−税制の見直しが IT 革命を支える−
米国経済は、活発なIT投資により労働生産性が飛躍的に向上し、従来では考えられ ないほどの高い経済パフォーマンスを示す「ニューエコノミー」へと脱皮しつつある。
IT投資により時間とコストの大幅な削減に成功し、新しい産業・雇用の創出も活発で 潜在成長力も高まりつつある。
一方、我が国においては、IT投資の量・伸び率とも米国とは大きな格差がある。I T投資が、電気機器や通信などIT供給型産業に、また、中小企業より大企業に偏って いるとの指摘もある 全産業において IT投資が促進され 我が国においても ニュー。 、 、 「 エコノミー」を実現することこそが急務である。
IT投資に大きな影響を与えるのが、減価償却制度である。法定耐用年数が実態と乖
、 、 。
離していると 企業のキャッシュフローが減少し 新しいIT投資が抑制されてしまう 情報通信技術の最大の特徴はその激しいスピードにある。スーパーコンピュータの処 理能力は過去10年で100倍になった。急激な技術進歩に応じて、コンピュータやソ フトウェアなどのIT設備は短期間で陳腐化し、様々な産業分野に新たな資本財が誕生 している。1986年以来、抜本的改革がなされていない現行の減価償却制度にも全面 的見直しの時期が到来していると言えるだろう。
、 。 、
第一に 法定耐用年数の再検討である IT革命に代表される新しい技術革新により 多くの設備・機械の法定耐用年数が経済的実体より短くなっている。しかしながら、I T革命は全産業の非常に広汎な資本財に及んでいるため、包括的な検討が必要である。
平成13年度税制改正において、IT投資を促進するとともに、IT時代に即応した 社会基盤を構築する観点から、電子計算機の法定耐用年数(現行6年)がパーソナルコ ンピュータについて4年に、その他の電子計算機について5年に短縮されることとなっ ている。したがって、これは我々の提言実行に向けた第一歩として高く評価しうるもの である(※注)。
第二に、IT革命の進行により従来の設備分類には当てはまらない資本財が次々と誕
、 。
生し 現在のような細分化された設備分類には該当しない事例が増加する可能性がある 例えば、機械分類は製品別になっているが、従来の概念を超えた新しい製品が次々と誕 生する中でこのような分類の妥当性には疑問が残る。既存の分類に無理に対応させ、実 態との乖離を招かないようにするためには、設備分類の抜本的見直し・大括り化につい ても検討が必要である。
※注:p.126「参考図表13 IT革命の基盤整備−平成13年度改正の概要」参照。
3.電子申告制度
−公正な税制の確立に向けた起爆剤が IT 革命も推進する−
、「 」 。 、
現在 電子政府 の実現に向けた各種の取組が行われている 中でも重要なのが インターネットの普及、電子技術の向上等を背景とする税務申告の電子化の実現であ る。我が国は、諸外国に比べ、納税申告者が少ない。せいぜい800万人が申告する にすぎず、サラリーマンであれば、5、6人に1人が申告する程度の状況にある。欧 米諸国では、殆ど全てのサラリーマンが申告することと比べると大きな違いがある。
電子申告制度を導入すれば、税務行政の効率化が進むだけではなく、申告の手間が 大幅に軽減される。インターネットで申告するのであれば、自宅から休日にでも税務 当局に送信するだけで手続が済む。将来、国庫金事務の電子化が実現されれば、税務 手続の利便性はさらに高くなる。
また、給与所得控除の定額化など我々の提言を実行することにより、税務当局・納 税者の事務負担が増大する場合も、その程度は大幅に軽減される。
まさに、電子申告制度は、公正な税制の確立を目指す我々にとっての起爆剤となる 可能性を秘めており一刻も早く運用を開始する必要がある。さらに電子申告制度の導 入自体が国民生活に変革をもたらし、IT革命をも推進することにも注目する必要が ある。
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-【コラム】 米国
Internet Tax Freedom Actについて
(インターネット課税免除法)は、1998年10月21日、クリントン大統領 Internet Tax Freedom Act
が 署名して、1998年11月20日に発効となった。本法は、1998年10月1日より2001年 10月21日までの3年間、 州政府並びに地方自治体が、①インターネット・アクセス(ネット上で提 供されるコンテンツ、情報、電子メール等へのアクセスを可能にするサービス)に対する課税及びに② 電子商取引に対する多重・差別的な税を負わせることを禁止するものである。したがって、①、②のい ずれにも該当しない既存の売 上税には影響しない。つまり、Internet Tax Freedom Actは、既に州法によ りネット上で提供されるコ ンテンツ等の取引に課税している州等についてその課税を禁止する効果はな く、新たなネット取引に課 税する法案を州等が提案することを禁止するものである。昨年5月10日に は禁止期間をさらに5年間延長する法案が下院で可決され、上院での審議待ちである。
Ⅷ.持続的経済成長の実現と税制改革
1.持続的経済成長と財政
−経済成長こそが財政再建を可能にする−
人類の歴史上、国家が成立して以来の税の最大の目的・機能は政府歳入の調達であ る。これこそが一面では公的負担として経済社会に大きな影響を及ぼし、同時に政府 歳出の形をとって、所得移転により社会的公平を達成するとともに、適正な資源配分 により経済成長を支える。
しかしながら、税収が歳出をまかなえず、財政を犠牲にし続けて遂行される経済政 策は短期的には経済成長を支えうるにせよ、中期的には長期金利の上昇圧力となり、
民間設備投資を阻害するなど経済にプラスの効果以上の負の影響をもたらしかねな い。
他方、経済成長を犠牲にした緊縮財政・増収政策は、企業活動のコストを高め、ま た、消費を沈滞させることで、むしろ、財政も経済成長をも一層の危機に陥れる可能 性が高いこともまた、十分に認識されなければならない。
換言すれば、経済成長と財政は経済を支える車の両輪として相互に依存関係にある のであり、中期的には両者がともに両立されなければならないことを最初に認識する 必要がある。
かかる観点から、まず、我が国の財政構造が現在及び将来において持続的な経済成 長を支えうるものとなっているのか否かについて検証を行った。
我が国の財政構造は、平成11年度で社会保障費を含む歳入(一般政府)が対GD P比で30.5%であるのに対し歳出(一般政府)が38.1%と、歳入と歳出との 間に7.6%、約38兆円のギャップがあり、かつ、このギャップは近年拡大傾向に ある。
この主因は人口構造の高齢化に伴う社会保障負担に代表される歳出の増加もさるこ とながら税収の激しい落ち込みによるところも大きい。OECDの統計によると税収 は、バブル最盛期の90年当時対GDP比22%程度あったが、98年には対GDP 比17.5%と20兆円以上落ち込んでいる。
89
-図表Ⅷ−1 歳入の対GDP比の推移
。 ( 「 」)
※注:歳入には社会保障費を含む 出典:OECD EconomicOutlook
図表Ⅷ−2 歳出の対GDP比の推移
(出典:OECD「EconomicOutlook」)
38.2%
38.4%
38.1%
36.9%
35.0%
35.9%
35.6%
34.4%
33.7%
31.7%
30.9%
31.3%
30.6%
31.3%
32.1%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
55.0%
60.0%
1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
日 本 アメリカ カナダ フランス ドイツ イタリア イギリス
(Estimates and projections) 30.9%
30.5%
30.5%
30.8%
31.7%
31.7%
32.0%
32.1%
32.1%
33.2%
33.8%
34.2%
33.1%
32.8%
32.5%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
55.0%
1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
日 本 アメリカ カナダ フランス ドイツ イタリア イギリス
(Estimates and projections)
図表Ⅷ−3 税収の対GDP比の推移(社会保障負担を除く)
(出典:OECD「Revenue Statistics」)
図表Ⅷ−4 総人口・生産人口推移推計
(出所:国立社会保障・人口問題研究所)
40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 110,000 120,000 130,000 140,000
1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050
(千人)
(年)
生産年齢(15〜64歳)人口推移 総人口推移
高位推計 中位推計
高位推計 中位推計
2011年 2007年
1995年
19.9%
21.6%
19.3%
17.5%
18.1%
17.9%
18.1%
18.1%
19.8%
21.9%
22.1%
21.8%
21.2%
19.3%
15.0%
17.0%
19.0%
21.0%
23.0%
25.0%
27.0%
29.0%
31.0%
33.0%
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
日本 アメリカ イギリス フランス ドイツ イタリア
91
-我が国の財政のあり方を考えるにあたって、このような財政構造を維持した場合に 今後、財政状況がどのような軌跡を描いていくのかについて検証を行う必要がある。
我々は一定の前提の下、試算を行った 経済成長率については、経済審議会が採用( した実質2%、名目3%の経済成長を使用、また、景気回復による自然税収増を4年 間で対GDP比2%程度と見積もった。歳出については、伸び率を名目成長率以下に 抑制する。つまり、高齢化に伴う社会保障費の急速な伸びを考えれば、社会保障費・
公債費以外の一般歳出の伸びを名目成長率以下に抑制した場合の推計である 。) この結果によると、我が国の人口推移が高位推計によっても減少に転じる2012
、 , ( )、
年度には 我が国の国・地方の公債残高は約1 100兆円 対GDP比約154%
単年度財政赤字の対GDP比は5%以上に上ることが明らかになった。
経済構造改革の推進等の努力により、実質3.0%、名目4.0%が達成できた場 合には、公債残高は1,060兆円(対GDP比132% 、単年度財政赤字が4%) と大幅な改善は見込まれるものの依然として厳しい数字が示されている。
対GDP比で150%以上という水準の公債残高は、歴史上、戦時中の英国のよう な極限的な局面においてのみ見いだされる水準である。現在の財政構造を維持したま ま持続的な経済成長を実現することは困難ではないかという深い懸念が生じることは 否定できず、我が国おいても経済成長を巡航速度に乗せた上で財政構造改革に取り組 まれなければならないことは明らかである。
具体的には、現在の財政構造において生じている対GDP比8%(約40兆円)の 各年度歳出入のギャップから自然税収増として見込まれる対GDP比2%程度(約1 0兆円)の歳入増を控除した約30兆円のギャップが財政構造改革により解消されな ければならないという現実を冷静に見据えなければならない。
しかしながら幾分逆説的ではあるが、財政構造改革の視野をこのギャップの解消の みに向け、歳出の削減、歳入の増大策のみを論じることは、必然的に国民の痛苦を強 め、財政の健全化に向けた意思の継続に水を差しかねないが故に隘路に通じかねない ことを警告しなければならない。
財政とともに経済を支える経済成長こそが税収を大きく飛躍させ、財政を健全化す る可能性を秘めている。また、財政構造改革に伴う痛みをも大きく緩和し、財政構造 改革の遂行を円滑化することができる。
現実の社会を前提としたとき、経済成長こそが財政を健全化する本質的な要素の一 つであり、財政構造改革に取り組む上で不可欠の要素であることが強調されなければ ならないのである。
その好例は米国である。米国は90年代初頭まで公債依存度が22%以上にまで上 昇するなど経常赤字、財政赤字の「双子の赤字」に苦悩していた。しかしながら、9 0年代を通して、規制から自由へ、独占から競争へという構造改革努力が実を結び、