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「経済活性化のための税制基本問題検討会」

最 終 報 告 書

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1 序

Ⅰ.総論

3 1.我々が目指すべき国家及び社会 世紀の世界 (1) 21 リスクへの挑戦 (2) 多様な価値を受容する社会 (3) 地方自治体の自立 (4) 5 2.目指すべき税制と課題 本検討会の視点 (1) 税制改革の進展 (2) 税制改革の課題 (3) 10 3.税制改革への途 包括的税制改革 (1) 公正性の確保 (2) 困難な時期からの出発 (3)

Ⅱ.個人所得課税

12 1.個人所得課税の現状と課題 所得税改革の歴史 (1) 実効税率と所得控除 (2) 改革への途 (3) 16 2.給与所得控除 給与所得控除と申告納税制度 (1) 「クロヨン問題」の是正 (2) 20 3.年金税制 年金制度における長期的信頼の確立 (1) 年金税制の抜本改革 (2)

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24 4.配偶者控除制度 配偶者控除制度の歴史と課題 (1) 配偶者に係る税制上の配慮 (2) 28 5.金融所得税制 金融所得税制の現状と課題 (1) 中立的な金融所得税制の確立 (2) 【コラム 「クロヨン」を再計算する】

Ⅲ.法人所得課税

33 1.法人所得課税の現状と課題 実効税率引下げと課税ベース改革 (1) 制度における国際水準の確保 (2) 35 2.課税ベース改革 課税ベースと租税特別措置の見直し (1) 残された課題 (2) 38 3.企業組織再編税制の整備 会社分割税制の導入 (1) 本格的な連結納税制度の導入 (2) 40 4.国際課税制度の整備 世界市場の変化に対応した税制の整備 (1) 外国税額控除制度 (2) 移転価格税制 (3) 44 5.赤字法人 赤字法人の現状 (1) 赤字法人に対する課税の考え方 (2) 【コラム】外国税額控除方式と国外所得免税方式

Ⅳ.消費課税

49 1.消費課税の現状と課題 少子高齢化と消費税 (1) 欧州の付加価値税とインボイス制度 (2) 公平な税制 (3)

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52 2.インボイス制度 インボイス制度の導入 (1) 中小事業者特例措置 (2) 消費税制度の進化 (3) 57 3.総額表示方式の導入 総額表示方式の必要性 (1) 法律による総額表示方式の導入 (2)

Ⅴ.地方課税

59 1.地方財政の現状と課題 地方自治体の歳出構造 (1) 地方財政の自立 (2) 62 2.地方税における法人の負担 地方自治体の税収構造 (1) 地方税における法人の負担 (2) 固定資産税の課題 (3) 66 3.外形標準課税 外形標準課税の歴史 (1) 政府税制調査会における議論 (2) 71 4.地方税財政の構造改革 地方税財政の構造改革 (1) 緊急的な税収確保策 (2) 【コラム】歴史の教訓

Ⅵ.税とエネルギー・環境

75 1.今後のエネルギー・環境政策 エネルギー政策の推進と地球温暖化問題への対応 (1) 今後のエネルギー政策の総合的な検討 (2) 76 2.エネルギー・環境政策における税制の活用 エネルギー政策と税制 (1) エネルギー・環境関連税制としての一体的取扱い (2)

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80 3.エネルギー・環境関連税制の在り方 等の国際的動向 (1) COP エネルギー・環境政策上の必要性 (2) 二酸化炭素排出抑制等エネルギー・環境政策としての効果 (3) 産業競争力やマクロ経済全体への影響とその軽減・回避方策 (4) 82 4.自動車諸税と環境 自動車諸税における環境配慮 (1) 東京都の自動車税に係る超過不均一課税 (2)

Ⅶ.IT革命と税制

84 1.ネット取引と税制 85 2.IT投資と税制 86 3.電子申告制度 【コラム】米国InternetTaxFreedomActについて

Ⅷ.持続的経済成長の実現と税制改革

88 1.持続的経済成長と財政 94 2.理想的経済成長パターンの追求 97 3.21世紀初頭の経済財政政策 100

Ⅸ.結び

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参考図表集

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1 -序 総計数十兆円に上る累次の大規模な経済対策により、我が国経済は、全体として見れば デフレスパイラルに陥りかねない危機的状況を脱しつつある。企業収益や法人税収等は企 業部門を中心に、自律的回復に向けた動きが見いだされる。 しかしながら、雇用情勢は依然として厳しく、消費は一進一退を続けている。株価動向 も不安定である。我が国経済は本格的な自律回復過程に入ったとはいえない状況にある。 その一つの要因は、経済や社会保障制度の持続可能性に対する不安感が国民を漠然とし た閉塞感にとらわれさせていることにある。この結果、国民の一人一人が自らの将来につ いて目指すべき明るい未来図を描けないのである。 このような中、経済の本格的な回復を実現させつつ、さらに持続可能な経済発展を実現 することが急務である。その際、税制に関する議論はその中核となる。財政を支える税制 こそが公的負担の太宗を決し、時に税制が新たな経済活動に対応できない場合には、経済 活動を阻害することさえありうるからである。 我が国を取り巻く経済社会環境は激変している。経済活動のグローバル化・ボーダレス 化や情報通信革命による地殻変動、財政事情の悪化、少子高齢社会の到来など枚挙にいと まがない。我が国税制は、戦後50余年をへて制度疲労を指摘する声も多い。税制もまた 経済社会の変化に対応した不断の進歩が求められている。 かかる視点に立ち 「経済活性化のための税制基本問題検討会 (座長:田近栄治一橋、 」 大学教授)は、経済産業省経済産業政策局長(旧通商産業省産業政策局長)の主催の下、 このような経済政策としての税制のあるべき姿を探求することを目的に設置された。 本報告書は、我々が昨年3月から11回にわたり税制全般及び税制と財政の関わりにつ いて検討を行った結果である。 、 。 、 、 なお 我々は昨年7月に中間報告を発表した 中間報告書発表後 欧州出張調査を行い 各国政府関係者と議論を行うとともに、国内においても活発な議論を行った。本最終報告 書はこれらをも踏まえたものである。

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3

-Ⅰ.総論

1.我々が目指す国家及び社会

−税制はいかなる国を作るかというデザインの基本となる−

21世紀の世界 (1) 21世紀には、我々がこれまで経験してきたものとは全く異なる世界が、現出する ことになるであろう。 その「地殻変動」は、大きなうねりとなって既に我が国経済を飲み込もうとしてい る。東西冷戦の終焉によって、東側諸国から資源や人材の世界市場への大量流出が始 まった。途上国は確実に先進国経済へのキャッチアップを果たしつつあり、先進国と 途上国の技術格差は縮小している。さらに、先進国で進みつつある高齢化に備えるた めの大量の資金が、投資先を求めて世界を彷徨している。そして、通信・交通技術の 進歩により、企業は地球上のどこにでも自由に立地できる時代が到来し、経済におけ る国境は完全に取り払われた。もはや、天然資源や資金や地理的優位の存在が経済的 繁栄の絶対条件であった時代は終焉したのである。 21世紀において、経済の比較優位を決定づける鍵は 「人間による知識と技能の組、 織化」となるであろう。自らが無限の成長と発展をなし得る「人間」が、その「知識 と技能とを組織化」することによってのみ、既存の経済に変革を起こし、新しい経済 フロンティアを拡大することができる。そのような個人や組織のみが、ボーダーレス 化したグローバル経済の中で生き残っていく。21世紀は、まさに 「人間の時代」で、 あり 「人間による未知なる可能性への挑戦の時代」となるのである。、 リスクへの挑戦 (2) 「人間」の「知識と技能」は、現状に「変化」を起こそうとする活動として組織化 。 、 「 」 。 される場合において経済的意義を有する これが 経済における 事業活動 である 「変化」は、常に「リスク」を伴うが、今日とは違う未来を作るというリスクにかけ る「企業家的活動」によってのみ経済のフロンティアは拡大する。かかる「企業家的 活動」は、組織経営のみならず、労働、教育など社会活動のあらゆる分野で重視され なければならない。 「人間」は、個性と市民性を持つ 「人間」の行動を強制により規定することはでき。 ない 「人間」を変化させ、行動させるカギは「動機付け」である 「未来」という未。 。

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知なるものへ向かう挑戦には、常に成功と失敗、栄光と挫折が同居する。しかも、経 済活動における「未来」は常に長期である。それにもかかわらず、我々は 「勇気」を、 もって行われる「リスクへの挑戦」を動機付けなければならない。 多様な価値を受容する社会 (3) 「人間」は社会的な存在である 「人間」は、家庭、地域、企業あらゆる社会におい。 て独自の貢献をしようと行動し、社会からの受容と称賛を求めている。その行動のた めに、長年考え、悩んできたことが、社会において正当に考慮され、取り上げられて いると感じることができれば 「人間」は動機付けられ、自ら行動する。リスクに対し、 ても行動を起こす。 社会は 人間 に対して 何ができるかを問わなければならない そして社会は「 」 、 。 、「人 間」が他人とは違う分野で貢献を行おうとする態度にこそ寛容でなければならない。 リスクに挑戦して失敗することに対してこそ寛容でなければならない。リスクへの挑 戦を終了した人間にこそ寛容でなければならない。さらに、社会は「人間」の行動を 率直な態度で受け止め、これを称え、これに報いなければならない。 「人間」をして、難しいこと、辛いことに情熱とビジョンを持って立ち向かわせる ことができたなら、その社会は成功した社会も同然である。 地方自治体の自立 (4) 多様な価値を受容する社会、その基礎は地方自治体にある 「人間」の社会に対する。 多様な貢献、教育、文化、雇用、労働、祭祀への参加にいたるまで、地方自治体は謙 虚にこれを受容し、称賛し、報いなければならない。地方自治体は、独自の歴史、教 育、文化を大切にすることにより、多様性を育んでいく風土を形成していかねばなら ない。 そのためには、地方自治体は中央の画一的な価値観から自らを解き放ち、財政的に も政策的にも、名実ともに真の意味で自立していくことが必要である。 さらに重要なことは、地域住民による地方自治への積極的参画である。地域住民が 自らの意思を表明し、自治体の行政をチェックする仕組みが確保されることこそが独 立した地方自治体を作り上げていく基礎であることを忘れてはならない。

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-2.目指すべき税制と課題

−税制改革は進展しつつある、しかし残された課題は大きい−

本検討会の視点 (1) 本検討会では、我々が目指すべき社会を支えるに相応しい税制を構築するとの認識 に立って、次の三つの視点から税制の検討を進めた。 ①個人及び企業の経済活動に中立的な税制を構築する。 市場の国際化と市場機能の多様化が進む中で、次の時代を担う企業、個人や技術 を予想することは極めて困難になってきている。そうした環境における経済の活性 化とは、市場を強制や計画によって規定することではなく、どのような経済の変化 にも対応できるフレキシブルな制度を作ることである。 税制は、そうした制度インフラの最も重要な部分であり、税制に求められるもの は、必要な税収を企業や個人の選択をできるだけ歪めることのないように確保する ことである。女性であること、高齢であることといった性や年齢の違いによる区別 もまた、経済の活力を削ぐ重要な原因の一つとなる。 企業や個人の選択は、税制によって影響を受けているという認識のもとに、経済 の変化に弾力的に応じることのできる「経済活動に中立的な税制」を構築すること が、この検討会に課せられた最大の課題である。 ②国際水準を備えた税制を構築する。 経済のグローバリゼーションの中で企業間競争は激化し、投資家による企業活動 の透明性に対する要求も高まっている。こうした企業環境の変化の中で会計基準の 国際化も進み、含み益や子会社を使った利益操作も困難になるなど、企業は抜本的 なリストラを迫られている。 個人もまた、変革を迫られている。一人一人の個人がより高い知識と能力を身に つけ、変化する環境の中で生き抜く力を求められている。 税制は、このような企業や個人の活動を支える社会経済基盤として、国際水準を 備えたものでなければならない。具体的には、税率構造や負担水準、さらに制度が 国際水準から見て十分競争力のあるものであることは勿論である。 同時に、企業や個人の活動がボーダーレスとなっている中で、我が国が経済活動 を行う場として国民の信頼を得る税制を築くためには、その透明性、公平性におい ても国際水準が確保されていなければならない。このような広い意味での「国際水

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準を備えた税制」を構築することが、第二の課題である。 ③持続的な経済成長を実現するための税制を構築する。 21世紀を担う将来世代の発展基盤を築くことが、持続的な経済成長の実現に とって必要不可欠である。税の制度としても、経済が本格的な景気回復軌道に乗っ たあかつきには、持続的な経済成長の下で適正な財政構造を実現しうる税制でなけ ればならない。 当検討会の最大の目標は 「経済の活性化」である。包括的な改革を通じて理念、 を具体化し、国民の信頼を得て 「経済の活力を削ぐことなく適正な財政構造の実、 現に貢献できる税制」を構築することに、我々の改革提案の狙いがある。このよう 、 。 な税制への改革提案とその将来の実現こそが 当検討会での審議検討の目的である 当面の課題だけでなく、中期的なスケジュールも含めた「包括的改革案の提示」を 行うことが第三の課題である。 我々の検討の主眼は、税制改革の流れが、全体としてこの三つの視点に沿うべく大 枠を構築していくことである。 税制改革の進展 (2) 近年の税制改革は、1988年度と89年度にかけて行われた消費税導入と所得課 税の引下げによるシャウプ勧告以来の「抜本改革」に始まる。その後、94年度及び 99年度にも改革が行われ、国と地方を合わせた所得税の最高税率は50 、法人税% の実効税率は 40 となった。この結果、我が国の税制は、国際的に遜色のない税% 率体系を確保した。この間、法人税については、国際水準を目指した課税ベースの抜 本的見直しも行われた。 こうした、思い切った税制改革の背景には、経済活動が国際化し、国境を超えた投 資や資金取引が頻繁に行われるようになり、個人にせよ、法人にせよ、他の先進諸国 に比較して著しく高い税率が適用できなくなったという事情がある。また、企業会計 制度の国際化に伴い、課税ベースの見直しが強く要請されたという事情もあった。 、 。 、 。 しかし 残された課題も多い 特に改革が遅れたのが 所得税と地方税改革である 所得税については、その負担軽減を図ることに急ぎすぎたため、課税ベースを見直し つつ限界税率を下げるという所得税改革の根本を見据えた改革が取り残されてしまっ た。また、地方税については、特に大都市圏に存する都道府県において、バブル経済 、 。 、 崩壊以降 法人所得の激減に伴い税収が減少するという事態が生じた この背景には 都道府県が、その住民に提供するサービスへの対価としてどのような税がふさわしい

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7 -かという議論を重ねることなく、法人への依存を続けてきたという問題がある。 これらの問題は、いずれも、国際化した経済から隔離されたところで、いわば、こ れまでの仕組みがそのまま存続してきた典型例である。我々が今行わなければならな い税制改革とは、経済活動のグローバル化の奔流に直面することなく見直しを迫られ てこなかった部分の改革であり、国内経済の根幹の見直し、立て直しと密接に関わっ ている。 税制改革の課題 (3) 税制構造など税制全体の議論の前に解決すべき個別の課題が存在しており、これら の解決なくして全体論の議論も進展しない。 ①個人所得課税 個人所得課税改革において積み残されてきた課題は、課税ベースにおける「公平 性」、「中立性」の確保である。高齢者や女性に関し生じている課税による個人の 選択への歪みの是正も検討されなければならない。特に年金税制の見直しは、経済 発展に欠かせないセーフティネット構築のためにも必要である。さらに、投資に対 して中立性のある金融所得課税も構築されなければならない。 ②法人所得課税 法人所得課税の課税ベースについては、マクロ的には諸外国と比較して遜色ない 状況となってきているが、退職給与引当金、欠損金の取扱い等個別の課題は残され ている。また、グローバル化した経済の中で、企業組織の改革や企業活動の国際的 、 。 展開が重要となっており これを阻害しないための国際課税等の整備が急務である さらに、国民に信頼される法人所得課税を構築するためには、赤字法人課税問題に も決着が図られなければならない。 ③消費課税 消費税の見直しにおいては、インボイス制度の導入が検討されるべきである。イ ンボイスにより複数税率の採用や徴税の効率化が可能となり、さらに、簡易課税制 度や免税点制度等についても見直しを検討することにより、消費税の公平性と透明 性をより確実なものとし、真の意味での付加価値税が実現できる。 ④地方課税 地方財政を改革し、地方自治体の自立を図るためには、地方交付税制度の抜本的

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な見直しと自主財源の確保を図るしか道はなく、国・地方を通じた税財政構造改革 が必要不可欠である。また、都道府県における過度な法人への負担依存は、国際化 の洗礼を受けてこなかった改革の立ち遅れを如実に物語っている。このような観点 を踏まえ、法人事業税の外形標準化についても検討が加えなければならない。 ⑤税と環境 地球温暖化問題に対する国際的な関心と議論は益々深まりつつあり、我が国も具 体的な対応が求められている。かかる状況の中で、エネルギー・環境政策と税制の 関係が真剣に検討されなければならない。 ⑥IT革命と税制 IT革命が経済構造に重大な影響を及ぼしつつある中で、特に、国際的なネット 取引に関する課税原則が確立される必要がある。また、IT投資を支える経済基盤 。 、 、 としての税制整備も重要な課題となっている さらに 電子納税申告制度の普及は 納税制度の公正性をさらに高めると同時に、IT革命をさらに推進させる役割も果 たすことに注目すべきである。 さらに、各種税制のバランスという税制構造の問題も残されている。将来を展望す れば、税制としては、所得税及び法人税が基幹税であり、それを第三の基幹税である 。 、 、 消費税がバランスよく補完するものとなるであろう その際には 経済活動において 個人や法人などのいかなる形で所得を得るかという「選択」に対しても税制が中立的 になることが重要であり、個人所得税と法人税の限界税率を等しくすることも検討さ れる必要がある。労働と資本所得の課税格差の是正についても検討されなければなら ない。消費税と個別間接税のあり方についても検討が必要である。当然、景気低迷に ともなって我が国の税収が減少しており、国債依存度が急激に増加しているという問 題もあり、財政構造改革という視点も避けて通れない。 もちろん、所得、消費、資産に係る全体の税制構造を議論するためには、景気回復 により経済成長が巡航速度で推移するようになった場合の税収構造や国民負担率につ いても見極めが必要である。また、抜本的な行政改革や歳出構造の適正化についてこ そ十分な議論が行われるべきであることは論を待たない。さらに、社会保障政策に関 する国民的な議論を避けて通れない。これら税制全般を議論するための前提について も、十分に検討が行われなければならない。

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-また、適正な財政構造改革は、理想的経済成長パターンを追求する中で実行するこ とが不可欠であることが強調されなければならない。欧米諸国の例を見ても経済成長 を犠牲にした財政構造の適正化は現実には不可能であり、適正な経済成長を実現する 中で財政の健全化が達成されていることが認識される必要がある。

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3.税制改革への途

−聖域なき包括的改革以外に途はない−

包括的税制改革 (1) 近年行われてきた見直しにより税制改革には大きな進展が見られたが、残された課 題はより本質的なものとなってきている。また、ひとつの税制改革を実現するために は、他の税目の制度改革を同時に行うことが不可欠となる場合も多く存在する。 例えば、個人所得課税における所得控除の見直しは、自営業者等の所得捕捉率向上 の問題とも関連し、消費税におけるインボイス制度の導入にも波及する。また、企業 組織関連税制の見直しは、既存の法人税制全般の見直しなくして進めることはできな い。地方課税改革は、交付税制度の見直しや国・地方を通じた税財政構造改革を抜き にしては実現不可能である。 真の税制改革を進めていくためには 「つまみ食い」的な改革では実効をあげるこ、 とは不可能である。聖域なき包括的な税制改革の提言のみが実現可能な提言となる。 公正性の確保 (2) 税制改革には当然痛みも伴う。その痛みを乗り越えて聖域なき包括的税制改革を進 めるためには、明確な理念が必要である。税制の理念は、公平・中立・簡素と言われ ているが、改革を進めるためには、より強い理念としての「公正性の確保」が検討の 視点として据えられるべきである。 「公正性」とは、個別の課題に対して、税制の信頼性を失わせないよう真に正しい 。 「 」 、 あり方を追求する態度である まず経済界自らが 公正性の確保 を視点に据えれば これまで利害関係の中で妥協を余儀なくされていた課題について 「聖域なき改革」、 を進めることが可能となる。 困難な時期からの出発 (3) 我が国経済は確実に回復の方向に向かいつつあるものの、依然として厳しい状況を 脱していない。税制改革は、経済に対して極めて大きな影響を与えるだけに、その実 行には極めて注意深い配慮がなされる必要がある。まず、景気回復を本格的なものと するための政策に全力を尽くさねばならない。そして、経済成長を巡航速度に乗せた 上で財政構造改革に着手すべきである。

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11 -しかしながら、我々は二つのことを忘れてはならない。前向きの改革も痛みを伴う 改革を避けていては実現ができないこと、そして、包括的税制改革こそ新たな繁栄の ための基礎を築く鍵であること、である。したがって、経済を本格的な景気回復軌道 に乗せた上で、聖域なき税制改革を実現するための 「包括的な計画」がたてられな、 ければならない。 厳しい経済状況にある今こそ、痛みの本質を理解でき、真実に目を向けることがで きる。困難な時期から改革へ向け真摯な検討を始めることが、試練を乗り越えるため の出発につながるのである。

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Ⅱ.個人所得課税

1.個人所得課税の現状と課題

−複雑にもつれあった糸は解きほぐさねばならない−

所得税改革の歴史 (1) 現在の個人所得課税の姿は、1988年度及び89年度に行われた抜本改革に依拠 。 、 、 するところが大きい この改革は 1989年度の消費税導入に伴うものであったが ( ) 、 、 最高税率の引下げ 地方税含む:88%→65% に加えて 配偶者特別控除の創設 基礎控除及び扶養控除の引上げ等、人的控除の大幅な拡充が組み合わせられたことが 特徴である。 さらに、1994年度には、税率のきざみ幅(ブラケット)の拡大、基礎控除、配 偶者控除を始めとした人的控除の更なる引上げを行うことによって、中間所得層の負 担軽減が図られた。 そして、1999年度においては、最高税率の引下げ(地方税含む:65%→5 0%)及び定率減税による恒久的減税が行われ、現行税制が形作られている。 、 ( ) これらの税制改革は インフレに伴う所得税負担の実質増加 ブラケットクリープ の調整、直間比率の見直しによる直接税負担の軽減など、改革の背景となる諸事情が 存在するが、大きな特徴の一つが、税率の引下げと同時に、所得控除(※注)の拡充 によって減税を実現させてきたことである。 ※注:本報告書で用いる所得控除とは、給与所得控除、公的年金等控除等の経費控除も含む。 図表Ⅱー1 基礎的な人的控除額等の推移(所得税) 年分 年分 年分 元∼ ・ ∼ 年分 年分 年分 61 62 63 4 5 6 7 9 10 11 12 年分 年分 年分 (62臨持法) (63臨持法) 33 33 33 35 35 38 38 38 38 基礎控除 配偶者控除 33 38 33 35 35 38 38 38 38 控除対象配偶者 39 44 44 45 45 48 48 48 48 老人控除対象配偶者 11.25 16.5 35 35 38 38 38 38 配偶者特別控除 − 扶養控除 33 33 33 35 35 38 38 38 38 扶養親族 − − − − − − − − 年少扶養親族 48 45 50 53 58 63 63 特定扶養親族 − − − 39 39 39 45 45 48 48 48 48 老人扶養親族 237.5 261.5 261.9 319.8 327.7 353.9 361.6 382.1 368.4 課税最低限

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13 -実効税率と所得控除 (2) これまで行われてきた改革により、我が国個人所得課税の最高税率は国際水準を確 保するようになったが、これが我々の目指すべき税制改革の方向を指向していること は明らかである。 しかしながら、これまでの減税においては、課税ベースの適正化に関する議論が先 送りされてきたという事実がある。このため、各種所得控除の存在により課税ベース が狭くなっており、それによる減免措置の規模はGDPの5%にものぼり、垂直的に も水平的にも不公平を増加させているという指摘もある。したがって、個人所得課税 における次の課題は、課税ベースの見直しである。 この点について、課税最低限が先進諸国に比較して高くなりすぎているという指摘 もある しかしながら 課税最低限の水準は 個々の所得控除政策の結果が組合わさっ。 、 、 たものであって、それ自体は一つの指標になるとしても、税制改革を進める決め手と はならない。個々の所得控除について 「公正性の確保」という観点からあるべき姿、 、 、 を検討することこそ改革の正しい途であり 課税最低限の水準はその結果に過ぎない ということを忘れてはならない。 また、所得控除が肥大化、複雑化したのは、我が国の個人所得課税の所得区分の多 さにも起因している。所得は、その発生形態に応じて、実に10種類もの所得に分類 、 。 、 されており それぞれに控除制度が存在している 所得の種類が増加すればするほど 所得控除は肥大化、複雑化していく 「所得区分の統合」も進めなければならない。。 さらに、各種所得控除の見直しを行い、適正な課税ベースが確保されたあかつきに は、個人、法人という経済主体の選択に対して税制の中立性を確保すべく 「個人所、 得課税と法人所得課税の限界税率の同一化」を図ることも検討されるべきである。 図表Ⅱ−2 最高税率の各国比較 ※注1:アメリカの住民税の税率は、ニューヨーク州個人所得税による。また、ブッシュ大統領により、現行最高税率 39.6%から33%への引下げを含む税率のフラット化が提案されている。 ※注2:ドイツの最高税率は2005年には42.0%へ、段階的に引下げ予定(2001年ドイツ税制改革 。) ※注3:OECDの推計では、個人所得課税における各種控除の減免措置は22.6兆円(=GDPの約5% 。) 37.0% 39.6% 40.0% 48.5% 53.25% 13.0% 6.85% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 地方税の最高税率 国税の最高税率

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図表Ⅱ−3 主な控除による課税ベース控除額及び減収額の試算 ※注1:無印は政府税調資料より抜粋したものであり、平成9年の各種控除の適用状況。 ※注2: ※1)は「税務統計から見た民間給与の実態(平成9年分 」より経済産業省が推計。( ) ※注3: ※2)は公的年金等の受給者数。( ※注4: ※3)は社会保険庁の事業年報(平成10年度)等より推計。( 図表Ⅱ−4 所得金額の計算方法 種 類 計 算 方 法 利 子 所 得 収入金額=所得金額 配 当 所 得 (収入金額)−(株式などを取得するための借入金の利子) 事 業 所 得 収入金額−必要金額 不動産所得 収入金額−必要金額 給 与 所 得 収入金額−給与所得控除額 退 職 所 得 (収入金額−退職所得控除額) 1/2× ( ) ( ) ( ) 譲 渡 所 得 収入金額 − 売却した資産の取得費・譲渡費用 − 特別控除額:50万円 山 林 所 得 収入金額−必要経費−特別控除額(50万円) 一 時 所 得 (収入金額)−(収入を得るために支出した費用)−(特別控除額:50万円) 雑 所 得 【公的年金等】 収入金額−公的年金等控除額 【上記以外】 収入金額−必要経費 (出典:政府税制調査会資料) 適用人員(千人) 控除総額(億円) 減収額(億円) 37,007 541,621(※) 79,415(※1) 37,007 140,628 17,033(※1) 11,426 43,578 6,272(※1) 11,378 43,236 --48 232 --37 110 --10,371 34,144 4,737(※1) 23,828 103,585 15,122(※1) 16,058 61,021 --5,082 26,933 --2,688 12,904 --2,111 2,111 --205 616 --34,852 176,012 23,168(※1) 242,77(※2) 112,696(※3) 12,801(※3) 民間給与所得者の内納税者 給与所得控除 基礎控除(38万円) 控 除 の 種 類 特定扶養(53万円) 配偶者控除 一般(38万円) 老人配偶者(48万円) 同居特障加算(+30万円) 配偶者特別控除(最高 38万円) 扶養控除 一般(38万円) 社会保険料控除 公的年金等控除 老人扶養(48万円) 同居老親加算(+10万円) 同居特障加算(+30万円)

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15 -改革への途 (3) 個人所得課税改革は、その影響を受ける国民が多く、また、個々の改革が相互に深 く関連し、他の税目の在り方にも大きな影響を及ぼすことが多い。そのため、いわゆ る「聖域」が多数存在し、個々の改革が独立して検討された場合に、全体としての改 革は進みづらくなりがちである。しかしながら、個人所得課税改革は、困難が大きい だけに、まさに包括的な税制改革への第一歩として相応しいものである。国民一人一 人が個々の利害にとらわれることなく 「公正性の確保」を強く認識し、包括的な税、 制改革につながるよう個別課題に取り組まなくてはならない。そして経済界は、自ら 「 」 、「 」 、 が 公正性の確保 を視点に据え クロヨン問題の是正 に取り組むことによって もつれあった糸を解きほぐすための第一歩を踏み出さなければならない。

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2.給与所得控除

−最大の所得控除がありながら給与所得者は不満を感じている−

給与所得控除と申告納税制度 (1) 給与所得控除とは給与所得者に認められた経費控除である。国税(所得税)につい て民間給与者の控除総額を推計すると、課税ベース控除総額で約54兆円、減収額で 約8兆円と見積もられる。これに、公務員の控除総計及び地方税(個人住民税)の減 収分を加えれば、減収規模は約14兆円、GDPの3%にも達すると推計される我が 国最大の控除制度である。したがって、その制度設計は極めて慎重に行われねばなら ない。 我が国の給与所得控除は、最低控除額である65万円を出発点として、それ以降、 。 、 給与収入金額の増加に応じて一定割合が控除できる仕組みになっている 最終的には 給与収入が1,000万円以上の場合、170万円+収入の5%が控除され、給与収 入が増加すればするだけ控除額も自動的に増加する仕組みとなっている。 これに対して、諸外国においては、50万円から80万円程度の経費控除又は基礎 控除が認められ、それ以上については必要経費を申告して控除が行われる仕組みに 。 、 、 、 なっている 我が国の場合 給与所得者にも必要経費に相当するものとして 通勤費 転勤費、研修費、資格取得費などを含む特定支出控除が認められており、特定支出控 除が給与所得控除を上回る場合には、申告によって上乗せして控除が得られるように なっている。しかも、諸外国の給与所得者に認められている必要経費と我が国の特定 支出控除を比較した場合、差違はほとんど存在しない(※注1)。 労働に対する対価である給与について、給与が増加すればするほど経費が自動的に 増加するということは明らかに経験則に反する。また、我が国においては、給与所得 控除額が大きいため、特定支出控除が申告されることはごくわずかであるとい実態も ある。これが申告納税者の少ない原因であり、給与所得者の負担感の欠如につながっ ていることにも鑑みれば事態は深刻である。給与所得者の源泉徴収制度は維持すべき としても、給与所得控除は定額とし、それ以上の必要経費については申告により控除 が行われる仕組みに制度改革が行われるべきである。 このような制度改革は増収それ自体を意図するものではなく、公正な税制の構築を 目的とする改革である。しかしながら、我々の試算によれば、給与所得控除を単純に 定額化した場合、最大で約5兆円弱相当の増収の可能性があり(※注2)、その影響に 鑑みれば、他の懸案事項とともに税制の抜本改革の中で検討が行われるべき課題であ る。 ※注1:p.104「参考図表1 給与所得控除者に係る必要経費範囲の国際比較」参照。 ※注2:p.106「参考図表2 個人所得税に係る各種試算結果」参照。

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17 -図表Ⅱ−5 給与所得控除額 ①我が国の給与所得控除 給与等の収入金額 給与所得控除額 ∼162.5万円 65万円 180 ×40% ∼ 万円 収入金額 ∼360万円 収入金額×30%+18万円 ∼660万円 収入金額×20%+54万円 ∼1,000万円 収入金額×10%+120万円 万円∼ 収入金額 + 万円 1,000 × 5% 170 ②諸外国の概算経費控除 アメリカ 単身者 :4,300ドル(52.9万円) 夫婦共同申告者:7,200ドル(88.6万円) イギリス 概算経費控除は存在しない ド イ ツ 2,000マルク(11.2万円) フランス 所得金額の10%[最大77,460フラン(131.7万円 ]) ※注:邦貨換算率:1ドル=123円、1マルク=56円、1フラン=17円 「クロヨン問題」の是正 (2) 「クロヨン」とは、給与所得者、事業所得者、農業所得者間の所得捕捉率の比を表 現するものであり 「トーゴーサン」とも呼ばれてきた。先進諸国においても、給与所、 得者と自営業者等との間の負担の相違については不公平問題として認識されており、 実際に給与所得者が不満を感じていることも事実である(※注)。 「クロヨン問題」を是正するためには、自営業者等に対する課税の取扱いについて 透明性を確保し、所得捕捉率の向上を図る必要がある。自営業者等の所得捕捉が十分 に行われない理由としては、売上の意図的縮小、私的費用の必要経費化及び所得の世 帯構成員への不適正な割り振りが挙げられており、これに対して、以下のような透明 性を確保する制度が確保されなければならない。 ※注:これに対するOECDの指摘は p.107「参考図表3 個人事業者の所得の捕捉に関するOECDの指摘につ いて」参照。 ①帳簿の備え付けの義務化

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我が国においては、申告納税事業者のうち約143万人が青色申告者、138万 人が白色申告者である。青色申告の場合は必ず帳簿が必要であり、正規の簿記方式 であれば仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿が、簡易簿記方式であっても現金出納帳、 売掛帳、買掛帳などの帳簿が必要となっている。これに対して、白色申告者の場合 は、事業所得等の金額が300万円以下の者には帳簿の備え付けが義務化されてい ない。 欧米では、申告をする際に帳簿の備え付けは当然である。また、現代の経営者で あれば簿記の能力がないということ自体首をかしげざるを得えない。そもそも事業 を行う者として、帳簿を備え付けることは当然の義務であるはずである。 帳簿備え付けの義務化が行われれば、事業に係る全ての取引が明確になり、売上 及び経費の明確な把握が可能となり、売上の意図的な縮小、私的費用の必要経費化 に対しては、十分なチェックがなされるであろう。 図表Ⅱ−6 青色申告及び白色申告に必要な書類について 青色申告 白色申告 申告書に添付すべ 青色申告決算書 収支内訳書 (1) き書類 備え付けるべき帳 記帳方式 帳簿 なし (2) 簿書類 正 規 の 帳 簿 方 年末に貸借対照表及び損益計算書等 (保存期間7年) 式 (※注1)を作成できるような正規の簿記 複式簿記 により記帳する。 ( ) 簡易簿記方式 正規の簿記によらず、次の帳簿を備 えて簡略な記帳をするだけでよい。 ①現金出納帳 ② 売 掛 帳 ③買掛帳④経 費明細帳 ⑤固定資産台帳 現金主義方式 前々年の事業所得と不動産所得の合 計額が 300 万円以下の者は、現金主義 による記帳ができる。現金収支を中心 とする簡易な記帳をするだけでよい。 申告者数 千人 千人 (3) (※注2) 909 740 (平成10年分) ※注1:仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿 ※注2:出所は国税庁「第124回 国税庁統計年報書(平成10年度版 」) ②納税者番号制度の導入 納税者番号制度を導入することによって、税務当局による取引に関する課税所得 の集中的な管理が可能となり、所得捕捉に対する透明性が向上する。 納税者番号制度の導入については、納税者番号制度の対象範囲、納税者番号とし て何を用いるか、プライバシー等納税者の権利保護、等課題は残されている。しか

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19 -し、諸外国でも導入されていることを考えれば、課題の解決は十分可能なはずであ り、納税者番号制度の導入が図られるべきである。 図表Ⅱ−7 米国の納税者番号制度適用範囲(例) ○年間$10以上の利子の支払いに関する報告書 ○年間$10以上の配当の支払いに関する報告書 ○ブローカーによる顧客の取引(株式、債券、商品、貴金属、先物契約等の売買)に関する報告書 ○不動産取引に関する報告書 ○負債の弁済に関する報告書 ○賃金の支払いに関する報告書 ○レストラン等のチップに関する報告書 ○賃金、ロイヤルティ、弁護士等への報酬に関する報告書 、 、 , 、 ○通常の店舗以外で 直接消費者に販売する目的で 年間$5 000以上消費財を購入する者に対し 当該消費財を販売する者が提出する報告書 ○ギャンブルの勝ち金の支払いに関する報告書 ○取引又は事業に関連して、$10,000超の現金の支払いを受けた者が提出する報告書 ○金融機関における$10,000超の現金の預け入れ、引き出し、振替についての報告書 ③インボイス制度の導入 自営業者等の経理の透明性は、消費税におけるインボイス制度の導入にも関連す る。インボイスとは、仕入の際の税額が記載された請求書のことであり、事業者は インボイスに記載されている税額にしたがって仕入税額控除を行う。 同制度が導入されれば、インボイスに記載された税額のみの仕入税額控除が認め られることになり、インボイス発行者はその記載した税額に責任を持つ。このこと により、取引事業者間で売上や仕入に関する関心が高まり、自営業者等の経理の透 明性も高められ、売上や必要経費の正確な捕捉に資すると考えられる。インボイス 制度は、消費税にのみ内在する問題ではなく、個人所得課税のあり方にも多大なる 影響を与える問題である。消費課税で詳細は論ずるが、インボイス制度の導入も真 に検討すべき課題である。

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3.年金税制

−年金制度の信頼性こそ活力ある社会の基礎である、

しかし、若年層と高齢者層の公平は確保されなければならない−

年金制度における長期的信頼の確立 (1) 「人間」がリスクに対して勇気をもって挑戦する社会を構築するためには 「安心、 感を持てる生活基盤」が提供されなければならない。そのために最も重要な政策が社 会保障政策、特に、年金制度である。 我が国の年金制度は、相互扶助を基本とする公的年金(国民年金・厚生年金等)と ( ) 。 自助努力を基本とする私的年金 企業年金・個人年金等 とによって構築されている 公的年金については、昨年3月に年金改正関連法が成立し改革が進展した。基礎年 金及び厚生年金額のスライド方式について、65歳以降は、賃金スライドを行わず、 物価スライドのみを行うこととされた。これは、賃金や年金給付額が世界最高水準と なった我が国においては、物価スライドのみでも十分な給付水準を確保することが可 能であるとの認識に基づくものである。今回の改革は、高齢者層の生活水準の低下を 招くことなく、将来の若年層の負担増を一定の範囲に押さえるものであり、持続可能 な公的年金制度の再構築への一歩として評価することができる。 ただし、今回の改革では、年金受給後も在職している高齢者に対して厚生年金受給 額を減額する「在職老齢年金制度」の見直しが行われ、減額期間を70歳までに延長 することなどが実施されることになった。この制度については、高齢者の就業意欲を 削ぐ、といった指摘もなされており、後述する年金所得に対する所得課税の徹底を前 提とした上で、見直しを行う必要があるものと考えられる。 一方、私的年金についても、将来に向けた改革が着手されている。 まず、我が国への確定拠出型年金の導入も、いよいよ具体化しようとしている。前 回の臨時国会においては確定拠出年金法案は成立に至らず、継続審議となったが、早 期に同法案が成立し、我が国にも確定拠出型年金が普及することが期待される。 また、従来から指摘されてきた現行私的年金制度に関する懸案事項も一掃されよう 。 、 、 としている 例えば 厚生年金基金の適格退職年金への移管が制度上許されない問題 あるいは、いわゆる「代行制度」の返上の可否の問題、さらには、適格退職年金にお ける受給権の不十分な保護の問題、各種企業年金制度の統一的運営の確保(企業年金 法の制定)などである。これらの課題については、平成13年度税制改正において措 置されることとなった(※注)。 年金制度改革において刻まれるべき大きな前進として評価に値するものであり、早 急な制度改正の実現が期待される。

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21 -もちろん、年金制度改革に関し必要な課題が全て解決している訳ではない。基礎年 金の国庫負担の割合を2004年までに1/2に引き上げることが決定しているが、 具体的な財源論は行われておらず、今後、安定した財源確保のための具体的な方法と 一体として検討する必要がある。 また、公的年金がスリム化されていく中で、私的年金、とりわけ企業年金の重要性 がますます高まることを考えると、企業年金を、いわば「年金らしい年金」とするた めには、確定拠出年金の拠出限度額の拡充等も実現させる必要がある。 ※注:p.109「参考図表4 企業年金改革−平成13年度税制改正の概要」 年金税制の抜本改革 (2) 信頼できる年金制度を構築するためには、当然それに対応する年金税制も信頼に足 るものでなければならない。 現在の年金税制の仕組みを見てみると、いわゆる「入口」の掛金を払い込む拠出時 点でその大部分を所得から控除した上で 「出口」である給付時点において所得課税、 をするという仕組みになっている。 しかしながら、実際には 「出口」においても公的年金等控除という大幅な控除制、 度が存在するため、年金所得は、入口でも出口でも課税されない状態となっている。 図表Ⅱ−8 公的年金に係る課税の仕組み 拠出時 掛金(所得控除) 社会保険料控除 給付時 年金収入 ①定額控除 100万円 (65歳未満の者 50万円) ②定率控除 (定額控除後の年金収入) 360万円までの部分 25% 720 15% 公的年金等控除 万円までの部分 720万円を越える部分 5% 最低保障額 140万円 (65歳未満の者 70万円) 老年者控除 50万円(個人住民税48万円) (65歳以上で、合計金額が1,000万円以下の者) (個人住民税 万円) その他の所得控除 基礎控除 38万円 33 (個人住民税 万円) 配偶者控除 38万円 33 ] [老人控除対象配偶者(70歳以上) 48万円(個人住民税38万円) (個人住民税 万円) 配偶者特別控除 38万円 33 税額計算 社会保険料控除等 (出典:政府税制調査会資料)

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公的年金等控除は、給与所得控除と同様の仕組みとなっており、年金受給者が65 歳以上の場合、最低控除額である140万円を出発点として、それ以降、定額部分プ ラス年金収入額の一定割合が控除できるものとなっている。最終的には、年金収入が 820万円超の場合、203万円+収入の5%が控除され、給与所得控除よりも大き な控除額が与えられる仕組みとなっている。 ( ) 図表Ⅱ−9 公的年金等控除 65歳以上の場合 公的年金等収入金額 公的年金等控除額 ∼260万円 140万円 ∼460万円 収入金額×25%+75万円 ∼820万円 収入金額×15%+121万円 万円∼ 収入金額 + 万円 820 × 5% 203 さらに、給与収入がある高齢者は、給与所得控除と公的年金等控除の両方の適用が あり、同収入の若年層と比較すると非課税所得が少なくなるため、若年層との公平性 を損ねている。 若年層の立場からすると、少子高齢化の進展にともない、年金負担が益々増加して いくのは目に見えているにも拘わらず、高齢者の年金所得が税制面で大幅に優遇され ていることには、強い不公平感を感じている。信頼に足る年金税制を構築する際は、 「公正性の確保」が大前提であり、そのためには、若年層の抱えている不公平感の解 消が必要である。 年金所得については、かつては「みなし給与」として給与所得控除の対象となって いた。しかし 「年金所得については必要経費という考え方が採れない」という概念、 上の整理から、1987年の改正により、公的年金等控除を新設したという経緯があ る。 個人所得課税の問題点の一つは、所得控除の複雑化であり、その要因の一つは所得 区分の多さである。この点に鑑みれば、公的年金等控除創設の経緯にとらわれること なく、年金所得と給与所得の一本化を行い、同一の経費控除を適用するという方向に ついても検討する必要があろう。その際 「在職老齢年金制度」の見直しを同時に図、 、 。 れば 高齢者の就業意欲を阻害することがない中立的な制度を確立することができる 仮に、区分は区分として残すとしても、老年者控除という高齢者特有の控除の仕組 みがある以上、公的年金等控除と給与所得控除の控除水準が異なる合理性があるとは 考えられない。最低限、公的年金等控除と給与所得控除を重複的に使えるという仕組 みを見直すこと等その抜本的見直しが行われるべきである。このような制度改革も、 相当規模の増収を伴うものであり、税制の抜本改革の一環として検討が行われるべき

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23 -である。 公的年金等控除の見直しは「公正性の確保」のために必要な改革であるが、さらに 信頼できる年金制度構築等を行うためには、特別法人税の問題を指摘しなければなら ない。適格退職年金及び今般法案が提出された確定拠出型年金については、年金資産 の残高に一定の税率をかける形で特別法人税が課税されている。これは 「法人に課、 した税」ではなく労働者が受給する「年金資産に対する課税」であり、特別法人税は 廃止が検討されるべきである。 ただし、これら年金税制改革は、年金制度改革と相まって包括的かつ計画的に行わ れるべきである。年金制度改革と年金税制改革の両者が実現してはじめて、リスクに チャレンジするための信頼に足る社会的基盤が整備されることになるのだということ を忘れてはならない。 図表Ⅱ−10 世帯主の年齢別・所得階層分布 (出典:厚生省「国民生活基礎調査(平成9年調査)」) 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 200万円未満 200∼400 400∼600 600∼800 800∼1000 1000∼1500 1500∼2000 2000万円以上 所     得     階     層 構 成 比 (%) 29歳以下 30∼39歳 60歳以上

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4.配偶者控除制度

−21世紀は女性の可能性を発揮する場であり、

女性の社会行動に対して中立な税制を確保しなければならない−

配偶者控除制度の歴史と課題 (1) 配偶者控除制度は、1961年に創設された。控除額は、創設の翌年以降逐次引き 上げられ、現行の制度では38万円となっており、配偶者の収入が103万円を超え ると、控除が消滅する仕組みとなっている。 配偶者控除は、夫婦の所得が一体としてみられるべきことや、夫の所得の稼得に対 して妻が貢献していることから夫の所得の処分に対する妻の発言権の大きいことを考 慮すると、単に夫に扶養されるという立場で決められるべきものではなく、夫と同額 の控除を認めてよい、という考えの下で創設された。配偶者控除は、夫婦一方のみが 所得を得ている場合と、双方が共稼ぎで所得を得ている場合との税負担のバランスを 改善するうえにも役立つものである。 配偶者特別控除は、1988年に創設された。これは、パートで働く主婦の年間収 入額が103万円(当時90万円)を超えると、夫の所得税額計算上配偶者控除が適 用されなくなるとともに、主婦自身も独立して税負担が生じるため、かえって世帯全 体の手取りが減少してしまうという問題(パート問題)があった。そのため、所得の 稼得に対する配偶者の貢献への配慮に加えて、税負担の調整を図る趣旨から創設され た制度である。 しかしながら、パートタイムの年間賃金分布を調査すると、女性のみ異常なピーク が103万円付近に現れており、全体の25%のパートタイム労働者がここに集中し ている。また、年齢階級別女性労働力比率の国際比較を行うと、20代から30代の 我が国の女性労働力比率が他の諸外国と比較して極めて低い水準に止まっている。女 性の社会進出こそ21世紀の日本に必要不可欠であり、それに相応しい税制の見直し が行われなければならない。 実際、現代社会においては女性の意識改革が進み、率先して社会に出ることを望む 女性が増加している。女性の可能性、持てる能力が最大限に発揮されることが我が国 の持続的な経済発展には必要不可欠である。そのためにも、税制が女性の社会進出の 阻害要因となることは許されない。

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25 -図表Ⅱ−11 男女パートの年間賃金の分布 (出典:労働省「パートタイム労働者総合実態調査(平成7年)」) ※注:対象は、男子、女子ともパート労働者(学生を除く 。) そのうち、就労調整を考慮するものの割合は男子で7.8%、女子で38.6%である。 配偶者に係る税制上の配慮 (2) 女性の社会進出に対して、税制としての阻害要因を取り除き、中立性を確保するた めには、配偶者控除の見直しが必要である。しかしながら、問題はそれだけに止まら ない。女性の社会行動に対して税制の中立性を確保すべき、という側面を考慮しなけ ればならないからである。 欧米において配偶者への税制上の配慮として行われている方法として、夫婦合算分 割選択制度があり、それは以下の考え方に依っている。 女性は、社会に進出していって所得を稼得する場合もあれば、家庭に入り、家事や 子供の教育を行うことで、所得を稼得する夫を支援する場合もあろう。女性がどちら かの社会行動を選択する際に、税制による歪みが生じてはならない。片稼ぎと共稼ぎ に対して、中立的な税制を構築する必要がある。例えば、片稼ぎ、共稼ぎで、世帯単 位の稼得所得が同一の場合には、税負担も同一とするべきという考え方もある。すな わち、夫が2,000万円の所得で妻がゼロの家庭と、夫が1,500万円の所得で 妻が500万円の家庭と、夫も妻も1,000万円の所得の家庭は、いずれも家庭単 位としては2,000万円の所得であり、所得課税上同一に取り扱われるべきという ものである。 ただし、夫婦合算分割選択制度に関しては、その性質上独身者に対して不利である こと、高額所得者に対して有利であることといった批判や、合算制度は、財産制度の 0 5 10 15 20 25 30 ∼ 40 40 ∼ 50 50 ∼ 60 60 ∼ 70 70 ∼ 80 80 ∼ 90 90 ∼ 100 100 ∼ 110 110 ∼ 120 120 ∼ 130 130 ∼ 140 140 ∼ 150 150 ∼ 300 300 ∼ 500 500 ∼ 男子 女子 (万円) (%)

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在り方とも極めて密接な関係がある等の論点もあり、また、欧米の国々でこれまで積 み重ねられてきた議論を踏まえる必要もある。 我が国で夫婦合算分割制度を導入した場合は、相当規模の減収(配偶者控除、配偶 者特別控除は現状のまま存置するものと仮定)が生じるものと予測される。他方、配 偶者控除、配偶者特別控除を仮に全部廃止した場合の増収額も同程度である可能性が あることから、両者の関係を精査しつつ検討が行われるべきである。 世帯に対する課税については共稼ぎ・片稼ぎ間の中立性や婚姻中立性あるいは労働 。 、 供給に対する中立性などいずれを重視するかによりあるべき税制の姿は異なる また 一方、配偶者の行う家事労働が他方配偶者の所得にどの程度貢献するのか、あるいは 配偶者の存在により無形の所得(帰属所得)がどの程度発生するのかなどの必ずしも 定量的に把握することが困難な項目への配慮も必要である。このため、この問題につ いての理想の姿は論理的に決することが極めて困難であるのが現実である。どのよう な価値観に対しても税制は中立的であるべきという理想の下、結局は国民がどのよう な価値観をより重視するのか否かを迫られざるをえない。 従来、この問題については各社会各人の家族観、人生観をも投影される重要な問題 であるにもかかわらず、論点が必ずしも提示されることなく、配偶者控除を廃止する のか、それともしないのかの二者択一の議論が行われるきらいがあった。論点と選択 肢を提示した上で国民における議論を喚起することが重要であると考える。 図表Ⅱ−12 主要国の課税単位と基礎的な人的控除(未定稿) 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 課税単位 個人単位 個人単位、夫婦単位 個人単位 個人単位、夫婦単位 世帯単位(N分N乗) の選択 (二分二乗)の選択 ※N夫婦及び扶養子: の人数 基礎控除 人的控除 380,000円 人的控除 2,750ドル 4,385ポンド なし なし ≪所得控除≫ (338,250円) (781,056円) ≪所得控除≫ ≪所得控除≫ ※税率適用課税所得 ※税率適用課税所得 基 13,500マルク 26,230フラン (754,920円) (437,516円) 礎 配偶者控除 人的控除 380,000円 人的控除 2,750ドル なし なし なし 的 ≪所得控除≫ (338,250円) ≪所得控除≫ 人 : : : ※注 ※注 ※注 的 配偶者の所得金額が 夫婦共同申告を選択 2000年度より6 万円未満(給与収入 した場合に ドル 5歳未満の夫婦者の 76 2,750 控 が 141 万円未満であ の2倍の人的控除が 税額控除は廃止。6 る場合には、配偶者 認められる(2,750 ドル 5歳以上の老齢者夫 除 特別控除として、そ が配偶者特別控除相 婦税額控除は存続。 の配偶者の所得金額 当額になる)。 に応じた一定額を所 得控除することがで きる) (2000年度の各国の税法による) ※注:邦貨換算率:1ドル=123円、1ポンド=178円、1マルク=56円、1フラン=17円

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-5.金融所得税制

−金融所得税制の中立性がオープンな投資環境を整備する−

金融所得税制の現状と課題 (1) ①脆弱な我が国の直接金融市場 我が国企業の資金調達構造はドイツと並んで間接金融中心の構造となってきた。 97年から98年にかけての金融機関の破綻に発する貸し渋り問題及びこれに起因 する企業の倒産が深刻化した一因は、我が国企業の資金調達構造にあるとの指摘も ある。 このような構造の下、現在、我が国の株式資本市場は短期的に不安定な動きを続 けているだけではなく、構造的にも一部の投資家層に左右される脆弱なものとなり つつあることには注意を要する。特に構造的な問題として、個人投資家の株式資本 市場離れが10年以上続いている長期的トレンドとなっており 株式資本市場が 担、 「 い手不在」となりつつあることを指摘することができる。 我が国の個人金融資産のうち株式など直接金融市場に流入している割合は約9. 4%にすぎない。他方、主要先進国においてはこの割合は米国の47.5%を筆頭 に、20∼30%程度の比率を占めている。我が国においても直接金融市場の活性 化が企業の資金調達基盤の強化、経済基盤の強化の観点から求められているといえ よう。 もちろん、我が国の直接金融市場は個人投資家が参画しない理由及びその打開策 が税制のみに求められるわけではない。 構造改革の推進による経済状況の好転や、証券会社・証券市場に対する不透明感 を払拭するための証券会社による営業姿勢の転換、証券市場の公正性確保もまた不 可欠な課題であるし、産業の活性化や株主重視の経営の推進も求められよう。 これらに加えて、株式資本市場の健全な発展を図っていくためには証券税制のあ り方について検証されるとともに、必要な改革が行われなければならない。

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図表Ⅱ−13 個人金融資産の内訳(国際比較) (出典:日本銀行「欧州主要国の資金循環統計(2000年11月)」) ※注:邦貨換算率:1ドル=123円、1ポンド=178円、1マルク=56円、1フラン=17円 ②細分化された金融所得税制 現行の金融所得税制は、投資対象の特性に応じて分類された所得の種類ごとに課 税方法・税率・捕捉方法等が異なり、非常に複雑な制度となっている。 株式、公社債、投資信託、預貯金などはそれぞれ課税方式が別れており、さらに 公社債の課税方式は、転換社債・ワラント付社債、利付債、割引債、TB・FB、 ゼロクーポン債等ごとに細分化され、投資信託も従来型証券投資信託、会社型投資 信託、私募投資信託に細分化されている。 また、金融資産の所得が投資対象ごとに細分化された利子、配当、譲渡益、償還 差益等所得の発生の仕方によっても課税方式が異なるものとなっている。 ③金融所得税制の課題 上記のように細分化された結果、制度そのものが複雑で分かりにくい上、金融商 品間の課税のバランスも相対的に取れておらず、税制の中立性が確保されていない 現金・預金 54.0% 投資信託 2.3% 保険・年金準備 金 26.4% その他 3.9% 債券 5.3% 株式・出資金 8.1% 現金・預金 9.6% 債券 9.5% 投資信託 10.9% 株式・出資金 37.3% 保険・年金準備 金 30.5% その他 2.2% 現金・預金 20.7% 投資信託 5.0% 株式・出資金 17.2% 保険・年金準備 金 52.3% その他 3.3% 債券 1.5% 現金・預金 35.2% 債券 10.1% 投資信託 10.5% 株式・出資金 16.8% 保険・年金準備 金 26.4% その他 1.1% 現金・預金 25.3% 債券 1.8% 投資信託 8.7% 株式・出資金 39.7% 保険・年金準備 金 20.6% その他 3.9% 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 1,438兆円 35.3兆ドル (4,367兆円) 2.9兆ポンド (516兆円) 7.0兆マルク (392兆円) 21.2兆フラン (360兆円) ※1999年12月末

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29 -という課題が存在している。 特に リスクの大きい株式投資によるキャピタルゲインに対する税率は26% 申、 ( 告分離課税選択の場合)である一方、リスクの小さい銀行預金利子に対する税率は 20%と優遇されている。また、欧米諸国においては認められている譲渡損の繰越 しや類似金融商品との損益通算も認められていない。 先進各国が株式市場、直接金融市場を活性化し、企業及び個人のリスクマネーの 流入促進を競争している現代において、我が国の制度はリスク回避を奨励する制度 であるとの指摘を全く否定することは困難である。 また、利子所得と配当所得に対する課税のバランスについても課題がある。利子 所得と同じインカム・ゲインである利子所得と配当所得を比較した場合、利子は 20%の源泉分離課税であるのに対し、配当は最高税率50%の総合課税を原則と している。また、利子は支払法人の段階で損金算入され二重課税の問題は生じてい ないが 配当は調整措置が不十分であり二重課税が完全には排除されていない 従っ、 。 て、配当所得の方が利子所得に比べて相対的に税負担が重くなることもある。 さらに、デリバティブや仕組債などの新しいスキームを用いることによって、税 負担が重い所得を税負担の軽い所得に転換する節税が容易に行い得るといった事態 が生じていることも忘れてはならない。 本来、投資においては、金融商品固有のリスク・リターンを基にポートフォリオ が組まれるはずである。しかしながら、そこに税負担の軽重といった現行税制の歪 みが影響している我が国の現状は早急に見直されなければならない。

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図表Ⅱ−14 金融所得税制の各国比較 日 本 アメリカ イギリス ドイツ フランス 課税の原則 ・総合課税 ・総合課税 ・総合課税 ・総合課税 ・総合課税 : (26%) キャピタル・ゲイン ・次のいずれかを ・総合課税 ・総合課税 ・一年超保有 原則非課税 ・申告分離 一年未満保有等総合課税 選択 ・ : ○源泉分離 (譲渡代金の1.05%) ○申告分離 (譲渡益の26%) 他の所得との ・不可 ・一般所得と可 ・資産譲渡損益間 − ・有価証券譲渡損 損益通算の可 (36万円まで) で可 益間で可 否 損失繰越 ・不可 ・無期限 ・無期限 − ・5年間 配当課税 ・原則総合課税 ・総合課税 ・総合課税 ・総合課税 ・総合課税 12 ※但し、一定額以 ※但し 年間約、 下 の 受 取 配 当 は 万円の非課税枠あ 又は の源 り 20% 35% 泉分離課税との選 択可 配当二重課税 ・配当控除 ・調整なし ・インピュテーション方式 ・配当半額課税 ・インピュテーション方式 への対応 (配当所得金額の ※インピュテーション方式 原則10%) は廃止 利 子 ・源泉分離課税 ・総合課税 ・総合課税 ・総合課税 ・次のいずれかを 源泉分離 源徴あり 源徴あり 選択 (20% ) (20% ) (30% ) ○総合課税 (源泉徴収なし) ○源泉分離課税 (25%) 中立的な金融所得税制の確立 (2) 税制は投資活動に中立でなければならない。特に中間的金融商品が出現している現 状の下では、課税方法が異なることは投資に対する中立性を阻害する結果となりかね ない。また、新金融商品の課税方法が予見できないといった問題も起こる。金融商品 選択に対して、課税方法の予見性を確保し、中立性を確保するためには、資本所得課 税全体のあり方や法人所得課税との関係にも配意しつつ、これまでのように金融商品 ごとに細分化して課税するのではなく、申告納税制度を原則とした上で簡素で中立的 な金融所得税制の確立が必要である。

この点で、北欧各国が採用している二元的所得課税(Dual Income Tax)(※注)は参 考になる。これは原則として所得を資本所得(配当、利子、キャピタルゲインなどあ ) ( ) 、 らゆる金融資産性所得を含む と勤労所得 給与所得や年金による収入 に二区分し 前者には法人税率と同一の比例税率で、後者には累進課税を行うものである。資本所 得相互間での損益通算や損失繰越は原則として認められることはいうまでもない。 北欧諸国は高水準の福祉を支えるため給与等に対する所得には強度の累進課税(社

参照

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