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居場所(「安心できる人」)と個人主義及び集団主義 の関係

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居場所(「安心できる人」)と個人主義及び集団主義 の関係

著者 豊田 弘司, 森田 泰介, 岡本 真彦

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 18

ページ 33‑38

発行年 2009‑03‑31

その他のタイトル The relationships among Ibasyo (the person who eases one's mind) , Individualism and

Collectivism

URL http://hdl.handle.net/10105/1018

(2)

lit"‑111 蝣wl.III弘Ill

(奈良教育大学心理学教室) 森田泰介

(岡山学院大学) 岡本真彦 (大阪府立大学)

The relationships among Ibasyo (the person who eases one's mind) Individualism and Collectivism

Hiroshi TOYOTA

(Department of Psychology, Nara University of Education) Taisuke MORITA

(Okayama Gakuin University) Masahiko OKAMOTO (Osaka Prefecture University)

Abstract : The present study was carried out to examine the relationships among the three factors, namely Ibasyo (the person who eases your mind) , Individualism and Collectivism. Japanese undergraduate students were asked tochoose one alternative (e.g. myself, mother, friend, etc.) to answer the question ̀Who is the person that eases your mind?' They were then asked to rate items from revised scales originally developed by Shulruf et al. (2007) for assessing Individualism and Collectivism tendencies. The results indicated that Ibasyo determined the levels of two factors, namely unique tendency in Individualism and advice one in Collectivism. Especially for the score of unique tendency the participants who chose myself had higher scores than those who chose mother or friend.

Whereas for the score of advice tendency the participants who chose mother or friend had higer scores than those who chose myself. These results are interpreted as showing that Ibasyo is one of the determinants of Individualism and Collectivism.

Key Words :居場所Ibasyo ,個人主義Individualism,集団主義Collectivism 1.はじめに

私たちは、日頃の生活において、一緒にいて安心で きる人がいるのだろうか。例えば、自分一人が最も安 心できる人もいるだろうし、母親と一緒にいる時が安 心できると思う人もいるであろう。また、友人と話を

している時が最も癒されると考える人もいるかもしれ ない。安心できる人がいることは、日常生活において 重要である。豊田・大賀・岡村(2007)では、誰と一 緒にいると安心できるかという質問に対して、 「自分 ひとり」と回答した者(以下、自分群)、母親と回答 した者(母親群)及び友人と回答した者(友人群)に

おける孤独感(諸井, 1991)の比較を行った。その結 果、自分群は、母親群や友人群よりも孤独感の高いこ とが示されたのである。すなわち、安心できる人が、

自分以外にいることが、孤独感を抑制することになり、

生活を適応的に導く可能性が示唆されるのである。安 心できる人は、最近「居場所」という言葉の中心的な 意味として注目されている。 「居場所」とは「自分が 安心していられる場所」のことであるが、近年では、

不登校児の増加にともなって、児童・思春期の臨床、

学校現場において居場所の概念が多く用いられている。

文部省中学校課(1992)は、青年期の生徒は、他者な どとの相互作用により̀̀今、ここにいる自分''を確認

(3)

し、そこから存在感を実感することができると考えて いる。また、心の発達は、居場所に見られる落ち着い た環境や満たされた気持ちの中から生じてくる(竹森, 1999)。それ故、 「居場所」は対人関係の適応において 重要であり、居場所の存在かトの発達を促すといえる。

ただし、ここでの「居場所」は、空間的・物理的な 対象のみを指しているのではない。岡村・加藤・八巻

(1995)によれば、 「居場所」は物理的な場所を意味す るだけでなく、その場所において人と人との関係を築 くことができた上で生まれる心のよりどころという意 味を含む概念である。また、竹森(1999)は、 「居場 所」を自己と他者との関係からとらえることの重要性 を示唆しており、そこに生きる人と支える人の関係性 が、その本質であるとしている。したがって、 「居場 所」は空間的・物理的な対象だけでなく、心理的・社 会的要因も含んだ対象であり(藤竹 2000 住田, 2003)、 「居場所」を時間、空間及び対人関係の3つの 観点からとらえることの重要性が示唆されている。す なわち、 「時間(安心できる時)」、 「空間(安心できる 場所)」及び「人間(安心できる人)」という3つの居 場所を考えるわけである。

豊田と岡村による一連の研究(豊田・岡村、 2001, 2002;岡村・豊田, 2002, 2003, 2004)では、 「安心 できる人」としての居場所が個人の適応を規定する重 要な要因であることを指摘してきた。そこでは、加藤

(1977)が用いたように、 「一緒にいて安心できる人」

をたずね、 「一緒にいて安心できる人」として自分を 選択した者を自分群、母親、父親、兄弟、及び祖父母 を選択した者を家族群、及び友人もしくは恋人を選択 した者を友人・恋人群とした。これらの群間の比較を 行った結果、信頼感尺度(天貝, 1995)及び自己一他 者関係尺度(金子, 1995)によって測定された対人関 係の認識、自意識尺度(菅原、 1984)及びエゴグラム

(杉田, 1990)によって測定された自分自身の捉え方 において自分群と他の2群の違いが明らかにされた。

また、上述したように豊田・大賀・岡村(2007)やToyota (2008)では、自分群と母親群及び友人群との間に孤 独感の違いを兄いだしている。このように、 「安心で きる人」が、生活の適応に重要であることが示されて いるが、 「安心できる人」としてとらえた居場所の違 いによって、上述した尺度で明らかにされた違い以外

にどのような違いが生じるのであろうか。

本研究では、居場所(「安心できる人」)による個人 主義傾向(Individualism)と集団主義傾向(Collect‑

ivism)における違いを検討する Oyserman, Coon, &

Kemmelmeier (2002)は、多くの研究を展望し、個 人主義傾向と集団主義傾向という個人差に関する区分 を述べている。彼らによれば、個人主義傾向とは、個 人の独立性、他者との区別、自己の信頼性の優勢、個 人的な目標の追求に価値を置き、社会の関心や目標よ

りも個人の関心や目標を重視する、そして、直接的な コミュニケーションスタイルを好むとされている。一 方、集団主義傾向とは、グループに対する所属感と義 務の感覚をもち、グループメンバーと相互依存的であ り、自分自身の社会的な地位を維持しょうとし、協調 を求め、葛藤(競争)を避け、間接的なコミュニケー ションスタイルを好むというものである。そして、上 記のような区分を基づいて、 Shulruf, Hattie, & Dixon (2007)は個人主義と集団主義を測定するために

Auckland Individualism and Collectivism Scale

(AICS)を開発している。そこでは、個人主義傾向 の中に、競争(Compete)、独自性(Unique)及び責 任感(Resposibility)という3つの因子、集団主義傾 向には、助言(Advice)及び調和性(Harmony)とい う2つの因子を含んでいる。居場所との関係で考える と、自分群は、他人との差異を意識するので、個人主 義の中の独自性が高いと予想される。一方、母親や友 人は、母親や友人からの助言を求める傾向がある。

したがって、個人主義の因子である独自性では自分 群>母親‑友人群、集団主義の因子である助言では、

母親‑友人群>自分群という関係が予想できる。この 予想を検討するのが本研究の目的である。

2.方 法 2. 1.調査対象

調査対象は、関西地区にある3つの大学の学生であ り、有効回答者合計は258名(男性124、女性134)であっ た。これらの学生の平均年齢は、 19.01歳(範囲18歳〜

22歳)であった。

2. 2.調査材料

2. 2. 1.オークランド個人・集団主義尺度 本研究で用いた尺度は、 Shulruf, Hattie, & Dixon (2007)によって開発されたAuckland Individualism and Collectivism Scale (AICS)から選択された項目 及び新たに追加した項目を含んでいる。この尺度を AICSの原著者であるShulruf.氏から第1著者が提供さ れ、 5名の国内の大学に所属している心理学担当教員 が邦訳したものであり、 26項目からなっている AICS の原版は、個人主義が3つの因子(競争、ユニークさ

<独自性>、責任感)から構成され、集団主義が2つ の因子(助言、ハーモニー<調和性>)から構成され ている Tablelには、項目例が示されている。ただし、

この尺度は邦訳されただけで、まだ信頼性と妥当性の 検討はされていない。そこで、主因子法による因子分 析(バリマックス回転)を行い、 Tablelに示した5 つの因子を抽出された。因子ごとのα係数は、個人主 義における競争因子が.78、独自性因子が.67、責任感因 子が.69、集団主義における助言因子が.76、調和性因子

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Tablel AICSの項目例

個人主義傾向に関する項目

競争(全7項目)

・私は、他人と競争する場面での仕事を楽しんでいる。

・勝つことは自分にとってとても重要である。

独自性(全4項目)

・私は、自分がユニークであり、他人と異なっているこ とを楽しんでいる。

・私は、自分を他の人とは違ったユニークな人間と考え ている。

責任感(全5項目)

・私は、自分自身の行動に責任を持っている。

・コミュニケーションする際には、正確に伝えたいと思うO 集団主義傾向に関する項目

助言(全5項目)

・私は、大切な行動をする前には、友人の意見を参考にする。

・私は、重要な決断をする前に、親しい人々に助言を求める。

調和性(全5項目)

・グループのメンバーが強く反対した場合でも、私は論争に なるのを避ける。

・討論の場であっても、私は自分の考えをはっきり言わない。

が.64であった。いずれの因子においても因子内の内的 一貫性が明らかになった。なお、評定法は、 「いつも ある(6)」から「全くもしくはほとんどない(1)」

の6段階評定を用いた。そして、この尺度はA3判の用 紙に印刷された。

2. 2. 2.居場所尺度

上記の改訂版オークランド個人主義・集団主義尺度 の26項目の後に、安心できる人をたずねる質問を1項 目追加した。この項目は、 「誰といる時、最も安心し ますか?」というもので、その答として、 「自分一 人」 「母親」 「父親」 「兄弟・姉妹」 「祖父母」 「友人」

「恋人」 「その他」という8つの選択肢が設定さ れた。この選択肢はToyota (2008)において設定され たものと同じである。

3.結 果 3. 1.居場所選択数

Table2には、 「安心できる人」の選択数が男女別に 示されている Toyota (2008)と同じく、 「自分」を 選択した者(自分群)、 「母親」を選択した者(母親群) 及び「友人」を選択した者(友人群)が多かった。従 来の研究(Toyota,2008 ;豊田・大賀・岡村, 2007) Table 2 性及び居場所ごとの選択人数

自分 母親 父親 兄弟・姉妹 祖父母 友人 恋人 その他 合計 男子 46  20       36   12     124 女子 33  55       19  13     134 全体 79  75      12        55   25      258

Table3 居場所(「安心できる人」)による個人主義と集団主義傾向

居場所( 「安心できる人」 )

自分      母親     友人     全体 因子名

男子 女子  男子 女子 男子 女子 男子 女子

46   33    20   55   36  19  102 107

個人主義全体 M

SD

競争   M

SD

独自性  M

SD 一つI':.1; '‑: lI

SD

62.43 64.79 ll.40  8.57 27.59 25.97 6.84  5.44 14.50 16.24 3.70  3.63 20.35 22.58 4.10  3.87

63.15 62.15 7.76 7.87 26.75 22.87 6.67 5.45 12.25 14.67 4.28 3.70 24.15 24.60 3.33 2.75

61.64 61.58 62.29 62.86 ll.12 9.61 10.60  8.43 27.42 23.79 27.36 23.99 7.21 5.92  6.88  5.65 13.78 13.74 13.80 14.S

3.69 3.31 3.87  3.69 20.44 24.05 21.13 23.88

4.49 3.54  4.34  3.36

集団主義全体 M  35.54 36.70

SD   6.92  7.55

助言   M  17.70 18.76

SD   4.38  4.60

調和性   M  17.85 17.94

SD   4.67  4.16

39.15 38.47 6.62  7.67 20.40 20.58 4.83  4.49 18.75 17.89 3.60  4.28

37.53 41.00 36.95 38.37 6.72 6.20  6.87  7.47 20.19 23.21 19.11 20.49 4.26 3.81  4.57  4.62 17.33 17.79 17.84 17.89 4.72 3.58  4.49  4.09

(5)

と同じように、分析できる人数に到達したこれら3群 間における比較を行うことにした。

3. 2.居場所と個人・集団主義との関係

Table3には、改訂版オークランド個人主義及び集団 主義尺度における各因子の合計得点が、自分群、母親 群及び友人群ごとに示されている。

3. 2. 1.個人主義傾向 3. 2. 1. 1.全体傾向

個人主義における3つの因子(競争、独自性、責任 感)の合計得点について、 2 (性) ×3 (居場所)の 分散分析を行った。その結果、性の主効果(F‑09)、

居場所の主効果IF‑.66)及び両者の交互作用(F‑.56 のいずれも有意でなかった。

3. 2. 1. 2.競争

分散分析の結果、性の主効果が有意であり(F (1,203)

‑13.80,p<.05)、男性が女性よりもこの競争傾向の高い ことが示された。居場所の主効果IF‑1.69)及び交互 作用(F‑.67)は有意でなかった。

3. 2. 1. 3.独自性

分散分析の結果、性の主効果が有意であり(F (1,203)

‑6.14,p<.05)、女性が男性よりもこの独自性傾向の高 いことが示された。また、居場所の主効果も有意であ り(F (2,203) ‑5.21,p<.01)、 Scheffe法による多重比 較を行ったところ、自分群が母親及び友人群よりも独 自性が高いが(ともに、 p<.OOl)、後2者間には有意 差はなかった。なお、性×居場所の交互作用は有意で なかったIf‑1.56)t

3. 2. 1. 2.責任感

分散分析の結果、性の主効果(F (1,203) ‑14.35, p<.OOl)が有意であり、女性が男性よりも責任感得点 の高いことが示された。また、居場所の主効果(F

(2,203) ‑10.59, p<.001)も有意であり、 Scheffe法に よる多重比較を行ったところ、母親群が自分及び友人 群よりも責任感得点が高いが(ともに、 p<.OOl)、後2 者間には有意差はなかった。なお、性×居場所の交互 作用は有意ではなかった(F (2,203) ‑2.49,p<.10)c

3. 2. 2.集団主義傾向 3. 2. 2. 1.全体傾向

集団主義の2つの因子(助言、調和性)の合計点に ついて上記と同じ分散分析を行ったところ、居場所の 主効果(F (2,203) ‑3.79,p<.05)のみが有意であっ た Scheffe法による多重比較を行ったところ、母親及 び友人群が自分群よりも集団主義得点が高いが(とも

に、 p<.OOl)、前2者間には有意差はなかった。なお、

性の主効果If‑1.54)及び性×居場所の交互作用 If‑1.15)は有意ではなかった。

3. 2. 2. 2.助言

分散分析の結果、性の主効果が有意であり(F (1,203)

‑4.63,p<.05)、女性が男性よりもこの助言得点の高い

ことが示された。また、居場所の主効果も有意であり (F (2,203) ‑10.16, p<.001)、 Scheffe法による多重比 較を行ったところ、母親及び友人群が自分群よりも助 言得点が高いが(ともに、 p<.OOl)、前2者間には有 意差はなかった。なお、性×居場所の交互作用は有意 でなかったIF‑1.43)。

3. 2. 2. 3.調和性

分散分析の結果、性の主効果IF‑.03)、居場所 (F‑.42)の主効果及び両者の交互作用If‑.35)は、

いずれも有意でなかった。

4.考 察 4. 1.居場所と個人主義の関係

予想した通り、個人主義における独自性得点におい ては、自分群>母親群‑友人群という関係が示された。

自分群は、他の群よりも自分が独自な存在であるとい う認識を持っていることがわかる。

責任感に関しては、母親群>友人‑日分群という関 係が示された。これは、予想しなかった結果である。母 親も友人も自分以外の他者であるから、母親群と友人 群には差はないと考えていた。しかし、この両者の間 に違いが認められた Toyota (2008)においては、内 的統制の孤独感に及ぼす影響が、母親群と友人群とで 異なり、友人群は自分群とその影響の程度が類似して いることが示されている。本研究の結果とあわせて考 えると、母親に対する安心と友人に対する安心には質 的な違いの可能性がある。反対に、自分に対する安心 と友人に対する安心には類似した特徴があるのかもし れない。例えば、それは、自分に対する安心も、友人 に対する安心も、自分が主体的にこれまでの生活でつ くりあげたという特徴を持っている。一方、母親に対 する安心は、自分でつくりあげたというよりも、母親 との関わりの中で自然に育成されてきたものといえる だろう。したがって、自分、母親及び友人に対する安 心の違いについて検討することは、課題の一つである。

具体的には、自分、母親及び友人と一緒にいる時に情 緒的意味の違いをSD法を用いて検討することが考えら れる。速水(1981)や豊田(1988)は、原因帰属要因 である自分の能力、自分の努力及び先生の指導力等に ついて、その情緒的意味の違いを検討している。そし て、学習意欲が高い者や成績の優秀な者は、上記の原 因帰属要因に対してより肯定的なイメージを持ってい ることを示している。したがって、同じ方法を用いれ ば、情緒的意味における自分、母親及び友人に対する 安心の違いを明らかにできるだろう。

なお、本研究の関心ではないが、競争においては男 性が女性よりもその傾向が強く、独自性に関しては、

反対に女性が男性よりも強かった。これらの性差につ いては、今後の検討課題である。

(6)

4. 2.居場所と集団主義の関係

集団主義においても、予想した通り、助言得点にお いては、母親群‑友人群>自分群という関係が示され た。自分一人が最も安心できる者は他者の助言を求め る傾向は少ないが、母親や友人と一緒にいることで安 心できる者は助言を求める傾向の強いことが明らかに なったのである。他者に助言を求めないことは、自分 の視点に依存し、孤立する可能性が高い。それ故、自 分群が孤独感が高いという結果(豊田・大賀・岡村, 2007 ; Toyota,2008)とは関連しているといえよう。

従来の研究では、信頼感尺度、自己一他者関係尺度、

自意識尺度、エゴグラム(豊田・岡村, 2001, 2002;

岡村・豊田, 2002, 2003, 2004)、孤独感(豊田・大 賀・岡村, 2007)といった指標において、居場所によ

る違いが兄いだされてきた。そして、本研究において 新たに、上述した個人主義における独自性及び責任感、

そして、ここでの集団主義における助言という指標に おいて居場所による違いが兄いだされた。ただし、豊 田・大賀・岡村(2007)では、自分群であっても日本 版ESCQ (Japanese version of Emotional Skills &

Competence Questionnaire) (豊田・森田・金敷・清 水, 2005 ; Toyota, Morita, & Tak菖ic, 2007)で測定さ れた情動知能(Salovey & Mayer, 1990)の高い者は 孤独感の低いことを明らかにしている。また、 Toyota

(2008)では、重回帰分析を用いて、情動知能ととも に、鎌原・樋口・清水(1982)による統制の位置尺度 によって測定された内的統制の程度が孤独感を予言す るという結果を得ている。このように、居場所による 影響は、他の介在変数によって影響される可能性もあ る。本研究の場合には、助言と調和性において居場所 の効果が生じたわけであるが、助言は相手に対する信 頼に依存するので、相手に対する信頼感が介在する。

また、調和性は、自分の主張を抑える傾向と関連して いるので、主張性が介在変数となるかもしれない。さ らに、先に述べた個人主義における独自性や責任感に ついても介在変数の可能性を検討することが重要な課 題であろう。

なお、集団主義においても、性差が認められ、男性 よりも女性が助言傾向の強いことが示された。これに は、女性の親和欲求の高さ(小出, 1998)を反映して いると考えられるが、今後の検討課題である。

4. 3.居場所研究の課題

4. 3. 1.居場所に対する認識の個人差の解明 本研究では、居場所(「安心できる人」)によって個 人主義と集団主義におけるいくつかの因子得点の違い が明らかになった。この結果は、従来の居場所研究 (豊田・岡村, 2001, 2002!岡村・豊田, 2002, 2003, 2004;豊田・大賀・岡村, 2007)と方法論的には同じ

ものであり、居場所の効果が反映される新しい尺度を

兄いだしたという点では評価できるものである。ただ し、これまでの研究方法のように、居場所による他の 変数の違いを検討するだけでは、居場所の違いを詳細 に検討できない可能性もある。上述したように、自分、

母親及び友人に対する安心感の違い等を明らかにしな いと、いくら他の変数との関連性を検討しても本質的 な解明につながらない。今後は、居場所(自分、母親 及び友人)に対する個人の認識やイメージの違いを明

らかにしていくことが必要であろう。

4. 3. 2.居場所の組合せによる効果の検討 これまで、居場所の組合せについては全く検討され てこなかった。しかし、自分が最も安心できるが、母 親の存在も大きいと考える者もいるだろう。このよう な者は、自分しか安心できないと考える者とは明らか

に質的な違いが予想できる。このように、自分に対す る安心の程度、母親に対する安心の程度、及び友人に 対する安心の程度を測定し、その組合せが他の変数に どのように貢献するかを検討することも必要である。

居場所は、青年期の適応において重要であると指摘 されながら、研究数は多くない。特に、 「安心できる人」

を居場所として位置づけた研究は、著書たちの研究以 外にない。上記のような課題を十分考慮して多くの研 究が発表されることが必要である。

(付記)本研究のデータ入力に関しては、奈良教育大 学学校教育教員養成課程心理学専修3回生の持田悠さ ん、津田詩織さん、辻本佳世さんの協力を得た。記し て感謝の意を表します。また、上記3回生が心理学専 修生の演習授業の一部として、第1著者の指導の下に、

平成20年度第59回輝麓祭(大学祭)において、主な結 果を発表した。

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参照

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