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RC 骨組の降伏曲面と地震応答

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名古屋工業大学学術機関リポジトリ Nagoya Institute of Technology Repository

RC骨組の降伏曲面と地震応答

著者 青野 松雄

学位名 博士(工学)

学位授与番号 13903甲第617号 学位授与年月日 2007‑03‑24

URL http://id.nii.ac.jp/1476/00002846/

(2)

博 士 論 文

RC 骨組の降伏曲面と地震応答

YIELD SURFACE AND SEISMIC RESPONSE OF RC FRAME

2007

年 

1

青 野 松 雄

(3)

論文の要旨     

 

  本研究は,柱,はり,耐震壁の各部材で構成された多層RC造骨組の降伏曲面とその地震応答特性 を対象としている。降伏曲面は斜め荷重入力に対する骨組が有する耐力をねじり抵抗を含めて把握で きる。極限解析法および三次元非線形構造解析プログラムを用いて,偏心のない架構および偏心のあ る架構の降伏曲面を算出し,静的荷重増分解析および地震応答解析を行って,降伏曲面と変形方向,

ねじり変形,層崩壊余裕率,弾性時および塑性時の動的挙動など,弾塑性力学上の架構の挙動を解明 するものである。

本論は「RC骨組の降伏曲面と地震応答」と題し,以下の7章より構成される。

第1章  序論

第2章  解析モデルおよび解析方法 第3章  偏心のないRC骨組の静的解析 第4章  偏心のないRC骨組の地震応答 第5章  偏心のあるRC骨組の静的解析 第6章  偏心のあるRC骨組の地震応答 第7章  結論

以下に各章の概要を示す。

1

章「序論」では,仕様規定化から性能規定化が指向される中で,耐震設計において,斜め荷重 入力に対する建物の静的および動的挙動を解明することの重要性を記し,これに係わる主要な既往の 研究について報告した。以上を踏まえて本研究の目的と意義を述べている。

2

章「解析モデルおよび解析方法」では,解析対象とする架構モデルは,

x ,y

方向ともに柱間

8 m,

2

スパンの

12

階建,高さ

42.5m

として,柱の強度を一定とし,はりの強度をパラメータすること,解 析に用いる

3

次元非線形構造解析プログラムでは,はりは

Uniaxial-spring Model

に,柱と耐震壁は

Multi-spring Model

に置換することを記述している。

3

章「偏心のないRC骨組の静的解析」では,柱とはりで構成された純フレームについて,静的 荷重増分解析により各架構モデルの力学的特徴を把握したうえ,柱・はりの曲げ強度比と層崩壊余裕 率の関係を検討した。その結果,地震時に層崩壊が生じる位置を予測する指標として,柱・はり強度 比より層崩壊余裕率を用いる方が有効であった。また,静的解析により求めた降伏曲面は,はり強度 の低い範囲では直角形状となり,はり強度の増大に伴い,次第に円弧状に拡大することを示した。降 伏曲面と変形方向を検討し,架構方向の静的解析から

45°方向の強度を推定する場合,柱・はり強度

比が小さくなるに伴い,既往の研究の方法では過大評価になることを示した。

4

章「偏心のないRC骨組の地震応答」では,前章の各架構モデルに対し,実際の構造設計に用 いる模擬地震波および実地震波を用いた動的解析を行い,はり降伏型架構と柱降伏型架構の地震応答 の相違を検討している。また,架構を限界耐力計算法により

1

自由度系に縮約して地震応答を予測し,

(4)

地震応答解析の結果と大局的にみれば一致していることを示した。さらに,剛塑性モデルによる応答 解析をはり降伏型架構モデルに適用し,三次元非線形構造プログラムにより,その応答結果を検証し た。その結果,弾塑性モデルによる応答と近似することを示した。

5

章「偏心のあるRC骨組の静的解析」では,柱,はり,耐震壁で構成した偏心のある架構に対 して,静的荷重増分解析により,各架構モデルの力学的特徴を把握し,架構方向のせん断力(

関係および,せん断力−ねじりモーメント(

M )関係の降伏曲面を求め,降伏曲面と変形方向を検

討した。その結果,柱降伏型の架構モデルでは,降伏曲面に関する流れ則(von Mises’s flow rule)が成立 することが認められたが,はり降伏型の架構モデルでは,直交性が崩れている箇所があり,今後の検 討課題を残した。また,架構の極限解析法を提示し,その解析法を適用して,架構方向(

,

方向)の 水平荷重および水平荷重とねじりモーメントに対する架構の降伏曲面が推定できることを示した。

6

章「偏心のあるRC骨組の地震応答」では,前章の各架構モデルに対し,模擬地震波を用いて 弾性時および塑性時の動的挙動を考察している。その結果,並進変形および,ねじり変形は弾性時より 塑性時の方が大きく,動的解析ではこの傾向がより顕著であること示した。また,本事例の場合,限 界耐力計算法による応答予測では,偏心による影響は小さく,大局的にみれば動的応答とほぼ一致す ることを示した。

第7章「結論」では,各章のまとめを総括し,さらに今後の課題について述べた。

(5)

目  次 

第1章  序論

1.1  研究の背景 2

1.2  既往の研究について 3

1.3  研究の目的 5

第2章  解析モデルおよび解析方法

2.1  解析モデル 8

2.2  解析方法 9

 

第3章  偏心のないRC骨組の静的解析

3.1  はじめに 12

3.2  静的荷重増分解析 (0°および 45°) 12

3.2.1  荷重−変形関係 12

3.2.2  柱の NM

特性と荷重の状況

12

3.2.3  柱とはりの曲げ強度比 12

3.2.4  層崩壊余裕率  18

3.3  任意方向への静的荷重増分解析 20

3.3.1  降伏曲面 20

3.3.2  既往の研究との比較 21

3.3.3  降伏曲面と層間変形の増分との直交性について 22

3.3.4  各階のねじり変形について 24

3.4  まとめ 25

第4章  偏心のないRC骨組の地震応答

4.1  はじめに 28

4.2  模擬地震波に対する応答 28

4.2.1  入力地震動 28

4.2.2  応答 29

4.2.3  加速度倍率と最大層間変形角 29

4.2.4  35°入力に対する応答 29

4.2.5  ねじりモーメント 29

4.3  実地震波に対する応答 33

4.3.1  入力地震動 33

4.3.2  応答 33

4.3.3  加速度倍率と最大層間変形角 33

4.4  限界耐力計算法による応答の推定 35

4.5  剛塑性モデルによる応答解析 38

4.5.1  剛塑性モデル 38

(6)

4.5.2  剛塑性モデルによる解析法の概念 38

4.5.3  RC造 12

階建物(Model 1)に対する解析法の適用

39

4.5.4  Multi-spring Model

と Rigid-plastic Modelによる地震応答の比較

39

   

4.6  まとめ 41

第5章  偏心のあるRC骨組の静的解析

5.1  はじめに 44

5.2  静的荷重増分解析 44

5.2.1  荷重−変形関係 44

5.2.2  層崩壊余裕率 44

5.3  静的解析による降伏曲線 50

5.3.1  x ,y

方向の水平荷重に対する降伏曲面

50

5.3.2  ねじりモーメントと水平荷重に対する降伏曲面 50

5.4  極限解析法 55

5.4.1  解析仮定 55

5.4.2  柱脚の伸びと塑性ヒンジの回転角 58

5.4.3  外力仕事・内力仕事・ベースシア係数 59

5.4.4 回転中心 60

5.5  極限解析による降伏曲面 61

5.5.1  x , y

方向の水平荷重に対する極限解析

61

5.5.2 

ねじりモーメントと水平荷重に対する極限解析

61

5.6 

まとめ

64

第6章  偏心のあるRC骨組の地震応答

6.1  はじめに 66

6.2  模擬地震波に対する応答 66

6.2.1  入力地震動 66

6.2.2  応答 66

6.2.3  x

方向変位角と

y

方向変位角の関係

69

6.2.4   x

方向変位角とねじり角の関係

71

6.2.5  

ねじりモーメントとせん断力の関係

71

6.3  限界耐力計算法による応答の推定 75

6.4  まとめ 77

第7章  結論

7.1  結論 80

7.2 

今後の課題

81

参考文献 84

(7)

   

本研究に関連して著者が発表した論文

86

研究に関連せず著者が発表した論文

87

(8)
(9)

1

序論

(10)

- 2 - 1.1

研究の背景

 

21

世紀を展望し,経済社会の変化に対応した新たな建築行政の在り方として,平成

12

(2000)度建築基準法が大幅に改訂された

1)。その改定の特徴は,基準法などの各種規準を満足

するよう設計を行う仕様規定型から,所定の性能を満足すれば,認めるという性能規定化へ の指向が行われたことである2) 。性能規定化は,設計の自由度の拡大や建築生産の高コスト 構造の是正,あるいは技術革新や海外資材の導入などを目的としている。性能規定化は,手 段の選択の自由度を高くする以上,目的達成手段に関する権限と責任が国家から設計者に移 転したともいえる。これまでは国が護ってきた国民の生命・身体の安全を,設計者はその役 割を性能実現の手段で発揮しなくてはならない。設計職能に携わる者は性能規定化を直面す る重要課題ととらえる必要がある。

建築基準法の改訂では性能規定化に適応するため,構造設計法においても,従来の許容応 力度計算に,新しく性能評価型設計法として限界耐力計算が導入され1),さらに平成

17

年度

(2005)には,エネルギーの釣り合に基づく耐震計算(エネルギー法)が導入された

3)。構造設計

者はこれらの設計法を十分に理解し,その特徴を把握して適宜に活用しなくてはならない。

従来の許容応力度計算および性能評価型の限界耐力計算を用いる場合でも,現状の建物の 耐震設計では,2 つの建物主軸方向(通常,架構方向)について,独立に行われるのが一般的で ある。すなわち,建物に架構方向に荷重を入力した場合の強度計算を行い,その方向の強度 計算でもって設計を代表する強度とし,架構方向以外の方向の強度計算は省略されている。

しかし,建物には地震時に斜めの入力,すなわち,水平

2

方向の地震力が同時に作用して おり,この

2

方向の地震力による効果を適切に配慮して耐震設計を行う必要がある。

2

方向入 力時の建物の地震時挙動では,ねじり振動に対する考察が重要である。不整形な平面形を有 する建物は,剛性の中心(剛心)と重量の中心(重心)の位置がずれることによる偏心を生ずる。

また,RC造建物では,整形な平面形で偏心のない建物であっても,地震時には軸力が圧縮側 になる柱と引張側となる柱の弾塑性特性の違いにより,骨組の弾塑性状態は入力方向に直交 する軸に関して非対称となり,結果的に剛心が重心からずれ,偏心が生じることになって,2 方向入力時にねじり振動が励起される可能性がある4。弾性時から偏心を有する建物,あるい は塑性化して偏心を生じる建物に

2

方向の地震力が同時に作用した場合,その崩壊機構が

1

方向入力で想定したものと異なることも考えられる。従って,斜め荷重入力に対する

RC

造骨 組の挙動を静的および動的に明らかにすることが要求される。本研究は,

RC

造骨組が有する 耐力がねじり抵抗も含めて把握できる降伏曲面に着目し,極限解析法および三次元非線形構 造解析プログラムを用いて降伏曲面を算出し,その静的および動的特性を解析して地震時の 挙動を明らかにしようとするものである。研究は基礎的なものであるが,建物の耐震性能の 評価ならびに性能評価型設計を推進する上で大きな意義を有すると考える。

(11)

- 3 -

1.2 既往の研究について 

 

RC

造建物の斜め入力に対する骨組の特性については,ラーメンおよび耐震壁付きラーメン を組み合わせた架構方向に剛性の異なる骨組に対する解析5)および骨組の

2

方向入力に対する 柱の変動軸力および平面骨組の地震応答解析などがある。その主要な研究を報告する。

(1)  偏心のない架構について 

李ら6)は変動軸力を考慮した

Multi-spring Model

を柱に応用した

RC

造骨組の弾塑性地震応 答解析を行い,柱の変動軸力−曲げモーメントの相互作用(N-M相互作用)の効果を検討し,変 動軸力を受ける外柱には影響が大きいが,最大層せん断力,最大層間変形角等の骨組全体の 応答結果には大きく影響しない。また,N-M 相互作用を考慮した応答結果は,考慮しない場 合と比較し,1階柱脚が降伏しやすく,外柱では軸力減少に伴って耐力低下が生じ,降伏後の 塑性変形が大きくなり,塑性率が増大すると報告している。

また,李ら7)は,スパン数,層数をパラメータにした

RC

造骨組に上記と同様に弾塑性地震 応答解析を行い,N-M 相互作用は各部材レベルの応答,降伏ヒンジの発生に大きく影響し,

層数が増えると,外柱,隅柱に生ずる変動軸力も大きくなり,その影響は小さくても増大す る傾向がある。N-M 相互作用による剛性偏心により,ねじり振動が発生するが,層降伏しな い骨組では,それらの影響は小さく骨組の振動特性を変えることはなく,

1

軸応答である程度 近似的に推測できるが,部材レベルの応答および骨組の降伏型を正確に定めるには,変動軸 力と

2

軸曲げの相互作用を考慮した立体骨組による地震応答解析を行う必要があるとしてい る。

Maged

8)は,靭性型

RC

造中層建物の

2

方向入力時の変動軸力について,実地震波を用い

て応答解析をした結果,建物の対角方向に入力した場合の隅柱の挙動がクリティカルである と報告している。

松岡ら9)は,1方向地震動が構面方向の

45°から作用する場合と 2

方向地震動が作用する場 合について,非線形応答の比較を行っている。45° 1方向入力時の応答では,1層柱せん断力

2

方向入力時の各角度での平均値に相当する。また,

1

層隅柱変動軸力は

2

方向入力時での 最大値にほぼ等しく,最上層(5 階)水平変形は

2

方向入力時での最小値より更に小さい。2 向入力時と

1

方向入力時での応答の違いは総体としてみると,1層せん断力,1層隅柱変動軸 力,最上層水平変形について各々,10%,10〜40%,20〜60%程度,前者の方が大きいと報 告している。

(2)  偏心を有する架構について

偏心を有する

RC

造建物の地震応答に関しても,多くの研究が報告されている。

藤井ら10),11)は,弾力半径比が

1

より大きい単層偏心

RC

建物が水平

2

方向の地震入力を受

ける場合の応答を,1次モード・2次モードによる静的増分解析と等価線形手法によって推定

(12)

- 4 -

できることを示した。

壁谷澤ら12は,多層偏心

RC

建物を対象に1自由度系縮約と等価線形化手法の有効性を示 した。

倉本ら13は,単層偏心建物に対するモード適応型静的非線形荷重増分解析方法および高次 モード応答の評価法を提案している。

高橋ら4は,

30

階建

RC

造集合住宅を対象に

2

方向入力により弾塑性解析を行ったもので あり,

2

方向入力では,隅柱部材角がねじり振動によって増大し,はり降伏先行型の設計で対 応できること。柱の降伏には変動軸力の影響が大きいが,ねじり振動は柱の変動軸力を引き 起こす建物全体の転倒モーメントに大きな影響を及ぼさないことなど,実際の高層建築物の 耐震設計を通しての有効な知見が多い。

(3)  降伏曲面の解析について

このように

RC

造建物の斜め入力,

2

方向入力及び偏心に関する静的解析および地震応答解 析ついての既往の研究報告は多い。しかし,本研究で対象とする

RC

造架構の降伏曲面に関す る研究報告の事例14),15)は少ない。また,解析に用いられたモデルは局部的である。

木原ら14)の解析対象は

2

方向無限均等骨組から内柱

1

本と,それに連接するはりは反曲点 で切り出した部分架構であり,加力方向と建物全体に占める柱耐力の割合(柱耐力比)より降伏 曲面及び変形方向を求める式が導かれている。

Bresler

16)は,曲げ破壊型の柱部材に関して降伏曲面が楕円または楕円に近い曲線で近似で

きることを示している。津村17)は,RC柱部材の

2

方向加力実験の結果より,Bresler16)の研究 成果を確認するとともに,異なる破壊モードの

RC

柱部材についても実験および解析を行った 結果,柱の水平方向降伏(せん断破壊した試験体の最大耐力を含む)曲面は,ほぼ楕円形をして おり,その降伏曲面に関する流れ則(von Mises’s flow rule)もほぼ成り立ち,部材の降伏曲面を 単純な形に仮定し,さらにいくつかの単純化のための仮定を加えると,建物の層降伏曲面(方 向ごとの層の崩壊荷重)を計算できるとしている。

降伏曲面を求める極限解析に関する研究では,津村ら18)は,軸力と

2

方向水平力を受ける 柱部材について,破壊機構を規定するパラメータを選定して,せん断破壊機構が規定できる モデルを提案し,上界定理に基づいてせん断耐力の理論解を求めた。その結果,主筋量は破 壊断面の鉛直方向へ膨らみに寄与し,せん断補強筋量は水平方向への膨らみに寄与して,破 壊面は楕円形状を呈すること。また,破壊時の変形方向は破壊曲面に直交する(すなわち,流 れ則に従う)ことを明らかにした。しかし,解析の対象は柱のみであり,柱,はり,耐震壁を 含めた骨組全体を対象としていない。

(4)  層崩壊余裕率について

本研究で各架構モデルの層崩壊を予測する指標として梅野ら19) を引用した。この文献では,

RC

フレームの層崩壊を防ぐため,動的効果を考慮する必要があるとし,層せん断余裕率とい

(13)

- 5 -

う新しい指標を定義している。その算定式の提示と検証が行われ,この指標が耐震性能の評 価に有効であることを示した。

1.3 研究の目的   

本研究は,柱,はり,耐震壁の各部材で構成された多層

RC

造骨組の降伏曲面とその地震 応答特性を対象とする。降伏曲面は斜め荷重入力に対する骨組の有する耐力がねじり抵抗も 含めて把握できる。極限解析法および三次元非線形構造解析プログラムを用いて,偏心のな い架構および偏心のある架構の降伏曲面を算出し,静的荷重増分解析および地震応答解析を 行って,降伏曲面と変形方向,ねじり変形,層崩壊余裕率,弾性時および塑性時の動的挙動 など,弾塑性力学上の架構の挙動を解明する。架構モデルは,骨組全体としての構造特性を 正確に解析するため,柱および耐震壁は

Multi-spring Model

で構成する。また,本研究では骨 組の極限解析法を探求し,その成果として得た極限解析法による計算結果と三次元非線形構 造解析プログラムによる解析結果との比較を行う。

                                           

(14)

第2章

解析モデルおよび解析方法

(15)

- 8 - 2.1

解析モデル

本研究では,解析の対象として,偏心のない骨組(第

3,4

章)および偏心のある骨組(第

5,6

章)を設定した。これらの架構モデルは

RC

12

階建,各階の質量は

1.200kg/m

2,平面形は架 構方向(

,

方向とも)に均等な柱間

8m, 2

スパンであり,その概略を図

2.1

に示す。また,構 成部材の諸元を表

2.1

に示す。なお,はりの剛性はスラブの効果を考慮して

2

倍にしている。

さらに,偏心のない架構モデルは,上記の構造諸元のうち,柱の諸元を一定として,はりの 曲げ強度と剛性を

,

方向とも

1.0, 2.0, 3.0

倍とした骨組を設定し,これらを

Model 1, Model 2

および

Model 3

とする。靭性保証型指針5で設計すると,概ね

Model 1

Model 2

の中間に 相当する。

1

2

3

A B

C

8000 8000

800 0

800 0

3500 3500 3500 3500 350 0 3500 3500 3500 3500 3500 3500 4000 42500

RF 12F 11F 10F 9F 8F 7F 6F 5F 4F 3F 2F GF A1

A2 C1

C2 B3

C3

A3 B2

B1

耐震壁 (Model 1W, Model 4W)  

入力方向 

図 2.1  架構の概要 

(16)

- 9 -

偏心のある架構モデルは,偏心のない架構に対し,

方向の外側

1

スパン(図

2.1

C2,C3

間)にのみ,全階にわたり耐震壁を設けて,柱の諸元を一定として,はりの曲げ強度と剛性を

x, y

方向とも

1.0

および

4.0

倍とした骨組を設定し,これらを

Model 1W

および

Model 4W

する。

2.2

解析方法

解析は

3

次元非線形構造解析プログラム20を用いる。はりは

Uniaxial-spring Model

に,

柱と耐震壁は

Multi-spring Model

に置換した。柱の断面は,1〜3階を

15×15=225

分割,4〜12

階を

10×10=100

分割し,耐震壁は

2×25=50

分割した。部材の剛域は部材長の

10%である。 1

階柱脚および壁脚は完全固定と仮定した。鉄筋およびコンクリートに対する履歴モデルを図

2.2

に示す。せん断特性は弾性とした。後述する各解析でも,耐震壁のせん断力は鉄筋コンク リート構造計算基準21で算定された,せん断耐力の

24%以下であった。

表 2.1  部材の諸元 

(17)

- 10 -

壁のモデル化の概念を図

2.3

に示す。3軸方向の変位と面外曲げを解析するため,四隅節点

(1, 2, 3, 4)での xyz

軸方向変位と

x

軸周りの回転を考慮し,その間の変位は線形補間による。

また,両側柱は壁面内の曲げ,壁のせん断および壁面外の曲げとせん断に寄与している。高 さ方向の外力分布は限界耐力計算法22)における

B

i分布を適用する。なお,

P−⊿効果は考慮し

ていない。

f sy 0.4 f sy

0.4 f sy

f sy 0.2

d t

f c 0.5f c

f t

0.6

0.8 f c 3 d t

(a)

鉄筋

(b)

コンクリート

図 2.2  履歴モデル20) 

図 2.3  壁のモデル化20

  1

2

4 3

(18)

3

偏心のない RC 骨組の静的解析

(19)

- 12 - 3.1  はじめに

本章では,第

2

章の偏心のない架構モデル 

Model 1,Model 2

及び

Model 3

について,静 的荷重増分解析により,斜め入力荷重に対する変形,柱の軸力−曲げ強度特性を解析し,各 モデルの力学的特徴を把握したうえ,柱とはりの曲げ強度比および層崩壊余裕率を検討する。

また,斜め入力荷重に対する架構の降伏曲面を解析し,降伏曲面と変形方向および柱・はり強度 と架構耐力の関係を検討する。

3.2 静的荷重増分解析(0°および

45°方向) 

3.2.1 荷重−変形関係 

静的増分荷重の入力方向を

0°および 45°とした場合,建物頂上部の変位(D)が建物高さ(H)

の1/200,

1/100

および

1/50

となるときの各架構モデルの層間変形角分布を図

3.1

に示す。

Model 1

は中間層の層間変形が大きく,Model 2では中間層より下層階に層間変形が拡がる。また,

Model 3

では下層階の変形が卓越する。入力方向

0°および 45°について,架構が D=H/100

に達

したとき,各モデルの部材降伏状況を表

3.1

に示す。

3.2.2 柱の

N-M

特性と荷重の状況

各架構モデルについて,最下階の柱の軸力(N)−曲げ強度(M)特性を文献22の(付

1,1-1)式

により計算し,図

3.2

に実線で示す。また,静的増分荷重の入力方向を

45°とした場合,隅柱 A,C

および中柱Bで解析中に生じた柱頭の

N-M

関係を図中にプロットする。

Model 1

では各柱 は限界に達せず降伏に至ってない。Model 2では隅柱

A

が降伏し,Model 3ではすべての柱が 降伏した。

3.2.3 柱とはりの曲げ強度比 

入力方向を

45°とした場合の各階節点での柱とはりの曲げ強度の比率(ΣM

c

/Σ 2M

b)を図

3.3

に示す。ここで,はり強度を 2倍しているのは,45°入力を考慮したためである。柱の曲げ強 度は,D=H/100に達したときの軸力(N)を用いて求めた。また,柱およびはり強度ともに剛域 補正を行って節点の曲げモーメントに換算した。引張軸力が作用する隅柱

A

の曲げ強度比は 上階で大きく下階で小さい。柱の中で最も大きな圧縮軸力が作用する隅柱

C

は,他の柱に比 較し高い曲げ強度比を発揮する。この傾向は,特に下層階において顕著である。ただし,

Model

3

について,柱・はり強度比は

3

倍であるにもかかわらず,1階隅柱の柱頭部が降伏した。こ の理由は図

3.4

に示すように,D=H/100に達したとき,2階柱の柱脚モーメントが(+)側に作 用したためである。軸力変動の小さい中柱

B

は,隅柱

A,C

に比較しモデルによる強度比の変 動は小さい。各階を支える

9

本の柱について,入力方向

0°および 45°における柱・はり強度比

の平均値を計算し図

3.5

に示す。45°方向の強度比は

0°方向の強度比の約 0.7

倍である。頂上 部の変位

D=H/200(実線)と H/100(点線)では曲げ強度比の変動はほとんどない。

(20)

- 13 -

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

層間変形角

(rad) H/200 (45) H/100 (0)

H/200 ( 0)

H/50 (45) H/100 (45) H/50 (0)

y

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

層間変形角

(rad) H/200 (45) H/100 (0)

H/200 ( 0)

H/50 (45) H/100 (45) H/50 (0)

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

層間変形角

(rad) H/200 (45) H/100 (0)

H/200 ( 0)

H/50 (45) H/100 (45) H/50 (0) (a) Model 1

(b) Model 2

(c) Model 3

図 3.1  層間変形分布(入力方向

0°,45°) 

St o ry St o ry St o ry

(21)

- 14 -

 

   

     

                                     

部材 Model 1 Model 2 Model 3 Model 1 Model 2 Model 3

RF 0 0 0 0 0 0

12 0 0 0 0 0 0

11 100 0 0 0 0 0

10 100 8 0 17 0 0

9 100 100 25 100 100 8

8 100 100 83 100 100 17

7 100 100 100 100 100 42

6 100 100 100 100 100 50

5 100 100 100 100 100 67

4 100 100 100 100 100 58

3 100 100 100 100 100 67

2 100 100 75 100 100 58

柱頭 0 0 33 0 33 100

柱脚 0 55 100 0 100 100

入力方向 0° 入力方向 45°

はり

1階の柱

表 3.1  部材の降伏状況  (D=H/100) 

単位:% 

(22)

- 15 -

 

                                                                     

0 2 4 6 8

‑20 0 20 40 60

C

A B

終局

(a) Model 1

0 2 4 6 8

‑20 0 20 40 60

C

A B

終局

(b) Model 2

0 2 4 6 8

‑20 0 20 40

60

終局

C

A B

(c) Model 3

図 3.2 

1

階柱頭の

N-M

特性(入力方向

45°)

A B C

曲げモーメント

M (MN-m)

軸力

N (M N)

曲げモーメント

M (MN-m)

軸力

N (M N)

曲げモーメント

M (MN-m)

軸力

N (M N)

(23)

- 16 -

 

                                                                     

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

D=H/200

A B

C

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

D=H/200

A

B C

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

D=H/200

A

B

C

(a) Model 1

(b) Model 2

(c) Model 3

図 3.3  柱・はり曲げ強度比(D=H/200 入力方向

45°)

A B C

Bending Strength Ratio (M

c

/√2M

b

)

St o ry

Bending Strength Ratio (M

c

/√2M

b

)

St o ry

Bending Strength Ratio (M

c

/√2M

b

)

St o ry

(24)

- 17 -

 

                                                                     

2F -6.0

Mc = -3.9 M

C

=

6.5 M

B

= 6.4

2.3

GF

3F (X3, Y3)

D=H /200 D=H /100

-1.2

図 3.4  入力方向

45°

の節点モーメント(Model 3)

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Model 1

Model 2 Model 3

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Sto ry

Model 1

Model 2 Model 3

図 3.5  柱・はり曲げ強度比(平均値) 

(a)

入力方向  0° (b) 入力方向 

45°

Bending Strength Ratio (M

c

/√2M

b

)

Bending Strength Ratio (M

c

/M

b

)

(25)

- 18 -

3.2.4 層崩壊余裕率 

  入力方向

0°および 45°について,頂上部の変位(D)が D=H/100

に達したとき,各層が有する せん断力に対する余裕度の指標として,次式で定義する層崩壊余裕率    を各架構モデルに ついて求めた19

     

     

ここで,

        

  Q

si

i

層のせん断強度(図

3.6(a)

参照)

 

Q

ui

i

層に作用するせん断力(図

3.6(b)

参照)

 

M

cin:i階の各柱の曲げ強度(D=H/100の軸力から算定)   

 

h

c :柱のクリアスパン長さ  

                     

各架構モデルの解析結果を図

3.7

に示す。入力方向

45°の層崩壊余裕率は入力方向 0°の 0.7

〜0.8倍である。また,はりの曲げ強度を増した架構モデルほど,余裕率が低い。特に,

Model 3

では

1

階の余裕率が

1

になる。つまり,層降伏型になる。実際,図

3.1(c)の層間変形分布で

も,1階の層降伏が生じていた。一方,図

3.5

の柱・はり強度比をみると,1階より

7〜12

で強度比が低くなっており,

1

階の層降伏という実際の降伏型と矛盾する。したがって,0°方 向の解析から

45°方向の降伏型を予想するには,柱・はり強度比より層崩壊余裕率を用いる方

が有利であるといえる。

       

f

i

Q ui ui

Q

(a) 層崩壊させる外力  (b) B分布荷重 

Q si si

Q

図 3.6  層崩壊余裕率 

9 1

2

i si ui si cn

n c

f Q Q Q M

h

(3.1)

(3.2)

(26)

- 19 -

 

                                                                     

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Story Safety Factor Model 1

Model 2 Model 3

D=H/100

0.1 1 10

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

Story Safety Factor Model 1

Model 2 Model 3

D=H/100

(a)入力方向  0°

(b)入力方向 

45°

図 3.7  層崩壊余裕率 

St o ry St o ry

(27)

- 20 -

3.3  任意方向への静的荷重増分解析 

 

3.3.1 降伏曲面 

  荷重の入力方向を

5°間隔とした静的荷重増分解析により,D=H/200

および

H/100

となると きの各架構モデルの耐力曲線をベースシア(Bx-By)に換算して図

3.8

(a)に示す。図中の数値(γ)

3.3.3

項で後述する。はり強度の増加に伴って,架構の降伏曲面は直角形状より次第に円弧

状に変化していく。これは荷重の入力方向に係わらず,柱がほぼ一定の強度を発揮するから である。

                                                       

θ  :荷重の入力方向      :降伏曲面の法線方向  γ  :変形方向の法線からの 

偏り  単位:° 

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

By

Bx

Model 1 Model 2

Model 3

H /10 0

H/200

1.4 3.6 4.3

1.4

1.8 3.7

6.8 15.6

-0.5 4.9 11.1

-0.7

2.6 1.8

0.8 3.2 10.1 15.2 9.4 18.3

3.4 9.7 16.6 22.4

(b)

角度の定義

図 3.8  降伏曲面と変形方向 

(a)

降伏曲面と変形方向の偏り

θ 0

耐力曲線 

Bx By

γ

Bx By

降伏曲面 

P

D n

n

(28)

- 21 -

3.3.2 既往の研究との比較 

  文献14)では図

3.9

に示すように,建物全体の耐力(はりヒンジ耐力和+柱ヒンジ耐力和)に占 める柱の耐力(柱ヒンジ耐力和)の割合

p

を用いた建物の降伏曲面と変形方向の関係が提示され ている。本研究の各架構モデルに対し

D=H/100,入力方向 0°について,文献

14が提示する概 念を適用した場合の架構の降伏曲面と入力方向に対する架構耐力(図

3.8(a)の降伏値)

を図

3.10

に実線の記号で示す。ここで,架構全体の耐力に占める柱の耐力比

p

は,柱耐力として

D=H/100

での

1

階柱脚および最上階柱頭の曲げ強度和を,はり耐力として最上階のはりを除くはりの 曲げ降伏強度和を用いて算出した。Model 1 では降伏曲面と架構耐力はほぼ一致しているが,

柱降伏の影響が大きい

Model 3

ではかなりの差異が生ずる。

                                       

また,Model 3の入力方向

0°における 1

階の層せん断強度(式(3.2)の

Q

si )を半径とする円 弧を図中に破線で示す。Model 3について,0°方向の耐力から任意方向の耐力を推定するとす れば,破線と実線の小さい方を選ぶことになるが,45°方向での架構耐力はこの降伏曲面をや や下まわる。すなわち,柱・はり強度比が1に近い場合,0°方向の耐力から

45°方向での架構

耐力を推定すると,やや過大評価となる。

 

0

1 – p p

建物の降伏曲面  はりの降伏曲面 

柱の降伏曲面 

偏り最大 

By

Bx

図 3.9  建物の降伏曲面14

(29)

- 22 -

 

                                     

3.3.3  降伏曲面と層間変形の増分との直交性について 

  静的解析により得た降伏曲線

3.8(a)の細い実線は変形増分の方向を示す。また,図中の

数値は降伏曲線上における変形増分の方向(図

3.8(b)の  )が降伏曲線の法線方向(図 3.8(b)

の 

)から偏る角度 γ(以後、変形方向の偏りと略する)を示す。変形増分の方向は等価 1

点系に換算した代表変位23より求めた。変形方向の偏りは

Model 1, 2

では

θ=35°〜40°で最大

となる。Model 1, 2のような,はり降伏型の建物において,最大の偏りは,建物の降伏曲面が はりから柱へ移行する境界(図

3.9

の△)で生じるものと考えられ,図

3.10

に示す

値を入力

すると,

θ=35°〜40°となり解析値と一致する。柱の降伏ヒンジの数が多い Model 3

では,柱の

降伏曲面の直径が,ヒンジの数に比例して増大し,変形の偏りも小さくなる。

また,一定方向に荷重を漸増した場合、各モデルの1階の水平変形の進行を図

3.11

に示す。

弾性時には、変形は入力方向が大きいほど、ほぼ入力方向に沿って進行していくが、塑性後 は入力方向から

0°方向に偏向する。これは文献

14)の報告とも一致する。この傾向は、はり強 度が小さい架構ほど大きい。

     

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

Model 3

By

Bx

架構耐力

p=0.11

Model 2

Model 1

p=0.16 p=0.29

Model 3  入力方向0° 

1階の層せん断強度 

図 3.10  柱・はり強度と架構耐力 

D

n

(30)

- 23 -

 

                                                                     

0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006

0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006

H/100

y ( )

H/200

0 20 35 40 45

°

45

40 35

20 0

入力方向

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01

H/100

H/200

0 20 35 40 45

45 40 35

20

入力方向

(a) Model 1

(b) Model 2

0 0.005 0.01 0.015 0.02

0 0.004 0.008 0.012 0.016 0.02

層間変形角

H/100

H/200

0 20 35 40 45°

45 40 35 20 0

入力方向

(c) Model 3

図 3.11  荷重の入力方向と変形方向(1階) 

層間変形角

Ry (r ad)

 

層間変形角

Rx (rad) 

層間変形角

Rx (rad) 

層間変形角

Rx (rad) 

層間変形角

Ry (r ad)

 層間変形角

Ry (r ad)

 

(31)

- 24 -

3.3.4 各階のねじり変形について 

  入力方向と各階の変形方向の角度差を図

3.12

に示す。上階と下階で変形方向の変動、すな わち、ねじりが発生する。ねじりは

35°付近で最大となる。また,はり強度が小さいほど、ね

じりの発生は大きく、変形方向の偏りも大きくなる。これは先ず

x

方向のはりが降伏し、変形 に回り込み(ねじり)が生じるためである14)

                                   

‑25 ‑20 ‑15 ‑10 ‑5 0 5 1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

変形方向と入力方向の角度差(°)

入力方向

20

35 40

45

‑25 ‑20 ‑15 ‑10 ‑5 0 5 1

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

変形方向と入力方向の角度差(°)

入力方向

20 35

40 45

(a) Model 1

(b) Model 3

図 3.12  各階の変形方向と入力方向の角度差(D=H/100) 

S tory S tory

(32)

- 25 -

3.4  まとめ 

本章では,偏心のない

12

階建

RC

架構の三次元静的挙動を解析した。本事例について得た 検討結果をまとめる。

(1)  外力の方向を変化させ得られた降伏曲面は,はり強度が低い範囲では直角形状となり,

はり強度の増加に伴い,次第に円弧状に拡大した。

(2)  45°方向の層崩壊余裕率は, 0°方向の層崩壊余裕率に 0.7〜0.8

を乗じることによって

推定できた。

(3)  地震時に層崩壊が生じる位置を予測する指標としては,柱・はり強度比より層崩壊余

裕率を用いる方が有効であった。

(4)  入力方向 0°の静的解析から 45°方向の強度を推定する場合,柱・はり強度比の大き

な架構では,文献 14)の方法が有効であった。柱・はり強度比が小さくなるに伴い,文 14)の方法は過大評価となった。

(5)  架構の変形増分の方向は,降伏曲面の法線方向から若干の偏りを生じた。この偏りは,

建物の降伏曲面が,はりから柱へ移行する境界で最大となった。

(33)

4

偏心のない RC 骨組の地震応答

(34)

- 28 -

4.1  はじめに 

前章では静的荷重増分解析により,各架構モデルの荷重−変形関係を把握し,柱・はり曲 げ強度比と層崩壊余裕率の関係をみてきた。また,静的解析により求めた降伏曲面とその変 形方向を既存の研究との対比を含めて検討した。本章では各架構モデルに対し,実際の架構 設計に適用される模擬地震波および実地震波を用いた動的解析を行い,はり降伏型架構と柱 降伏型架構の地震応答の相違を検討する。また,架構を限界耐力計算法 23)により

1

自由度系 に縮約して応答を予測し,地震応答解析の結果と比較する。さらに,剛塑性モデルによる応 答解析をはり降伏型架構モデル(Model 1)に適用し,三次元非線形構造解析プログラムを用い てその応答解析結果の検証を行う。

4.2  模擬地震波に対する応答 

4.2.1 入力地震動 

  模擬地震波に対する応答をみる。入力波として,図

4.1

に示す応答スペクトラムの地震動を 用いる。これは表層地盤として文献24の表

4.1

(第

2

種地盤)を仮定し,その地盤増幅率を限 界耐力計算(地盤増幅)簡易計算プログラム25により算定したものである。建物の減衰定数

0.03(剛性比例)とした。図中に各架構モデルの固有周期を示す。

 

   

                             

図 4.1  模擬地震波の弾性応答スペクトル(

0.05

0

200 400 600 800 1000 1200

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

Sa (c m /s

2

)

T (s)

Model 1 0.71 s Model 2

0.60 s Model 3

0.57 s

(35)

- 29 -

4.2.2 応答 

  各架構モデルに対し,原波(F=1.0  最大加速度 428 cm/s2 )の加速度を

F=0.5

および

1.2

倍した波を

0°, 35°, 45°より入力したとき,各階に生じる最大層間変形角を図 4.2

に示す。

各モデルとも入力地震動が小さいとき,入力方向による層間変形角の差は小さい。加速度 倍率が大きく(F=1.2)なると、

Model 1

の層間変形角は中層階が最大で各階がほぼ均等な増加を 示し、中下層階の入力方向による層間変形角の差は微小となる。Model 2は中下層階に変形が 集中し、特に架構の耐力が大きな方向に作用する

35°および 45°方向入力の 1

階の層間変形角

0°方向入力より大となる。 Model 3

は加速度が小(F=0.5)では,層間変形角は小さいが,加速

度が大(F=1.2)になると,45°入力での変形が増大し,1 階は極大となり,層崩壊余裕率の解析 結果と一致する。

4.2.3 加速度倍率と最大層間変形角 

  加速度倍率と最大層間変形角の関係を図

4.3

に示す。入力方向に係わらず,Model 1, 2では

F=1.5

程度まで,最大層間変形角は加速度倍率(F)に比例して,ほぼ一定率で増大する。Model

3

F=0.5〜1.2

の範囲で最大層間変形角は小さいが,それを超えると急激に増加する。

4.2.4 35°入力に対する応答 

 

Model 3

に対して加速度倍率

F=1.2, 35°で入力した場合、応答が最大となる付近の 2

秒間に

ついて,1階の応答を図

4.4

に示す。直線で回帰すると,入力方向より

6.9°  x

軸に近い方向と なった。また,相関係数は

0.23

であり,扁平な楕円に近い応答であった。なお,文献14)で報 告されたのと同様,時計回りの応答を示した。

4.2.5 ねじりモーメント 

 

Model 3 に加速度倍率 F=1.2

の模擬地震波を

35°で入力した場合、1

階に発生するねじりモ

ーメント(M)−せん断力(Q)関係を図

4.5

に示す。また,偏心した水平力を与えて

D=H/100

達したときのねじりモーメントと層せん断力の関係(降伏曲面)を破線で示す。ねじりによ って発生するモーメントは架構が保有するねじりモーメント強度に比較し、かなり小さい値 である。また,図

4.5 (b)の拡大図をみると,ねじり振動の周期は並進振動の約 1/3

程度であり,

静的解析とは違って,並進振動とは別個の動きをしていることがわかる。

図 4.13  Multi-Spring Model と Rigid-spring Model による応答解析の比較(鷹取 N-S 波) 
図 5.4  降伏局面(Q x − Q y 関係)
図 5.11  フレーム名称  図 5.12  フレーム変形詳細 
図 5.16  1 フレームの変形 

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