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全文

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PROCEEDINGS OF JAPAN SOCIETY FOR SCIENCE OF SIGNS

●「学会誌の創刊に際して」日本サイン学会会長 太田幸夫 2 ●第1回春期大会・デザインフォーラム2000の報告 第1部 CIと環境デザイン 3 挨拶 太田幸夫 4 報告 坂野長美「80年代の都バス・カラー問題」 5 パネルディスカッション「都バス車体広告を二つの視点から」田口敦子・竹村賢司・辻村陽・安田敏男 6 第2部 ITとコミュニケーションデザイン 14 講演 平川正人「モノに溶け込むコンピュータ」 15 武山良三「サインにおけるITの事例」 17 木村浩「日韓『街の表情』調査について」 21 討論会 「ITとコミュニケーションデザイン」木村浩・平川正人・武山良三 23 ●第11回研究大会・2000ソウル大会「街の表情」の報告 27 挨拶   申仲植(国民大学校副総長) 28 趙烈(韓国基礎造形学会会長) 28 木村浩「街の表情─日韓の共同研究に向けて」(日本サイン学会大会実行委員長) 28 講演 太田幸夫「広告とサイン」 30 康禹鉉「ソウルのサイン文化」 32 宮沢功「都市環境に於けるサインの役割 34 朴京淳「仮想空間での基礎造型教育」 39 報告及び研究発表 佐藤優「景観問題の視点」 40 明光周「ソウルの街路表情の生成」 42 武山良三「地方都市のらしさ」 44 池尚賢「視覚的複雑度とGood Gestalt、色彩地理学に基礎したソウルの街の感性効果分析」 46 辻村匡「街の表情 大阪:御堂筋」 48 金志 「ソウル街の環境のタイポグラフィー研究」 51 小泉雅子「農村環境色彩調査について」 53 趙烈「ソウル特別市城北区の屋外広告物改善事例研究」 55 討論会「街の表情」進行:佐藤優、趙烈 57 ソウル大会報告 韓国サイン雑誌「サイン文化(Sign Munhwa)」のソウル大会紹介記事 62 斎藤絢子「ソウル大会レポート」 64 ●学会ニュース 66

2001

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日本サイン学会が創設された1989年5月14日以来、学会誌の刊行計画は何度も話題にの ぼり検討されてきました。当初から学会の副会長であった佐藤優氏(九州芸術工科大学) が担当理事として学会誌の具体的検討を進めた時期もあり、第3回日本サイン学会総会に おいては、研究論文集としての学会誌出版計画が議題として審議され承認されています。 けれども実際には、原稿集め、編集、レイアウト、印刷進行業務のいずれについても、研究発 表のための概要集(レジメ集)を作成するのが、時間的、経済的に手一杯で、それ以上の学 会誌刊行にまでは至らないのが実情でした。 第1回’90東京大会、第2回’91福岡大会、第3回’92東京大会、第4回’93盛岡大会、第 5回’94瀬戸内=広島大会、第6回’95大阪大会、第7回’96東京大会を経て、第8回’97 筑波大会が開催(テーマ:バリアフリーとサイン・デザイン)されたのを機に、変化が見られまし た。 筑波大会の実行委員長を担当した木村浩氏の作業により、それまでのコピーによるレジメ集 に代わる大会報告書が印刷発行されたのです。筑波大会を機に本部事務局を平成10年 度から筑波大学芸術学系木村浩研究室に移しました。報告書はそれ以来、第9回研究大 会’98徳島大会、第10回研究大会’99北陸大会と続いて刊行され、第11回研究大会 2000ソウル大会総会において、今後は報告書を学会誌として発行していくことが決まりまし た。本誌はその第1号であり、昨年6月に学会としてはじめて開催したデザインフォーラムの報 告書を合本したものとなりました。二重の意味で記念すべき学会誌の誕生に至ったと言える でしょう。 佐藤優副会長が学会設立当初に構想した学会誌編集案には、編集目的として、 1.サイン学の学究を窮め、学際的観点から社会的な要請に応える 2.会員の研究成果を発表し、情報の交流をおこなう とあります。そして論文審査委員会の審査を経た論文と作品解説文など論文以外のものを 区別して掲載し、それぞれが投稿料および写真製版費を支払うものとあります。 毎年度の研究発表大会に対応するレジメ集の機能と大会報告書の役割およびその発行時 期をどう整合化させるか、記号論から環境・文化論および技術・設計論に及ぶ広範囲な論文 投稿を、大会運営の機能に重ねつつ、いかに円滑化できるかなど、印刷費用の問題と共に、 今後多くの検討を要することでしょう。皆様の積極的な参加と強力を望む次第です。

学会誌の創刊に際して

日本サイン学会会長

太田幸夫

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Corporate

I dentity

本稿は、昨春開催した日本サイン学会春期大会の報告です。 第1回日本サイン学会春期大会・デザインフォーラム2000 開催日:2000年6月24日(土) 開会 10:30∼ 第1部 10:35∼14:00(12:05∼13:00昼休み) 第2部 14:15∼17:00(途中15分休憩) 閉会 17:00 会場:コトブキD.I.センター2 階 東京都港区浜松町1‐14‐5 株・コトブキ内

「開会挨拶」太田幸夫

報告「

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年代の都バス・カラー問題」

坂野長美(デザインレポーター)

パネルディスカッション「都バス車体広告を二つの視点から」

進行:

田口敦子(多摩美術大学グラフィックデザイン学科)

パネラー:

竹村賢司(東京都交通局)

辻村陽(モトローラ株式会社)

安田敏男(日広通信社)

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昨年の北陸大会テーマは「市民が作る地域 のサイン」という大きなテーマでした。高岡短 大の蝋山学長にコーディネーターを務めてい ただき、ご専門は金融論ということですが、 非常に難しい多角的なテーマをよくまとめ方 向づけていただいたように思います。またパ ネラーの京都芸術短期大学の奈良先生は、 ビジュアルデザインのご専門の立場からご発 言。井波町で彫刻の工房を主宰されている 南部白雲さんには、木彫りの看板、サインに よる町起こしというユニークな試みを推進さ れている立場からの貴重なご発言をいただ きました。地元・末広町商店街の吉富さんは、 おかみさん会という住民組織の代表で、サイ ンということは考えたことがないとおっしゃい ながら、自分のお店が扱う大型店にはない 優れた商品、優れたサービス、それは一体 何かというとを目分たちで考え、認識してそ れを育て、またお客さまにアピールしていく。そ れが商店街から発するサインなんです。このよ うに発言してくださいました。そしてまた金沢 大学の建築学の水野先生からも貴重なご発 言をいただきました。結構長い時間でしたが、 その時間が足りなくなるほど内容充実したパネ ルディスカッションだったと思います。 ところが、それぞれの地域にあってより良 い自分達の地域、あるいは街を作るんだとい う皆さまの発言の中で、実は困っていること がある。その解決の見通しを立てるためには どうしたらいいか、ということが最後に聞かれ ました。それは企業のCIと地域との関係とい うことです。これらはそれぞれ別個の分野で 進められてきたプロジェクトであったかと思い ます。しかしほんとによりよい地域あるいは街 づくりということで考えますと、どうしてもその 二つが別々では済まないんじゃないか、とい う意味がそこにこめられております。これは 重要だなと思いましたが、高岡大会ではそ の問題を話題にする時間も用意も全くござい ませんでした。これは放っておいてはいけな い。できれば春にでもその問題を新たに日本 サイン学会が取り上げる場を作りたい。かよう に考えておりました。本日この場を持たせて いただいた大きなモチベーションの一つです。 もう一つは、高岡大会では10人ほどの研究 発表をいつものようにしていただきました。そ の中でいわゆるコンピュータのテクノロジー、 コンピュータサイエンスの問題と、サインを媒 介とするコミュニケーションデザインとの関係。 この辺に話が及びましたが、本日の第2部 の講師である平川先生が偶然その高岡大 会に同席されていて、研究発表が終る間際 に発言なさいまして、「私はコンピュータサイ エンスを専門にしております。もし皆さんのサ インのフィールド、ご専門の方で、コンピュータ サイエンスの立場で何をどうして欲しいんだ というご注文があればどうぞ聞かしてくださ い」とおっしゃいました。これも非常に貴重な 発言をいただいたと思います。ところがその ための時間とプログラムがなかった。ですか らその場は平川先生のご発言だけに終わっ たわけです。私はこのままにしておくべきでは ない。ぜひ日本サイン学会で再度それを立 ち上げたい、と。これが本日のもう一つの大 きいモチベーションです。平川先生はその後 半年間研究のためにイタリアヘいらしてお留 守にされておりましたが、6月ならできそうだと いうお返事が来まして、今回のとおりプログラ ムさせていただいた次第です。 さて第1部の『CIと環境デザイン』。これは 先ほどの観点で取り扱うつもりでおりましたが、 たまたま第1部の進行を務めていただきます 多摩美術大学の田口敦子先生が、突然東 京都のバスを取り扱いましょう、と。ハッ、私は びっくりしたわけです。しかし言われてみると、 そうかCIと言ってもただ広くとらえるのではな く、メディアを一つ公共交通広告、そういう 観点でとらえる手もあるな、と。私は東京都の 屋外広告物審議会で石原知事の諮問を受 けまして、昨年の春から11月までおよそ半年 かけて、新聞でもだいぶ取り沙汰されました 中間答申の審議会の委員も務め、その後は 本日この場にパネラーとしてご出席の東京 都交通局の皆さまとも、デザインの審査という ことで事に当たらせていただきました。だから 内情は分かっているつもりです。じゃ、それで 行きましょうということで認識が絞られたわけ です。まさにアップトゥーデイトな話題。それは 第2部とて同様であります。ところがどちらもテ ーマがとても大きい、とても深い。ですから本 日だけで結論を望むことは難しいと思います。 その辺をお含みいただきまして、我々が問題 を共有しあえるような一つのスターティングポ イントが持てれば何よりかと思います。どうぞ よろしくご協力のほどをお願いいたします。

1

部 

CI

と環境デザイン

開会挨拶

太田幸夫 日本サイン学会会長

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今度の都バス車体広告問題がまず思い起 こさせるものに、1981年に起きた「都バス・カ ラー問題」がある。故・小池岩太郎氏(芸大 名誉教授・日本デザイン学会及びJIDA創 設メンバー)の推進した改善運動で社会的 反響を呼び、「公共の色彩を考える会」発足 の契機となったことでも知られる。 『グラフィックデザイン』誌86号(1982/ 勝見勝編集長)の記事(坂野記)によりその 経過を概括すると、発端は1981年4月、黄 の地色に一本赤のラインを入れた新塗装で、 「黄赤バス」と呼ばれた都バス登場。塗り替 え進行とともに悪評を高める中で、小池氏を リーダーに「公共の色彩を考える会」発足、 改善のための言論活動開始。新聞・TVなど マスコミも挙って支援して、世論をおおいに 盛り上げた。 この動きを都は正面から受け止め、都知 事上申にこぎつけて即刻塗り替え中止、新 カラーに再検討の知事確約を得て(8.21) 早速実行に移され、都交通局内に都バス 色彩懇談会設置(11.27)と、異例のスピー ドで事が運ばれる。懇談会委員は、大河原 春雄(座長・東京理科大教授)・ 稲敷次郎 (東京芸大教授)・ 井上好子(主婦)・ 岡 本 太 郎・坂 本 勝 比 古(千 葉 大 工 学 部 教 授)・千々岩英彰(武蔵野美大教授)・藤 原房子(日経記者)・ 真鍋博氏らの8名。 委員会は同年末から翌82年にかけて、以 下の内容による具体的活動に入る。①車体 塗色の基本的考え方。②現塗色に対する 評価。③試案作成。④都民に対する意向 調査の方法。 試案は懇談会内に設置された小委員会 が担当。原案31点から最終侯補A.B.C.案 の3点、特別出品作1点、計4点に絞られた。 この間その経過は終始マスコミに好意的に 取り上げられ、報道合戦の趣も呈するなどで 世論の熱気をさらに高めた。そのヤマ場が 82年3月17日から19日の3日間、試作車4 台による都内3コース巡回試走で、さらに事 後2日間の公開展示(会場=神田・交通博 物館)を併せて21日に都民アンケートを実 施、回答は5000通に上る。30日、都はその アンケート結 果を発 表 。A案5 7 %・B案 24%・C案15%という数字が公開された。な お特別出品作は反対多数で不評判とあっ た。同日、懇談会はアンケート結果を尊重し た新塗装色決定を答申し、4月14日、A案 に最終決定。色はやや手直しして新規購入 車約300台から順次実施と発表された。 以上のように、都バス・カラーという完全にデ ザイン上の問題で都民の声を都が受け入れ、 即刻行政に反映させたことは画期的。社会 とデザインを結ぶ運動のひとつの結実、今 後への1ステップという意味でも高く評価され たものである。 ただしその結果は必ずしも期待通りとは言 えない。一つはグリーンにベージュという決 定案自体。もっとも無難な線に落ち着いたの は好感もされたが、過半数の支持は得たも のの最大多数ではなかったように多少の不 満も残した。とくに職能的に要求水準の高い デザイナーには一般に不評で、ひいては懇 談会内部で試案まで一貫され現場デザイナ ー不参加に終ったことへの批判も多かった。 小池氏は考えるところあって懇談会委員は 辞退、外野から見守る立場で一貫したが、 決定案自体は改善目的としては達成、デザ イン的完成度の高さまでは求めずともよしと 支持、しかし委員会のもとに実働の作業部 会が編成されるものと予期していたと漏らさ れたことがある。 これだけの経緯が込められていた都バス が、今回車体広告でラッピングされた。景観 同化と異化という全くの逆アプローチも皮肉 ではあるが、上記の二つの問題点はやはりこ こにも尾を引いている。その一つのデザイン 面については、質的向上のために現態勢中 では最大限の努力が払われているのだが、 広告が主題である以上やはり基本的に見解 の分かれるところ。もう一つのより本腰入れた デザイン行政のシステム作りも、大きい宿題 のままである。また都バス・カラー問題ではマ スコミの支援が大きかったにしろ、ともかく終 始情報公開されて都民の声を反映する努 力がされたことは都としても一大業績と言え る。上意下達にはじまったラッピングバスはそ の意味で後退現象だが、民意吸収について もより永続的なデザイン行政確立の中で対 応されて行くよう今後の展開に期待したい。 付記=都民の声の反映の場としては、後述 のとおりインターネットのホームページが機能 し始めている。第2のテーマのIT問題ともか らんで時代の流れを再認識させるが、全デ ータの情報公開も望まれる一つではないか。 なお「公共の色彩を考える会」では、今回の 動きに対して真っ先に反対意思表明、その 後ラッピングバスの好調で都がより広範な車 体 広 告 解 禁に動いていることについて、 2001年2月シンポジウム開催。解禁反対意 見書を石原都知事宛に提出している。

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部 

CI

と環境デザイン

報告

80年代都バス・カラー問題

坂野長美(デザインレポーター)

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第一の視点

=

セールスプロモーション

田口 今度はCIと環境というテーマで打ち 合わせが始まったのですが、その具体的な 内容について話し合われている最中に、こ の春東京都がバスの車体広告実施というこ とで大きな動きがあり、たいへんマスコミにも 注目されている。我々としても非常に注目し ている動きであり、時を得たということで今回 取り上げさせていただきました。 ここで今回話題にするテーマにつきまして は、二つの視点を以て考えていきたい。その 前半はあえて景観の問題からは離れまして、 この広告が一体どういうような経済効果を考 えて掲出されているのか、つまりはセールス プロモーションの問題について、後半で景観 の問題に焦点を当てていきたいと思います。 と言いますのは、私は広告が専門ですから 広告景観というものを10年近くやってまいりま したけれども、この問題というのは専門家と いうよりもむしろ市民の側からいろいろご批判 を受けながら来ているわけで、それはあくまで もそこに集まった広告物が非常に景観をよ ごす、という意味での批判が多いわけです。 個々の広告物をその広告主がどのような目 的、どのような効果を考えて掲出するのかと いうことの意味はあまり深く問われてはいな い、話し合われていないと私は思うんですね。 今日は個々メディアを持っていらっしゃる 都の方、それをクライアントの方に仲立ちをす る代理店の方、それから広告主である方、 三者にいらしていただいたわけですね。私は この問題に関わるようになって、こういう例は ほかには知りません。こんな形で集まって、い わば屋外広告について話し合うというのは 初めてじゃないか。非常に今日は有意義な 会だと思っております。二つの視点とは、まさ に今日集まっていただいた方々に関わる問 題だと思うのです。 まず第一の視点のセールスプロモーション ですが、この問題というのは非常に広範なも のです。広告活動の中でいわゆるマスメディ ア・・・新聞雑誌、テレビ・ラジオといった電波 媒体と印刷媒体では、メディアとしての特性 とか意味とかはたいへん明確に分析されて いるわけですけども、セールスプロモーション に関わるメディアというのはたいへんに広範 囲で、人もメディアというところまでいきますの で、何がメディアかということは特定できない。 メディアを探し出すというような側面がありま して、今回もまさしくそういったものの一つだ と思いますけれども、非常にいわばその問題 についての検討がしにくいところがあります。 それをあえて車体広告というものを取り上げ て、その問題にこの2時間関わっていきたい と考えております。 早速パネリストの皆様にそれぞれの立場 からのお話しを伺いたいと思います。まず東 京都の竹村さんから。今回こういったことを 始めようということの概要を。 竹村 今回の都バスの広告の拡大につい ては、交通局といたしましても従前からの懸 案で、同じ都の中でも屋外広告物について、 美観だとか景観に関するいろいろな規制を 所管している都市計画局。ここに、長年お 願いしていたところでございます。ところが石 原知事になるまでこの問題についてはなんら 進展せず、知事の方から東京都交通局とい う非常に赤字の事業として、その赤字を少 しでも解消するためには空気を運ぶよりか広 告物として生かす使い方があるじゃないかと、 こういう発言をされた。この発言をもとに都市 計画局のほうでも今回の改正に至ったわけ です。交通局といたしましては、こういう広告 物がどのような効果があるかということについ ては、私ども素人でございますから分かりま せんでした。しかし今回の先生方あるいは 広告代理店の方からいろいろお話しをお聞 きしまして、これは非常に大きな経済効果が ある、という感じがいたしました。 ただ当初は大きな経済効果の面だけしか 考えておりませんでしたけれど、それだけで はないと。むしろ景観とか美観ということが非 常もに大きな問題じゃないかということでやっ ていて、5月31日現在で291台のバスが都 内を走っているわけでございます。 田口 まず代理店である安田さんのところ へその話が行ったと思いますけれど、どのよ うにそれをクライアントの方たちにご紹介され たか。あるいはもう少し踏み込んで、こういっ た車体広告がこれだけ大掛かりに進められ るというのは日本でもあまり例がないこと、そ れがたいへん社会的注目を集めていること なども含めてお話し願います。 安田 私ども広告代理業はこういう場所に 出るとちょっと肩身が狭い。と申しますのは私 どもが媒体を紹介しましてお客様に販売しま す。その結果街にいわゆるサインが氾濫す る、ということで都市景観の調和を乱すいわ ば悪役みたいな形に今まで思われています ので。 ここでちょっとご説明しますと、ラッピングバ スとの関わりということは今年4月に始まった わけですが、車体広告自体の歴史は昭和 24年に姶まっております。そのときその車体 広告を販売する指定代理店として私どもが 東京都さんから承りまして、すでに50年を越 えております。従って車体広告とは必ずしも 今年始まったわけではない、ということをまず お話ししておきます。その間いろいろ変遷が ございまして、昭和52年に左右の運転手側 と乗降口側、それとコート、三つの車体広告 というものができました。 ところで車体広告とはどういう広告かとよく 聞かれます。分かってるようで分からないん ですが、一言でいうと車体広告とは動く屋外 広告サインなんですと、こう答えてまいりまし た。つまり路線バスですので、生活者・消費 者の中に分け入って不特定多数の方に広 告する、こういった機能を持っております。も ちろんメディアミックスというメディアの組み合 わせでお客様により効率の高いメッセージを 伝える、いわゆる広告業の中ではきわめて大 事な方法の一角を担っていたのは事実です し、もう一つはエリア戦略。つまり特定のエリ アを選んで商品を訴求する、あるいは商品 の目的をアプローチする場合に、特定の路 田口敦子(多摩美術大学)

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と環境デザイン

パネルディスカッション

都バス車体広告を二つの視点から

進行:田口敦子(多摩美術大学グラフィックデザイン学科) パネラー:竹村賢司(東京都交通局)、辻村陽(モトローラ株式会社)、田敏男(日広通信社)

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線を走る都バスは大変機能的かつコストの 安いメディアとして重宝されてきました。 具体的な利用の仕方をかいつまんで申し 上げますと、まず運転手側に1900×500ミリ という細長い媒体がついております。これは 車道をはさんで歩道の向う側を歩く膨大な 数の歩行者にアプローチします。従いまして 広告主は大手企業が多く、その企業名とか 商品を認知させるための媒体として利用さ れてまいりました。一方乗降口側の、スタンダ ードサイズと申しております1200ミリ×600ミリ という大きさのものは乗降客がターゲット。従 いまして購 買 時 点 広 告 ・ ・ ・ ・お客さまが TVCMとか新聞広告・ラジオのCMで知りま して、あの商品を買いたいと。ところが町へ 出かけます、忘れます。しかし乗ってきたバス の車体広告で頭にこびりついていると、購買 時点でそのブランドが思い出せるということ で、購買時点広告として使われてまいりまし た。従いましてこういった媒体は、タバコとか 味噌・醤油・酒といった嗜好品、日用品の広 告に非常に多く利用されておりました。それ から後部ですが、これは450×600というあま り大きなサイズではないのですがターゲットは 完全に絞られております。バスの後を走る車 のドライバーです。 つまりたくさんの人々ではないが確実に、 バスの後に付いたドライバーは見ざるをえな い。従いましてブランドはカー用品であるとか 損害保険、あるいはお酒等々の嗜好品。こ ういったお客さまがついております。最近で すが東京都さんがいわゆる排気ガスを何と か予防しようというので、これは環境保全局 さんが発案して私ども受注さしていただいた のですが、アイドリングストップというキャンペ ーンをやりまして、今年もやっております。それ から水曜日は車に乗らないというキャンペー ンのメインメディアとして、この車体後部媒体 を使わしてもいただきました。つまりターゲット はドライバー。このターゲットに対して有効に 働きかけるのはバス車体広告だと。それとも う一つはカーラジオ。この二つのメディアを使 って大々的にPRし、28%の効果を上げたと。 こういった情報も入っております。 海外でもこの車体広告というのは、いま始 まった話ではなくずっと古いのですが、ご存じ のとおりイギリスのハイデッカーという2階建て のバスの2階部分は広告で溢れております。 香港もしかり。アメリカでも大陸横断バスはも ちろんサンフランシスコあるいはニューヨーク のバスにも、フリーサイズあるいはキングサイ ズといったきわめて大きい、ラッピングバスの 前例となりうるような広告をつけてきわめて完 成度の高いアウトドアサインを走らせておりま す。ここにきてやっと私どもも、サイズが一気 に広くなりましたラッピングバスというものを取 り扱うことになったわけでございます。私ども が先ほど申し上げましたとおり昭和24年から 取り扱っておりましたので、東京都さんと一緒 にいうなればラッピングバスのプロデューサー 的な立場で今回やらせていただきました。 ラッピングバスを一言で申し上げます.と、 いろんなプロモート活動を続けて参りました 中でビッグでワイドなニューメディア。月並み な言葉ではございますが、こういった表現を 使わしていただきました。いわゆるニューメデ ィアと申しますと、IT関係あるいはハイテク関 係を言われるわけですが、まさしく久方ぶりに 出た大型ニューメディアといっても過言では ないのではないかという気がいたします。広 告面積も従来の10倍以上のサイズを使うこ とができますし、前後左右、まあ前は元のまま ですが、その余は総てが広告のメッセージと して、今ごらんのとおり自由なキャンパスに自 由なメッセージを発信できる。もちろん規制は ございますが、つまり広告主のメッセージの 可能性というものがきわめて大きく広がった 媒体、という風に考えております。従ってビッ グでワイドなニューメディアというのは、視聴 者にとってもそうですし、クライアントサイドにと ってもそうだということができるのではないか と思います。もちろんこの機能というか効果 は絶大なものがございまして、他のマスメディ アに匹敵するほどの効果が情報として入っ てきております。 のちほどご紹介しようと思っておりますが、 インターネットのホームぺ一ジに・・・・ヤフーの HPですが、ラッピングバスについてのデータ をとるぺ一ジがございまして、4月から6月ま で約1200通のアクセスがございました。賛 否両論ございます。もちろん景観とのからみ の問題も多数入っておりました。こういった機 能的なラッピングバス、あるいはインパクトのあ るバスとして街に出てきたわけですが、今日 の議題であります都市景観との調和という 問題につきましては、いわゆる広告主、ある いは代理店が考えている経済効果・広告効 果を求めれば求めるほど都市景観との調和 ということに対してはギャップが出てくる。ある いはそこが大きなテーマなのかなという感じ がしていまして、そのことはまた後ほどというこ とで。 田口 ありがとうございました。今日私が一 番話していただきたかったことの、ほとんど総 てが入っていたかと思うのですけど、実はこ こを起点に一度広告景観というものを考え てみないと問題の解決にはならないわけです ね。都市景観の側から広告を見ていくので はなく、今まさしく広告の発信ということでセ ールスプロモーションのメディアとして、あるい は限定された企業のコミュニケーション活動、 そのある一部分として見る視点が出ました が、それですら今お話しいただいたぐらいに メディア特性をどう生かすか、どのような伝達 効果を作るかということで、非常にシビアに 計算され計画されいるわけですね。そういっ た情報発信の必然性というのが背景にあっ て出て来る情報が、都市景観との矛盾とい うものが起きるのは当たり前で、このところを どうするかというのはほんとに真剣に討議さ れなければならないだろうと思います。 その発信者であるクライアントの立場から、 辻村さんの話をまず伺つてみたいと思います。 あと事例を見ながら、街のセールスプロモ一 ションメディアである車体広告の効果というも のを少し考えてみたいと思います。 辻村 まず動機からですが、モトローラは米 国の企業ですけど欧米はもとより、他地域の アジアでもわりに認知度が高いのに、なぜか 日本だけ非常に低い。半導体であるとか法 人用無線機、インターネットのインフラの関係 など、ビジネスマーケットとしてはあるていど知 られているかと思うんですけど、一般のユー 左から:辻村陽(モトローラ株式会社)、竹村賢司(東京都交通局)、安田敏男(日広通信社)

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ザーさん、若い方々にはなかなか見える商 品が無い。一般のユーザーさんの使われるも のとしては携帯電話くらいしかなくて、非常 に認知度が低い。ですから何の会社かとい うのはもちろんですが、まずモトローラというロ ゴを知ってもらおう、目にしてもらおうというこ とで、昨年から渋谷と原宿に広告看板を初 めて出しました。しかし看板は動く広告では ない、今度のラッビングバスは動く広告塔だ ということで初めて決めました。 で、先ほど景観という問題が出ましたが、 まずこのデザインは渋谷・原宿にある看板と 全く同じデザインです。看板のデザインを決 めたときも景観という難しい言い方では考え なかったのですが、まずロゴが目立つこと、 それも非常にク一ルに目立つことですね。目 立ち方にもいろいろあると思いますけど、まず クールであることがモトローラのCIコンセプト なんです。それで一応モトロ一ラにはブルー というCIカラーがあり、ロゴ自体があっさりし ているので、このMマークをもう少しデザイン 的にきれいにして、なおかつ他のテザインは 一切入れないで強調して行くということでデ ザインを決めました。逆に街に溶け込んでも いい、溶け込みながら何となく記憶に残るて いどでいいのかな、と。ブルーに関しても空の 色がブルーですので、周りに溶け込み易い 色ですね。それを看板よりも少し彩度を下げ まして、奥行きがあるようにしているつもりで す。広告効果は、まだこれをやったからどうと いう結果は受けていません。ただ先ほどエリ ア戦略ということも出ましたが、若い方々も集 まる街ということで渋谷・原宿もターゲットとし ています。そこをバスが走るということで、若 い人々の間でもモトローラという名だけは、 一人歩きしてるんですけど知名度が上がっ てきております。 田口 先ほど安田さんの話にもありましたよ うに、このセールスプロモーションというものは、 直接的に消費者に結び付くメディアとして、 企業にとってもたいへん伝達効果の高い活 動と言われているわけです。企業の予算面、 中でもセールスプロモーションと広告の関係 とは、ほぼ半々というぐらいに認知度が高い わけですね。ただ今日問題にされています この車体広告とか広告看板と言われている ものは、セールスプロモーションという活動の 中ではほんの一部なのですね。そうした活動 の一部に我々が関わっております屋外広告 物というのがあるわけですので、効果を求め るというのもこういう時期だけに非常に切実 です。その予算面というのも厳しいと思いま すけれど、とにかく街にこういったメディアが 出てくるというのも当然だろうと。日本という のはもともと歴史的にもこのメディア、屋外広 告物に対する期待というのは大きい国だから と思うのです。 皆さん海外へ出られて海外の街並みを見 ていらっしゃると、いちばんそのことが印象と して出てきてしまうでしょう。日本の街並みと は何と広告物が多くて、それがお互いの関 係がなくて汚いのだろう、と。そういったことで 広告物というのは批判の対象なんですけど、 今日のお二人のお話しで、どれほどそれが 緻密な計算のもとで、掲出の場所であるとか 位置とかいったことまで考えられていたかとい うことがお分かりになったと思います。ここで すぐ景観の問題に行かずにもう少し効果の 問題をお伺いしてみたいと思うんですけど、 その前に少し事例をスライドで見ていきたい と思います。 セールスプロモーションというのは企業と 消費者を結ぶ接点になりますので、非常に 明快な情報なんですね。例えば商品そのも のを出してしまう。今回のこの車体広告もそう した特性がよく出ていて、セールスプロモー ションというものがいかに直接的な情報伝達 であるかということがお分かりいただけると思 います。新聞・雑誌であるとかTVなどですと イメージ広告という世界がありまして、直接 商品が出てこないという情報の手法がたくさ ん使われるわけですけれど、セールスプロモ ーションではそういうことはないわけですね。 それからCIとの関係で言いますとこれは混在 してくるだろうと。今の辻本さんのお話しです と、モトローラの場合は商品を直接的に伝え るのではなく、企業の存在を明らかにしてい きたいという、今日のもともとのテーマである CIの問題になると思うんですけど、それは比 較的少なくて直接的な商品広告が大多数 になるだろうと思います。 やはりバスは大きいから商品も大きいです よね。渋谷駅前にすぐ馳せ参じて観察しまし たが、商品広告としての商品の大きさは車 体いっぱいのものもありますね。いろんな事例 が出てきますが、広告表現としてはたいへん シンプルで明快な情報です。あとはまた景観 のところでも見ていただくとして、今回のこの 車体広告の効果という意味では何か情報は 入ってきておりますでしょうか。 安田 ええ、ご存じのとおりこの4月10日か ら第一陣がお目見えしたばかりですから、 数字的なものはまだ入ってきておりません。具 体的なデ一タとしてはまだ発表できる段階で はないのですが、先ほど申し上げました消費 者、見ていただいた街の方々が、この車体 広告についてどういう印象を持たれたかとい うことで、実は相当膨大なぺ一ジの書き込み かございまして、毎日毎日チェックしておりま す。ナマの声ですから表現その他問題点が あるのですが、経済効果といいますか、市場 にアッピールすることで企業がお金を稼ぐこと に対するもろもろの揶揄や問題提起もござい ます。たまたま今日は都市の景観に対する 意見を10通ほどもって参りました。 いわゆる経済効果についてはセールスプ ロモーションのメディアの持性というのは、な るべく安いお金で効率のいい効果を上げる ということに尽きるわけです。TVCMが膨大 な予算を使って大量のマス投下をして、そこ から大量の消費者の関心を買っていくという うことに対して、セールスプロモーションの特 徴と申しますのは、特定のターゲットに特定 のエリアで言いたいことをズバリ一言申し上 げて広告効果を全うすると、雑な言葉で恐 縮ですがそういうことに尽きます。従ってその セグメントされたターゲットからちょっとでも外 れた場合には、そこは切り捨てます。切り捨 てざるをえない。例えば先ほどモトローラさん が若い人々の認知を上げるためにエリアを 選ばれたというのは、渋谷・原宿の街の特性 がきわめて際立っておりまして、それに対しモ トローラのロゴをアプローチすることによって 認知度を上げるという目的が明確化されて いたから、今回この決定をされかつ実施さ れたということと同じように、先ほど見ていた だいたデザインのビジュアルアイデンティティ、 統一されたものとしてこのバスラッビング広告 にも使われているケースと、全くそういったも のとは切り放して独目のラッビング広告に向 いたビジュアルにしぼったクライアントがあるこ とにお気付きだと思います。 つまりバスは動きます。例えば普通東京の 道路が片側2車線4車線6車線等々がござ いますと、離れて見ますとバスは大きくてもそ れほど大きな視覚的効果が得られない。とな れば流れていく、走っていくバスを瞬間的に 何がついてたかということを知るビジュアルあ るいはメッセージ内容が必要ということ。もう 一つは当然バス停あるいはラッシュ渋滞時な ど瞬間的だけではなくサブのコピー等々でゆ っくり具体的内容でアピールすると。つまり大 きくまずアピールをし、止まったときサブアピー

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ルで内容を深める戦略というか、ビジュアル 作成上のテクニックも当然使っていることが、 このあとまた見ていただくとよく分かると思い ます。コピーがたいへん少ないビジュアルに なってます。つまり小さいコピーがたくさんあっ ても当然これは読めない。モトローラさんのビ ジュァルを見ても、モトローラというロゴデザイ ンだけでございます。それ以外のブランド、例 えばネスカフェでもTVCMなどとの広い意味 でのメディアミックスが展開されているというこ とで、パッと見れば分かるというのもその証か なという感じがします。 いずれにしましてもそういうビジュアル制作 上のもろもろの配慮というものが、これから先 どのように評価されて広告効果・経済効果 に跳ね返ってくるかということは実はまだ未 知数ですから、たいへん楽しみにしています し、またこれから注目していきたいと思ってお ります。 田口 お二人のお話しがデザイン上の問題 にだんだん及んできて、伝達効果を作りだす ためにどのようなデザインを考えたかという話 になってるわけですね。これは午後の景観の 問題につながっていくものですが、東京都と しましてはその辺を企業側、クライアント側へ どのようにお願いされているか。もしそういう ことがあれば伺いたいのですが。 竹村 ええ、非常に矛盾する面がこれには ございまして、先ほどからお話しがございます ように経済効果を上げますには企業告知あ るいは商品告知、こういうものができるだけ 明確に一目で分かるようなものが望ましいと。 しかし東京都といたしましては景観、あるい は美観というものがそれぞれ条例で規制さ れています。そういう中でどうしたら予盾する ものを両立することができるのか。その外に バスというのは非常に大形の車体ということ で、もし事故が起こったら大きい事故になり かねない、その意味では交通安全への配慮。 それらに対してどうすればいいかということで、 交通局といたしましてはデザインの審査基準 を設けているのでございます。例えば交通 安全面からいきますと信号と類似の誤認す るようなものは困るというこどで、赤青黄色の 原色系はまずい。また金銀を使ったようなもの も止めましょうと。さらに交通安全という観点 から言えば、フジTVさんの広告で計4回審 査しました中で、当然太田先生にも加わって いただいていますけれども、文字は止めよう よ、できるだけ少なくしようということで当初は 4コママンガの内容でしたが、繰り返しの4文 字ぐらいならいいですよ、というそんなようなこ とでクライアントの皆さまにはご理解いただい ているわけでございます。 私どもといたしましては交通局の増収とい うことはやはり常に考えなくてはいけないこと でございますけども、増収ということだけでは なくこれがあるいは、ちょっと生意気な言い方 になるのかもしれませんが、東京を代表する 風物として観光客…外国人を含めて、東京 とは何か違う、やっぱり発信しているんだなと いうような、常にお見せできるようなものであり 続けたいと、こういうような願いを持っている のでございます。さらにこのバスというのは乗 物でございます。乗物である以上ご利用にな るお客さまが、こういうデザインじゃ乗りたくな いよというようなことでは非常に困ります。從い ましてそういう両者の皆さまからも親しまれ愛 される、こういうことも交通局で審査のさいに いろいろお話しさせていただいております。 そういう中で4月10日に走って現在まで 審査委員会というのを、事前審査を含めると 10回ぐらいやっています。その中で審査の 内容も変わってきております。当初はいわゆる デザインに値しない、そんなものがたくさん出 てまいりました。値しないものをこの街の景観 に溶け込ませる最低線は何かという観点か ら、まずそこまで引き上げようということを第一

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の目標にしました。先ほどのインターネットの HPには、あるデザインについては護送車だ、 あるいは街宣車だと、こんな風な批判の声も 届いております。それにはおおむね4月10日 に走り出したデザインが多いのかなと。そうい うことを踏まえまして、もっとよくしようよ、もっと きれいなものを作ろうよ、その中でクライアント の希望する企業広告あるいは商品広告、そ ういうイメ一ジが鮮やかに残るものを目指しま しょうよと、まあこういう観点でいま少しづつ 変わっているところでございます。 竹村 審査という一番もとのところで企業と 公共性の接点というか、東京都にとっても一 種の経済活動であると同時に、東京都が企 業の経済活動としてセールスプロモーション をとらえて行くという見方も明確に出ていると いうところは、私どもも評価していいのではな いかと思います。最後にクライアントである立 場では東京都の話をどのように受け止めら れたか、その辺のお話しを。 辻村 たまたま私達の方のブルーという色 は、そんなに景観を乱さないというか、事故 につながるような色でもないと。ただ4月10日 からの時は全くそういう審査の規定があると いうことはあまり伺っていなかったんです。伺 うようになった時にはデザインは出来上がっ ていまして。かついまバスの顔が緑なんです けど、ちょうど乗降口のところは緑を斜めに 残すように急遽デザイン変更依頼がありまし て。もう総てデザインができ上がっているとこ ろでしたが、たまたま私どものはロゴを真ん中 にもっていき、空いてるスペースにロゴを少し ずつ配したというデザインですので、そこを削 ってもロゴが1個ぐらい消えるかなという程度 だったんです。ただ全面広告という意味で言 うと1個でもロゴが減ることは認知度がそれ だけ減るおそれもあるとか、あと費用的にもち ょっとおかしくなるんじゃないかとかお話し合 いがあって、結局最終的には全面になった んですけど、これも緑を残すことが景観的と いうかデザイン的にほんととにきれいに見える かどうか、ということはやはり考えて欲しいな と思いましたね。 田口 もう一度最後に、車体広告が単に景 観の問題に関わるデザインというだけじゃなく て、広告としてもさまざまな影響を与えている ということについてもお話しを願いたいので すが、時間がきました。始めに申し上げたよ うに今日は非常に身近な形で私たちとご参 会の方々との関係ができておりますので、で きるだけ皆さまご質問とかご意見を出してく ださり、パネラーの方々に答えていただくとい うことで午後の時間をよろしく。 ●

第2の視点=景観

田口 ではディスカッション再開、第2の視点 の問題に移りますけれど、まず都や代理店 の側にもHPに多数寄せられているというご 意見にはどんなものが? 安田 私ども広告代理業あるいはクライアン トサイドとしましては、このラッピングバスがど のような効果があるかということは極めて重 要な関心事でございます。4月10日に走り始 めまして現在約389台の車輌が東京中を走 ってるというのは先ほど申し上げたとおりで すが、いかんせんそのスタート効果と申しま すか、調査をいたしましてもこのスタート時と いうのはたいへんいい効果が出過ぎますの で、時間をおいてから基本的なデータ収集 に入る、かように考えております。今日ご紹介 したいと思いますのは、スタート以来現在ま でにヤフーのいわゆる掲示板に、環境と自然 というボードがございまして、これに4月の中 旬ぐらいからラッピングバスについての書き込 みが非常に多くなりました。最終的にカウント はしておりませんが、このうちの数通を持って まいりました。賛否両論ございますがまず19 才の男性。「最近東京を走ってるラッピング バスは結構イケてると思う。今までは緑色の ぶあいそうなバスだったのが、いろんなデザイ ンのバスが走り出してちょっと街に活気が出 る気がする。広告はわざわざ美術館に行か なくても見ることができるアートだ、と思えばい いような気もする。悪いビジュアルであればイ メージダウンになるから真剣になり、最初は単 なる目立てばいいやの広告も、これからどん どん洗練されるはず」。 これは年齢は分か らないんですが、「都バスに関しては今のとこ ろ大賛成です。全体にセンスはよく、色目を 抑えてきれいに仕上がっていると思います。 都財政の収入につながる、注目が集まる、 明るい&定期的に張替ができるのできれい。 むしろスペース限定の広告がゴチャゴチャと いろんな広告がついていて見苦しい。一社 の広告なのでむしろ統一感があっていいと 思います.」。東京都下の男性の方で「ラッピ ングバスについては私は賛成です。良質な デザインであれば決して環境に悪影響を与 えるものではないと思う。そのためには年に1 回か2回ていど、利用者や沿線住民の投票 によるラッピングバスコンテストを行い、愛され るデザインの推進を図ってもいいのではない か」。次はある質問に対する答えですが、「ラ ッピングバスと景観保全の問題とは、つまりあ る環境を共有する人たちが生活する中、行 政力や経済力のある人が共有物であるはず の景観や環境を独断で当然のごとく変化さ せてしまうことに対し、個人個人の感牲の寛 容度はどのような物差しで測り、それが容認 できるライン、できないラインにきた時どうすべ きなのか」・・・・ちょっと難しくて分かりにくい のですが。またあるデザイナーの方からはこ んな書き込みがあります。「最終的にはデザイ ンの質の問題でしょう。デザイナーは広告を 作る際、内容を伝えることはもちろん、設置 環境、その中でも使用する文字の歴史的背 景等も含め検討し、デザイン案を整理します。 広告の紙面のみで完結するのではなく、そ れが見る人に、どういう印象を与え、どういう 空間を演出したいのか、そこまでトータルに 考えるのです。彩度のある色をけばけばしく 見せるかきれいに見せるか、そこもデザイナ ーの力量でしょう。色に問題があるのではな く、その色で何を伝えたいのかが明確になっ ていないために誤解が生じるのです」。 逆に反対という意見もございます。「目立 つことが必要な広告効果、目立つ広告が必 要である経済優先の考え方と、特定のもの だけを目立たせず調和すること、すなわち景 観との共存を考え、目に優しいとか感性を極 度に刺激しない人間優先の考え方の両方 があり、私の意見は後者です」。「公共交通 広告の構内周辺で必要な情報、例えば乗り 換え案内であるとか出口表示、行き先案内 などを視覚的混乱で見えにくくしている物。 道路標識を邪魔するもの。そんな看板広告 は排除すべきです。今回のバスも私には、視 覚的混乱や疲労を招く要素と感じられます」。 その他もろもろございます。 いずれにしても環境との関わりという中で、 私ども広告を提供し、市場に送り出し、消費 者の方々に企業のメッセージを訴えかける 立場としましては、当然こういった市場環境 というものがどういう風に受けとられ、なおか つ景観とどうマッチさせるかということにつきま しては、非常に関心を持っていることは間違 いないわけです。今後とももろもろの検討を加 えていければ、という風に考えております。で は東京都の方に寄せられた反響をお願いし ます。

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竹内 都の方には政策報道室に広報課と いうのがございまして、そこを通じあるいは交 通局直接にということでHPを開いております。 やはり賛否両論ございまして、一番多かった のがまず「都バスであるかどうか分からない」。 とくに高齢者の方が停留所でバス待ってた ら、何かわけの分からないバスが入ってきて、 乗っていいかどうかまごついてるうちにバス が行ってしまったり。デザイン関係では昼間と 夜では明るさが違うためか、夜は暗くて怖い というご意見などもありました。それは否定的 な面ですね。肯定的な面では、「東京都もこ こまでやるようになったのか、変わったもんだ」。 これはデザインというよりは今までの都政に 対する都民の方の見方が、従来とはいい意 昧で違ってきたということなのかな、と。デザイ ンの方では「明るくきれいだ」というご意見を たくさんいただいております。特にある一定の タレントのものにつきましては、「こういうものが もっと発展して欲しい」というような反響もあり、 そういうバスが何時ごろどこを走るのかという 問い合わせで、スタート後一週間ほどは広告 係が仕事ができなかったような状況もござい ました。ちょっと変わったところでは、江東区 の主婦の方ですが、「こういう楽しいものには、 出来れば子供の描いたものを走らせてはど うか。そういう機会を考えてくれれば有り難 い」。こういうご意見もございました。あとはコ ンテストの提案も何件かございます。やはりこ れからこの車体広告が足が地に着いたにも のになるためにも、交通局として検討していき たい、とこれはかねがね考えているところです。 田口 まだ2箇月ですので、これが全ての都 民の方たちの反応であるかはまだ気掛かりと しても、それでもかなりの方たちが肯定的で あることと、大変印象的なのは、「公共的な乗 物に広告とは何事だ」という頭からの反対 意見、そういうものは今のところ出ておりませ んね。ですからまず景観の問題でデザイン上 かなり苦情がくるということではなくて、皆さん かなりキチンとした考え方でご意見いただい ているようです。これにはデザイン審査基準 ということで当事者側としていろいろ苦労さ れたと伺っております。その審査委員の一人 である太田先生がここに我々の仲間として おられますので、ぜひそのお話しをひとつ伺 おうと思いますが。 太田 私は今回のデザイン審査に当たり、 個人的に残念な思いを幾つか持っておりま す。一つは、今回は東京に住む人、あるいは 東京で働く人たちは、自分たちの街を住み やすい、快い、そして機能的な、ダイナミック な新しい街にしていくんだということについて、 絶好の機会が得られたはずなんです。ところ が一部の者、私を含めてほんの片手に余る ほどの人員で事に当たってきたというのが、 私には不満なんです。もっとオープンにして、 都民の一人でも多くの人達の意見がどんど ん吸収されていく。新しい方向がその中で 模索され参加意識が持てる、その可能牲が 非常に大きくあったのにも関わらず、現在ま でのところそうした新しいレールが作られてい ない。せっかくの機会ですので、関係者の皆 さまに前向きに検討していただきたい。 二つ目は経済的に見るならば、東京都は 失敗をあえてしている。こういう風に私は見 ております。先ほども申し上げたように私ども が都市計画局の審議会で、中間答申をして きたわけです。私はこの言葉自体から中間 のものと理解していたのですが、4月10日か らレッツゴー。中間だったはずだがと思いお 尋ねしたところ、中間というのは各種交通機 関がある中で、今回はバスだけでスタートす る。それが中間という意味ですと。するとそ の先は地下鉄あり、各種交通機閨ありと。ま だ口火を切ったばかりだと、こういうことです。 で、絶好の機会ですから、都庁舎の広いロビ ーを放っとかないで、バスの写真パネルを事 前展示して都民の皆さんの人気投票やった らどうか。そうすれば事前に全体のデザイン レベルも上がるじゃないですかと申し上げた んですが、今もってそうは動いておりません。 経済的に失敗というのは、東京都の交通局 は都バス・地下鉄を始めとして全体で300億 円ぐらいの年間赤字が出ている。従来の車 体広告は、年間売上が約3億円だったんで すよ。今回ラッピングバスになり全面を使うよう になった、景観に対するインパクトも増えた。 にもかかわらず車体利用広告の売上が8億 円足らずなんですよ。私は審議会の席上、1 ケタも2ケタも違うんじゃないですかと申し上 げたんですよ。ところが掲載料が安すぎるこ とについて善処された形跡はない。私が申 し上げたいのは広告の掲載料は1ケタも2ケ タも違ってよろしい。そのかわりにピカ一のデ ザインを登場させる。相応のデザイン料もそ のために工面する。そうでなければラッピング バスを登場させ、公共空間を使うに値しない と思っているわけです。 ところがデザイン審査の過程はどうであっ たか。見るにたえないんですよ。今ここでスラ イドを何10枚も見せていますけれど、何とか

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ここまで来たんですよ。途中3回も4回もボツ。 何度も突き返しました。そういうことで経済的 に言ってもおおいに問題を残したスタートで あると。 そして申し上げたいことは、世界の主要 都市に対して東京が一つのモデルケースを 発信する絶好の機会であったわけです。で は具体的にどうすればいいか。私は先月ロン ドンに行ってきました。例えばこの車のボディ ーはエンジ色です。濃紺もあります。従来の キャブです。例の2階建てのバスと同じ赤 色です。同じ赤でも深みがあります。町の景 観を構成している基本色が背景の煉瓦の 色なんです。くすんだ焦げ茶色というか、いわ くいいがたい表情をした色なんです。つまり 地と図の関係ですね。都市環境が織りなす べースカラーに対するアクセントカラー。こうい う配色の相関関係が町全体に見取れる。そ ういう中で新しい広告活動が盛んに展開さ れている。単なる明度や色相の問題ではなく て、彩度も含みながら奥行きの深い、そうい う配色関係の中で整えられていると思いま す。 東京都の場合は、果たしてどのようなバッ クカラーがありうるのか。お見せしているスラ イドでは、ラッピング広告は背景を白地にして いる例が少なくない。ところが街の景観にお いて白色の持つインパクトは意外に強いんで すね。あるいは黒。東京都のデザイン審査で も黒が意外にパスしにくい。つまり無彩色で あれはいいかというと、必ずしもそうでない。 地と図の配色関係を東京都で整えていくこ とになれば、日本サイン学会のメンバーだけ では事足りない。建築学会とか都市計画学 会、その他多くの関連する専門家とのジョイ ントワークが不可欠になる。 本日こういうテ一マで、立ち上げた春季大 会が、そうした意味でもこれからの大きなジョ イントワークのスタート、になれば何よりだと思 います。幸いこの席にもそういった都市環境 等を含むご専門の方もいらっしゃる。ぜひ後 ほどご意見をいただきたいと思います。 田口 ありがとうございました。景観の問題 をここでいろいろ検討するという時間はござ いません。各自のお立場からのご意見をい ただき、また太田先生から審査の経過の中 で浮かび上がったものをお話しいただいた、 最後にクライアントの方から広告というのはこ ういうこともあるんだな、ということが出て参り ました。ちょっとそのお話をしていただきたい と思います。 辻村 先ほどの広告効果で言えば、企業の CIをできるだけ若い人に知らせたいというこ とで始めたんですけど、もう一つ、こういう広 告をやること自体が社員のモチベーションを 高める効果があるということが分かりました。 たまたまモトローラの本社が都バスを降りたら ちょうど目の前にあるんですけど、社員が自 社CIが付いたバスをまるで自分の会社のバ スのように使っている、と。中には時間に合わ せてそのバスで来たり、帰りは駅に着くように するとか。友達からモトローラのバスを見まし たよ、面白いデザインだと言われた話とか、そ ういう形で。もちろん社内でもCIには始終触 れているわけですけど、やはり外から見える 会社というか、世の中に自分の生活とも関わ りながら広告を付けたバスが走っているとい うことはまた違う。そういう意味では今度の 広告は、二つの効果があったと思うのです。 田口 普通なら出てこないような事柄が、今 日はたくさんお話に出てきました。たびたび申 し上げてきたように、ここから出発して広告 景観というものを考えなくてはならないという のは私の心からの願いだったわけで、初めて こういう形を取ることが出来たわけなんです けど、広告というものが単に社会的な発信だ けではなくて実は、全てのメディアがそこで働 く人たちのいわば心というものを発信していく という側面もあるわけですね。これは意外に 大事なことだと考えます。そういった情報が 表出されることからくる景観との問題、つまり 個々の非常に強い自分に対する必然と、非 常に公共的な全体との関係。先ほど地と図 のお話がありましたけれど、まさしく地と図の 関係の問題だというのが社会であり空間で す。図は企業のそういった何かを伝えたい 願いのわけですね。そこにどのような関係を 作っていくかということで、景観の問題という のはとらえていかなくてはならない、という風 に考えております。これから10分ほど質疑応 答の時間をとらせていただきました。ぜひさま ざまな立場からのご意見をお願いします。 楠原 熊本の崇城大学でデザイン科の教 師をしております楠原です。先ほど伺ってびっ くりしたのは、東京都が赤字削減のために 始めたということですが、300億円のうちの8 億円ですか、その程度だったらまあ止めた 方がいいじゃないかという気がするんです。 だいたい乗り物の土手っ腹に絵を描くという のは基本的に間違いだと思うんですね。そう はいっても現実に東京都が動いてるんです からそれはいいとして、あとは太田先生が言 われた地と図の関係になると思うんですが、 モトローラのあれはいいじゃないか。が、画像 はダメとか、抽象的なパターンとか文字だけ はよろしいとか。どういうガイドラインにするか。 これは竹村さんに、あまり条件を付けるとスポ ンサーが集まらないのか、少しばかり付けて もたくさん申し込みがあるというものなのか、 その辺をちょっと伺がわしていただきたい。 竹村 現在のところは多少の条件を付けて もというか、今の先生のご質問の中に一応 否定的なご意見もありましたが、そういうこと も踏まえて相当条件もつけさしていただいて います。基本的には先ほども申し上げました ように、審査を何回もやった中で、どうしたら クライアントの方々のそういうような思いを行 政なりに実現できるか、ということに苦心しな がらやっているわけです。ただ例外的ではあ りますけど、2∼3極端にデザインなさったもの を、こういったものは絶対にバスに付けること はご容赦願いたい、とおことわりしたこともあり ます。 楠原 私は1963年に初めてフィンランドに 行ったことがあるんですが、そのとき市電のラ ッピングデザインというか、それを初めて見て 感動したことを覚えています。だから否定的 にばかり見るつもりはないけれど、太田先生 も審査に苦労されているように、これは土台 ムリだと思うですね。なんと言いますかね絶 対にわるいデザインが悪貨が良貨を駆逐す るように現れてくるのは、他のメディアを見れ ば分かりますよ。どんなに審査を的確ににや ろうとしても、反環境的なデザインが横行す るのはもう目に見えてる。何らかの限定され たメッセージと言いますか、そういうような方 向へ行けるように了解してもらえませんかね。 私、先ほど申し上げたように熊本にいるんで すが、ここにももうラッピングバスはたくさん走 っていますけどね、この影響というのは想像 以上に大きい。しかし東京から見たら問題じ ゃないと言いますかね。ビジュアルインフレー ションという言葉があるようですが、東京なん

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