• 検索結果がありません。

フレーゲの方法による算術の導出

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "フレーゲの方法による算術の導出"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

フ レーゲの方法 による算術 の導 出

博 敏 * :ま じ め !こ 本論文の 目的は,『算術の基礎』 の 力D物泌腰 箆諺,′A″チカ陶ιチカ:Frege[1884])の §68-83でフ レーゲが与えた 自然数算術のプログラムに従 って

,具

体的に算術 を導 出す ることである。)。 ここで , 用い られ る論理体糸は,『概念記法』(Frege[1879])での第二階述語論理 に ヒュームの原理 を追加 した体糸である。 この体系が (モデルの存在により)無矛盾であることは既に知 られ ている②。 フ レー ゲは上記 の プ ロ グ ラムにお い て

,数

の 明示 的定義

,す

なわ ち「 〈概 念Fと同数 的で あ る (equinじmerous)〉 という概念の外延」 という定義 を用 いないで算術を導 出 しようと している。 外延 (クラス

)や

集合の概念に訴えず, ヒュームの原理 という

,数

の同一性 を論理的に定義す るだ けの原理 によって, どれほ どの範囲の算術が導出できるのか,という疑問が直ちに起 こる。本論文 では,(二階の)ペアノ算術をフ レーゲの方法を用 いて導 出す ることにより,フ レーゲのプログラ ムが十分 なものであることを示す。差 し当た っての 目標は

,以

下のペアノの五つの公理を導 くこと である。

(1)0(ゼ

)は

自然数である。 (2)すべての 自然数は, 自然数であるような唯一の後者 (successor)を 持つ。

(3)0(ゼ

)はいかなる自然数の後者でもない。

(4)任意の 自然数x, yに対 して, xの後者がyの後者 と同一であれば, xと yは同一で ある。 (5)任意の性質Fに対 して, 0が Fを持ち, Fを持つ任意の 自然数の後者 もまたFを持つ な らば

,す

べての 自然数がFを持つ (数学的帰納法の原理)。 ペアノの公理系によ って算術 を導 出す るとき

,通

常,「ゼ ロJ「自然数J「後者Jとい った概念は 原始概念 として未定義のままに残 され るか,または,より基本的 な理論

,例

えば集合論の中に算術 を埋め込んで

,集

合概念か らこれ らの概念が導かれ るか

,で

ぁる0。 後者の場合

,集

合概念に伴 う 性質がそのまま数の性質 に持ち込まれ, これが哲学的疑間を引き起 こす ことがある④。われわれは, フ レーゲに倣 って, これ らの概念を論理的な概念のみで定義 し

,ペ

アノの五つの公理 も定理 として 導 くという形で

,算

術 を導出す る。そのための準備 と して

,上

記の五つの公理 を論理 の記号言語に 翻訳す る。 われ われ の 記号で の “

Num"は

「 自然 数

Jを

意味 し,“

xPy"は

「xは yの前 者

(predecessor)であ る」 または「yは xの後者である

Jを

意味す る。そのとき

,ペ

アノの公理 は 次のように表現できる。(右端にわれわれの算術展開での,これ らの公理の定理番号を記す。)

(1′

)NumO

…………定理8

(2り

Vx(Num x→

ヨy(Num y∧

xPy∧

z(xPz→

z=y)))…

……・定理15の系

(3ア

)∀

x(Num x→¬

xPO)

………定理3の系

文田

(2)

142

田畑博敏:フ レーゲの方法による算術の導出

(4′

)∀

x∀

y Vz(NumxANumyANumz∧ xPz∧ yPz→ x=y)…

… 定理2の系

│ (5′ )∀ F[{Ю

∧∀

x Vy(Fx∧

xPy→

Fy)}→

Vx(Numx→ Fx)]

I

…………定理9 これ らの算術の基本原理 を導 くために,以下でわれわれは二階の述語論理 とヒュームの原理のみ に訴える。 ヒュームの原理が どれほ ど「 論理的

Jな

性格 を持つか, という点に関 して問題がな くは ないが,そこで用 い られ る概念がすべて三階の論理で表現できるという点において,少なくとも, 集合概念 による数の定義 に伴 う種 々の疑 間は免れ てい る。 この点 で,フ レーゲの プログラムは, 「 問題のより少ない方法でよ り多 くの成果 を出す

Jプ

ログラムとなっている,と考え られ る。 これ が

,わ

れわれが フ レーゲの方法を取 り上げる主要 な理 由である。

1.同

数 性 フレーゲの方法による算術の導出において中心的な原理となるヒュームの原理を確認することか ら始める。(原理

,公

理等の以下の記述 において最左端の全称記号は省略す ることがある。) ヒュームの原理

(HP):♯ F=♯

G←→F tt G. これは「Fであるものの数 とGであるものの数が同一であるのは

,概

念Fと概念Gが同数的である (equinumerous)と きかつそのときに限るJと読め る。『 算術 の基礎』(以下『 基礎』 と略記)§ 71-73で ,フ レーゲは “F tt G"(概念FとGの同数性)を, Fに帰属す る対象とGに帰属す る対 象との間での

,一

対一対応づけの可能性 と して定義す る。Fである任意の対象が

,Gで

ある少なく とも一つの対象に対 して関係 φにあ り

,逆

,Gで

ある任意の対象 に対 して, Fである少な くとも 一つの対象が関係 φにあるとき

,す

なわち

x(Fx→

y(Gy∧

y))

Vy(Gy→

x(Fx∧

xφ y'))

であるとき, Fである対象 とGである対象は,関係 φによって互いに対応づけ られ てい る,と言わ れ る。 さらに, この関係 ψが両方向に一意的である (一対一対応である),すなわち

∀x∀ y∀

z(xφ

y∧ xψ z→

y=Z)∧

Vx∀

y∀

z(xφ

z∧ yψ z→

X=y)

であるとき

,関

係 φによって, Fである任意の対象がGである対象 と過不足 な く一対―に対応づけ られ る。よって, Fである対象の個数 とGである対象の個数は一致す る。 こう して, 概念Fと概念Gが同数的である (F tt G) ということイよ, FであるものとGであるものを一対―に相互に対応づける関係 φが存在す る ヨ φ[∀

x{Fx→

y(Gy∧

w(xψ

w←→

W=y))}∧

Vy(Gy―

→ヨ

x(Fx∧ Vu(uφ

y←→

u=X))}]

と定義できる (『基礎』 §72)。 ところで, フ レーゲは『基礎』 §68で の数の明示的定義 : 概念Fに属す る数 とは

,概

念 〈Fと同数的である〉の外延である ♯F三 'X(F tt X) を確認 し,「nは数であるJという表現が この定義によって, nがその概念に属す る数であるような概念が存在す る ヨ

F(n=♯

F) を意味す ると した上で (『基礎』 §72),『基礎』 §73でヒュームの原理 を証明 しようと している。

(3)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第 2巻 第 2号 (2001) その証明は,“――/"が 同値関係であること (以下の補題

1)を

利用するものであるが, これは

,暗

黙のうちに『 算術の基本法則』の公理

V(二

階の事例

):

'X(F tt X)='Y(Gtt Y)→

∀H(F tt H←→

GttH)

を前提 してのみ成 り立つものである。数の明示的定義に従えば,数の同一性は概念の「 同外延性」 に訴えざるを得ないか らである。 しか し,フ レーゲは

,『

基礎』 §74以下の算術プログラムにおい て,「外延」に基づ く数の明示的定義にではなく,「同数性」に基づく数の同一性の基準を与えるヒュー ムの原理にのみ訴えている。われわれもこれに倣 って, ヒュームの原理から出発する。よって, ヒュー ムの原理は数の「文脈的定義」の役割を果たす。 ヒュームの原理: ♯

F=♯

G←→F tt G は

,左

,す

なわち♯

F(Fで

あるものの数)と半

G(Gで

あるものの数)の同一性を

,右

,す

なわち一対一対応の存在によって定義 している, と解釈できる。右辺に現れるのは三階述語論理で 表現可能な概各,その意味で「 論理的な

J概

念である。 さて,同数性 “穐"に関する補題を導 くことか ら始める。 補題

1:同

数性の関係 “‐-7"は同値関係である。 《証明》

(1)反

射性。任意の概念Fについて, F tt Fであることを示す。任意の対象xについて

, Fx

………① と仮定する。同一性の論理法則により

, x=w←

W=Xで

あるか ら

,全

称化により∀

w

(x=w―

w=x),∴

Fx∧

w(x=w←

W=X)。

これから

,存

在化により

,∃

y(F

y∧ ∀

w(x=w←

W=y))…

… ②。この②は①の仮定の下に導出されたから

,条

件化と全称 化により

, Vx{Fx→

y(Fy∧

Vw(x=w←

W=y))}…

……③。同様に

,任

意の対象

yについて

Fyと

仮定することから

,命

題論理 じ

=y←

u=yに

より

, Fy∧

u(u=y←

u=y)が

導け,こ れから存在化により,ヨ

X(Fx∧

Vu(u tt y← →

u=x))が

導けるので,

条件化によって

, Vy(Fy→

x(Fx∧

u(u=y←

u=x))}…

…・④が帰結する。③ と④の連言から,“

x=y"を

“xφ

y"と

みなすことによって,

∃φ

[Vx{Fx→

y(Fy∧ Vw(xφ

w←→

W=y))}∧

y{Fy→

x(Fx∧

Vu(uφ

y←→

u=X))}]

すなわち

,F∼

Fが 導ける。

(

)対

称性。任意の概念

F,Gに

ついて, F ttG→G4-―Fを示す。F∼ Gと仮定する。すなわち

ヨφ

[Vx(Fx→

y(Gy∧

w(xψ

w←→

W=y))}∧

y{Gy→

x(Fx∧

∀u

(uφ

y←

u=x))}]…

…①と仮定する。いま①の仮定で存在が仮定されている関係φをφ0

とすると

,①

の後半の連言肢

:Vy{Gy→

x(Fx∧ Vu(uφ

O y←→

u=x))}…

……②が

導ける。ここで

,関

係ψOの 逆関係φ01を

, Vx∀

y(xφ

01 y← →yφo X)と定義する…… ③。さて,いま,任意の対象yに 対して

,Gyと

仮定する………④o ②と④より

,ヨ

x(Fx∧

∀u

(uφO y← →

u=x))が

導かれるが

,③

での逆関係φ01の 定義により, uφO y←→yφ01 u であるから

,ヨ

x(Fx∧ Vu(yφ

01 u←→

u=x))カ

ミ導かれる。これは

,④

の仮定の下で

導かれたので

,条

件化によって

,Gy→

x(Fx∧

u(yφ

01 u←→

u=x))が

導かれ,

これか ら全称化により

, Vy{Gy→

x(Fx∧

u(yφ

01 u←→

u=x))}…

…・⑤。次に,

任意の対象xに 対して, Fxと仮定する… …⑥。仮定①で存在が仮定されている

,上

の議論のとき と同じ関係φOについて

,①

の仮定の前半の連言肢:∀

x{Fx→

y(Gy∧ Vw(xφ

O w

(4)

田畑博敏:フ レーゲの方法による算術の導出

③の逆関係の定義より, xφ O w←→ wψ01 Xであるから

,∃

y(Gy∧

w(wφ

01 x←→

w=y))…

…⑦o ⑦は⑥の仮定の下で導かれたから

,条

件化と全称化により

, Vx{Fx→

ヨy

(Gy∧

w(wψ

01 x←

W=y))}が

導かれる……③o ⑤と③の連言からφ01の 存在化に より,

ヨψ

[Vy(Gy―

→ヨ

x(Fx∧

u(yψ

u←→

u=x))}∧

x{Fx→

y(Gy∧

w(wψ

x←→ W tt y))}], すなわち,G tt Fが導かれる………⑨o ⑨は, F tt Gの仮定 (①)の下に導かれたから

,条

件化によ り, F――G→G tt Fが証明された。 (

)推

移性。任意の概念

F,G,Hに

対 して, F tt G∧ G――H→F ttHを示す。 まず, F tt G∧Gtt H……① と仮定する。この仮定の前半の連言肢:F tt Gにより, ヨφ[∀

x{Fx→

y(Gy∧ Vw(xψ

w―

w=x))}∧

Vy{Gy→

x(Fx∧

u(uφ

y←→

u=x))}]…

…。

が導かれる。また

,仮

定①の後半の連言肢

:G∼

Hに より,

∃ψ[∀

y(Gy→

z(Hz∧

s(yψ

s←→

s=z))}∧

z{Hz→

y(Gy∧ Vv(vψ

z←→

V=y))}]…

…③

が導かれる。②と③で存在が仮定されている関係を,それぞれ φO, ψOとする。そ して, これ らの

関係 φO, ψOから作 られ る関係積 を ζOと 定義す る!

∀x∀

z(xζ

O zぐ→ ヨ

y(xφ

O y∧ yψO z))……・④。 さて

,任

意 の対象xにつ いて,

Fx…

…⑤

と仮定する。②の前半より

, Vx{Fx→

y(Gy∧

w(xφ O w― W=y))}と

仮定でき

るか ら

,⑤

に よ り,ヨ

y(Gy∧ Vw(xφ

O w←→

W=y))が

導 け る。 よ って

,

GyO A∀

w(xφ

O w←→

w=yO)…

…⑥

と仮定する。同様に

,③

の前半より

, Vy(Gy→

z(Hz∧

Vs(yψ

O s←→

s=z))}と

仮定できるか ら, これと

,⑥

の前半の連言肢 :G yOか ら

,ヨ

z(Hz∧

Vs(yO

ψo s←→ S

=z))が

導ける。よって,

H zO∧

Vs(yO

ψO s←→

s=zO)…

… ⑦

と仮定する。さて

,任

意の対象wに 対 して,

O w

すなわち,ヨ

y(xφ

O y∧ yψO w)… … ③

と仮定する。③より, xφO y′∧yア ψo Wとすると

,⑥

の後半より, xφO y′→y′

=yOだ

から

,

y′=yOが 導 か れ る 。 よ っ て, x φO yO∧ yO ψO Wで あ る が,② の 後 半 よ り, yO ψO W→ W= zOで あるから

,w=zOが

導かれる。これは③の仮定から導けたので条件化により,

Xζ o W→

W=ZO…

…⑨

逆 に,

W=ZO… … ・⑩

と仮定する。仮定⑥の後半より, x φO yO← →

yO=yOが

導かれるが, y。

=yOは

論理法則で

あるから, x φO yoが 導かれる。また

,同

様に

,⑦

の後半より, yO ψO Zo← →

zO=ZOが

導か れ る が, zO=zOで あ る か ら, yO ψO Zoで あ る 。 よ っ て, こ れ ら の 連 言 に よ り, x φO yo∧ yO

(5)

鳥取大学教育地域科幸部紀要 地域研究 第

2巻

第 2号 (2001) 145 定⑩より, xζ

O wが

導かれる。これは⑩の仮定の下で導かれるから

,条

件化により,

W=ZO→

XζO W……① が導かれる。③と①の連言から全称化により

, Vw(xζ

O w←→

W=Zo)が

導ける。これと⑦ の前半

:HzOの

連言から存在化により,ヨ

z(Hz∧

w(xζ O W― w=z))カ

ミ導ける。こ れは

,仮

定⑤の下で導かれたから

,条

件化と全称化により

,以

下の式⑫が導かれる。 ∀

x{Fx→

z(Hz∧

VW(xζ

O w←→

W=Z))}…

… ⑫ 次に

,任

意の対象zに対 して,

Hz…

…⑬ と仮定する。⑬と

,③

の後半の連言肢から, ψOの仮定より

,ヨ

y(Gy∧ Vv(vψ

O z←→ V

=y))が

導かれ るので, G yl∧

Vv(vψ

O zや→

V=yl)―

・⑭ と仮定する。⑭の前半の連言肢 :G ylと

,②

の後半の連言肢より, φOの仮定か ら,∃

x(Fx

Vu(u

φO yl← →

u=x))が

導けるので,

F xO∧∀

u(u

φ

O yl― u=xO)…

…・⑮

と仮定する。いま

,任

意の対象uと④でのzに対して,

O z,す

なわちヨ

y(uφ

O y∧ yψo Z)… …⑩

と仮定する。⑩より,uφO y″∧y′′ψO zとおくと,② の後半の連言肢より,y″ ψO Z→yア′

=ylが

導かれるので, y″ 三ylが 導出される。よって, u φO ylが 導かれるが

,⑮

の後半の連 言肢により, u φO yl→

u=xOが

帰結するので

,結

, u=xOが

導ける。これは

,⑮

の仮定の 下で導けたので

,条

件化により,

uζO Z→

u=xO…

…⑫ が導ける。逆に

,任

意の対象 uに 対 して,

u=xO…

… ④

と仮定する。ところで

,①

の後半から, xO φ

O yl―

Xo=xOが

導けるので,これと, x0

=xOか

ら, xo ψO ylが導ける。また

,⑭

の後半から, yl ψO Z←→

yl=ylが

導けるので, こ

れ と

yl=ylか

ら, yl ψO Zが導 け る。 これ らの連 言

:xO

φO yl∧ yl ψO zの存 在化 :ヨy (xOψ O y∧ yψ O Z)か ら,④ に よ っ て, xOζ Ozが 導 け る 。 こ れ か ら 仮 定 ④ に よ り, u ζOz が導ける。これは

,⑬

の仮定の下で導かれたから

,条

件化により,

u=xO→

uζO z……

が導かれる。⑫と⑩の連言から全称化によって

, Vu(uζ

O z←→ じ

=XO)カ

ミ導ける。これと,

⑮の前半の連言肢 :F xOと の連言を存在化して

,ヨ

x(Fx∧

Vu(uζ

O z←→

u=x))カ

ミ得 られるが,こ れは

,仮

定⑬の下で得られたので

,条

件化と全称化により,

Vz{Hz→

X(Fx∧

Vu(uζ

O z←→

u=x))}…

…・⑩ が導ける。こうして

,⑫

と⑩の連言から, ζOを存在化して, ョζ[∀

x{Fx→

z(Hz∧

W(xζ

w←→

w=z))}∧

Vz{Hz→

x(Fx∧

Vu(uζ

z―

u=X))}]

が導ける。これは, F∼

Hに

他ならない。これは

,仮

定①の下に導けたので

,条

件化により, F∼ G∧ G∼H→F ttH が証 明され る。

Q・

E.D.

補題

2:∀

x(Fx←

Gx)→

(F―-7G)

(6)

田畑博敏:フ レーゲの方法 による算術 の導 出 この補題の意味は

,相

互に同外延的である(すなわち全 く同 じ対象が帰属する

)二

つの概念は同数 的である (帰属する対象間に一対一対応が存在する),ということである。 《証明》

Vx(Fx―

Gx)…

… ① と仮定する。xφ y←→

X=yと

おく。任意の対象xに 対して, Fx… …②と仮定する。①より ,

Fx←

Gxで

あるから

,Gx…

…③が導ける。任意の対象zに 対して, xφ zと仮定すると , “φ

"の

定義より

, x=zで

あるから

, z=xが

導ける。すなわち, xφ z→

z=x…

…④。逆 に

z=xと

仮定すると

, x=z

すなわちxφ zが 導けるから

, z=x→

Xφ Z………⑤が成り立 つ。④と⑤より, xφ z←→

z=X,∴

全称化により

, Vz(xψ

z―

z=x)…

…・o ③と ⑥ よ り

,Gx∧

z(xφ

z←→

Z=x),∴

存 在化 によ って

,∃

y(Gy∧

z(xφ

z←→ z =y))。 これは②の仮定の下で導かれたので

,条

件化と全称化により ,

Vx{Fx→

y(Gy∧

z(xφ

z←→

Z=y))}…

…,⑦

が導ける。同様に

,任

意の対象 yに 対 して

,Gyと

仮定すると

,①

と “φ

"の

定義により

, Fy∧

Vw(wφ

y←→

W=y)が

導けるので

,存

在化により

,ヨ

x(Fx∧

w(wφ

y←

W=X))

が導ける。よって

,条

件化と全称化により,

Vy{Gy→

x(Fx∧

Vw(wφ

y←→

W=X))}…

… ③ が導ける。⑦と③の連言を作り,それからφを存在化することにより, ヨφ[∀

x{Fx→

y(Gy∧

Vz(xφ

z←→

Z=y))}∧

y{Gy→

x(Fx∧

Vw(wφ

y←→

W=X))}]

すなわち, F tt Gが導かれる。

Q.E.D.

2.ゼ

ロ と後 者 関係 『基礎』 §74で,フ レーゲは,いかなる対象もそれに帰属 しない概念

,す

なわち論理的に矛盾 し ている概念として,「それ自身と同一でないJと いう概念――これを

[x:x≠

x]と

表示する一― を採用 した。ライプニッツと同様,フ レーゲは同一性を識別不可能性と見倣す。言い換えると,

x=y←

VF(Fxや

Fy)

を同一性 の三階 の論理 によ る定義 とフ レーゲは考 え るので ,「 いか なる対象 もそれ に帰属 しないJ とい うことが論理 的 に示 され うる概 念 と して,(その よ うな概 念 は無数 にあ るが

)彼

は特 に概 念 :

[x:x≠ x]を

採用す る。そ こで

,ゼ

ロは

,概

[x:x≠ x]に

属 す る数 と して定義 され る。 定義

1(ゼ

ロの定義

):0三

[x:x≠

x] 『 基礎』 §75で, フ レーゲは,「ゼ ロが属す る概念にはいかなる対象 も帰属せず

,逆

にゼ ロはい かなる対象 も帰属 しない概念に属す る数であるJと述べ る。われわれはこれ をゼ ロに関す る最初の 定理 と しよう。 定理

1:♯

F=0←

→ ∀x司

Fx(概

念Fに属す る数が0であ るとき

,か

つその ときのみ

,概

念Fにはいかなる対象 も帰属 しない。) 《証明》

(i)最

初 に, ♯

F=0→

Vx¬

Fxを

示す。そのために, ♯

F=0

… …① と仮定する。定義1よ り

, 0=♯

[x:x≠

x]と

0は定義されるので,“

="の

推移性により,

(7)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第 2巻 第 2号 (2001) 147 ♯

F=♯ [x:x≠

x]……'② が導かれ る。② とヒュームの原理 (の事例

):♯

F=♯

[x:x≠

x]―

F∼

[x:x≠

X] から, F棧

[x:x≠

x]… …③ が導かれる。しかし

, VX¬

(X≠

x)で

あるから

,概

[x:x≠

x]は

空である。故に

,③

に より概念Fも空でなければならない。もしある対象 xに ついて

Fxで

あれば

,③

より

,あ

る関係φ により, y≠ yで あるような, xφ yな る唯―の対象yが 存在する。しかし

,同

一性の論理法貝1に より

, y=yで

あるから矛盾である。こうして,

Vx¬

Fx… …④ が導かれる。④は仮定①の下で導かれたから

,条

件化により,以下の式が帰結する。 ♯

F=0→

∀x¬ Fx…… ⑤

(1)次

,⑤

の逆:∀ x¬

Fx→

F=0を

導 くために,

Vx¬

Fx… …⑥ を仮定する。論理法則

x=xお

よび

x=x→

(x≠ X→

Fx)か

らmodus ponensに より, x≠ x→

Fx…

…⑦ が導ける。また⑥より,¬

Fxが

導けるが

,論

理法則により

,¬

Fx→ (Fx→

x≠

x)で

あるか ら, modus ponensによ り,

Fx→

x≠

x…

…③ が導ける。⑦と③の連言

:Fx←

→x≠ xから全称化により,

vx(Fxや

→ x≠ x)… …⑨ が導ける。補題

2:∀

x(Fx←

→ x≠

x)→

F∼

[x:x≠

x]と

⑨からmodus ponensに よ り, F僧

[x:x≠

x]… …⑩ が導ける。そこで, ヒュームの原理:♯

F=半

[x:x≠

x]―

F棧

[x:x≠

x]と

⑩から, ♯F三十

[x:x≠

x]…… ① が導けるが

,定

義1により

, 0=♯

[x:x≠

x]で

あるから,こ れと①から同一性法則により, ♯

F=0…

…⑫ が帰結する。⑫は仮定⑥の下で導かれたから

,条

件化によって,

Vx¬ Fx→

F=0…

…⑬ が導かれる。⑤と⑬の連言により

,以

下が帰結する。 ♯

F=0←

Vx司 Fx Q・

E,D,

『基礎』の §76で,フ レーゲは

,後

者関係 の逆関係である前者の関係 (すなわ ち

,数

列 において 数mが数nの直前に現れ るという

m, n間

の二項関係)を定義す ることにより

,実

質上

,後

者関係 を定義 している。それによれば

,数

mが数nの前者であるのは,以下の場合かつその場合 に限 る: 概念Fに属す る数がnでぁ り,「Fではあるがyと同一ではない」 という概念に属す る 数がmであるような,そのような

,概

念Fと Fに帰属す る対象yが存在す る。 この定義をわれわれは定義2と して登録す る。 定義

2(前

者 (後者の逆)関係の定義

):

mPn⇔

ヨF∃

y(Fy∧

n=♯

F∧

m=♯

[x:Fx∧

x≠

y])

(8)

148 田畑博敏:フ レーゲの方法 による算術の導 出 われわれは “

mPn"を

「mはnの前者である」 または「mは nに直接 に先行す るJ(「 nはmの 後者であるJまたは「nはmの直後 に現れ る」)と読む。 定義2から

,前

者の関係は (従って後者の関係 も

)一

対一対応であることが導かれ る。 これを定 理2とす る。 定理

2imPnAsPt→

(mtt s←→

n=t)

《証明》

mPnAsPt…

① と仮定する。①の仮定と関係Pの 定義(定義

2)に

よって,以下を満たす概念

F, Gお

よび対象y, zが存 在す る:

Fy∧n=♯F∧

m=♯

[x:Fx∧

x≠y]∧Gz∧t=♯

GAs=♯ [w:Gw∧

w≠z]

… …②

(i)ま

,m=s→

n=tを

導くために,

m=s…

… ③ を仮定する。②と③より同一性法則により, ♯

[x:Fx∧

x≠

y]=♯

[w:Gw∧

w≠

z]が

導かれるので, ヒュームの原理によって,

[x:Fx∧

x≠

y]耗

[w:Gw∧

w≠ z]……・

が導かれる。②から

, Fy,Gzで

あるから

,④

で概念

[x:FxAx≠

y]と

概念

[w:Gw∧

∧W≠

Z]の

間に存在する一対一対応関係をφとすれば, φ∪{〈y, z〉 }を作ることにより , F tt G……⑤ が導ける。よって, ヒュームの原理:♯

F=♯

G←→F――Gに より,♯

F=♯

G。 これと

,②

含まれる♯

F=n,十

G=tに

より,

n=t…

…⑥ が導かれる。⑥は③の仮定のもとで導かれたので

,条

件化により,以下が帰結する。

m=s→

n=t…

……⑦

(1)次

,⑦

の逆

in=t→

m=sを

導 くために,

n=t…

…③ と仮定する。②と③から, ♯

F=♯

G…… ⑨ が帰結する。ヒュームの原理によって

,⑨

から F tt G……⑩ が導かれる。⑩により

,Fと

Gの 間に一対一対応関係ψが存在 して, ψによって

, Fyで

あるyに 対 して

,G wOで

あるような, y ψ wOな る唯一のwOが 存在 し,ま た

,Gzで

あるzに 対 して, F xOで あるような, xO ψzな る唯―のxOが 存在する。そこで, ψを用いて

,概

[x:Fx∧

x

y]と

概念

[w:Gw∧

w≠

z]の

間に

,新

しい一対一対応関係φを次のように作ることができ る。

φ

=((ψ

―{〈xO,z〉 ,(y,wO〉 })∪ {〈xO,wO〉 })一 {〈y,z〉 }(5)… …①

この関係 φによって

,わ

れわれは,

[x:Fx∧

x≠

y]代

[w:Gw∧

w≠ z]… … ⑫

を示すことができる。⑫から, ヒュームの原理によって, ♯

[x:Fx∧

x≠

y]=♯

[wiGw

(9)

鳥取大学 教 育地 域科 学部紀要 地域研 究 第 2巻 第 2号 (2001) 149 m=s… … ⑬ が導ける。⑬は仮定③の下で導かれたので

,条

件化により,

n=t→

m=s…

…⑭ が導ける。⑦と⑭の連言により

,m=s←

→n tt tを得るが, これは仮定①の下で導かれるので, 条件 化 によ り

,以

下 が帰結す る。

mPnAsPt→

(m=s←

n=t) Q・

E.D.

わ れわれ は まだ「 自然数

Jを

定義 していないが

,定

理2の系 と してペ ア ノの第4公理 を得 る。 系 (ペア ノの第4公理

):∀

x∀ y∀

z(Num x∧

Numy ANumz∧ xPz∧ yPz→ x=y)

《証明》 定理2と命題論理 (A→ (B←→ C)/.・.A∧C→

B)に

より,

mPnAsPtAn=t→

m=s…

…① が導かれる。①から

,全

称化

,金

称例化により,

Vw(xPz∧

yPw∧ z=w→ x=y)…

…② 述語論理の法則により

,②

は ヨ

W(XPz∧

yPw∧

z=w)→

x=yと

同値であるが, さらに この後者の先件部分が

xPz∧ yPzと

同値であるから

,結

,②

は次と同値である:

xPz∧

yPz→

x=y…

③ か ら

,命

題 論 理 (A→B/.・.C∧A→

B)に

よ り

,Numx∧

Num y∧

Ndmz∧ xPz∧ yP

z→

x=y

が 導 け るか ら, これ に全 称 化 を施 して

,以

下 を得 る。

∀x∀

yVz(Numx A Numy∧

Numz∧ xPz∧ yPz→ x=y) Q.E.D.

『基礎』 §77で,フ レーゲは

,数

1を,「0と 同一であるJという概念に属する数と定義 してい る。これをわれわれは定義3と して登録 しよう。 定義

3(数

1の 定義

):1=♯ [X:X=0]

OPlが

成 り立つことは容易に確かめ られる6)。 1以上の自然数

:2, 3, 4,等

々は

,概

念「0 または1と同一である

Jに

属す る数

,概

念「 0ま たは1または 2と 同一であるJに属する数

,概

念 「 0ま たは1または 2ま たは3と同一である」に属する数

,等

々として定義される。 次に, 0は最初の数である

,す

なわち0の前者は存在 しないという定理を導こう。 定理

3(Oの

前者の非存在

):¬

mPo

《証明》背理法によって証明するために

,任

意の対象mを取 り,

mPO…

… ① と仮定する。前者関係Pの定義 (定義

2)に

より

,あ

る概念Fとある対象yが存在 して,

Fy∧

0=♯

F∧

m=♯ [xIFx∧

x≠ y]…… ②

定理 1よ り

0=♯

F←→ ∀x¬

Fxで

あ るか ら

,②

に含 まれ る

0=♯

Fによ り,

Vx司 Fx…

…③ が導かれる。よって③より

,¬

Fyが

導けるが

,他

方② には

Fyが

含まれているか ら, これ らの連 言が導かれる:

Fy∧

Fy…

…④ こうして矛盾が導かれたので

,最

初の仮定は否定されねばならない。すなわち, ¬

mPO Q.E.D.

(10)

田畑博敏:フレーゲの方法による算術の導出 われわれはペアノの第3公理を (“

Num"が

何を意味 しようとも) 導 くことができる。 系 (ペアノの第3公理

)!Vx(Numx→

xPO)

《証明》 定理 3よ り

,¬

mPoで

あるか ら

,命

題論理

(B/∴

A→

B)に

よ ける。これに全称化を施 して

, Vx(Numx→

xPO)が

導ける。 われ われ の定理3の糸 と して って

,Numm→

mPOが

Q.E.D.

3.関

係 の 固 有 な 祖 先 次に関係の固有祖先 (関係

)の

定義 に進もう。 これは『概念記法』 (§26定義76)に由来す る。 定義

4(関

係の固有祖先の定義

):

xR*y⇔

F[VaVb{(a=x∨

Fa)∧ aRb→ Fb}→ Fy]

ここで

,Rは

任意の二項関係であ り,これの固有祖先 と呼ばれ る新 しい関係

R*が

定義 され てい る。関係 “

R*"の

意味を理解す るために,メ タフ ァー と して,“

xRy"を

「 親xの子yに対す る関係 (親子関係)J,“

xR*y"を

「 祖先xの子孫yに対す る関係Jと解釈 しよう。さて

,式

V

aVb{(a=x∨

Fa)AaRb→ Fb}は

式 ∀

b(xRb→ Fb)∧ VaVb(Fa∧ aRb

Fb)と

同値であ る。)。

上のメタフ ァーによって,“

Vb(xRb→

Fb)"は

「xのすべての子 は性質Fを持つ」を意味 し,“

VaVb(Fa∧

aRb→

Fb)"は

「 親 aと その子bの任意のペアー に対 して,も し親aが性質Fを持てばその子bも Fを持つ」 を

,言

い換え ると「 性質Fは任意の親 か らその子へ遺伝す る」を

,意

味す る。 よって

,定

義4の意味は,「xが yの (固有 な

)祖

先であ るのは, xのすべ ての子が持つ任意の遺伝的性質Fを yは持つ とき,かつそのときに限 るJとなる。 任意の関係

,例

えば多対多の関係 にある「 親子関係

JRに

対 して

,固

有祖先の関係

R*が

定義できる ので

,特

に一対―の関係である「 前者xの後者yに対す る関係」 “

xPy"に

対 しても

,関

P*

が定義 され る。その とき,“

xP*y"は

「xに始 まるP関係 の系列 を辿れ ばyに至 る」 あるいは 「xで始 まるP系列 においてyは xに後続す る」を意味す る。以後

,わ

れわれは一般的な関係Rに 対 して定義された「 固有祖先

Jの

関係

R*を ,関

係Pにも適用 して, Pの固有祖先の関係

P*を

考 える。 さて,ここで

,関

係の「 固有祖先Jに関す る定理 を証明す るための簡便 な方法を導入 しよう。 方法 (※) “

xR*y→

…y…〃という形の定理 を証明するには

,次

の三点 を示せば十分である。 まず

, F=[z:…

z… ]と置 け。 それか ら

,任

意 の対象a, bに対 して

,(a=xVF

a)お

よび

aRbを

仮定 して, Fbを導け。 これが簡便 な方法 にな っている理 由は以下の通 りである。 いま,“

xR*y→

…y…"カミ成 り立 つ ことを示 さねばな らないか ら

,わ

れわれはまず

xR*yと

仮定す ることになる。す なわ ち

,条

件「 “xのすべての子が持つ遺伝的性質である

(Vavb{(a=xVFa)∧

aRb→ Fb})"

という条件を満たす任意の性質Fを yは持つJと仮定す る。そこで,もし

F=[z:…

z… ]とお いて,このFについて, Fが “xのすべ ての子が持つ遺伝的性質である"こ とが示 されたな らば, yはこのFを持つ

,す

なわち “…y…

"が

成 り立つ ことが導かれ る。 よって

, F=[z:…

z…] とお いたFに対 して

, VaVb{(a=x∨

Fa)AaRb→

Fb)を

示せ ば十分であ る。われわ れ は この方法 を「 方法 (※)」 と して引用 し

,先

に述べ た よ うに, Pの固有祖 先

P*に

関す る,“x

(11)

鳥取大幸教育地域科幸部紀要 地域研究 第2巻 第

2号

(2001) 151

P*y→

…y…"の形の定理の証 明にもこれを用いるであろう。 定理

4:xRy→ xR*y

この定理の意味は,(定義4でのメタフ ァーを引き継 ぐならば)「親の子に対す る関係 は祖先の子孫 に対す る関係の特殊ケースであるJということである。 フ レーゲはこの定理 を『概念記法』第3部 で命題91と して導出 している。 《証明》

xRy…

… ① と仮定する。われわれは

xR*yを

示さねばならない。そこで

,定

義4に より

,任

意のFを 取り

VaVb{(x=avFa)∧

aRb→

Fb)…

…・ と仮定する。これらの仮定から

Fyを

導かねばならない。②から全称例化により,

(x=xVFx)∧

xRy→ Fy…

…③ が導かれる。論理法則

x=xか

,命

題論理により

, x=xVFxが

導けるから, これと仮定①の 連 言 に よ り,

(x=xVFx)∧

xRy…

…④ が導 け る①③ と④ か らmodus ponensによ り, Fy… …⑤ が導ける。⑤は仮定②の下で導かれたから

,条

件化と全称化により,

VF[∀

aVb{(x=aVFa)∧

aRb→

Fb)→

Fy]…

…Ⅲ

が導ける。⑥は

, xR*yに

他ならない (定義4)。 これは①から導かれたので

,条

件化により,

xRy→ xR*y Q・

E,D.

フ レー ゲ は,『概 念 記法 』 第3部で 命題98と して

,R*(Rの

固有 祖 先)の推 移 性 に言及 してい る。われわれ もこれ を定理5と して登録 しよう。 定理

5(R*の

推移性

):xR*y∧

yR*z→ xR*z

《証明》 定義4を考慮 して,

xR*y∧ yR*z…

…①

VaVb{(a=xvFa)∧

aRb→

Fb}…

… ② と仮定する。われわれは

Fzを

導かねばならない。①の後半には連言肢

yR*z,す

なわち∀F

[VaVb{(a=yVFa)∧

aRb→

Fb}→

Fzが

含まれているので,こ れの先件部分:∀

aVb{(a=yVFa)∧

aRb→ Fb)を

示せば十分である。そのためには

,任

意の対象a, bに 対 して,

(a=y∨ Fa)∧ aRb…

…③

を仮定 して

,Fbを

導けばよい。ところで

,②

,①

の前半の連言肢

xR*y,す

なわち

VF

[VaVb{(a=xVFa)AaRb→

Fb}→ Fy]の

全称例化により,

Fy… …④

が導ける。③ の前半の連言肢

:a=y∨

Faよ

,場

合を二つに分ける。

a=yの

とき

,④

か ら, 同一性法則により

, Faが

導かれ る。

Faの

とき, トリヴィアルに

Faが

成 り立つ。 よって,いず れにせ よ

Faが

導かれ る。 よって命題論理 により

, a=xVFaで

ある。 ところが

,③

の後半の連 言肢 より

, aRbで

ある。よって, これ らの連言を作 ると,

(12)

田畑博敏 :フ レーゲの方法 による算術の導 出

(a=xVFa)∧

aRb…

…⑤

が導ける。ここで

,②

に全称例化を施す と

(a=x∨

Fa)∧

aRb→

Fbが

得 られ るか ら, これ と⑤か らmodus ponensによって,

Fb…

…⑥

が導ける。③は③の仮定の下で導かれたので

,条

件化と全称化によって,

VaVb{(atty VF a)∧

aRb→

Fb}…

…・

が導ける。①に含まれる

yR*z:∀

F[VaVb{(a=yVFa)AaRb→

Fb)→

Fz]

の全称例化と⑦から,modus ponensに より,

Fz……③

が導ける。③は仮定②の下で導かれているので

,条

件化とFの 全称化により,

VF[VaVb{(a=x∨

Fa)∧ aRb→ Fb}→ Fz]…

… ⑨

が導ける。③は定義④により

xR*zで

ある。これは仮定①の下に導かれたので条件化により,

xR* yAyR* z―

xR* z

が 導 け る。

Q.E.D.

さて,「祖先の子孫 に対す る関係Jと して一般的に考え られた関係Rの固有祖先

R*か

,わ

れ われは対応す る,関係Pの固有祖先

P*(後

続関係)に向かおう。祖先関係が「 親の親 の一の親J というように親子の関係が重 なっている (多重関係積

)で

あるのと同様

,後

続関係 は後者関係 (前 者関係 の逆)カミ重 なることで成 り立っ関係である。 定理

6:xP*n→

mmPn∧

m(mPn→ xP*mVx=m)

この定理の意味はこうである :「 も しnが xに後続す るな らば (nが xの後者であるか, xの後者 の後者であるか, xの後者の後者の後者であ るか,…・, ならば), nには前者が存在 し, nの前者 はすべてxに後続す るかまたはxそのものであるJ。 《証明》

P*を

R*の

特殊ケースと見 なす と

,定

理6は “

xP*n→

…n…"という形 を しているので

,方

法 (※)カ ミ使 える。そこで

,方

法 (※)を使 うために,

F=[z:∃ mmPz∧ Vm(mPz→

(xP*m∨

x=m))]…

…① とお く。そ して,

xP* n…

……(D と仮定する。任意の対象a, bに対 して

(a=x∨ Fa)∧ aPb…

… ③

と仮 定 す る。①

,②

,③

の下 に

Fb,す

なわ ち ヨ

mmPb∧ Vm(mPb→

(xP*m∨ x=m))

を導き出せば十分である。③の後半の連言肢

iaPbか

ら存在化によって, ヨ

mmPb…

… ④ が導ける。これで

Fbの

前半の連言肢が導かれたので

,後

半の連言肢を導出せねばならない。その ため に

,任

意 の対象mに対 して,

mPb…

…⑤ と仮定する。③の後半の連言肢

:aPbと

,⑤

mPbと

,定

2(Pの

一対一対応)により,

a=m…

…⑥ が導ける。③の前半の連言肢

!a=x∨

Faを

考慮して

,場

合を二つに分ける。

(13)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第 2巻 第

2号

(21X11) 153

(i)a=xの

場合。このとき

,⑥

より

x=mで

あるから

,命

題論理 (B/.・.A∨

B)に

より,

xP*mVx=m

が導かれるが,こ れは仮定⑤に依存 していたので条件化と全称化により,

Vm(mPb→ xP*mVx=m)…

…・

が導かれる。

(

)Fa,す

なわちヨ

mmPa∧

vm(mPa→ xP*mvx=m)の

場合。この仮定の前

半の連言肢ヨ

mmPaよ

,あ

るm′につき, m′

Pa―

・・③ とする。この仮定の後半の連言肢の全称例化:m′

Pa→ xP*m′ Vx=m′

,③

から,

xP*m′ Vx=m′

……③ が導ける。⑨の選言を考慮して再び場合に分ける。 (

-1)xP*m′

の とき。⑥ と③ よ り,m′

Pmが

導 け るが ,こ れ と定理4:m′

Pm→

m′

P*

mからmodus ponensに よ り,m′

P*mが

導 け る。 よ って

,仮

xP*m′

との連 言 によ り

xP*

mア∧m′

P*m。

と ころが定理

5(P*の

推移 性)より

xP*m′

∧m′

P*m→ xP*mで

あ る か ら, modus ponensによ り,

xP*m…

…⑩ が導かれ る。 (

-2)x=m′

のとき。③より

xPaが

導かれるが,⑥より

xPm。

定理4よ り

xPm→

xP*

mであるから,modus ponensに より,

xP*m…

…① ( -1)の ときも( -2)の ときも,いずれも

xP*mが

導かれた。よって

,命

題論理により,

xP*mVx=m…

…⑫ が導かれる。②は⑤の仮定に依存しているので

,条

件化と全称化により,

Vm(mPb→

xP*mVx=m)…

…・ が導け る。(i)の場合 も( )の 場合 も

Vm(mPb→

xP*m∨ x=m)が

導 けた ので,これ と ④ との連 言 に よ り, ヨ

mmPb∧ Vm(mPb→

xP*m∨ x=m)

が導 け る。つ ま り

Fbが

導 け る。

Q.E,D.

フ レー ゲは,『基礎』 の §83で,「自然数 の系列 で0に後続 す る どん な数 もそれ 自身 に後続 す る こ とは ない」 と述べ てい る。われわれは,この命題 を定理7と して導 出 しよ う。 定理

7:OP*n→

nP*n

(この定理 の特殊 ケース と して「0は自分 自身 に後続 しない」 :¬

OP*0が

含 まれ る。) 《証明》 方法 (※)を使うために,

F=[z:¬

zP*z]…

… ① とおく。そして

,任

意の対象 a, bに 対 して,

(a=OVFa)∧

aPb…

…・② と仮定す る。われわれ は

Fb,す

なわ ち¬

bP*bを

導 かね ば な らない。 背理 法 を用 い るため,

bP* b…

…(Э と仮定する。③と定理

6:bP*b→

mPb∧

Vm(mPb→

bP*m∨ b=m)に

より,

(14)

田畑 博敏:フレーゲの方法 による算術の導 出

m(mPb→

bP*m∨ b=m)…

… ④

が導ける。②の後半の連言肢

:aPbと

,④

の全称例化

:aPb→

bP*aVb=aに

より,

bP*avb=a…

…⑤

が導ける。⑤の選言を考慮して

,場

合を二つに分ける。

(i)bP*aの

場合。②に含まれる

aPbと

,定

4:aPb→

aP*bに

より

, aP*b

が導かれるが,こ れと

,仮

:bP*aと

,定

5(P*の

推移性)により,

aP*a…

…⑥ が導かれ る。

(1)b=aの

場合。③の仮定より

aP* a…

(D が導かれる。(1)の 場合も( )の場合も

aP*a,す

なわち

,¬

Faで

ある。これと

,②

の前半

の連言肢

:a=ovFaに

より

, a=oで

ある。よって, これと

,⑥

,⑦

での

aP*aか

ら,

OP*0…

… ③

が導かれる。ところで

,定

6:OP*0→

mmPO∧

m(mPO→ OP*mVO=m)と

命題 論 理 (C→ A∧B/.・.C→

A)に

よ り

, OP*0→

mmPOで

あ るか ら, これ と③ か ら,

mmPO…

… ⑨ が導かれる。 しか し

,定

理 3よ り∀m¬

mPO,∴

¬∃

mmPO。

こうして矛盾が導出された。よっ て

,背

理法により

,¬

bP*b,す

なわち

Fbで

ある。

Q.E.D.

4.自

然 数 と数 学 的 帰 納 法 さて, これか ら自然数を定義す る。その基礎となるのは後続関係

P*(前

者関係の固有祖先

)で

ある。まず準備として “≦

"(小

大関係)を定義す る。 定義

5(よ

り小さいもののより大きいものに対する関係の定義

):

m≦

n

mP*n∨

m=n

広義の「小大関係」は「 後続す るかまたは同一Jという関係 によって定義できる。 次に自然数を定義す る。 定義

6(自

然数の定義

):Num n

0≦

n こう して「 自然数」

(Num)0, 1, 2,…

は「 0であ るか または0に後続す るものJと して定 義できる。 定理

8(ペ

アノの第1公理

):Num 0

《証明》 論理法則 よ り

, 0=0で

ある。 これか ら命題論理 によ り

, OP*0∨

0=0が

導かれ る。定義5に より, 0≦

0,ゆ

えに定義6によ り

,Num Oで

ある。

Q.E.D,

定理

9(数

学的帰納法 :ペ アノの第5公理

):

F[{FO∧

∀x∀

y(Fx∧ xPy→ Fy)}→

Vx(Num x→

Fx)]

《証明》

任意の性質Fを取 り,

(15)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第 2巻 第 2号 (2001) 155 と仮定する。示すべきことは

,任

意の対象zに対して

,Num z→ Fzで

ある。そこで

,Num z,

すなわち,定義6と定義5により,

OP*zVO=z…

…② と仮定する。②の選言を考慮して

,場

合を二つに分ける。

(1)OP*zの

場 合 。

OP*z→ Fzを

示 せ ば十 分 で あ る。 そ こで

,方

法 (※

)を

用 い るた め,

F=[z:Fz]…

… ③ とお き

,任

意 の対 象a, bにつ いて,

(a=OVFa)∧

aPb…

… ④ と仮定する。方法 (※)により

, Fb(③

より

Fbそ

のもの)を導けば十分である。④の前半の連

言肢より

, a=OVFaが

導かれる。

a=0の

とき

,①

の前半の連言肢

:FOに

より

, Faが

導か

れるので,いずれにせよ

Faが

導かれる。よって, この

Faと ,④

の後半の連言肢

:aPbか

ら,

Fa∧ aPb…

…⑤ が導かれる。ところが

,①

の後半の連言肢から全称例化により

, Fa∧

aPb→

Fbが

導かれるの で,こ れと⑤からmodus ponensに よって, Fb… …⑥ が導かれる。よって

,方

法(※ )により

, OP*z→

Fzが

示されたから

, OP*zの

仮定により

Fz…

…⑦ が導かれる。 (

)0=zの

場合。①の前半の連言肢

:FOよ

り,

Fz…

…③ が導かれる。(1),( )のどちらの場合も

,Fzが

導かれた。これは

,仮

定②

,す

なわち (定義5, 定義 6に より

)仮

定Num zに依存 して導かれた。よって

,条

件化により

,Numz→

Fzが

導かれ るから

,全

称化により,

Vx(Num x→

Fx)・… …⑨ が帰結する。⑨は仮定①の下で導かれたから

,条

件化と (Fの

)全

称化により,

VF[{FO∧

∀x∀

y(Fx∧

xPy→

Fy)}→

VX(Numx→

Fx)]が

導か

Q.E,D.

れ る。 定理

10:(mPn∧ oP*n)→ VX(X≦

m←→ X≦

nAx≠

n) この定理 の意味 は,「mが, 0で始 ま る 自然数 の列 で0に後続 す るnの前者 で あれ ば

,m以

下 の数 はす べ てnよ り小 さ くてnに等 しくは ない数 と一致 す る

Jで

あ る。 《証明》

mPn∧

OP*n…

… ① と仮定する。この仮定のもとに

,定

理の後件部分である同値式を導かねばならない。 xを 任意の対 象 と して, x≦m→x≦ n∧ X≠ nを導 くた め, x≦m……② と仮定する。②から

,定

義5(“≦

"の

定義)により,

XP*皿 VX=m…

…③ が導ける。③の選言を考慮して場合を分ける。

(16)

田畑博敏:フ レーゲの方法による算術の導 出

I (1)xP*mの

場合。①の前半の連言肢

:mPnと

,定

4:mPn→ mP*nか

,mP*

l nが

導ける。∴

xP*m∧

mP*n。

ところが定理 5よ り

P*は

推移的である

,す

なわち

xP*

l m∧ mP*n→ xP*nで

あるか ら

, xP*nが

導かれる。 (

)X=mの

場合。①の前半の連言肢

:mPnょ

, xPnが

導ける。これか ら

,定

4:x

I Pn→

xP* nに

よって

, xP* nが

導かれる。

I

こうして

,(i),(1)の

どちらの場合にも xP* n………(⊃ が導 かれ た。 よ って

,命

題 論理 に よ り

, xP*nVx=n,す

なわ ち

,定

義5によ り, x≦ n……⑤ が導かれ る。 さて, x≠ nを背理 法 で示す ため に,

x=n…

…⑥ と仮定する。④と⑥より

, nP*nが

導かれる。しかし

,①

に合まれる

OP*nと

,定

7:0

P*n→

nP*nか

,¬

nP*nが

導 かれ るので

,矛

盾 で あ る。 よ って , x≠ n……⑦ でなければならない。よって

,⑤

と⑦の連言から, x≦ n∧ x≠ n……③ が導ける。③は仮定②の下で導かれたので

,条

件化により

,以

下の条件命題が帰結する: x≦m→x≦ n∧ x≠

n…

…⑨ 次に

,③

の逆:x≦ n∧ x≠ n→ x≦

mを

示す。そのために, x≦ n∧ x≠ n……⑩ と仮定する。⑩の前半の連言肢

:x≦

nから

,定

義5に より

, xP*n∨ x=nが

導かれるが, これと⑩の後半の連言肢:x≠nから

,命

題論理

(AVB,¬

B/.・

.A)に

より, xP* n………① が導かれ る。 よ って

,①

,定

6:xP*n→

mmPn∧ Vm(mPn→

xP*m∨ x=m)

か ら, naodus pOnensに よ って, ヨ

mmPn∧ Vm(mPn→

xP*mVx=m)…

…・⑫ が導かれる。⑫の後半の連言肢

:Vm(mPn→

xP*mVx=m)か

ら全称例化により,

mPn→

xP*mVx=m…

が導かれる。ところが

,①

の前半の連言肢により

,mPnで

あるから, これと⑬から

, xP*m

Vx=m,す

なわち

,定

義5に より, x≦m……⑭ が導かれる。この⑭は仮定⑩の下で導かれたから

,条

件化により, x≦ n∧ x≠ n→ x≦

m…

…⑮ が導ける。③と⑮の連言のxに 全称化を施すことにより,

Vx(x≦ m―

x≦n∧ x≠ n)…… ⑩ が得られる。この⑩は仮定①の下で導かれたので

,条

件化により,

mPn∧ OP*n→ Vx(x≦

m←→ x≦

nAx≠

n) が導かれ る。

Q.E.D.

定理

11:mPn∧ OP*n→

[x:x≦ m]P♯ [x:x≦

n]

(17)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第 2巻 第 2号 (2001) 157

この定理の意味はこうである。「 もしmが, 0に 後続するnの 前者であるならば,そのとき

,概

“m以下である"に属する数は

,概

念 “n以 下である

"に

属する数の前者である。」

《証明》

mPn∧ OP*n…

… ① と仮定する。①と

,定

理10i mP n∧

OP*n→ Vx(x≦

m←→x≦ n∧ x≠

n)か

ら,

Vx(x≦ m←

>x≦n∧ x≠ n)… … ② が導かれる。②と

,補

2:Vx(x≦

m←→ x≦ n∧ x≠

n)→

[X:x≦ m]梅

[x:x≦

n∧ x≠

n]に

よ り

,[x:x≦

m]―

[x:x≦

n∧ x≠

n]が

導 か れ るか ら, これ と ヒュー ム の原理 か ら, ♯

[x:x≦ m]=♯

[x:x≦ n∧ x≠n]…… ③ が導かれ る。 ここで,

F=[x:x≦

n]… …④ とおくと

,③

より, 十

[x:x≦ m]=♯ [x!Fx∧

x≠n]…… ⑤ が導 かれ る。 また

,論

理 法則

n=nか

,命

題 論理 によ り

, nP*nVn=nが

導 かれ るの で, 定義5に より, n≦ nが 成り立つ。よって

,④

より, Fn… …⑥ が成り立つ。また

,④

より, トリヴィアルに, 半

[x:x≦ n]=♯

F……⑦ である。⑤

,⑥

,⑦

の連言より, Fと nの 存在化によって, ヨF∃

y(Fy∧

[x:x≦ n]=♯

F∧♯

[x:x≦ m]=♯ [x:Fx∧

x≠

y])

… …③ が導ける。よって

,定

義2に より, ♯

[x:x≦ m]P♯ [x:X≦

n]……・ である。③は仮定①の下に導かれたので

,条

件化により,

mPn∧ OP*n→

[x:x≦ m]P♯ [x:x≦

n] が導かれ る。

Q・

E.D.

以上の定理10および定理11は,『基礎』 §82でフ レーゲが言及 している次の定理 (定理12)を導 く補題の役 目を している。 定理

12:mPn→

(0≦ m∧

mP♯

[X:x≦ m]→

0≦ n∧

nP♯

[x:x≦

n])

《証明》 以下の二つの命題を仮定する。

mPn…

… ① O≦m∧

mP♯ [x:x≦

m]……'② ②の前半の連言肢:0≦ mから

,定

義5によって,

OP*mVO=m…

…③ が導かれる。③の選言を考慮 して

,場

合を二つに分ける。

(1)OP*mの

場合。このとき

,①

と定理

4:mPn→ mP*nか

,mP*nが

導かれる から

, OP*m∧

mP*n。

ここで, P*の推移性 (定理

5)に

より

, OP*nが

導かれる。

(18)

田畑博敏:フ レーゲの方法による算術の導出

(1)0=mの

場合。①より

, OPnが

導かれるので

,定

4:OPn→

OP*nに

より

,今

度も

OP*nが

導かれる。よって,いずれにせよ

,③

から,

OP* n…

……④ が導かれる。④から命題論理により

, OP*nvo=nが

導かれるので

,定

義5により, 0≦n…… ⑤ が導かれる。①の

mPnと

,②

の後半の連言肢

:mP♯

[x:x≦

m],お

よび “P"カミー対一対 応であること (定理

2)に

より,

n=♯ [x:x≦

m]……・⑥ が導かれる。ところで

,①

と④の連言により

,mPn∧

OP*nが

導かれるので, これと

,定

:mPn∧ OP*n→

[x:x≦ m]P♯ [x:x≦ n]か

,modus ponensによ り

, ♯

[x:x≦ m]P十 [x:x≦

n]……・ が導ける。よって

,⑥

と⑦から,同一性の法則により,

nP♯ [x:x≦

n]…… ③ が導ける。よって

,⑤

と③の連言を作ることにより, 0≦ n∧

nP#[x:x≦

n]…… ⑨ が導かれる。③は仮定①と②の下に導かれたので

,条

件化を三度施すことにより,

mPn→

(0≦m∧

mP♯ [x:x≦ m]→

0≦ n∧

nP♯ [x:x≦

n]) ヵミ導 かれ る。

Q.E.D.

定理

13:OP半

[x:x≦ 0] この定理 の意味 は

,表

面 的 には,「概 念 “0と同一 で あ るか また は0よ り小 さい"に属 す る数

,す

なわ ち1は 0の後 者 で あ る」 で あ る。だが, 自然 数論 の展 開 とい う観点 か ら見 ると ,『基礎』 §82 で フ レー ゲが述べ てい るように, これ は

,定

理 12で 主 張 され た ことが

,数

0でも成 り立っ ことを意 味す る。 それ ゆえ

,以

後 の定理 15を 数学 的帰納 法 を用 いて証 明す るための基礎 の役割 を果 たす。 《証明》

F=[x:x≦

0]… …① とおく。論理法則

0=0と

命題論理により

, OP*OVO=0が

導けるから

,定

義 5に より, 0 ≦

0

であるから,こ れと①から,

FO…

…② が導ける。ところで

,①

と補題2と ヒュームの原理により, ♯

F=♯ [x:x≦

0]…… ③ で あ る。 さて,も し任 意 の対 象xに対 して

xP*0な

らば

,定

理6の帰結 部 分 の前半部 に よ り, ∃

mmPOが

導 かれ るが,これ は定理3の閉包

:Vm¬ mPOと

矛盾す るか ら, ¬

xP*0…

…④ で あ る。 ところで

,論

理 法則 :x≦ 0←→ x≦0と定 義5よ り, x≦ 0←→

xP*OVx=0が

導 け るが

,命

題 論理 (A←→ B/.・

.AAC←

BAC)に

よ り

,

x≦0∧ x≠0←→

(xP*0∨ x=0)Ax≠

0……⑤

である。ところが

,命

題論理

((A∨ B)∧

B―

A∧ 司

B)に

より

,⑤

の右辺は

, xP*0

∧X≠ 0と同値である。よって, このことと⑤から,

(19)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第 2巻 第 2号 (2001) 159 が導ける。しかし

,④

から命題論理 (¬

A/∴

¬ (A∧

B))に

よって

,¬

(xP*0∧

X≠ 0)

が導けるので,こ れと⑥から

,命

題論理

(A―

B,¬ B/∴

A)に

よって,

¬ (x≦ 0∧ x≠ 0)… … ⑦ が導ける。①より

, Fx←

→ x≦ 0で あるから,こ れと⑦から

,¬

(Fx∧

x≠

0)が

導ける。 最後の式に全称化を施すことにより,

Vx司

(Fx∧

x≠0)…… ③ が導 け る。定理1の “

Fx"に

Fx∧

x≠

0"を

代 入す る ことによ り, ♯

[x:Fx∧

x≠ 0]

=0←

→ ∀x¬

(Fx∧

x≠

0)が

導 け るので, これ と③ よ り, ♯

[x:Fx∧

x≠

0]=0…

…③ が導ける。②

,③,③

の連言により,

FO∧ 0=♯ [x:Fx∧

x≠

0]∧

[x:x≦ 0]=♯

F……⑩ が導かれ る。⑩か ら存在化 を三度 ほ どこ して, ヨFヨ

y[Fy∧

0=♯

[x:Fx∧

x≠

y]∧

[x:x≦ 0]=♯

F]

す なわち,定義2により

, OP♯

[x:x≦

0]が

導ける。

Q.E.D.

定理14:0≦ n→0≦ n∧

nP♯

[x:x≦

n] 《証明》 0≦ n……① と仮定する。①から

,定

義5に よって

OP*n∨

0=nが

導かれるから,これの選言を考慮して 場合を二つに分ける。

(i)0=nの

場合。定埋13よ り

, OP♯

[x:x≦

0]で

あるか ら

, nP♯

[x:x≦

n]が

導ける。これと

,①

の連言を作れば, 0≦ n∧

nP♯ [x:x≦

n]…… ② が 導 け る。 (

)OP*nの

場 合 。

OP*n→

0≦ n∧

nP♯

[x:x≦ n]を

証 明す るた め に

,方

法 (※) を用 い る。 そ の た め に,

F=[z:0≦

z∧

zP♯

[x:X≦ z]]…

…③ とお く。 任 意 の対 象a, bに対 して,

(a=OVFa)∧

aPb…

…・④ と仮定す る。示すべきことは

, Fb,す

なわち

,③

より, 0≦ b∧

bP♯

[x:x≦

b]で

ある。 ④ の前半の連 言肢

:a=o∨

Faの

選言を考慮 して

,場

合を二つに分け る。 (

-1)a=oの

とき。論理法則

0=0か

, OP*OVO=0が

導かれ るので

,定

義5に

より, 0≦O。 よって,これか ら

a=0に

より, 0≦ a。 ところが定l1413:OP♯

[x:x≦

0]

か ら

a=0に

よ り

, aP♯

[x:x≦

a]。 よって, これ らの連言によ り, 0≦ a∧

aP♯ [x:

x≦

a]す

なわち

Faが

導かれ る。

(

-2)Faの

とき。トリヴ ィアルにFa。

いずれにせ よ,

Fa…… ⑤

が導かれ る。 ところで

,定

12:aPb→

(0≦ a∧

aP♯

[x:x≦

a]→

0≦ b∧

bP♯

[x:

(20)

田畑博敏:フ レーゲの方法による算術の導 出

P♯

[x:x≦

b]で

あるか ら,

aPb―

(Fa→

Fb)…

…⑥

である。⑥と

,④

の後半の連言肢

:aPbと

,⑤

から,modus ponensを 三度用いて,

Fb… …⑦ が導 かれ る。 こう して

,方

法 (※)によ り

, OP*n→

0≦

nAnP♯ [x:x≦ n]が

証 明 され たので,仮

OP*nに

よ って, 0≦

nAnP♯ [x:x≦

n]…… ③ が帰結す る。 こう して

,(i)と

( )の どち らの場 合 も

0≦ nAnP♯ [x:x≦ n]が

導 かれ る か ら

,仮

定① の条件化 によ って, 0≦ n→0≦ n∧

nP♯

[x:x≦ n] が導かれ る。

Q.E.D.

定理15:Num n→

nP♯ [x:x≦

n] この定理 の意味は「 nが自然 数 な らば

,概

念 “nであ るか また はnよ り小 さい"に属 す る数 はnの 後者 で あ る」 となる。二種類 の証 明を与 え る。 《証明1》 Num nと仮定す る。定義6により, 0≦ nである。これ と

,定

14:0≦

n→ 0≦

nAnP♯

[x:x≦

]から

,命

題論理

(A,A→

A∧B/.・.B)により

, nP♯

[x:x≦

n]が

導かれる。 よって

,条

件化により

,Num n→ nP♯

[x:x≦

n]が

示された。

Q.E.D.

《証明2》 定理14ではなく

,数

学的帰納法 (定理

9)に

よって証明する。そのために,

F=[z:0≦

z∧

zP♯

[x:x≦ z]]…

…① とお く。

O=0と

命題 論理 と定 義5よ り

0≦

0が導 かれ るが, これ と

,定

13:OP♯ [x:x

0]と

の連言 によ り, 0≦ 0∧

OP♯ [x:x≦ 0],す

なわ ち,

FO…

…②

が導かれる。ところで

,定

12:xPy→

(0≦ x∧

xP♯

[z:z≦

x]→

0≦y∧

yP♯

[z: z≦

y])は

①によって

, xPy→ (Fx→

Fy)で

ある。よって

,命

題論理により

, Px∧

xP

y→

Fyが

導かれるので,こ れを二度全称化 して

,

Vx∀

y(Fx∧

xPy→ Fy)…

(D

が導かれる。②と③の連言により,

FO∧

xVy(Fx∧

xPy→ Fy)…

… ④

が得 られ る。 ここで

,定

9(数

学 的帰納法

):VF[FO∧

Vx∀ y(Fx∧

xPy→ Fy)→

Vn(Num n→

Fn)]と

④から

, Vn(Num n→

Fn),す

なわち,

Vn(Num n→

0≦

nAnP♯ [x:x≦ n])…

…⑤

が導ける。⑤から全称例化により

,Num n→

0≦

nAnP+[x:x≦

n]が

得られ

,定

6と命 題論理 (A→ A∧B/.・.A→

B)に

より

,Num n→ nP♯

[x:x≦

n]が

導ける。

Q.E.D.

(21)

鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第

2巻

第 2号 (2001) 161

《証明》

任意の対象mに対 して,

Numm…

…①

と仮定する。①と定理

15:Numm→ mP十

[x:x≦ m]か

らmodus ponensに より,

mP♯ [x:x≦

m]…… ② が導 かれ る。② と定理

4:mP♯ [x:x≦ m]→ mP*♯ [x:x≦ m]か

らmodus ponensに よ り

mP*♯ [x:x≦

m]…… ③ が導かれる。①から定義6により, 0≦

mで

あるが,こ れから定義5により,

OP*mVO=m…

…④ が帰結する。④の選言を考慮して

,場

合を二つに分ける。

(i)OP*mの

場合。この仮定と③により

, OP*m∧

mP*♯ [x:x≦ m]で

あるが

,定

5(P*の

推移性)により

, OP*♯

[x:x≦ m]が

導かれる。 (

)0=mの

場合。このとき

,③

より

, OP*♯

[x:x≦ m]が

導かれる。いずれにせよ,

OP*♯ [x:x≦

m]……⑤

が導 かれ る。⑤ か ら命題論理 (A/.・

.AVB)に

よ り

, OP*♯ [x:x≦ m]∨ 0=♯ [x:X

m]が

導 かれ るが, これ は定義5によ り, 0≦ キ

[x:x≦ m]で

あ り,さ らに定義6によ り,

Num♯

[x:x≦

m]…… ⑥ で あ る。 ここで

,任

意 の対象zに対 して,

mPz…

…⑦ と仮定する。②と⑦との連言により,

mPz∧ mP♯ [x:x≦

m]……・③ が導かれ る。 ところが

,定

2(関

係Pの

一 対応)から

,mPz∧ mP♯ [x:x≦ m]→

z =♯

[x:x≦

m]ヵ

導 け るか ら,これ と③ か ら,modus ponensに よ り, z三十

[x:x≦

m]……・⑨ が導かれる。⑨は仮定⑦から導かれたので

,条

件化と全称化により,

Vz(mPz→

z三十

[x:x≦

m]……・ が導かれる。そこで

,⑥,②,⑩

の連言から

,Num♯

[x:x≦ m]∧ mP♯

[x:x≦

m]∧

Vz

(mPz→

z=♯

[x:x≦

m])が

導ける。これを存在化して,

y(Numy∧ mPy∧

Vz(mPz→

z=y))…

…① が導ける。①は仮定①の下で導かれたので

,条

件化と (mの

)全

称化により,

Vx(Num x→

y(Num y∧

xPy∧

Vz(xPz→

z=y)))

が導ける。

Q.E.D.

こう して

,わ

れわれは,フ レーゲの方法に従 って

,算

術の主要 な定理を導いたが,このフ レーゲ の結果の持つ哲学的意義については

,稿

を改めて論 じたいG)。

参照

関連したドキュメント

前述のように,本稿では地方創生戦略の出発点を05年の地域再生法 5)

一階算術(自然数論)に議論を限定する。ひとたび一階算術に身を置くと、そこに算術的 階層の存在とその厳密性

事業セグメントごとの資本コスト(WACC)を算定するためには、BS を作成後、まず株

【資料1】最終エネルギー消費及び温室効果ガス排出量の算定方法(概要)

本文書の目的は、 Allbirds の製品におけるカーボンフットプリントの計算方法、前提条件、デー タソース、および今後の改善点の概要を提供し、より詳細な情報を共有することです。

【資料1】最終エネルギー消費及び温室効果ガス排出量の算定方法(概要)

電子式の検知機を用い て、配管等から漏れるフ ロンを検知する方法。検 知機の精度によるが、他

越欠損金額を合併法人の所得の金額の計算上︑損金の額に算入