線型代数学演習第 4 回
(A ターム水曜 4 限,理 2,3 1–7 組)土岡 俊介 2016 年 11 月 23 日
• 小木曽先生の授業の成績+レポート(最終日12/21に配布)によって成績が決まります.
• 配布される解答はhttp://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~tshun/2016a.html にもあり ます.またそこからメッセージフォームにリンクを張っています.匿名で要望等あれば,お 気軽にどうぞ.
• Aタームは必修のため人数が多いので,配られた解答を元に各自理解を深めてください.答 案(の書き方など)をみて欲しい人は,演習終了時に提出してください.
• ボーナス問題を正解した人には何かしら差し上げます(先着順).興味のある人は知らせて ください.
• 演習開始後45分から出席をとります.出席状況によっては,最終成績で不可になりそうな 人を可にするくらいの考慮をするかもしれません.
• 問題を解く順序はありませんが,§4は解きましょう.
• 授業あるいは線型代数の理解を深めることが目的なので,自分にあった問題に取り組んでく ださい.友達と議論したり,webを調べるのもご自由に.
1 概要
(S1) 授業では,行列の対角化を扱いました.
(S2) 雑談として,ジョルダン標準形(Jordan normal form)を紹介します.
(S3) 今日は,基礎体はK =Cとします.
2 線型写像の対角化
V をn次元C線型空間とする.自己C線型写像f :V →V について,
• α∈Cがfの固有値であるとは,Ker(f−α1V)̸={0}となること
• 固有値αの固有空間とは,Vα:={v∈V |fv=αv}
と定義される.Vαのゼロでないベクトルは,固有値αの固有ベクトルと呼ばれる.
1
f が対角化可能であるとは,次が成り立つことである: ∑
α:固有値
dimVα=n
(理由:このとき,各固有空間Vαから基底を選ぶことで,V の基底を選べて,この基底に関するf の表現行列は対角行列になる).以下は,固有値と対角化可能性についての注意である.
• V の順序基底v1,· · · ,vnを1つ選んで,f の行列表示A= (aij)1≤i,j≤nを考える.つまり f(vj) =
∑n i=1
aijvi
である(ここで1≤j≤n).このとき多項式χf(t) := det(tEn−A)は順序基底の取り方に 依らず(固有多項式または特性多項式),「α∈Cがfの固有値⇔χf(α) = 0」が成り立つ.
• 以下の内容はまだ授業で扱っていませんが,知っておくとよいでしょう.ゼロでないC係 数多項式φf(t)∈C[t]で,次の条件を満たすものがただ一つ存在する(最小多項式):
1. φf(f) = 0かつφf(t)の最高次数の係数は1
2. ゼロでない多項式g(t)∈C[t]が,すぐ上の条件を満たすときdegg >degφf
このとき「f が対角化可能⇔方程式φf(t) = 0は重根を持たない」によって,対角化可能 性が判定できる.
3 行列の対角化
§2の内容を,n×n行列Aに付随する標準的な線型写像FA :Cn → Cn,x→Axに適用する と,行列の対角化について論じられる.
Aが対角化可能であるとは,ある可逆行列P が存在して,D:=P−1AP が対角化行列になると いう.対角化は可能だったりそうでなかったりするが,まず可能な場合,次の手順でP およびD が計算できる:
1. Aの固有値α1,· · ·, αsを列挙する.これは固有多項式φA(t) := det(tEn−A) = 0という 方程式を解くことで達せられる.
2. 固有値αiの線型独立な固有ベクトルpi,1,· · ·,pi,di を計算する(i= 1,2,· · · , s).これは (A−αiEn)v=0という連立方程式を解くことで達せられる.
3.
∑s i=1
di=nであるときに限ってAは対角化可能である.P として
P =(
p1,1,· · · ,p1,d1,p2,1,· · · ,p2,d2,· · ·,ps,1,· · · ,ps,ds) が取れ(固有ベクトルを並べた行列),このときD=P−1AP は,対角線に
α1,· · · , α1,
| {z }
d1個
, α|2,· · ·{z, α2}
d2個
,· · · , α|s,· · ·{z, αs}
ds 個
が,この順に並んだ対角行列になる.
2
4 対角化の計算
(A1) 行列 (
0 1 0 0
)
は対角化不可能であることを示せ.
(A2) 以下の行列の固有値を求めよ.
(a).
( 1 2
−1 4 )
, (b).
6 −3 −7
−1 2 1 5 −3 −6
, (c).
2 −1 1
0 1 1
−1 1 1
,
(A3) (A2)の行列の固有ベクトルを求めよ.
(A4) (A2)の行列のうち,対角化可能なものはどれか?
(A5) (A4)の行列AについてP−1AP が対角行列になるような可逆行列P を求めよ.
(A6) (A5)について,それぞれP−1AP を求めよ(注意:逆行列と行列積の計算は不要).
(A7) 行列
2 −1 a
−1 2 a
−1 1 a+ 2
が対角化可能かどうか調べよ.
5 対角化の応用
(B1) (A2a)の行列をAとする.行列の指数関数eA=E2+A+2!1A2+3!1A3+· · · を計算せよ.
(B2) (A2b)の行列をAとする.Anを計算せよ((B1)(B2)は(A5)のP がある形で構わない).
(B3) 数列 (an)n≥0 は 4項間漸化式 an+3 = 6an+2−11an+1 + 6an を満たすという.一般項 an を,初期値 a0, a1, a2 で表せ.ただし次は使ってよい:P =
1 1 1 1 2 3 1 4 9
とすると,
P−1= 1 2
6 −5 1
−6 8 −2 2 −3 1
で,P−1
0 1 0
0 0 1
6 −11 6
P =
1 0 0 0 2 0 0 0 3
.
(B4) 三角形ABCがある.点Qは,
1. 時刻0では頂点Aにいて,
2. 時刻tからt+ 1では,確率1/2で隣接する頂点のどちらかに移る(t≥0)
と き ,時 刻 t で 頂 点 A,B,C に い る 確 率 pA(t), pB(t), pC(t) を 求 め よ .た だ し 次
は 使 っ て よ い:P =
1 −1 −1
1 1 0
1 0 1
と す る と ,P−1 = 1 3
1 1 1
−1 2 −1
−1 −1 2
で ,
P−1
0 1/2 1/2 1/2 0 1/2 1/2 1/2 0
P =
1 0 0
0 −1/2 0
0 0 −1/2
. 3
(B5) n×n行列P = (pij)1≤i,j≤nは,
1. 各成分pij は非負実数(つまりpij ≥0) 2. 任意の1≤i≤nについて,∑n
j=1pij = 1
が成り立つのとき,確率行列と呼ばれる.P は固有値1を持つことを示せ.
6 やや高度な話題(すべてボーナス問題)
(C1) 確率行列Pの固有値λについて,|λ| ≤1を示せ.
(C2) 複素数α∈Cについて,lim
n→∞αnが存在する条件は「|α|<1またはα = 1」である.では n×n行列Aについて, lim
n→∞Anが存在する条件は何か?(ヒント:ジョルダン標準形).
(C3) n×n行列Aが,
(X Y O W
)
と区分けされているとする(ここでXはm×m行列,Y は
m×(n−m)行列,Oは(n−m)×m零行列,W は(n−m)×(n−m)行列).Aが対角 化可能ならば,Xも対角化可能であることを示せ(ヒント:最小多項式).
7 単位が不安な人向けの復習用の問題
(X1) det
2 4 1 −3
0 1 −2 1 1 0 2 −3 1 0 3 −2
を求めよ. (X2)
−3x+ 7y−4z=−18 2x−5y+ 3z= 11 x−3y+ 2z= 4.
を解け.
8 解き残っているボーナス問題
第2回の(C6.3) n×n行列Aについて,rank(A) =n−1ならばrank(A) = 1e を示せ.
第2回の(C9)の一部 A, Bをn×n行列とするとき(ここでn≥2),ABg=BeAeを示せ.
第2回の(D4) 対角成分がすべて1で,非対角成分がすべてaである以下のn×n行列のランクを求めよ.
1 a a · · · a a 1 a · · · a ... . .. ...
a 1 a
a a · · · a 1
第3回の(B3) 自己線型写像f :V →V が,ある自然数m≥1についてfm = 0となるとき,idV −f は 同型写像であることを示せ.
第3回の(B4) K成分n×n次行列のなすK 線型空間をMn(K)と書くことにしよう(和は行列の和で,
スカラーc倍は行列のすべての成分をc倍する).任意のK 線型写像f : Mn(K)→K は,
あるA∈Mn(K)を用いてf(X) = tr(AX)と書かれることを示せ.
4