フロンはどんなところに使われているのでしょうか。また、オゾン層を守り温暖化を止めるためには、ど
第
3
章
身近に使われているフロン
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私たちの家にあるエアコン、衣い類るい乾かん燥そう機き、自動車、スプレーなどにはフロンが使われて います。どのような種類のフロンが使われているか見てみましょう。以前は冷蔵庫にもフ ロンが使われていましたが、ほとんどがノンフロンになりました。他の製品もノンフロン 化を進めましょう。写真を参考にフロンを探してみよう
エアコンの室外機 カーエアコン エアコン エアコンの室外機 ドライクリーニング デジタルカメラ 携帯電話 ダストブロワー パソコン 自動車のエンジンルーム①家電リサイクル法 対象:エアコン、冷蔵庫、洗濯機 など 家庭や事務所で使い終わった家電製品から、利用できる部分や材料をリサ イクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための 法律です。フロンが使われたものについては、フロン回収することが義務 づけられています。リサイクル費用は、捨てる時に持ち主が支払うことに なっています。 ②自動車リサイクル法 対象:自動車(カーエアコン) クルマのリサイクルについてクルマの持ち主、関連事業者、自動車メー カーの役割を定めた法律です。カーエアコンからのフロン回収が義務づけ られています。フロン回収費用は、リサイクル費用とともに自動車購入時 に買った人が支払うこととなっています。 ③フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン法) 対象:スーパーやコンビニの冷凍冷蔵ショーケースや空調機器、
自動販売機、大型倉庫、バスや電車のクーラー など 2013年に「フロン回収破壊法」が改正されました。この法律ではフロ ンメーカー、機器メーカーにフロンの利用を合理化することを定め、業務 用冷凍空調機器の管理者などに適切な管理をすることを求めています。 このほかにも、スーパーやコンビニの冷凍・冷蔵食品のショーケース、飲いん料りょう用自動販はんばい売 機など、業務用の機器にも大たい量りょうにフロンが使われています。 日本には、フロンの回収を進める法律があります。家か庭ていで使わなくなったフロンを含む 機器は、正しいルートにのせて回収しましょう。 しかし、大量のフロンがまだ放出されています。一刻も早くノンフロン化をすすめましょ う。
〈フロンの回収をすすめる
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つの法律〉
フロンの表示
冷蔵庫やエアコンの表示には「冷媒」を表示したラベルが貼られています。その表示にはR-22 とかCFC-12などといったように、アルファベットと数字が書かれています。あなたの家の冷蔵 庫やエアコンでは、どの種類の冷媒が使われているか、下の表で確認してみましょう。 フロン 自然物質 HCFC-22(R-22) R600a 炭化水素 HFC-134a(R-134a)、R-410A、R-407C、R-32 R717 アンモニア ※「R」:Refrigerant(冷媒)を表す記号このエアコンのフロンは どうなるの? 家電リサイクル工場に持っていって処理するんだよ。
今使われているフロンはどうするの?
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フロンの回収と破壊
冷蔵庫やエアコン、自動車を捨すてるときには、冷媒や断熱材に使われたフロンを正しく 回収・処しょ理りしなくてはなりません。ここではエアコンの例を見てみましょう。①電器店にエアコンを引き取ってもらう
②リサイクル工場でフロンを回収
③フロン破壊工場でフロンを分解する
しかし、法律があるにもかかわらず、これらの機器を廃はい棄きするときのフロンの回収は進 んでいません。また、建けんちく築用断熱材やスプレーでは、フロンの大気放出を禁止する法律は ありません。 運ばれてきた廃エアコン から、フロンを抜き取り、 ボンベに保管します。 破壊工場でフロンを分解します。使っている間にも漏れているフロン
廃棄する以前に機械を使っている間に漏もれてしまうフロンの量も多いものです。廃棄時 のフロン回収を進めると同時に、使用中のフロンの漏れを防ぐことが必要です。 どうすればいいの? 結局ノンフロンにするしか、本当の解決 方法はないんだよ。 この絵の水色の部分でフロンが使われています。フロンを使わないために
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これまで、さまざまなところで使われてきたフロンですが、いくつかの分ぶん野やでは全くフ ロンを使わない方法に切り替わってきました。①冷媒
今現在、ものを冷やす「冷媒」の用途では、たくさんのフロンが使われていますが、フ ロンを使わない方法もあります。 フロンのような人工化学物質を使った冷媒に対して、自然界にある物質のことを“自然 冷媒”とよんでいます。特に、二酸化炭素(CO
2)、アンモニア、炭化水素、水、空気の5
つは、これからの冷媒として期待されています。この5つの自然冷媒の特徴を見てみましょ う。●アンモニア
NH
3(
R717
)
アンモニアは、フロンが開発される以前から冷媒として 使われていた冷凍技術で、効こうりつ率的に見ても非常に有効です。 ただし、毒どくせい性や燃ねん焼しょう性の問題があるため、小さな機械では 使われていませんが、国内では工場などの大型装そう置ちやアイ ススケートリンクなどで使われています。●二酸化炭素
CO
2(
R744
)
二酸化炭素は、アンモニアのような毒性や炭化水素のよ うな可か燃ねん性せいがありません。スーパーやコンビニエンススト アのショーケースでは、CO2
冷媒を使うところが増えてお り、従来のフロン冷媒よりもエネルギー効率が高くなって います。高こうおん温や低ていおん温をつくりだせるので、飲料用自動販売 機にも使われています。●炭化水素
HC
(
R290
、
R600a
など)
炭化水素にはプロパン(R290
)やイソブタン(R600a
) などの種類があり、冷蔵庫や飲料用自動販売機に使われて います。効率はフロンよりも良く、量も少なくてすみます。 可燃性ですが、海外では、カーエアコン、ルームエアコン などの冷媒でも使われています。●空気(
R729
)
空気も冷媒として使うことができます。極低温を得やす い特徴がありマグロの冷凍倉そう庫こなどにも使われ、省エネ性 能に優れています。飛ひ行こう機きの空調システムでも空気が使わ れています。●水
H
2O
(
R718
)
水も冷媒として使うことができます。フロンと同じように 圧 あつ 力 りょく をかえて冷媒として使う方法と、吸きゅう着ちゃく式や吸きゅう収しゅう式という 方法でビルの空調などに使われています。日本でもいくつか のメーカーが水冷媒の装そう置ちをつくっています。②洗浄剤
●炭化水素
HC
やアルコール系
機械部品等の洗浄剤は炭化水素に替わってきています。 Rとは、冷媒(Refrigerant)の頭文字をとったもので、冷媒の種類をあらわすために、各国共通の番●炭化水素
HC
、ジメチルエーテル
DME
多くのスプレーは、LPG
などの炭化水素やDME
(ジメチ ルエーテル)が使われています。最近はコンピューターや 精 せい 密 みつ 機き器きのほこりとばし用スプレー(ダストブロワー)で フロンが使われているものが残っていますが、ノンフロン 製品としてDME
にCO
2を混ぜたダストブロワーも販売さ れています。④ノンフロン断熱材やドライクリーニング溶剤
●炭化水素
HC
、二酸化炭素
CO
2など
断熱材にはさまざまなタイプがあり、フロンではなく、炭 化水素(シクロペンタン)や二酸化炭素などを発泡剤に使 うことができます。また、古新聞を使ったセルロースファ イバーやロックウール、グラスウールといった断熱材もあ ります。 ドライクリーニングでは、以前より石せき油ゆ系けい溶ようざい剤(炭化水 素)が使われており、洗浄力や環境への影響の面から最も 望ましいものです。ノンフロンを求める消費者の不買運動
1980年代、殺虫剤やヘアスプレーなどのすべてにフロンが使われていました。し かし、オゾンホールが発見されて、その原因がフロンであるとわかったときに、フ ロンのスプレーは買いませんという消しょう費ひ者しゃの不ふ買ばい運動が起りました。その結果、フ ロンを使わないスプレー(多くはLPG)に切り替わりました。 1990年代には、フロンを使わない冷蔵庫を求める市し民みんの声が高まり、フロン製品 への不買運動が起りました。これによって、ヨーロッパでは1992年に冷媒と断熱材 に炭化水素(HC)を使ったノンフロン冷蔵庫(グリーンフリーズ)が誕生しました。 日本では、2002年にようやくノンフロン冷蔵庫が商品化されました。 今では家庭用冷蔵庫のほとんどがノンフロン冷蔵庫に切り替わっています。それぞれの役割
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国、自治体の役割 国や自治体は、オゾン層保護や地球温暖化防止の対 策を立てて、積せっ極きょく的てきに情じょう報ほう公こうかい開し、みんなが公こうへい平に参さん 加かしていけるようなルールやしくみをつくっていくこ とが必要です。 また、それらがきちんと守られているかどうかを チェックしていくことや、情報を集めて積極的に公開 企業の役割 企業は、フロンを使わない製品を作ったり、使用した りすることが大切です。そして、決められたルールを 守り、フロンを大気中に出さないようにするため、最 も効果的な対たいしょ処をすることが必要です。また、企業が どんな対策を行っているのかを、消費者(市民)に示 していくことも求められています。 地球環境を守っていくためには、社会の中で、みんながそれぞれの役割を果たしていく ことが必要です。では、いろいろな立たち場ばの人たちがどんな役割を果たしていけば良いので しょうか。 市民の役割 ひとり一人が環境問題に意い識しきを持ち、モノを買う時、使う時、そして捨 てる時に、環境に与える影響を少なくするように努めましょう。 ◆冷蔵庫・エアコン・自動車・スプレーなどを 買う時「フロンを使わない製品を選ぶ」 使う時「フロンをもらさないようにする」 捨てる時「フロンを回収処理してくれる事じ業ぎょう者しゃを選ぶ」 国や自じ治ち体たい、企きぎょう業がきちんと役割を果たしているか、関かんしん心を持ちましょう。めざそうノンフロンの世界
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生きものはみんな、地球のうえでうまく循環できる生き方をしています。 捨てたものがほかの生きものに利用される暮らしです。これが地球にやさしい生き方です。 私たち人間も、うまく循環できる生き方をしていくことが必要です。 人間が作り出したフロンガスは、捨てたときにほかの生きものに利用してもらえません。 フロンガスを使わない暮らしは、地球にやさしい循環型社会への大きな一歩になるでしょう。 さあ、みんなでノンフロンの暮らしをめざしてゆきましょう。