重大事故等対策の有効性評価に係る シビアアクシデント解析コードについて
(第1部 SAFER)
平成 27 年 5 月 東北電力株式会社 東京電力株式会社 中部電力株式会社 中国電力株式会社
資料1−2
目 次
− SAFER −
1.はじめに
………
1-1 2.重要現象の特定………
1-2 2.1 事 故 シ ー ケ ン ス と 評 価 指 標………
1-2 2.2 ラ ン ク の 定 義………
1-6 2.3 物 理 現 象 に 対 す る ラ ン ク 付 け………
1-8 3.解析モデルについて………
1-15 3.1 コ ー ド 概 要………
1-15 3 .2 重 要 現 象 に 対 す る 解 析 モ デ ル………
1-16 3.3 解 析 モ デ ル………
1-17 3 . 4 入 出 力………
1-53 4.妥当性確認………
1-55 4.1 重 要 現象 に対 す る 妥 当 性 確 認 方法………
1-55 4.2 T B L 実 験 解 析………
1-59 4.3 R O S A − Ⅲ 実 験 解 析………
1-69 4.4 F I S T − A B W R 実 験 解 析………
1-78 4.5 実 機 解 析 へ の 適 用 性………
1-87 5.有効性評価への適用性………
1-91 5.1 不確かさの取り扱いについて(評価指標の観点)………
1-91 5.2 不確かさの取り扱いについて(運転操作の観点) ……… 1-93 6.参考文献………
1-96添付 1 解析コードにおける解析条件
………
1-99 添付 2 相関式,モデルの適用性………
1-1031.はじめに
本資料は,炉心損傷防止に関する重大事故等対策の有効性評価(以下,「有 効性評価」と称す。)に適用するコードのうち,SAFER Ver.3(以下,「S AFERコード」と称す。)について,
・有効性評価において重要となる現象の特定
・解析モデル及び入出力に関する説明
・妥当性確認
・有効性評価への適用性 に関してまとめたものである。
2.重要現象の特定
2.1 事故シーケンスと評価指標
S A F E R コ ー ド が 適 用 さ れ る 炉 心 損 傷 防 止 対 策 に お け る 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ に つ い て, 具 体 的 な 事 故 シ ーケ ン ス 及 び そ の 事 象の 推 移 と 評 価 指 標 に つ い て 記 述 する 。 S A F E R コ ード が 適 用 さ れ る 炉 心損 傷 防 止 対 策 に お け る 事 故 シ ー ケン ス グ ル ー プ は , 出力 運 転 中 の 原 子 炉 を対 象 と し た 以 下の 6 グループである。
・高圧・低圧注水機能喪失
・高圧注水・減圧機能喪失
・全交流動力電源喪失
・崩壊熱除去機能喪失
・LOCA時注水機能喪失
・格納容器バイパス(インターフェイスシステムLOCA)
(1) 高圧・低圧注水機能喪失
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 の 出 力 運 転 中 に , 運 転 時 の 異 常 な 過 渡 変 化 ま た は 事故 ( L O C A を 除 く) の 発 生 後 , 高 圧 注水 機 能 が 喪 失 し,原子炉減圧には成功するが,低圧注水機能が喪失することを想定する。
具 体 的 な 事 故 シ ナ リ オ と し て 「 給 水 流 量 の 全 喪 失 + R C I C 及 び E C C S ( 高 圧 注 水 系 及 び低 圧 注 水 系 ) 起 動 失敗 」 を 想 定 す る 。 給水 流 量 の 全 喪 失 後 , 原 子 炉 水 位 は急 速 に 低 下 し , 原 子炉 水 位 低 信 号 が 発 生し て 原 子 炉 は ス ク ラ ム す る た め 未臨 界 が 確 保 さ れ る 。し か し , 原 子 炉 水 位低 信 号 で R C I C 及 び E C C S (高 圧 注 水 系 及 び 低 圧注 水 系 ) の 起 動 に 失敗 す る 。 原 子 炉 水 位 低 信 号 で M SI V が 閉 止 す る と 原子 炉 圧 力 は 上 昇 し ,原 子 炉 圧 力 が S R V の 設 定 値 に 到達 す る と 断 続 的 に 弁か ら 蒸 気 が 放 出 さ れ, こ れ に よ り 原 子 炉 の 圧 力 は S RV 設 定 値 近 傍 に 維 持さ れ る 。 一 方 , 原 子炉 注 水 機 能 喪 失 の 状 況 下 で は 原 子炉 内 保 有 水 が 減 少 し続 け , い ず れ は 炉 心露 出 に よ り 燃 料被覆管温度が上昇し,炉心損傷に至る。
こ の 事 象 に 対 す る 炉 心 損 傷 防 止 対 策 と し て は , 代 替 注 水 設 備 等 に よ る 炉 心冷却機能の確保が挙げられる。
炉 心 損 傷 防 止 対 策 の う ち , 高 圧 代 替 注 水 設 備 を 使 用 す る 場 合 に は , 高 圧 状 態 の 原 子 炉 へ 注 水を 開 始 す る 。 S R Vか ら の 冷 却 材 の 流 出に よ り 原 子 炉 水 位 は 低 下 す る が ,高 圧 代 替 注 水 設 備 によ る 原 子 炉 注 水 開 始に よ り 原 子 炉 水 位 は 回 復 し 事 象 は回 復 す る 。 低 圧 代 替注 水 設 備 を 使 用 す る場 合 に は , 手 動 操 作 に よ り S R Vを 開 き , 原 子 炉 を 急速 減 圧 し , 原 子 炉 の減 圧 後 に 低 圧 代替注水系による原子炉注水を開始する。原子炉の急速減圧を開始すると,
圧 代 替 注 水 系 に よ る注 水 を 開 始 す る と 原子 炉 内 保 有 水 及 び 原子 炉 水 位 が 回 復し,炉心は再冠水することにより事象収束に向かうことになる。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
(2) 高圧注水・減圧機能喪失
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 の 出 力 運 転 中 に , 運 転 時 の 異 常 な過渡変化又は事故(LOCAを除く)の発生後,高圧注水機能が喪失し,
かつ,原子炉減圧機能が機能喪失することを想定する。
具 体 的 な 事 故 シ ナ リ オ と し て 「 給 水 流 量 の 全 喪 失 + R C I C 及 び E C C S ( 高 圧 注 水 系 ) 起動 失 敗 + 原 子 炉 の 減圧 失 敗 」 を 想 定 す る。 給 水 流 量 の 全 喪 失 後 , 原 子 炉 水位 は 急 速 に 低 下 し ,原 子 炉 水 位 低 信 号 が発 生 し て 原 子 炉 は ス ク ラ ム す る ため 未 臨 界 が 確 保 さ れる 。 し か し , 原 子 炉水 位 低 信 号 で R C I C 及 び E C CS ( 高 圧 注 水 系 ) の起 動 に 失 敗 す る 。 原子 炉 水 位 低 信 号 で M S I V が 閉 止す る と 原 子 炉 圧 力 は上 昇 し , 原 子 炉 圧 力が S R V の 設 定 値 に 到 達 す る と 断続 的 に 弁 か ら 蒸 気 が放 出 さ れ , こ れ に より 原 子 炉 の 圧 力 は S R V 設 定 値 近傍 に 維 持 さ れ る 。 一方 , 原 子 炉 が 高 圧 に維 持 さ れ 低 圧 注 水 系 に よ る 原 子 炉注 水 が 困 難 な 状 況 下で は , 原 子 炉 内 保 有水 が 減 少 し 続 け,いずれは炉心露出により燃料被覆管温度が上昇し,炉心損傷に至る。
炉 心 損 傷 を 防 止 す る た め に , 代 替 自 動 減 圧 ロ ジ ッ ク に よ り , S R V が 開 き 原 子 炉 を 減 圧 し ,原 子 炉 の 減 圧 後 に EC C S ( 低 圧 注 水 系) に よ り 原 子 炉 注 水 を 開 始 す る 。原 子 炉 の 急 速 減 圧 を開 始 す る と , 冷 却 材の 流 出 に よ り 原 子 炉 水 位 は 低 下 し, 有 効 燃 料 棒 頂 部 を下 回 る が , 低 圧 注 水系 に よ る 注 水 が 開 始 す る と 原 子 炉内 保 有 水 及 び 原 子 炉水 位 が 回 復 し , 炉 心は 再 冠 水 す る ことにより事象収束に向かうことになる。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
(3) 全交流動力電源喪失
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 の 出 力 運 転 中 に , 送 電 系 統 又 は 所 内 主 発 電 設 備 の 故障 等 に よ り , 外 部 電源 が 喪 失 す る と と もに , 非 常 用 所 内 電 源 系 統 も 機 能 喪失 し , 安 全 機 能 を 有す る 系 統 及 び 機 器 の全 交 流 動 力 電 源が喪失することを想定する。
具 体 的 な 事 故 シ ナ リ オ と し て 「 外 部 電 源 喪 失 + 非 常 用 デ ィ ー ゼ ル 発 電 機 の 機 能 喪 失 」 を 想 定す る 。 外 部 電 源 喪 失後 , タ ー ビ ン 蒸 気 加減 弁 急 速 閉 ま た は 原 子 炉 水 位 低 信号 で 原 子 炉 は ス ク ラム す る た め 未 臨 界 が確 保 さ れ る 。 また,原子炉水位低でRCICが自動起動して水位は維持される。しかし,
非 常 用 デ ィ ー ゼ ル 発電 機 の 起 動 失 敗 に より 全 交 流 動 力 電 源 喪失 と な り , ま た , 直 流 電 源 が 枯 渇し , R C I C が 機 能喪 失 し た 場 合 に は 原子 炉 内 保 有 水 が 減 少 し 続 け , い ずれ は 炉 心 露 出 に よ り燃 料 被 覆 管 温 度 が 上昇 し , 炉 心 損 傷に至る。
炉 心 損 傷 を 防 止 す る た め に , 交 流 電 源 設 備 に よ る 給 電 が で き な い 一 定 期 間 直 流 電 源 を 確 保 し, R C I C に よ っ て原 子 炉 水 位 を 適 切 に維 持 し つ つ , 代 替 電 源 設 備 , 低 圧代 替 注 水 系 の 準 備 が完 了 し た と こ ろ で ,原 子 炉 の 減 圧 及 び 低 圧 注 水 系 ま たは 低 圧 代 替 注 水 系 によ る 原 子 炉 注 水 を 開始 す る 。 原 子 炉 の 減 圧 は , S R Vに よ り 手 動 操 作 に て実 施 す る 。 減 圧 を 開始 す る と , 冷 却 材 の 流 出 に よ り 原子 炉 水 位 は 低 下 す るが , 低 圧 代 替 注 水 系等 に よ る 注 水 開始により原子炉水位が回復するため,事象収束に向かうことになる。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
(4) 崩壊熱除去機能喪失
① 取水機能喪失
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 の 出 力 運 転 中 に , 運 転 時 の 異 常 な 過 渡 変 化 又 は 事 故( L O C A を 除 く )の 発 生 後 , 原 子 炉 注水 に は 成 功 す るが,取水機能喪失により崩壊熱除去機能が喪失することを想定する。
具 体 的 な 事 故 シ ナ リ オ と し て 「 給 水 流 量 の 全 喪 失 + 取 水 機 能 喪 失 」 を 想 定 す る 。 外 部 電 源 喪失 後 , タ ー ビ ン 蒸 気加 減 弁 急 速 閉 ま た は原 子 炉 水 位 低 に よ り 原 子 炉 は ス クラ ム す る た め 未 臨 界が 確 保 さ れ る 。 ま た, 原 子 炉 水 位 低 で R C I C が 自 動起 動 し て 水 位 は 維 持さ れ る 。 一 方 , 原 子炉 内 で 崩 壊 熱 に よ り 発 生 す る 蒸 気が S R V を 介 し て 徐々 に 流 出 す る た め ,格 納 容 器 の 圧 力 及 び 温 度 が 上 昇 し, い ず れ は 格 納 容 器が 先 行 破 損 し , そ の後 炉 心 露 出 に より燃料被覆管温度が上昇し,炉心損傷に至る。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
② RHR機能喪失
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 の 出 力 運 転 中 に , 運 転 時 の 異 常 な 過 渡 変 化 又 は 事 故( L O C A を 除 く )の 発 生 後 , 原 子 炉 注水 に は 成 功 す る が , 残 留 熱 除 去 系の 故 障 に よ り 崩 壊 熱除 去 機 能 が 喪 失 す るこ と を 想 定 す る。
具 体 的 な 事 故 シ ナ リ オ と し て 「 給 水 流 量 の 全 喪 失 + R H R 機 能 喪 失 」 を 想 定 す る 。 給 水 流 量の 全 喪 失 後 , 原 子 炉水 位 は 急 速 に 低 下 し, 原 子 炉 水 位
炉 水 位 低 で R C I Cが 自 動 起 動 し て 水 位は 維 持 さ れ る 。 一 方, 原 子 炉 内 で 崩 壊 熱 に よ り 発 生 する 蒸 気 が S R V を 介し て 徐 々 に 流 出 す るた め , 格 納 容 器 の 圧 力 及 び 温 度 が上 昇 し , い ず れ は 格納 容 器 が 先 行 破 損 し, そ の 後 炉 心 露出により燃料被覆管温度が上昇し,炉心損傷に至る。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
(5) LOCA時注水機能喪失
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 の 出 力 運 転 中 に , 原 子 炉 冷 却 材 圧 力 バ ウ ン ダ リ を 構成 す る 配 管 の 大 規 模な 破 断 ( 大 破 断 L OC A ) あ る い は 中 小 規 模 の 破 断 (中 小 破 断 L O C A )の 発 生 後 , 高 圧 注 水機 能 , 低 圧 注 水機能及び原子炉減圧機能が喪失することを想定する。
具 体 的 な 事 故 シ ナ リ オ と し て 「 中 小 破 断 L O C A + E C C S ( 高 圧 注 水 系 , 低 圧 注 水 系 ) 起動 失 敗 」 を 想 定 す る。 中 小 破 断 L O C A発 生 後 , 原 子 炉 は ス ク ラ ム す る ため 未 臨 界 が 確 保 さ れる 。 し か し , 高 圧 注水 系 , 低 圧 注 水 系 及 び 自 動 減 圧 系の 起 動 失 敗 に よ り ,原 子 炉 水 位 が 低 下 し, や が て 炉 心 露出により燃料被覆管温度が上昇し,炉心損傷に至る。
こ の 事 象 に 対 す る 炉 心 損 傷 防 止 対 策 と し て は , 代 替 注 水 設 備 等 に よ る 炉 心冷却機能の確保が挙げられる。
炉 心 損 傷 防 止 対 策 の う ち , 高 圧 代 替 注 水 設 備 を 使 用 す る 場 合 に は , 高 圧 状 態 の 原 子 炉 へ 注 水を 開 始 す る 。 S R Vか ら の 冷 却 材 の 流 出に よ り 原 子 炉 水 位 は 低 下 す る が ,高 圧 代 替 注 水 設 備 によ る 原 子 炉 注 水 開 始に よ り 原 子 炉 水 位 は 回 復 し 事 象 は回 復 す る 。 低 圧 代 替注 水 設 備 を 使 用 す る場 合 に は , 手 動 操 作 に よ り S R Vを 開 き , 原 子 炉 を 急速 減 圧 し , 原 子 炉 の減 圧 後 に 低 圧 代替注水系による原子炉注水を開始する。原子炉の急速減圧を開始すると,
冷 却 材 の 流 出 に よ り原 子 炉 水 位 は 低 下 する が , 低 圧 代 替 注 水系 に よ る 注 水 を 開 始 す る と 原 子 炉水 位 が 回 復 し , 炉 心は 再 冠 水 す る こ と によ り 事 象 収 束 に向かうことになる。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
な お , 大 破 断 L O C A 時 は 炉 心 の 著 し い 損 傷 ま で の 事 象 進 展 が 早 く , 国 内 外 の 先 進 的 な 対 策と 同 等 の も の を 考 慮し て も , 炉 心 損 傷 防止 対 策 を 有 効 に 実 施 す る こ と は でき な い た め , 格 納 容器 破 損 防 止 対 策 を 講じ て , そ の 有 効性を確認している。
(6) 格納容器バイパス(インターフェイスシステムLOCA)
こ の 事 故 シ ー ケ ン ス グ ル ー プ は , 原 子 炉 冷 却 材 圧 力 バ ウ ン ダ リ と 接 続 さ れ た 系 統 で , 高 圧 設計 部 分 と 低 圧 設 計 部分 の イ ン タ ー フ ェ イス と な る 配 管 の う ち , 隔 離 弁 の 故障 等 に よ り 低 圧 設 計部 分 が 過 圧 さ れ 破 損す る 事 象 を 想 定する。
具体的な事故シナリオとして,「高圧炉心注水系の吸込配管(ABWR)」,
「 低 圧 注 水 系 の 注 水配 管 ( B W R ) 」 等の 破 損 を 想 定 す る 。機 器 破 損 等 の 発 生 後 , 原 子 炉 水 位は 急 速 に 低 下 し , 原子 炉 水 位 低 信 号 が 発生 し て 原 子 炉 は ス ク ラ ム す る た め未 臨 界 が 確 保 さ れ る。 し か し , 破 損 口 から 冷 却 材 が 流 出するため原子炉内保有水が減少し,炉心損傷に至る。
炉 心 損 傷 を 防 止 す る た め に , R C I C 及 び E C C S ( 高 圧 系 ) に よ り 炉 心 を 冷 却 す る こ と によ っ て 炉 心 の 著 し い損 傷 の 防 止 を 図 り ,ま た , イ ン タ ー フ ェ イ ス シ ス テ ムL O C A の 発 生 箇 所を 隔 離 す る こ と に よっ て , 格 納 容 器 外 へ の 原 子 炉 冷 却材 の 流 出 の 防 止 を 図る 。 こ れ に よ り 事 象収 束 に 向 か う ことになる。
し た が っ て , 本 事 象 で は 炉 心 露 出 ・ ヒ ー ト ア ッ プ の 可 能 性 が あ る た め , 燃料被覆管温度が評価指標である。
炉 心 損 傷 防 止 対 策 に お け る 事 故 シ ー ケ ン ス に 対 し , 有 効 性 評 価 上 要 求 さ れる判断基準は,以下の 5 点である。
a. 燃料被覆管の温度(1200℃以下)
b. 燃料被覆管の酸化量(15%以下)
c. 原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力
(最高使用圧力の 1.2 倍以下)
d. 格納容器圧力バウンダリにかかる圧力(限界圧力以下)
e. 格納容器圧力バウンダリにかかる温度(限界温度以下)
原 子 炉 設 置 変 更 許 可 申 請 解 析 に 記 載 し た 解 析 結 果 か ら , 判 断 基 準 に 対 し 十 分 な 余 裕 が あ り 評価 指 標 と し て 燃 料 被覆 管 の 温 度 で 代 表 でき る と 考 え ら れる b.を除く,a. c. d. e.を評価指標として取り上げる。このうち,c.
は S R V の 作 動 に より 原 子 炉 圧 力 の 上 昇が 抑 え ら れ , S R Vの 設 定 圧 力 以 下に抑えられるため評価指標から除外する。また,d.と e.はSAFER コードの評価範囲以外であるため除外する。
2.2 ランクの定義
本資料の本文「2. 有効性評価における物理現象の抽出」で抽出された物 理 現 象 の う ち S A FE R コ ー ド で 評 価 する 事 象 に お い て 考 慮す べ き 物 理 現
の ラ ン ク に 分 類 し ,「 H 」 及 び 「 M 」 に分 類 さ れ た 物 理 現 象を 重 要 現 象 と して抽出する。
表 2-1 ランクの定義
ランク ランクの定義 本資料での取り扱い
H 評 価 指 標 及 び 運 転 操 作 に 対 す る 影 響 が 大 き い と 考 えられる現象
物 理 現 象 に 対 す る 不 確 か さ を 実 験 と の 比 較 等 に よ り 求 め , 実 機 評 価 に お け る 評 価 指 標 及 び 運 転 操 作 へ の 影 響 を評価する
M 評価指標及び運転操作に
対する影響が中程度と考 えられる現象
事象推移を模擬する上で一定の役割 を担うが,影響が「H」に比べて顕 著でない物理現象であるため,必ず しも不確かさによる実機評価におけ る評価指標及び運転操作への影響を 評価する必要はないが,本資料では,
実機評価への影響を感度解析等によ り評価するか,「H」と同様に評価 することとする
L 評価指標及び運転操作に
対する影響が小さいと考 えられる現象
事象推移を模擬するためにモデル化 は必要であるが,評価指標及び運転 操作への影響が明らかに小さい物理 現象であるため,検証/妥当性確認 は記載しない
I 評価指標及び運転操作に
対し影響を与えないか,ま たは重要でない現象
評価指標及び運転操作へ影響を与え ないか,又は重要でない物理現象で あるため,検証/妥当性確認は記載 しない
2.3 物理現象に対するランク付け
本資料の本文「2. 有効性評価における物理現象の抽出」で抽出された物 理現象のうち 2.1 節で述べた事象進展を踏まえ,2.2 節のランクの定義に 従 い , 評 価 指 標 及 び運 転 操 作 へ の 影 響 に応 じ て 「 H 」 及 び 「M 」 に 分 類 す る事で物理現象の中から重要現象を特定する。この結果を表 2-2 に示す。
ラ ン ク 付 け に あ た っ て は , 燃 料 被 覆 管 温 度 は 炉 心 冷 却 , 炉 心 水 位 , 燃 料 被 覆 管 の ヒ ー ト ア ップ か ら 影 響 を 受 け るた め , こ れ ら に 関 する 物 理 現 象 も 相 対 的 に 高 い ラ ン クと し て い る 。 ま た ,運 転 操 作 等 に よ り 原子 炉 を 強 制 的 に 減 圧 し , 温 度 ・ 圧力 を 低 下 さ せ る シ ーケ ン ス で は , 原 子 炉の 減 圧 に よ り 代 替 注 水 設 備 を 含 む注 水 系 か ら の 冷 却 水の 注 水 に よ る 炉 心 冷却 を 期 待 す る ため,原子炉の減圧に寄与する物理現象も相対的に高いランクとしている。
以下に,物理現象ごとに考え方を示す。
(1) 核分裂出力[炉心(核)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事象 発生 後早 期に原 子炉 がスク ラム し未臨 界 となる ため ,事故 後 長期に おけ る炉心 露 出後の 燃料被 覆管温 度上 昇時の 原 子炉出 力は 崩壊熱 と なる。 また ,減速 材 直接発 熱は核 分裂で 発生 するエ ネ ルギの うち ,減速 材 の発熱 に寄 与する 割 合はき わめて 小さい 。し たがっ て ,核分 裂出 力は燃 料 被覆管 温度 に対し 重 要度が 低いと 考えられる。
(2) 出力分布変化[炉心(核)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事象 発生 後早 期に原 子炉 がスク ラム し未臨 界 となる ため ,事象 発 生後ス クラ ムする ま での時 間が短 く,通 常運 転時か ら の出力 分布 変化に は 影響が 小さ い。し た がって ,出力 分布変化は燃料被覆管温度に対し重要度が低いと考えられる。
(3) 反応度フィードバック効果[炉心(核)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事象 発生 後早 期に原 子炉 がスク ラム し未臨 界 となる ため ,事故 後 長期に おけ る炉心 露 出後の 燃料被 覆管温 度上 昇時の 原 子炉出 力は 崩壊熱 と なる。 した がって , 反応度 フィー ドバック効果は燃料被覆管温度に対し重要度が低いと考えられる。
(4) 制御棒反応度効果[炉心(核)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事象 発生 後早 期に原 子炉 がスク ラム し未臨 界 となる ため ,事故 後 長期に おけ る炉心 露 出後の 燃料被
及び制御棒速度は燃料被覆管温度に対し重要度が低いと考えられる。
(5) 崩壊熱[炉心(核)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事象 発生 後早 期に原 子炉 がスク ラム し未臨 界 となる ため ,事故 後 長期に おけ る炉心 露 出後の 燃料被 覆管温 度上 昇時の 原 子炉出 力は 崩壊熱 と なる。 した がって , 崩壊熱 は燃料 被覆管温度に対し重要度が高いと考えられる。
(6) 三次元効果[炉心(核)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事象 発生 後早 期に原 子炉 がスク ラム し未臨 界 となる ため ,核熱 水 力不安 定事 象は発 生 しない 。した がって,核的な三次元効果は燃料被覆管温度に影響を与えない。
(7) 燃料棒内温度変化[炉心(燃料)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である ため ,事故 直 後にお ける燃 料棒内 の熱 を冷却 材 に放出 する 燃料ペ レ ット径 方向 発熱密 度 分布, 燃料ペ レット ・燃 料被覆 管 内熱伝 導及 び燃料 ペ レット −燃 料被覆 管 のギャ ップ熱 伝達の 影響 は小さ い 。した がっ て,燃 料 棒内温 度変 化は燃 料 被覆管 温度に 対し重要度が低いと考えられる。
(8) 燃料棒表面熱伝達[炉心(燃料)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である ため ,崩壊 熱 による 燃料の 発熱及 び燃 料棒表 面 から冷 却材 への熱 伝 達が燃 料被 覆管温 度 変化の 支配的 要因に なる 。原子 炉 減圧後 の減 圧沸騰 に より二 相流 動状態 と なった 場合に は,二 相壁 面熱伝 達 により 冷却 される 。 また, 炉心 が露出 し た場合 には,
蒸気単 相流 ,燃料 棒 間の輻 射熱 伝達に よ り冷却 され る。露 出 した燃 料棒周 囲の蒸 気が 過熱さ れ 気液熱 非平 衡状態 と なる可 能性 があり , 燃料棒 表面熱 伝達に 影響 する。 し たがっ て, 燃料棒 表 面熱伝 達は 燃料被 覆 管温度 に対し 重要度が高いと考えられる。
(9) 沸騰遷移[炉心(燃料)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,給 水流量 の全 喪失 ある いは小 破断 LOC Aを 起因事 象 として おり ,炉心 流 量の減 少は 緩やか に 変化し ,事故 直後に 原子 炉がス ク ラムし 原子 炉出力 が 低下す るた め,燃 料 集合体 で核沸 騰から の離 脱(D N B)が 発生 する可 能 性は低 い。 一方, 事 故後長 期にお
いて炉 心が 露出す る 場合に は, 燃料被 覆 管温度 が上 昇する が ,原子 炉注水 により 炉心 が再冠 水 するこ とに よって , 最終的 には 核沸騰 状 態に遷 移して 冷却さ れる 。した が って, 沸騰 遷移は 燃 料被覆 管温 度に対 し 重要度 が高い と考えられる。
(10) 燃料被覆管酸化[炉心(燃料)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である ため ,燃料 被 覆管が 高温に なると ジル コニウ ム −水反 応に よる発 熱 量が増 加す ると考 え られる 。しか し,代 替注 水設備 等 の原子 炉注 水によ り 炉心が 冷却 され, 燃 料被覆 管温度 はジル コニ ウム− 水 反応が 顕著 になる ほ ど上昇 しな い。し た がって ,燃料 被覆管酸化は燃料被覆管温度に対し重要度が中程度と考えられる。
(11) 燃料被覆管変形[炉心(燃料)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スで は, 事象発 生後 早期 に原 子炉が スク ラムし 未臨 界とな る ため, 燃料 ペレッ ト が膨張 する ことは な くPC MIは 発生し ない 。燃料 被 覆管が 高温 になり , 燃料棒 内圧 の上昇 に 伴う膨 れ・破 裂が発 生す る場合 に は,燃 料棒 間の輻 射 熱伝達 への 影響, 燃 料集合 体内の 流路閉 塞に よる原 子 炉注水 時に 冷却へ の 影響が ある 。破裂 が 発生す る場合 には, 燃料 被覆管 内 面酸化 によ る反応 熱 への影 響が 考えら れ るが, 崩壊熱 に比べ て燃 料被覆 管 温度へ の寄 与は小 さ い。燃 料被 覆管の 破 裂によ り核分 裂生成 物が 格納容 器 内に放 出さ れると , 格納容 器雰 囲気放 射 線モニ タによ り炉心 損傷 の判断 を 実施し た場 合,格 納 容器ス プレ イや格 納 容器ベ ントの 操作タ イミ ングに 影 響する こと となる 。 ただし ,こ の操作 は 事象発 生後早 期に行 うも のでは な い。し たが って, 燃 料被覆 管変 形は燃 料 被覆管 温度に 対し重要度は中程度と考えられる。
(12) 沸騰・ボイド率変化[炉心(熱流動)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 であり ,サ ブクー ル ボイド の発生 は燃料 被覆 管温度 に 影響し ない 。原子 炉 減圧操 作を 実施し た 場合に は,下 部プレ ナム 等で減 圧 沸騰( フラ ッシン グ )が発 生す る。こ れ に伴い 発生し たボイ ドに より形 成 された 二相 水位は ボ イド率 変化 に応じ て 変化す る。し たがっ て, 沸騰・ ボ イド率 変化 は燃料 被 覆管温 度に 対し重 要 度が高 いと考 えられる。
再循環 ポン プト リッ プ及び 代替 注水 設備 等によ る原 子炉 注水 により ,原
おいては十分に混合され影響は無視できる。
(13) 気液分離(水位変化)・対向流[炉心(熱流動)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,原 子炉減 圧操 作に 伴う 下部プ レナ ムフラ ッシ ングが 発 生する 事象 であり , フラッ シン グによ り 発生し たボイ ドを含 む二 相水位 の 変化は ,炉 心露出 時 の燃料 被覆 管温度 に 影響が ある。
したが って ,気液 分 離(水 位変 化)は 燃 料被覆 管温 度に対 し 重要度 が高い と考えられる。
一方, 炉心 上部 での CCF L, CC FL ブレー クダ ウン は, 事象進 展が 緩やか なこ と及び 代 替注水 設備 等によ る 原子炉 注水 はダウ ン カマま たは炉 心バイ パス 領域に 注 水され るた め発生 し ない。 炉心 スプレ イ 系によ る原子 炉注水 が行 われる 場 合には 発生 する可 能 性があ るが ,短期 間 である ため影 響は小 さい 。した が って, 対向 流は燃 料 被覆管 温度 に対し 重 要度が 低いと 考えられる。
(14) 気液熱非平衡[炉心(熱流動)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である ため ,露出 し た燃料 棒周囲 の蒸気 が過 熱され 気 液熱非 平衡 状態と な る可能 性が ある。 炉 心の一 部で発 生した 過熱 蒸気は , 上部プ レナ ムから シ ュラウ ド外 に至る 経 路にお いて飽 和蒸気 にな ると考 え られ, 熱流 動挙動 へ の影響 は小 さいと 考 えられ る。し かしながら,気液熱非平衡の影響は,(8)でも述べたように燃料棒表面熱伝 達に影響するため燃料被覆管温度に対し重要度が高いと考えられる。
(15) 圧力損失[炉心(熱流動)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事故 直後 に再 循環ポ ンプ がトリ ップ し炉心 流 量が早 期に 低下す る ため, 炉心 部の圧 力 損失の 影響は 小さい 。ま た,炉 心 バイパ ス部 は,局 所 的な圧 力損 失は小 さ い。し たがっ て,圧力損失は燃料被覆管温度に対し重要度が低いと考えられる。
(16) 三次元効果[炉心(熱流動)]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である ため ,ダウ ン カマに 注水さ れた冷 却材 が下部 プ レナム を経 由して 炉 心部へ ,ま たは, 炉 心バイ パス部 から燃 料集 合体の 漏 えい経 路を 経由し て 冷却材 が炉 心部へ 流 入する 際,炉 心部の 各燃 料棒集 合 体は圧 力損 失が均 一 となる よう 燃料集 合 体の出 力に応 じて燃 料集 合体間 で 流量配 分さ れる三 次 元効果 が発 生する 。 したが って,
三次元効果は燃料被覆管温度に対し重要度が高いと考えられる。
(17) 冷却材流量変化[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事故 直後 に再 循環ポ ンプ がトリ ップ し炉心 流 量が早 期に 低下す る ため, 強制 循環時 の 冷却材 流量変 化の影 響は 小さい 。 また, 事故 後長期 に おいて 炉心 が露出 す る場合 には,
原 子 炉 水 位 が 低 下 し て 炉 心 シ ュ ラ ウ ド 内 外 の 自 然 循 環 が 維 持 で き な い た め,自 然循 環時の 冷 却材流 量変 化の影 響 は小さ い。 したが っ て,冷 却材流 量変化は燃料被覆管温度に対し重要度が低いと考えられる。
(18) 冷却材放出(臨界流・差圧流)[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,S RVを 使用 した 原子 炉の急 速減 圧ある いは LOC A 後の冷 却材 放出に よ り炉心 露出 が発生 し ,燃料 被覆管 温度が 上昇 する可 能 性があ る。 また, 原 子炉減 圧に 伴い低 圧 注水量 が変化 するた め, 炉心冷 却 への影 響が 大きい 。 したが って ,冷却 材 放出は 燃料被 覆管温度に対し重要度が高いと考えられる。
(19) 沸騰・凝縮・ボイド率変化[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,S RVを 使用 した 原子 炉の急 速減 圧ある いは LOC A 後の冷 却材 流出に よ る原子 炉減 圧があ り ,減圧 沸騰に よる各 部の 蒸気発 生 とボイ ド率 変化が 二 相水位 に影 響する 。 また, 原子炉 への冷却水の注水により蒸気が凝縮される。炉心以外の領域の沸騰・凝縮 ・ ボイド率変化は燃料被覆管温度に対し,重要度は中程度と考えられる。
(20) 気液分離(水位変化)・対向流[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である 。炉 心以外 の 領域の 気液分 離(水 位変 化)・ 対 向流は 燃料 被覆管 温 度に対 し, 重要度 が 中程度 と考え られる。
(21) 気液熱非平衡[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す る場合 に燃 料被覆 管 温度が 上昇 する事 象 である 。し かし, 炉 心以外 の領域 の気液熱非平衡は燃料被覆管温度に対し影響はない。
(22) 圧力損失[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,事 故後長 期に おい て炉 心が露 出す
の圧力 損失 は燃料 被 覆管温 度に 対し直 接 的な影 響は ないた め ,重要 度が低 いと考えられる。
(23) 構造材との熱伝達[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,S RVを 使用 した 原子 炉の急 速減 圧ある いは LOC A 後の冷 却材 流出に よ り原子 炉が 減圧さ れ ,構造 材から 冷却材 への 熱伝達 が 発生す る。 しかし , 崩壊熱 に比 べて寄 与 は小さ い。し たがっ て, 構造材 と の熱伝 達は 燃料被 覆 管温度 に対 し重要 度 が低い と考え られる。
(24) ECCS注水(給水系・代替注水設備含む)[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,E CCS また は代 替注 水設備 によ る原子 炉注 水によ り 炉心が 冷却 される 事 象であ る。 したが っ て,E CCS
(給水 系・ 代替注 水 設備含 む) による 原 子炉注 水は 燃料被 覆 管温度 に対し 重要度が高いと考えられる。
(25) ほう酸水による拡散[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも ほう 酸水 によ る注入 を考 慮して いな いため , ほう酸 水に よる拡 散 は燃料 被覆 管温度 に 影響を 与えな い。
(26) 三次元効果[原子炉圧力容器]
評価す る具 体的 な事 故シー ケン スは ,い ずれも 事故 後長 期に おいて 炉心 が露出 する 場合に 燃 料被覆 管温 度が上 昇 する事 象で あり, 炉 心流量 急減過 程にお いて 下部プ レ ナム内 の流 量配分 が 不均等 にな る場合 が あるが ,事故 直後に 再循 環ポン プ がトリ ップ するた め 影響は 小さ い。し た がって ,三次 元効果は燃料被覆管温度に対し重要度が低いと考えられる。
表 2-2 炉心損傷防止対策の有効性評価の物理現象のランク
事故シー ケンス グループ
高 圧 ・ 低 圧 注 水 機 能 喪失
高 圧 注 水 ・ 減 圧 機 能 喪失
全 交 流 動 力 電 源喪失
崩 壊 熱 除 去 機 能喪失
LOCA 時 注 水 機 能喪失
格 納 容 器 バイパス ( イ ン タ ー フ ェ イ ス シ ス テ ム LOCA)
分類 評価指標
物理現象
燃 料 被 覆 管温度
燃 料 被 覆 管温度
燃 料 被 覆 管温度
燃 料 被 覆 管温度
燃 料 被 覆 管温度
燃 料 被 覆 管温度
炉心 (核)
(1) 核分裂出力 L L L L L L
(2) 出力分布変化 L L L L L L
(3) 反応度フィードバック効果 L L L L L L
(4) 制御棒反応度 効果 L L L L L L
(5) 崩壊熱 H H H H H H
(6) 三次元効果 I I I I I I
炉心 (燃料)
(7) 燃料棒内温度 変化 L L L L L L
(8) 燃料棒表面熱 伝達 H H H H H H
(9) 沸騰遷移 H H H H H H
(10) 燃料被覆管酸 化 M M M M M M
(11) 燃料被覆管変 形 M M M M M M
炉心 (熱流動)
(12) 沸騰・ボイド 率変化 H H H H H H
(13) 気 液 分 離 ( 水 位 変 化)・対向流
H H H H H H
(14) 気液熱非平衡 H H H H H H
(15) 圧力損失 L L L L L L
(16) 三次元効果 H H H H H H
原子炉 圧力 容器 (逃が し安全 弁を含 む)
(17) 冷却材流量変 化 L L L L L L
(18) 冷却材放出( 臨界流・
差圧流)
H H H H H H
(19) 沸騰・凝縮・ボイド率 変化
M M M M M M
(20) 気 液 分 離 ( 水 位 変 化)・対向流
M M M M M M
(21) 気液熱非平衡 I I I I I I
(22) 圧力損失 L L L L L L
(23) 構造材との熱 伝達 L L L L L L
(24) E C C S 注 水 ( 給 水 系・代 替 注 水設 備 含 む )
H H H H H H
(25) ほう酸水によ る拡散 I I I I I I
(26) 三次元効果 L L L L L L
3.解析モデルについて 3.1 コード概要
S A F E R コ ー ド は , 長 期 間 の 原 子 炉 内 熱 水 力 過 渡 変 化 及 び 炉 心 ヒ ー ト ア ッ プ を 解 析 す る コー ド で あ り , 原 子 炉圧 力 容 器 に 接 続 す る各 種 一 次 系 配 管 の 破 断 事 故 , 原 子炉 冷 却 材 流 量 の 喪 失事 故 及 び 原 子 炉 冷 却材 保 有 量 の 異 常な変化等を取り扱うことができる。
本コードは仮想的な高出力燃料集合体 1 体を含めて原子炉圧力容器内を 9 ノードに分割し,原子炉圧力及び各ノードの水位変化等を計算する。また,
各 種 の E C C S 及 びR C I C 等 の 性 能 特性 を 入 力 す る こ と によ り , そ れ ら の 性 能 を 評 価 す る こと が で き る 。 炉 内 冷却 材 量 の 評 価 に 当 たっ て は , 上 部 タ イ プ レ ー ト 及 び 炉心 入 口 オ リ フ ィ ス 等で の C C F L 及 び 炉心 上 部 プ レ ナ ム に お け る サ ブ ク ール 域 の 局 在 化 に よ り冷 却 材 が 炉 心 下 部 プレ ナ ム に 落 水 する現象(CCFLブレークダウン現象)を考慮することができる。
ま た , 本 コ ー ド で は , 平 均 出 力 燃 料 集 合 体 及 び 高 出 力 燃 料 集 合 体 に 対 し て燃料ペレット,燃料被覆管及びチャンネルボックス等の温度計算を行う。
燃 料 被 覆 管 の 温 度 計算 に お い て は , そ の冷 却 状 態 に 応 じ た 熱伝 達 係 数 を 考 慮でき,また,燃料棒間の輻射及び燃料棒とチャンネルボックスの輻射を,
考慮することができる。
ま た , 燃 料 被 覆 管 と 冷 却 水 ま た は 水 蒸 気 と の 化 学 反 応 ( ジ ル コ ニ ウ ム − 水反応)を Baker-Just の式によって計算し,表面の酸化量を求める。さら に , 燃 料 棒 内 の 圧 力を 計 算 す る こ と に よっ て , 燃 料 被 覆 管 の膨 れ と 破 裂 の 有 無 を 評 価 し , 破 裂が 起 き た 場 合 に は ,燃 料 被 覆 管 の 内 面 に対 し て も ジ ル コニウム−水反応を考慮する。
本 コ ー ド の 入 力 は , 原 子 炉 出 力 , 原 子 炉 圧 力 等 の 初 期 条 件 , 原 子 炉 の 幾 何 学 的 形 状 及 び 水 力学 的 諸 量 , 燃 料 集 合体 及 び 炉 心 に 関 す るデ ー タ , プ ラ ン ト 過 渡 特 性 パ ラ メー タ , E C C S 等 の特 性 , 想 定 破 断 の 位置 及 び 破 断 面 積 等 で あ り , 出 力 とし て , 原 子 炉 圧 力 ,原 子 炉 水 位 , 燃 料 被覆 管 最 高 温 度
(PCT),燃料被覆管酸化量等が求められる。
な お , S A F E R コ ー ド は 「 軽 水 型 動 力 炉 の 非 常 用 炉 心 冷 却 系 の 性 能 評 価 指 針 」 ( 以 下 , 「E C C S 性 能 評 価 指針 」 と 称 す 。 ) で 妥当 性 が 認 め ら れ て い る モ デ ル を 使用 し て お り , B W Rプ ラ ン ト の 設 計 基 準事 故 の L O C A解析(ECCS性能評価解析)に適用されている。
3.2 重要現象に対する解析モデル
2 章において重要現象に分類された物理現象について,その物理現象を評 価するために必要となる解析モデルを表 3-1 に示す。
表 3-1 重要現象に対する解析モデル
分類 重要現象 必要な解析モデル
炉心
(核)
崩壊熱 崩壊熱モデル
炉心
(燃料)
燃料棒表面熱伝達 燃料棒表面熱伝達モデル
沸騰遷移
燃料被覆管酸化 ジルコニウム−水反応モデル
燃料被覆管変形 膨れ・破裂評価モデル
炉心
(熱流動)
沸騰・ボイド率変化 二相流体の流動モデル 気液分離(水位変化)・対
向流
三次元効果
気液熱非平衡 燃料棒表面熱伝達モデル
原子炉 圧力容器 (逃がし安全
弁を含む)
冷却材放出(臨界流・差圧 流)
臨界流モデル
沸騰・凝縮・ボイド率変化 二相流体の流動モデル 気液分離(水位変化)・対
向流
ECCS注水(給水系・代 替注水設備含む)
原子炉注水系モデル
3.3 解析モデル(1 )(2 )
S A F E R コ ー ド の 計 算 モ デ ル は 熱 流 動 解 析 を 実 施 す る 熱 水 力 モ デ ル と 燃 料 棒 熱 解 析 を 実 施す る 炉 心 ヒ ー ト ア ップ モ デ ル に 大 別 さ れる 。 主 要 な 計 算モデルを表 3-2 に示す。
3.3.1 熱水力モデル
S A F E R コ ー ド は 熱 力 学 的 に 均 質 , 平 衡 を 仮 定 し た 熱 水 力 モ デ ル を 持 ち , 圧 力 容 器 内 の 冷却 材 体 積 を 炉 心 シ ュラ ウ ド 等 の 炉 内 構 造物 に よ る 物 理 的な境界にしたがって 8 ノードに区分する。また,仮想的な高出力燃料集 合体 1 体を独立のノードとしてモデル化している。
原子炉圧力は,圧力容器内を 1 点で近似し,圧力容器全体の冷却材に対 する質量及びエネルギの保存式に基づき計算する。
各 ノ ー ド の 水 位 挙 動 や 冷 却 材 保 有 量 の 計 算 に は , 質 量 , 運 動 量 及 び エ ネ ル ギ の 保 存 則 を 適 用し , 二 相 流 体 の 流 動モ デ ル と し て ド リ フト フ ラ ッ ク ス モ デ ル 及 び 気 液 界 面か ら の 蒸 気 離 脱 流 に対 す る 気 泡 上 昇 流 モデ ル , 燃 料 上 部 等 で の C C F L モデ ル を 用 い て い る 。な お , 運 動 量 保 存 式は 下 部 プ レ ナ ム が 満 水 の と き に 再循 環 流 量 及 び 炉 心 入口 流 量 を 求 め る た めに 用 い ら れ , 炉心シュラウド内外の圧力損失のバランスを考慮している。
ま た , 大 破 断 L O C A 時 の 再 冠 水 過 程 に 下 部 プ レ ナ ム と 炉 心 に 水 位 が 別 々 に 形 成 さ れ る とき の 炉 心 各 チ ャ ン ネル の 平 行 流 路 の 流 動挙 動 を , 実 験 に基づいて近似的にモデル化している。
なお,破断口及びSRVからの流出流量は臨界流モデルを用いて計算し,
原子炉圧力が低下すると差圧流モデルに切り替わる。
(1)ノード分割
実機解析に用いるノーディングを図 3-1 に示す。ノード間の矢印は流路 を表わし,その方向は通常運転状態の流れの向きを表わしている。
原子炉圧力容器内は,冷却材保有量計算のために 8 ノードに分割してい る。これらのノードは,BWRの典型的な領域を与えるように選んでおり,
物 理 的 な 境 界 や 流 路抵 抗 な ど に よ っ て 分け て い る 。 ま た , 高出 力 燃 料 集 合 体 1 体を独立のノードとして設ける。
ノ ー ド 間 の 冷 却 材 の 移 動 は 流 路 を 介 し て 行 い , L O C A 模 擬 実 験 で C C F L が 確 認 さ れ た 燃料 集 合 体 上 部 と 下 部及 び 炉 心 バ イ パ ス 下部 の 流 路 に つ いてはCCFL計算を可能としている。
① ノード 1:下部プレナム
下 部 プ レ ナ ム は , 制 御 棒 案 内 管 外 側 の 下 部 プ レ ナ ム 領 域 で あ り , ベ ッ セ ル 壁 と 炉 心 支 持 板 によ っ て 仕 切 ら れ て いる 。 ジ ェ ッ ト ポ ン プ内 も 下 部 プ レ ナ ム の 領 域 と し て いる が , ジ ェ ッ ト ポ ンプ 内 の 水 位 は , シ ュラ ウ ド 内 の 圧 損 と ジ ェ ッ ト ポ ン プを 通 る 圧 損 を 考 慮 する こ と に よ り , 下 部プ レ ナ ム 内 の 水位とは別に計算する。
定 格 出 力 時 に お い て は , 再 循 環 ポ ン プ に よ り ダ ウ ン カ マ 領 域 の 冷 却 水 が 下 部 プ レ ナ ム に 供 給さ れ , 炉 心 入 口 オ リフ ィ ス を 介 し て 燃 料集 合 体 下 部 に 配分される。
② ノード 2:制御棒案内管
制 御 棒 案 内 管 は , 制 御 棒 案 内 管 上 部 で の 燃 料 支 持 金 具 で の 流 路 抵 抗 に よ り,炉心バイパスノードとは切り離している。
こ の ノ ー ド は , 上 部 の 燃 料 支 持 金 具 と の 間 隙 及 び 下 部 の 制 御 棒 駆 動 機 構 との間隙を介して炉心バイパス及び下部プレナムと通じている。
③ ノード 3:炉心
炉 心 は , 炉 内 の 全 燃 料 集 合 体 と し , 炉 心 内 の ボ イ ド 率 分 布 を よ り 詳 細 に 計算するために,軸方向に 12 のサブノードに再分割する。これらのサブノ ードは,集合体下部及び集合体上部の非加熱ノード(各 1 ノード),そし て 10 の加熱ノードからなる。炉心内の集合体下部の炉心入口オリフィスに よ っ て 下 部 プ レ ナ ムに 通 じ て お り , ま た, 燃 料 上 部 タ イ プ レー ト に よ っ て 上部プレナムに通じている。
④ ノード 4:炉心バイパス
炉 心 バ イ パ ス は , 燃 料 集 合 体 間 の 領 域 ( 中 心 バ イ パ ス ) 及 び シ ュ ラ ウ ド 壁 と 炉 心 最 外 周 の 燃料 集 合 体 の 間 の 領 域( 周 辺 バ イ パ ス ) とす る 。 こ の ノ ー ド は , 制 御 棒 案 内管 の 上 部 に あ り , 種々 の 漏 え い 流 路 を 通っ て 炉 心 下 部 と 通 じ て い る 。 バ イパ ス 領 域 と 下 部 プ レナ ム 間 の 小 さ な 漏 えい 流 路 も ま た 考慮する。
⑤ ノード 5:上部プレナム
上 部 プ レ ナ ム は , 炉 心 上 部 の 二 相 混 合 プ レ ナ ム 領 域 と , プ レ ナ ム 上 部 の 気 水 分 離 器 を 含 む 。炉 心 ノ ー ド と バ イ パス ノ ー ド か ら の 出 口流 量 は こ の ノ ー ド で 混 合 す る 。 炉心 ス プ レ イ ス パ ー ジャ 及 び 炉 心 注 水 ス パー ジ ャ か ら の 注入水とも,このノードで混合する。
上 部 プ レ ナ ム か ら 溢 れ た 水 と 蒸 気 は そ れ ぞ れ ダ ウ ン カ マ と 蒸 気 ド ー ム に 移行する。
⑥ ノード 6:下部ダウンカマ
下 部 ダ ウ ン カ マ は , 給 水 ス パ ー ジ ャ の 下 方 に 位 置 し , 炉 心 シ ュ ラ ウ ド 外 側 の ダ ウ ン カ マ 部 の領 域 で あ る 。 定 格 出力 時 に お い て , こ のノ ー ド は 未 飽 和 領 域 で あ る 。 こ の未 飽 和 水 の 水 位 は ,給 水 が 継 続 す る 間 ,給 水 ス パ ー ジ ャ の 高 さ に 維 持 さ れる 。 こ の 未 飽 和 水 ノー ド の 質 量 及 び エ ネル ギ 変 化 が 上 部ダウンカマノードとは別に計算される。
⑦ ノード 7:上部ダウンカマ
上 部 ダ ウ ン カ マ は , 給 水 ス パ ー ジ ャ と ダ ウ ン カ マ 水 位 と の 間 の 領 域 で あ り , 定 格 出 力 時 に おい て は , 飽 和 領 域 であ る 。 こ の ノ ー ド の上 部 の 境 界 は 二相混合水位として変動し,下部はノード 6 によって区別されている。
⑧ ノード 8:蒸気ドーム
蒸 気 ド ー ム は , ダ ウ ン カ マ と 上 部 プ レ ナ ム そ れ ぞ れ の 二 相 混 合 水 位 上 の 全 蒸 気 空 間 と す る 。こ の ノ ー ド の 空 間 部体 積 は , ダ ウ ン カ マや 上 部 プ レ ナ ムの二相混合水位が変化するにつれて変わることになる。
⑨ ノード 9:高出力燃料集合体
炉 心 の 燃 料 集 合 体 と は 出 力 の 異 な る 燃 料 集 合 体 の 冷 却 材 保 有 量 , ボ イ ド 率 , 水 位 及 び 燃 料 棒温 度 等 を 計 算 す る 目的 の た め に 高 出 力 燃料 集 合 体 1 体 が 独 立 し た 仮 想 領 域と し て モ デ ル 化 さ れて い る 。 こ の ノ ー ドの 熱 水 力 挙 動 は , す で に 計 算 さ れて い る 炉 心 の 圧 力 損失 か ら 計 算 さ れ , 燃料 棒 温 度 計 算 に 反 映 さ れ る 。 高 出力 燃 料 集 合 体 の 計 算結 果 は , 他 の ノ ー ドの 状 態 に 影 響 を与えない。
(2)質量及びエネルギ保存式
質 量 及 び エ ネ ル ギ の 流 れ に つ い て , 下 の 略 図 に 示 す 。 流 出 量 は , 負 の 流 入 量 と し て 考 え る 。な お , 対 象 と し て いる ノ ー ド を 明 記 す る必 要 が あ る 場 合には,図 3-1 で用いられているノード番号を使用する。
未飽和ノード 飽和ノード
a.未飽和ノードの質量及びエネルギ保存式
未飽和ノードiの質量保存式は,次式で与えられる。
i i
i f i
g
W W W
W
M
i ( ) ( ) (
) ( )
(3.3.1-1)エネルギ保存式は,次式で与えられる。
hW M h M h V P
Q
i( )
i i i i i
i (3.3.1-2)(3.3.1-1),(3.3.1-2)式より,エンタルピ変化率は,次式のようになる。
i i
i
Q hW h
iW V P M
h
i i i
( ) ( )
(3.3.1-3)ここで,
M : 冷却材質量
Q
: 伝熱または発熱による流入エネルギW
: 冷却材流量h
: エンタルピ
: 変換係数V
: ノード体積P : 圧力
添字 f は飽和液相,gは蒸気相,
は未飽和液相を示す。b. 飽和ノードの質量及びエネルギ保存式
飽和ノードiの蒸気及び水の質量保存式は,それぞれ次式で与えられる。
i
i g i fg
g
W m
M
( )
i
i i f i fg
f
W W m
M
(
) ( )
ここで,
(3.3.1-4)
i i i
hW W Q
) (
) (
i f
i i i g
W W hW W
) (
) (
) (
) (
M
iQi
M
giM
fim
fgi
エネルギ保存式は,次式で表わされる。
P V V h
M h M h M h M
P V h
dt M hW d
Q
g f f
f f f
g g g g
i i
i i
i
i i
i i
( )
' ) ( )
(
(3.3.1-5)
(3.3.1-5)式左辺の正味エネルギ流入量は,次式で表わされる。
ji
j
W
h W
h W h hW
j i f f i g g
i
) ( ) ( )
(
(3.3.1-6)さらに,飽和水及び飽和蒸気のエンタルピが圧力変化に伴い飽和限界線 上にそって変化することから,
P
dP
hf dhf , P dP
hg dhg (3.3.1-7)
の関係を用い,(3.3.1-4),(3.3.1-5),(3.3.1-6)及び(3.3.1-7)
式により,フラッシング率は,次式のように求まる。
fg g
g g f
f f j
f
fg i M h
dP v dh dP M
v dh P W h h Q
m i j ji i i
( ) (
) (
)(3.3.1-8)
ここで,
v
g :蒸気の比体積 v f :液相の比体積このフラッシング率は,以下に述べるような補正を加えて使用される。
c. 蒸気ドーム内の質量及びエネルギ保存式
蒸気ドームには,ダウンカマ及び上部プレナムからの蒸気が全て流入す る。その質量保存式は,次式で与えられる。
)
88
(
gg
W
m
(3.3.1-9)蒸気ドームのエネルギ保存式より過熱エネルギは次式で表わされる。
) 8
8 ( g
g
sh g M
dP v dh P Q
E
(3.3.1-10)この過熱エネルギ(
E
sh )は,蒸気ドームに直接接しているノード,す なわち,上部プレナムとダウンカマのフラッシング率に補正項を加える形 で配分される。これは,SAFERコードでは蒸気ドームに蒸気過熱を考 慮しないようにしているため,水面で蒸発があるものとして補正している ものである。
i fg i
fg
i
i fg sh fg i
fg m m
m h
m E7 , ,
5 , ,
/
(3.3.1-11)ここで,
5
i
:上部プレナム 7,
6
i :ダウンカマ
i fg i
fg
m
m
, ,
(3.3.1-12)ここで,
9 4
1
i
i
〜 及び : 上部プレナム及びダウンカマ以外のノード d. 圧力変化率S A F E R コ ー ド で は 圧 力 容 器 内 の 圧 力 が ほ ぼ 一 様 で あ る こ と を 仮 定 しており,その圧力変化は,全圧力容器体積が一定であることから,次の ように導かれる。
0
V
M
gv
gM
gv
gM
fv
fM
fv
fM v M v
(3.3.1-13)ここで,圧力容器全体の質量変化率は,高出力燃料集合体を除く原子炉 圧力容器内ノードの質量変化率を合計することにより計算される。これら は蒸気ドームを含めて,以下のようになる。
i g
g M i
M ,
i f
f M i
M ,
i
M i
M (3.3.1-14)
また,比容積の導関数は,次式で表わされる。
P
dP
vg dvg , P dP
vf dvf ,
P
dP
v
dv
(3.3.1-15)正味の未飽和水エンタルピ変化率は,次式で表わされる。
i i
i
i M i M
h
h (3.3.1-16)
(3.3.1-14),(3.3.1-15)及び(3.3.1-16)式により,(3.3.1-13)
式は,以下のようになる。
P M v dP M dv dP M dv h M
h v v M v M v M
P g g f f g g f f
(3.3.1-17)