STZ誘導1型糖尿病モデルラットにおける玄米発酵食品の血糖コントロールに対する効果
山内有信*・松尾達博Effect of Fermented Brown Rice on Glycemic Control in STZ-Induced Type I Diabetic Rats
Arinobu Yamauchi* and Tatsuhiro Matsuo
Abstract
In this study, the effect of fermented brown rice (FBR) on glycemic control was examined in streptozotocin-induced type I diabetic rats. The diabetic model rats were classified into type I diabetes control group (DMC) and type I diabetes experimental group (DMF). DMC were given an extra 2.5% of normal brown rice in feeds, and DMF were given an extra 2.5% of FBR in feeds. The rats underwent an oral glucose tolerance test with the 2 g/kg BW glucose after 4 weeks of breeding. As a result, the fasting blood sugar level of DMF was significantly higher than control group (NDM) which was a normal rat. However, the fasting plasma glucose of DMF was significantly lower than DMC though blood insulin levels were low conspicuously in the same way as DMC. In addition, the glycogen quantity of liver and the muscle of DMF significantly higher than DMC, but there was no difference with NDM. These results suggested that the intake of the FBR contributed to control of the blood sugar level separately from ac-tion of insulin.
Key Words : fermented brown rice, type I diabetic model rat, oral glucose tolerance test, glycogen, glycemic control
* 鈴峯女子短期大学食物栄養学科 緒 言 「糖尿病が強く疑われる人」あるいは「糖尿病の可能 性を否定できない人」が急増している今日(1),糖尿病予 防の一助となる食品あるいは食品成分の研究も精力的に 行われている.この代表的なものとして,α-グルコシ ダーゼ活性やα-アミラーゼ活性の阻害によって糖の吸 収を抑制するとしてグァバ葉抽出液(2-5)のほか,イチョウ 葉由来フラボノイドフラクション(6)や,桑葉エキス(7)な どが報告されている.同様に,核酸あるいは核酸関連物 質についてもα-グルコシダーゼ活性阻害による血糖値 上昇抑制効果の可能性が報告(8, 9)されている. これまでに著者らは,核酸を大量に生産する特殊麹 菌で発酵させた後に粉砕して粉末とした玄米発酵食品 (Fermented Brown Rice:以後 “FBR” とする)を,4週 間にわたってラットに摂取させた実験において,空腹時 血糖値,インスリン値,HOMA-R値(homeostasis model
assessment insulin resistance),ならびに過去1~2週間 の血糖値の状態を反映するグリコアルブミン値が,FBR 摂取群で有意に低かったこと(10),ラットにおけるでんぷ ん混合液の経口投与試験において,FBR添加でんぷん液 投与群およびFBRと同等になるようにDNAとRNAを添 加したでんぷん液投与群で血糖値の上昇が抑制され,イ ンスリン分泌の節約効果も認められたこと(11)を報告し てきた.また,FBRならびにFBRとほぼ同量のDNAと RNAの混合物が,みかけのα-アミラーゼ活性を拮抗 的に阻害したことから,この血糖値上昇抑制ならびにイ ンスリン節約効果にFBRで増幅されたDNAおよびRNA によるα-アミラーゼ活性阻害が関与している可能性が あることも報告した(12). その一方で,核酸あるいは核酸関連物質摂取が, 糖質吸収後の体内代謝へ関与することも示唆されて いる(13-16).実際,今回の報告の関連研究として,2型糖 尿病自然発症ラット(ZDF-Leprfa/CrlCrlj)に3週間にわ
たってFBR添加飼料を摂取させた後に,経口グルコース 負荷試験を行った結果,FBRを摂取させていない2型糖 尿病自然発症ラットと比較して,血糖値の上昇が抑制さ れることも報告した(17).この実験の結果,糖類分解酵素 の活性阻害が関与し得ないグルコースの経口投与でみら れたことから,血糖値上昇抑制ならびにインスリン節約 効果は,グルコース吸収後の体内での代謝に起因してい ると推察された.しかし,2型糖尿病モデルを用いたこ の実験(17)では,インスリン分泌能が残存していること から,偶発的な耐糖能異常が軽減された可能性もある. そこで,本研究では,FBR摂取による糖類分解酵素活 性の阻害以外の血糖値上昇ならびにインスリン節約効果 のメカニズムを検討するための手掛かりを調べるため に,ストレプトゾトシン(以後 “STZ” とする)誘導1 型糖尿病ラットを用いて,4週間にわたるFBR摂取後の 経口グルコース負荷試験における血糖値とインスリン値 の経時変動および採取組織あたりのグリコーゲン含量を 比較した. 方 法 1.実験動物 実験動物は,予備を含めた8週齢のWistar系雄性ラッ ト(日本チャールズリバー株式会社,横浜)26匹とし, 12時間明暗サイクル(8時点灯・20時消灯)にタイマー セットした実験動物飼育施設内に設置した動物飼育用ア イソレーター(温度調節アイソレーターF-228特型:岡 崎産業,埼玉)内で,室内温度23℃,湿度50%に調整し て4週間飼育した. 実験動物のうち,20匹にSTZ(ナカライテスク:京都) を20 mg/mL濃度で溶解(生理的食塩水0.99 mLに溶解後, pH 4.5の0.05 Mクエン酸溶液を10 μl添加)して,60 mg/ kg BWの量で腹腔内投与した.半数ずつのラットにNBR あるいはFBR添加食をそれぞれ摂取させ,それぞれ1型 糖尿病対照群(以後 “DMC” とする)および1型糖尿病 実験群(以後 “DMF” とする)とした.また,残り6匹 には3mL/kg量の生理的食塩水を同様に投与し,非糖尿 病対照群(以後 “NDM” とする)とした.なお,STZお よび生理的食塩水の腹腔内投与は,実験食摂取初日(8 週齢)と2週間後(10週齢)の2回投与とした. 糖尿病発症の確認については,それぞれのSTZ投与の 3日後に,尿検査用試験紙(ウロペーパーⅢ:栄研化 学,栃木)および簡易血糖測定機(グルコカードG+ メーター:アークレイ,滋賀)を用いて空腹時の尿およ び尾静脈血の糖を測定して行い,尿糖(+)以上,およ び空腹時血糖値200 mg/dL以上を糖尿病発症とみなした. STZを投与したDMCおよびDMFのラット各10匹のうち, 死亡したラット(DMF:1匹,DMN:2匹)および糖尿 病と判定されなかったラット(DMF:3匹,DMN:2匹) を実験から除外した後の各群6匹を最終の例数とした. なお,本実験は,「実験動物の飼養及び保管に関する 基準」(昭和55年3月総理府告示第6号),「研究機関等 における動物実験等の実施に関する基本指針」(平成18 年文部科学省告示第71号)ならびに「実験動物の飼養お よび保管ならびに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年 4月環境省告示第88号)の遵守を基本とし,鈴峯女子短 期大学実験動物委員会における倫理審査を経て実施し た. 2.被験食品と食餌組成 被験食品であるFBRは,有機玄米発酵食品(ヘルスゲ ン:亀岡酒造,愛媛)とした.なお,このFBRは,As-pergillus. nigerに属する黒麹菌を無農薬玄米10 ㎏当たり 5g(種菌胞子数は8×108個/g)加えて3日間培養・ 発酵させた後に蒸気釜にて乾燥させて粉砕後,乾熱釜に て焙煎して粉末化したものである. NDMおよびDMCの食餌は,通常の粉末化した通常玄 米25 gを含む20%カゼイン食とした.DMFの食餌は,先 行研究(18, 19)(核酸関連物質量0.025~0.5%)を参考とした 以前の報告(10, 17)と同様に,25 gのFBR(核酸関連物質約 0.126%相当)を添加した20%カゼイン食とした(表1). 3.経口グルコース負荷試験および生化学検査 4週間にわたる実験食の摂取期間終了後,各実験動物 表1.実験食の組成 (g/kg) 正常対照群 (NDM) 糖尿対照群(DMC) 糖尿実験群(DMF) カゼイン 200.0 200.0 200.0 粉末玄米 25.0 25.0 - 被験食品* - - 25.0 (核酸関連物質†) (0.15) (0.15) (1.26) α-スターチ 432.0 432.0 432.0 シュクロース 228.0 228.0 228.0 大豆・なたね調合油 50.0 50.0 50.0 ビタミン混合‡ 10.0 10.0 10.0 ミネラル混合§ 35.0 35.0 35.0 セルロース 20.0 20.0 20.0 *玄米発酵食品:ヘルスゲン(亀岡酒造,愛媛) † DNAおよびRNAの合計(分光法による測定) ‡ AIN-76 ビタミン混合(オリエンタル酵母,東京) § AIN-76 ミネラル混合(オリエンタル酵母,東京)
は24時間の絶食とし,エーテル麻酔下で右外頚静脈に採 血用のカテーテル留置手術を施した.20%グルコース液 を使って体重1kgあたり2gのグルコースをラットに胃 ゾンデを用いて胃内に強制投与し,グルコース負荷後 120分間にわたって30分間隔でヘパリン処理を施したシ リンジにて1mLずつ採血した. 毎回の採血後は,血栓によるカニュレーションチュー ブの詰まりを予防するために,チューブ内をヘパリン生 理的食塩水(ヘパリン濃度5.4 mg/mL)で満たした.な お,カニュレーションチューブ内を満たすためのヘパリ ン生理的食塩水の量は,カテーテル留置手術時にチュー ブを満たす量(0.3~0.5 mL)を確認して決定した.また, 採血後の血液は,3,000 rpmで遠心分離して血漿を採取 後,分析まで氷冷保存した. 血糖値の測定は,ムタローゼ・GOD法を用いた市販血 糖値分析キット(グルコースCⅡテスト-ワコー:和光 純薬,大阪)を使用し,血漿インスリン値は,ELISAサ ンドイッチ法を用いた市販キット(レビス® インスリン -ラット-U-Eタイプ:シバヤギ,群馬)で行った. グルコース液経口投与2時間後の採血が終了したラッ トをペントバルビタームナトリウムによる麻酔下で頸 椎を脱臼して絶命させ,肝臓および腓腹筋を摘出した. グリコーゲン量の測定は,組織片約0.5 gに1mLの30% KOHを加えて沸騰水浴中で2時間消化させた後,アル コール沈殿法でグリコーゲンを採取したものを試料と し,アンスロン法(20, 21)にて行った. 4.統計学的分析 群間の母平均の差の検定は,Tukey-Kramerの多重比較 検定(全群比較,両側検定)を用い,同じアルファベッ トを持たない群間にp<0.05で有意な差が認められると して表現した.これらの検定は,Excel統計2012(社会 情報サービス,東京)を用いて行った. 結 果 1.実験動物の摂取量と体重 実験動物の飼料摂取量および体重の経週変動を図1に 示した. まず,飼料摂取量に群間の差はなかった. つぎに体重について,NDMは増加し続けたが,糖尿 病モデルラットであるDMCおよびDMNでは,実験食摂 取開始時(STZ投与1回目)から急激に体重が減少した. 図1. 体重および飼料摂取量の変化 データは平均値±標準誤差(各群n=6) NDM :正常対照群,DMC :1型糖尿病対照群,DMF :1型糖尿病実験群 DMCおよびDMFは8週齢時および10週齢時に60 mg/kg BWのSTZを腹腔内投与した. 母平均の差の検定は,Tukey-Kramerの多重比較検定(全群比較,両側検定)を用い,同 じアルファベットを持たない群間にp<0.05で有意な差があるとして表現した. 200 220 240 260 280 300 8 9 10 11 12 NDM DMC DMF a a a a b b b b b b b c 0 a a a 20 22 24 8 9 10 11 12 a a a a a a a a a a a a 0 a aa ↑ 投与1回目 ↑ 投与2回目 ↑ 投与1回目 ↑ 投与2回目 飼料摂取 量 (g ) 【飼料摂取量】 【体重】 週齢 週齢 体重( g )
2.空腹時の血糖値とインスリン値 空腹時血糖値は,NDMに比べて,DMCおよびDMFで 有意に高かった(図2).また,DMFの空腹時血糖値は, DMCに比べて有意に低かった. 空腹時血漿インスリン値は,NDM群に比べて,DMC およびDMFで有意に低かったが,DMCとDMFの間に有 意な差はみられなかった(図2). 3.経口グルコース負荷後の血糖値およびインスリン値 の変化 経口グルコース負荷後の血糖値は,NDMに比べて DMCおよびDMFでいずれもグルコース負荷後30分か ら120分まで有意に高値であった(図2).一方,DMF の血糖値は,DMCに比べて上昇が緩やかであり,グル コース負荷後30分以降有意に低値であった. NDMの血漿インスリン値は,血糖値と同様の傾向で 増減したが,DMCおよびDMFの血漿インスリン値は, ほとんど変化せず,NDMに比べて終始有意に低値で あった(図2). 4.グルコース負荷後2時間の時間曲線下面積の比較 血糖値時間曲線下面積は,NDMに比べてDMCおよ びDMFで有意に高く,DMCに比べてDMFで有意に低 かった(図3).一方,インスリン値時間曲線下面積は, NDMに比べてDMCおよびDMFで有意に低かった. 5.肝臓および筋肉のグリコーゲン量 肝臓および腓腹筋のグリコーゲン含量を採取組織片 重量あたりで比較した結果,いずれもDMC群に比べて NDM群およびDMF群で有意に高値であったが,NDM群 とDMF群間に差はみられなかった(図4). 考 察 FBR摂取による血糖値上昇抑制ならびにインスリン節 約効果が,吸収後の体内代謝への影響といった糖類分解 酵素活性の阻害以外の要因もかかわっている可能性を 調べるために,STZ投与による1型糖尿病ラットを用い て,FBRの血糖値上昇抑制効果に関する,糖類分解酵素 の活性阻害(12)以外の要因の可能性について検討を試み た. まず,通常STZ誘導性1型糖尿病モデルラットでは, 飼料摂取量がSTZ投与後徐々に増加し,健常ラットに比 べて有意に多くなるとされている(22, 23)が,今回の実験で は,健常ラット群に比べてSTZ投与群でわずかに高値を 示すものの有意な差は認められなかった.この要因とし て,空腹時血糖値が250 mg/dL以上と糖尿病症状が非常 に強いことが影響しているのかもしれない.このことに ついて,同様に空腹時血糖値が250 mg/dL以上のSTZ投 与群の摂取量が健常ラットに比べて増加したものの有意 な差は認められなかった報告(24)もある.いずれにして も,今回の実験においては,STZ投与後の糖尿病発症の 図2. 経口グルコース負荷試験における血糖値およびインスリン値の変化 データは平均値±標準誤差(各群n=6) NDM :正常対照群,DMC :1型糖尿病対照群,DMF :1型糖尿病実験群 母平均の差の検定は,Tukey-Kramerの多重比較検定(全群比較,両側検定)を用い,同じア ルファベットを持たない群間にp<0.05で有意な差があるとして表現した. 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0 30 60 90 120 NDM DMC DMF a a a a b b b b b b b b a b b 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 0 30 60 90 120 ) a a a a b b b b c c c c c b a 濃度( mg/dl ) 濃度 (pg/ml ) 【 血 糖 値 】 【血漿インスリン値】 糖負荷後経過時間(分) 糖負荷後経過時間(分)
確認を行っており,空腹時血糖値およびインスリン値か らも明らかなインスリン分泌不全による糖尿病状態で あった. このような状況で,DMFの空腹時血糖値は,DMCに 比べて,インスリン値に差が認められないにも関わらず 有意な低値を示した.このことは,以前報告した正常 ラットへの4週間にわたるFBR摂取において空腹時血糖 値が有意に低減された結果(10)と同様の傾向であり,FBR 摂取によって空腹時血糖値の低減効果が期待できるこ とが示唆された.また,経口グルコース負荷試験では, DMFとDMCは,NDMと比較して,いずれも明らかな耐 糖能異常が確認されたが,DMCに比べてDMFの血糖値 図3. 経口グルコース負荷後2時間の時間曲線下面積の比較 データは平均値±標準誤差(各群n=6) NDM :正常対照群,DMC :1型糖尿病対照群,DMF:1型糖尿病実験群 母平均の差の検定は,Tukey-Kramerの多重比較検定(全群比較,両側検定) を用い,同じアルファベットを持たない群間にp<0.05で有意な差があるとし て表現した. 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 NDM DMC DMF a c b 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 NDM DMC DMF a b b 【血糖】 時間曲線下面 積( mg/dl/2hrs ) 時間曲線下面 積 (p g/ m l/ 2h rs ) 【インスリン】 図4. 肝臓および腓腹筋のグリコーゲン量の比較 データは平均値±標準誤差(各群n=6) NDM : 正常対照群,DMC : 1型糖尿病対照群,DMF :1 型糖尿病実験群 母平均の差の検定は,Tukey-Kramerの多重比較検定(全群比較,両側検定) を用い,同じアルファベットを持たない群間にp<0.05で有意な差があると して表現した. 0 5 10 15 20 25 30 NDM DMC DMF b a a 0 2 4 6 8 10 12 14 16 NDM DMC DMF a b a 【肝臓】 【腓腹筋】 グリコーゲン量( mg/ 採取組織 g ) グリコーゲン量( mg/ 採取組織 g )
の上昇は有意に低く,血糖値時間曲線下面積も,DMC に比べてDMFで有意に低かった.この結果は,2型糖 尿病モデルを用いた以前の報告(17)と類似しており,FBR 摂取によって,正常ラット(11)だけでなく,糖尿病ラット においても食後血糖値の上昇抑制効果が得られることが 示唆された. FBRは通常玄米に比べて多くのDNAおよびRNAを有 している.この核酸あるいは核酸関連物質の血糖値上 昇抑制効果の一因として,Fukumoriら(8, 9)は,シトシン, アデノシン,イノシンなどのヌクレオシドあるいはその 関連物質が,α-グルコシダーゼ活性を阻害することで 血糖値の上昇抑制とインスリンの節約作用を示すと報告 している.また,二糖類分解酵素であるα-グルコシ ダーゼ活性阻害剤として広く知られているアカルボー ス(25-28)は,α-グルコシダーゼだけでなく,唾液α-ア ミラーゼ活性に対しても拮抗的な阻害作用を持つが(6), 既報においてFBRおよびDNA・RNAも同様の阻害作用を 持つことを報告した(12).一方,Fukumoriらによるヌクレ オシドあるいはその関連物質摂取による血糖値上昇抑制 効果(8, 9)は,血糖値上昇作用を持つ糖類とこれらの物質 を同時摂取させた結果である.しかし,本実験では,長 期間の核酸高含有食品の摂取後にグルコースのみを負荷 している.このことから,本実験でみられた血糖値上昇 抑制効果は,FBRの糖類分解酵素活性阻害以外の効果に 起因するもの,すなわち吸収機能,あるいは吸収後の体 内代謝段階への関与が考えられる. なお,糖類分解酵素の活性阻害剤として臨床において も利用されているアカルボースを遺伝性糖尿病ラットに 12週間にわたって飼料に添加して摂取させ,絶食時に経 口グルコース負荷試験を行った結果,耐糖能が改善し たと報告されている(28).このことから,既に報告した 2型糖尿病自然発症モデルを用いた実験(17)では,飼料中 にFBRを添加した結果,その期間に消化酵素の活性阻害 を含めた何らかのメカニズムによって,インスリン抵抗 性の発症が遅延し,耐糖能の改善がみられた可能性も考 えられる.しかし,本実験におけるインスリン値には, DMFとDMC間に差は認められず,いずれもSTZ投与に よるンスリン分泌不全状態にあったことから,FBRの血 糖値上昇の抑制効果は,少なくともインスリンそのもの の作用によるものではなかったと推定される. 一方,FBRが消化管におけるグルコースの吸収を抑制 するならば,肝臓や筋肉のグリコーゲン量は低値を示 すと考えられる.しかし,FBRを摂取させたDMFでは, インスリン分泌が極度に低下しているにも関わらず,肝 および筋グリコーゲン量は,健常ラットであるNDMと 同等であった.このことから,FBRによる血糖値の上昇 抑制は,インスリンが直接的に関与することなく,グ リコーゲン合成が亢進された結果と考えられる.なお, DMFの採取組織あたりのグリコーゲン量がNDMと同等 であったにも関わらず血糖値が高値であったことについ ては,体重差が約70 gあるように肝臓や筋肉のサイズも 小さかったことによる影響と考えられる. 本実験の結果から,FBRによるインスリンを介さない グリコーゲン合成亢進のメカニズムを明らかにすること はできない.しかし,脂肪細胞を用いた実験によって, アデノシンがインスリン非存在下でインスリン様作用を 持つ生理活性物質としてGLUT 4の細胞膜への移行を介 して糖の取り込みを促進させること(13)が報告されてい る.また,アデノシンA1レセプターがインスリン分泌 の不足した糖尿病ラットにおける血糖値を低下させるこ と(29, 30),アデノシンA1レセプターを過剰に発現させたト ランスジェニックマウスではインスリン抵抗性の発症が 抑制されたこと(31),ウリジンとイノシンが単離ラット横 隔膜筋肉においてグルコースの取り込みを刺激するこ と(15),骨格筋および心筋におけるウリジンの暴露がグ ルコースの取り込みとグリコーゲン合成を増大させる こと(16)も示唆されている.これらのことから,本実験 で見られたFBR摂取による肝臓および筋肉グリコーゲン 量の増大は,FBRに含まれる核酸の作用による可能性が ある. 以上の結果から,FBRの摂取はインスリン作用を介さ ず,グリコーゲン合成を促進して血糖値の上昇を抑制す ることが示唆された.しかし,このFBR摂取によるグリ コーゲン合成促進の作用機序は不明であり,今後さらな る検討が必要であると思われる.
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