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大正大学大学院研究論集38号 020平林二郎 学位請求論文審査報告書「Mah_vastuにおける文法の研究」

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Academic year: 2021

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381 平 林 二 郎(東京都) 博士(仏教学) 甲第 92 号 平成 25 年3月 15 日 Mahāvastu における文法の研究 主査 高 橋 尚 夫   副査 津 田 眞 一 副査 廣 澤 隆 之 副査 小 山 典 勇 氏 名・( 本 籍 地 ) 学 位 の 種 類 学 位 記 の 番 号 学 位 授 与 の 日 付 学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 平林二郎 氏 学位請求論文審査報告書

「Mahāvastu における文法の研究」

本論文の研究目的は二つである。一つは、Mahāvastu(Mv)における「ゴー タマの降誕」の部分について、六種の写本を用いて校訂テキスト(和訳を含 む)を作成したことである。二つ目は古典サンスクリット(Skt)と異なる 文法体系である Buddhist Hybrid Sanskrit(BHS)が使用されている個所を 用例として収集し、用例について文法的に考察、解説を加えていることであ る。まず簡単に目次のみを記せば次のようである。

第一部 概要

第一章  Buddhist Hybrid Sanskrit と諸問題 第一節  Buddhist Hybrid Sanskrit と諸問題 第二節  韻律について

第二章  Mahāvastu について 第一節  Mahāvastu の位置づけ 論文の内容の要旨

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第二節  Mahāvastu の構成について 第三節  Mahāvastu の写本について

第二部 “Buddhist Hybrid Sanskrit Grammar and Dictionary” における MV の用例の収集および解説

第三部 和訳・テキスト

目次にそってその内容を概観すれば以下のようである。

第一部概要は二章からなるが、第一章の「Buddhist Hybrid Sanskrit と諸 問題」第一節「Buddhist Hybrid Sanskrit について」は通常のサンスクリッ トとは全く別の Buddhist Hybrid Sanskrit(以下、佛教梵語という)について、 命名者である F.Edgerton の立場を説明し、佛教梵語のいかなるものかにつ いて、サンスクリットとは全く違う言語として取り扱うべきであると主張す る。第二節「韻律について」佛教梵語の特殊な形態は多く韻律(メーターと いう)に左右される。まず韻律の形式の説明を施し、サンスクリットの詩型 について、数十項にわたるそのメーターをすべて長短の記号によって表記し ている。これは、通常の文法書等においては省略記号で記されることが多く、 一覧出来るというなかなか便利なものに仕上がっている。 第二章の「Mahāvastu について」は三節に別れ、第一節の「Mahāvastu の位置づけ」では、Mahāvastu(以下 MV)の仏伝としての位置づけと、そ の言語について述べる。第二節「Mahāvastu の構成について」は、MV の内 容の摘要である。その一々の項目に対して関連する文献が併記されており、 苦心の作である。第三節「Mahāvastu の写本について」数多い写本について、 一々の由来や内容について述べ、最終的に6本の写本に基づくことを決定し ている。その6本の写本の系統を予想している。

第二部の「“Buddhist Hybrid Sanskrit Grammar and Dictionary” における MV の用例の収集および解説」この部分が本論文のメインで、MV に現れる 文法の不規則形を収集し、それぞれエジャートンの文法規則に当てはめ、是 非を論じている。

第三部「和訳・テキスト」は MV Vol. ⅱ .「ゴータマの降誕」の部分の和訳と、 写本に基づく校訂を載せる。

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379 審査結果の要旨 MV は仏伝文学の最高峰をいくものであるが、漢訳もなく、Tib. 訳もない。 いわゆる Skt. の文法では解明できない難解な言語にて書かれたもので、そ の言語形態の全貌は未だ開拓されていない。MV に限らず、大乗の多くの経 典は Skt. の文法のみをもってしては解明出来ない部分が多く存する。それ らの用例を集めて一大金字塔を立てたのが、F.Edgerton の “Buddhist Hybrid Sanskrit Grammar and Dictionary” (BHSGD)1953 で あ る。 こ の BHSGD で使用されている MV のテキストは E.Senart によって校訂出版(1882 ~ 1897)されたものであり、従来、批判的に見られていた。本論文はこ の Senart のテキストを写本に立ち返り、新出の写本を含め、検討し直し、 Senart のテキストを改めると共に、Senart のテキストに基づいた BHSGD の 文法項目に対し疑問点を明らかにしようとしたものである。  その結果としては、本論文でテキストを校訂する際に収集した BHS の用 例について、BHSGD の文法項目の内容を踏まえて考察し、項目に適するよ うであれば、その用例を増やし、用例と異なる部分があればその文法項目に 修正を加え、文法項目に問題があると判断したばあいは、その文法項目は適 用できないとの判断を下している。確かに、エジャートンが用いたセナール のテキストが間違っていたとすれば、その間違ったテキストを訂正すれば、 当然エジャートンの分類は批判されてしかるべきである。しかし、Senart のテキストと比較した結果、必ずしも本論文の方がベターであるとは言えな い部分も有している。つまり読みこみ方が不十分で、Senart のテキストの 方が支持されうるということである。この種の学問は Skt.,PAli,PrAkrit に堪 能でなければならない。いま、一つの奮起を望みたい。また、MV は Senart のテキストでは本文のみで 1325 頁あり、本論文で取り扱っている部分は そのうち 30 頁である。全体からすれば四十分の一弱であり、とても結論と いった成果を出すには及びも付かないことは明白である。しかし、MV は膨 大なものであり、取り扱った部分はほんの一部に過ぎないが、誰も手を着け ることの無かった分野であり、それに挑戦したことは一応の成果と認めてよ いであろう。これは写本研究に携わった者のみが味わう苦労といってよいと 思われるが、まず写本の文字が読めなければならない。これがなかなか煩雑

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378 で難解である。そして次に正確な romanize を施し、且つ、正しいと思われ る写本の読みを取り上げ、校訂を施すわけである。その際には、特に韻文で は韻律が優先するので、常に韻律を意識しなければならない。MV は複雑な 韻律が多々存在するので一つ一つの韻律を検証しながらという作業が常に伴 う。とにかく膨大な時間を費やすものであり、たとえ一部分であっても六種 の写本を対比した努力は何物にも代え難い労苦を伴ったであろうことは否め ない。よって、今後、これを足がかりとしてさらなる精進を期待し、課程博 士論文と認めるものである。

参照

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