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観光人類学ウォッチング -ロングステイ・ツーリズム-/CEL【大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所】

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Academic year: 2021

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山下 晋司

Written by Shinji Yamashita

山下 晋司(やました・しんじ) 東京大学大学院総合文化研究科教授。1948年山口県生まれ。 73年東京大学教養学部卒業。78年東京都立大学大学院社会科 学研究科博士課程修了。専門は文化人類学。編著書に、『観光人 類学』(新曜社)、『バリ:観光人類学のレッスン』(東京大学出版会)、 『文化人類学入門:古典と現代をつなぐ20のモデル』(弘文堂)、『現 代人類学のプラクシス:科学技術時代をみる視座』(有斐閣)など。  近年の少子高齢社会の進展とともに、国際観光にも 新しいトレンドがみられる。ロングステイ・ツーリズムがそ れだ。長期滞在型の海外観光で、とりわけ退職者や年 金生活者が第二の人生を海外で過ごそう、というもの である。  「ロングステイ」という言葉は、1992年に当時の通産 省の認可を受けて設立された公益法人・ロングステイ 財団の造語だといわれる。ロングステイ財団では、「生 活の源泉を日本に置きながら海外の1か所に比較的長 く滞在し、その国の文化や生活に触れ、現地社会に貢 献を通じて国際親善に寄与する海外滞在スタイル」と 定義している。海外長期滞在型余暇の過ごし方で、そ の意味では新しい海外観光のスタイルでもある。  旅行会社各社は、特に2007年に退職を開始する団 塊の世代を視野に入れて、この新しいマーケットに手を つけはじめており、ロングステイ体験ツアー、下見ツアー などが企画・実施されている。出版も、JTBパブリッシン グから『年金を活かす! 海外ロングステイ30都市徹底ガ イド』(柳沢有紀夫編著、2004)が刊行され、「地球の 歩き方」でおなじみのダイヤモンド社は「地球の暮らし方」 シリーズの一つとして『ロングステイ2003-2005版』(2003) を出している。ロングステイ専門誌、「海外で“人生を遊 ぶ”おとなの旅行誌」として『rasin(季刊ラシン)』(イカ ロス出版)が2003年から発刊されている。  ロングステイ先としては、タイのチェンマイ、マレーシア のペナン、オーストラリアのゴールドコースト、タイのバンコ ク、アメリカ合衆国のハワイなどが人気ランキングのトッ プグループだ(ラシン編集部編『ロングステイ都市ランキ ング─楽園の探し方』イカロス出版、2005)。他方、受 け入れ側も「退職者ビザ」を用意するようになっている。 特にタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアなど東南ア ジア諸国が積極的だ。タイやマレーシアでは、高齢者の ケアとからめて「ヘルス・ツーリズム」の一環として展開 するむきもある。  ロングステイ・ツーリズムは、より大きな視野からみると、

「国際退職者移住」(international retirement migration)

の一部である。ヨーロッパでは、イギリス人やドイツ人など 北ヨーロッパの人々が退職後、気候的にも生活的にも より快適な南のスペインで過ごすことは1970-80年代か らみられ、EU成立後その傾向は加速している。  日本でも、同じ額の年金を使うなら、物価が高く、ます ます暮らしにくくなりそうな日本よりコストの安い海外で、 日本ではできない質の高い退職生活を送るという生存 戦略の選択は大いにありうる。少子高齢化社会の到 来で、ますます現実味を帯びてきたわけだ。こうしたな かで日本は、近い将来、アジア諸国から若い労働力を「輸 入」し、日本からは年寄りを海外に「輸出」、という国に なるのであろうか? CEL 15 C E L M a r. 2 0 0 6 都 市 の オルタナティブ・ツーリズム

参照

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