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2.吊橋の設計

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(1)11. 2.吊橋の設計. 2.1設計一般 2.1.1吊橋の形式と特徴 (1)吊橋の形式 吊橋は,それらが架設された各々の時代に,その思想と構造の進歩を重ねて今日の姿に至っている。 吊橋を構成する主な要素としては図−2.1.1に示すように 1)橋面荷重を支持する補剛桁 2)補剛桁を吊るす吊材 3)吊材を吊るすケーブル 4)ケーブルを固定するケーブルアンカー 5)ケーブルを支持する主塔 が挙げられる. 塔頂 サ ド 口 、. 主塔. ル. 主 ケーブル. ケ ー ブ レア 、 カ ー部 ノ. /. /ンW. 吊. ロ. 橋 面 (上 路 橋 ). 材. サグ. セ ン ター . ステイ . _ ⊥_ _ _ ⊥ 」 _ _ ⊥_ _ _ _⊥J _. ///////// / N l. ス プ レ イサ ドル. i. 1. / ↑ \ レ 1 \ \l \ 補 剛 桁 (トラ ス 構 l 造). \. 1 二 ////////// l /// ン/. //. 補 剛 桁 支. 間. ア ン カー ブ ロ ッ ク. 主塔間隔. 図−2.1.1吊橋構成要素の名称. これらは吊橋の形式を要素別に分類したわけであるが,さらに,各要素ごとの構造系の形式を挙げると,下記のよ うになる.. 1)主塔の形式 ①. 下端固定. ②. 下端ヒンジ. ③. 主塔なし(地形を利用し山頂等にケーブルアンカーを設置したもの). 2)ケーブルアンカーの形式 ①. 橋体とは別に設けられたアンカーブロックにケーブルを定着する形式. ②. 側径間の補剛桁端部にケーブルを定着する自碇式. 3)ケーブルの形式 ①. ケーブルのみ. ②. ケーブルとステイとの併用. ②. 斜めハンガー. 4)吊材の形式 ①. 鉛直ハンガー.

(2) 珊. 12. 吊橋. 】. 技術とその変遷∬. 介⁝⁝易. f l. /. 鉛直ハンガー. 斜めハンガー 4)吊材の形式. 可雛塔若君等謂窒 下端固定. 下端ヒンジ 1)主塔の形式 ※ヒンジを示す 3ヒンジ補剛桁. 橋体外にアンカーする場合. 補剛桁にアンカーする自碇式 2)ケーブルアンカーの形式. ケーブルのみ. 2ヒンジ補剛桁. ケーブルと タワーステイとの併用. 連続補剛桁. 3)ケーブルの形式. 5)補剛桁の形式. 図−2∴2. 吊橋主要要素1)〜5)の形式. 5)補剛桁の形式 ①. 3ヒンジ補剛桁. ②. ④. 補剛桁なし(無補剛吊橋で古い形式の吊橋もしくは小規模な吊橋に多い). 2ヒンジ補剛桁. ③. 連続補剛桁. 以上のように分類されたものを図】2.1.2に図示する. (2)吊橋の特徴 吊橋は実在する橋梁形式のうち最も長い支間長を可能とする橋梁形式である.吊橋と他形式の橋梁との構造上の比 較を行った場合,吊橋を最も特徴付けているものに,ケーブルと補剛桁がある. 1)ケーブルの目的には a)吊材を含むケーブルの自重および補剛桁とこれにより支持される床版・床組などの自重を主塔およびアンカ レイジに伝達すること b)完成後に作用する外力を補剛桁とともに分担支持し主塔およびアンカレイジに伝達すること などがある. 2)補剛桁の目的には a)ケーブルとともに橋体に鉛直および水平方向の剛性を与えること b)活荷重などのように完成後の補剛桁に作用する荷重を,その剛性により分散し,吊材を介してケーブルに 伝達すること などがある. 吊橋は上記のようにケーブルが補剛桁を支持していること,換言すれば,補剛桁が自立していない構造である.し たがって,ケーブルと補剛桁との働きによりその剛性を確保しているが,一般には他形式の橋梁に比べると可操性に 富む橋梁形式であると言える.その結果として橋体,特に補剛桁は風・地震などの外的影響を受けて変形しやすい. なかでも,風により耐風安定性を乱したTacomaNarrows橋の落橋事故は,この例と言えよう.今日では吊橋の計画.

(3) 2.吊橋の設計. 13. にあたって,特に補剛桁に関しては,断面形状のほか剛性・質量などを考慮し,風洞での模型実験などによる応答を 確認のうえ,形式が決定されることが多い。. 2.1.2. 理論と設計の変遷. 吊橋を設計の立場に立ってながめると,設計の理念なり手法なりを最初に手中にしたのは,近代科学の発祥地の ヨーロッパにおいてであった.初期の成果としては,1691年のBernoulli(スイス)による懸垂曲線(Catenary)の 理論,1794年のFuss(スイス)による水平方向に等分布鉛直荷重が作用した場合の放物線ケーブルの証明などが挙 げられよう.Newton(英)が力学の基本である運動の法則を発見したのが1687年であることを考えれば,決して遅 くはない。しかし,吊橋構造の理論的裏付けとなると,時代を下って19世紀前半のTelford(英),Brown(英), Navier(仏)らの活躍時期を待たなければならなかった. TelfordはRancorn吊橋の設計にあたり,数学者Barlow(英)の協力を得て,吊り荷重が作用した状態での鉄製 ケーブルの模型実験を行い,その性状を研究した.この橋は実現しなかったが,この仕事を通じてTelfordとBrown はお互いの存在を知り,二人の協力により,イギリスでの吊橋技術は大きく前進することになる。後にBrownは Union橋(1820年,支間長137m)を,Telfordは錬鉄製のチェーンを有する当時世界最長であったMenaiStraits橋 (1826年,支間長177m)を設計するに至る.これらの橋のデッキ構造は,当時のヨーロッパの吊橋の大半の例にも れず,橋体の剛性にはほとんど関与せず,MenaiStraits橋の方は1826年,1836年さらに1839年と幾度かにわたっ て風による被害を被った.これらの事故を通してCowper(英),Brunel(英),Rendel(英)らは吊橋の固有周期と ガスト(Gust)による共振現象,水平風により鉛直振動が発生し得ること,補剛桁の剛性欠如などに対する認識を深 めていくことになる.なかでもRendelは,このような考えに基づき,1838年のMontrose橋(支間長132m)の修理 にあたって,揺れ防止のために,トラス高さ3mの木製トラスを新しく追加した. Navierは無補剛放物線ケーブルの理論を活荷重の影響を考慮できるまでに発展させた.彼は等分布死荷重が作用 する無補剛吊橋に,新たな集中荷重が作用した場合,あらかじめ作用している死荷重によるケーブル張力と比べて, 集中荷重による張力が十分小さい限りにおいては,集中荷重により新たに発生する鉛直変位は,ケーブルサグに比例 し,また,等分布死荷重強度に反比例することを見いだした.彼はこの考えに基づき,吊橋全体の剛性を増すために は,サグを小さくすることを推奨した。 他方,アメリカでもこの頃FinleyがEssex−Merrimac橋(1810年,1909年撤去)をはじめ多くの吊橋を架設した. 彼はデッキ構造の橋軸方向の剛性に注目し,高欄に剛性を与えることにより,前述のTeほordやNavierとは異なっ た思想に基づく吊橋を多数架設した.しかし,彼による吊橋の多くは,供用開始後洪水による流失や冬期の過大な積 雪荷重あるいは低温下での変形による過大応力と考えられる原因など,吊橋構造としての欠陥とは考えにくい原因で 崩壊に至り,急速に省みられなくなっていった.これと同時に,この国では,吊橋の架設自体がその後しばらく行わ れなくなった.この崩壊の原因が正しいとすると,吊橋構造としての欠陥による崩壊でないだけに,また,Finleyの 思想が橋軸方向の剛性に注目している点で,現代の吊橋の思想により近いものであるだけに,この空自の期間は吊橋 の発展にとっで†苦しまれる。 ここで,吊橋の設計上重要な要素であるサグ・支間比の変遷をまとめてみる。すでに述べたTelfordが活躍した当 時のイギリスでは一般に1:12程度,Navierの吊橋では1:12〜1:17程度,Finleyの吊橋では1:7程度であり, 現代のものでは1:10程度となっている. その後アメリカでは,Roeblingがダブルデッキの道路・鉄道併用橋であるNiagara橋(1855年,支間長251m)を 架設した.この吊橋には,塔頂と補剛桁を結ぶ放射状のステイを取り付けたほか,補剛桁の下側と地上を結ぶケーブ ル・ガイ(CableGuy)を取り付けて地中に定着し,剛性の増加を図った(図岬2日1】3参照).RoeblingはTelfordや Ellet休国人であったが丘colePolytechniqueに学び,Navierの影響を受けた)のように,吊橋の剛性を増すために.

(4) 吊橋一技術とその変遷−. 14. 図−2.113. Niagara橋(本州四国連絡橋公団栗野純孝画). は死荷重の増大と,その結果としてのケーブル張力の増加を図る,とするだけの考えではなく,重量。補剛トラス。 ステイなどの有効な複数の機能を組み込んだ構造を考えた.Cincinnati橋(1867年,支間長322m)から遺作となっ たBrooklyn橋(1883年,支間長486m)などの一連のものがその結果であり,これらは近代長大吊橋への先駆けと なった. なお,この当時に存在した解析理論は,無補剛吊橋に対する懸垂曲線の理論と微小変形を前提とした弾性理論 (ElasticTheory)であった.補剛吊橋の解析にあたって,とりわけ補剛桁の変形による影響を無視できない場合には, これを考慮した解析を行うべきであることは,Roeblingの当時でもすでに指摘されていた。しかし,後述するたわみ 理論はまだ知られておらず,例えば,Brooklyn橋の設計にあたって,彼は実験と経験により,たわみや応力を確認 する必要があった.このほかに彼の業績として,19世紀の中頃にVicat(仏)が考案したAS工法(AerialSpinning Method)を,今日使用されている技術の原型にまで仕上げたことも挙げられよう。 解析の理論面では,1877年に吊橋の変形を考慮した非線形の解析理論である,たわみ理論(DeflectionTheory) がRitter(ラトヴイア)により,また1886年にL帥y(仏)により示されるが,最後の1888年に発表されたMelan (独)の名が今日では有名である.この理論は後の人たちにより改良されて今日の姿になっているが,これには Moisseiff(米)やSteinman(米)によるところが大きい. 20世紀初頭になると,ニューヨーク市のEastRiverに三番目の吊橋であるManhattan橋(1909年,支間長448m) が架設された.これはMoisseiffにより設計されたが,たわみ理論が実橋に応用された最初のものである.その後, アメリカでは有名なGoldenGate橋(1937年,支間長1280.2m)やヨーロッパで最初の長大吊橋で,補剛桁が飯桁. のK捌n−Rohdenkilchen橋(1937年,支間長378m)が Leonhardt(独)の設計でRhein河に架けられた.. 0.6. 0.5. このように,より厳密で実態に即した解析法が開発され たことにより,材料・製作技術・架設技術の進歩も相まっ. 0.4. て,吊橋はさらに長大化していく.一方,構造物が長大化 ミ0.3 ・q すると,おのずとその自重(榔)は増大し,本来構造規模. O.2. とは無関係の活荷重(♪)との比(〆棚)が小さくなる (図−2.1.4参照).そこで,死荷重が作用した初期の形状 が把握されれば,後に戟荷される活荷重による変形の影響 は小さく,構造物としては線形性が保たれるとみなせるこ. 0.1. 仇0 0. 500. 1000. 1500. 主径間長(m). とに着目したGodard(仏),Neukirch(独),Lie(独), 図−2」.4 活荷重(少)/死荷重(扇比と主径間長との関係.

(5) 2.吊橋の設計. 図−2.1.5. 15. TacomaNarrows橋一般図. Bleich(独)およびPeery(米)による線形化たわみ理論およびその応用である影響線解析法の考えが実用面で登場 してくる.このように,理論の厳密化による理論式の複雑化と,それに対する計算の実用面での簡易化への努力がな されてきた. 1940年になると,SeattleのTacomaNarrows橋(旧橋:支間長853m,匡卜乙1。5参照)がMoisseiffの設計により 架設された.本橋はKoln−Rohdenkilchen橋と同じく補剛桁が飯桁形式で,しかも桁高が2845mと低く,曲げおよび ねじり剛性ともに小さい構造で,さらに重量面での軽量化を図った結果,極慣性も小さく,耐風安定性に劣る構造と なっていた.当時は風に対する橋体の応答が未解決であったことなどから,本橋は架設完了間もない1940年11月に, 秒速約19mの風による曲げおよびねじり振動で破損し落橋に至った。この事故は,橋梁技術者に再び風による振動 の問題を提起し,Vincent(米),Bleich(米),VOnKarman(米),Farquharson(米)らがその後約10年間にわたり 研究し,坂桁の空力的不安定性を究明した.その結果,以降の吊橋の補剛桁には,空力学上の性状が鍍桁より優れて いる,トラス形式が多用されるようになった.20世紀半ばを過ぎると,耐風安定性に優れた補剛桁形式として,偏 平箱断面補剛桁に関する空力弾性学上の研究がNPL(NationalPhysicalLaboratory(英)),Ostenfeld(デンマーク), J田nSOn(デンマーク)などを中心にヨーロッパで進み,イギリスのSevern橋(1966年,支間長988m,図−2.4。5参 照)やデンマークのLittleBelt橋(1966年,支間長600m)として具体化した。その後,この形式の補剛桁はHum− ber橋(1981年,支間長1410m)など多くの橋で採用され,わが国でも本州四国連絡橋の大島大橋や来島大橋など に採用された.しかし,トラス形式とこの偏平箱断面形式との耐風安定性上の優劣に関しては,まだ結論が出ていな いのが現状である. 話をケーブルに転ずると,1960年代半ばまで,ケーブルはAS工法による平行線ストランド,または,あらかじ め工場でストランドとして作られたスパイラルロープにより構成されるのが主流であった。前者はケーブルとしての 弾性係数が大きくて安定している点で後者より優れている.しかし,架設方法が複雑で長期間を要する点に問題があ る.後者はその逆である.そこで両者の利点のみを生かす目的で,あらかじめ平行線ストランドを工場で形成し,そ れを架設するPS工法(PrefabricatedStrandMethod)がアメリカのBethlehemSteel社で開発され,以降の吊橋で多 く採用されるようになった。 理論面では,従来の吊材を連続する膜とみなした膜理論から,Pugsley(英)による吊材を等間隔に配置する,よ り実状に合った,離散吊材理論を経て,吊橋を非線形の骨組構造と考える有限変位理論による解法がBrotton(英), Poskitt(英),Saafan(イラク),Tezcan(カナダ)やわが国の藤野・大坂,後藤,小西。白石。飯田らの手により大 型コンピュータ普及と相まって登場し,今日ではより実態に近いモデルでの吊橋の構造解析が可能となっている..

(6) 吊橋一技術とその変遷−. 16. 2.1.3. 設計の手順. 吊橋の設計の実施にあたっては,他形式の橋梁の場合に比べて,あらかじめ検討しておくべき事柄が多い。その理 由としては,構造の形態が2∴1で述べたごとく多岐にわたること.さらに,例えば風による動力学的立場からの断 面形状の検討とか,架設方法による影響の考慮などのように,広範な検討が必要なことが挙げられる.このほか,吊 橋は構造形式や構造規模などから,完成後何らかのモニュメンタルな構造物になることが多く,架設地点を含めた全 体の景観をあらかじめ検討しておく必要がある。したがって,計画の初期から全体の形状や構造物としてのバランス (中央径間・側径間の比率など)や主塔・補剛桁・アンカーブロックなど各部の形状などにも配慮と工夫が必要であ る(図−2」.6参照).また,維持管理のための設備も,構造が巨大で複雑なものが多いことを考慮して,将来の状態 を予測のうえ,あらかじめ組み込んでおくことも考える必要がある. ここで,吊橋の概略の設計手順を次頁に示す(図−2吋1.7).. 図−2.1.6. 解. 析. 2.2.1概. 説. 2。2. アンカーブロックに軽快感を考慮した場合(GreatBeltEast橋の例). (1)古典的理論 吊橋そのものの起源は非常に古いが,鉄材でできたケーブルと吊材で吊られた床を持つ近代吊橋が現れたのは,18 世紀後半になってからである.当時の吊橋の理論的裏付けは明確ではなく,おそらく経験的,実証的な積み重ねによ っていたものと思われる。 吊橋に関する最初の理論的な成果は,1823年のNavier87)の無補剛吊橋に対する考察である.それまでの吊橋は, 補剛桁の剛性はほとんど無視できるような構造形式であったことから,Navierはケーブルの形状や応力に及ぼす荷 重の影響を論じている。 無補剛吊橋がたわみやすく,揺れやすいことから19世紀後半には床組に剛性の高い桁を用いるようになってきた. この傾向に伴って理論の方も吊橋を剛構造とみなす弾性理論が無補剛吊橋の理論に代わって用いられるようになった。 Rankine72)は,補剛桁の作用をより一般的に論じた補剛吊橋の近似理論を生み出したが,この弾性理論をより汎用性 の高い解析理論として完成させたのが1906年のMelanの論文86)である. 弾性理論は,比較的剛性の高い中小支間の吊橋を対象として現在でも使用されることがあるが,補剛桁の剛性が低 い場合や支間長が長大である場合には,弾性理論で無視されている変形の影響が大きくなる.この点に着目して Ritt。r25)が1877年に,またそれとは別に1888年にMelan88)がいわゆるたわみ理論を発表した.たわみ理論は,Mois− seiffがManhattan橋の設計に用いて以来,今日まで長大吊橋の設計計算法として不動の地位を保ってきている.そ の間,多くの人々によって理論の改良がなされ,また解法についても種々の提案がなされてきた.なかでも,. M。iss。iff96)とSt。i。m。。80)の厳密解法,Bleichの線形化たわみ理論89),Peeryの影響線解法28)などは特筆されるべ これらにより鉛直面内荷重に対する吊橋固有の解析法は確立された. これらの解析法は,すべて吊橋を連続体として扱うもので,吊材が支聞方向に密に存在するという仮定から膜理論.

(7) 2.吊橋の設計. 17. 地形,地質,路線,桁下高さなどの外的条件. 構造形式比較実の作成 ・主塔位置支間割,主塔形式と高さ,ケーブル形式 とサグ量,補剛桁形式と断面,主要材料の検討, 下部工との関係,景観の検討. 構造形式の検討と選定 ・概略設計の実施,力学的性状,架設の難易度, 工期,経済性などの比較検討,景観,維持管理. 応答性状の変更 ・空力特性の改善 (断面形状の変更・整流装置等) ・減衰の増大(制振装置TDM等) ・国有値の変更(剛性等の変更). 基本諸元の決定および力学的性状の検討 ・支間長,主塔形状,ケーブル配置,補剛桁の 断面などの基本形式と基本寸法の決定 ・静力学的問題点の摘出 ・固有周期などの固有値解析. 耐風安定性の検討(風洞実験) ・主塔・補剛桁の断面形状と空力特性 ・設計風速内での有害な振動の有無 ・疲労破壊の照査 ・抗力係数などの確認. 有害な振動の発生. なし. 応答性状の変更 。構造形式の変更 ・支持条件の変更 ・死荷重の低減など. 耐震性の検討(動的応答解析) ・予想される地震動に対する応答挙動 ・主要部材の強度確認 ・地震時の下部工に作用する慣性力 ・支承の移動量と支持条件. 十分. 基本構造形式の決定. 動力学的設計 括荷重の動的影響 ・上載動荷重による応答の影響確認 耐風性 完成系での耐風安定性の検討 。固有振動数などの固有値の確認 ・抗力係数の確認 ・制振,整流装置の設計 架設系での耐風安定性の検討 ・風洞実験 耐震性 応答解析(支持構造を含む) ・応答部材力による強度確認. 静力学的設計 設計断面力および変形量の算定 ・完成系に対するもの ・架設工法に基づき種々の状態に対するもの 部材断面の決定 ・主塔の有効座屈長,断面の有効幅など ・ケーブル断面と定着部など ・補剛桁断面 ・ケーブルアンカーの方法 幾何学的非線形性の検討 主要部材の耐荷力の検討 細部応力の検討 架設系での変形と部材力に基づく断面確認. 検証載荷実験(架設完了後) 静荷重に対する応答 ・変形 ・部材力 動荷重に対する応答 ・固有振動・減衰・振動モードなど. 図−2」.7. 概略の設計手順.

(8) 吊橋一技術とその変遷−. 18. と呼ばれる.また,吊橋の弾性理論は次の5つの仮定を前提としている・ (a)ケーブルは曲げに抵抗しない完全可操性を持つ. (b)補剛桁は水平でかつ直線をなし,その断面二次モーメントは一定である・また全長をケーブルに連結され た一つの梁と考える. (。)補剛桁およびケーブルの死荷重は等分布であり,したがってケーブルの形状は放物線である。 (d)ケーブルの形状は荷重戟荷後も不変である。 (。)死荷重はすべてケーブルで受け,補剛桁には応力を生じさせないものとする。補剛桁は括荷重および温度 変化によってのみ応力を生じるものとする. たわみ理論においても解析上の仮定は,(d)の仮定に対してたわみの影響を考慮する点を除けば弾性理論における ものと同じである.ただし,たわみを考慮するといってもせん断力による変形や吊材の伸縮は無視している・また, 吊材の傾きによって生じる吊材張力の水平成分の影響も無視される. 一方,支間長の長大化に伴って,補剛桁の設計においては鉛直面内荷重だけでなく風などの横方向水平荷重も支配 的な要因になってくる.この吊橋の面外解析を初めて取り扱ったのがMoisseiffら73)で,現在でもこの方法に基づい て解析されることが多い.Moisseiffらの方法は,傾斜した吊材の張力の水平分力によってケーブルと補剛桁とに荷 重が分配されるものと考え,ケーブルと補剛桁の水平変位に関する微分方程式を解くものである・鉛直面内解析と同 様の膜理論で,弾性理論やたわみ理論のような解析上の仮定を持つ. (2)現代の解析法 吊橋の静的解析に関する古典的理論は,20世紀の前半までにほぼ確立された感がある合. しかしながら,Severn橋. の斜めハンガーに代表されるような古典的吊橋理論の適用範囲を超える特殊な吊橋構造の出現は,これまでの膜理論 から脱却して吊橋をより忠実に離散的に解析しようとする多くの研究を生みだした。West−Robinson76)はケーブルの 鉛直・水平両方向変位を厳密に評価するとともに吊材の伸縮を考慮した近代膜理論を提案し,Pugsley85)は離散吊材 理論の先駆として吊材力を未知量に取った応力法を提案した・また,倉西70),75)は補剛桁に関する3連モーメント定 理,ケーブル格点における釣合い式,ケーブル全長の適合条件式を行列表示し,変断面連続補剛桁をもつ吊橋を解析 している. 一方,コンピュータの急速な発達とマトリックス構造解析法の非線形問題における成果は,吊橋を離散的な骨組構 造にモデル化して有限変位理論によって解析する方法を一般化させた.有限要素法によって幾何学的非線形問題を最 初に解析したのは,1960年のTurnerら84)の研究であるとされているが,吊橋を平面骨組構造物と考えマトリックス 解析を導入したのはBr。tt。n24)が最初である.Brottonは補剛桁に拘束格点力を作用させ,Relaxation法を適用して拘 束解除の繰返し計算を収束させた.Severn橋の架設中の計算にも応用されてよい結果を得ている。 1966年にはSa。fan26)とT。ZCan23)とがほぼ同時に,一般マトリックス変位法を吊橋の鉛直面内変位解析に適用した 論文を発表した.いずれもNewton−R叩hson法や独自の繰返し計算法により節点における不釣合い力を消去する非線 形解析を導入している.これらの解析法により,膜理論の基本仮定はもちろん,それまでの吊材離散理論に含まれて いるモデル化の仮定をすべて解除した一般化解析法が確立された. 現在ではマトリックス変位法は,吊橋の鉛直面内解析のみならず,立体解析,座屈解析,固有振動解析,さらには 誤差解析などほとんどすべての解析に用いられている.また,解析法に組み込まれる接線剛性マトリックスの誘導は, 要素内の変位状態を多項式で補間し,そのひずみエネルギーから仮想仕事の原理を用いて実行される・ 接線剛性マトリックスによって構成された荷重と変位の関係式は非線形であるので,その解法としては,荷重増分 法とN。Wt。。Raphs。。法による反復法とを併用した混合法が一般的に用いられる申荷重増分法は,荷重を分割して各 増分段階ごとに修正して構成した接線剛性マトリックスを用いて増分形で解き進める方法であるが,各増分段階で不 釣合い力が生じるので増分を非常に小さくとらない限り誤差が累積する.そこで,大勢は各増分ごとにNewton−.

(9) 19 2.吊橋の設計. Raphson法またはその変形に属する方法によって収束解を求めながら解析するようになっている・. 2.2.2. 古典的吊情理論. (1)弾性理論とたわみ理論 弾性理論とたわみ理論との違いは,補剛桁に生じる曲げモーメントの式により,明確に理解することができる.図 −2.2.1に示すような単純支持された補剛桁において,死荷重Ⅷあるいは括荷重♪によるケーブルの水平張力を吼あ るいは範とすると,補剛桁の曲げモーメントはそれぞれの理論に対して次式で与えられる。 弾性理論 (1). 〃(∬)=鳩(∬)一箪グ(∬). たわみ理論 〟(∬)=鳩(∬ト鋤(∬卜(私+穐)叩(∬). (2). ここで,鳩(∬)は活荷重少による単純梁としての曲げモーメントを示し,叩(∬)は括荷重によるたわみを表している. 両式の右辺第2項は,ケーブルの水平張力特による曲げモーメントの低減を意味し,桁橋と吊橋との違いを表して いる.たわみ理論の式(2)では,弾性理論の式(1)に対して右辺第3項が加えられている.この第3項は,吊橋の原形 の変化(たわみ)が与える曲げモーメントの低減量で,このケーブルの水平張力に死荷重による水平張力を含むこと が重要な意味を持っている.また,第3項の穐叩(∬)は明らかに非線形項で,このために補剛桁の曲げモーメントは 活荷重クに比例しない. 弾性理論による解析については他の文献に譲るとして,たわみ理論による解析は,Melan88)によって示された次の 補剛桁の基礎微分方程式を解くことになる。 d4り(∬). d2プ. 甜「蒜十−(軌+坊)一色1吐一馬詔=抽. (3). d∬2. ケーブルの最初の形状は放物線と仮定しているので,図−2.2.1のように塔頂を座標原点にとれば,. γ(∬)=掌∬(仁∬). (4). よって,式(3)に現れるッの二階微分は, d2グ d∬2=. 8/. (5). ヱ2. となり,式(3)は次のように書き改められる. d4り(∬). d2叩(∬). E卜訂−(軋+穐). d∬2. =♪(∬卜者均(6). 式(6)は,曲げ剛性EJを有する補剛桁が軸方向引張力(乱+坊)を 受けた状態に,括荷重少と上向きの等分布荷重(8ノ/Z2)均を負担して 一鉢・れ細. いる状態を示すものである.そこで,吊橋を図−2.2−2に示すような. 仇+筏. 「軸方向引張力を受ける梁」に置き換えて解析することがしばしば行 われる.図−2.2.2の置換梁は,同図(b)および(c)に分解して解き, ■. ヵ( カ. 最後にこれらの結果を重ね合わせる.このとき,仇=吼+穐=一定 として式(6)を線形化することによって,吊橋のたわみ,ケーブル張 力,曲げモーメントなどの影響線を得ることができる. 基礎微分方程式(3)は2つの未知数叩(∬),塙を含むから,これら の間の関係を示すもう1つの式が必要である.このために,ケーブル. 、与. 叫牽. )印加〆〆〆〆〆一′. 〃2 J. 図−2】2.1吊橋の鉛直荷重と変形.

(10) 吊橋一技術とその変遷∬. 20. 0 8 0 7 0 6 0 5 0 4 0 3. ︵彗鮎蝿辞=U. ん断 力 \.. 0 2 0 1. ′ //、 \ 曲げモーメント / // / //. 0. 0. 0.1. 0.2. 0.3. 0.4. (c)島十−. 吊橋の置換梁. 0.6. 0.7. s=ナ屠. 研ワ方. 図−2.2.2. 0.5. 図−2.2−3. 弾性理論への補正曲線(主径間用). 定着点間距離が不動であるという条件から求まる次のケーブル方程式が用いられる.. 譜ごJ′sec3紬+豊〃胸=0. (7). ここで,且cAcはケーブルの伸び剛性で,車はケーブルの任意の1点(∬,プ)の傾斜角である.たわみ理論による の計算は,式(3)と式(7)とを連立させて解くことである. 弾性理論とたわみ理論との結果の差異は,たわみの増加と死荷重によるケーブル張力の増加に伴って大きくなる. したがって支間長の増大,死荷重の増大はその差異を大きくし,補剛桁の剛性即およびケーブルのサグ/の増大は. その差異を小さくする.Steinman83),Bakerはたわみ理論による応力と弾性理論による応力との比率Cを知るため パラメーターとして,次のような補剛係数(Stiffness−factor)sを導入している. EJ l. s=…. 吼=宰. (8). 比率Cを縦軸にとりぶを横軸にとった図−2.2.3のような補正曲線が与えられている.図−2.2.3は主径間に. 括荷重による支間1/4点の最大正曲げモーメントおよび端部の最大せん断力に対する補正率を示している.これよ. ぶの値が小さい吊橋,すなわち長大吊橋では弾性理論による曲げモーメントやせん断力は非常に過大な結果を与え. ことがわかる.例えば,支間長が1000mを超える吊橋ではぶの値は0.1以下であるから,最大曲げモーメントは弾 性理論による値の30%以下となる. (2)線形化たわみ理論と影響線解法 長大吊橋では,活荷重少が死荷重棚に比べて小さいので,括荷重による ケーブル張力巧も死荷重によるケーブル張力乱に比較して小さくなる。 このように,軌》鞠と考えられる条件のもとでは,近似的に軋+均≒孔 とおくことができるので式(6)は線形となり,ケーブル張力特およびたわ み叩はともに括荷重クに比例することになる.Bleich89)により提案されたこ の線形化たわみ理論によって得られる結果は,厳密なたわみ理論と弾性理論 による結果との中間に位置し,〆Ⅷが小さい場合は十分な精度を有する。 Bleichはこうした関係を説明するために,図−2.2.4のグラフを示しており, 図. −2.2。4 〆棚<2/5ならば線形化たわみ理論を用いてもよいであろうと述べている. 荷重とたわみの関係.

(11) 2.吊橋の設計. 21. 一方,軋十均*=一定として均*を実際の状態に近いように仮定できれば,線形化たわみ理論はさらに精度を高め ることができる.こうした考え方を基に,線形化たわみ理論を拡張したのが,Peery28)の影響線解法であり,図 −212.4において破線で示した直線4に相当する.これは,鴎の最小値(活荷重無我荷の場合)と最大値(晴荷重全 載荷の場合)との2つの影響線から求めた計算結果に内挿法を適用するもので,線形化による誤差を低減し,計算結 果の精度を向上させることができるので,補剛桁の設計計算に多用されてきた, (3)横方向水平荷重に対する面夕摘草析法 吊橋に風や地震による横方向の荷重が作用すると,その荷重はケーブルと補剛桁によって支持され,その反力が塔 柱と橋台に伝達される。補剛桁とケーブルとではそれぞれが受ける横荷重の大きさや横方向の剛性にかなり違いがあ るために,両者の水平変位に差が生じ,その結果,傾斜した吊材を通して横荷重が移行する。横荷重については,普 通,ケーブルに作用するものに比べて補剛桁に作用するものの方がはるかに大きい。また,横方向の剛性についても, 支間が長大で主構間隔が狭い吊橋ほど,補剛桁の剛性よりもケーブルの剛性の方が相対的に大きくなる.したがって, 補剛桁に作用する横荷重のケーブルへの分配が大きくなる。 この間題を初めて解析したのがMoisseiffら73)で,現在でもこの方法に基づいて面外解析が行われることが多い. Moisseiffらの方法には,均等分配法と弾性分配法とがあり,前者は繰返し計算が不要な簡略法で,支間長が500m 程度までは十分な精度を持つ.それ以上の長大橋の場合は,後者の方法がよいとされている。 まず,均等分配法は,補剛桁から吊材を通してケーブルに移行する荷重の大きさを全支間にわたり一定であると仮 定する.これにより,ケーブルの水平たわみは放物線となり,ケーブルは区巨獣2ヨ5に示すように,両端の塔頂サド ルを結ぶ直線のまわりに平面のまま回転する.ケーブルと補剛桁に作用する横荷重をそれぞれ九,みとし,補剛桁か らケーブルに移行する荷重をγとすれば,ケーブルの支間中央点の水平変位は, (♪。十γ)z2 祝c ̄. (9). 8月 ̄. となる.ここに,ガは鉛直荷重によるケーブルの水平張力である.一方,補剛桁の支間中央の水平変位は,補剛桁の 横方向の曲げ剛性を且Jとすれば次式で与えられる。 5(♪才一γ)Z4. 視f=. (10). 384且J. ところで,横荷重によりたわんだ補剛桁も図−2.2.5のようにケーブルの平面上にあると仮定すれば, ん。. 視。. (11) れ吉. 保と. の関係が成り立つので,式(9),(10),(11)の3式より,次式のように補剛桁からケーーブルへ移行する荷重が求めら れる.. (a)風荷重の分布図. (b)水平変位図 図−2.2。5. 補剛桁. 均等分配法における荷重分担と水平変位. (c)補剛桁とケーブルとの水平変位の関係.

(12) 吊橋一技術とその変遷−. 22. γ=. 九。g2年れ−9.6且Jん古♪。. (12). 吼ヱ2月 ̄+9.6且Jん才. 均等分配法における補剛桁とケーブルとが同じ平面上で変位するという仮定は,吊材の長さが実際は変化すること から満足されていない.、そこで,さらに精度を高めるためには弾性分配法が用いられる. 弾性分配法は,まずケーブルと補剛桁との荷重分担を一応仮定しておいて,その荷重分担によりそれぞれの水平変 位を計算する.そして,この水平変位が補剛桁とケーブルの水平変位に関する構造系の幾何学的条件を満足するか否 かを検討して,先の荷重分担の仮定の妥当性を確かめる。したがって,何回かの繰返し計算を必要とする. こうした繰返し計算を避けて,多元連立一次方程式によって一挙に荷重分配を決定する方法が,Ellisら92)によっ て考案されている.この方法は,補剛桁を2弗等分し,等分された補剛桁の各々が受け持つ横荷重を未知数として, これらを変位と移行荷重の関係から導かれる連立方程式によって求めようという方法である。 (4)ねじり解析法 吊橋に偏心荷重が作用したときの挙動を全方向の変形を 考慮して立体的に解析することはきわめて難しいので,荷 重をねじり荷重に限定して鉛直面内の変形に置き換えたね じり解析が行われることが多い. 補剛桁のせん断中心と図心とは一致するものとし,また ケーブルと補剛桁の横変位の効果を無視する.すると,ね じり荷重は補剛桁のねじり剛性と左右2面のケーブルの復 元力によって受け持たれる.図−2.2.6に示すように補剛 桁にねじり角¢が生じたときの左右のケーブルの鉛直方 向変位牝,γ月は,桁の断面変形が生じないものとすれば 図−2.2.6. 次式で与えられる.. 補剛桁のねじり変形とケーブルの鉛直方向変位. γェ(∬)=−‡拓),γ忍(∬)=‡拍) ここに,わはケーブル間隔である. 式(13)によって,補剛桁のねじり変形がケーブルの鉛直方向変位に変換できるので,これを鉛直面内解析の基礎微 分方程式(3)で表せばケーブルの復元力が受け持つねじりモーメントが求められる。これを補剛桁を単純桁とした場 合のそりねじりの基本式に代入することによって,吊橋のねじりの基礎微分方程式が次式のように得られる. d4¢(∬) ECぴ. dズ4. ′(,.わ2,,、d2¢(カ. ー(U十÷軌) 棚ノ d㌔. \Uリ12. =刑f(∬卜者略. (14). ここに,‰は死荷重時のケーブル水平張力,仇は偏心荷重によるねじりモーメント肌Jによって生じる各面のケー ブル水平張力である.また,且Cαは補剛桁のそりねじり剛性,Uはねじり剛性を表す. ケーブル方程式についても式(7)の鉛直変位をねじり変形に置き換えたものが得られるので,式(14)と連立させて 解けばよい. 式(14)はBleich89)がねじり振動を対象に誘導したものであるが,静的なねじり解析にも用いられている.最近では, 道路鉄道併用吊橋などで鉄道車両の偏心荷重によるねじり荷重成分が重要視されるようになって,二次のせん断変形 や断面変形を考慮した厳密なねじり解析も行われるようになった. (5)固有振動解析法 吊橋は,他の橋梁形式に比べて剛性が低く変形しやすい構造物であることから,風や地震あるいは走行車両に対す る動的応答についても,かなり特異な点がある。吊橋の振動性状を把握するうえで,最も基本となるのが固有振動性.

(13) 2.吊橋の設計. 23. 状であり,古典的理論においては,鉛直たわみ,ねじり,横たわみの固有振動に分けて個別に扱われてきた.厳密に は,これらの各成分は達成して起こる可能性もあるが,微小振幅の範囲では実用上は無視できるとされている. 鉛直たわみ振動とねじり振動については,たわみ理論における基礎微分方程式(3)および(14)の荷重項を慣性力の 項で置き換えることによって,それぞれの固有振動の方程式が求められる.Bleich89)は,振動によるケーブル張力の 増分がわずかであることを利用して,ケーブル張力を死荷重時の張力軋として線形化して解きやすくしたうえで, エネルギー法を用いて各種形式の吊橋に対する固有振動数と振動モードとを求めている. 鉛直たわみ振動についていえば,対称振動モードと逆対称振動モードとでは,ケーブルの弾性変形の有無によって 異なる性状を示し,その解法も異なる.逆対称振動モードの場合は,次の無次元パラメーター (15). の関数として比較的に簡単に求められるが,村称振動モードの場合はケーブルの剛性に関するパラメーターも関係し て多少複雑なものになる.しかし,いずれの場合も支間長が非常に大きい(数百m以上)吊橋では,固有振動数は czの値には無関係にケーブルサグ/の平方根に逆比例する特徴がある隼 横たわみ振動については,実際の吊橋において発生した例はほとんどなく,仮に発生しても,その振幅が大きくな れば,鉛直たわみ振動やねじり振動に移行してしまうことが予想される.横たわみ振動の研究としては伊藤91)が,鉛 直たわみ,およびねじり振動と同様の諸仮定のもとで微小振動の方程式を求め,補剛桁とケーブルとの達成振動を考 慮した近似解を与えている。. 2.2。3. 現代の解析法. (1)有限変位解析法 骨組構造物の有限変位理論による非線形解析法については,これまでに多くの研究がなされ,数多くの異なった理 論が提案されているが,剛体変位を分離して解析するかしないかにより,2つの流れがある79)一つは剛体変位を分 離することなく,変形に関与する変位と関与しない変位とを一括して取り扱う全ラグランジュ定式化78)で,Total Lagrangianformulation,Lagragianformulation,Directformulationなどと呼ばれている.もう一方は,剛体変位を分離 して解析する更新ラグランジュ定式化71),93)で,UpdatedLagrangianformulation,Eulerianformulation,EulerianLag− rangianformulation,Indirectformulation,Movingcoordinatesystemなどと呼ばれている. ここでは,現在広く用いられている汎用構造解析プログラムで採用されている更新ラグランジュ定式化に基づき, 有限変位理論による非線形解析法の概要を述べる. まず,仮想仕事の原理を用いて接線剛性マトリックスを誘導する71).このとき部材は等断面の直線部材により構成 されているものとし,ひずみと応力の関係は線形であるとする.部材座標は,図n212,7に示すように∬軸を垂心軸. に,プ軸をこれに直交する方向にとり直交右手系をなすも のとする.これらの部材軸方向の変位成分を祝,γとする と,部材の軸方向ひずみ£∬は次式で表される。. ど∬=意十‡(意)2−プ意. (16). ひずみエネルギーの計算には,せん断ひずみによる部分は 無視することとすると,g∬によるひずみエネルギーUは b′. 次のようになる.. \\∬′. 図−2H2】7. 部材座標系と部材端変位.

(14) 吊橋一技術とその変遷−. 24. 且. ⊥ど∬2dV=言い窓+‡(意)2−グ豊)2dV. U=2. 且 2. 〃〈(意)2十(意)2プ2+‡(窓)4−2意豊プ d2γ d∬2. このうち,. (窓)2什宝(窓)2)d∬dA. (17). ルdAの項は零になることに注意して断面積Aについて積分すれば, (18). u=筈J∠〈(窓)2+窓(窓)2十‡(窓)4+i(豊)2)d∬ となる.次に,有限要素法の手法に従って部材内の変位関数を次のように仮定する。 祝=(1一言)祝α+吉保わ γ=(1−3吉2+2吉3)γα+(吉−2吉2+吉3)畑α+(3吉2−2吉3)γゎ+(一書2+吉3)z∂ゎ. ここに,吉=∬/〜である.. したがって,式(18)で与えられるひずみエネルギーは部材端変位∂T=(視α,γα,∂α,勘,γゐ,∂ゎ)の関数として表す ことができる.このひずみエネルギー式に仮想仕事の原理から,Castiglianoの第一定理を適用すると,部材端力∫ と材端変位dとの関係式が次のように求められる. ∫=丘(d)・d=(良0+丘1(d)十た2(d))・♂. (21). ここに,&0は微小変位理論における剛性マトリックスであり,た1(♂)および&2(援)は,それぞれ一次および二次 の非線形項を含む剛性マトリックスである.式(21)の増分表示は次のようになり,接線剛性マトリックス△舟(♂)が 求まる. △J=△た(d)・△d=(舟。+2廠1(d)十3鹿2(d)卜△d. (22). 種々の境界条件に対する剛性マトリックスの具体的な内容については文献71)に,さらに立体骨組部材の剛性マトリ ックスについては,文献93)などに示されている. 式(19),(20)で仮定した変位関数は,微小変位理論によるものであるから,部材端変位を変形後の部材座標系で表 して剛体変位を除去する必要がある.このために,式中に含まれる回転角は節点回転角∂ではなくて,接線回転角T を用いる.この手法により,部材回転角が大きくても接線回転角が微小である限り式(19),(20)の近似は許されるし, さらに,部材の分割数を多くすることにより接線回転角を小さくすることができる.こうした手法により,式(21)は 大変形問題にも十分適用できるものとなる. 式(21)の非線形の基礎方程式の解法97)としては,反復法と荷重増分法とを併用した混合法が用いられる.Newton−. Raphson法による反復計算は図−2.2.8に示すようで,収 束計算の過程で△dが補正されるたびに接線剛性マトリッ クス△たをつくり変えて不釣合い力を求めながら,A動が. 』々2 l 接 線 剛 性 マ トリ ッ ク ス ( 反復第1 回目) 』丘1. 零とみなせる程度まで繰返し計算を行う.全荷重に対する 解を1回の荷重増分で求められることもあるが,繰返し回. 』′ 」. 数が多くなったり収束が悪いことがある.そのような場合 には,荷重を漸増させて各々の荷重増分に対して反復法を 適用して非線形解を求めてゆくのが一般的である. (2)線形化有限変位解析法 吊橋の主構造の設計で行われる構造計算では,幾何学的 非線形性の影響の度合いを考慮したうえで,有限変位理論. 』d 0. ブ. 図−2.2.8. d+』d. 変位. 混合法による非線形方程式の解法.

(15) 2.吊橋の設計. 25. と線形化有限変位理論とを使い分ける場合が多い.古典的な線形化たわみ理論によっても理解できるように,長大吊 橋になると括荷重が死荷重に比べて小さくなるので,死荷重によるケーブル張力で線形化した解析でも十分な精度を 有する. また,横方向水平荷重に対する面外解析やねじり解析などでは,荷重増加に伴う幾何学的な非線形性がほとんどな いことから,線形化有限変位理論が用いられる.さらに,動的応答解析に必要な固有振動解析においても同様の取扱 いがなされている. 線形化有限変位理論とは,死荷重時の部材の初期内力による幾何剛性のみを考慮した線形解析のことで,初期内力 を考慮する部材としては,ケーブル,吊材,リンク部材,主塔などである. 線形化解析に適用される近似的な接線剛性マトリックスは,式(18)のひずみエネルギーのうち,高次の項1/4 (血/d∬)4を無視して,その後は同様に仮想仕事の原理を用いれば次のように誘導できる. ∫=〈た。十舟g(d)卜d. (23). ここに,克0は微小変位理論における剛性マトリックスで,たg(d)は一次の非線形項を含む剛性マトリックスである. たg(d)における非線形項を次式 (24). Ⅳ。=芋(視み岬祝α) を用いて初期内力Ⅳ0に置き換えて線形化すれば幾何学的剛性マトリックス&gは次のようになる。 0. 0. 0. 0. か1. 且1. 0. −β1. 0. (25). 0. 且1 岬且1−Cl. Fl O. 鹿g=苧. OOO ヱ)1一旦1. Symmetric. れ. ここに,. β1=‡,且1=1呂,n=意た. Gl=芸. (26). 立体骨組部材に対する幾何学的剛性マトリックスも同様の形で求められ,文献13)などに示されている。また,ピ. ン結合棒要素の場合の幾何学的剛性マトリックス克gは,部材端変位∂T=(祝α,γα,祝わ,γゎ)に村して次のようになる 一. O. 〇. O. 0. 1. 〇. 1. 0. たg=等. (27). 0. 0. 0. 0. 0. −1. 0. 1. 吊橋において初期内力を考慮する部材のほとんどは,ケーブルや吊材あるいはリンク部材などの棒部材であるから, 式(27)の簡単な剛性マトリックスで解析できる. (3)弾性座屈解析 塔の座屈設計において有効座屈長を決定するために弾性座屈解析が適用される場合がある.ここでは,弾性座屈解 析の一般的原理について述べる. 初期の荷重∫(Å=1)における内力による幾何学的剛性マトリックス&g(Ⅳ0)は,荷重∫がÅ倍されるとそれに比 例して増大するが,弾性剛性マトリックス丘0は荷重や変位とは無関係に一定として扱えるものである.したがって 式(23)は次のように表せるので,.

(16) 吊橋一技術とその変遷−. 26. 好=(桁+賊g(Ⅳ0))・d. (28). 変位dは次式のように得られる. (29). d=(丘0十Åたg(Ⅳ。)) ̄1村. 道マトリックスの定義は,随伴マトリックスを係数行列式で除したものであるから, (30). Iた。十Åたg(Ⅳ。)l=0. のような場合には,変位dは無限大になることに注意すれば,式(30)におけるÅの最小値はモデル化した構造物の座 屈荷重を与えることがわかる.これをÅ。γで表せば,座屈荷重は (31). ′。γ=Å。才. として与えられ,座屈モードも式(29)により求まる。. (4)固有振動解析 古典的理論においては,吊橋の振動性状を鉛直たわみ,ねじり,横たわみの3つに分けて扱い,それぞれの固有振 動方程式を工夫して解いていたが,現在ではマトリックス変位法によって,ほとんどの制約条件なしに一律に解析が 可能である.ただし,幾何剛性については,古典的理論と同様に死荷重時の初期内力のみを考慮して線形化されてい る.ここでは,マトリックス変位法における固有振動解析の概要を述べる. 全体構造系の質量マトリックスを〃,変位dの時間に関する2回微分をぷとすると,構造物の自由振動に関する 運動方程式は次式で与えられる. 財∂十〈た。十たg(Ⅳ。))d=0. (32). 自由振動は調和振動であるから,変位dを次式のように書くことができる. (33). d=即刷. 上式中,ヴは変位dの振幅を表す列マトリックス,. は固有円振動数,才は時間である。式(32)に式(33)を代入して. g勅を消去すると,自由振動系の運動方程式である次式が求まる. 仁Ⅷ2〟+た。+たg(Ⅳ。))ヴ=0. (34). 次の条件が成り立つとき,式(34)にはヴの0でない解が存在する. トり2〟+た。+五g(Ⅳ。)l=0. (35). 式(35)の行列式を展開すると,〃2に関して弗次の多項式が得られ,その根が固有円振動数である。固有円振動数が 得られれば,固有振動モードも式(34)により求められる. (5)モデル化の手法 補剛桁がトラス桁か箱桁かでモデル化の手法も当然異なる.補剛桁が箱桁の場合は,必然的に補剛桁を1本の梁部 材に置き換えてモデル化するが,補剛桁がトラス桁の場合は1本の梁部材に置き換える場合とトラス構造のままでモ デル化する場合とがある.また,平面モデルとするか立体モデルとするかは,解析の内容や着目する部位によって使 い分けられている. 補剛桁を梁部材でモデル化する場合,軸線を補剛桁の中立軸にとるが,立体モデルでハンガー取付点との偏心を考 慮する必要のある場合は,図−2−2.9のような魚骨モデルが用いられる.こうした魚骨モデルは,横荷重やねじり荷 重に対する解析に用いられることが多いが,梁部材の断面. 定数の設定には注意しなければならない.特にトラス桁の 場合,トラス構造の連続体への換算と,逆に連続体の断面 力をトラス部材力へ変換する計算が必要になる.トラス構 造の剛性を正しく評価して,トラス部材力を正確に求める ためには,トラス構面のせん断変形や横断面の変形を考慮 する必要がある.. 」⇔」 図−2.2.9. 魚骨モデル.

(17) 2.吊橋の設計. 27. 表叫2.2.1吊橋のモデル化の現状 平面モデル. 立体 モデル. ハ ンガ ー全格点 /. ハ ンガ ー全格 点. トラスモ デル 〃. 王. で. 買. 工. 横構. 甥. トラス. 主横 トラス 補剛桁 の モデル化 ハ ンガー全格 点 /. ハ ンガー全格点. 棒モデ ル △′. 上. 解析 理論. 忘 部材. 有 限変位 理論 形状決定. 静的 な荷重分類. 地 震応答解析. 1. 面 内荷重. △. 棒部材. 線形 化有 限変位理論. 死荷 重 鉛直方向荷重 橋軸方向水平荷 重 温度 ,支点移動 製作架設誤差. 面 内解析 ( ただ し,解析理論 は線形化 有 限変位理論). ね じり荷 重. 死荷 重,括荷重の 偏 載 によるね じり 荷重. 面外荷重. 風荷 重 などの橋軸 直角方向水平荷重. 面外解析. せん断変形を考慮した解析は,式(21)または式(23)における剛性マトリックス杭に,せん断有効断面積によって 与えられるせん断変形のパラメーター95)を含むものを用いればよい.せん断有効断面積は,トラス構面を等価なせん 断剛性を有する薄板に換算して94)求められる. ねじりやずれ変形に村しては,補剛トラスを箱型の薄肉断面で近似して断面が剛でない場合のVlasovの薄肉弾性 梁理論90)によらなければならないが,実務設計の段階では,断面が剛のSt.Venantのねじり解析で代用する場合が多 い.これは,汎用構造解析プログラムではVlasovの薄肉弾性梁理論に基づく解析が一般化されていないことによる. 補剛桁の詳細設計に限定した場合,現在一般的に行われているモデル化の現状は表町2。2日1に示すようである。こ うしたモデル化の手法については,コンピュータの容量の増大と解析プログラムの発達により,実際の構造物により 忠実なモデル化がなされる傾向にある.事実,世界最大となる明石海峡大橋の補剛桁の詳細設計においては,補剛桁 を梁部材に置き換えたモデルは一切用いられておらず,活荷重の影響線戟荷や動的解析にも立体トラスモデルが用い られている.. (6)架設時の解析法 架設系の解析を行う目的は,架設の各段階で吊橋に生じる変形や部材力などをあらかじめ算出し,架設計画の検討 に必要な諸量を求めることにある.特に,最近のわが国の吊橋の補剛桁は,逐次剛結工法によって架設されることが 多いが,このとき,補剛桁の各部材やハンガーに完成時を上回る部材力が発生する場合があるので,架設計画にあた ってはこれらへの対策を講じる必要がある. 補剛桁の架設系の解析法としては,いわゆる解体計算が一般的に行われている.これは図一2.2.10に示すように, まず基本となる吊橋完成系を用意しておき,この完成系から,着目する架設状態において取り付けられていない部材.

(18) 吊橋一技術とその変遷−. 28. や荷重を除去し,さらに架設機材の重量を加えた系で釣合 い計算を行うものである。基本となる完成系については, 部材の除去が容易に行えるように,補剛桁が無応力の状態. 全死荷重. (通常の吊橋では最終完成系)が選ばれる.解体計算の解 (a)完成系. 析理論としては,完成系からの変位量が大きいことから有 限変位理論が用いられる。一方,架設時の風や地震などの 面外荷重に対する解析は,解体計算で求められた架設系を 立体モデルに置き換えて線形化有限変位解析が行われるこ とが多い. 補剛桁の架設時には,完成系では生じないような過大な 変形のために,次のような特殊な解析を必要とする場合が ある.. 架設時に載らない死荷重の連載 (b)架設系. a)ハンガーの非抗庄処理. 図叫2】2.10. 架設時の解体計算. 架設途上では,一時的にハンガー張力が減少してハン ガーが緩んでしまう場合があるが,その可能性のある部材はあらかじめ非抗圧部材として定義しておき,反復計算ス テップにおいて適切な判定を行う必要がある. b)主ケーブルの二次曲げ 補剛桁の架設先端部では,主ケーブルに大きな角折れが生じるが,長大吊橋の主ケーブルは太径断面となっている ので二次曲げの影響が無視できない場合がある.平行線ケーブルの二次曲げ剛性については,Wyatt82)の理論に基づ いて一般の骨組解析に組み込める手法77)も考案されている. c)ハンガーの引込計算 補剛桁を逐次剛結工法によって架設する場合に,架設先端のハンガー張力が過大になるので,この過応力を後方の 2〜3格点のハンガーに分散させるための同調計算が必要になる.先端部ハンガーの引込量と引込力との関係(影響 値)を用いて各ハンガーの引込調整量を決定する.. 2.3. 部材設計. 2.3.1概. 説. 吊橋は佃の橋梁形式と比べて可挨性に富んだ構造特性を持っているが,材札設計理論,コンピュータ技術の進歩 に支えられて,その適用支間は飛躍的に伸びている。一方で,構造概念の単純さに由来する安定性から山間部におけ る簡易な歩道橋や,優美な景観性からモニュメンタルな橋として中小規模の吊橋が建設されている。 一般の道路橋の設計に適用されている「道路橋示方書」の適用範囲は支間200m以下19)であり,吊橋は通常これを 超える支間に計画されることが多い.したがって,吊橋の設計に全面的に「道示」を適用することには無理があるた め,設計にあたっては,個々の計画ごとに十分な検討に基づいた独自の設計基準が作成されるのが一般的である・ わが国の長大吊橋の原点ともされる若戸大橋の調査設計にあたっては,昭和32年,日本道路公団内に外部学識経 験者よりなる技術審議会が設置され,10回に及ぶ審議を経て設計に移されている.また,関門橋は,昭和39年より 昭和41年まで建設省による調査,昭和42年,43年と日本道路公団が引き続き調査を行い関門橋技術委貞会での審 議を行う形で設計が確立されている. 現在の長大吊橋の設計に際してしばしば参照されるのは本州四国連絡橋公団の基準類であるが,これらは,昭和 37年に建設省と日本国有鉄道からの委託によって土木学会内に本州四国連絡橋技術調査委員会が設置され,昭和42.

(19) 2.吊橋の設計. 29. 年に道路橋,鉄道橋の技術的可能性に関する見解,材札上下部構造の設計示万苦,耐風設計耐震設計のための設 計指針,その他の設計,施工の基本となる事項について報告書がまとめられている旬 一方,山間部の中小吊橋を対象とした「/ト規模吊橋指針8同解説」が,不十分な維持管理等による事故の発生を契 期に日本道路協会で検討され,「道示」を補完する形で昭和59年に基準として制定されるに至っている117). 2.3。2. 荷重および構造解析. 吊橋の設計に考慮される荷重の種類や載荷方法は,支間長,架橋地点の地域特性,橋梁の重要度や道路橋,鉄道橋 の別などに対して十分な検討のうえ決定されなければならない.吊橋の設計荷重の特色として全荷重に占める死荷重 の比率が大きいため,死荷重は精度よく仮定されることが重要である。また,長大吊橋においては,活荷重が満載さ れることはごくまれであるため,幅員,支間によって低減をしている。わが国は台風の常襲地帯であり,世界有数の 地震帯でもある.長大吊橋では,交通供用状態における地震も想定されることや,TacomaNarrows橋のように,か なりの低風速下で落橋に至った事故もあり,その構造特性から風,地震に対して十分を安全性を確保することが最も 重要な課題となってきた.また,最近の吊橋の長大化に伴って,主塔,補剛桁,ケーブルの製作誤差,架設誤差が設 計断面カヤ橋体の変位に影響を及ぼすため,これらを荷重と同様に扱うのが一般的となってきている。 設計を実施するうえでの構造解析は,現在では,設計断面力を求めるための有限変位解帆応力集中や局部応力に 対する安全性を検証するFEM解析,座屈安定性を検討するための弾性座屈解析,弾塑性有限変位解析,動的安定性 を検討するための固有振動数解析や動的応答解析を中心として,コンピュータの利用なくしては不可能であり,これ らの解析をいかに効率よく進めるかが設計手順を考えるうえで,重要な要素となっている。 吊橋全体の構造解析理論は,古くは弾性理論より始まっているが,最近のわが国の吊橋の設計では,若戸大橋,関 門橋では,たわみ理論が採用され,大鳴門橋では有限変位理論での設計,たわみ理論での照査が,南。北備讃瀬戸大 橋以後は有限変位理論での設計が採用されている.解析モデルも明石海峡大橋の補剛桁の解析では,補剛桁を一本の 梁部材に置換することなく,より実態を反映した立体トラスモデルを採用するに至っている。このことは従来に増し てより正確な設計断面力を求めることが可能になったことを示しており,今後の吊橋の解析法の方向を示唆している. 吊橋を設計する場合,計画の段階を迫って数回の試算を行い基本諸元を順次決定し,詳細設計に移行するのが一般 的である.ここでは,各部材設計の基本となる断面力を算出する全体解析手順を南備讃瀬戸大橋を例として図】2.3。1 に示す。初期形状決定は有限変位解析計算の基本となるもので,補剛桁が無応力状態での吊橋の形状を決定すること を言う.一般的に,補剛桁については完成時の形状,ケーブルについては補剛桁,吊材などすべての自重がケーブル に戟荷された状態での形状と内力を求めることである.図−2.3.1の例は前死荷重と定義された荷重が載荷された状 態を完成時としたもので,将来における死荷重の追加を考えている.この例のように,最近では死荷重の一部を補剛 桁に分担させる考え方もある. このように決定された初期形状と初期応力を利用して,線形化有限変位理論により求めた影響線から戟荷位置を決 定し,戟荷される荷重ごとに解析に適した構造モデルを設定し,有限変位理論あるいは線形化有限変位理論により ケーブルや補剛桁の断面カヤ変位,支点反力などを求めるのが一般的になっている。また,主塔の解析では,図 −2.3・2に示す明石海峡大橋の例のように,より正確な断面力を求めるため,匡卜乱3。1の全体解析により得られた ケーブル反九リンク反九. ウインドシュー反力,塔頂変位を用いて,より詳細に構造モデル化を行い有限変位理論. により解析する. このように,わが国における最近の長大吊橋では,主塔と補剛桁を設計する場合に,設計 ことから,その都度全体解析を行い精度を向上させている.. 施工時期のずれもある.

(20) 吊橋一枝術とその変遷−. 30. 面外荷重解析. 面内ねじり荷重解析. 面内鉛直荷重解析 平面トラスモデル. 立体トラスモデル. 立体トラスモデル. 影響線作成. 影響操作成. 影響線作成. 有限変位理論. +. −ト センター. 荷. 重. 載. 荷. 荷. ステイなし. 重. 載. 荷 センターステイなし. ケjハけ【主;主jセ. l. ルい:. 張繍娼蓋 九力:力功臣量庚 l. ll. l. 解析結果の編集 立体トラスへの変換. 耐震計算の結果. 主構の. 設計. 疲労の換算. 横構の. 設計 ケーブル張力 ハンガー張力 リンク反カ ワインドシュー反力 主横棒の外力 〔主横構のずれ変形〕 〔垂直材軸力〕 ■.■■◆■▲一.■. ■. −■■・・■. ■一−■. −−■・・■−一・・■・■−. −. −一−−−. −. ■l−■■■■■■・・−【. センターステイ軸ナ. 1.主塔基本諸元,断面諸量 2.主塔に作用する死荷重 3.ケーブル,リンク,ウインドシュー反力. 4.塔頂付加変位. 図−2.3−1全体解析手順 主. 塔. の. 設. 計. 塔. 頂. 反. 力. 最. 大. 時. 塔. 頂. 変. 位. 最. 大. 時. 立体モデル (有限変位理論). 暴 風 時(橋軸直角方向) 暴 風 時(橋軸方向) 塔頂相村変位最大(左,右塔) 地. 震. 各. 部. 1。耐震設計 2。制振設計. 時. 材. の. 詳. 細. 設. 計. 架設時の照査. 図−2H3.2. 主塔解析手順.

(21) 2.吊橋の設計. 2.3.3 (1)床. 補. 剛. 31. 桁. 組. 床組,横トラス,横フレーム,補剛桁を総称して補剛桁あるいは吊構造部と表すことが多い.図一2.3.3に,長大 吊橋に採用されることの多いトラス形式,箱桁形式の吊構造部の概念図を示す。 吊構造部のうち,床組構造の機能は自動車や鉄道車両などに対し交通機能を十分に果たし,荷重を補剛桁に円滑に 伝達することにある.床組部材としては床版,縦桁や横トラス,横フレームの一部を構成する横トラス上弦材,横桁 などがあり,最近の補剛トラスを持つ長大吊橋では床版,縦桁を横桁,横トラス上弦材の上に載せる形式が主流とな っている. 床組構造の設計において重要な点は,床組構造の重量や構造形式が上部工全体の経済性に大きな影響を与えること や耐風安定性に大きな影響を与えることにある. 荷重を直接支持する床版には鉄筋コンクリート床版(RC床版),鋼格子床版(図−2.3月),鋼床版,オープング レーチングやそれらの混用(図『2.3.5)がある.吊橋の長大化に伴って死荷重の軽減を図るため,1937年完成の GoldenGate橋のRC床版から,1957年のMackinac橋の鋼格子床版,1964年のForthRoad橋の鋼床版とRC床版の. (a)補剛トラス形式. ハンガーブラケット. (b)補剛箱桁形式 図−2.3.3. 吊構造部概念図.

(22) 32. 床版と横支材の橋軸方向切断面. 床版の橋軸直角方向断面. 図−2H3.4. 図−2】3.5. 床版の橋軸方向断面. VerrazanoNarrows橋の鋼格子床版. 鋼床版とオープングレーチングの混用(南備讃瀬戸大橋). 混用へと時代とともに移り変わっているようである.わが国でも若戸大橋のRC床版から関門橋の格子床版,本州四 国連絡橋の鋼床版へと構造形式が変化しており,今後は鋼床版が多用されると考えられる匂鋼床版は,活荷重を直接 支持することから疲労に十分配慮した設計が必要である。また鋼床版上面に設置する舗装のひび割れへの影響を少な くするためねじり剛性の高い間断面リブの利用が一般的で,その配置にも注意が必要である・ Ta。。maNarr。WS橋以来の風洞実験を通して,補剛桁の耐風安定性を向上させることを目的に,臣㌍2・3q5に示すよ うにオープングレーチングを用いて路面に開床部を設けることが効果的であることが認められ,最近の長大吊橋では 数多く採用されている.このオープングレーテンダは,他の耐風対策と同様に開床率や設置位置など総合的な検討を 経て決定されることが必要である。 縦桁構造は最近,通行車両の走行性や維持管理への配慮から,できるだけ連続径間数を多くすることが試みられる ようになった。南備讃瀬戸大橋では6径間(80m)連続構造101),レインボーブリッジでは56径間(560m)56),明石 海峡大橋では20径間(284m)の連続構造15),31)が採用されている.縦桁の連続化では支承条件や移動量に村する支 承樽造や伸縮装置の規模,架設誤差の吸収方法,補剛桁との一体化に対する考え方など十分な検討が必要となる・レ インボーブリッジでは連続縦桁端部において補剛桁と一体化され,補剛桁としての作用も考慮されている・ わが国における道路鉄道併用吊橋としては瀬戸大橋の吊橋が挙げられる。鉄道吊橋特有の問題である大きなたわみ,.

(23) 2.吊橋の設計. 33. (図は伸びた状態). 角折れ現象に対し,これらの吊橋では次のような配慮がされている.軌道を支持する縦桁は,支承の浮き上りを防止 するため単純梁とし,上下横構を設けてねじり剛性を高め,列車の走行性,乗心地を向上するため縦桁のたわみ量を 抑制している.また,軌道の締結方式は縦桁直結軌道で,たわみやすい吊橋用に開発された構造が用いられている. さらに吊橋には,列車荷重,温度変化等により橋端部に大きな角折れおよび伸縮による移動が生じる。この角折れを 分散し,かつ伸縮による移動を吸収するために,図叫2.3.6に示す新しく開発された緩衝桁軌道伸縮装置が橋端部に 設置されている116) (2)横トラス・横フレ耶ム 横トラス・横フレームの役割は,床粗からの荷重を補剛桁および吊材に伝達し,箱桁におけるダイヤフラムと同様 にずれ変形に抵抗する役割を合わせ持ち,さらに横荷重やねじり荷重に抵抗する横構の構成部材の一つとして働くこ とである.また支点上の横トラス・横フレームは,補剛桁の橋軸直角方向の荷重に対する支点として,横構面からの 力をウインドシューを介して主塔,側塔,アバット等に伝える役割を担う。 横トラス・横フレームの形状の例を図『2→3】7に示す.これらの形状は,現在の長大吊橋ではトラス形式,ラーメ ン形式が一般的であり,若戸大橋から本州四国連絡橋に至る補剛トラスにはトラス形式が,レインボーブリッジには ラーメン形式が採用されている.また,古くは横桁形式も多く採用され,取付け位置も下路,中路,上路と多様な形. ケーブル小心間隔35000. (a)南備讃瀬戸大橋. (b)Verrazano Narrows橋. 図−2.3.7. 横トラス・横フレーム.

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