様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 呉 金忠
近年,半導体製造装置用部品,光学部品,バイオテクノロジーなど様々な分野での精密部品 に需要が拡大しており,それらの発展に伴い,工作物表面をナノレベルかつ高効率に仕上げる精 密研磨技術が求められている。このような状況の中,磁気研磨技術の応用が注目されている。
磁気ブラシを利用した平面磁気研磨法を超精密表面仕上げに適用する場合には,ミクロン単 位の微小磁性粒子を利用するため,加工中における粒子の凝集,及び磁気ブラシが工作物と接触 した後に原状復帰しにくいことが問題点としてあげられる。そこで,本研究では「変動磁場を利 用した新しい超精密平面磁気研磨法」を提案し,この問題点に対する改善策について研究してい る。最初に,変動磁場を利用した新しい超精密平面磁気研磨法を提案する理由とその加工原理を 明らかにし,加工部における磁場分布及び加工力について検討した。次に,新しい加工装置を開 発して検証実験を行い,本加工法の加工機構及び工業有用性について詳細な研究を展開した。
本論文は6章から構成され,各章の概要は以下の通りである。
第1章では,本研究の背景と研究の意義を明らかにするとともに,変動磁場を利用した平面 磁気研磨法の研究の必要性及び本研究の目的について述べている。
第2章では,提案した「変動磁場を利用した新しい超精密平面磁気研磨法」とその加工原理,
及び従来の平面磁気研磨法との差異について述べている。本研究で提案した新しい研磨法は,磁 極先端に発生させた変動磁場を利用して,磁性粒子クラスタが変動磁力を受けて上下方向に微小 運動を繰り返しながら加工を行う方法である。すなわち,変動磁場によって微小磁性粒子と微小 砥粒を均一分散させながら安定的に超精密平面加工を実現する方法である。本加工法の実現可能 性を検証するために,変動磁場を利用した平面磁気研磨装置を設計製作するとともに,この装置 を用いた実験方法について述べている。
第3章では,本加工法の加工メカニズムを解明するため,電磁コイルの磁極先端の磁束密度 を測定し,加工部の磁場分布と加工面に生じる加工力(磁力)を調べている。最初に,磁極先端 形状が加工部の磁場分布に及ぼす影響を調べ,最適な磁極形状を決定した。次に,変動磁場と静 磁場を利用した場合の磁場分布と加工部が受ける加工力(磁力)を測定し,それぞれの磁場の特 徴を明確にした。さらに,加工特性に緊密に関わる影響因子として磁性粒子の粒径,研磨液の種 類,磁極回転数,変動磁場の周波数,電磁コイルへの通電電流(磁場の強さ)が磁性粒子の加工 挙動に及ぼす影響を調べるとともに,加工部に作用する加工力(磁力)への影響についても明ら かにした。
第4章では,「変動磁場を利用した新しい超精密平面磁気研磨法」の加工特性と加工機構を解 明するため,SUS304ステンレス鋼板を工作物として研磨実験を行った。最初に,変動磁場と静磁
場を利用したそれぞれの場合の研磨実験を行っている。変動磁場を利用した場合には磁性粒子ク ラスタの微小運動効果によって微小磁性粒子の凝集現象が見られないこと,静磁場を利用した場 合に比べると滑らかな加工面が得られること,加工能率も高いことを明らかにしている。次に,
変動磁場を利用した平面磁気研磨法について,研磨液の種類,磁極回転数,変動磁場の周波数が 加工特性に及ぼす影響を調べている。その結果,油性研磨液を利用した場合は,磁性粒子クラス タの加工挙動が柔軟化すること,この現象によって工作物表面が大幅に改善されることを明らか にした。さらに,磁極回転数と変動磁場の周波数の最適値についても明らかにしている。
また,SUS304ステンレス鋼板を加工対象として,変動磁場を利用した超精密研磨実験を行っ た結果,120分間の研磨実験で前加工面粗さ240nmRaを4.4nmRaにまで仕上げられ,ナノレベルの 表面創成が可能なことを明らかにした。そして,変動磁場中の磁性粒子クラスタの挙動に影響す る因子について検討し,本加工法の加工機構を考察した。
第5章では,「変動磁場を利用した新しい超精密平面磁気研磨法」の工業有用性について詳細 な研究を展開している。本加工法を黄銅板,複雑形状のガラス部品及び樹脂製品の表面仕上げへ 適用し,それぞれの材料について研磨実験を行った。その結果,黄銅板と樹脂製品(ポリアセタ ール樹脂)の表面についてはナノレベルの表面創成ができること,複雑形状ガラス部品の精密仕 上げに適用できること,工作物エッジのバリ除去,特に溝部の精密エッジ仕上げに適用できる ことを明らかにし,本加工法の工業有用性を実証した。
第6章では,本研究で得られた知見を総括して述べている。