号.強震動予測の高精度化ー震源モデルの構築とサイト特性推定の高精度化司 禽橋奨@入金孝次臨 1 .はじめに 2008年5月 14日中国四川省で M7.9の地震が発生し、約 70000人の死者を出し、非常に多くのインフラ や建物が倒壊するなど甚大な被害が発生した。このうち建物被害の原因は、構造物と強震動の特性に関係がある と考えられる。 この地震は、断層長が300km弱と非常に長く、また、最大すべり量が 14mにも達した超巨大地震であった。 このような超巨大地震により生成された地震動が、どのようなメカニズムで発生したか、どのような特徴がある のかを知ることは、今後発生する巨大地震の強震動予測のために重要である。ここでは、小地震を重ね合わせる ことで、大地震の地震動を模擬する経験的グリーン関数法を用いて計算された波形と本震波形との比較から、強 震動が生成された震源モデ、ルの構築を行った。 2. Wenchuan地震の特徴 2.1 建物被害率とすべり分布の比較 図 1に、 Wenchuan地 震 に お け る 倒 壊 率(色付の口)CChendu Branch of the China Academy of Science, 2008) と波形インパージ ョンから推定された断層面のすべり量分布(色 付コンター)CKoketsu et al,2009) を示す。倒 壊率が80-100%という非常に大きな地点 がいつくかの地点で見られるが、特に、すべり 量の大きい場所の付近で、倒壊率が大きくなっ ていることがわかり、すべり量の大きな場所と 倒壊率との関係性が推測される。 (oll晶psR昌tl封切 援護 BOぺ自由 ご岳私自白 40-品目 警 護 20-4む 重 量 也毛色 図1 建物倒壊率(色付の口)と 断層面のすべり量分布分布(色付コンター)との比較 2.2 既往の研究によるすべり分布 遠地実体波や近地地震動、 SARによる地殻変動データを用いて、波形インバージョンによる断層面上の すべり分布が構築されている。その一例として、遠地実体波と近地地震動を用いたすべり量分布 CKoketsuet al,2009) を示す。この結果では、破壊開始点(星印)付近に比較的大きなすべりが示されている。さらには、 破壊開始点から北東に 50kmほど進んだ場所には最も大きなすべりの場所がある。その他、比較的大きなすべ りがある場所が、断層面上でいくつか見られる。これらの特徴は、その他の震源モデルでもほぼ同様であった。
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図2 波形インパージ、ヨンによるすべり量分布。(星は破壊開始点) 662.3 震源近傍の強震動記録とアスベリティの位置 本震では、震源近傍でいくつかの強震動記 録が得られている(図1のA地点)。そのうち
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、MZQ
では、明瞭なパルスの波を確認でき る(図3)。また、そのパルスは、一つではなく いくつか見られる。これらのパルスは、アスペリ ティから生成されると考えられる。本研究では、 個々のパルスの立ち上がりを読み取り、その時間 差と断層面上の幾何学的な位置関係からアスペリ ティの場所在推定した(図4)。その結果、アス ペリティは南側のセグメントで3個推定された。 北側のセグメントに関しては、パルスが明瞭に見 られなかったため、今回は解析の対象外とした。S
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TI幌園田cl 防AX'" 61.23 栂.. 首喝 さα。 MAX= 124.aa klne 図3 SFBとMZQにおける水平2成分の速度観測記録 33Z2畑'Jl1-!円4 ョ10m r一 可km - r 坦,宙町11b凶As塑Pを町r均 3 丞2"JIT ~,':J()' 31百G' 一一「 'OD主m 位二二二一一~調白鶴町一一一一一一~日 ニ 一 三 ご = 士 宮 間 罵 理 事 副 臨 出 羽J'30'tt=一一_, 能事一一布設す血清治百一寸官官1按 喜 一 可QS官 官 一 「 冨 程 戸 可 思 " 1田宮町 四 百rr , 置 割Y 1叫 宙 10<百 四 四 惜 加 盟 内 百 四 時E 図 4 アスペリティ 2と3の位置の推定場所。交点がアスペリティの場所と推定された。 3.震源モデルの推定 3. 1経験的グリーン関数法による震源モデ、ルの構築 2-3で推定したアスペリティの場所在参考として、経験的グリーン関数法を用いて震源モデ、ルの構築そ行っ た。波形合成法は入倉,1986を用いた。しかしながら、本地震において、経験的グリーン関数として必要な余 震記録は得られていない。経験的グリーン関数とする小地震は、 1)震源特性として震源メカニズムの特徴、 2) 伝播経路特性として震源距離、 3)サイト特性として地表の地質が本震のものと近似していることが望ましい。 そのことから本研究では、四川地震のメカニズムおよび、断層のロケーション(断層を挟んで西側が山地、東側 が盆地という位置関係)が近似している、 2008年岩手宮城内陸地震の余震記録を経験的グリーン関数として 採用した。 採用したグリーン関数を用いて、断層面積、応力降下量、ライズタイムを変数として、グリッドサーチによ り最適モデルを推定した。その結果を図5に示す。アスペリティの場所は、概ね波形インパージョンによるすべ り量の大きな場所と調和的であり、強震動は、すべりの大きな場所から放出されたと考えられる。これは、既往 の結果と調和的である。各アスペリティの応力降下量は約1
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であった。図6
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の観測波形と 合成波形の比較を示す。 67問寸 ~ ~t--~.,yl炉内側一 言 回 寸 三忌,_回~ - 呼 → 待 命 前J同 吋 抗Jヘ e l-姐 1羽 10 20 安 部&1 1み2認4 g o+- -;' -2弛オ 韮-lfJGトー 主i一い4 1(}) O ← 「 ー 『 一 寸 組 副 詞 4 { l -5心開問8!? 了既定申出j 05iSFB
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弓匂卸i' 叫 経験的グリーン関数法を用いた合成波形と 図6 構築した震源モデル。点線口が推定された 図5 観測波形の比較 アスペリティ。背景は、 Koketsuet a,2009.1 による すべり量分布。 Hybrid法による広帯域領域の震源モデルの構築3.2
3. 1では、経験的グリーン関数法による震源モデルを構築した。ただし、経験的グリーン関数として採用 した地震は、低周波側では精度が低い。そこで、低周波領域に関しては、理論的手法により計算を行った (Kamae 3. 1で構築したものを採用した。図に、 O.5Hz以下を理論的手法の解析結果を、 et a,l1998)。震源モデルは、 それ以上の周波数帯を経験的グリーン関数法の解析結果そ合成した解析波形と観測波形との比較を図7に示す。 Tlm易収et) 酪 棚 田 -(Jb室、一-S'ffl.o 宅;-a.ω寸 “ ' ; j / 6品目寸 I 皆 吉 郎 寸 一i
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の速度記録に 見られるNS成分の明瞭なパ 加速度の振幅も観測と調和的 ルスが再現されている。また、 であり、本研究で構築したモ デルが概ね妥当であることが わかる。一方で、MZQ
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τ開手号i成 湾l TI附1軍拡! 成分に見られるパルスは再現 この原因につ なる地盤構造が簡便なモデル で あ る こ と な ど が 考 え る た いては、理論的手法で必要と されていない。 内 u h 同 M n u ヲ 4 内 U d u 九1 1 c m四 一 間 組 閣 泊 A H M m r d 閉山部居間制郎防制限 1 -1 1 2 ι E E 品輸抱﹀ 7 3 コ さらなる検証が必要と考 えている。 め、 経験的グリーン関数法を用いた合成波形と観測波形の比較 68 図74.まとめ 2008年のWenchuan地震で観測された近地強震動記録を用いて、経験的グリーン関数法と理論的手法に より震源モデ、ルの構築を行った。その結果、アスペリティは、南のセグメントで3つ推定され、その応力降下量 はそれぞれ13MPa程度であった。詳細については、 Bulletinof the Seismological Society of Americaに掲載予 定である。 参考文献
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勾
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