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和歌山大学経済学部 牧野真也 Excel による経済・経営分野の情報処理Ⅳ

株価のテクニカル分析

2008 年 11 月 12 日一部修正

1.株価のテクニカル分析とは

ここでは,時系列データの分析について株価を題材にみていきます。 時系列データとは,時間とともに変化するデータを特定の時間ごとに記録し たものです。経済・経営分野において分析の対象となるデータの多くは時系列 データです。たとえば,さまざまな経済指標(たとえばGDP など)をはじめ企 業の売上や利益などは時間とともに変化していくデータです。また,これらの 中には時系列データとして蓄積され整理されているものも多くあります。 時系列データの分析は,一般には,過去の時系列データを分析しその将来を 予測するために行なわれます。たとえば,企業の将来の売上は過去の売上の時 系列データを分析することによって予測されるかもしれません。国や地域の将 来の人口も過去の人口の時系列データを分析することによってなされます。つ まり時系列データは将来の予測のための重要なデータです。 それら中でも株価は時系列データの最も代表的なものの1つといえるでしょ う。過去の株価は(とりわけ株式市場に上場されているものは)長期にわたっ て記録されていて,今日ではインターネットを通じて無料で利用できるものも 多くあります。そして,ここでとりあげる株価のテクニカル分析は,株価の時 系列データを分析し予測する代表的な方法であり,その結果は投資家が株を売 買するためにしばしば利用されます。 株価のテクニカル分析として,これまでさまざまな手法が提示され利用され てきました。これらの中には,時系列データの分析として一般的に使われる手 法もあり,それらは株価以外の分析にも役立ちます。そして,テクニカル分析 の手法は,株に対する関心の高さもあり,多くのホームページや書籍などで詳 しく紹介されています。もちろん,これらの多くは Excel を使って簡単にでき ます。また,Excel には,株価の分析に役立ついくつかのツールや関数も準備さ れています。 以下,実際の株価の時系列データをもとに Excel を使ったテクニカル分析に ついてみていきます。

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2.インターネットからの株価データの入手

国内の上場されている株価の時系列データは,いくつかのインターネットの サ イ ト が 無 料 で 提 供 し て い ま す 。 た と え ば ,「Yahoo! フ ァ イ ナ ン ス 」 (http://quote.yahoo.co.jp/)の「過去の株価・投信の基準価額データ」では, 銘柄,期間などを指定することにより,簡単に株価の時系列データを入手でき ます。まず,自分の興味がある銘柄のデータ(デイリー:日々のデータ)を入 手してみましょう。期間は6 ヶ月くらいがよいでしょう。 図1 株価の時系列データのインターネットからの入手 ここで表示された株価データをコピーし Excel のワークシートに貼り付けれ ば,Excel で処理できるようになります1 1 区切り位置を設定したり,順番を並び替えたりする必要があるかもしれません。Internet

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Excel のデータに変換できたら,まずはローソク足チャートを作ってみましょ う。グラフウィザードの「株価チャート」で簡単に作成できます。ローソク足 は,株価の始値(寄り付き)・終値・高値・安値を同時に表現する大変優れた 方法で,日本ではよく使われています2 4,200 4,400 4,600 4,800 5,000 5,200 5,400 06/7/ 24 06/ 7/31 06/8 /7 06/8 /14 06/8 /21 06/8 /28 06/9 /4 06/9 /11 06/9 /18 06/9 /25 06/1 0/2 06/1 0/9 06/1 0/16 06/1 0/2 3 図2 ローソク足チャート 図3 ローソク足 Explorer を使ってコピーすれば,表形式のデータをそのまま Excel に変換できます。 2 日本で考えられたチャートで,その起源は江戸時代の米相場にさかのぼることができます。 始値>終値 始値<終値 始値 終値 高値 安値 終値 始値 高値 安値

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3.テクニカル分析の方法

当然ながら,株価は,直接的には,売りと買いのバランスによって決まりま す。そして,その背景にはさまざまな要因があります。たとえば,その企業の 業績や,その企業がおかれている環境が反映されることはもちろんですし,金 利や為替レートなどにも影響されます。「同時多発テロ」のような大きな事件の 影響を受けることもあります。 ここでは,過去の株価の時系列データだけを分析することによって,将来の 株価の変化を予測する手法をいくつか試してみたいと思います。株価の値動き や出来高といった株式市場自体から得られるデータだけをもとに株価を分析・ 予測する手法をテクニカル分析と呼びます。市場において「価格」は,さまざ まな状況を反映し形成されると考えられますから,この方法には一定の合理性 があります。これに対して,株式市場以外の経済や経営のデータをもとに分析 する方法をファンダメンタルズ分析ということがあります。 たとえば,さきほどのローソク足チャートのパターンを分析して株価の予測 を行なう方法もいろいろ提案されていますが,それらもテクニカル分析の一種 といえるでしょう。そのほかテクニカル分析として,たとえば以下のようなも のがあげられます。 ・移動平均線 ・ボリンジャーバンド ・一目均衡表 ・エリオット波動 ・線形回帰トレンド ・フィボナッチ数 ・RSI ・ストキャスティクス これらを含めてテクニカル分析の多くは,Excel で簡単にできます。以下,い くつかをみていきます。

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4.移動平均法

移動平均とは過去の一定期間の株価(終値3)の平均値のことで,たとえば 9 日移動平均は当日を含めた過去 9 日間の株価の平均のことです。移動平均線は この移動平均を折れ線グラフ化したものです。 移動平均はその定義からも明らかなように,株価の変化に比べてなめらかに 変化しますから,その近似曲線の1つといえます。したがって,移動平均線だ けで株価のトレンドを見ることができます。 また,ある日の移動平均と株価を比較することによって,その間の平均の株 価との比較ができますから,株価が移動平均を上回っている場合は,その間に 購入した多くの人は含み益を得ていることになりますし,その反対の場合には 含み損を抱えている人が多いとみることができます。 移動平均線の期間は何日が適切なのか判断は難しいですが,ここでは 9 日移 動平均線と25 日移動平均線を見ることにします4。移動平均線は,Excel では, 株価の終値のグラフを作成した後に,「近似曲線の追加」の機能を使って簡単に 追加できます5。もちろん,移動平均をワークシートで計算させてグラフに重ね 合わせることも非常に簡単にできます。 ここでは後の作業のために,移動平均をワークシートで計算することにしま す。たとえば 9 日移動平均は当日を含めた過去 9 日間の株価の平均ですから, 平均を計算する関数 AVERAGE を使って,以下の図 3 のように,セル C10 に =AVERAGE(B2:B10)と式を入れます。セル C10 の式では相対参照を使っているの で,それをセル C11 以下にコピーすれば,それぞれの 9 日移動平均が適切に計 算されます。同様に25 日移動平均も計算できます。なお,移動平均はしばしば MA(moving average)と略されます。たとえば 9 日移動平均は MA9 と略され ます。 表のMA9 の値を折れ線グラフ化すれば,9 日間移動平均線ができます。同様 に25 日移動平均と日々の終値をグラフ化したものを以下にあげておきます(図 4)。グラフが見やすくなるように,それぞれの線のスタイルや太さなどを適切 3 通常株価といった場合「終値」を指します。 4 とくに 25 日の倍数(50 日,75 日など)が移動平均としてよく使われます。これは一ヶ 月の営業日がほぼ25 日(土曜日含めて)であったことに関係していると考えられますが, 今日ではさほど意味はないでしょう。 5 グラフの系列を右クリックして[近似曲線の追加]を選びます。[グラフ]メニューから 選ぶこともできます。なお,Excel の移動平均の計算は株価で用いられる移動平均と全く同 じもので,前系列の平均が計算されます。これに対して,統計一般では,平均の対象とな った時系列のレンジの中央に移動平均が位置づけられることもあります。

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に設定しましょう。 A B C 1 日付 終値 MA9 2 2006 年 4 月 24 日 5,970 3 2006 年 4 月 25 日 5,980 4 2006 年 4 月 26 日 5,990 5 2006 年 4 月 27 日 6,030 6 2006 年 4 月 28 日 5,720 7 2006 年 5 月 1 日 5,460 8 2006 年 5 月 2 日 5,550 9 2006 年 5 月 8 日 5,660 10 2006 年 5 月 9 日 5,610 =AVERAGE(B2:B10) 図3 移動平均の計算 4,200 4,400 4,600 4,800 5,000 5,200 5,400 5,600 5/31 6/ 7 6/14 6/21 6/28 7/ 5 7/12 7/19 7/26 8/ 2 8/9 8/16 8/23 8/30 9/6 9/13 9/20 9/27 10/4 10/1 1 10/1 8 終値 MA9 MA25 凡例 ○ 図 4 移動平均線

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すでにみたように移動平均線はそれだけで株価のトレンドを示しているので, それが上昇トレンドか下降トレンドかによってある程度将来の株価を予測でき ます。 さらに,複数の移動平均線の組み合わせに基づいて,株の売り買いを判断す るヒューリスティクス6が,いくつか提案されています。よく用いられるのは, 短期の移動平均線(短期線)と長期の移動平均線(長期線)の関係を類型化し たものです。中でも,「ゴールデン・クロス」「デッド・クロス」や「グランビ ルの法則」はよく知られています。 たとえば,ゴールデン・クロスは,短期線が長期線(あるいは中期線)を下 から突き破るようにクロスすることです。その場合,株価の上昇が予想され「買 い」が強くすすめられます。一方,デッド・クロスはその反対に短期線が長期 線を上から下に突き抜けた場合で,反対に株価の下落が予想されます。 図5 ゴールデン・クロスとデッド・クロス 短期線を日々の終値7,長期線を 25 日移動平均線とすると,図4では,たと えば,9 月初旬がデッド・クロスに該当します(図中○)。もちろんデッド・ク ロスやゴールデン・クロスは他にもいくつかあります(探してみてください)。 9 月初旬の場合,その日以降,株価はしばらく下落しているので,この予測は「当 たり」といえるかもしれません。 グランビルの法則 グランビルの法則は,日々の株価と 200 日移動平均線の関係からいくつかの 売買ポイント(すなわち将来の株価の上昇と下落の徴候)を類型化したもので す。これは,今日ではしばしば短期線と長期線の関係として紹介されています8 以下,グランビルの法則で示されている 8 つの売買ポイントを簡単に説明し 6 常に成立するわけではないが,多くの場合役に立つ法則。経験則。テクニカル分析はある 面ではヒューリスティクスの集まりともいえるでしょう。 7 日々の株価は 1 日の移動平均線と考えることができます。 8 たとえば,林(2000)124-141 ページなど。 短期線 長期線 短期線 長期線 ゴールデン・ クロス デッド・ クロス

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ます。 ① 長期線が上昇しているとき,その下にあった短期線が上昇し長期線を突き 抜けたときは「買い」 ② 長期線が上昇しているとき,その上にあった短期線が下落し長期線をいっ たん下回ったが,その後すぐに長期線を突き抜けて上昇ときは「買い」 ③ 長期線が上昇しているとき,その上にある短期線が長期戦に向けて下落し たが,長期線に接することなく上昇したときは「買い」 ④ 長期線が下落しているとき,短期線が長期線を下回り大幅に乖離したとき は「買い」 ⑤ 長期線が下落しているとき,その上にあった短期線が下落し長期線を突き 抜けたときは「売り」 ⑥ 長期線が下落しているとき,その下にあった短期線が上昇し長期線をいっ たん上回ったが,その後すぐに長期線を突き抜けて下落したときは「売り」 ⑦ 長期線が下落しているとき,その下にある短期線が長期線に向けて上昇し たが,長期線に接することなく下落したときは「売り」 ⑧ 長期線が上昇しているとき,短期線が長期線を上回り大幅に乖離したとき は「売り」 ①~④では買いが,⑤~⑧では売りが推奨されます。①はさきほどのゴール デン・クロスと⑤はデッド・クロスと似ています。また④と⑧は移動平均と乖 離しすぎた場合は修正(リバウンド)が入ることを示しています。 以上を図式化すれば,以下のようになります(図6)。 図6 グランビルの法則 図 4 の移動平均線において,グランビルの法則にほぼ該当すると思われるポ イントをいくつか示します。①~④においてはその後上昇する傾向が,⑤~⑧ では下落する傾向があるようにもみえます。なお,本来グランビルの法則は, ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 短期線 長期線

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長期間の移動平均を対象にし,短期のものに適応すべきではないという意見も あり,その判断には注意を要します。 4,200 4,400 4,600 4,800 5,000 5,200 5,400 5,600 5/31 6/ 7 6/14 6/21 6/28 7/ 5 7/12 7/19 7/26 8/ 2 8/9 8/16 8/23 8/30 9/6 9/13 9/20 9/27 10/4 10/1 1 10/1 8 終値 MA9 MA25 凡例 ① ⑧ ③ ⑤ ⑥ ⑦ ② ④ 図7 実際の移動平均線とグランビルの法則 以上,移動平均に基づく代表的な分析手法についてみてきました。移動平均 はテクニカル分析の中心的な存在であり,以下に紹介する手法を含めてさまざ まな他の手法にも関係しています。

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5.ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドは,移動平均線の上下にバンド(帯状の領域)を設定し, これを使って分析しようとするものです。ボリンジャーバンドにはいくつかの バリエーションがあるようですが,ここでは移動平均の上下にその標準偏差に 基づくバンドを設定する方法を紹介します9 株価はあまり変動しない期間もあれば激しく乱高下する期間もあります。前 者の株価と後者の株価を同じ尺度(価格)で単純に比較することは正しくない と考えられます。 株価の変動が激しい期間では,その散らばり具合が大きくなり,株価があま り変動しない期間では小さくなります。したがって,その散らばり具合すなわ ち統計でいう標準偏差を考慮した上で株価の変動をみていく必要があると考え られます。 また,ボリンジャーバンドでは,過去の株価が正規分布にしたがうという仮 定に基づいて分析が行なわれます。過去の株価が正規分布にしたがうのであれ ば,その平均値とその標準偏差を考慮した上で株価をみると,実際に何円であ ったという価格そのものにとらわれずに適切に株価の変動をみることができる 可能性があります10 移動平均は過去何日かの株価の平均値です。これと同じ期間の(同じデータ を使った)標準偏差を計算することができます。標準偏差は各データと平均値 の差の二乗和を平均して(これを分散といいます),その平方根(ルート)を計 算したものです。つまり,各データと平均との差が大きいほど標準偏差も大き くなります。 過去n日間の株価をx1, x2, …, xnとし,その平均をx とすれば,標準偏差 σ(ギ リシャ文字のシグマの小文字)は以下の式で示されます11 n x x n x x n n x x n i i n i n i i i n i i

= = = = = − = − = 1 2 1 1 2 2 1 2 ) ( ) ( Q σ 9 たとえば,新井(2000)など。 10 たとえば,テストの偏差値は,テストの実際の点数に関係なく平均を 50,標準偏差を 10 として計算される指数です。偏差値によって実際の点数に惑わされることなく学力の変化 を適切に見ることができるようになります。 11 式の変形は,平均を n 個集めた平均がまた平均であることを利用すると簡単です。

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Excel では,関数 STDEVP12で,ある範囲のデータに基づいた標準偏差を計算で きます(図8)。Excel の表のn日移動平均と同じ行に,そのn日の株価の標準偏 差を入れます。当然ながら,移動平均と同様に D11 以下のセルにコピーして適 切に計算できます。 A B C D 1 日付 終値 MA9 σ9 2 2006 年 4 月 24 日 5,970 3 2006 年 4 月 25 日 5,980 4 2006 年 4 月 26 日 5,990 5 2006 年 4 月 27 日 6,030 6 2006 年 4 月 28 日 5,720 7 2006 年 5 月 1 日 5,460 8 2006 年 5 月 2 日 5,550 9 2006 年 5 月 8 日 5,660 10 2006 年 5 月 9 日 5,610 5,774 =STDEVP(B2:B10) 図8 標準偏差の計算 移動平均の上下のバンドは,標準偏差の1 倍,2 倍,3 倍で設定します。した がって,移動平均に,標準偏差を足したものと引いたもの(標準偏差の 2 倍 3 倍についても同様)を折れ線グラフ化したものがボリンジャーバンドになりま す。 以下に,25 日間のボリンジャーバンドのための表を示します(図 9)。セル E27 ~J27 は,MA25 にσ25 の-3 倍から+3 倍までをそれぞれ加算しています。セル に記述する式はここでは示しません。みなさんで考えてみてください。セル E27 にうまく式を書けば,残りはそのコピーで作業を終えることができます。 また,25 日間のボリンジャーバンドと日々の終値をグラフ化したものを,以 下に示します(図10)。黒の太破線が移動平均で,青の細線で示している部分が ボリンジャーバンドです。また,黒の太実線が実際の株価です。 12 STDEVP は,データが母集団全体とみて標準偏差を計算します。データが標本値の場合は STDEV を使います。この場合データは指定された期間の株価であり,これは母集団全体なの で STDEVP を使います。しかし,これらの関数の差はわずかであり,データ数が多くなるほ ど差は小さくなります。

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A B C D E F G H I J 1 日付 終値 MA25 σ25 -3 -2 -1 1 2 3 ・・・ ・・・・・・・ ・・・ 26 2006 年 5 月 30 日 5,190 27 2006 年 5 月 31 日 5,010 5,408 320 4,447 4,767 5,088 5,728 6,049 6,369 28 2006 年 6 月 1 日 4,980 5,368 309 4,440 4,750 5,059 5,678 5,987 6,297 29 2006 年 6 月 2 日 5,160 5,336 285 4,480 4,765 5,050 5,621 5,906 6,192 30 2006 年 6 月 5 日 5,190 5,304 253 4,544 4,797 5,050 5,557 5,810 6,063 図9 ボリンジャーバンド(25 日間)の計算 4,200 4,400 4,600 4,800 5,000 5,200 5,400 5,600 5,800 6,000 5/31 6/ 7 6/14 6/21 6/28 7/ 5 7/12 7/19 7/26 8/ 2 8/9 8/16 8/23 8/30 9/6 9/13 9/20 9/27 10/4 10/1 1 10/1 8 MA25 +1σ +2σ +3σ -1σ -2σ -3σ 図10 ボリンジャーバンド(25 日間) では,ボリンジャーバンドに基づいて分析を試みてみましょう。 まず分析の前提として正規分布の特徴をあげておきます。正規分布では,平 均と分散(標準偏差の二乗)のみでその分布が与えられます。そのため正規分 布は,その平均m と分散 σ2を用いてN (m, σ2 ) としばしば示されます。そして, データが正規分布であれば,平均±標準偏差の中に全体の約68%が含まれます。 さらには,平均±2×標準偏差の中には約 95%のデータが含まれ,平均±3×標

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準偏差の中には約 99.7%つまりほぼ 100%のデータが含まれることになります (図11)。 図11 正規分布 正規分布のこうした特徴をふまえて,ボリンジャーバンドを用いた分析方法 がいくつか示されています。以下に代表的なものをあげておきます。 たとえば,ほとんどのばらつきが±2σの範囲に入る(95.4%)ので,±2σを きっかけにトレンドが変化することが多いと考えられます。たとえば,図10 で は-2σを割り込んだあたりで反発し,+2σを超えたあたりで反落しています。 すなわち,±2σは抵抗線13(あるいは支持線)として機能しています。グラフ で確認してみてください。 つまり,-2σまで下落した場合は「買い」であり,+2σあたりまで上昇し た場合は「売り」ということになります。ボリンジャーバンドを目盛りとして 株価を見ると,実際の価格に惑わされることなくそのトレンドを見ることがで きそうです。 また,上昇トレンドで+1σを超えた場合は「買い」であり,逆に下降トレン ドで-1σを割り込んだ場合は「売り」というヒューリスティクスもよく紹介さ れます14。この理由としては,たとえば,1σを超えたり割り込んだりしたとこ 13 なかなか突破できない上値の線。反対に下値の線を支持線という。 14 新井(2000)55-56 ページ。 0 平均 +1σ +2σ +3σ -1σ -2σ -3σ 68.3% 95.4% 99.7%

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ろで,多くの投資家に上昇トレンドあるいは下降トレンドと認識される可能性 が高いという説明がなされます。実際,図 9 でも±1σを超えた場合は±2σま で上昇・下落していると見ることもできます。

ボリンジャーバンドの見方は,ほかにもいろいろあるようです。興味のある 人は調べてみてください。

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6.線形回帰トレンド

現在株価が,上昇トレンドにあるのかあるいは下降トレンドにあるのかを判 断することは当然ながら重要なことです。しかし,日々の株価は場合によって は乱高下することもあり,そのトレンドを正しくつかむことが容易ではないこ ともあります。 線形回帰トレンドは,ある一定期間の株価を線形(直線)で回帰分析しその トレンドを正しくみようとするものです。ここでは株価を,2次元平面(x− 平y 面)上のデータとみて,つまり,株価をy (目的変数),日付をx(説明変数) とみて,これらの変数の関係を最も適切に示す一次の回帰式y=ax+bを導き出 して分析します。すなわち株価の変動を直線で近似してみるわけです。 その一次式を決定するために,一般的には最小二乗法を用います。これは, 各データの目的変数の値(y 値)との差の二乗和が最小になるように一次式を決 定する方法です。その計算方法については省略しますが,Excel にはそのための 関数がいくつか準備されています15 目的とする一次式y=ax+bを決定するためにはa(傾き)とby 切片)を最 小二乗法に基づいて計算しなければなりません。そのためには,傾きを求める には関数 SLOPE を,y 切片を求めるには関数 INTERCEPT を用います16。これらは 同じ2つの引数として回帰の対象となるy の実際の値とxの実際の値をとりま す。 したがって,たとえば以下の図14 で 9 日間の線形回帰を行なうには,これら の関数を使って,セル D2 に =SLOPE(C$2:C$10,B$2:B$10)*B2+INTERCEPT(C$2:C$10,B$2:B$10) と書いてセル D3~D10 にコピーすれば,セル D2~D10 は,B2~B10 をx値とし た(代入した)目的変数の値つまり回帰の直線上の点が計算されます。式中, セル範囲の行参照が絶対参照になっている理由については考えてみてください。 なお,ワークシート中の「日数」の項目は,基準日(2006 年 4 月 24 日)を 1 とした日数17で,日付を定量化(数値化)し線形回帰を適切に行なえるようにす るためのものです。 15 「分析ツール」を使って回帰分析することもできますが,ここでは使いません。 16 回帰の直線は「近似曲線の追加」でも作成できます。しかし,後の作業のために関数を 使って計算することにします。また,関数 LINEST を使ってもできます。 17 もちろん,基準日の日数を 0 にしてもかまいません。

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A B C D 1 日付 日数 終値 回帰式 2 2006 年 4 月 24 日 1 5,970 6031.11 3 2006 年 4 月 25 日 2 5,980 5966.94 4 2006 年 4 月 26 日 3 5,990 5902.78 5 2006 年 4 月 27 日 4 6,030 5838.61 6 2006 年 4 月 28 日 5 5,720 5774.44 7 2006 年 5 月 1 日 6 5,460 5710.28 8 2006 年 5 月 2 日 7 5,550 5646.11 9 2006 年 5 月 8 日 8 5,660 5581.94 10 2006 年 5 月 9 日 9 5,610 5517.78 図12 線形回帰 図12 のグラフを書くと以下のようになります(図 13)。グラフは散布図を用 い,「データポイントを折れ線でつないだ」ものを作成します。太実線は「終値」 を,破線は「回帰式」をそれぞれプロットしています。破線の回帰式が太実線 の終値を直線で近似している感じが出ていると思います。 5,200 5,400 5,600 5,800 6,000 6,200 0 2 4 6 8 10 図13 線形回帰(グラフ) 以下の図14 に図 13 と同様の手順で作成した 75 日,25 日,9 日の線形回帰 のグラフを示します。色の付いた実線が回帰式の直線であり,その上下の破線 は,回帰式±標準誤差と回帰式±2×標準誤差を示しています。標準誤差は,実 際のデータと回帰式との誤差の標準偏差のようなもので,これが大きいほど実 際のデータが回帰式からはずれている度合いが大きいことを示します。標準誤 差は,関数 STEYX を使って SLOPE などと同様の引数で計算されます。なお,標 準誤差は,しばしば,μ(ギリシャ文字のミューの小文字)で示されます。

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4,000 4,200 4,400 4,600 4,800 5,000 5,200 5,400 5,600 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 図14 線形回帰(75 日,25 日,9 日) 図14 のグラフを見ると最近 75 日間と 25 日間は下降トレンドであり,最近 9 日間は上昇トレンドにあります。この場合,これ以降は上昇基調になるとみる よりも,ここ9 日間は下降トレンドの中での「戻り」(一時的な上昇)とみるの が適切かもしれません。 また,ボリンジャーバンドと同様に±2×標準誤差つまり標準偏差の 2 倍の乖 離が抵抗線(支持線)としてはたらいているとみることもできます。図14 でも 株価はその破線を越えるまでに反転するか,超えてもすぐに反転する傾向が伺 えます18 他にも,線形回帰トレンドに関するヒューリスティクスはいくつかあるよう です。興味のある人は調べてみてください。 18 厳密には,線形回帰トレンドは過去の一定期間のデータをもとに導き出した直線ですか ら,過去の特定の時点を分析しても,その将来の予測に関する検証ができるわけではあり ません。ここでは,大体そうなることを主張しているにすぎません。

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7.RSI

ここまでみてきた,移動平均法,ボリンジャーバンド,線形回帰トレンドは, 株価の値動きの流れ(トレンド)をみてその将来を予測することが中心でした。 これらの手法はしばしばトレンド分析と呼ばれます。これに対して,ここで説 明するRSI をはじめ,ストキャスティクス・RCI などの指標を使った分析では, 株価は振り子のように振動すると考えます。そのため,これらはしばしばオシ レータ分析と呼ばれます。オシレータ(oscillator)とは振動という意味です 株価が振動するのは,その株が短期的に売られすぎたり買われすぎたりする ためと考えられます。オシレータ分析ではそれを指標化し判断します。そして, 売られすぎの場合は買い,買われすぎの場合は売りという逆張り19のタイミング を判断します。このことからも明らかなように,短期的な売買を繰り返すこと により利益を得ようとする場合にこの手法は有効です20 ここでは,オシレータ分析の中でも代表的な指標である RSI(Relative Strength Index:相対力指数)についてみていこうと思います。 RSI は一定期間における日々の上昇幅の平均と下落幅の平均をもとに作られ る指標です。過去 n 日間(当日含む)において,前日の終値から当日の終値ま での上昇幅の平均をu ,下落幅の平均を d とすると,n 日間の RSI(RSIn)は以 下の式で計算されます。ただし,i 日目の前日からの上昇幅を ui,下落幅をdiと します。なお,上昇しなかった場合の上昇幅や下落しなかったときの下落幅は0 となります。RSI は,数式をみての通り,変動幅に占める上昇幅の割合のよう なものと解釈できます。 n d d n u u d u u n i i n i i n

= = = = × + = 1 1 , (%) 100 RSI

RSI は Excel では,指定された条件を満たすセルのみを合計する関数 SUMIF と絶対値を計算する関数 ABS を使って簡単に計算できます。RSI の式から明ら かなように,平均どうしの割り算になっていますから,合計を使って計算して も結果は同じになります。 19 トレンドと反対の売買を行なうことです。逆にトレンドに沿った売買のことを「順張り」 といいます。 20 トレンド分析においても,グランビルの法則やボリンジャーバンドの一部では逆張りが 示唆されます。たとえば,グランビルの法則の④は,「下落しすぎたときは買い」を意味し ています。しかし,オシレータ分析は短期的な変動に対する売買を目的にしものでありト レンド系の逆張りとは違います。

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以下の表では9 日間の RSI を計算しています21。C 列で計算している変動幅= (当日の終値-前日の終値)の計算は簡単です。セル C3 に適切な式を入れれば, あとはそれを C3 以下にコピーすればうまくいきます。みなさん考えてみてくだ さい。 関数 SUMIF では,第1 引数に合計するセル範囲,第 2 引数に計算の対象とな るための条件を指定します22。すると,セル D11 の式で RSI9が計算されます。 ABS は引数の絶対値を計算するので,負であることを条件とした合計は正の値に 変換されます。もちろん,セル D11 を D12 以下にコピーして,各RSI9を適切に 計算できます。 A B C D 1 日付 終値 変動幅 RSI9 2 2006 年 4 月 24 日 5,970 3 2006 年 4 月 25 日 5,980 10 4 2006 年 4 月 26 日 5,990 10 5 2006 年 4 月 27 日 6,030 40 6 2006 年 4 月 28 日 5,720 -310 7 2006 年 5 月 1 日 5,460 -260 8 2006 年 5 月 2 日 5,550 90 9 2006 年 5 月 8 日 5,660 110 10 2006 年 5 月 9 日 5,610 -50 11 2006 年 5 月 10 日 5,540 -70 =SUMIF(C5:C13,">0")/(SUMIF(C5:C13,">0")+ABS(SUMIF(C5:C13,"<0"))) 図15 RSI(9 日) また,以下にRSI9と終値を複合グラフ化したものを示します(図16)。RSI9 と終値は全く別の単位ですから同じ軸上にプロットできません。そのため,複 合グラフを作ります。複合グラフは,グラフウィザードの「ユーザ設定」の中 から「2 軸上の折れ線」を選びます。図 16 において,左側の縦軸は終値の軸で あり,右側の縦軸はRSI の軸です。 21 RSI の期間としては 9 日間や 14 日間がよく用いられます。 22 SUMIF は第 3 引数にセル範囲を指定すると,それらが合計されますが,ここでは使いま せん。

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4,000 4,200 4,400 4,600 4,800 5,000 5,200 5,400 5,600 5,800 2006 年5月 10日 2006 年5月 19日 2006 年5月 30日 2006 年6 月8日 2006 年6月 19日 2006 年6月 28日 2006 年7 月7日 2006 年7月 19日 2006 年7月 28日 2006 年8 月8日 2006 年8月 17日 200 6年8月 28日 2006 年9月 6日 2006 年9月 15日 200 6年9月 27日 2006 年10 月6日 2006 年1 0月18 日 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0% RS I9 終値 RSI9 図16 RSI(9 日)グラフ では,RSI を使った分析についてみていきましょう。 RSI は上昇・下落を含めた変動幅に占める上昇幅の割合ですから,100%に近 づくと買われすぎであり0%に近づくと売られすぎということになります。その 判断基準は,一般に,買われすぎが 70~80%,売られすぎが 20~30%として いる場合が多いようです。もちろん,買われすぎが下落を予測する売りポイン トで,売られすぎが買いポイントです。 図16 のグラフには RSI が 20%・30%である線と 70%・80%である線が付け 加えられています。このグラフで見ると株価の変動に先行して売り買いのシグ ナルを出しているとみられる部分もいくつかあるとみることができます。たと えば,7 月中旬や 10 月上旬は買いポイントであったといえますし,また 8 月下 旬は売りポイントであったといえるでしょう。 RSI には,他にもさまざまな見方があるようです。興味のある人は調べてみ てください。 また,ほかにもさまざまなオシレータ分析の手法がありますが,とりわけ, この RSI とストキャスティクス,RCI(順位相関指数)がよく用いられるよう です。RSI が変動の値幅でみるのに対して,ストキャスティクスでは安値から の位置が,RCI では株価の順位と日付の相関が指数化されます。興味のある人 は調べて試してみてください。

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8.おわりに

ここまで,株価のテクニカル分析のいくつかの手法についてみてきました。 ここで紹介できなかった分析手法についても,みなさんでいろいろと調べて Excel で試してみてください。インターネットにはテクニカル分析を解説したペ ージが非常に多く存在します。どの手法もそんなに難しくはないはずです。 なお,以下の参考文献をはじめ株価の分析に関する書籍も多く出版されてい ます。興味のある人はぜひ読んでみてください。

参考文献

新井邦宏(2000)『エクセルでやる株価チャートの読み方』明日香出版。 唐澤悠(2001)「株価の分析」和歌山大学経済学部 2001 年度夜間主演習レポ ート(非公開)。 林康史(2000)『株価が読めるチャート分析入門』かんき出版。

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練習問題

問題1 あなたが関心をもっている企業の株価の時系列データを入手し,以下 の(1)~(4)の分析をしなさい。また,必要に応じてあなたなりの分析や考察 を,それらのワークシートに付け加えなさい(図形描画ツールのテキストボ ックスなどを使うこと)。 (1) 移動平均法(ゴールデンクロス・デッドクロスやグランビルの法則など) (2) ボリンジャーバンド (3) 線形回帰トレンド (4) RSI・ストキャスティクスなどのオシレータ分析 問題2 インターネットには,さまざまなテクニカル分析の手法を詳しく紹介 しているサイトも多くあります。その中から,問題1以外の手法をいくつか 試してみなさい。その際,問題1と同じデータを使いなさい。 問題3 問題1と同じデータを使って,指数移動平均(EMA)による分析を行 いなさい。EMA の詳細はインターネットで調べなさい。また通常の移動平均 (EMA に対して SMA:単純移動平均という)と比較しなさい。 問題4 問題1,2であなたが試した手法を比較し評価しなさい。

参照

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