確率数値極限解析を用いた固化処理地盤の支持力の信頼性について
九州大学大学院 正○笠間清伸 正 善 功企 正 陳 光斉
1.
はじめに軟弱地盤の支持力増加や砂質地盤の液状化対策などを目的として、固化材の混合により地盤改良された固 化処理地盤は、固化材の混合の不均一性および対象地盤の土質の不均質性などの理由により、せん断強度に 空間的バラツキを有する。この固化処理地盤のせん断強度のバラツキは、設計時における固化処理地盤の支 持力の決定に影響することが予想され、地盤のバラツキを考慮した支持力算定手法が求められている。本文 では、固化処理土の室内強度と同じ配合条件での原位置強度の関係をまとめ、原位置強度と室内強度の比、
原位置目標強度を割増するための補正係数および原位置強度が目標改良強度を下回る割合の関係を考察した。
その後、固化処理地盤のせん断強度をランダム場理論で表現し、数値極限解析を使ったモンテカルロシミュ レーションによりバラツキを考慮した支持力解析を行った。その結果を用いて、原位置強度のバラツキが固 化処理地盤の支持力係数およびその信頼性に与える影響について、確率統計的に考察した。
2.
固化処理地盤の割増係数と不良率図
-1
は、事前混合処理工法により改良された固化 処理地盤における室内強度と同じ配合条件での原位 置強度の比(
以降、強度比と呼ぶ)
をまとめたもので ある。以降、原位置強度が室内強度を下回る割合を 不良率と呼ぶ。図中には、不良率の実測値および強 度比が対数正規分布すると仮定した場合の予測値(
図中では括弧内に示す)
をそれぞれ示す。また、横 軸の割増係数とは、原位置強度がばらつきを有する ことを考慮し、あらかじめ原位置における目標強度 を割増することで室内強度を下回ることを防ぐため の補正係数である。つまり、割増係数が2.0
の場合 には、室内強度の2
倍を原位置での目標強度に設定 することを意味する。図-1
より、割増係数が1.0
の 場合(
つまり、原位置目標強度の割増を行わない)
に は、不良率は32.8% (29.8%)
であり、目標強度の割増 を行わないと、支持力不足や局所的な地盤の破壊が 予想される。そこで実際の施工では、改良目的や混 合方法などを総合的に判断し、割増係数を増加させ ることで、図-1
に示すように平均強度比を増加させ、不良率を減少させている状況にある。しかしながら、
割増係数を増加させることは、施工コストを増加さ せることにつながるため、目標支持力の確保や液状 化被害を低減するための割増係数の具体的設定値や 許容できる不良率の上限値などを今後検討し、原位 置強度のバラツキを考慮した信頼性のある地盤改良 手法を開発する必要がある。次節では、割増係数と 不良率が改良地盤の支持力に与える影響を解析した。
0.1 1 10 100
0.5 1 1.5 2 2.5 3
強度 比 q u site/q uo
割増係数
不良率2.3%(6.4%) 19.0%(16.6%)
32.8%(29.8%) 4.4%(10.0%)
図
-1
強度比、割増係数および不良率の関係0
0.5
1.0 1.25 y/B
-2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 x/B u=v=0
u=v=0
u=v=0 0 Q
n= σ
=
τ τ=σn=0
図
-2
解析に用いたメッシュ図3.
ランダム場理論と数値極限解析せん断強度に空間的なばらつきを有する固化処理 地盤の支持力を得るために確率数値極限解析を用い た。確率数値極限解析の詳しい説明は、参考文献
1)
に詳しい。図-2
に解析で用いた二次元平面ひずみで のメッシュ図を示す。地盤全体を改良した場合を想 定し、鉛直支持力に対する支持力解析を行った。固 化処理地盤のせん断強度を、対数正規分布とし、強 度比SR
と変動係数COV
cおよび自己相関係数を変化 させることで、空間的ばらつきをモデル化した。土木学会西部支部研究発表会 (2008.3) III-020
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0 1 2 3 4 5
0 0.02 0.04 0.06 0.08
0 20 40 60 80 100
平均 支持 力係 数
N c
変動 係数
解析回数
COVc=0.6 Nc
COVNc
COVc=0.2
COVc=0.2
図
-3
平均値および標準偏差の変化固化処理地盤の自己相関係数は、
0.15
~12m
と自然 堆積地盤に比べてかなり小さいことから、0.15m
と 小さく設定し最も不均質に分布する場合を想定した。図
-2
に、空間的ばらつきを有する場合のメッシュ図 の一例を示す。各要素の濃淡が地盤の強度を表わす。4.
ばらつきを考慮した支持力係数図
-3
は、モンテカルロシミュレーション中の平均 支持力係数と変動係数の値を示す。横軸は、解析回 数である。支持力係数の平均値と変動係数は、100
回の計算の間にほぼ収束した。100
回のモンテカル ロシミュレーションと各統計値より計算した平均支 持力係数の標準誤差は、± 0.01程度であった。
図
-4
は、強度比SR=1.0
とCOV
c=0.6
における支持 力係数のヒストグラムである。χ
2検定による分布型 の適合度検定から、支持力係数は、図中に示す対数 正規分布で適合した。図
-5
は、得られた支持力係数を均一改良地盤とし た解析値で正規化(
以下、正規化支持力係数)
し、横 軸を変動係数で示した図である。図中には、支持力 係数の変動係数から求めた90%
と99%
信頼下限値も それぞれ示した。変動係数の増加とともに正規化支 持力係数は、直線的に減少した。図
-6
は、正規化支持力係数と割増係数の関係であ る。図中には、図-1
に示した原位置で観測された強 度比の変動係数をもとに計算した正規化支持力係数 の予測値を示す。図-1
に示す程度のバラツキであれ ば、割増係数1.5
以上であれば目標支持力を下回る 可能性は小さいことを示唆する。しかしながら、変 動係数が増加するほど正規化支持力係数は減少する0 5 10 15 20 25 30
3.05 3.15 3.25 3.35 3.45 3.55 3.65 PDF of N c
支持力係数 Nc
COVc=0.6 SR=1.0
図
-4
支持力係数のヒストグラム0 20 40 60 80 100
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
90% 信頼下限値 99% 信頼下限値 正規
化支 持力 係数
(%)
せん断強度の変動係数 COV
c SR=1.0
µNc
図
-5
変動係数の増加に伴う支持力係数の減少0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
1.2 1.6 2 2.4 2.8
原位置強度のバラツキから 予測した正規化支持力係数
正規 化支 持力 係数
割増係数
COVc=0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
図
-6
支持力係数と強度比の関係ため、割増係数を増加させても強度のバラツキの程 度が大きい場合には目標支持力に到達しない可能性 があることを示唆する。
【参考文献】1) 笠間清伸、善功企、陳光斉: “確率数値極限 解析を用いた固化処理地盤の支持力特性”, 第 7 回地盤改良 シンポジウム論文集, pp.259-264, 2006.
土木学会西部支部研究発表会 (2008.3) III-020
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