家畜の中毒の発生状況及び診断・予防法
かび毒・有毒植物を中心として
-(一財)生物科学安全研究所 宮崎 茂 日本科学飼料協会 第450回月例研究会 2017.9.28中毒とは
「中毒とは有毒な化学物質が生体に入って特殊の
病徴を呈する健康の変態であって,有毒物質の研
究は毒物学に属し病徴並びに治療に関する研究は
中毒学に属する.而して広い意味では内科学,細
菌学,病理学の範囲にも入るが,他面薬理学との
関連は恰も両刃のかみそりで,薬としての変化は
これを薬理学で扱い,毒としての変状は中毒学で
吟味すべく,この際毒は薬であり,薬は毒であ
る」
(大川徳太郎,家畜中毒学,文永堂,1964)この世に毒でないものはない.あるものが
毒になるか薬になるかは,その用いる量
による.
パラケルスス
毒性学の祖
スイスの医師,錬金術師
(1493~1541)
毒物とは
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Paracelsus_1.jpg用 量 生体反応の強さ 無 毒 性 量 有 害 で な い 作 用 中毒 無 作 用 量 致死量
化学物質の用量と生体の反応
水でも飲み過ぎると中毒を起こす
水中毒
体験事例: 離乳直後の子牛がウォーター カップをいたずらして水を多飲溶血、血尿
中毒発症に関与する要因
動物種、性、年齢による感受性の違い
反芻家畜の薬物代謝酵素活性は高い
豚は硫酸抱合酵素を欠く
雌雄による薬物代謝酵素活性の違い
第1相酵素のみならず第2相酵素にも性差
消化管微生物、特に反芻胃内での代謝
ルーメン微生物による分解(トリコテセン)
毒性の高い物質への変化(硝酸 -> 亜硝酸)
R デオキシニバレノール -H ニバレノール -OH フザレノンーX -OCOCH3
トリコテセンのルーメンでの脱エポキシ化
毒性の低い脱エポキシ体 消化管微生物 特にルーメン微生物中毒の原因
・有毒植物
放牧、剪定枝、河川敷雑草
・農薬
最近の農薬は低毒性
登録切れ農薬の畜産物への残留が問題
・重金属
動物種による感受性の違い
・かび毒
急性中毒はほとんど無い
・その他
過熱魚粉、アンモニア処理牧草
すべての疾病の診断に共通する注意点
先入観を廃し
総合的な判断
毒物の摂取量
見積もりも重要
家畜衛生現場では、先ず感染症に対する対応をとる
ため、中毒診断のための試料が確保されないことが
多い
生材料(血液、臓器、胃内容)の採取・保存
中毒の診断
疫学的情報の収集 給与飼料の由来、同一飼料を他の農家でも給与しているか 畜舎環境、農薬・動物用医薬品の使用状況 集団発生か特定の個体のみかなど 臨床症状 病理学的検査 生化学検査 一般血液検査 原因物質の検出(血液、臓器、消化管内容、飼料など) 症状が類似した他の疾病の否定 病性鑑定では先ず急性伝染病か否かの判定が重要 再現試験(原因究明) 原因と疑われる飼料の給与試験
中毒の診断法
疫学調査
発生状況の確認特徴的な症状の把握
同居家畜の状況
畜舎の構造や位置
家畜が接触する可能性のある野草、樹木
殺そ剤などの農薬使用の有無
給与飼料の種類および購入先
同一ロットを購入している他の農家の状況
飼料を変更した場合はその時期
飼料の保管状況、飼料の汚染・変敗の有無
中毒の診断のためには毒物の同定・定量が重要
生産動物の衛生現場(家畜保健衛生所など)で
の毒物分析には限界
ハード・ソフト両面での制約
1.簡易検出キットの利用 人の中毒診断用試薬(救命救急用) 食品用分析試薬 環境分析用試薬 など 2.高度な機器分析 検査可能施設との協力関係の構築 GC-MS, LC-MS, ICP-MS など11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 P eak -1 シクトキシン
Retention time (min)
高度な分析機器による診断事例
SIM (m/z=258)
ドクゼリ中毒馬胃内容からのシクトキシンの検出 (ガスクロマトグラフ質量分析計)
硝酸態窒素:RQフレックス,メルコクアント試験紙 (いずれも関東化学)
主要なかび毒:ELISAキット(Romer Labs, R-Biopharm, Neogenなど) 青酸イオン:和光(シアンテストワコー) グルホシネート:定性キット (アベンティスクロップサイエンスジャパン) 有機リン農薬:有機リン農薬検出キット(関東化学) キットセーフAT-10(アヅマックス)
毒性物質の簡易検査試薬
ELISAキットによるかび毒の測定
抗DON抗体 酵素標識DON 試料中DON 抗 Ig 抗体 飼料の場合偽陽性に注意:試料の前処理が必要 (http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/manual/myco-elisa.html)植物中毒では胃内容からの植物検出も重要
採食の有無を確認するため,胃内容を回収し,肉眼ある いは実体顕微鏡で,未消化の有毒植物を検出する. しかし,植物の消化がすすみ判別不可能なことも多い.PCR法による胃内容からの有毒植物遺伝子の検出
家畜保健衛生所は,感染症診断 のため,PCR法による遺伝子検 査に習熟している.植物特異的遺伝子検出による中毒の診断事例
・PCR 法を用いた消化管内容物からのワラビ遺伝子の検出 神吉 武ら、日本獣医師会雑誌、62, 457-459 (2009) rbcL(葉緑体遺伝子) ・形態的観察、PCR法及びLC/MS分析による育成牛シキミ 中毒の診断 河津理子ら、日本獣医師会雑誌、64, 791-796 (2011) リボゾームRNA遺伝子ITS領域 (転写領域内部のスペーサー)中毒の治療
産業動物では死亡してから気づくことも多いが
・先ず、生命維持のための対応
・飼料を疑う場合は給与中止
・原因物質の除去
胃洗浄
下剤,吐剤,活性炭等の投与
・原因が特定できれば,毒物に対する拮抗薬の投与
食用動物における中毒
毒物の家畜への影響のみでなく、畜産物の安全性も重要
飼料の安全性確保及び品質の改善に関する法律 (飼料安全法) 第1条 飼料の安全性の確保及び品質の改善を図り、 もって公共の安全の確保と畜産物等の生産の 安定に寄与することを目的とする。飼料の安全性の重要性
飼料中の
有毒物質
微生物
畜産物の汚染
人の中毒
食中毒
家畜の中毒
感染症
飼料安全法による規制
飼料の有害物質に関する基準
指導基準
(超過してはならない値) かび毒(乳用牛配合飼料中アフラトキシンB1)管理基準
(工程管理の指標) 農薬(78成分) 重金属等(鉛、カドミウム、水銀、ひ素) かび毒(乳用牛配合飼料中以外のアフラトキシンB1、 デオキシニバレノール及びゼアラレノン) その他(メラミン)飼料安全法による規制の例
− かび毒 −
対 象 飼 料 基準(mg/kg) 指導基準 アフラトキシンB1 配合飼料(乳用牛用) 0.01 管理基準 配合飼料(牛用(ほ乳期子牛用及び乳用牛 用を除く。)、豚用(ほ乳期子豚用を除 く。)、鶏用(幼すう用及びブロイラー前 期用を除く。)及びうずら用)及びとうも ろこし 0.02 配合飼料(ほ乳期子牛用、ほ乳期子豚用、 幼すう用及びブロイラー前期用) 0.01 ゼアラレノン 家畜に給与される飼料 1 生後3か月以上の牛に給与される飼料 4 家畜等(生後3か月以上の牛を除く。)に 給与される飼料 1 アフラトキシンB1 デオキシニバレノールどんな中毒事故が起きているか
家畜共済統計表 2015年度 病傷事故別件数 中 毒 全 体 122 234 ワ ラ ビ 中 毒 2 1 キ ョ ウ チ ク ト ウ 中 毒 4 - そ の 他 の 植 物 中 毒 5 31 農 薬 中 毒 - 1 殺 鼠 剤 中 毒 - 1 飼 料 添 加 剤 中 毒 - 31 石 油 ・石 油製 品に よる 中毒 1 - 消 毒 薬 中 毒 - 1 そ の 他 の 薬 物 中 毒 - 7 鉛 中 毒 - 1 硝 酸 塩 中 毒 2 15 カ ビ 毒 中 毒 - - 蛇 毒 中 毒 2 23 そ の 他 の 中 毒 106 122 乳牛の雌 肉用牛我々が最近経験した中毒事例
古典的中毒の再発生 ワラビ中毒、魚粉中毒(鶏の筋胃糜爛)、硝酸塩中毒、 傷害サツマイモ中毒 有毒植物中毒 有毒植物に関する情報不足 エゴマ、ドクゼリ、キョウチクトウ、シキミ、 ハナヒリノキ、モロヘイヤ など 輸入粗飼料による中毒 エンドファイト中毒、一年生ライグラス中毒、 硝酸塩中毒 農薬・飼料添加物等 使用法の失宜 銅中毒、鉛中毒、イオノフォア抗生物質中毒、 クロルピクリン中毒・放牧中に有毒植物を摂取する場合
・舎飼い家畜に畜主が誤って給与する場合
我が国での発生事例の多くが有毒植物の剪定枝
等を畜主が誤って給与した事例
有毒植物による中毒
発生予防のためには、畜主をはじめ畜産
関係者への有毒植物情報の提供が重要
・有毒植物に関する情報の周知
写真で見る家畜の有毒植物と中毒 http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/ plants/index.html 雑草だけではなく,剪定枝にも注意 最近の中毒事例 キョウチクトウ,オナモミ,ドクゼリ,シキミ, モロヘイヤ、ハナヒリノキ、エゴマ・外来植物の侵入にも注意
ナルトサワギク,コンフリー,ワルナスビ飼料作物以外の植物給与に関する注意点
-剪定枝・畦畔草の利用など-自治体でも有毒植物 に関する啓蒙活動
http://www.city.sapporo.jp/ hokenjo/shoku/pamph/ dokuso/index.html
1960年代に新しく開拓された牧野で多発 牧野からのワラビ防除対策により発生減少 近年各地で散発
ワラビ中毒
有毒成分: プタキロシド(ラットの腸や膀胱腫瘍の原因物質 牛の急性中毒の原因) ブラキシンC(モルモットに出血性膀胱炎) チアミンピリジニラーゼ(チアミナーゼ) 中毒症状: 再生不良性貧血(汎骨髄癆) 白血球,血小板の減少.貧血,血液凝固不全(一次 止血異常),昆虫による刺し傷などからの出血、 血便,血尿 膀胱腫瘍 チアミン欠乏(馬)ワラビ中毒:骨髄
リンパ節
ドクゼリ
ドクゼリ中毒
毒性物質:シクトキシン
作用機序:抑制性神経伝達物質であるGABAと拮抗
K
+チャネルの障害
シキミのアニサチン、ドクウツギの
コリアミルチンも同様
中毒症状:強直性・間代性痙攣
嘔吐・下痢
馬の事例では、旋回運動、歩行異常、
痙攣、呼吸困難
セリ科ドクゼリ属の植物
セリと間違えたヒトの中毒事故が多い
ドクゼリ セリ
エゴマ
シソ科の一年草 種子から絞った荏油(えのあぶら)は食用,ペイント,印刷 インクや和傘,油紙などの防水用。α-リノレン酸を多く含む。 葉はぺリラケトン(perillaketone)などの3位置換フランを含 み独特の匂いがある牛の急性肺水腫,肺気腫
Acute bovine pulmonary edema and emphysema, ABPE 3位置換フランなどの原因物質が肺のmixed-function oxidase (MFO) で反応性の高い物質に代謝され,これが肺 組織の細胞機能障害を起こす. 中毒症状: 呼吸困難,頻呼吸,沈鬱,突然死 一般に咳は無し 病理所見: 間質性肺気腫,肺水腫,好酸性硝子膜形成, リンパ球系細胞浸潤
エゴマ中毒
牛の急性肺水腫,肺気腫
Acute bovine pulmonary edema and emphysema, ABPE 原因物質 1.3-メチルインドール 生草中のトリプトファンがルーメンで3-メチルイン ドールに変化 2.4-イポメアノールなど 傷害サツマイモが産生する3位置換フラン 3.ペリラケトンなど エゴマの葉に含まれる3位置換フラン ペリラケトン O O
サツマイモが産生するファイトアレキシンによる中毒
傷害サツマイモ中毒
-各種の傷害(甘藷黒斑病(原因菌 Ceratocystis fimbriata) やその他のかびの発生、虫害など)を受けたサツマイモが, 哺乳動物に有毒なファイトアレキシンを産生 毒性物質は,3位が置換されたフラン化合物 イポメアマロン,イポメアニン,1-イポメアノール, 4-イポメアノール,1,4-イポメアジオール シトクロムP-450で代謝されて活性型となり肺組織を障害 急性間質性肺気腫 イポメアマロンには肝毒性傷害サツマイモ中毒事例
黒毛和種繁殖農場で妊娠牛群に呼吸器症状、下痢、発疹 45頭中30頭が発症し2頭死亡 食品加工工場から排出されたサツマイモを給与 サツマイモは一部が黒褐色で、強い発酵臭 病理所見は、肺のうっ血・水腫、肝の出血斑 細菌あるいはウイルスによる感染症を否定 サツマイモからフザリウム属様真菌 給与サツマイモからイポメアマロンを検出シキミ中毒
毒性物質:アニサチン(種子に多い)
作用機序:抑制性神経伝達物質であるGABAと拮抗
K
+チャネルの障害
中毒症状:強直性・間代性痙攣
嘔吐・下痢
シキミ科シキミ属の植物
宮城以南に分布
墓地、寺院などに植えられる
最近は公園の植栽にも用いられる
ツツジ科植物中毒
(ハナヒリノキ,アセビ,ネジキ、レンゲツツジ)
毒性物質:グラヤノトキシン (アンドロメドトキシン,アセボトキシン) 作用機序:細胞膜のナトリウムチャネルに結合 細胞内にカルシウムが蓄積し,骨格筋や心 筋の収縮力を強める 中毒症状:嘔吐,泡沫性流涎,四肢開張,起立不能, 疝痛,腹部膨満,呼吸促迫,全身麻痺ハナヒリノキ
近畿以北の本州から北海道に分布 和名の由来は,葉の粉末が鼻に入 るとくしゃみが出ることから
強心配糖体中毒
作用機序:細胞膜のNa+,K+-ATPase活性を阻害 結果的に細胞内にCa2+が蓄積し,心筋が収縮 中毒症状:食欲不振,下痢,起立不能,体温低下,心拍 微弱 強心配糖体を含む植物 キョウチクトウ モロヘイヤ種子 ジギタリス フクジュソウ スズラン 強心配糖体 ステロイドをアグリコン(非糖体)とする配糖体で、 心筋に作用してうっ血性心不全に効果を示すものキョウチクトウ中毒
キョウチクトウ科の常緑低木 温帯に広く分布 庭木としてはもちろん,大気汚染にも強いことから高速 道路の植栽などにも用いられる キョウチクトウには種々の強心配糖体が含まれているが, 量的にもっとも多いのがオレアンドリン 剪定枝を給与したことによる牛の中毒が散発モロヘイヤ中毒
シナノキ科の一年生草本 インド西部あるいはアフリカ原産 葉は苦みがなく栄養素に富むため野菜として利用 クレオパトラの美の源? 成熟した種子に強心配糖体(コルコロシド) 葉には含まれていない 1996年に長崎県で黒毛和種牛の中毒 成熟した株全体を給与オオオナモミ
メキシコ原産の帰化植物 有毒成分は,カルボキシアト ラクティロシド 細胞内での酸化的リン酸化と ミトコンドリア膜における ATPの転移を阻害 中毒症状は、歩様蹌踉,沈鬱,筋収縮,痙攣,横臥,呼 吸および心拍数増加、低血糖ナルトサワギク
Senecio madagascariensis マダガスカル島原産のキク科キオン属の帰化植物 1976年に徳島県鳴門市で,1986年には兵庫県淡路島で確認 和歌山,岡山,高知,鹿児島でも確認 2006年に特定外来生物に指定 ピロリジジンアルカロイド(肝毒性,変異原性)を含む アレロパシー作用もある オーストラリアでは家畜に被害ピロリジジンアルカロイドを含む植物
キオン属(セネシオ属) エゾオグルマ、ナルトサワギクなど 園芸品種も多い シンフィツム属 コンフリーなど ヘリオトロピウム属 ヘリオトロープなど タヌキマメ属 タヌキマメ、アメリカタヌキマメなど コンフリーについては、食品衛生法で販売禁止措置 飼料利用についても注意喚起(平成16年、課長通知)平成21年度
特定外来生物(ナルトサワギク)の飼料への影響調査事業
農研機構 動物衛生研究所 近畿中国四国農業研究センター 大阪府環境農林水産総合研究所 株式会社住化分析センターかび(真菌)の
二次代謝産物
のうち、ヒトを含
めた動物に強い毒性を示すもの
二次代謝産物とは
生命維持における役割が不明な物質
かび毒(マイコトキシン)とは
かびがなぜかび毒を作るかよく分かっていない
かび毒とこれを作るかび
フザリウム属
トリコテセン
ゼアラレノン
フモニシン
アスペルギルス属
アフラトキシン
オクラトキシンA
ペニシリウム属
シトリニン
パツリン
ネオティフォディウム属
麦角アルカロイド
ロリトレム
かび毒を作るのはごく一部のかび
アスペルギルス属 Aspergillus 属
(コウジカビの仲間)
A. oryzae:日本酒,味醂
A. sojae:醤油,味噌
A. kawachii:泡盛
A. glaucus:鰹節のカビ付け
A. fumigatusなど :肺炎などの病気を起こす
アレルギー
A. flavus:かび毒アフラトキシンを作る
サイレージにかびが生えていても
かび毒に汚染しているとは限らない
ー かびとかび毒は別 ー
飼料を汚染する可能性のある主なかび毒
か び 毒 産生するかび 汚染される飼料 家畜に対する影響 アフラトキシン Aaspergillus flavus, A. parasiticus 落花生,トウモロコシ, 麦,綿実 肝障害(肝細胞壊死,肝硬 変),肝細胞がん,増体率 の低下,泌乳量・産卵率の 低下,免疫機能低下 トリコテセン(デ オキシニバレノー ル、ニバレノール、 T-2トキシンなど) Fusarium graminearumなど 麦,トウモロコシ,トウ モロコシサイレージ 食欲低下,増体率の低下, 嘔吐,下痢,皮膚炎,無白 血球症,再生不良性貧血, 免疫機能障害 ゼアラレノン Fusarium graminearum, F. tricinctum トウモロコシ,マイロ, 麦,トウモロコシサイ レージ 外陰部肥大,流産 フモニシン Fusarium verticilloides (F. moniliforme), F. proliferatum トウモロコシ,トウモロ コシサイレージ 肝障害、白質脳軟化(馬), 肺水腫(豚),免疫機能障 害 ロリトレム Neotyphodium lolli ペレニアルライグラス ライグラススタッガー(痙 攣,起立不能)飼料安全法によるかび毒の規制
対 象 飼 料 基準(mg/kg) 指導基準 アフラトキシンB1 配合飼料(乳用牛用) 0.01 管理基準 配合飼料(牛用(ほ乳期子牛用及び乳用牛 用を除く。)、豚用(ほ乳期子豚用を除 く。)、鶏用(幼すう用及びブロイラー前 期用を除く。)及びうずら用)及びとうも ろこし 0.02 配合飼料(ほ乳期子牛用、ほ乳期子豚用、 幼すう用及びブロイラー前期用) 0.01 ゼアラレノン 家畜に給与される飼料 1 生後3か月以上の牛に給与される飼料 4 家畜等(生後3か月以上の牛を除く。)に 給与される飼料 1 アフラトキシンB1 デオキシニバレノールALARAの原則
飼料中の有害物質の規制値を設定する際の考え方 (As Low As Reasonably Achievable)
・合理的に到達可能な範囲でできる限り低く設定 ・生産や取引の不必要な中断を避けるため、汚染物質の 通常の濃度範囲よりもやや高いレベルに設定 適切な工程管理下での汚染濃度 比較 どちらか低い値 を基準値とする 家畜の健康に悪影響がなくかつ 畜産物の基準値を下回る濃度
日本における流通飼料のかび毒汚染調査
農林水産消費安全技術センターが飼料用穀物および
配合飼料のかび毒汚染の検査およびモニタリングを
実施し、その結果を公表
http://www.ffis.famic.go.jp
規制値を超えるかび毒はほとんど検出されていない
出荷時の配合飼料のかび毒汚染はほとんど無い
農家での汚染の可能性もゼロではない
日本における粗飼料のかび毒汚染実態
・トウモロコシサイレージを中心にDONやフモニシン
が高頻度に検出される
・検出濃度は牛に中毒を起こすほど高濃度ではない
しかし
・粗飼料のかび毒汚染に関する情報は少ない
・かび毒の汚染状況は気候によって大きく変動
・温暖化によりこれまで汚染が見られなかったかび
毒に汚染する可能性
粗飼料を汚染するかび毒モニタリングが必要
客観的情報ではかび毒中毒のリスクは低いが・・・・
家畜共済統計表
かびが生えたサイレージを給与したら牛の
具合が悪くなった
かび発生 = 嫌気度が低い サイレージの品質が悪い 好気性・通性嫌気性病原菌が 増殖する 大腸菌・リステリア 病原性のかび 細菌による有害アミンの産生かび毒中毒?
かび毒中毒の診断にあたっての留意点
・かび毒の摂取量が重要
かび毒の摂取量 = 飼料中濃度 X 飼料摂取量 かび毒検査法の特異性にも注意・症状がかび毒の毒性で説明できるか
・当該症状の原因となる他の要因の否定
かび毒中毒診断に対する注意喚起の効果?
牛がアフラトキシンを食べると
牛乳に残留する
アフラトキシンの畜産物への残留
アフラトキシンB1 アフラトキシンM1 O O O OH O O O OH OCH3 O O O O O OCH3 O O O O O飼料中AFB
1濃度と乳汁中AFM
1濃度との関連
Y = 1.2 X + 1.9
Y :乳汁中AFM1濃度(ng/kg乳) X:AFB1摂取量(μg/頭/日) JECFA (2001) 乳中AFM1基準値=0.5 μg/kg(CODEX,日本(2015.7)) =500 ng/kg 牛1頭あたりの許容摂取量はおよそ400 μg/日 配合飼料の給与量を12 kg/日とすると 配合飼料中濃度を 33 μg/kg (ppb)以下にすればよい食品安全委員会での食品健康影響評価 評価の要約 現状においては、飼料中のアフラトキシンB1の乳及びその他 の畜産物を介するヒトへの健康影響の可能性は極めて低いも のと考えられる。しかし、それら畜産物中に含まれる可能性の あるアフラトキシンM1及びその他一部代謝物が遺伝毒性発 がん物質であることを勘案すると、飼料中のアフラトキシンB1 及び乳中のアフラトキシンM1の汚染は、合理的に達成可能な 範囲で出来る限り低いレベルに抑えるべきである。 乳中のアフラトキシンM1及び飼料中のアフラトキシンB1 2013年7月
エンドファイト自身あるいはエンドファイトの感染刺激
によって植物が種々の生理活性物質を産生
植物成長制御
虫害抵抗性
抗菌活性
動物に対する有害作用
エンドファイトとは
植物体内で共生的に生存している微生物
畜産分野では,イネ科の牧草に感染するネオティ
フォディウム属真菌(かび)をさす
かび毒
エンドファイト菌糸
エンドファイトが産生するかび毒
ロリトレム
ペレニアルライグラスに感染するN. lolii が産生
する神経毒
哺乳動物に対する神経毒
少なくとも18種の同族体
ロリトレムBが最も多く毒性も強い
牛や羊にライグラススタッガーを誘発
日本でのライグラススタッガー
発生状況
(1997 - 1999)
牛
26
5212
164
4
馬
3
12
7
0
合計
29
5224
171
4
件数
給与頭数
発症頭数
死亡頭数
Miyazaki et al., J. Vet. Med. Sci., (2002) Miyazaki et al., J.Vet.Diagn.Invest.,(2004)
日本でのエンドファイト中毒事例
ほとんどが黒毛和種の子牛,育成牛,繁殖雌牛
アメリカ産ライグラスストローを飽食
チアミン欠乏,低カルシウム血症,硝酸塩中毒などは
否定
顔面,頚部,四肢などの痙攣を主徴とする神経症状
エンドファイト菌糸を確認
エンドファイト毒素を検出
ロリトレムB 972 - 3740
μg/kg
エンドファイト中毒と判断
日本における牛のエンドファイト中毒
・芝草種のペレニアルライグラス,トールフェスクはエンドファイト を積極的に利用 ・オレゴン州は芝草種子の大生産地 ・日本は,種子を採取したあとのワラ(ストロー)を牛の飼料用に 輸入 ・エンドファイトに感染しているので,一定量のかび毒に汚染 ・場合によっては牛に中毒(ライグラススタッガー)オレゴン州立大学のガイドライン
馬
牛
羊
危険水準(総飼料中
μg/kg
)
エルゴバリン
ロリトレムB
300〜500
400〜750
800〜1200
不明
1800〜2000
1800〜2000
黒毛和種去勢雄育成牛への給与試験
動衛研・科飼協・FAMICの共同研究・およそ10ヶ月齢の黒毛和種去勢牛
1群3頭,5群 x 2回
・アメリカからロリトレムB濃度既知のストロー
を輸入して給与
・増体日量0.4 kgを目標に飼料設計
現物あたり乾物量を体重の2.4%
乾物の67%をストロー
・試験期間は12週,発症したら解剖
・解剖時に臓器組織を採取し,ロリトレムB残留
量を分析
黒毛和種去勢育成牛への給与試験のまとめ
・ロリトレムB含有ストロー給与における NOAEL=12 µg/kg BW per day
LOAEL=18 µg/kg BW per day
・神経症状と増体の低下以外の異常は観察されない ・腎周囲脂肪にロリトレムBが残留する (死亡牛の診断指標となる) 他の可食部位への残留はごく僅か ・脂肪組織へ残留するロリトレムBは,人の健康影響 へのリスクとはならない
ロリトレムBの基準値は濃度ではなく絶対値で設定
NOAEL : 12 µg/kg BW per day
ストロー中のロリトレムB濃度は同じでも、給
与量が異なればロリトレムB摂取量は異なる
NOAELを基準値とし、農家向けには、スト
ロー中濃度と体重から、給与可能量の目安を
表で提示
畜産農家の皆さんへ 輸入ストローを上手に使っ て牛の中毒を防ぐために 輸入ストローとは ライグラスストロー、イタンリアンストローなどと呼ばれて市販されている、 アメリカから輸入されたストロー(麦わら)です。 正確には、ペレニアルライグラスというイネ科の植物の種を採った後のわら です。 栄養価は低いですが安価なので、稲わらの代わりに使われています。 何が問題なのですか 輸入ストローの材料になるペレニアルライグラスには、エンドファイトという 微生物が感染していて、牛に中毒を起こす毒素を作ります。 中毒した牛は、首や脇腹の筋肉をけいれんさせたり、足が突っ張ってうまく 歩けなくなったりします。ひどいときには立てなくなってしまいます。 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 ペレニアルライグラスの種子を顕微鏡 で見たところです。糸くずのように見え るのが、エンドファイトという微生物です
マニュアルの
作成と公開
腎周囲脂肪ロリトレムB濃度と発症との関係
群 脂肪LB濃度 (ロリトレムB濃度,ppb) (ng/g) 72 22 29 250 79 (35) 92 110 83 (35) 92 90 74 - 92 100 82 - 92 110 84 31 92 180 71 5 37 200 75 3 37 220 77 5 37 160 解剖日 2000 牛番号 750 1000 発症確認日脂肪組織に残留するロリトレムBのヒトへの影響の見積もり
最悪のケース
脂肪組織に200 ng/g 残留 毎日霜降り牛肉80 g(脂肪40 g) 40 x 200 = 8000 ng LB / day 体重50kg 8000/50 = 160 ng/kg BW per day育成牛に対するNOAEL = 12 µg/kg BW per day