− 69 −
体験型活動と子供の成長:活動後のアプローチについて
人間教育専攻
現代教育課題総合コース 村 上 浩 二 郎
問題の所在と研究目的
現在、教育の現場では生きる力の育成が重要 視されている。しかし、都市の発達や子供の遊 び方の変化などから、自然を直接体験したりす る機会が減ってきている。その結果、生活相遊 びの中で、生きる力の要素の一つである 「子 供の豊かな人間性Jが育まれる機会が減少して いる。そのため、どのようにしてこの豊かな人 間性を育成していくかということが重要視され るようになってきた。
子供の豊かな人間性を育む方法としては多 様な方法が行われているが、学校外の組織が行 うものとしては近年、さまざまな体験型活動が 注目されるようになっている。
しかし、体験型活動の機会は増えてはいるが、
同時に体験型活動後に子供の成長が持続しない ことが課題となっている。そこで、本論文では 体j験型活動によって子供にもたらされる成長を 活動後にも継続するために、どのようなアプロ ーチができるかについて考察してし、く。
第1章本論において注目する生きるカ と求められる体験型活動
現在、教育の目標として定められている生き る力には、「確かな学力J
r
豊かな人間性Jr
健康・体力Jの三つの要素がある。しかし、現代の子 供は、自分の意見が言えなかったり、仲間を思 いやった行動がとれなかったりする現状がある。
指導教員 田 村 和 之
つまり、人間性の育成が不十分であると思われ る。
実際、文部科学省や様々な研究から豊かな人 間性の育成には、自然体験型活動の充実をはじ め、他者や社会・自然や環境との関わりを充実 させた活動が重要であるとされている。そこで、
本論文では私がボランティアスタッフとして参 加した体験型活動を具体例として取り上げる。
第2章 「倉Ij造アトリエあぶりこつとJ による体験型活動
愛媛県で活動してる創造アトリエあぷりこ つとは、大川代表によって2010年に設立された 創造活動教室である。この紙織では、毎月複数 回開催される創作体験教室と、年に二回開催さ れるあぷりこつとキャンプとし、う宿泊体験型活 動を中心に活動している。
あぶりこつとキャンプでは、大きく分けて三 つの体験の場が設けられている。豊かな自然と ふれあう「自然体験の場」、自らの生活について 自分の力で実践したり、異年齢の仲間と交流し たりする「生活体験の場J、そして、創作体験を 通してものの大切さを感じる「創作体験の場」
である。
私が参加した2016年夏季あぶりこつとキャ ンプでは、キャンプ開始時の自己紹介で、自ら の言葉で話すことができなかった子供が、キャ ンプ終了時の終わりの挨拶では、大勢子供やス
− 70 − タッフの前で自らの言葉で話すことができるよ
うになってし、く様子が見られた。他にも、年下 の仲間に対して気遣いができるようになったり、
諦めずに自らの分担である仕事をこなす事がで きるようになったりするような、子供たちの変 化が見られた。これらのことから、様々な活動 を通して子供たちが確かに成長していることが 感じられた。
第3章体験プログラムの効果 についてのアンケート調査
今回、体験型活動後の子供の様子を知るため、
夏季あぶりこつとキャンプに参加した子供たち の保護者にアンケート調査を実施した。それと 同時に、活動中の子共達の印象をスタッフに聞 いた。
まず、スタッフアンケートからは、私だけで はなく、他のスタッフも子供の変化や成長を感 じていることがわかった。このことから、実際 に私が子供に対して感じた成長や変化が、客観 性を持った確かなものであったことが分かった。
しかし、保護者アンケートからは、宿泊体験 時は積極的にしてし叱手伝し、などが、家に帰っ てから持続しない様子が実際に伺えることが分 かった。
第4章体験型活動後の活動の提案 本章では、 子供の成長をどうすれば活動後も 継続させることができるかを考察した。そこで、
まず、保護者が子供の体験についてしっかりと 把握する必要があることが考えられる。そのた め、活動記録の提供やスタッフとの懇親会を提 案する。その上で、保護者が子供の体験を共感 的に捉えたり、体験の意味を明確にしたりする ような言葉がけをすることが重要であると考え
た。また、体験型活動での成長を活かした活動 が体験後も実践できるように、子供に促すこと が重要であると考えた。
そのためには、体験型活動後のアフ。ローチで、
は、子供を体験から思考へ促す働きかけや、体 験を実践に活かす働きかけを行うことが重要で あることが分かった。例えば、体験型活動にお いて目の前の課題に対して諦めずに行動するこ とができた子供には、保護者が体験型活動後に、
自宅でその子供にとって簡単な家事やお手伝し、
を求め、それを達成できたことを褒めてあげ、
徐々に手伝いの幅を広げていくようなアプロー チが考えられる。
結論
生活や遊びの中で、子供の豊かな人間性が育 まれる機会が減少している現在、体験型活動は これからも必要なものとされていくだろう。そ して、そこで得られる子供の成長は、普段の生 活では得られにくいものであるからこそ、その 成長をしっかりと持続させるよう、保護者の働 きかけが重要になってくるのである。つまり、
上記に挙げた子供への家事や仕事の協力を仰ぐ 事例のように、体験型活動での成長を活かした 活動が体験後も実践できるように促すことが必 要なことが分かった。
一方で、本研究では角射Lなかったが、体験型 活動前や体験型活動中に子供に対して行えるア ブローチについても今後は考えていく必要性が あるだろう。そこでは、本論文の内容である、
体験後のアプローチを含めた、より包括的な子 供に対する接し方についても研究していく必要 性があると考えられる。これらは本研究では扱 わなかったが、今後の課題として心に留めてお きたい。