the functions of  information  condence  processes  and meaning primitives. 

Two sorts  of  meaning primitives, objective and  relational  are  exsamined.  Objec‑

tive one are consisted with 82 dimensions with 6 categories and 3 classes̲.  Relat‑

ional'!leaning  primitives are 16 elements of p‑q .truefalse  table. 

Pattern recognition,  learning,  conceptual  attainment  and  simbolic  labeling  are  the certain functioning of  information condence.  And that,meaning primitive is the  basic feature taken by information condence processes.  "UNDERSTANDING"  means  the  fact  that  we  can  condence information sufficiently.  We have  two sorts  of  cont rad‑

ictions.  One is  a strong contradiction stemed from  logical  one, as  same  as  cognit‑

ive dissonance or conceptual  conflict  and the  other  is  a week one stand by the fu zzy on  conceptualization. 

The theory expressed that  a man dislikes the ambiguity  in  terms  of  both  strong  and week contradictions which are not  attained the degree of  appropriate informat‑

ion  condence. 

key words: ambiguity, information condence, meaning primitive,  pattern recognition,  conceptual attainment,  cognitive dissonance, conceptual conflict, artificial  intelligence,  contradiction, fuzzy, 

抄 録

社会心理学の知見を認知心理学あるいは知識心理学へ適用するにあたって,まず入力情報が情 報圧縮される過程とその機能を明らかにする。パターン認知の学習,概念達成,概念の表象化な どは情報圧縮過程の一側面であり.意味素を特徴抽出の結果としてとらえることができる。意味 素には対象依存的意味素と関係依存的意味素があり,それぞれ82次元, 16要素に分けられる。 わ かる ことの意味はその事柄が十分に情報圧縮されている事態を指す。 わからない のは矛盾 が存在するからであり,推論などによって生まれる「強い矛盾」と,概念のあいまいさによって 生じる「弱い矛盾」がある。論理的矛盾はその結果としてあいまいさを生じることから, 理論 人間はあいまいさを嫌うのであり,従って人間は十分な情報圧縮をしようとする ことを 結論づける。

キーワード:情報圧縮意味素 パターン認知 概念達成 認知的不協和 概念的コンフリク ト 人 工 知 能 フ ァ ジ ィ あ い ま い さ 矛 盾

(3)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第2

じ め に

心理学は認知の洪水である。心理学の認知への傾斜は,同時に心理学が持っていた科学主義へ の懐疑でもある。だからといって認知主義といえるほど認知論者が何か新しい方法論を手にして いるわけでもない。コンビュータ・シュミレーションは飽くまでもシュミレーションであって実 体ではない。

ともかく,認知から,あるいは情報処理の観点から人間を理解しようとするなら, それがどの ように常識的で一般的であろうと,あるいは一見非科学的であろうと,認知そのものをなりたた せている心理的機構を明確にしなければならない。それは一方では Neiserのように知覚や学習 や記憶からの接近であろうし (Neiser,U.,  1967)一方では

らの接近でもあろう (Feigenbaum,E. A., 1981)

しかし,社会心理学の認知諸理論に源を発する認知研究からのアプローチが認知心理学あるい Feigenbaum らの知能マシーンか

は認知科学の本流となっていないと思われるのはなぜなのであろう。

社会心理学における認知理論の主眼は常に認知の再体制化にあった。その多くは認知均衝理論 に代表されるように心理的矛盾と, その解決にある (Abelson,R. P.  etal,  1968)

この矛盾とその解決,あるいは再体制化という考えは,人間の情報処理にとって最も基本的か つ重要なものである。それに,社会心理学からのアプローチとして無視してはならないことがあ る。それは認知理論の多くが評価を軸として展開されていることである。 Osgoodらのsemantic differential  methodでも明らかなように,ほとんど全ての概念は評価の色彩を有している。た

とえば犬は, 4本足の動物で吠える……という物理的,経験的知識だけではなく,必ず犬に対す る評価を伴っているという事実を忘れてはならない。評価は全ゆる対象に対して付加される個人 の側からの意味付与であると考えられる。

Kelley, H. H. (1971)が整理, 統合した帰属理論に代表される今一つの認知研究がある(広 田・西川, 1977,広田・藤沢,

1

97

8)

.  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 

帰属研究の重要なところは,認知均衝論が認知要素間がどのように関係しているのかを問うてい

.  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 

るのに対して,認知要素間がどのように関係づけられるのかを問うている点である。特に帰属理 論中の共変関係の取り扱いと他の認知科学での共変関係の取り扱いの相似性については藤沢

(1984),  Harvey, J. H. etal.  (1981)にくわしい。

最後に社会心理学からの認知心理学あるいは認知科学へのアプローチとして見落してはならな いものに社会的真実性 (socialreality)がある。これは Festinger,L. (1954)の社会的比較過 程の流れであり,われわれの持つ知識の内容と信念の生成過程に関わっている。

このような社会心理学における多くの知見が存在するにもかかわらず,現在の認知科 学の中で中心的な位置を占めることのないのには,いくつかの理由があるように思われる。しか

しかし,

(4)

し,その理由の多くは概念の不統ーと方法論の相異であることに論を待たない。

そこで,本論文では,認知科学への社会心理学からのアプローチをすすめるにあたって,研究 の場となる認知とその周辺の問題を明らかにする。

認知とは何かについては English,H. B. (1958)を見ても分るように一様ではなく,知覚 から思考に至る広範な解釈が可能である。認知科学及び認知心理学で云うところの認知とは,

Feigenbaum, A. (1963)の言葉を借りるなら,知的情報処理過程の全て,ということに なろう。あるいは田中 (1981)のように,認識によって知識を獲得する知的フ゜ロセスを指すとい うように, あまりにも莫然としたものである。 そこで, 社会心理学にもどって認知を単純な形 式,すなわち,認知とは意味づけることであり,概念間の関係を明らかにすることであるとしよ う。つまり,認知を研究するにあたって,われわれは好むと好まざるとに係わらず意味や概念,

シェマなど,いわゆる知識の生成過程や表現形式を明らかにしなければならない。

JI  情 報 圧 縮 過 程

1.  パンデモニアム・モデルは正しいか

Selfrige, 0. G. (1959)が学習とパターン認知のモデルとして提出したパンデモニアムには数 多くの示唆が含まれている。まず第ーに,バンデモニアムに出てくる各レベルのデーモン達は各 々が同形式の判断だけを行い,それしか行わないことである。つまり,人間の知識獲得において,

その入力情報が何であれ,同形式の処理しか行われないことが前提になっている。第2に,デー モンは階層をなしており,各階層のデーモンは異なる情報処理をし,一方向的(つまり,情報の入 カ→特徴抽出→イメージ判断→認知,のように)な情報の流れを持っている。パンデモニアム・

モデルは他のレンズ・モデル (Brunswick,E., 1952)などと同じものと考えてさしつかえない。

もともとレンズがフーリエ変換の光学系でのハードウェア化であることからもうかがえるよう に,特徴抽出の一般的方法として知られているモーメント法もフーリェ変換そのものである。そ れが Walsk関数や変形フーリェ級数として展開する小沢ら (1968)や竹林ら (1969)の特徴抽 出へと発展しても基本的には入カパターンをある特徴パラメータとして表現するものである。こ のフーリェ変換を線型分類問題に適用し,パラメータの変動がある場合の最適識別関数を実現さ せたのがパーセプトロン (Rosenblatt,F., 1961)である。(志村, 1972)

このようなことからパンデモニアム・モデルは,ある意味で正しいと言えかも知れないが,だ からといって Gibson,J. J. (1966)のように認知そのものまでも入カデータの特徴とするには問 題が残るものと思われる。つまり,パンデモニアム・モデルは入カデータの特徴抽出過程におい てのみ成立するモデルと考えておくのが正当であろう。

(5)

関西大学『社会学部紀要」第16巻第2

2.  情報圧縮過程

われわれの脳には記憶限界があり,従って全ての情報を蓄えることはできないので,どこか でその情報を切り捨てているのだ, という考えは納得できない。それは人間をコンビュータの ように考える時の最もおちいりやすい誤りである。しかし,だからといって五感から入る情報の 全てを長期間蓄積するわけでもないことは多くの STM研究が示している。それでは入力された 多くの情報はどのようになるのか。すなわち,人間の情報処理システムの目的関数として何を持 ち出すのか,ということである。一般的理解としてのエネルギーの経済法則を,物理学と同様に あげることはできるとしても,それを人間の情報処理に適用するとすれば多くの問題をかかえる ことになろう。

そこで,情報処理システムの目的関数の一つとしで情報圧縮過程を考えてみると,

1)入力情報量を何らかの方法で減少させること一情報圧縮

2)圧縮された情報量は何らかの方法で入力情報を再現できるものであること一情報再現 の両方向が共に満足される過程である。そして最も重要なことは,

3)圧縮された情報はその圧縮比が十分高くなるとラペル付けなどによって位相転換が生じる 一 位 相 転 換

ことである。

入力情報量を減少させる単純な方法は入力情報のある部分を捨て去ることである。いいかえれ ば入力情報のサンプリングである。 しかし, 何を取り, 何を捨てるかは一義的には決定できな い。人間情報処理系に固有の精神物理的サンプリングが存在することはいうまでもないが,前述 の特徴抽出系を考えても,たとえばフーリエ級数の末項などは誤差として扱っても問題がないの と同じように,積分された入カデータはフーリエ級数の係数として情報圧縮され,微分すること で入カデークをある程度の誤差を含んで情報再現することができよう。圧縮比はこの情報再現性 に関わる問題である。 Attneave,F. (1959)が心理神経的活動の基本的機能は,経験を経済的に コード化することである,というのはまさに情報圧縮過程を指している言葉である。この経済的 にという意味は再現性を考慮した圧縮比の問題であると思われる。

どの程度の情報圧縮がなされた時,位相転換が生じるのかは明らかではない。しかし,心理学 における位相転換は特にラベル付けに関して重要な事実であると考えられる。

3.  「わかる」ことの意味

佐伯 (1982a)は わかる ことに関して,外部から入ってくる情報を取捨選択し,変形し,

操作を加えたあげ<, なんらかの形になったところで わかった という実感をいだくものであ る,と述べている。そして 知る ことに関しても Ryle,G.  (1949)のいう knowinghow knowing thatを分けながら行為的側面での 知る と認知的側面での 知る を明確にしよう

(6)

とした(佐伯, 1982b)。また,認知=再認として構成的再認と発見的再認に区別している。

わかる ことの意味を明らかにする前に わかる と 知る と 再認゜の関係を理解しな ければならない。あるいは 学習する ことも含まれるかも知れない。佐伯の推論からすれば,

何かを わかる ためには既に何らかを 知って いなければならないし,そのような認識の起 源さえもプラトン流の再認である。われわれは知るぺきことしか知ることはできないし,分るべ きことしか解らないことになる。 しかし, これは人間としての生物学的性質によるものであっ て,何も知ったことにならないし,この説明から何か新らしいことを生物学的限界を越えて知る

こともできない。

前節においで情報圧縮を問題にしたが,例えば三角形を幾何学的定理として知っていなくて も,何度も同じような三角形を見ることによって,それが三角形であることを 三角形 という ラベルは付けられなくても,われわれは わかる あるいは 再認 する。このことは多くのパ クーン認識機械の証明するところである。しかし,重要なことは佐伯が技能的説明体系と呼んだ

知る ことの体系の中でのknowingthatとしての「真実性」「正当性」「信念」と わかる ことの関係である。これらの概念は真であるか偽であるかの二値論理ではない。「ある程度真実 である」や「やや正当性に欠ける」とか「大いに疑わしい」ことが考えられる。すなわち, かる ということは,真から偽までの真実性の連続体上で,それがより真に近いか偽に近いかの どちらかのことで,情報再現性が高く,圧縮比の高い時,つまり入カデータからの情報圧縮過程 が位相転移を生じる時,われわれはその事実を わかった と表現するのである。

今ここに「犬」という言葉を知らない人間Aがいたとしよう。 Aは最初自分の家にいる犬B 見るだろう。それは動き,吠え,食べるだろう。四本の足を持ち,白い毛をし,多くの場合庭に いる。これらの時々刻々と異なる犬Bの情報をAは特徴抽出を行い情報圧縮を行うだろう。そし てついには再現性の高い,つまり,その犬Bであることが再現できるような特徴抽出にある程度 成功した時, Aはそこにいる動物を犬であると わかかのである。そしてそれに「犬」という ラベルを貼ることによって位相転移し,以後「犬」という表象によってBを表現することになる だろう。ところが隣の犬Cは黒であったとしよう。このCを見て,これも「犬」であると教えら れた時, Aの持つ「犬」表象はくずれ,再現性を高く保つことができなくなり, Aは わからな くなる のである。結果はCを犬でないと言うか, Bを犬でないと言うか,犬の再現性を高くす るために新たな情報を得ようとするか,どちらかになるだろう。 これは Festinger,L.  (1957)  の認知的不協和理論における不協和低減の方法である。

4.  仮説概念学習とプロクラテス法

情報圧縮過程に対する最も大きな疑問はこうである。「それでは何かを わかる ためには数 多くの入カデークが必要ではないか。しかし,われわれは一度だけの経験で わかる こともあ るではないか。」その通りである。 しかし, この時の わかる とは既存の知識間の関係から推

(7)

関西大学「社会学部紀要』第16巻第2

論されるものであり,人工知能学者が盛んに研究を進めている分野である。これについては後述 するが, それを除外してもなおかつ前記の疑問が成立する場合がある。ある対象についての特 徴を前もって仮説として取り入れ, その仮説を検証するという方法である。 Bruner, J.  S.  (1956)以来行われてきた概念達成研究の中でも仮説検証型の概念達成のあることは言うまでも ない。

Brunerらはカテゴリーを作ることが概念学習であり,それは個々の対象を整理することによ って,それ以後の事実に適合する予測性の高さによって成立概念の適否を評価するのだ,と述べ ている。その意味で概念達成は情報の再現性を考慮した情報圧縮過程の一つだと考えられる。

Hunt, E.  B.  (1962) さらに明確に概念学習を分類規則の生成(規則化による情報圧縮)で あるとし,入カデータによって一義的に決定されると述べている。ここでも情報圧縮過程が概念 達成やパターン認識を行う時の基本的原理であることを示唆している。

Brunerらは概念達成において,連言(conjunctive),選言(disjunctive),関係(relational) を分け,それぞれの達成度についての検討を行っているが,このような対象間の関係,つまり,

情報圧縮の手がかりについては後に述べることにする。

概念達成がなぜ仮説検証型であるかはBruner(1956)に詳しいが,これは実験者が提示刺 激中にある属性の規則を概念として実施するからである。つまり,新田 (1970)のいうように被 験者は 実験者の用意した概念は, こういう属性の, こういう値の, こういう組合せではない という仮説をたて,つぎつぎに出会う刺激対象によって,その仮視を検証,修正するのであ ろう。このような仮説検証型は,いわば情報圧縮過程における特徴抽出の特殊な方法である。す なわち,ある仮説的特徴Cがあり,次々に出てくる刺激特徴Aとの差Eを最小とする方略によ る情報圧縮である。つまり

E=A‑C  (241) 

であり, Eを最小二乗法的意味において最小とすることで達成される。これは因子分析法におけ る仮説的因子をもとに解を得るプロクラテス法と同一型である。プロクラテス法は,

E=AT‑C  (242) 

によってあらわし CTは変換行列), Eを最小とするようなTを求め,それによって解ATを出 そうとするものである(芝, 1979)

ここで,前記の わかる という問題にもどってみよう。未だかつて犬を見たことのない人A の犬概念を考えてみよう。 Aは犬について何も知らないのだが,他者0から犬の特徴を教えられ たとする。この仮説は極端な単純構造を持つことになろう。つまり,犬とは四足で,吠える動物 で,……というものである。ここでA0から教えられた特徴の全てについて既に明確な知識を 持っていたとしたら, A わかった というにちがいない。しかし,この概念は検証されてい ないので,現実に犬らしい動物に出会った時,それをプロクラテス的方法で検証しようとするだ ろう。

‑106‑

(8)

1[  意味とは何か

概念の形成過程には特徴抽出による情報圧縮過程と,仮説的特徴の検証という情報圧縮過程の あることを述べたが,ではその特徴とはどのようなものであろう。

1.  意味と情報圧縮過程

Saussure, F. は意味を直接定義していないが,語の成分としても,語の関係としても,ある いは文脈からも意味は導き出されると考えている。意味分析の研究は古く, Ogden, C. K. 

Richards, I.  A. (1936)の基本三角形 (Fig.1.  参照)は意味を表わす三要素として Ullmann,

s.  (1962) Baldinger,K. (1980)に受けつがれ発展している。ここで語は思想又は指示を象 徴し,思想又は指示が現実の出来事や特徴を指示する。従って,語は思想又は指示を媒介として 指示物を間接的に表わす,というものである。一方, Saussure以来の記号学と Hullの新行動

思想又は指示

象徴 表わす

指示物

Fig. 1 Ogdenの意味の3要素

A L }

] ‑

::.迄 ―‑ R

RT 

区 → rm, —• Sm, → Rx, 

回]→rm,• ..Sm, → Rx, 

国]~rmn•‑smn Rxn 

J I  

/S/→  rm8‑‑‑‑SmaRxa

Fig. 2 Osgoodの表象媒介過程

(9)

関西大学「社会学部紀要」第16巻第2

概念又はシェマ(心像など)

正しい 十分な

位相転換/

(述合などによる)/

・情報圧縮と再現

(個人的経験による)

9

象徴(語、など) 対象や関係(事実、概念)

(対社会的経験による)

対象や関係

Fig.3情報圧縮過程による表象

主義との接点を求めて Morris,C.  (1946) Osgood,C. E.  (1953)の表象の媒介過程 (Fig. 2.  参照)へと進んだ道がある。

ここで語は刺激ー反応との条件づけによる連合過程であり,それによって別の反応Rxが生じ るような刺激固である,というものである。この両者の関係から情報圧縮過程による表象を考え なおしてみると Fig.3.  のごとくになろう。つまり,語も概念も共に十分な情報圧縮が成された 観念(こう呼んでよいかどうかは分らないが)であって,この観念間での位相転換によって,ど ちらがどちらを表象しても基本的には良いものである。 ただ,概念 Fは個人的経験的色彩の濃 いものであるのに対して象徴Sは対社会的に共通したものとして獲得され,従ってコミュニケー ションの用として使われると考えられる。

このように見てゆくと意味とは十分な情報圧縮されるべき対象や関係の特徴群を含む情報圧縮 過程全体である。従って,意味を特定することはできないにちがいない。 Dubois,J.  (1973) の「ラルース言語学用語辞典」において 意味 は研究者の注目するところによって4分類され ているが,そのどれを取っても,やはり意味定義を拒否するものである。それでは意味研究の存 在を否定するのかといえば,そうとも言い難い。情報圧縮されるべき対象や関係の特徴群とは何 なのか,という問題,つまりプラント流の再認のための要素,すなわち意味素研究の道が残され ている。

2.  対象の持つ意味素とその次元

「意味素とは意義の最小単位であって単独には実現されず,従って常に意味論的布置の内部に 実現されるものをいう」(ラルース言語学用語辞典)。これではしかし,意味素が何であるのか全

(10)

く分らなくなる。言語学の意味素分析によく出てくる chaise(椅子)対 fauteuil(ひじかけ椅 子)の意味素とは<背もたせのある:>, <脚のある:>, <坐るための>・…••から構成され,<ひ じかけのついた>は chaiseには存在しないが fauteuilには存在する, というのは chaise 説明にも fauteuilの説明にもなっていない。なぜなら,ここで云う意味素には,また意味素が あって,最後には循環してしまうからである。この最後に循環してしまうような単語は,しかし 重要である。なぜなら,もし 基本的な概念 というものがあるとするなら,それこそ循環する だろうからである。 Ogden,C. K. (1968)による800語の基本単語がそれである。 Ogdenはこ れらの基本単語を操作,一般的事物,視覚的 (pictured)事物,一般的量に分けている。

このような単語自身の分析の新らたな方法としてWilks,Y. A. (1975)は源意味論(preference semantics)を主張した。つまり,ある単語を他のもっと原初的な単語によって置き換え可能な

ら,それをもって表現する,という方法で辞書を作ったのである。それによると,単語は5つの クラス entities,action,  cases,  qualifiers,  type indicatorsに分かれており, templateとい う規則でつながっている。彼は最初 Quillian,M. R. (1968)の意味ネットワークの経済化から 進んだのである。しかし結局 Minsky, M.  (1975)のフレームに近いものとなっていったのは template規則によるものであって, 5つのクラスは対象の, templateは関係の意味素となる ものであると思われる。 Schank,R. C.  (1972)も意味素として動詞を取りあげ, 12個の動詞意 味素に分解できるとしている。

このように意味素の研究は Ogdenの行った方法の拡張として人工知能研究における知識表現 のあり方として進んできたわけだが,意味素として抽出する時の注意として Wilksは有限性

(単語数より少い),包括性(一般的理解可能であること),独立性(どの意味素も他の意味素で 定義できない),非循環性(意味素間での定義が循環しない),原始性(部分集合の置換性がな い)をあげている。 Norman,D. A.  (1975)も意味素をとりあげる際の心理学的基準とし て,完全性,同義不変性,意味重複性,連続性,拡張性,心的妥当性が必要であると述べている。

Wilksおよび Normanらの基準に従って筆者は Ogdenの基本単語800のうち個物を除く 426語を対象に,対象となる意味素のクラスとして, Table1.  にあげた通り, 1)空間, 2)時間,

3)形態, 4)様態, 5)動態, 6)作用を抽出した。 (1)(2)は時空的位置, (3)(4)は対象の状態, (5)(6) 対象の動きに関するものであり, その各々は対象の置かれている位置と体とのマトリックスに なっている。時空的位置における worldとは時空的普遍性を持つという意味である。

しかし,筆者の掲げた対象の持つ意味素は多分に恣意的であり,本来これらの意味素は情報圧 縮過程の産物として,対象の持つ特徴又は成分として抽出されてゆくものであることに変わりは ない。

3.  関係としての意味素

関係は対象の持つ特徴であることから,対象の持つ意味素と考えられるが,しかし,関係は対

(11)

関西大学『社会学部紀要」第16巻第2

Table 対象の意味素次元 位 置 原位置,前後 原場所,距離

左右,上下

(24次元) 外内, WORLD 範囲,かたまり 過去,現在 時 点

(8次元) 末来, WORLD 継 続 点,直線,円 気体,液体

面,球 固体,粒体

質,量 抽 象

傾向, (評価) 心 象

移動,変動 抽 象

運動,静止 x具 象

(12次元)

心 象

ヵ,意志 抽 象

x具 象 (9次元) 法則性

心 象

注:評価は質・心象の一部であるが特に( )付きで加えた。

Table 2項結合関係の種類 真 理 値 論 理 記 号 p:1100 

Q:1010  1.  P/¥Q  2. 逆 含 意 P 3.  p肯 定 4.  P 5.  Q肯 定 6.  (PAQ)VCPA 7.  P/¥Q  8. 両 否 定 Pl¥ 9.  P/¥Q  10.  p否 定 11.  Pl¥ 12.  Q否 定 13.  (P/¥V(P/¥Q)  14. 非 両 立 P V

(12)

象を離れて対象間の連結に使用され,かつ論理学的又は代数的特徴を持っていることから,関係 として独立の意味素系と考えてしかるべきであろう。

Brunerらが概念達成課題において連言 (AND),選言 (OR),関係(含意など)に区別した ことは述べたが,その後これらの関係を整理した Chauvineau,J.  (1957),  Neisser,  U.  etal  (1962),  Haygood, R. C. (1965)のものは二項結合のうち P=QPQをのぞく14の関係の種 類を網羅している (Table2.  参照)。これらの内容は新田 (1970)に詳しい。関係の意味素は従 って16種類が存在すると考えられるが,しかし,この表には同等 (P=Q)と矛盾 CPQ)がな く,しかも関係の程度については全く触れられていない。もちろん,概念達成課題に同等(同じ カードばかり見せる)や矛盾(全く関連のないカードばかり見せる)がないのは当然だが,関係 の程度は重要である。例えば,連言と選言の概念達成において連言の方が選言より概念達成が形 成されやすいことや,結合が複雑であるより単純な方がより達成が容易である (Neisser,U.  1962)ことは想像に難くないが,だからといって,切り株と椅子が時により同じ概念(腰かける もの)として選言結合するのに困難を伴う課題ではないことは明らかである。

また,矛盾にしても PQだけではなく,三段論法的矛盾はよく知られており, 結合関係の 程度(強度)によっても矛盾が生じる。例えば のようなもの で, 犬でありかつ猫のような もの という結合はいくつかの回答を導き出してしまう。このような場合もわれわれは わから なく なり,論理的矛盾と同じような解決策をとろうとする。そこで

4) 概念のあいまいさや結合関係のあいまいさによって推論に複数の結果が得られるような場 合,これを弱い矛盾と呼び,

5)概念や結合関係にあいまいな部分が少く,なおかつ論理的結論を見い出せない場合,これ を強い矛盾と呼ぶ。

情報圧縮をする過程においては弱い矛盾が生じやすく,推論過程においては強い矛盾が生じやす いことは言うまでもない。

4.  対象と関係の階層的特徴

五感によって(心理的特徴として)取り入れられた情報=「対象」の意味素次元と,対象間に 存在,あるいは意図的に結合させる規則=「関係」の種類(意味素と考える)を述べてきたが,

Hull‑Maltzman‑Berlyneへと続く習慣族階層の思考理論を見逃してはならない。 Osgood, C. E.  (1957)の多段階モデルはこの習慣族階層理論の記号行動への援用である。 Berlyne,D. E.  (1950) まず刺激ー反応の系から出発して, 「予想的復元」(同一系列の刺激による反応連鎖 形成が促進されること)へと進んでいる。これは筆者のいう情報圧縮の過程での特徴抽出そのも のである。そして「想起的復元」 (Osgoodの表象媒介過程と同じもの) においてシンボル反応 が生じる。いわばこれは十分な情報圧縮がなされたことによる対象依存的概念からの開放であ り,対象から離れ,その代役として思考の道具となる過程である。 Berlyneはその後「分肢化」

(13)

関西大学『社会学部紀要』第16巻第2

(ある外部刺激が多数の反応系列を活性化させること)によって「再体制化」へと進んでゆき,

最後に「推論」へと到達する。 Berlyneの理論がシンボル習慣族階層であるといわれるゆえんで ある。

この理論の中で重要なところは想起的復元と再体制化である。想起的復元というシンボル反応 SRという系列から S1S1→ r2→ R2という異る位相への転換過程を指している。本来なら S2→ r2→ R2となるべき系列から外的刺激と何ら関係な<S1→ r2という連合が生じることである。

この考えを情報圧縮過程に援用するなら,対象や関係の十分な圧縮によって位相転換した概念F 及びその象徴としてのSは,階層は異っても同じように再び情報圧縮されることになろう。つま

1')観念及び観念間の関係を何らかの方法で再度情報圧縮を行う

2')圧縮された「情報群」は何らかの方法で観念を再現できるものである

このことによって,再び思考は観念(概念やその象徴)からも開放され, われわれは「現実不 可能なこと」や「抽象世界」に遊ぶことができるようになると考えられる。これが Piaget,J. 

(1949)のシェマであり, Minsky,M. (1975)のフレームであり, Schank,R. C. Abelson,  R. P. (1977)のスクリプトである。ところが, Anderson,J.  R. (1980)が指摘するように,人 工知能学者はあまりにも決定論的すぎ,あいまい性についての壁につき当たっている。 Berlyne の言うように本来,学習は確率論的であり,ベイーズ流の条件付き確率かどうかは別にしても,

二値論理でないことは明白である。

IV  「 あ い ま い 」 な 知 識 に よ る 可 能 性

1.  矛盾と あいまいさ の関係

東ら (1964)Berlyneの解説として明解に述ぺている。「……このような変換反応の連鎖の 階層がシンボル習慣族階層である……それは純粋構造がつねに一定であることを意味する……他 方,変換反応は,刺激状況の影響のもとで生起確率の高いものから生ずる……こうして思考は純 粋構造を変えず確率構造を変容させることによって展開される。純粋構造のゆえに最高に速く,

確率構造のゆえに最大の情報を利用できるのである。この思考を動かすのが,シンボル反応間の 矛盾,すなわち,概念的コンフリクトである。そして認識の獲得は,このコンフリクトから生ず る不均衝(あいまいさ,驚き)の解消を求めることである。シンボル反応間の矛盾は,疑問,困 惑,矛盾,概念的不一致,混乱,不適切などのかたちをとって現われる。こうした概念的コンフ

リクトを解消する方法が調整,圧倒,不平等化である。…… (p.113114)」(下線は筆者)

つまり,われわれの知識はあいまいである。しかし,知識があいまいであるからこそ,新らし い知識を増やそうとするのであり,矛盾するからこそ再体制化しようとするのである。 Berlyne

参照

関連したドキュメント

はある程度個人差はあっても、その対象l笑いの発生源にはそれ

しい昨今ではある。オコゼの美味には 心ひかれるところであるが,その猛毒には要 注意である。仄聞 そくぶん

どにより異なる値をとると思われる.ところで,かっ

ここから、われわれは、かなり重要な教訓を得ることができる。いろいろと細かな議論を

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

Google マップ上で誰もがその情報を閲覧することが可能となる。Google マイマップは、Google マップの情報を基に作成されるため、Google

2) ‘disorder’が「ordinary ではない / 不調 」を意味するのに対して、‘disability’には「able ではない」すなわち

これも、行政にしかできないようなことではあるかと思うのですが、公共インフラに