特別な支援を必要とする幼児の就学移行支援の在り方
一保護者や小学校のニーズに基づくサポートファイノレの作成と活用の取り組みから一
特別支援教育専攻 福 田 康
1 .問題の所在と目的
近年、学校現場では特別支援教育の理念が教 職員に浸透する中で、在籍している児童や担任 への支援体制が整えられつつある。
しかし、小学校において、幼児教育機関から の次年度入学予定児のうち、障害のあるまたは、
特別な教育的配慮や支援を必要とする幼児につ いての実態把握や引き継ぎ、受入れ態勢づくり は十分ではなく、早急な対応が求められている。
そのことは、文部科学省の「発達障害早期総合 支援モデ、ノレ事業Jで委嘱された自治体の多くが、
就学時の円滑な移行支援のための様々な取り組 みを始めたことからも窺える。
そこで、研究にあたって、新たに作成したサ ポートファイルをA県内の就学児童の保護者及 び、小学校に活用を試み、①保護者の原品、や学 校のニーズをアンケートやインタビューで調査 し、その結果を反映した、より効果的なサポー トファイルの内容と実施方法の検討、②児童、
保護者、学校ともに有効で、円滑な就学移行支援 のためのサポートファイノレ作成・活用に係る諸 要素の検討を行うこととした。
2.研究方法
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)対象:高機能自閉症(2
名)・アスペルガー 症候群 (2名)・知的障害(1名)及び、自閉傾 向のある子ども (5名)の母親 10名。子どもは 全員来年度就学予定児(年長児)で、公立幼稚 園 (6名 ) 国 立 附 属 幼 稚 園 (1名)私立幼稚園( 1
名)私立保育所(2
名)に在籍。就学先は、指導教員 井 上 と も 子
公立小学校 (8名)国立附属小学校 (2名)の 通常学級 (7名)特別支援学級 (3名)である。
2)サポートファイル作成・活用・評価の経過
①サポートファイノレに望むことについての保護 者・教員へのアンケート及びインタビューの結 果を反映したサポートファイルひな形の検討
② 保 護 者 を 中 心 に し た サ ポ ー ト フ ァ イ ル 記 入
③ サ ポ ー ト フ ァ イ ル を 介 し た 保 護 者 と 小 学 校の引き継ぎ会の実施
④サポートファイノレ活用後の保護者及び、小学校 の担任と特別支援教育コーディネーター(以下 コーディネーター)へのアンケート及びインタ ビ、ューによる評価
3.結果と考察
1 )サポートファイルひな形の作成
サポートファイルの内容・項目・様式等の選 定や活用の仕方に保護者・小学校のニーズを活 かすため、アンケート及びインタビューを実施 した。保護者が学校に伝えたい主な内容は①本 人の特性②適切な支援の方法③本人の良いとこ
ろ等で、あった。学校のニーズは①本人の特性② 適切な支援の方法③就学前の対応の様子等であ った。その他、多くのニーズを反映し、 A 4カ ラー全 18ページ、クリアファイル差し込み式、
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項呂の内容とした。また、使用しやすくする ためのその他の工夫15ヶ所を加え、サポートフ ァイルのひな形を作成した。2)保護者を中心にしたサポートファイル記入 保護者は記入例をもとに各自で、記入を行った。
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2回経過確認を行い、書き方がわからないとす る保護者には助言を行った。ひな形の提示時期 が11月で作成期間が約2ヶ月であり、一部の保 護者にとっては時間不足であった。このこと から、ひな形提示を4月には行い、その項目の 視点で子どもを観察しながら、早期から作成に 着手しておくことが必要であることがわかった。
また、サポートファイルの中に就学前施設が記 入する欄があるため、筆者が就学前施設へのサ ポートファイルの意義説明や、記入協力依頼を 行った。施設によっては説明や理解に時間がか かることもあり、就学前施設においても就学移 行支援の必要性について知る機会を持つことが 早急に求められると考える。
3)保護者と学校との引き継ぎ会の実施 引き継ぎ会を実施するにあたり、事前に筆者 が小学校に対してサポートファイルの意義説明、
引き継ぎ会の日程調整、活用の依頼を行った。
小学校からは、積極的に協力を得られ、サポー トファイルの活用法や管理の仕方などを尋ねら れることが多かった。これは、 A県で、「就学支 援シート」等が実施されていることもあり、教 員における就学移行支援の重要性についての理 解が進み、関心が高まっているからであると思 われる。引き継ぎ会は、コーディネーターが進 行した。保護者がサポートファイルをもとに説 明し、教員も詳しく聞きたいところについて質 問するなど和やかな雰囲気の中にも真剣な話し 合いが行われた。保護者は伝えたい内容をまと めているので伝え忘れがなく安心して説明を行 い、小学校はコーディネーターを中心に子ども についての情報を引き継いだ。コーディネータ ーとしての仕事を再認識し活躍の場を広げられ たことに「成就感を感じたJと述べたコーディ ネーターも多かった。
4)サポートファイル活用後の評価
入学後5月末に保護者、教員双方にアンケー ト及びインタビューを行った。保護者、教員と もにサポートファイノレが就学移行支援に役立つ たかを問う関連した複数の質問については全て
「役に立ったj という評価であり、ニーズを活 かしたサポートファイルが就学移行支援に有効 に働いたことがわかった。一方、情報量につい ては保護者、教員の一部から多すぎるという意 見もあり、作成期間も含め、再考の余地がある
と考えられる。サポートファイノレの良かった点 として、「支援に必要な項目が網羅されていたこ とJや、「ニーズをもとに内容が構成されていた ことJが多く挙げられていた。このことから、
事前に保護者が学校に知らせたいこと、小学校 が子どもについて知りたいことを調査し、内容 を構成したことが功を奏したと考えられる。
4.総合考察
本実践において、保護者や小学校のニーズに 基づいたサポートファイルが就学移行支援にお いて一定の効果があることがわかった。また、
情報伝達という本来の目的だけに留まらず、保 護者の意識の深まりや、多くの教員の理解や気 づきの広がりというような思わぬ相乗的な効果 が得られた。今後、サポートファイルがより円 滑に機能し、広まっていくための条件として① 保護者と小学校との聞をつなぎ、綴密な計画と 連絡調整を行う仲介役となるキーパーソンが必 要であること②サポートファイルというツール だけでなく顔をつき合わせた引き継ぎ会を実施 することが大切であること③学校側がサポート ファイルの提出時にどのような特別支援教育の 体制がとれるのかを明確に保護者に示すこと等 が重要になってくることが実感された実践であ った。
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