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期待される教師 An article about the prospective teachers

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Academic year: 2021

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期待される教師

An article about the prospective teachers

藤井 千惠子 Chieko FUJII

1 指導行政・管理職の視点から

(1)教員の資質・能力の向上

指導行政や管理職は、学校が地域の子どもたち に最善の教育を行うところであることを切に願っ ている。そのために、教育課程の編成を行い、意 図的・計画的に教育活動を実施している。しかし、

適切な教育課程を編成し、立派な学校経営計画の 方針を立ててもそれを具現化する教員がいなけれ ば実現は不可能となる。日々、子どもたちの前に

立ち指導する教員の資質・能力を向上させること は、指導行政及び管理職の大きな課題である。

グラフ1に示したように、東京都の教員の年齢 構成は 50 歳代の層が最も多く、次いで 20 歳代と なり、学校の中核となる 30 歳代から 40 歳代前半 の人数は少なくなっている。さらに、今後10年間、

毎年2千人規模の退職者がおり、したがって新規 採用者も増加することとなる。特に、小学校の教 員にその傾向が大きい。

かつて勤務していた小学校で、1年生の保護者

体育学部こどもスポーツ教育学科(Faculty of Physical Education Department of Sport Education for Children)

特 集

20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33343536 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53545556 57 58 59 60 61 2500

2000

1500

1000

500

0

全体 小学校 中学校 高等学校 特別支援学校

グラフ1 東京都公立学校教員年齢分布(平成 20 年 5 月 1 日)

(2)

から「わが子の担任はベテラ ンの先生にしてほしい」との 要望をいただいたことがあ る。子どもの教育に対する期 待の表れであるが、限られた 人的資源の中、すべての学級 に力量のあるベテラン教員を 配置することは難しい。初任 者教員にも大きな期待がよせ られており、管理職や指導行 政としての教育委員会は、た

とえ1年目であろうともベテラン教員と比較して 遜色のない授業を行うことができるよう支援をし ていかなければならない。

これらの状況から、若手教員をはじめとした現 職教員の資質・能力の向上は、学校にとって喫緊 の課題となっている。

(2)求められる教師像

それでは、どのような教師が求められているの だろうか。

中央教育審議会「新しい時代の義務教育を創造 する」(平成 17 年 10 月 26 日)では、教師に対す る揺るぎない信頼を確立するために、質の高い教 師を養成・確保することが不可欠だとして、ある べき教師像を明示している。

① 教職に対する強い情熱

 教師の仕事に対する使命感や誇り、 子ど もに対する愛情や責任感、 常に学び続ける 向上心など

② 教育の専門家としての確かな力量  子ども理解力、 児童・ 生徒指導力、 集団 指導の力、 学級づくりの力、 学習指導・ 授 業づくりの力、教材解釈の力など

③ 総合的な人間力

 豊かな人間性や社会性、 常識と教養、 礼 儀作法をはじめ対人関係能力、 コミュニケ ーション能力などの人格的資質、 教職員全 体と同僚として協力することなど

東京都教育委員会では、10 月に「教員人材育 成の基本方針について」を公表した。そこには、

「教員が身に付けるべき力」(図1)が示されてい る。 注目すべき点は、「外部との連携・ 折衝力」

や「学校運営力・組織貢献力」である。先に述べ たように、様々な職務を若手の教員も担わざるを 得ない状況となっている。若手、ベテランを問わ ず全ての教員に「学習指導力や生活指導力・進路 指導力」のみならず学校組織の一員であることを 自覚し、学校を支える力を身に付けることが期待 されている。

(3)現職教員の研修体系

教員の資質・能力を向上させるため、東京都教 育委員会はキャリアに応じた研修体系を確立して いる。図2のように経験年数や職層によって研修 を受講できるようになっている。

これらに加えて、 5年目から 10 年目の教員を 対象とした「東京教師道場」、小学校の教員を目 指す大学4年生を対象とした「東京教師養成塾」、

高校3年生を対象とした「東京未来塾」などの特 色ある研修も実施している。

しかし、このような体系的な研修を用意しても、

それを受講する教員の内発的な意欲がなければ資 質・能力を向上させることはできない。よりよい 授業をしたい、そのための力を身に付けたい、望 ましい学級集団を育てたい、組織としての取り組 みについて学びたいと願う意欲や向上心が力量形 成のポイントとなる。

図1 教員が身に付けるべき力(東京都教育委員会 OJT ガイドラインより)

確かな学力の定着、規範意識の醸 成、キャリア教育の推進のために、

児童・生徒に行う教育指導の力

学校教育の質の向 上のために、保護 者、地域、外部機 関と連携する力

学校の自主性・自律性確 立のために組織の一員と して分掌を遂行する力、

学校運営に参画する力 学習指導力 生活指導力

進路指導力 外部との

連携・折衝力 学校運営力 組織貢献力 教員が身に付けるべき4つの力

教員が身に付けるべき力 基礎形成期・伸長期・充実期の教諭・

主任教諭、主幹教諭の段落ごとに、

具体的な内容を示す。

(3)

2 教科教育の視点から 

(1)学ぶことの意味と価値を伝える

小学校3年生では、「昆虫の成長と体のつくり」

を、例えば「モンシロチョウ」の観察を通して学 習する。

この学習を通して、モンシロチョウだけでなく 他のチョウも同じように一定の順序で成長すると いう自然の摂理、サナギから羽化する瞬間の生命 に対する感動など、自らが飼育し、その様子を自 らの目で観て初めて実感を伴った理解が可能とな る。また、生き物に対する愛着や畏敬の念、自然 の造形美に対する感動や憧れも学ぶことができ る。単に知識を覚えるための学習にとどまらない。

子どもたちが、身近な自然に触れ、自然を見る目 を養うことは、「今まで見ていても見えなかった 対象」に気付くこと、科学的な見方や考え方を身 に付けるということである。

教員には、すべての教科等の指導において、 「な ぜこの学習をするのか」「何を子どもたちに育て たいのか」「何を伝えていきたいのか」といった

学習の意味と価値を問い続けることが求められて いる。

(2)子どもを知る

研修を積み重ね、指導内容を調べたり、学んだ りするが、それだけでは授業を行うことはできな い。指導しようとする子どもの実態を踏まえ、ど のような教材・教具を用い、どのような発問を行 い、学習を展開するかが重要だからである。そし て、子どもの実態把握に努めることが必要である。

◇学力の実態

現在、 多くの自治体では、 学力に関する調査

(国語、算数・数学を中心とした調査)を実施し ている。また、学習状況調査(例えば、「朝食を とっているか」など)も実施し、学力との相関関 係について考察している。

理科・数学の調査もが実施されており、ここで はその一部について紹介する。

①  OECDで実施しているPISA調査では、読解 力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3 分野について調査している。その結果、日本の 科学的リテラシーについては、上位グループに

図2 東京都教職員研修センター「現職研修体系」(平成 20 年度)

キャリアアップ研修(教科等、教育課題、産業・情報)Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 中高一貫教育校教員養成研修、特別支援教育コーディネーター研修 教科「奉仕」推進者養成研修、夏季集中講座、教員研究生

「食育」推進者養成研修、東京都教育実践発表会、「日本の伝統・文化理解教育推進者養成研修」

都立学校校内研修担当者育成研修、派遣研修(大学院派遣等)、東京教師道場

東京教師道場錬成講座、特別支援学級担当者研修、東京都公立小学校外国語活動中核教員研修【20年度新設】

授業力アップ研修(基礎的な指導力を身に付けるための研修) 等

教育管理職候補者研修 教育管理職等研修 主幹教諭任用時研修、主幹教諭任用前研修、主任研修

初任者研修新規採用者研修

職層研修必修研修選択課題研修

東京教師道場 (都教職経験年数が5年から10年程度の教員)

ステージⅠにおける研修 ステージⅠ(キャリアプランⅠ)

経験年数 1 2 3 4 5 〜 10

ステージⅡにおける研修 ステージⅡ(キャリアプランⅡ)

11  20

ステージⅢにおける研修 ステージⅢ(キャリアプランⅢ)

21〜

12〜

1年目

十年経験者研修

11年目

都立学校四年次授業観察

4年目

都立学校二・三年次授業研修

2・3年目

(4)

属しているものの全体としては、読解力や記述 式問題に課題があり、成績分布においても中位 層が減り、低位層が増加していること、無回答 率が高く、学習意欲やねばり強く課題に取り組 む態度に個人差が広がっていることなどが明ら かになった。

②  国際数学・理科教育動向調査(TIMSS調査)

では、得点では過去の調査と比較してもほとん ど変化はみられないが、数学や理科が好き、楽 しいと回答する割合は参加国の中で低く、また、

テレビやビデオを見る時間が長いことなどが明 らかになった。

③  文部科学省が実施した「全国学力・学習状況 調査」の算数・数学では、基礎的・基本的な知識・

技能は相当数の子どもたちが概ねに身に付けて いるが、意味の理解や情報の活用、説明等につ いては課題があることが明らかとなっている。

④  文部科学省で実施した「特定の課題に関する 調査」における算数・数学では、日常事象の考 察に算数・数学を生かすことや論理的に考える ことなどの数学的に考える力に、理科では、問 題解決するための観察・実験の方法を考えたり、

結果等を基に考察を深めたりすることなどにそ れぞれ課題がみられた。

これらの調査結果は、貴重な指導資料の宝庫で ある。学校や学級の傾向を把握し、指導計画に反 映させたり、一人一人の子どもに必要な具体的な 手だてを検討したりすることができる。また、学 習状況調査結果にも目を向けることによって、学 習意欲や家庭学習等に対する手立ても工夫するこ とができる。

学力の実態を知ることは、教員としての授業に 対する心構えを見直し、改善するなど授業の質的 な転換を図ることにつながる。

◇運動能力の実態

小学生以上の「体力・運動能力調査」について は、文部科学省から報告書が出され、テスト項目 とその結果及び考察が示されている。ここでは小 学校に入学する前の5歳児の運動能力調査のデー

タについて紹介する。

東京都教職員研修センターでは、昭和55年(当 時は都立教育研究所)から3年ごとに東京都公立 幼稚園に在園する5歳児を対象に運動能力調査を 実施してきた。平成 19 年度は、10 回目の調査と なった。(平成19年度研究紀要「第10回東京都公 立幼稚園5歳児の運動能力に関する調査研究」)

・調査対象園児 65園 5歳児 2,400名

・実施時期 平成19年10月から11月まで

・調査内容

25m走 立ち幅跳び ソフトボール投げ 体支持持続時間 両足連続跳び越し

以下に比較データ(グラフ2)を示す。グラフ は、それぞれの調査の平均値の推移と昭和 55 年 度の結果を 100 とした指数の変化を表したもので ある。

園児の運動能力については、依然として低下傾 向が見られた。特に、男児・女児ともに「体支持 持続時間」 は、 昭和 55 年度の値と比較して約 60%の値まで低下している。また、「ソフトボー ル投げ」は、男児・女児ともに個人差が大きい種 目であることがわかった。

ここで注目したい比較調査がある。(グラフ3 この調査は、平成16年度に実施したものである。)

体支持持続時間について時計を見せるなど園児に 目標をもたせ再度実施したところ、 男女とも 25 秒前後タイムが伸びた、というものである。

心情(徳)に特化する調査は難しいが、この体支 持持続時間のように、目標をもつという心情に働 きかけたことが数値に影響することに注目したい。

◇心情(徳)について

粘り強く取り組む気持ち、最後まであきらめな い精神力、失敗しても気持ちを切り替えて再挑戦 するなどの心のありようは、学力調査や運動能力 調査の結果とも関連していることが推察できる。

今回の学習指導要領改訂において、すべての教

科で「道徳教育の充実を図る」ことが総則及び各

教科等に示された。このことは、「徳育」の重要

性を改めて示したものといえる。

(5)

グラフ2 5歳児の運動能力調査結果 男児女児

平均値の推移

(25m 走)

6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6

6.7 年度

19 16 13 10 7 4 61 58 55

男児女児 昭和 55 年度の結果を 100 とした指数の変化

110 105 100 95 90 85 80 75

70 年度

指数

19 16 13 10 7 4 61 58 55

(25m 走)

男児女児 平均値の推移

(立ち幅跳び)

120 115 110 105 100

95 年度

cm

19 16 13 10 7 4 61 58 55

男児女児 昭和 55 年度の結果を 100 とした指数の変化

110 105 100 95 90 85 80 75

70 年度

指数

19 16 13 10 7 4 61 58 55

(立ち幅跳び)

男児女児 平均値の推移

(ソフトボール投げ)

8

7

6

5

4 年度

m

19 16 13 10 7 4 61 58 55

男児女児 昭和 55 年度の結果を 100 とした指数の変化

110 105 100 95 90 85 80 75

70 年度

指数

19 16 13 10 7 4 61 58 55

(ソフトボール投げ)

男児女児 平均値の推移

(体指示持続時間)

9085 8075 7065 6055 5045

40 年度

19 16 13 10 7 4 61 58 55

男児女児 昭和 55 年度の結果を 100 とした指数の変化

110105 10095 9085 8075 7065 6055

年度 指数

19 16 13 10 7 4 61 58 55

(体指示持続時間)

男児女児 平均値の推移

(両足連続跳び越し)

5.1 5.3 5.5 5.7

5.9 年度

19 16 13 10 7 4 61 58 55

男児女児 昭和 55 年度の結果を 100 とした指数の変化

110 105 100 95 90 85 80 75

70 年度

指数

19 16 13 10 7 4 61 58 55

(両足連続跳び越し)

(6)

教員には、子どもの多様な実態を把握し、その 実態に応じた学習活動を進めることが求められて いる。子どもを知る努力を怠ってはならない。

3 学び続ける

学校には、地域や子どもの実態等を踏まえた教 育目標が掲げられている。その多くは、「知徳体」

に基づいた内容となっており、バランスよく育て ることを大切にしている。

在職していた小学校の教育目標は、次の通りで ある。

教育目標を実現させるためには、子どもたちを 取り巻く様々な環境を整備することが求められる。

つまり、この目標は、教員や保護者の目標でもあ るといえる。

そこで、教員にはそれぞれの目標の「子」のと ころを「先生」と読み替え、指導する側にとって の目標であることを意識させた。

また、保護者に対しては「子」を「家族(家庭)」

と読み替えてほしいと伝えた。「進んで学習する 家庭(そうした環境作りをしてほしいというこ と)、なかよく助け合う家庭(子どもにもお手伝

・進んで学習する子

・なかよく助け合う子

・礼儀正しい子

・元気でじょうぶな子

いなどをさせ、互いに助け合う家庭)、礼儀正し い家庭(挨拶や返事など)、元気でじょうぶな家 庭(家族みんなが元気で健やかに生活すること)」

である。

教員も保護者もともに「知徳体」のバランスあ る人間になることを生涯にわたって求め続ける目 標としていきたいものである。

<目前心後 離見の見>

数年前に能楽協会の方々と仕事をする機会に恵 まれた。それ以来、能に興味をもち、能を鑑賞し たり、世阿弥の能楽論集に目を通したりしている。

世阿弥の著書の一つ「花鏡」には、舞の心得と して「目前心後」という一節がある。目を前方の 観客の目で見て、心を後ろに置け、というもので ある。さらに、「離見の見」と言う見方、すなわ ち客観的な見方で自らを見ることを説いている。

自分の姿は自分では見ることができない。教員 としての成長は、人間としての成長である。一元 的な見方ではなく、前からも後ろからも見ようと するなど視野を広げる努力を惜しんではならな い。限られた時間を生きる中で最大限の努力をす ることが教員として、人間としての営みであろう。

自分自身も自らを客観視するための努力を積み重 ねていこうと改めて決意している。

参考資料

・ 東京都教育委員会「東京都教員人材育成基本方針に ついて」平成20年10月

・ 東京都教育委員会「OJTガイドライン」平成20年10 月

・東京都教職員研修センター 平成20年度教員体系

・ 東京都教職員研修センター 平成 19 年度研究紀要

「第10回東京都公立幼稚園5歳児の運動能力に関する 調査研究」

・ 東京都教職員研修センター 平成 16 年度研究紀要

「第9回東京都公立幼稚園5歳児の運動能力に関する 調査研究」

・ 文部科学省「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及 び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」

H20,1,17

・ 文部科学省 学習指導要領(小学校・中学校)H20, 3 告示

グラフ3 体支持持続時間で時計を見せるなど励ましが 園児に与える効果

180 160 140 120 100 80 60 40 20

0A 園 B 園 C 園 D 園 E 園

時計あり 時計なし

参照

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