1 May-June. 2003
不動産証券化を共に推進する情報誌
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エイリス 2005・July-AugustTHE ASSOCIATION FOR REAL ESTATE SECURITIZATION
中部イタリアの丘の上に築か れた都市シエーナ。車を降りて ゆるやかな坂道をゆっくりと歩 く。中世都市特有の狭い道。赤 みのつよいレンガと石を組み合 わせたゴチック様式の建物が密 度濃く立ち並んでいる。その密 度の濃さこそがこの街の魅力な のだが、丘の頂き近くの建物の アーチをくぐると、突然、広々 とした空間に出る。カンポ広場 である。狭い街道と、突然ひら ける広々とした空間、そのコン トラストの見事さに誰もが息を 飲む。初めての人は必ず喚声を上げる。「世界で最も美しい広場」。カンポ広場に立っ たときに、誰もがそう表現したくなる。広場は円型で1周ほぼ300メートル。ゆるや かなスロープがついているのは雨水を貯水するためなのだが、円型のカーブとあいま って貝殻を連想させ、それがこの広場の色気にもなっている。ヴェネチアの長方形の サンマルコ広場とは対照的である。ところで、カンポ広場が世界で最も美しい広場だ といわれるゆえんは何か。どうして、何ゆえにそれほど称賛されるのか。広場に面し て立つゴチック様式のプッブリコ宮殿とマンジアの塔の美しさはいうにおよばないが、 他の建物を含めてすべての建物がほぼ完全に広場を包囲していること、あたかも愛お しい広場を抱きしめているが如くに立ち並んでいること、そのことがこの広場に不思 議な神秘性を付与している。広場でありながら開放系ではなく閉鎖系であること、そ の逆説的な形態がカンポ広場の魅力でありユニークさなのである。中世の頃はシエー ナ市民だけが入ることを許された場所だったのではないか。市民たちの秘密の場所。 聖なる祭りの場所であり、恋人たちの憩いの場所だった。つまり濃密な連帯感と結束 力を誇っていた共同体の成員のための広場だったのであり、それは近代人が考える開 放的な公共空間としての広場ではない。そこがカンポ広場の美しさの秘密なのであ る。 (井尻 千男:拓殖大学教授) カンポ広場 (イタリア/シエーナ) 提供●世界文化フォト
表紙文 井尻 千男●いじり・かずお 拓殖大学教授/日本文化研究所所長/元日本経済新聞編集局文化部編集委員 1938年山梨県生まれ。立教大学卒業後、日本経済新聞社入社。編集委員として文化論を中心に広く社会論評を手 がける。97年 4 月より拓殖大学教授。『消費文化の幻想』『劇的なる精神 福田恆存』『言葉を玩んで国を喪う』 『自画像としての都市』『保守を忘れた自民政治』など著書多数。 孔雀青(ピーコックブルー) ピーコックブルー(peacock blue)は孔雀の羽根のなかに見る冴えた青を言 う。孔雀青はその訳名である。 SPECIAL ●座談会「商業施設特化型REIT×住居特化型REIT」………3 廣本 裕一氏(三菱商事UBSリアルティ(株) 代表取締役社長) 戸谷 眞一氏(フロンティア・リート・マネジメント(株) 代表取締役社長) 山内 章氏(パシフィック・インベストメント・アドバイザーズ(株) 代表取締役) 藤田 哲也氏(CBREレジデンシャル・マネジメント(株) 代表取締役社長) 司会:巻島 一郎((社)不動産証券化協会 専務理事) NEWS ●平成18年度「不動産証券化に関する税制改正要望」 の概要 ………16 ●平成18年度「制度改善要望」の概要 ………18 REPORT ●スモールビジネスモデルがまちを変える………20 清水 義次氏((株)アフタヌーンソサエティ 代表取締役) ●不動産証券化に関する会計・税務の実務上の論点④ 投資法人、特定目的会社における税務上の論点 ………25 鬼頭 朱実氏 (プライスウォーターハウスクーパース税理士法人中央青山 金融部代表社員) ●投資分析 入門の入門 第1回 現在価値∼資金と時間との関係∼………29 内藤 伸浩氏(三井不動産株式会社 S&E総合研究所 兼不動産投資研究所 主任研究員)
●ERNST & YOUNG Global Real Estate Newsline インサイダーレポート「グローバル不動産投資」………35 デール・アン・レス氏 (アーンスト アンド ヤングリアルエステートグループ) ●米国市場の波乱要因 ―住宅バブルとヘッジファンドの崩壊―………39 井出 保夫氏(井出不動産金融研究所 不動産金融アナリスト) INFORMATION ………42
●J-REIT New Comer ………56
3 July-August. 2005 今や不動産証券化市場の核として着実にその規模を拡大してい るJ-REIT。本年度は新たな上場が相次ぐと予想されることから勢 いは一層増すものと見られています。REITのファンドタイプや財務 戦略の多様化が進むなかで、各投資法人にとっては個性をいかに 投資家にアピールし選ばれるかが大きなテーマとなっています。 去る4月28日、商業施設に特化するREIT、住居に特化するREIT の運用会社トップにお集まりいただき座談会を開催しました。各社 の戦略や運用の理念、またREITのあるべき姿についてもお話いた だきました。 ARES SPECIAL
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座 談 会
三菱商事UBSリアルティ(株) 代表取締役社長 廣本 裕一氏 ARES SPECIAL フロンティア・リート・マネジメント(株) 代表取締役社長 戸谷 眞一氏 パシフィック・インベストメント・ アドバイザーズ(株) 代表取締役 山内 章氏 (社)不動産証券化協会専務理事 巻島 一郎 CBREレジデンシャル・マネジメント(株) 代表取締役社長 藤田 哲也氏 参加者 司 会 進 行
座 談 会
出 席 者
5 July-August. 2005 巻島 最初に、運用会社および投資法人の 紹介、上場に至る経緯や成り立ちなどのお 話をお願いします。 廣本 日本リテールファンド投資法人は 2002年3月12日に3番目のREIT、商業施設第 1号として上場しました。上場時は4物件、 400億円強の資産規模。運用会社は、三菱商 事51%とUBSアセットマネジメント49%の 合弁会社です。 上場してから数日は、投資家の皆さんか らクレームの電話が何本もかかってきたの を覚えています。47万円で公開し最初の1週 間で44万円を切るまでに下がったので。上 場した時に東証で記者会見をしますね。皆 さんは公募価格をクリアしていたので暖か い雰囲気だったでしょうが、私の場合は 「いきなり公募価格割れですね、どう思われ ますか?」と(笑)。それから半年程は47万 円台で推移して、ある外国人投資家からは 「死んだ人間の心電図のようなチャートだ」 と言われました(笑)。 2002年の秋頃から、税制改正や制度面の 整備等もあって上昇に転じ、それ以降は外 部成長もできています。直近では総資産が 2,600億円超、取得ベースでは約3,000億円と、 上場時から約7倍の成長を遂げることができ ました。規模的には3番手ですが、成長率で 言えば高い方です。 私が三菱商事のなかでREIT事業を立ち 上げた時の基本コンセプトは、「金融事業」 です。今までになかったプロファイルの金 融商品を投資家に提供する。そのためには 国内企業がローカルルールでやっていては ダメだと考え、グローバルパートナーとし てUBSと組むことにし、彼らの経験や手法 を導入したことも成長の一因だったと思い ます。 戸谷 フロンティア不動産投資法人は2004 年5月に設立、同年8月9日に上場しました。 14番目のREIT、商業施設としては2番目で す。私どもは不動産会社でも金融会社でも ないメーカーであるJT(日本たばこ産業 (株))100%子会社です。昭和60年JTの株式 会社化後、早い段階から不動産事業を行っ ていましたが、中核事業への選択と集中を 進める中で、不動産開発事業は新規投資を 行わないこととし、既存賃貸事業用不動産 についても原則売却するという基本方針を 定め、今後発生する大規模敷地等の効率的 売却方法を検討する中でREIT参入を決断し たものです。今回、JTはフロンティア不動 産投資法人に648億円の物件を売却し、総じ ARES SPECIAL
て土地の簿価がかなり低かったこともあり、 400億円以上の利益を出しています。つまり JTが選択と集中のなかで外したものを当社 が利用したということです。 JTは賃貸オフィスビル、高級賃貸マンシ ョンも保有しておりますが、なぜ「商業施 設特化型」かと言えば、メーカーに過ぎな いJT単独スポンサーである私共が投資家を 説得できる成長戦略を描けるのは商業施設 だったからです。JTは昨今の合理化におい て14工場を閉鎖しましたが、商業施設開発 に有望な立地のものがかなり含まれてお り、商業施設ならば今後もスポンサーとし て継続的な物件提供が可能だと判断したわ けです。現状においては物件はすべてJTか ら、社員もすべてJTからの出向者となって います。 山内 日本レジデンシャル投資法人は2004 年3月2日に上場した初の住居特化型REITで す。運用会社のパシフィック・インベスト メント・アドバイザーズ株式会社は、不動 産ファンド運用のパシフィックマネジメン ト株式会社が母体です。同社では98年から プライベートファンドで住宅を扱い始め、 住宅への投資・運用のノウハウは十分に蓄 積されていました。そのノウハウを活用し、 長期運用の視点で企画したのが日本レジデ ンシャル投資法人です。 賃貸マンションを群管理することの付加 価値は大いにあります。ブランド戦略もそ の1つですし、管理方法やサービスのレベル を同じ水準に向上させることができます。 建物の仕様にしても、テナントへのサービ スにしても従来の日本の賃貸マンションは レベルが高くなかったと言えます。税務上 のメリットを主目的とした個人オーナーが 片手間に経営するという形から、J-REITと いう素晴らしい仕組みを使わせていただき プロが管理する形へ移行するところに、私 どものチャンスがあると思っています。他 のプロパティタイプにはない成長機会であ ると捉えています。 また日本人の住居の確保の仕方も、ロー ンを組んで購入するだけでなく、賃貸マン ションを上手に使用するという流れに変化 するのではないかと予想しています。日本 レジデンシャルが運用する賃貸マンション に住んでいただいているテナントに、日本 レジデンシャルの投資口を保有していただ く。そんなモデルを実現できれば面白いと 考えています。 現在の資産額は約1,200億円(70物件)、約 4,000テナントと順調に成長していますが、 これからJ-ERITの住宅セクターも多様化・ 拡大していきますので、セクターの発展に 貢献すると共に、当社のビジョンを明確に して投資家とテナントに信頼いただけるよ う誠実に運用していきたいと考えています。 藤田 ニューシティ・レジデンス投資法人 ARES SPECIAL
7 は2004年12月15日に15番目のREITとして上 場しました。50物件、610億円という資産規 模で上場しましたが、4カ月後の現在は、61 物件、760億円、約2,500テナントという状況 です。賃貸住宅としていかに住み良く、便 利な生活をお届けできるかということを第 一に考えて運用しています。 特徴として、賃貸住宅でも高級分譲マン ションの仕様にしています。またテナントの 皆さんに長く住んでもらうために、さまざま なサービスの提供に取り組んでいます。例 えば、この4月から24時間の電話サービスを 始めました。夜中にエアコンなどの設備の 故障や水漏れの苦情があれば担当が飛んで いく。また物件ごとのポータルサイトをウェ ブ上に開設し、入居者に宅配サービスやト ランクルーム、レンタル家具などを割安で提 供するというサービスも始める予定です。 当 社 は ア メ リ カ の CB Richard Ellis Investorsと日本のニューシティコーポレー ションが主な出資会社です。アメリカの不 動産投資会社の資産運用ノウハウと、日本 の住宅デベロッパーの物件供給をバックボ ーンに、「住宅特化型」として長期的で安定 的な資産運用をしてまいります。 巻島 現在のJ-REIT市場の動向について、 どのようにご覧になっていますか。 廣本 日本リテールファンドは2002年の上 場以来、毎年増資を行い、本年3月には3回 目の増資を行いました。増資に応じる投資 家を継続的に見ていて、投資家のREITの捉 え方が変わってきたと感じます。 例えば最初の増資では、機関投資家のオ ーダーの3分の2が国内の地方銀行からでし た。それが2回目の増資では2分の1になり、 3回目では3分の1になった。ウェートが相対 的に下がってきているのがわかります。そ れに代わって増えているのがREITを組み込 んだ投資信託や生保、損保ですね。さらに3 回目については、信託銀行等の年金資金も 見られます。 地銀に支えられた特殊な商品から、ごく 普通の株式と同等の投資家分布になってき た。REITが「メジャー」の資産クラスにな ったのだと思います。 戸谷 先日、1回目の決算を終え地方を回っ た印象は、REITの多様性を認めてもらえる ようになったことです。というのも、最初 の頃は日本リテールファンドとの比較ばか りだったのが、ようやく両者の違いを理解 してもらえました(笑)。市場が成熟してき July-August. 2005 ARES SPECIAL
たのでしょうね。 今はファンド・オブ・ファンズ(以下 FOFs)の影響が大きいです。ある大型の FOFsは3カ月に1度だけ配当を出すのです が、その期に当たった銘柄は権利確定後、 換金されてしまう。当社も昨年の12月だけ で3,000投資口が売られましたから。またイ ンデックス型の場合は、一定の期限までに 組み入れ比率の調整を行わなければならな いため短期間に動きが集中しますので、無 視できない存在です。 廣本 J-REITが株式並の資産クラスになれ ば流動性がそれだけ増すということですか ら、いろいろと仕掛けてくる投資家がいる ことを前提に考えなければならない。突き 詰めれば日々の投資口価格に一喜一憂もで きないわけです(笑)。 山内 開示した予想配当は安定的にお出し している訳ですから、下がれば買いに入る 方もおられますし、過剰に気にしても仕方 がないです。昨年あたりだと、「分散が必要 だから性格の違う住宅REITを長期で持と う」という投資家が多かったですが、最近は 「ありがとう、この間売ってキャピタルゲイ ンが出たよ」と。新しく買っていただける方 の幅も広がり増えましたが、当然、売る方 も増えています。地銀もFOFsのファンドマ ネージャーもそうです。そういう意味では、 流動性のある正しいマーケットになってき たのだと開き直っています(笑)。我々の仕 事は住宅REITの安定性を理解いただけるよ う運用に集中するということです。 藤田 今年は新たに10銘柄程度が上場する と言われていますね。住居の場合は1物件当 たりの規模が小さく、数も多いものですか ら、そのなかでいかに特色あるREITにする ARES SPECIAL
9 かがテーマだと思います。アメリカでは住 居REITが約20社あります。日本でも今後増 えていくと思いますが、われわれは「ニュ ーシティー・レジデンス」ならこんな生活 ができるとイメージできるような物件を供 給していきたい。一方で、アナリストの方 の中にはチラシを持ってこられて「今、御 社は何号室が空いていますね」とか、色々 な意味で透明性が高いでしょう(笑)。よく 言えば皆さんに馴染みのある投資対象を扱 っているということです。 戸谷 住人が投資口を購入されるケースと いうのは多いのですか? 山内 まだ少ないですが、長期的には「住 んでいる方が支え、利益を享受するREIT」 という形にできれば社会のインフラを支え るパブリックファンドとして安定した金融 商品になると思います。 戸谷 そういう形ならば、引っ越さない限 り保有し続けてくれますよね。 山内 商業REITでも、ショッピングセンタ ーを利用される方に購入してもらうような 形は面白いのではないでしょうか。東急リ アル・エステートは、中吊り広告などを利 用して沿線に住む個人投資家へ積極的にア ピールしておられますね。 戸谷 商業施設の場合は、実際に建物に入 って客の入り具合まで確認できますから、 非常にわかりやすい。だから個人投資家の 割合が多いのかと思っていたのですが、実 際には全くそんなことはありませんね。 山内 住居の場合は、上場REITの保有する 賃貸マンションであるということがテナン トの「安心・信頼」につながると思います。 日本リテールファンドの施設ではコードネ ームをビル名にしてブランド化を進め、安 心感や信用、魅力をプラスしていますね。 藤田 アメリカの住居REITには、住人の賃 料の一部を積み立て、将来的に自分の住居 の買い取りに回すことができるシステムが あります。あちらでは開発型REITができる ので、自社が開発した物件に入居したテナ ントがその賃料を区分所有で将来的に買い 取れるわけです。 巻島 まさに積み立て型ですね。 藤田 そうです。賃貸住宅には賃料へのマ イナスのイメージを持たれがちですが、積 み立て型があれば違った価値観も提示でき るでしょう。同じようなことができないに しても、将来的に賃料が何らかの形で還元 できるようなやり方はぜひ考えてみたいと 思っています。 廣本 個人投資家は資金を支える投資家と 顧客という2つの顔を持ちます。ショッピン グモールの場合、各テナントはチラシなど で日々プロモーションをしますが、オーナ ーであるREITがそのものをプロモートする のは実は難しい。一方で、投資家であると 同時に潜在的な顧客である個人の皆さんに、 日本リテールファンドをご覧いただく宣伝 ツールでもあるので運営には工夫が必要で す。例えば「8953」という証券コードを名 前につけてみるとか、「セキュリティ」をキ ーワードに十分な安全対策を説明するとか。 不動産業の立場だけならばテナントに対し てだけアピールすべきことを、消費者・顧 客に対して二重に行うわけです。それもコ ストをかけ過ぎてしまえば配当に悪影響を 与えますから、制約のなかで何を効果的に 行うかというのは知恵の出しがいがあると July-August. 2005 ARES SPECIAL
思っています。 藤田 セキュリティについては、住宅のお 客様も関心が高いです。最近、オートロッ クを2つ設置したマンションを造りました が、反響が大きかったです。 巻島 市場の成長とともに投資家の見る眼 も刻々と変化していますね。 巻島 さて、米国では資産規模が30億ドルを 越すとそのREITは安定すると言われている ようですが、目標とする資産規模があれば教 えてください。その他、今後の投資方針、 成長戦略などについてお聞かせください。 廣本 外部成長については「全方位外交」 が今後も引き続き方針となります。スポン サー会社が豊富に物件を所有しているわけ でないし会社の系列なども乗り越えて行か ざるを得ない。日系、外資系も問いません。 外資系ファンドと入札で戦って負けること がありますが、そういう時は負けたと思わ ない。3年後には組むこともあるでしょう (笑)。実際、そういったケースも最近は出 てきています。これを当社では「ウインブ ルドン化現象」と呼び、シングルスでは敵 だった相手とダブルスではチームを組んで 戦うこともあると考えています。物件取得 のマーケットは複雑化しています。オフィ スも商業施設も住宅も入ったものをバルク 買いするとなれば、単独では行けない。そ こで外資系だろうと私募ファンドだろうと、 それぞれの分野で強いところとチームを組 ませていただく。強みを持ったREIT同士で 組むこともあると思います。外部成長にお ける系列を越えたパートナリングという形 ですね。 さらに最近は、開発型SPCへの匿名組合 出資によって完成前の物件の優先取得交渉 権を得るなど、限られた比率ではあります が将来の物件取得にも取り組んでいます。 取得の技を増やしつつ組む相手も広げてい くということです。 大型の開発物件は出口でREITが待ってい れば、それだけリスクを下げられます。そ うなれば、住宅とオフィス、商業施設と住 宅といったREITが連合軍を組んで待ってい ることで、大規模な「街づくり」ができる。 そういう時代になってくるのではないでし ょうか。 巻島 デベロッパーから見れば、それは非 常に安心感がありますね。 廣本 そこに至るにはまだ途上にあります。 ですが、最終的にREITがそのような役割を 担えれば、日本にREITが誕生した意義が明 らかになるでしょう。 戸谷 全く同感ですね。自分では持たずに 開発利益だけをとりたいという方たちは大 勢いるはずです。それに対してREITが早い 段階でコミットできれば、競争による価格 のつり上げも減るでしょう。JTの場合、工 場敷地を更地にして物件を作れば当社は買 うわけですから、開発リスクは自然災害な どの期間リスクだけに限られます。従来の 投資に比べてはるかに投資基準が下がった と言えます。 フロンティア不動産では基本的に築浅で ARES SPECIAL
11 長期契約という運用方針でポートフォリオ を組んでいますので、証券化の出口物件等 にはなかなか投資基準に合致する物件がな い状態で、開発物件に傾斜せざるを得ない 状態です。今後数年はJTから物件が入って きますので、それよりも不利なものを無理 に買う必要もないわけです。ポートフォリ オを汚したくないのでJT以外の第1号物件 についてはピカピカの物件を買いたいと思 っています(笑)。 廣本 それはハードルが高いですね。 戸谷 だからなかなか買えないんです(笑)。 ある程度時間さえかければJT物件だけで 2,000億円は行けるとも思っています。商業 施設の物件取得については、日本リテール ファンドだけを競争相手として見ていたの ですが、実際は全然違いますね。結果を見 てみると思いも寄らないところが落札して います。 廣本 正直、最近負けていますね(笑)。地 域とか物件の種類によるのですが、私募フ ァンドや他のREITだったりすることもあり ます。 山内 我々も公開入札では負けることが多 いですが、住宅の可能性は開発可能なプラ イムエリアがまだまだ残されている点です。 ただ既存の物件についてはレベルの高いも のが少ないので、いかにデベロッパーと組 んで開発物件を組み込むかが重要です。そ の意味では日本リテールファンドと同様に 「全方位外交」でやっています。 デベロッパーやPM会社、リーシング会社、 リフォーム会社といったみなさんに当社の ビジョンをご理解いただき、外部成長・内 部成長の英知を結集し発展する“住宅産業 全員参加型REIT”というイメージです。住 宅総合型のREITとして、テナント分散の観 点から運用する賃貸マンションの幅も広げ ています。学生向けマンションもあれば月 額賃料が百万円を超える超高級マンション もあります。当然、管理・リーシングの手 法も違いますからそれぞれのプロと組んで、 このREITを成長させていくことを目指して います。 巻島 住宅ではよく、学生マンションから 始まり、分譲マンション、郊外の一戸建て といった「住宅すごろく」のようなものが ありますが、その新しいパターンを提示す ることになるかもしれませんね。 廣本 しかし逆にそれが進みすぎてしまう と、住み替えが促進して入れ替えが頻繁に 起きてしまいますね。それは問題ではあり ませんか? 山内 ライフステージの変化や勤務地の変 更に伴い、一定程度の入れ替えが起こるこ とは賃貸マンション運営の前提として認識 せざるを得ません。「住宅すごろく」をこの REITの中で完結していただきたいと思って います。その中で、ファミリータイプに長 July-August. 2005 ARES SPECIAL
く住んでいただけるテナントさんは非常に 重要ですし、より長く住んでいただけるよ う対応しております。一方で、現状、最も 賃貸需要が強いのは都心の50∼60㎡のコン パクトタイプのマンションです。夫婦2人で 子供はいない、共稼ぎで家賃の負担力もあ るといった、将来、ライフステージが変わ りやすい人たちに賃貸のニーズが高いので す。このような層に対し、分譲マンション を購入する「固定」ではなく、賃貸マンシ ョンの「自由」を提供したいと考えており、 動くことを前提としている層への訴求にも 注力しています。 藤田 当社は、賃貸住宅のポートフォリオ を運用するにあたって最大のポイントは回 転率をいかに低く抑えるかがキーだと考え ています。住宅の場合は1度空いてしまうと 空室期間が生じます。また、原状回復費や 仲介手数料といった貸し手側の負担が大き いことから、お客様の囲い込みをしたいと 思っています。ライフステージに合わせて ニューシティ・レジデンスの中で住み替え てほしいですし、転勤の時もニューシテ ィ・レジデンスの中で移動してほしいです。 また、住宅は分散が効きやすいので地域 的な分散を図りたい。ただ取得競争が激し くなっているので簡単には買えないですね。 稼動中の物件ですと手が出しにくい。そん な時は、時系列で分散すると考えるように しています(笑)。われわれはスポンサーが デベロッパーですのでその強みを活かすこ とを考えています。 藤田 住宅の良いところは安定している点 なのですが、逆に言うと、安定しているが 故に賃料が上げられないんですね。商業施 設であれば売上と連動して賃料が上がる場 合がありますが、ボーナスが上がったから と言って賃料を上げるわけにはいきません ARES SPECIAL
13 から(笑)。そういう意味では、少しリスク を取った買い方もしていけるような、安定 と挑戦を兼ね備えた住宅REITのポートフォ リオを築いていきたいと考えています。 戸谷 それには規模の問題をクリアする必 要がありますね。 日本リテールファンドは変動賃料を一部 採用されていますが、われわれは全て固定 賃料です。600億円程度の規模では変動賃料 を導入していいのか疑問がありますので。 数千億円の規模ならば変動賃料を一部導入 することもできると思いますが、今の規模 では難しい。 廣本 われわれも当初は4物件でしたので同 じでした。しかし30物件まで増えると、「内 部成長を可能にするための外部成長」がで きるようになる。いわば臨界質量に到達す るということです。 当社での内部成長というのは大規模修繕、 建て替え、リニューアルです。商業施設で は、10∼15年を経たら、これらを大胆にや らないといけません。お手洗いをちょっと 修繕しました程度では意味がない。当然、 工事期間中は賃料が取れない場合もあるの ですが、工事終了後は、以前よりも高い賃 料をいただける。これが商業施設の内部成 長パターンだと思っています。それを可能 にするには、やはり規模が必要です。加え てリスク分散の点からは、30施設のうちエ ース級の物件が1つあるよりもある程度均等 の分散が必要となりますね。 山内 日本レジデンシャルが上場した際に は、物件数が多いため「トロフィーがない」 「どの物件を見れば御社のREITがわかるの か」と盛んに言われましたね(笑)。 住宅は1棟ごとの規模が小さいためポート フォリオとしての安定的な分散がなされる 規模が総額として小さく、上場時に400億円 で分散は十分だと言われました。その後、 規模を拡大することでバランスと分散を維 持しながら一棟100億円を超える物件の取得 が可能になりました。 巻島 ブランドを統一していれば、全体で ひとつの「トロフィー」ということにはな るのではないですか? 藤田 そうですね。全体で均等の質とサー ビスのあるREITというイメージを持ってい ただけますね。そうなると、投資家やテナ ントに対してだけでなく、仲介のブローカ ーの方にも安心感をもってテナントを案内 できるメリットを与えられるのです。 巻島 ニューシティ・レジデンスとしては、タ イプ別の分類は採用しているのでしょうか? 藤田 現在は61棟ですから、そこまでには至 っていません。今後数が増えればサブブラ ンドを構築するのはあり得ますが、まずは ニューシティ・レジデンスとしてのブラン ドを確立することが優先だと考えています。 現状では異なるデベロッパーの開発物件 を買っていますので、名前は同じでもエント ランスまでは同じではない。そのためサー ビス内容でブランド化を進めています。ブ ランドを提供するのはテナントと接するPM の方たちです。そのPMがバラバラだとブラ ンド作りは難しい。そこで当社では、PMの 専門会社をJ-REIT用に立ち上げました。 また当社は開発の早い段階でコミットす ることでブランド力強化に努めます。例え ば、賃貸マンションではエントランスを豪 華にするよりも、テナントの関心がより高 July-August. 2005 ARES SPECIAL
いセキュリティ設備に資金を投じさせると いったことや、最もコストのかかる原状回 復工事費を抑えるためのスペックの開発を 進めるといったことです。 巻島 それならば入居者も納得するでしょ うね。 最後に今後の抱負など自由にご発言くだ さい。 戸谷 フロンティア不動産は「特別なREIT」 だと言われていますが、その特色を活かし ていきたい。JTからの物件供給と並行して 市場の物件も厳選し取得して、2,000億円に 到達したいところです。ただ、2,000億円を 超えたらそれ以上増やさないという選択も ありうると考えています。物件の入れ替え だけで規模は増やさない。増やさないとい う戦略で他のREITとの差別化を図ることも 可能だと考えています。まだ到達していな いのでわかりませんが(笑)。 廣本 日本リテールファンドは今の路線を 守り、多様な技を駆使しいろいろなプレイ ヤーと組みながら進んでいきたい。そして 最終的に「街づくり」に対して資金を供給 できるようになれば、REIT業界のみならず 不動産業界全体に対する役割が明確になる と考えています。そのためには市場規模の 拡大が必要です。今は非常に良い環境です が、だからこそ運用者側の規律をいっそう 厳しく意識していく必要があるでしょう。 ただ、意味のない規制や頑迷な解釈といっ たものとは、皆さんと力を合わせて毅然と 戦っていかねばならない。そこのメルクマ ールは結局、「For the Investor」かどうか だと思っています。 山内 その通りですね。REITというシステ ムが作られて税制の恩典もいただいた。そ のREITが目指す姿は「パブリックなお金で、 パブリックなインフラを永く支える」こと なのではないでしょうか。 これまで日本の賃貸住宅は欧米に比べて 社会ストックとしての質が相当に貧弱だっ たと思います。これをREITのシステムを通 じて、地域の人々が誇れるような「街づく り」に貢献したいと思います。また賃貸住 宅であっても地域のコミュニティに馴染む ような住宅運営をバックアップしたいと思 います。建物の長寿命化や省エネ住宅、環 境への配慮という形で、REITも社会的責任 を果たせると思いますし、結果としてその 建物を長期に最有効活用でき、投資家の皆 さんに永く配当し続けることができるのだ と考えます。 巻島 まさにREITのCSRですね。 戸谷 「REITが持っている施設だから安心」 というイメージを持ってもらえるといいで すね。現状では一般消費者の方はREITの保 有物件かどうかなど知りませんから。住宅 についても同様です。 廣本 最近、外資がゴルフ場を買っていま すね。それで「キャディーがいなくなった」 とか「食事の質が落ちた」などという話を 聞くことがあるんですね(笑)。 それとは逆のパターンで、「REITが買っ たら良くなった」と言われるようになりた ARES SPECIAL
15 い。そのためには、投資家にも適正なリタ ーンが期待できるなら前向きなキャップエ ックス(資本的支出)は惜しまないとご理 解いただくことが必要です。 藤田 不動産投資が活発化して多様な対象 に投資がされていますが、投資対象になっ ている不動産を実際に使う人や住む人の生 活や気持ちを無視した投資であってはなり ません。われわれJ-REITは長期資金を預か っていますから、近視眼的な投資であって はならず、長い目で資産運用し、その結果 として好リターンを返すというのが本来の 目的だと思います。 日本では賃貸住宅への投資はまだ歴史が 浅いせいもあって、投資家からは「本当に 賃貸住宅は長期投資に向いているのか」と いう質問が寄せられますが、上場した住宅 REITにはその回答を示す責任があります。 使命感と正義感を持って取り組めるビジネ スですね。 巻島 本当にそうですね。REITの多くの方 は商業施設、住宅、オフィスビルにしても 開発段階からコミットして取得したいと言 います。REITの投資基準で見ると、今まで の商業施設や賃貸住宅、オフィスビルは満 足できないところがあるということですね。 REITの登場がトリガーとなって今後はます ます高い品質の開発がなされ、都市再生と も結び付くのでしょう。 廣本 先ほど戸谷さんがご自分達のことを 「特別なREIT」だと言いましたが、それは REITの狭い世界での話に過ぎない。視野を 広げて「民営化」として捉えれば、JTが持 っていた資産を株式化して、REITというフ ェアな市場メカニズムを利用してマーケッ トに出てきたことは非常に大きな意義があ ると思います。 例えばJRの場合は国鉄清算事業団が実物 不動産を売るという方法でした。NTTの場 合はREITではなくNTT都市開発という形 です。それをどう評価するか。もっと言え ば、都市再生機構が所有する77万戸の住宅 があります。これがREIT化すれば、全米最 大のエクイティレジデンシャルの22万戸を はるかに越えることになりますね。 山内 実現すれば、日本での住宅REITのセ クターが確立されたと言えますね。 巻島 投資法人予備軍は非常に多いです。 当協会へは手続きに関する問い合わせが以 前にも増しています。そのため、『不動産投 資法人(J-REIT)設立と上場の手引き』を 作り対応することとしました。一般事業会 社にも使っていただきたいと考えています。 廣本 ますますライバルが増えるというこ とですね(笑)。 巻島 本日は、有意義なお話をありがとう ございました。 July-August. 2005 ARES SPECIAL ※文中の数字等は全て4月28日時点のものです。
平成18年度「不動産証券化に関する
税制改正要望」の概要
1.投資法人および資産流動化法上のSPC 等に対する登録免許税の軽減措置の延 長・拡充 投資法人および資産流動化法上のSPC等 の不動産取得の際に設けられている登録免 許税の軽減措置を延長・拡充する。 ※現在の登録免許税の軽減措置(所有権移転登 記の登録免許税の税率を、1%から、0.6%に 引き下げるもの)は、平成18年3月31日をもっ て期限切れとなるため。 2.登録免許税の軽減措置の延長 不動産の登記に係る登録免許税の軽減 措置を延長する。 ※現在の不動産の取得に関する登録免許税の軽 減措置(例えば「所有権の移転登記」本則2% から1%に、「所有権の信託の登記」本則0.4% から0.2%に引き下げるもの)は、平成18年3 月31日をもって期限切れとなるため。 3.不動産取得税における土地の課税標準 額(1/2)の軽減延長および税率(3%) の軽減延長 不動産取得の際に設けられている不動 産取得税における土地の課税標準額1/2の 軽減措置の延長、並びに不動産取得税の 税率3%の軽減措置を延長する。 ※現在の土地の課税標準額に関する軽減措置に ついては、平成17年12月31日、不動産取得税 に関する軽減措置については、平成18年3月31 日をもって期限切れとなるため。 4.商業地等固定資産税の負担水準の均衡 化の推進 商業地に係る固定資産税について、負 不動産証券化協会では、「税務・会計委員会」において不動産証券化に関する税制改正要望の取 りまとめを行い、運営委員会(7月4日)、理事会(7月7日)において審議了承し、「平成18年度 不動産証券化に関する税制改正要望」として7月8日に関係省庁へ提出した。 わが国経済は、回復基調にあり、今後も持続的な成長が期待されるところである。しかしなが ら、不動産市場においては、大都市圏の一部の地価については底入れ感があるものの、地方都市を はじめとして全国的にはいまだ土地資産デフレから脱却したとは言いがたい状況にある。 日本経済を資産デフレから完全に脱却させ、安定的成長軌道に乗せるためには都市再生の促進と 地方経済の活性化を推進することが重要であり、その実現に向けて、不動産証券化市場をよりいっ そう発展させ、不動産市場と金融市場との間の資金潮流をさらに力強いものとしていかなければな らない。 当協会としては、下記事項の実現方について強く要望するものであり、また税制改正要望の趣旨 等を金融証券等の産業界の関係団体にも幅広く伝えていく予定である。 要 望 項 目July-August. 2005 17 担水準の上限(現行:70%)を60%に引 き下げる。また、都市計画税についても 同様の負担軽減を行う。 5.家屋に係る固定資産税等の評価の見 直し 建物に係る固定資産税等について、経 年減点補正率の経過年数および残価率 20%を法人税法上の取扱いと同様にする 等の改善を行う。 6.宥恕規定の導入 投資法人および資産流動化法上のSPC 等が会計上の利益と税法上の所得の乖離 により支払配当損金算入要件を満たさな くなる場合、事後の分配を認めるという 宥恕規定を導入する。 7.利益超過分配に関する改善措置(投資 法人の支払い配当損金算入要件算定式 の改善) 投資法人の支払い配当損金算入要件の 90%超の配当要件について、配当可能額 の範囲から利益超過分配金を除外するな どの改善を図る 8.資産流動化法上のSPC等の借入先要件 の改善(金融機関等がSPC及び投資法 人等への貸付債権をCMBS等を通じて 流動化できる措置) 銀行などの適格機関投資家が資産流動 化法上のSPCや投資法人等に対して有す る貸付債権につき、CMBS等を発行する 為に当該貸付債権をCMBS発行用ビーク ル等非適格機関投資家に譲渡した場合に おいても支払配当の損金算入を認める。 9.出資の戻しに関する投資家課税の改善 (利益を超える金銭の分配時の課税方 式の改善等) 投資家が分配を受ける金銭のうち、「会 社型J-REITの利益を超える金銭(出資の 戻し)」について、みなし譲渡に係る譲渡 収入に対応する譲渡原価は、譲渡収入と 同額とし、譲渡損益が生じないようにす る。また「契約型J-REITの特別分配金」 に関する課税方法を上記と同じにして、 J-REITの利益超過分配金にかかる取扱い を統一する。 なお、商法改正(会社法制定)に伴い、 株式会社における剰余金の配当に関し、 税制上所要の改正が行われる場合には、 投資法人における金銭の分配に関しても 同様の取扱いとする。 10.非上場公募不動産投資信託(又は投 資法人)の収益分配金、解約・償還 益、売買益に対する軽減措置 非上場の公募不動産投資信託(又は投 資法人)も公募株式投資信託と同様の軽 減措置の適用を図る。 (事務局・橋谷 聡一) 投資法人の投資口に係る配当、譲渡等に対する税制については、上場株式に係る配当、譲渡等に対す る税制が改正される際には同様の手当てが為されることを要望する。
■資産流動化法関連 1.資産対応証券の募集取扱要件の緩和 (法第150条の2) 資産対応証券の発行時において、特定資産の 譲渡人(オリジネーター)が自ら資産対応証券の 募集等を行うか否かにかかわらず、現在検討さ れている投資サービス法の勧誘・販売行為の考 え方を踏まえ、投資サービス業者が資産対応証 券の募集等を行えるようにしてほしい。 <理由> 資産対応証券は証券取引法上の有価証券であ り、原則、証券業者による募集・販売等が義務付 けられている。例外的に特定資産の譲渡人が届 出後に募集等を行う場合のみ、証券取引法の適 用除外となっている。 しかし、特定資産の譲渡人が必ずしも特定目 的会社の設立発起人ではないため、特定資産の 譲渡人が資産対応証券の募集をする制度を利用 できないことがある。一般投資家への影響が低 いと思われる「私募」の場合に限り、第二証券業 的な位置付けとなる投資サービス業者が、資産 対応証券の発行時において資産対応証券の募集 等ができるようになれば、事業の促進とコストの 削減につながると思われ、より一層投資家利益 に資することとなる。 2.特定持分信託の信託法第58条から適用 除外を明確化(法第31条の2) 資産流動化法の特定持分信託に関わる法文に おいて、信託法第58条の適用が除外されること を法文上明らかにするか、あるいは、当局の解 釈を一般に対して明確化することを要望する。 <理由> 特定持分信託は、その制度主旨上、当然の要 請として、信託契約は解除できないものとするこ とが求められ、法文上も「委託者または受益者 が、信託期間中に解除を行わないこと」という条
平成18年度
「制度改善要望」
の概要
不動産証券化2法の他、証券取引法関連など5項目
不動産証券化協会では、「制度委員会」において平成18年度制度改善要望(案)をとりまとめ、7月 4日に運営委員会、7月7日に理事会において審議のうえ「平成18年度 制度改善要望」として承認 を受け、金融庁および国土交通省の関係部署に提出した。 平成18年度の要望の骨子は、例年と同様に事業組成における法制度上の規制改善のほか、投資法 人の資金調達手段の拡大、投資家の投資環境の緩和など、不動産証券化商品の供給や投資家の投資 機会の促進を要望するものである。 今後は、「2005年度日本経団連規制改革要望」や、内閣府の規制改革・民間開放推進室の「全国規 模の規制改革・民間開放要望」に取り上げられるべく要望活動を行っていく。 ■資産流動化法関連要望 ① 資産対応証券の募集取扱要件の緩和 ② 特定持分信託の信託法第58条から適 用除外を明確化 ■投資信託法関連要望 ① 投資法人の資金調達手段の多様化 ② 投資法人の規約変更手続の緩和 ■証券取引法関連要望 ① 大量保有報告制度の導入 ● ● ● ●要 望 項 目
● ● ● ●July-August. 2005 19 件を付すことが求められている。ただし、信託契 約書にこのような条項を入れたとしても、信託法 第58条の適用があるのかどうかは明らかでなく、 制度主旨が充分に活かされていない。そのため 実務上は、信託法第58条の適用を避けるために、 受益者を複数にするという、制度主旨からすれ ば、およそ本質的でない手当てを求められるこ とも多く、徒にスキームを煩雑化させている。 ■投資信託法関連 1.投資法人の資金調達手段の多様化 投資法人が発行できる債券として、投資法人債 に加え、CPの発行を可能とすることを要望する。 <理由> 投資法人の資金ニーズに柔軟に対応できるこ と、かつ低利での資金調達ができるように、資金 調達手段としてCPを加えることを要望する。短 期資金の調達にあたっては、CPであれば現状の 借入に比べ調達コストが低いことから利益が向 上し、ひいては投資家への配当原資の増加にな り、投資家利益の拡大につながるためである。 昨年度の回答にあった、「ニーズや投資家保護 の観点を踏まえ、投資法人のCPの発行について は、平成17年度中に検討を行う。」について、① 実施時期について、その時期となる理由も含め 具体的に示されたい。②実施した調査内容の公 表を行った上、一般の借入金利よりCPの方が有 利と判明した場合には、CPの発行が可能になる よう早期にご対応いただきたい。 2.投資法人の規約変更手続の緩和 租税特別措置法等において、軽減措置を受け る条件として、投資法人の規約への記載が求め られる改正があり規約変更が必要となった場合 にでも、投資法人が規約へ記載しなければなら ない租税特別措置法等で求められている要件を すでに満たしている場合については、暫定措置 として次期投資主総会までの間は官報等へその 旨を掲載するか、投資主への通知を行うことによ り、本軽減措置の適用が可能となるよう要望する。 <理由> 投資法人の規約変更は、投資主総会の承認を 要し、租特法等の改正が行われた場合に機動的 な規約変更ができない。租税特別措置法等にお いて求められている要件をすでに満たしている 場合に、規約へその旨を記載するためだけに、 投資主総会を開催することは、投資主総会開催 の手間・コスト等を考えた場合、かえって投資主 の利益を損なう可能性について否定できない。 ①投資家のガバナンスにかかることがない租特 法上の改正に伴い投資家の利益につながること が明らかである。②官報等へその旨を掲載する か、投資主への通知をする事等の措置を講じる。 以上2つの要件を満たす場合には、次期投資主 総会での決議事項とすることで、本軽減措置の 適用が可能となるよう要望する。 ■証券取引法 1.大量保有報告制度の導入 一般の株式等と同様に、証券取引法に規定す る大量保有報告制度(5%ルール)を投資法人の 投資証券にも適用されるよう要望する。 <理由> 証券取引法で大量保有の5%保有者は大量保 有報告書を提出しなければならない(証券取引 法第27条の23)、と規定されており、その会社は 比較的早く大量保有者の保有割合等を把握する ことができる。しかし、対象となる有価証券の範 囲に投資法人の投資証券が含まれていないため に、現状では投資法人の投資証券の大量保有者 は期末まで判明しない。制度の趣旨・目的(株価 に影響を及ぼしやすい株券等の大量保有の情報 を公開することにより、市場の公正性、透明性を 確保し、投資家保護を図る)からすると、まだ株 券等と比較し流通数の低い投資証券において、 大量保有報告制度(5%ルール)が投資家保護に 資する貢献度は高いと考える。 (事務局・阿部 紀幸)
先日、数年ぶりで上海に行った。高層ビ ルが林立し、大規模の緑地、地下鉄網、空 港 へ の リ ニ ア モ ー タ ー カ ー ( 最 高 速 度 431km)などの都市基盤がすさまじい勢い で整備され、片側4車線の高速道路をピカピ カのBMWがクラクションを鳴らしながら 疾駆していく様を見ながら、ふと考えた。 東京の都心部は、これからどんなまちを目 指していくのだろうか、上海の後を追いか けていこうとしているのか、それとも全く 違う道を歩むのかと。 21世紀に入って以降の東京では、都市再 生に関する種種の規制緩和政策の下、民間 主導の都市再開発の動きが、都心の千代田、 中央、港区及び品川区で特に活発に進展し ている。「シオサイト」「チッタ・イタリア」 などが並ぶ汐留地区、「丸ビル」に代表され る大丸有地区、「コレド日本橋」「日本橋三 井タワー」の日本橋地区、「六本木ヒルズ」 「東京ミッドタウンプロジェクト」「ナショ ナルギャラリー」の六本木地区、「品川イン ターシティ」「品川グランドコモンズ」など の品川地区、「クロスフィールド」が立ち上 がってきた秋葉原駅周辺地区、さらに八重 洲口周辺再開発、大手町合同庁舎跡地から 連鎖型に始まる大手町地区再開発がこれら に続いている。 平成13年から平成16年末までの3年間にこ れらの再開発により新たに整備された主な 施設は、延べ床面積約4,438千m2 、東京ドー ム約95個分の新たな都市空間が生まれてい る。都心では、今後もさらなる再開発が予定 されており、これらの再開発エリアでは、 オフィススペースとともに商業施設やホテ ル、 住居など複合的な施設が供給される予 定だという。 都心部での民間主導の大規模都市再開発 は、経済的にはまずまずの成功を収め、都 心を再活性化させる効果をもたらしている のだが、上海、広州を代表格とする新興勢 力の超エネルギッシュな大都市と比べると、 何だかとてもつつましやかな開発がポツポ ツと行われているように思えてしまう。ま た、これらの再開発地区の周りを取り囲む ように存在している東京都心部の旧ダウン タウン地区に密集する中小オフィスビルの 空室問題、いわゆる“2003年問題”として広 く知られるようになった新種の都市問題は、 現在マスコミではあまり取り上げられなく なったが、事態は未解決のまま深刻化して いる。「東京の街を、上海と伍して魅力ある 空間としていくためには、私たちは今何を なすべきなのだろうか」「地のまちを再生し ていくために有効な手立てはあるのだろう
ARES REPORT
ARES REPORT
株式会社アフタヌーンソサエティ 代表取締役清水 義次
上海 VS 東京
スモールビジネスモデルが
まちを変える
21 July-August. 2005 か」。スモッグにかすむパワーフルな上海を 後にし、こんなことをメモしながらうつら うつらしていると、飛行機は亜熱帯化しク ソ蒸し暑い成田エアーポートにもう着いた。 昨年秋、オフィスを1992年からいた港区 南青山から神田駅西口に移した。ここで、 旧東京市の神田区・日本橋区一帯の家賃下落 ゾーンを対象に、「神田RENプロジェクト」 という空きビルの転用でまちを活性化する 複線型まちづくりの試みを行っている。こ の プ ロ ジ ェ ク ト に つ い て は 、 次 号 (ARES17号)でその活動内容を詳しくお伝 えするが、その前にまず、表参道・南青山周 辺地区で、1992年から1999年にかけて行っ てきた仕事の話から始めたい。ここで培い、 習得した超民間型のまちづくり手法が、神 田・日本橋周辺地区で有効だと考えているた めである。 表参道・南青山周辺地区は、今では世界の ブランドショップが立ち並び、不動産価格 や店舗家賃が高騰している。大通りに面し た路面店は、奪い合い状態で、月坪当たり 10万円以上でも借りられる場所がないくら い。住宅街の中に入ったところでも、月坪 当たり4万円から5万円台が普通と言うほど の一種のバブル状態になっている。 私が、コンサルタント会社のサラリーマ ンを辞めて、バクテリア(サイズの)会社 を興した1992年頃は、表参道近辺の青山通 り沿いはかなりまとまった規模の地上げ跡 地が虫食い状態に点々と続いており、そこ に幽霊屋敷と化した民家がたくさん建って いた。その中の民家を4軒まとめて借り、会 社をスタートさせたのだ。 まず行ったのは、4軒のうちの2軒の民家 を使って「ボルドーセラー」というワイン レストランを開いたこと。実は、コンサル タント会社時代に反省したことがある。ク ライアントの要望に応じて開発計画や事業 コンセプトをつくる仕事をしている時に、 飲食店や物販店の店舗コンセプトを企画し お決まりの事業収支をはじくのだが、自分 の中にリアリティがなかった。これではい けないと思い、独立して最初に飲食店をや ってみたわけだ。 「ボルドーセラー」は、青山通りを50m くらい内側に入ったところにあった築後40 年∼45年の2階建て民家2軒をコンバージョ ン、ワインを気軽に、リーズナブルな値段 で飲んでもらう目的ではじめた飲食店だ。 まず、1992年6月に酒造メーカーにスポンサ ーをしてもらい6カ月間限定の「ライツバー ル」というイベントショップを開いた。こ れを閉めた後、1993年4月に「ボルドーセラ ー」として新たにスタートしたわけだ。建 物が、不良債権化した資産だったため、賃 貸契約の形態は6カ月間暫定利用契約という もので、銀行 が不動産所有 者 に 対 し て “ 出 て 行 く よ うに”という 話になった時 は店をたたむ という条件だ っ た 。 結 局 、 6 カ 月 ご と に 契約更新して
バブル後の表参道・南青山地区での
最初の実践
地上げ跡の空き家を「ボルドーセラー」に
ボルドーセラー約9年間使わせてもらった。(ボルドーセラ ーは、現在表参道交差点至近の場所に移転、 営業を続けている) 「ボルドーセラー」は、民家の雰囲気を 残したインテリア、ワインに合う美味しい つまみを箸で食べる“居酒屋感覚”、そして 何よりも品質の良いワインが画期的に手頃 な価格で飲めることが口コミで若い女性客 にたちまち伝わり、連日予約が取れない繁 盛店になった。また、ここでのワイン人気 が日本のワインブーム創出につながったと いう評価も頂いた。それ以上に嬉しかった ことは、「ボルドーセラー」の周辺の地上げ 跡の空き家、空きビルに「暫定利用でいい からここに入りたい」「持ち主を紹介して欲 しい」という人たちが次々に現れたことだ。 信頼できそうな人だけ厳選して、十数人を 幽霊屋敷のオーナーに紹介した。 このようにしてボルドーセラーが人気店 となった3年間に、南青山3丁目8番∼11番く らいのブロックには、飲食店を中心に、バ ー、パン屋・カフェ、アクセサリー店、家 具店そして小さなオフィスなど25∼26店舗 が暫定利用方式で出店し、空き家と空き地 だった寂しいエリアに次々に灯がともり、 賑わいが生まれた。 この様子を観察していて感じたことがあ る。バブル崩壊後、遊休地を時間貸しの駐車 場として利用している例が全国の大都市で数 多く見られるが、果たしてこれが最適な活用 法なのだろうかという疑問だ。駐車場として 土地を活用すること自体は収益的には有効な 手法ではあるが、駐車場と同等以上の収入 を得ながら駐車場以上の賑わい効果をまち にもたらす遊休地の暫定利用方法があるので はないか、と強く思うようになった。 そんな矢先の1993年の後半、人材派遣会 社パソナの南部社長(当時)から「原宿で 面白いプロジェクトをやりたいのだが、手 伝ってくれないか」と依頼があった。原宿 駅を降りて、竹下通りを下り明治通りに交 差した向こう角に、銀行が不良債権として 所有していた駐車場があった。パソナが新 しく始めた「デザイナーズコレチオーネ」 という輸入ブランドの洋服を海外並みのリ ーズナブル価格で売る旗艦店として3年間暫 定利用し、合わせてパソナのイメージをこ こから発信したいという依頼内容だった。 南部社長は、映画「ローマの休日」に出て くるスペイン階段が大好きで、あれを店舗 にして欲しい、そして竹下通りから出てく る大量の人たちをこの階段状の建物に座ら せたい、という。 一方、金庫番の専務さんは、「うちは夢も 大事にするけれど、お金にはシビアですよ」 という。200坪強の店舗を原宿の中心部で借 りて営業する時の内装工事費・経費・保証 金の償却額、3年間土地を借りてそこに建物 を新築し、3年後に解体・更地返還する費用 とが同程度に 収まらないと ダメだという 条件だった。 つまり、デザ イン性が高く ないとダメ、 かつ、建築コ ストと内装コ ストは超ロー
建築のPM技法を駆使して実現した
3年間暫定利用プロジェクト
パソナ原宿
パソナ原宿23 July-August. 2005 コストでなければダメ、かつ、工事期間は 最短を目指さないとダメ、というオリンピ ックでメダルを取るくらい難度の高いプロ ジェクト条件だった。 土地の契約形態は、事業用定期借地と全 く同じ方式だったが、当時、銀行の稟議が おりる暫定賃借期間は最長3年だったため、 事業用定期借地法に定められた最短5年より も2年短い3年という超短期での契約となっ た。デザイナーに北川原温さん(現在、東 京芸術大学教授)を起用し、敷地の半分以 上を広場階段にして、階段下と広場の両翼 を店舗とする大胆なデザインが採用され、 これをローコスト・短工期で実現しなけれ ばならないことになった。そこで、建築の プロジェクトマネジメントの実践的ノウハ ウを駆使して、前述の厳しい予算条件をど うにかクリアし、4カ月間の短工期で建物と 内装を完成させ、1994年4月連休前に無事オ ープンした。 予想通り、階段に若い人たちがたむろし、 ドラマのロケ地にもなり、大変なパブリシ ティ効果が上がったため、クライアントが大 いに喜んでくれたばかりか、同時に、同種 の遊休地の暫定利用プロジェクトが、渋谷 区、港区一帯に広がっていくことになった。 「青山パラシオ」は、表参道の交差点み ずほ銀行の隣にある約1,900坪の敷地を、保 険会社がオフィス、結婚式場、店舗、住宅 と駐車場からなる複合用途で開発したもの。 このプロジェクトは、東京都内で先の不動 産バブル崩壊以降実施された再開発プロジ ェクトの中で、収益性と周辺のまちに与え たインパクトの両面で、大変エポックメイ キングなものになった。 このプロジェクトの開発コンセプトをつ くる段階の議論に、私も加わった。1994年 頃だったと思う。当時は、原宿駅からのテ ィーンズ・ファッションの波が非常に強か った時期で、表参道の交差点までは確実に この種の店舗が到達するだろうと一般には 思われていた。しかし、考現学的な社会風 俗観察を行っている私の眼からは、今まで の、若者がまちの文化をリードする時代か ら、これからはもう少し大人が加わった流 れに変わっていくだろうという読みがあっ た。さらに、世界中の大都市の一番良い通 りは、一番お金が支払えるブランド企業が 占拠する傾向が強まってきていたことが大 きな潮流だと感じられたため、インターナ ショナル・ブランドの旗艦店をビルの足元 に入れる計画をクライアントに薦めた。 プロジェクトは着々と進行し、総合設計 による容積割り増しの折衝もほとんど終わ った段階で、何とクライアントから突然の 要請があった。それはデザインのやり直し で、バルセロナの建築家リカルド・ボフィ ルを起用して4カ月間で行って欲しいという ものだった。表参道の街並みに合うモダ ン・クラシシズムな建物、50年先、100年先
成功したビジネスモデルは自然に
伝播する
青山パラシオプロジェクト
青山パラシオまで存在し続ける建物をデザインして欲し いという要望だった。早速、旧知のリカル ド・ボフィルのアトリエを訪ね、中庭を活 かしたファサードデザイン、モダン・クラ シシズムのディテールデザインを仕上げ、 プロジェクトは予定通りのスケジュールで 無事進行した。 ところが、ここで実に今的な事象が起こ る。建築工事が始まりしばらくしたところ で、海外の一流ブランドが、表参道に面し たこの店舗スペースのすさまじい取り合い 合戦を始めた。担当者が苦肉の策として編 み出したのは、テナント指名コンペという ものだった。4社の世界的な超有名ブランド に、275坪ほどのスペースをどういうイメー ジで使うのか、またその際賃料はどのくら いを考えているかを各テナント候補から提 案してもらうというもので、これは前代未 聞のイベントとなった。結果、一番良い条 件を提案した「グッチ」が選ばれた。何と、 そのときの1階部分の賃料は、当時の表参道 路面店相場の3倍超だった。1階の足元に品 格のあるテナントが決まったことにより、 オフィスも周辺相場より高い賃料で満杯に なり、また、賃貸住居棟も100%埋まり、こ のプロジェクトは大成功した。 こうして1994年4月「グッチ」がオープン した後、表参道とその延長線の根津美術館 までの通りには、「プラダ」「ルイ・ヴィト ン」「シャネル」「ディオール」「フェンディ」 「ロエベ」「トッズ」などブランドショップ の大ブームが起きた。そしてそれらの多く は、世界的な建築家がデザインした店舗で あり、現在は、並木道沿いの建築を眺めな がらの散歩も表参道の魅力になっている。 以上1992年∼1999年までの間に、表参道、 南青山周辺地区でかかわった3つの面白い事 例の詳細を挙げさせて頂いたが、そこで肝 心なのは、“スモールビジネスモデル”の実 践と成功が非常に重要だということだ。そ のエリア、そのブロックにぴったり合った スモールビジネスの中身と、それをスペー スを通じて表現することが合致した時、ス モールビジネスモデルが誕生する。そして、 その成功事例は即座に周辺に伝播する。こ れこそが、地のまちを自然発生的に変えて いく真に実行力のある手法なのだと、気付 いた。都市計画は絵に描いた餅だとよくい われてきた。しかし、これからは、絵に描 いた餅を眺めているだけでなく、小さなリ スクを負いながらも、真の実行力のある本 当のまちづくりを実践する時代が来ている のではないだろうかと、実感している。ま ちは常にリアルに動いている。 次号、神田・日本橋周辺の“現代版家守(やもり)に よるまち再生”につづく。 1949年山梨県生まれ。東京大学工学部都市工学科卒 業後、教養学部教養学科アメリカ科専攻。考現学的な都 市風俗観察と企画・コンサルティングを経験後、1992年行 動型シンクタンク(株)アフタヌーンソサエティを設立。民間、 公共を問わず、さまざまなタイプの建築、都市、まちづくりプ ロジェクトのプロデュース・コンサルティングを行う。建築プ ロジェクトとして、フューチャーハウジングプロジェクト、青山 パラシオ、メルキュールホテル銀座東京他、まちづくりプロジ ェクトとして熊本県泉村、兵庫県洲本市、福島県三島町 の地方および神田・日本橋の再生などを行っている。 しみず・よしつぐ スモールビジネスの実践と伝播 誰かが新しいことを始めることが基本 小さいビジネスを成功させる 続々と似た動きが起きてくる 立ち上げ 成功 伝播
投資信託及び投資法人に関する法律(以 下「投信法」)に基づき設定された投資法人、 資産流動化法(以下「流動化法」)に基づき設 定された特定目的会社はともに法人として 組成されていることから、法人税法上の内 国法人に該当し、法人税の課税対象となり ます。しかしながら、投資法人および特定 目的会社は投信法および流動化法において 認められた業務のみを行うこと等、いわゆ る法人としての機能は制限されており、実 質的には運用資産の集合体であると言える 点を考慮して、税法上、投信法および流動 化法に規定される投資法人、特定目的会社 についてはいくつか特別な規定が設けられ ています。 投資法人、特定目的会社に関する特別規 定のうち最も重要なものは、一定の要件を 満たした場合に配当を損金算入することが できることが認められる点にあります。損 金算入要件には多岐にわたる規定が設けら れていますが、ここではその中でも留意す べき配当と資金調達に関する点を中心にそ の概要をご説明します。 (1)90%超配当要件 投資法人、特定目的会社の配当損金算入 要件の中に、所得の90%超を配当すること を定めるいわゆる90%超配当要件がありま す。この90%の判定の基礎となる所得は、 投資法人と特定目的会社とで算出過程が少 し異なるものの、いずれも課税所得に基づ き定められています。 会計と税務の所得に差異がある場合、す なわち税務上加算すべき項目がある場合に は、税務上の所得が会計上の所得より大き くなり、会計上の利益の額を全額分配して いたとしても税務上の損金算入要件を満た さなくなる可能性があります。税務調査等 で事後的に税務加算すべき項目が見つかっ たことにより90%超配当要件を満たさなく なる場合も考えられますが、宥恕規定はお かれていません。90%超配当要件の算定方